(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】中空無機粒子および該中空無機粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
(21)【出願番号】P 2020123143
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】三好 英範
(72)【発明者】
【氏名】中野 達也
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-132087(JP,A)
【文献】特開2010-131592(JP,A)
【文献】特開2014-055083(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131658(WO,A1)
【文献】特開2011-126761(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2016-0127871(KR,A)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
【文献】特開2011-225756(JP,A)
【文献】ZHANG Lijuan et al.,Hollow Silica Spheres: Synthesis and Mechanical Properties,Langmuir,Vol. 25,No. 5,p.2711-2717,DOI: 10.1021/la803546r
【文献】QI Genggeng et al.,Facile and Scalable Synthesis of Monodispersed Spherical Capsules with a Mesoporous Shell,Chemistry of Materials,Vol. 22,No. 9,p.2693-2695,DOI: 10.1021/cm100174e
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子からなるコア粒子を、シリコーン系化合物を用いて被覆する被覆工程と、
前記コア粒子を除去するコア粒子除去工程と、
を有し、
前記被覆工程では、
コア粒子分散液に分散剤
としてノニオン性界面活性剤を添加する分散剤添加工程と、
該分散剤添加工程を経た後に、カチオン性高分子界面活性剤を添加する界面活性剤添加工程と、
を行う、中空無機粒子の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程において、界面活性剤添加工程を経た後のコア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度が0.05~5g/Lである、請求項
1に記載の中空無機粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤が親水性高分子である、請求項
1または
2に記載の中空無機粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空無機粒子および該中空無機粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空無機粒子は、フィラー、スペーサー、セラミックス原料、樹脂改良剤、吸着剤、電子材料、半導体材料、塗料、化粧料等、幅広い分野で用いられている。近年、中空無機粒子の性能の向上や各種用途に応じた特性の付与等を目的に、様々な技術が開発されつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリオルガノシロキサンの重合体が含まれる重合体粒子に、ポリオルガノシロキサン被膜を形成することで被覆重合体粒子を得る被覆工程と、その被覆重合体粒子を焼成する焼成工程と、を行うことで、中空部に無機粒子が存在する中空無機粒子を製造する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、有機樹脂粒子1重量部に対するポリオルガノシロキサンの配合量が1~50重量部である球状または該球状粒子表面にポリオルガノシロキサンの小さな突起が化学的に結合した形状を有することを特徴とする複合粒子の有機樹脂粒子成分を除去することにより、平均粒子外径が1~15μmで、粒子内部が中空であることを特徴とする中空ポリオルガノシロキサン粒子を製造する技術が記載されている。
【0005】
特許文献3には、コアが重合体、シェルがチタニウム化合物および/またはシリコン化合物から選ばれる金属化合物からなることを特徴とする球状重合体-金属化合物複合粒子を、加熱することにより粒子内部に空孔を持たせた球状金属化合物中空粒子を製造する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-132087号公報
【文献】特開2014-162920号公報
【文献】特開平6-142491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、中空無機粒子の性能の向上や各種用途に応じた特性の付与等を目的に、様々な技術が開発されつつあり、例えば、誘電率の低下や、屈折率の低下等の目的にて、樹脂やセラミックス等の材料に中空無機粒子を混練して、材料の内部に空気層を作る手法が利用されている。この際、他材料に中空無機粒子を均一に分散させるため、材料と中空無機粒子を混練する際に、撹拌混合等、力を加えるが、その力により中空無機粒子が割れてしまい、材料内に空気層を作れないといった問題がある。
【0008】
一方で、中空無機粒子の強度を向上させるために、外殻を厚くすればするほど、空隙率が低下し、材料の内部に空気層を作るといった本来の効果が発揮されないといった問題がある。
【0009】
そこで、本技術では、空隙率が高いにも関わらず、強度の優れた中空無機粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本技術では、まず、粒度分布の変動係数が10%以下である粒子群に属し、外殻の厚みが最も薄い部分/外殻の厚みが最も厚い部分が、0.80以上である、中空無機粒子を提供する。
本技術に係る中空無機粒子は、その平均粒子外径を、0.05~5μmとすることができる。
本技術に係る中空無機粒子は、粒子内径/粒子外径を、0.55~0.93とすることができる。
本技術に係る中空無機粒子は、その外殻を、シリカまたはオルガノポリシロキサンで構成することができる。
本技術に係る中空無機粒子は、その吸水率を、2%未満とすることができる。
本技術に係る中空無機粒子は、平均粒子外径が0.1~5μmの中空無機粒子Aの割合が、全体の80重量%未満とし、中空無機粒子Aよりも小さい平均粒子外径の中空無機粒子Bの割合が全体の20重量%よりも多くすることができる。
【0011】
本技術では、次に、有機高分子からなるコア粒子を、シリコーン系化合物を用いて被覆する被覆工程と、
前記コア粒子を除去するコア粒子除去工程と、
を有し、
前記被覆工程では、
コア粒子分散液に分散剤としてノニオン性界面活性剤を添加する分散剤添加工程と、
該分散剤添加工程を経た後に、カチオン性高分子界面活性剤を添加する界面活性剤添加工程と、
を行う、中空無機粒子の製造方法を提供する。
本技術に係る製造方法では、前記被覆工程において、界面活性剤添加工程を経た後のコア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度を、0.05~5g/Lとすることができる。
本技術に係る製造方法で用いる前記分散剤として、親水性高分子を用いることができる。
【0012】
さらに本技術では、当該中空無機粒子を使用した低誘電材料を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空隙率が高いにも関わらず、強度の優れた中空無機粒子を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本技術に係る中空無機粒子1の断面構造の一例を示す断面イメージ図である。
【
図2】本技術に係る中空無機粒子1の製造方法のフロー図である。
【
図3】実施例1に係る中空無機粒子の断面顕微鏡写真である。
【
図4】実施例2に係る中空無機粒子の断面顕微鏡写真である。
【
図5】比較例1に係る中空無機粒子の断面顕微鏡写真である。
【
図6】比較例2に係る中空無機粒子の顕微鏡写真である。
【
図7】比較例3において、コア粒子分散液にカチオン性界面活性剤を添加した時点の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0016】
<1.中空無機粒子1>
図1は、本技術に係る中空無機粒子1の断面構造の一例を示す断面イメージ図である。本発明に係る中空無機粒子1は、外殻11と、中空12と、からなり、中空12が中空無機粒子1のほぼ中心に存在することを特徴とする。即ち、外殻11の厚みが、ほぼ均一であることを特徴とする。具体的には、外殻11の厚みが最も薄い部分/外殻11の厚みが最も厚い部分が、0.80以上である。
【0017】
本技術に係る中空無機粒子1の外殻11の厚みが最も薄い部分/外殻11の厚みが最も厚い部分は、目的に応じて適宜設計することができる。本技術では特に、中空無機粒子1の外殻11の厚みが最も薄い部分/外殻11の厚みが最も厚い部分を、0.80以上とすることが好ましく、0.85以上とすることがより好ましく、0.90以上とすることが更に好ましい。
【0018】
本技術に係る中空無機粒子1の外殻11の厚みが最も薄い部分/外殻11の厚みが最も厚い部分を、0.80以上とすることで、外殻11の厚みがほぼ均一となり、強度が高くなる。
【0019】
従来技術では、空隙率や外殻の厚さを、中空粒子群における各粒子間において均一にする技術は存在するが、本技術では、一つの粒子において、その外殻11の厚みを均一にしたことを特徴とする。
【0020】
中空12が偏って形成されていると、外殻11の厚みが均一でなくなり、外殻11の薄い部分が破損したり、粒子に穴が開いてしまったりする問題があるが、本技術に係る中空無機粒子1は、外殻11の厚みが、ほぼ均一であることから、強度が高い。そのため、例えば、樹脂等の他材料と混合する際に、撹拌やロールミル等で粒子に外力が加わった場合でも、破損しにくいといった特徴がある。
【0021】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1は、目的に応じて適宜設計することができる。本技術では特に、中空無機粒子1の平均粒子外径L1を、0.05~5μmとすることが好ましく、0.1~3μmとすることがより好ましく、0.5~2μmとすることが更に好ましい。
【0022】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1を、0.05μm以上とすることで、凝集せずに一次粒子の状態で分散している粒子の割合が多くなる。また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子外径L1を、5μm以下とすることで、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の充填率を高めることが可能となり、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【0023】
また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2と粒子外径L1は、目的に応じて適宜設計することができる。本技術では特に、粒子内径L2/粒子外径L1を、0.55~0.93とすることが好ましく、0.58~0.89とすることがより好ましく、0.63~0.85とすることが更に好ましい。
【0024】
本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2/粒子外径L1を、0.55以上とすることで、混練する材料に十分な空気層を作ることができ、その結果、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。また、本技術に係る中空無機粒子1の粒子内径L2/粒子外径L1を、0.93以下とすることで、外殻の厚みが薄くなることを防止し、粒子の強度を向上させることができる。
【0025】
本技術に係る中空無機粒子1のCV値(粒度分布の変動係数)は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では特に、中空無機粒子1のCV値は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
【0026】
本技術の係る中空無機粒子1のCV値が20%以下であると、平均粒子外径よりも大きな粒子の割合が少なくなり、粗大粒子の混入が嫌われる用途に適した材料となる。
【0027】
なお、本技術において、CV値は、以下の数式により算出した値である。
CV値(%)={[粒子外径の標準偏差(μm)/[平均粒子外径(μm)]×100
【0028】
本技術に係る中空無機粒子1の真球度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では特に、中空無機粒子1の真球度は、0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
【0029】
本技術に係る中空無機粒子1の真球度が、0.8以上であると、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の流動性が高くなり、粘度の上昇を抑制することができる。
【0030】
なお、本技術において、真球度は、以下の数式により算出した値である。
真球度=[粒子外径の短径]/[粒子外径の長径]
【0031】
本技術に係る中空無機粒子1の吸水率は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。本技術では特に、中空無機粒子1の吸水率は、2%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましく、0.5%未満であることが更に好ましい。
【0032】
本技術の係る中空無機粒子1の吸水率が2%未満であると、中空無機粒子1への水の吸湿を低減することができ、混練する材料の物性への水による影響を低減することができる。
【0033】
なお、本技術において、吸水率は、30度90%RH下に48時間静置した際の重量増加率である。
【0034】
本技術の係る中空無機粒子1の外殻11を形成する材料は特に限定されず、一般的な中空無機粒子に用いることができる材料で形成することができる。本技術では特に、中空無機粒子1の外殻11を、シリカまたはオルガノポリシロキサンで形成することが好ましく、オルガノポリシロキサンで形成することがより好ましい。オルガノポリシロキサン層は、後述するコア粒子除去工程における燃焼時において、多孔質状態であり、発生ガスが抜けやすく、厚い外殻11が割れにくい効果がある。また、その後、さらに高温で処理を行うことで緻密なシリカの外殻11を形成することができる。
【0035】
また、本技術の係る中空無機粒子1の外殻11は、不純物を含まず高純度の材料で形成することが好ましい。即ち、中空無機粒子1の外殻11は、中空無機粒子1を構成する成分以外の金属元素、ハロゲン元素を含まない材料を用いることが好ましい。
【0036】
本技術の係る中空無機粒子1は、異なる平均粒径を持つ中空無機粒子1を2種類以上混合しても良い。2種類以上の粒径が存在することにより、樹脂やセラミックス等の材料に混練する際、粒子の充填率が向上させることができ、空気層の割合も向上させることができる。その結果、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【0037】
具体的には、例えば、平均粒子外径が0.1~5μmの中空無機粒子Aの割合を、全体の80重量%未満とし、中空無機粒子Aよりも小さい平均粒子外径の中空無機粒子Bの割合を、全体の20重量%よりも多く存在させることができる。
【0038】
本技術の係る中空無機粒子1は、樹脂等の他材料と混合する際の流動性向上や粘度上昇抑制を目的として、その表面を樹脂やシランカップリング剤等により処理していてもよい。
【0039】
以上説明した本技術に係る中空無機粒子1の用途は特に限定されず、一般的な中空無機粒子1の様々な用途に適用することができる。本技術に係る中空無機粒子1は、特に、誘電率調整用の粒子として好適に用いることができる。
【0040】
<2.中空無機粒子1の製造方法>
図2は、本技術に係る中空無機粒子1の製造方法のフロー図である。本技術に係る中空無機粒子1の製造方法は、少なくとも、被覆工程S1と、コア粒子除去工程S2と、を行う方法である。また、本技術では、必要に応じて、コア粒子分散液調製工程S3を行うことも可能である。以下、各工程について、時系列に沿って、詳細に説明する。
【0041】
(1)コア粒子分散液調製工程S3
コア粒子分散液調製工程S3は、コア粒子と水とを撹拌混合して、コア粒子分散液を調製する工程である。コア粒子分散液調製工程S3では、必要に応じて、その他添加剤を加えることも可能である。
【0042】
本技術において用いることができるコア粒子としては、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるコア粒子を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリル酸メチル(PMA)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリエステル樹脂(PEs)、ジビニルベンゼン重合体、等の有機高分子からなる粒子を挙げることができる。
【0043】
本技術において用いることができるコア粒子は球状であることが好ましい。また、その平均粒子外径は、目的とする中空の大きさに応じて、自由に設計することができる。本技術では特に、コア粒子の平均粒子外径を、0.04~5.8μmとすることが好ましく、0.08~3.5μmとすることがより好ましく、0.4~2.4μmとすることが更に好ましい。
【0044】
コア粒子の平均粒子外径を、0.04μm以上とすることで、凝集せずに一次粒子の状態で分散している粒子の割合が多くなる。また、コア粒子の平均粒子外径を、5.8μm以下とすることで、樹脂等の他材料と混合する際に、粒子の充填率を高めることが可能となり、低誘電率、低屈折率等の目的とする効果を十分に発揮させることができる。
【0045】
コア粒子分散液には、目的に応じて、任意の添加剤を用いることができる。コア粒子分散液で用いることができる添加剤としては、例えば、コア粒子を溶媒に分散する目的で使用される。これらの添加剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な添加剤を、自由に選択して用いることができる。コア粒子分散液において用いることができる添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)を挙げることができる。
【0046】
また、コア粒子を合成する際に用いた溶媒、添加剤をそのまま用いても良い。特に、合成で使用される分散剤、乳化剤はコア粒子を溶媒に安定して分散させる目的から、添加してあることが望ましい。溶媒、添加剤を使用した粒子の合成方法としては、例えば、分散重合、ソープフリー重合、乳化重合、膨潤シード重合、膜乳化法、を挙げることができる。
【0047】
また、コア粒子分散液は市販の樹脂粒子分散液を使用する事ができる。分散媒には本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、自由に選択して用いることができる。例えば、水、メタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類、1-メトキシ―2-プロパノール等のグリコールエーテル類などが挙げられる。この中でも本技術では合成時の溶媒に水を用いることから、分散媒には水を選択することが望ましい。
【0048】
(2)被覆工程S1
被覆工程S1は、コア粒子を、シリコーン系化合物を用いて被覆する工程である。被覆工程S1では、分散剤添加工程S11と、界面活性剤添加工程S12と、触媒添加工程S13と、シリコーン系化合物添加工程S14と、を行う。そして、本技術に係る中空無機粒子1の製造方法では、被覆工程S1において、分散剤添加工程S11と、界面活性剤添加工程S12とを、この順番で行うことを特徴とする。
【0049】
(2-1)分散剤添加工程S11
分散剤添加工程S11は、前記コア粒子分散液調製工程S3で調製されたコア粒子分散液に、分散剤を添加する工程である。
【0050】
本技術で用いることができる分散剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる分散剤を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)などのノニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)などのアニオン性界面活性剤を挙げることができる。この中でも本技術では特に、ノニオン性界面活性剤が好ましく、さらにポリビニルアルコール(PVA)を用いることがより好ましい。ノニオン性界面活性剤を用いることで、カチオン性界面活性剤と合わせて使用しても粒子の凝集を促進しない点で好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(PVA)に含まれる親水基はシラノール基と相互作用を示すため、より好ましい。
【0051】
分散剤添加工程S11を経た後のコア粒子分散液中の分散剤の濃度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、1g/L以上であることが好ましい。コア粒子分散液中の分散剤の濃度をこの範囲にすることで、粒子同士の合一を防ぐことができる。
【0052】
(2-2)界面活性剤添加工程S12
界面活性剤添加工程S12は、前記分散剤添加工程S11を経た後のコア粒子分散液に、カチオン性界面活性剤を添加する工程である。本技術では、カチオン性界面活性剤を用いることで、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0053】
また、本技術では、前記分散剤添加工程S11を経た後に、界面活性剤添加工程S12を行うことで、粒子同士の合一を防ぐと同時に、粒子表面のカチオン性界面活性剤濃度を上昇させ、コア粒子の偏りを防止することができる。その結果、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0054】
本技術で用いることができるカチオン性界面活性剤は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるカチオン性界面活性剤を、自由に選択して用いることができる。例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等のカチオン性高分子界面活性剤、ポリビニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミドなどのカチオン性低分子界面活性剤を挙げることができる。この中でも本技術では特に、カチオン性高分子界面活性剤であるポリエチレンイミン(PEI)、またはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)を用いることが好ましい。カチオン性高分子界面活性剤を用いることで、粒子表面に吸着されやすくなり、よりコア粒子の偏りを防止する効果が高まる。
【0055】
界面活性剤添加工程S12を経た後のコア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、0.05~5g/Lであることが好ましい。コア粒子分散液中のカチオン性界面活性剤の濃度をこの範囲にすることで、中空12が中空無機粒子の中心部に存在し、外殻11の厚みが均一な粒子を得ることができる。
【0056】
(2-3)触媒添加工程S13
触媒添加工程S13は、コア粒子分散液に、後述するシリコーン系化合物添加工程S14において進行する加水分解縮合反応の触媒となる物質を添加する工程である。
【0057】
触媒添加工程S13は、後述するシリコーン系化合物の加水分解縮合反応の前または同時であれば、その順番は特に限定されない。即ち、前記添加工程S11の前後または同時、前記界面活性剤添加工程S12の前後または同時、後述するシリコーン系化合物添加工程S14の前または同時のいずれに行っても良い。
【0058】
本技術で用いることができる触媒は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる触媒を、自由に選択して用いることができる。例えば、アンモニア、アミンの少なくとも一方を挙げることができる。アミンとしては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミンなどが挙げられる。この中でも本技術では特に、毒性が少なく、粒子から除去することが容易であり、かつ安価であるという観点から、アンモニアを用いることが好ましい。
【0059】
触媒添加工程S13における触媒の添加量は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて自由に設定することができる。
【0060】
(2-4)シリコーン系化合物添加工程S14
シリコーン系化合物添加工程S14では、前記分散剤添加工程S11、および前記界面活性剤添加工程S12を経た後のコア粒子分散液に、シリコーン系化合物を添加する工程である。シリコーン系化合物添加工程S14では、コア粒子の表面においてシリコーン系化合物の加水分解縮合反応が進行することにより、コア粒子の表面がシリコーン系化合物で被覆される。
【0061】
本技術で用いることができるシリコーン系化合物としては、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができるシリコーン系化合物を、自由に選択して用いることができる。例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどが挙げられる。3官能のシリコーン系化合物を用いることで、3次元骨格を形成する3つのアルコキシル基と、分子間の相互作用を誘起する1つの有機基とを含んでいるため、中空無機粒子1の外殻11の厚みを均一に厚くすることができ、例えば、中空無機粒子1を樹脂等の他材料と混合する際に、撹拌やロールミル等で粒子に外力が加わった場合でも、破損しにくいといった効果を発揮することができる。この中でも本技術では特に、安価で入手しやすいメチルトリメトキシシラン(MTMS)を用いることが好ましい。
【0062】
シリコーン系化合物添加工程S14におけるシリコーン系化合物の添加量は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、中空無機粒子1の外殻11を所望の厚みに調整する目的に応じて設定することができる。
【0063】
シリコーン系化合物添加工程S14において、シリコーン化合物は、水溶液の状態でコア粒子分散液に添加される。シリコーン系化合物水溶液の調製方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な水溶液の調製方法を用いて調製することができる。例えば、シリコーン系化合物と水とを撹拌混合して、シリコーン液水溶液を調製することができる。
【0064】
シリコーン系化合物添加工程S14において、目的に応じて、任意の添加剤をシリコーン系化合物水溶液の添加と同時に別途添加することができる。用いることができる添加剤としては、例えば、分散剤添加工程S11にて添加したポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン等の分散剤、界面活性剤添加工程S12にて添加したポリエチレンイミン(PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等のカチオン性界面活性剤、触媒添加工程S13にて添加したアンモニア、アミン等の触媒を挙げることができる。これらの添加剤は、シリコーン系化合物水溶液に予め添加した後、シリコーン系化合物添加工程S14において使用することもできる。
【0065】
シリコーン系化合物水溶液のコア粒子分散液への添加方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる添加方法を、自由に選択して用いることができる。本技術では特に、滴下法を用いることが好ましい。滴下法を用いることで、CV値(粒度分布の変動係数)が小さく、粒径の揃った粒子を得ることができる。また、滴下法を用いることで、外殻11の厚みも揃った中空無機粒子1を得ることができ(粒子間で外殻11の厚みに差がない)、例えば、中空無機粒子1を樹脂等の他材料と混合する際に、撹拌やロールミル等で粒子に外力が加わった場合でも、破損しにくいといった効果を発揮することができる。更に、滴下法を用いることで、粒子同士の固着接着を防止することができ、粒子解砕・樹脂混練時に粒子が破壊されず、また、樹脂混練後における凝集も防止することができる。
【0066】
なお、外殻11の薄い中空無機粒子1を製造する場合は、滴下法を用いずに、一度に添加しても、外殻11が均一の厚さの中空無機粒子1を得ることができる。
【0067】
シリコーン系化合物添加工程S14におけるシリコーン系化合物水溶液の滴下の速度も、本技術の効果を損なわない限り、自由に設定することができる。本技術では特に、シリコーン系化合物水溶液の変性を防ぐために、シリコーン系化合物水溶液の添加時間が24時間以内となるような滴下速度とすることが好ましい。
【0068】
(3)コア粒子除去工程S2
前記被覆工程S1を行った後に、コア粒子を除去する工程である。前記被覆工程S1を行うことで、コア粒子は、シリコーン系化合物によって被覆された状態であるため、この状態でコア粒子を除去することで、シリコーン系化合物からなる外殻11のみが残り、中空無機粒子1を製造することができる。
【0069】
コア粒子除去工程S2において行うコア粒子の除去方法は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、一般的な中空無機粒子の製造で用いることができる除去方法を、自由に選択して用いることができる。例えば、耐溶剤性の低いコア粒子を用いる場合は有機溶媒によってコア粒子を除去する方法を選択することができ、加熱によって除去できるコア粒子を用いる場合は加熱や焼成によってコア粒子を除去する方法を選択することができる。本技術では特に、焼成によってコア粒子を除去することが好ましい。焼成を行うことで、コア粒子の除去と、外殻11層の緻密化を同時に行うことができる。
【0070】
焼成によってコア粒子を除去する場合の焼成条件は、本技術の効果を損なわない限り、コア粒子の材質等に応じて、自由に設定することができる。例えば、焼成温度としては、150~1200℃の範囲に設定することが好ましく、150~400℃または700~1200℃のいずれかの範囲に設定することがより好ましい。焼成温度を150℃以上とすることで、コア粒子の除去を十分に行うことができる。また、焼成温度を1200℃以下とすることで、焼結による凝集の発生を防止することができる。更に、焼成温度を150~400℃または700~1200℃のいずれかの範囲に設定することで、得られる中空無機粒子の吸水率を2%未満とすることができる。
【0071】
ここで、焼成温度150~400℃の場合では、外殻がオルガノポリシロキサンとなっており、疎水性のため吸水率が低くなる。また、焼成温度700~1200℃は外殻がシリカで、高温焼成によりOH基が減少して水の吸着が少なくなることから、吸水率が低くなる。
焼成温度150~400℃の場合、オルガノポリシロキサン外殻により、誘電率の低下や粒子の硬度低下や混練する樹脂との相溶性向上といった効果が期待できる。一方、焼成温度700~1200℃ではシリカ外殻により、線膨張係数を抑えるといった一般的なシリカフィラーの特性が期待できる。
【0072】
また、焼成炉内の雰囲気は、空気下であってもよいが、窒素やアルゴン等の不活化ガスによって、酸素濃度を調整した不活性雰囲気であってもよい。不活性雰囲気で焼成することにより、コア粒子が熱分解(吸熱反応)するため、発熱を抑えることができる。そのため、大量に焼成しても外殻11層の割れを防止することができ、また、温度のコントロールがしやすくなる。
【0073】
不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度としては、150~1200℃の範囲に設定することがより好ましい。この温度範囲で焼成することにより、中空無機粒子1の硬さのコントロールが容易となり、吸水率を2%未満とすることができ、生産性も向上させることができる。
【0074】
なお、空気下の焼成と不活化雰囲気での焼成とを組み合わせることも可能である。例えば、不活性雰囲気で焼成を行った後、更に、空気下での焼成を行うこともできる。空気下での焼成を行うことで、粒子に含まれる有機成分を除去することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0076】
<実験例1>
実験例1では、中空無機粒子の形態の違いによる強度や吸水率の違いについて、検証を行った。
【0077】
1.中空無機粒子の製造
一般的な中空無機粒子の製造方法を用いて、下記の表1に示す形態の異なる中空無機粒子を製造した。具体的には、コア粒子の一例として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子を用いて、このPMMA粒子を、シリコーン化合物の一例として、メチルトリメトキシシラン(MTMS)を用いて被覆して、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSO)被覆樹脂粒子を得た。得られたPMSO被覆樹脂粒子を加熱することで、コア粒子を除去し、中空無機粒子を製造した。
【0078】
なお、粒径、外殻の厚みは、下記の方法を用いて測定した。
(1)粒径
コア粒子、PMSO被覆樹脂粒子、および中空無機粒子について、それぞれをサンプリングし、FE-SEM(JSM-6700F,日本電子株式会社)観察により粒子70個の粒径を測長し、平均粒子径、CV値、および真球度を算出した。
【0079】
(2)外殻の厚み
中空無機粒子を包埋樹脂に包埋し硬化させた後、ミクロトームにて樹脂をカットし、その粒子断面をFE-SEM(JSM-6700F,日本電子株式会社)を用いて観察し、粒子外径、粒子内径、外殻の厚みが最も薄い部分(Min)、および外殻の厚みが最も厚い部分(Max)を測長した。測長した結果から、粒子10個の「外殻の厚みが最も薄い部分(外殻厚さMin)/外殻の厚みが最も厚い部分(外殻厚さMax)」および「粒子内径/粒子外径」を算出し、最大値および最小値を棄却した粒子8個の「外殻厚さMin/外殻厚さMax」および「粒子内径/粒子外径」の平均値を算出した。
【0080】
2.評価
(1)吸水率
150℃で乾燥させた中空無機粒子15gを、30℃90%RHの恒温恒湿チャンバーに48時間静置し、その前後の重量変化から吸水率を求めた。
【0081】
(2)割れ試験
エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製)に対して中空無機粒子の比率が10wt%となる混合物を作製し、スパチュラにより混練した。次に、混練した混合物をさらにギャップ0.08mmに調整したロールミル(卓上ロールミル、小平製作所製)を3回繰り返して行うことで、割れ試験用サンプルを調整した。割れ試験用サンプルは、アセトンでエポキシ樹脂成分を溶出させた後に遠心分離により固液分離し、これを繰り返すことで、割れ試験後の粒子のみを取りだした。割れ試験後の粒子はFE-SEM(JSM-6700F,日本電子株式会社)観察により粒子3000個を確認し、割れが確認された粒子の割合を評価した。割れた粒子の割合が1%未満を◎、1%以上5%未満を〇、5%以上10%未満を△、10%以上を×とした。
【0082】
3.結果
結果を下記の表1に示す。
【0083】
【0084】
表1に示す通り、外殻の厚みが最も薄い部分/外殻の厚みが最も厚い部分が、0.80未満である、比較例1の中空無機粒子は、割れ試験の結果、割れが確認された粒子の割合が10%以上であった。比較例1の中空無機粒子の断面顕微鏡写真を
図5に示す。一方、外殻の厚みが最も薄い部分/外殻の厚みが最も厚い部分が、0.80以上である、実施例1~6の中空無機粒子は、割れ試験の結果、割れが確認された粒子の割合が10%未満であった。実施例1の中空無機粒子の断面顕微鏡写真を
図3に、実施例2の中空無機粒子の断面顕微鏡写真を
図4にそれぞれ示す。
【0085】
実施例の中で比較すると、粒子内径/粒子外径が0.95の実施例6に比べて、0.93以下の実施例1~5の方が、割れ試験の結果が良好であった。この結果から、粒子内径/粒子外径は、0.93以下が好ましいことが分かった。
【0086】
また、実施例では確認していないが、粒子内径/粒子外径が0.55未満になると、即ち、外殻が厚くなるため、強度は向上すると考えられるが、空気層が小さくなることから、低誘電率、低屈折率等を目的とする場合には、粒子内径/粒子外径を0.55以上とすることが好ましいと考えられる。
【0087】
<実験例2>
実験例2では、中空無機粒子の製造方法の違いよって、製造される中空無機粒子にどのような影響が出るかを検証した。
【0088】
1.中空無機粒子の製造
<実施例7および8>
(1)コア粒子分散液の調製
コア粒子の一例として、表2に示す平均粒径およびCV値のポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子を用いて、水とを撹拌混合することにより、表2に示す濃度のコア粒子分散液を得た。
【0089】
(2)シリコーン系化合物水溶液の調製
シリコーン系化合物の一例として、表2に示す量のメチルトリメトキシシラン(MTMS)と、表2に示す量の水とを、40℃で1時間撹拌した溶液に、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSO)被覆用溶液を調製した。
【0090】
(3)分散剤の添加
表2に示す量のコア粒子分散液に、表2に示す量の水と分散剤の一例として5%PVA水溶液を表2に示す量添加し、30℃で10分撹拌した。
【0091】
(4)界面活性剤および触媒の添加
PVAを添加したコア粒子分散液に、カチオン性界面活性剤の一例として表2に示す量の20%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)水溶液または20%ポリエチレンイミン(PEI)水溶液と、触媒の一例として表2に示す量の1Nアンモニア水とを添加した。
【0092】
(5)シリコーン系化合物の添加およびシリコーン系化合物による被覆
分散剤、界面活性剤、および触媒を添加したコア粒子分散液に、前記で調製したPMSO被覆用溶液を、表2に示す時間をかけて滴下した。これによって、コア粒子にPMSOを被覆させた。滴下終了から表2に示す時間が経過した後に、表2に示す量の1Nアンモニア水を添加し、PMSOを固化させることで、PMSO被覆樹脂粒子を得た。得られたPMSO被覆樹脂粒子を遠心分離により固液分離し、メタノールで3回洗浄した。洗浄後のPMSO被覆樹脂粒子を2日間かけて自然乾燥し、さらに110℃で加熱乾燥させた。
【0093】
(6)コア粒子の除去
前記で乾燥させたPMSO被覆樹脂粒子を、電気炉により、表2に記載の雰囲気下にて表2に記載の温度で6時間加熱することで、PMSO被覆樹脂粒子中のコア粒子が除去された中空無機粒子を得た。
【0094】
<比較例2>
カチオン性界面活性剤を用いない以外は、実施例1と同様の方法にて、PMSO被覆粒子を得た。得られたPMSO被覆粒子を実施例7と同様の条件下で焼成することによりコア粒子を除去したところ、空隙が露出した粒子となってしまい、中空粒子とはならなかった(
図6参照)。
【0095】
<比較例3>
分散剤とカチオン性界面活性剤の添加の順番を逆にした以外は、実施例7と同様の方法にて、PMSO被覆粒子を得ようとしたが、カチオン性界面活性剤を添加した時点で粒子に凝集が発生してしまい(
図7参照)、単分散粒子を得ることができなかった。
【0096】
2.評価
(1)粒径の測定
実験例1と同様の方法を用いて、粒子70個の粒径を測長し、平均粒子径、CV値、および真球度を算出した。
【0097】
(2)外殻の厚みの測定
実験例1と同様の方法を用いて、「外殻厚さMin/外殻厚さMax」および「粒子内径/粒子外径」を算出した。
【0098】
(3)吸水率
実験例1と同様の方法を用いて、吸水率を求めた。
【0099】
(4)割れ試験
実験例1と同様の方法を用いて、割れ試験を行った。
【0100】
3.結果
結果を下記の表2に示す。
【0101】
【0102】
4.考察
表2に示す通り、被覆工程において、分散剤の添加後に、カチオン性界面活性剤を添加した実施例7および8の中空無機粒子は、平均粒子外径が0.05~5μm、外殻の厚みが最も薄い部分/外殻の厚みが最も厚い部分が0.80以上、粒子内径/粒子外径が0.55~0.93、吸水率が2%未満であり、かつ、割れ試験の結果が良好であった。
【0103】
一方、前述の通り、カチオン性界面活性剤を用いなかった比較例2は、空隙が露出した粒子となってしまい、中空粒子を得ることができなかった(
図6参照)。また、分散剤とカチオン性界面活性剤の添加の順番を逆にした比較例3は、カチオン性界面活性剤を添加した時点でPMMA粒子に凝集が発生してしまい(
図7参照)、単分散粒子を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0104】
1:中空無機粒子
11:外殻
12:中空