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7645110コンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及び射出成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及び射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20250306BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021047659
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146610
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-09-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中崎 友喜
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132260(JP,A)
【文献】特開2010-240915(JP,A)
【文献】特開2018-167424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出用の電動モータ、計量及び可塑化用の電動モータ、金型開閉用の電動モータ及び成形品の突き出し用の電動モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態とを観測して得られる状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する各電動モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間を含む設定値の調整量を決定し、
決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記状態情報が入力された場合、設定値の調整量に係る価値情報を出力する学習モデルに、取得した前記状態情報を入力することによって、価値情報を出力させ、
前記学習モデルから出力された価値情報に基づいて、設定値の調整量を決定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
決定した設定値の調整量を送信した後に取得した前記状態情報に基づいて、設定値の調整に対する報酬を算出し、
算出された報酬に基づいて、前記学習モデルを強化学習させる
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
成形品の数量が所定の目標数量条件を満たした場合、報酬を加算し、成形品の数量が前記目標数量条件を満たさない場合、報酬を減算する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
成形品の品質が所定の品質条件を満たした場合、報酬を加算し、成形品の品質が前記品質条件を満たさない場合、報酬を減算する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項3又は請求項4に記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
複数の前記射出成形機を有する施設のデマンド電力、複数の前記射出成形機で消費されるピーク電力又は平均電力が低い程、報酬を加算する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記射出成形機はヒータを備え、
前記射出成形機が有する各電動モータの加速度、加速時間、最高速度、定速運転時間及び前記ヒータの温度を含む設定値の調整量を決定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記射出成形機の設定値の調整許容範囲を示す情報を取得し、
取得した前記調整許容範囲で、設定値の調整量を決定する
処理を前記コンピュータに実行させるための請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
射出用の電動モータ、計量及び可塑化用の電動モータ、金型開閉用の電動モータ及び成形品の突き出し用の電動モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する情報処理方法であって、
複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態とを観測して得られる状態情報を取得し、
取得した前記状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する各電動モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間を含む設定値の調整量を決定し、
決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する
情報処理方法。
【請求項10】
射出用の電動モータ、計量及び可塑化用の電動モータ、金型開閉用の電動モータ及び成形品の突き出し用の電動モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する情報処理装置であって、
複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態とを観測する状態観測部と、
該状態観測部にて観測して得た状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する各電動モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間を含む設定値の調整量を決定する決定部と、
該決定部が決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する送信部と
を備える情報処理装置。
【請求項11】
射出用の電動モータ、計量及び可塑化用の電動モータ、金型開閉用の電動モータ及び成形品の突き出し用の電動モータを有する複数の射出成形機と、
請求項10に記載の情報処理装置と
を備え、
前記情報処理装置は、複数の前記射出成形機の設定値の調整量を前記射出成形機へ送信し、前記射出成形機は前記情報処理装置から送信された調整量を受信し、受信した調整量に基づいて設定値を調整する
射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及び射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、予め登録された製造工程ファイルに基づいて、顧客から要求された注文製品に関する基本データからロット内の成形順序を自動的に計画立案する射出成形スケジューリングシステムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、ネットワークに接続された複数台の射出成形機の射出工程スケジュールを調整し、許容最大電力を超過しないようにするスケジュール調整方法が開示されている。スケジュール調整方法においては、ネットワークに接続された一の射出成形機は、自機の射出工程スケジュールを他の射出成形機へブロードキャスト送信する。他の射出成形機はブロードキャストされた射出工程スケジュールを受信し、受信した射出工程スケジュールに基づいて、許容最大電力に収まるように自機の射出工程スケジュールを決定する。
【0004】
特許文献3には、複数の射出成形機が接続されたワークステーションに、各種成形不良が生じたときの成形条件プログラムを格納しておき、各射出成形機における成形条件出しを支援するオンラインAI管理システムが開示されている。
【0005】
特許文献4には、機械学習装置を用いて射出成形の動作状態から、射出成形機の異常を判定する状態判定装置が開示されている。
【0006】
特許文献5には、複数台の射出成形機における使用電力を測定し、最大許容電力量に基づいて、電力削減措置の要否を判断し、必要に応じて射出成形機へ電力削減措置の実行を指示する電力管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-262622号公報
【文献】特開2011-121283号公報
【文献】特開平2-143825号公報
【文献】特開2018-167424号公報
【文献】特開2010-240915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、生産数量及び品質又は電力を考慮しながら、射出成形機が有するモータの加速度、加速時間等の設定値を調整する技術は開示されていない。
【0009】
本発明の目的は、所要の生産数量及び品質を維持し、又はデマンド電力若しくは使用電力を低減することができ、生産効率又は使用電力を最適化することができるコンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及び射出成形システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本態様に係るコンピュータプログラムは、モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態との少なくとも一方を観測して得られる状態情報を取得し、取得した前記状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する前記モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間の少なくとも一つを含む設定値の調整量を決定し、決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する処理を前記コンピュータに実行させる。
【0011】
本態様に係る情報処理方法は、モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する情報処理方法であって、複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態との少なくとも一方を観測して得られる状態情報を取得し、取得した前記状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する前記モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間の少なくとも一つを含む設定値の調整量を決定し、決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する。
【0012】
本態様に係る情報処理装置は、モータを有する複数の射出成形機それぞれの設定値を調整する情報処理装置であって、複数の前記射出成形機それぞれの設定値、複数の前記射出成形機によって製造された成形品の数量及び品質と、複数の前記射出成形機で消費される電力に係る状態との少なくとも一方を観測する状態観測部と、該状態観測部にて観測して得た状態情報に基づいて、複数の前記射出成形機が有する前記モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間の少なくとも一つを含む設定値の調整量を決定する決定部と、該決定部が決定した設定値の調整量を前記射出成形機へ送信する送信部とを備える。
【0013】
本態様に係る射出成形システムは、モータを有する複数の射出成形機と、前記情報処理装置とを備え、前記情報処理装置は、複数の前記射出成形機の設定値の調整量を前記射出成形機へ送信し、前記射出成形機は前記情報処理装置から送信された調整量を受信し、受信した調整量に基づいて設定値を調整する。
【発明の効果】
【0014】
上記によれば、所要の生産数量及び品質を維持し、又はデマンド電力若しくは使用電力を低減することができ、生産効率又は使用電力を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る射出成形システムの構成例を示すブロック図である。
図2】射出成形システムを構成する射出成形機の詳細構成を示すブロック図である。
図3】射出成形システムを構成する測定部の詳細構成を示すブロック図である。
図4】射出成形システムの機能を概念的に示す説明図である。
図5】学習モデルの構成を概念的に示すブロック図である。
図6】成形サイクルにおける各工程の消費電力を時系列的に示した概念図である。
図7】設定値調整前の電動モータの動作と消費電力を示すグラフである。
図8】設定値調整後の電動モータの動作と消費電力を示すグラフである。
図9】情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図10】情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図11】報酬の算出処理手順を示すフローチャートである。
図12】異なる成形品を製造している2台の射出成形機の動作終了タイミングの改善例を示す概念図である。
図13】設定値の調整状況を示すモニタ画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るコンピュータプログラム、情報処理方法、情報処理装置及び射出成形システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態及び変形例の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
図1は、本実施形態に係る射出成形システムの構成例を示すブロック図、図2は、射出成形システムを構成する射出成形機2の詳細構成を示すブロック図、図3は、射出成形システムを構成する測定部4の詳細構成を示すブロック図である。本実施形態に係る成形装置システムは、情報処理装置1と、工場に設置された複数の射出成形機2と、工場電力測定器3と、測定部4とを備える。複数の射出成形機2、工場電力測定器3及び測定部4は、有線又は無線の通信線を介して情報処理装置1に接続されており、情報処理装置1は各射出成形機2、工場電力測定器3及び測定部4との間で各種情報を送受信し、成形条件を最適化する。なお、情報処理装置1は、射出成形機2の制御装置22を介して測定部4と情報を送受信するように構成してもよい。特に、本実施形態に係る射出成形システムは、射出成形機2が有するモータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間等の設定値、ヒータ温度を調整することによって、所要の生産数量及び品質を維持しながらデマンド電力及び使用電力を低減することができ、生産効率及び使用電力を最適化することを可能にするものである。
【0018】
情報処理装置1は、コンピュータであり、ハードウェア構成として処理部11、記憶部12及び通信部13を備える。処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。処理部11は、後述の記憶部12が記憶するコンピュータプログラムPを実行することにより、本実施形態に係る情報処理方法を実施し、状態観測部11a、決定部11b、送信部11c、報酬算出部11d、強化学習部11eとして機能する(図4参照)。各機能部の詳細は後述する。なお、情報処理装置1の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
なお、情報処理装置1は、図示しないネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、情報処理装置1は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0019】
記憶部12は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部12は、本実施形態に係る情報処理方法をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムPを記憶している。また、記憶部12は、射出成形機2の設定値の調整を強化学習する学習モデル10を記憶する。学習モデル10の詳細は後述する。
本実施形態に係るコンピュータプログラムPは、記録媒体14にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部12は、図示しない読出装置によって記録媒体14から読み出されたコンピュータプログラムPを記憶する。記録媒体14はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体14はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体14は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバから本実施形態に係るコンピュータプログラムPをダウンロードし、記憶部12に記憶させても良い。
【0020】
通信部13は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部13は、有線又は無線の通信ネットワークを介して複数の射出成形機2、工場電力測定器3及び測定部4に接続されており、処理部11は通信部13を介して射出成形機2、工場電力測定器3及び測定部4との間で各種情報を送受信することができる。なお、通信部13は、制御装置22を介して測定部4と情報を送受信するように構成してもよい。
【0021】
工場電力測定器3は、複数台の射出成形機2、情報処理装置1及び工場内のその他の各種電気機器で消費される電力を測定し、工場で消費される総消費電力を示す情報を情報処理装置1へ送信する。総消費電力は工場におけるデマンド電力(デマンド値)を算出する元になる情報である。デマンド電力は、所定のデマンド時間(30分)の平均消費電力として計量される値である。電力料金は、基本料金と実際に使用した電力量で決まる電力量料金からなり、デマンド電力は、この基本料金の算定根拠として利用される。具体的には、1か月間の最も大きなデマンド電力がその月の最大デマンド値となり、例えば、直近12か月の最大デマンド値によって基本料金が決定される。基本料金に影響するデマンド値を低減するためには、射出成形機2の消費電力のみを監視するのみでは不十分であるため、工場電力測定器3は、工場全体での総消費電力を測定している。
【0022】
射出成形機2は、図示しない射出装置本体と、当該射出装置本体の前方に配置される型締装置とを備える。射出装置本体は、加熱シリンダと、当該加熱シリンダを加熱するためのヒータ20と、加熱シリンダに樹脂材料を投入するためのホッパ、当該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュと、当該スクリュを軸方向に駆動する射出用電動モータ21aと、当該スクリュを回転方向に駆動する計量及び可塑化用電動モータ21bと等から構成されている。型締装置は、金型を開閉させ、射出装置本体から射出された溶融樹脂が金型に充填される際、金型が開かないように金型を締め付けるトグル機構と、当該トグル機構を駆動する金型開閉用電動モータ21cと、金型から成形品を突き出すための突き出し用電動モータ21dとを備える。以下、射出用電動モータ21a、計量及び可塑化用電動モータ21b、金型開閉用電動モータ21c、及び突き出し用電動モータ21dを総称して電動モータ21と呼ぶ。
【0023】
また、射出成形機2は、射出装置本体の動作を制御する制御装置22を備える。制御装置22は、オペレータによる操作を受け付け、射出成形機2の動作を制御する。オペレータは制御装置22の操作パネルを操作することによって、射出成形機2の成形条件を定める設定値を入力することができる。成形条件である設定値には、例えば金型内樹脂温度、シリンダ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、中間時間(成形サイクル間の待機時間)、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等が含まれる。
特に、本実施形態に係る調整対象の設定値としては、例えば射出用電動モータ21a、計量及び可塑化用電動モータ21b、金型開閉用電動モータ21c及び突き出し用電動モータ21dの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間が含まれる。なお、加速度及び加速時間には、マイナスの加速度及び加速時間、つまり各電動モータ21の減速度及び減速時間が含まれるものとする。また、本実施形態に係る調整対象の設定値には、ヒータ温度が含まれる。更に、成形サイクル間の待機時間である中間時間、電動モータ21を駆動する半導体の駆動キャリア周波数、電動モータ21の休止時間を調整対象の設定としてもよい。
【0024】
更に、制御装置22は、本実施形態に係る情報処理方法による設定値の調整許容範囲を受け付ける。調整許容範囲は、情報処理装置1が自動で調整することが可能な設定値の調整量の上限及び下限を示す情報である。オペレータは制御装置22の操作パネルを操作することによって、上記設定値の調整許容範囲を入力することができる。
制御装置22は、成形品の基本情報と、射出成形機2の設定値と、当該設定値の調整許容範囲と、射出成形機2における消費電力と、加熱シリンダの温度と、単位時間当たりに製造される成形品の数量及び品質を示す情報と、射出成形機2の識別子とを示す情報を情報処理装置1へ送信する。情報処理装置1は、後述するように制御装置22から送信された情報を受信し、受信した情報に基づいて、所要の生産数量及び品質を維持しつつ、ピーク電力、デマンド電力及び平均消費電力を低減させる各射出成形機2の設定値の調整量を算出し、算出した調整量を各射出成形機2の制御装置22へ送信する。制御装置22は、情報処理装置1から送信された調整量を受信し、受信した調整量に基づいて、中間時間、ヒータ温度、各電動モータ21の加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間、休止時間、半導体の駆動キャリア周波数等の設定値を調整する。制御装置22は、調整量の受信及び調整制御をリアルタイムで実行する。
【0025】
測定部4は、射出装置本体及び成形品の状態に係る物理量を測定する測定装置である。物理量には、温度、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、画像データ、トルク、力、歪、消費電力等がある。特に、本実施形態に係る測定部4は、成形機電力測定部4a、温度測定部4b、数量測定部4c、品質測定部4d等を備える。
【0026】
成形機電力測定部4aは、射出成形機2における消費電力を測定し、測定して得た情報を制御装置22へ出力する。温度測定部4bは、加熱シリンダの温度を測定し、測定して得た情報を情報処理装置1へ送信する。数量測定部4cは、射出成形機2によって成形される単位時間当たりの数量を測定し、測定して得た情報を情報処理装置1へ送信する。数量測定部4cは、例えば撮像装置、光センサ等を備え、成形品の数量を計測し、計測して得た情報を情報処理装置1へ送信する。品質測定部4dは、成形品の品質を特定し、測定して得た情報を情報処理装置1へ送信する。品質測定部4dは、例えば、撮像装置、レーザ変位センサ等の光学的計測器、重量計、強度計測器等を備える。
品質測定部4dは、例えば成形品を撮像して得たカメラ画像、レーザ変位センサにて得た成形品の変形量によって、成形品のバリ、ヒケ、その他の変形に係る品質異常を特定することができる。また、品質測定部4dは、光学的計測器にて得られた成形品の色度、輝度等の光学的計測値、重量計にて計測された成形品の重量、強度計測器にて測定された成形品の強度等に基づいて、成形品の品質を特定することができる。
なお、成形機電力測定部4a、温度測定部4b、数量測定部4c又は品質測定部4dは、測定して得た情報を制御装置22へ出力し、制御装置22を介して情報を情報処理装置1へ送信してもよい。また、測定部4は、射出成形機2に内蔵又は実装されていてもよい。
【0027】
図4は、射出成形システムの機能を概念的に示す説明図である。情報処理装置1が有する各機能部及び学習モデル10について説明する。状態観測部11aは、情報処理装置1及び工場電力測定器3等から送信された情報を取得する。具体的には、状態観測部11aは、情報処理装置1から送信された射出成形機2の複数の設定値と、各設定値の調整許容範囲と、射出成形機2における消費電力と、加熱シリンダの温度と、単位時間当たりに製造される成形品の数量及び品質を示す情報、射出成形機2の識別子を取得する。また、状態観測部11aは、工場電力測定器3から送信され工場の総消費電力を示す情報を取得する。更に、状態観測部11aは、目標条件を取得する。目標条件は、例えば、所定期間内に製造すべき成形品の目標数量を示す目標数量条件と、成形品に求められる成形品品質条件と、工場における目標デマンド電力と、目標ピーク電力と、目標平均電力とを取得する。目標条件は、射出成形機2から取得してもよいし、複数の射出成形機2の動作を管理している他の装置から取得してもよいし、情報処理装置1に入力されるものであってもよい。
状態観測部11aは、射出成形機2、工場電力測定器3等から取得した各種情報を状態情報として学習モデル10及び報酬算出部11dに与える。
【0028】
図5は、学習モデル10の構成を概念的に示すブロック図である。学習モデル10は例えばDQN(Deep Q Network)である。学習モデル10は、状態観測部11aから与えられた状態情報が入力される入力層10aと、状態情報の特徴量を抽出する中間層10bと、複数台の射出成形機2それぞれの設定値の調整量に係る価値情報を出力する出力層10cとを有する。価値情報は、例えば、ある状態において、ある設定値を特定の調整量で調整する行動を取ったときの価値、即ち状態行動価値(Q値)である。
【0029】
入力層10aは、目標条件、複数台の射出成形機2の設定値、電力情報、成形品の数量、成形品の品質、ヒータ温度等が入力される複数のノードを有し、入力された情報を中間層10bに受け渡す。目標条件は、例えば、工場で所定期間内に製造すべき成形品の目標数量、成形品に求められる成形品の品質と、工場における目標デマンド電力と、目標ピーク電力と、目標平均電力等である。電力情報は、工場における総消費電力と、複数台の射出成形機2それぞれの消費電力を含む。入力層10aに入力される成形品の数量及び品質、並びにヒータ温度は、複数の射出成形機2それぞれで製造される成形品の数量及び品質、複数の射出成形機2それぞれのヒータ温度である。
【0030】
中間層10bは、入力層10aに入力された状態情報を圧縮して現時点の射出成形システムの状態の特徴量を抽出する。なお、作図の便宜上、中間層10bを一つのブロックで図示しているが、中間層10bは複数層であり、各層は複数のノードを有する。
【0031】
出力層10cは、複数の射出成形機2における設定値の調整量に対応する複数のノードを有し、各ノードは、対応する調整量の価値情報を出力する。複数の射出成形機2に設定される設定値は複数あり、各設定値に対する調整量も複数である。図5に示す例では、第1の射出成形機2の設定値Aに対する調整量+ΔAに対応するノードは、設定値Aを調整量+ΔAで調整する価値情報を出力する。同様に、設定値Bに対する調整量-ΔBに対応するノードは、設定値Bを調整量-ΔBで調整する価値情報を出力する。同様に、第2の射出成形機2の複数の設定値についても同様にして、価値情報が出力される。学習モデル10から価値情報が出力される設定値には、複数台の射出成形機2の射出用電動モータ21a、計量及び可塑化用電動モータ21b、金型開閉用電動モータ21c及び突き出し用電動モータ21dの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間、ヒータ温度が含まれる。また学習モデル10から価値情報が出力される設定値に、中間時間、電動モータ21を駆動する半導体の駆動キャリア周波数、電動モータ21の休止時間を含めてもよい。
【0032】
図4に示す決定部11は、学習モデル10から出力される価値情報に基づいて、複数台の射出成形機2それぞれの設定値の調整量を決定する。具体的には、複数台の射出成形機2それぞれの設定値の調整量のうち、決定部11bはQ値が最大の価値情報を出力するノードに対応する設定値及び調整量を、調整対象の設定値及び調整量として決定する。ただし、決定部11bは、設定値の調整量が調整許容範囲内になるように、調整量を決定する。なお、決定部11bは、Q値最大の設定値及び調整量を一つ決定するように構成してもよいし、Q値が大きい所定数の設定値及び調整量を決定するように構成してもよいし、生産数量及び消費電力が大きい射出成形機2の設定値から順に優先滴に設定値及び調整量を決定するように構成してもよいし、各射出成形機2につき設定値及び調整量を一つ決定するように構成してもよいし、複数台の射出成形機2が有する各電動モータ21につき設定値及び調整量を一つ決定するように構成してもよい。
送信部11cは、決定部11bによって決定された調整量、つまり複数台の射出成形機2それぞれの設定値の調整量を各射出成形機2の制御装置22へ送信する。
【0033】
報酬算出部11dは、状態観測部11aから与えられた状態情報に基づいて報酬を算出する。射出成形機2が製造する成形品の数量及び品質が目標数量条件及び目標品質条件を満たす場合、報酬を加算し、目標数量条件及び目標品質条件を満たさない場合、報酬を減算する。また、報酬算出部11dは、デマンド電力が目標デマンド電力より小さい場合、報酬を加算し、目標デマンド電力より大きい場合、報酬を減算する。更に、報酬算出部11dは、複数の射出成形機2で消費されるピーク電力又は平均電力が、目標ピーク電力及び目標平均電力より小さい場合、報酬を加算し、目標ピーク電力及び目標平均電力より大きい場合、報酬を減算する。
【0034】
強化学習部11eは、報酬算出部11dから出力された報酬に基づいて、設定値の調整前に算出した状態行動価値Qと、設定値の調整後の報酬によって得られるTD誤差により、学習モデル10を機械学習させる。価値の更新式は下記式(1)で表される。
【0035】
Q(st,at)←Q(st,at)+α(R+γmaxQ(st+1,at+1)-Q(st,at))…(1)
但し、
st:時間tにおける状態
at:時間tにおける行動(設定値の調整)
Q(st,at):状態行動価値
α:学習係数
R:即時報酬
γ:時間割引率
maxQ(st+1,at+1):次ステップの価値最大の行動選択時の状態行動価値
【0036】
強化学習部11eは、TD誤差、つまり上記式(1)の右辺第2項(TD誤差)がゼロに近づくように、誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、学習モデル10の重み係数を最適化することにより、学習モデル10を機械学習させる。
【0037】
なお、機械学習の方法としてQ学習を説明したが、sarsa等の他の価値反復法を用いてもよい。また、機械学習の方法として方策勾配法等を用いてもよい。更に、学習モデル10としてDQNを説明したが、状態情報と、行動価値とを対応付けたテーブルを用いてもよい。
【0038】
図6は、成形サイクルにおける各工程の消費電力を時系列的に示した概念図である。横軸は時間、縦軸は消費電力を示す。射出成形工程は、主に(1)型閉め工程と、(2)射出工程と、(3)型開工程と、(4)計量(及び可塑化)工程と、(5)突き出し工程とを含み、工程(1)~(5)が連続的に行われ、射出成形サイクルを構成する。図6は、2サイクルにおける各工程の消費電力の時系列的変化を示している。
【0039】
(1)型閉め工程は、型締装置によって金型を閉じる工程であり、金型開閉用電動モータ21cが駆動する。
(2)射出工程は、計量及び可塑化された樹脂を金型へ射出する工程であり、射出用電動モータ21aが駆動する。
(3)型開き工程は、金型内で冷却された成形品を取り出すために金型を開く工程であり、金型開閉用電動モータ21cが駆動する。
(4)計量工程は、型開き工程と並行して、次の射出成形サイクルで出射する樹脂を計量及び可塑化する工程であり、計量及び可塑化用電動モータ21bが駆動する。
(5)突き出し工程は、型開き後、突き出しピンにより金型から成形品を取り出す工程であり、突き出し用電動モータ21dが駆動する。
【0040】
図7は、設定値調整前の電動モータ21における消費電力を示すグラフ、図8は、設定値調整後の電動モータ21における消費電力を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は消費電力を示している。図7及び図8に示すように電動モータ21の消費電力は、モータの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間によって変化させることができる。
【0041】
図9及び図10は、情報処理装置1の処理手順を示すフローチャートである。複数の射出成形機2の動作中、情報処理装置1は以下の処理を実行することによって、各射出成形機2の設定値をリアルタイムで調整する。情報処理装置1は、目標条件を取得する(ステップS11)。情報処理装置1は、射出成形機2から設定値及び調整許容範囲を示す情報を取得する(ステップS12)。情報処理装置1は、複数の射出成形機2から、各射出成形機2における消費電力を示す情報、成形品の数量及び品質を示す情報、ヒータ温度を示す情報を取得する(ステップS13)。情報処理装置1は、工場電力測定器3から総消費電力を示す情報を取得する(ステップS14)。
【0042】
処理部11は、取得した目標条件、各射出成形機2の設定値、消費電力、成形品の数量及び品質、ヒータ温度、並びに工場の総消費電力の情報を学習モデル10に入力することによって、各射出成形機2の設定値の調整量の価値を算出する(ステップS15)。処理部11は、算出された各調整量の価値及び調整許容範囲に基づいて、調整対象とする設定値及び調整量を決定する(ステップS16)。処理部11は、調整対象として、設定値の調整量が調整許容範囲内であり、かつ価値が大きい設定値の調整量を決定する。次いで、処理部11は、決定された調整量を一又は複数の射出成形機2へ送信する(ステップS17)。射出成形機2の制御装置22は、情報処理装置1から送信された調整量を受信し、受信した調整量に基づいて設定値を変更し、変更後の設定値を用いて射出成形機2の成形処理を制御する。
【0043】
次いで、情報処理装置1の処理部11は、設定値の調整した後、複数の射出成形機2から、各射出成形機2における消費電力を示す情報、成形品の数量及び品質を示す情報、ヒータ温度を示す情報を取得する(ステップS18)。情報処理装置1は、工場電力測定器3から総消費電力を示す情報を取得する(ステップS19)。そして、処理部11は、取得した各種状態情報に基づいて報酬を算出する(ステップS20)。
【0044】
図11は、報酬の算出処理手順を示すフローチャートである。以下、説明のため、報酬を加減算する要素毎にステップを分けて説明するが、言うまでもなく関数又はテーブルを用いて報酬を1ステップで算出してもよい。
【0045】
処理部11は、目標電力に対する、実際に測定された工場のデマンド電力、各射出成形機2の消費電力に基づくピーク電力及び平均電力に応じて報酬を加減算する(ステップS51)。具体的には、処理部11は、測定されたデマンド電力が目標デマンド電力以下である場合、報酬を加算し、目標デマンド電力を越えた場合、報酬を減算する。同様にして、処理部11は、ピーク電力及び平均電力が、目標ピーク電力及び目標平均電力以下である場合、報酬を加算し、目標ピーク電力及び目標平均電力を越えた場合、報酬を減算する。
【0046】
また、処理部11は、目標数量条件に対する成形品の数量に応じて報酬を加減算する(ステップS52)。具体的には、射出成形機2によって製造される成形品の数量が目標数量条件を満たす場合報酬を加算し、目標数量条件を満たさない場合、報酬を減算する。
【0047】
更に、処理部11は、目標品質条件に対する成形品の品質に応じて報酬を加減算する(ステップS53)。具体的には、射出成形機2によって製造される成形品の品質が目標品質条件を満たす場合報酬を加算し、目標品質条件を満たさない場合、報酬を減算する。
【0048】
更にまた、処理部11は、目標ヒータ温度に対する、測定されたヒータ温度に応じて報酬を加減算する(ステップS54)。具体的には、実際に測定された射出成形機2のヒータ温度が目標ヒータ温度から乖離した場合、報酬を減算する。
【0049】
図9に戻り、報酬の算出を終えた処理部11は、算出された報酬に基づいて、例えばTD誤差が小さくなるように学習モデル10を強化学習させる(ステップS21)。
【0050】
次いで、処理部11は、所定の処理終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS22)。終了条件を満たすと判定した場合(ステップS22:YES)、処理部11を終える。処理終了条件を満たさないと判定した場合(ステップS22:YES)、処理部11は処理をステップS13へ戻す。
【0051】
以上の処理により、複数台の射出成形機2における成形工程中、各射出成形機2の設定値がリアルタイムで調整され、成形条件の最適化が図られる。具体的には、所要の生産数量及び品質を維持しながらデマンド電力、ピーク電力及び平均電力を低減することができ、生産効率及び使用電力を最適化することができる。
【0052】
図12は、異なる成形品を製造している2台の射出成形機2の動作終了タイミングの改善例を示す概念図である。図12に示す例では、2台の射出成形機2が動作しており、所定の稼働時間で第1の射出成形機2が3サイクル、第2の射出成形機2が5サイクル動作している。2台の射出成形機2は異なる種類の成形品を製造している。
図12中上図は設定値の調整前の成形サイクルを示しており、下図は設定値の調整前の成形サイクルを示している。所要の生産数量及び品質を維持しながらデマンド電力、ピーク電力及び平均電力が低減するように各電動モータ21の加速度、加速時間、中間時間等が調整されると、自ずと各射出成形機2のサイクル時間が長くなる。そして、所定の動作終了時点で、第1及び第2の射出成形機2から所要数量の成形品を製造することが求められている場合、第1及び第2の射出成形機2の動作終了時点が揃うように電動モータ21の設定値が調整される。このように、第1の射出成形機2による所要数量の成形品の生産と、第2の射出成形機2による所要数量の成形品の生産とが同時に終了するため、余剰在庫の低減に寄与することができる。
【0053】
なお、情報処理装置1は、複数の射出成形機2が有する複数の電動モータ21の設定値の調整状況を図示しない表示装置に表示するように構成してもよい。
【0054】
図13は、設定値の調整状況を示すモニタ画面の一例を示す模式図である。モニタ画面は、複数の射出成形機2の稼働状況を示す稼働状況表示部91と、各射出成形機2における設定値の調整量を示す調整量表示部92とを有する。
稼働状況表示部91は、設定値の調整前の稼働状況を実線で表示し、設定値調整後の稼働状況を破線で表示する。稼働状況は、例えば、複数の射出成形機2のサイクルタイム及び中間時間を矢印画像の長さ及び矢印画像間の間隔で表示している。
調整量表示部92は、各射出成形機2における射出用電動モータ21a、計量及び可塑化用電動モータ21b、金型開閉用電動モータ21c、及び突き出し用電動モータ21dそれぞれの加速度、加速時間、最高速度、定速運転時間の設定値及び調整量を表示する。
【0055】
また、射出成形機2の制御装置22が、自機における設定値及び調整量を表示するように構成してもよい。
【0056】
このように構成された本実施形態に係る射出成形システムによれば、複数台の射出成形機2が有する電動モータ21の加速度、加速時間、最高速度又は定速運転時間、ヒータ温度、中間時間等に関する設定値を調整することによって、所要の生産数量及び品質を維持しながらデマンド電力及び使用電力を低減することができ、生産効率及び使用電力を最適化することができる。
【0057】
具体的には、射出成形機2の射出用電動モータ21a、計量及び可塑化用電動モータ21b、金型開閉用電動モータ21c及び突き出し用電動モータ21dの加速度、加速時間、最高速度及び定速運転時間、ヒータ温度等、細かな設定値を調整することによって、生産効率及び使用電力を最適化することができる。
【0058】
また、稼働時間終了時点で各射出成形機2の成形サイクルの終点が揃うように調整され、余剰在庫を削減することもできる。
【0059】
更に、情報処理装置1は、設定値の調整方法を強化学習し、リアルタイムで射出成形機2の設定値を調整することができる。特にDQNを用いることにより、複数台の射出成形機2における複数の設定値を適切に調整することができる。
【0060】
更に、情報処理装置1はオペレータによって設定された各設定値の調整許容範囲で、設定値を調整する構成であるため、射出成形機2の安定的な動作を担保した上で、強化学習により生産効率及び使用電力を最適化することができる。
【0061】
なお、本実施形態では、設定値の調整を射出成形システムが自動で実行する例を説明したが、最終的な設定値の調整操作をオペレータが実行するように構成してもよい。例えば、射出成形機2の制御装置22は、情報処理装置1から射出成形機2へ送信された調整量を表示し、設定値の調整操作及び決定をオペレータより受け付け、受け付けた調整量により設定値を変更するように構成してもよい。また、一部の設定値についてはオペレータが手動で調整するように構成してもよい。更に、所要の生産数量及び品質を維持しながらデマンド電力及び使用電力を低減する例を説明したが、生産数量及び品質と、消費電力との少なくとも一方に基づいて生産効率又は使用電力を最適化するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 情報処理装置
2 射出成形機
3 工場電力測定器
10 学習モデル
10a 入力層
10b 中間層
10c 出力層
11 処理部
11a 状態観測部
11b 決定部
11c 送信部
11d 報酬算出部
11e 強化学習部
12 記憶部
13 通信部
14 記録媒体
20 ヒータ
21 電動モータ
21a 射出用電動モータ
21b 計量及び可塑化用電動モータ
21c 金型開閉用電動モータ
21d 突き出し用電動モータ
22 制御装置
4 測定部
4a 成形機電力測定部
4b 温度測定部
4c 数量測定部
4d 品質測定部
9 モニタ画面
91 稼働状況表示部
92 調整量表示部
P コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13