IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】基板処理装置、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20250306BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250306BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
G03F7/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021052417
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022150023
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
(72)【発明者】
【氏名】有馬 直子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-016620(JP,A)
【文献】特開2014-036101(JP,A)
【文献】特開2012-204546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
G03F 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部と、
前記基板処理部から排出された前記処理液を回収する回収槽と、
前記基板処理部および前記回収槽を接続する回収配管と、
前記回収配管内の前記処理液および前記回収槽内の前記処理液の少なくとも一方を第1温度に加熱して前記処理液中のオゾン濃度を低減する加熱部材と、
前記回収槽内の前記処理液を前記基板処理部に供給する供給配管系と、
前記供給配管系にオゾンガスを供給し、前記供給配管系を通過する前記オゾン濃度が低減された処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス配管と備える、基板処理装置。
【請求項2】
オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部と、
前記基板処理部から排出された前記処理液を回収する回収槽と、
前記基板処理部および前記回収槽を接続する回収配管と、
前記回収配管において前記回収配管内の前記処理液を加熱する回収配管ヒータおよび前記回収槽において前記回収槽内の前記処理液を加熱する回収槽ヒータの少なくとも一方を含み、前記処理液を第1温度に加熱する加熱部材と、
前記回収槽内の前記処理液を前記基板処理部に供給する供給配管系と、
前記供給配管系にオゾンガスを供給し、前記供給配管系を通過する前記処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス配管と備える、基板処理装置。
【請求項3】
前記供給配管系を通過する前記処理液の温度を前記第1温度よりも低い第2温度に調整する温調部材をさらに備える、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1温度が、150℃以上で、かつ、200℃以下の温度であり、
前記第2温度が、80℃以上で、かつ、130℃以下の温度である、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記温調部材が、前記供給配管系において前記オゾンガス配管よりも上流側に接続されている、請求項またはに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液が硫酸を含有する硫酸含有液である、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板が、主面を有するシリコン層と、前記シリコン層の前記主面の保護領域上に形成され、オゾンが溶解されている前記硫酸含有液で除去可能なレジスト層とを有する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記供給配管系が、前記処理液を貯留する貯留槽と、前記回収槽から前記貯留槽に前記処理液を送る上流供給配管と、前記オゾンガス配管が接続され、前記貯留槽内の前記処理液を前記基板処理部に向けて供給する下流供給配管とを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記回収槽内の前記処理液中のオゾン濃度または前記回収槽内において処理液の液面に接する空間中のオゾン濃度を測定するオゾン濃度計をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記回収槽から前記供給配管系への前記処理液の流入の有無を切り替える切替バルブと、
前記オゾン濃度計の検出結果に基づいて前記切替バルブを制御するコントローラとをさらに備え、
前記コントローラは、前記オゾン濃度計の検出濃度が所定の閾値以下である場合に前記切替バルブを開き、前記検出濃度が所定の閾値よりも高い場合に前記切替バルブを閉じる、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部に、供給配管系から処理液を供給する供給工程と、
回収配管を介して前記基板処理部から回収槽に処理液を回収する回収工程と、
前記回収槽内の処理液および前記回収配管を通過する処理液の少なくとも一方を第1温度にまで加熱する加熱工程と、
前記加熱工程によって加熱された処理液を前記供給配管系へ送る送液工程と、
前記供給配管系内の処理液の温度を、前記第1温度よりも低い第2温度に調整する温度調整工程と、
前記温度調整工程によって温度が調整された前記供給配管系内の処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス混合工程とを含む、基板処理方法。
【請求項12】
前記第1温度が、150℃以上で、かつ、200℃以下の温度であり、
前記第2温度が、80℃以上で、かつ、130℃以下の温度である、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記処理液が硫酸を含有する硫酸含有液である、請求項11または12に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置、および、基板を処理する基板処理方法に関する。
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、オゾンガスの微小気泡が混合された硫酸を用いて基板のレジストを除去する基板処理装置が開示されている。下記特許文献1の基板処理装置では、基板のレジスト除去が行われた後に硫酸の濃度が測定され、再利用可能であるか否かが判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-21335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理装置では、硫酸を再利用する際に硫酸に残存しているオゾン濃度を調整していない。そのため、再利用される硫酸中にオゾンが残存している場合には、再利用される硫酸にさらにオゾンガスが混合されるため、基板に供給される硫酸中のオゾンの濃度が想定よりも高くなるおそれがある。
そこで、この発明の1つの目的は、オゾンガスが溶解されている処理液を用いて基板を処理する構成において、処理液中のオゾン濃度を調整しながら処理液を再利用できる基板処理装置、および、基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の一実施形態は、オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部と、前記基板処理部から排出された前記処理液を回収する回収槽と、前記基板処理部および前記回収槽を接続する回収配管と、前記回収配管内の前記処理液および前記回収槽内の前記処理液の少なくとも一方を第1温度に加熱する加熱部材と、前記回収槽内の前記処理液を前記基板処理部に供給する供給配管系と、前記供給配管系にオゾンガスを供給し、前記供給配管系を通過する前記処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス配管とを備える、基板処理装置を提供する。
【0006】
この基板処理装置によれば、基板の処理に用いられた処理液は、回収配管内および回収槽内の少なくとも一方において第1温度まで加熱される。そのため、処理液に含有されているオゾンがオゾンガスとして発生し、処理液中のオゾン濃度が低減される。
回収槽内の処理液は、供給配管系によって基板処理部に供給される。供給配管系を通過する処理液は、基板処理部に供給される前に、オゾンガス配管から供給配管系に供給されるオゾンガスと混合される。そのため、処理液にオゾンガスが溶解し、オゾン濃度が充分に上昇した処理液が基板処理部に供給される。
【0007】
以上のように、基板の処理に用いられた処理液中からオゾンを意図的に除去した後、当該処理液にオゾンガスを溶解させて処理液を基板の処理に再利用できる。したがって、処理液中のオゾン濃度を調整しながら処理液を再利用できる。
この発明の一実施形態は、オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部と、前記基板処理部から排出された前記処理液を回収する回収槽と、前記基板処理部および前記回収槽を接続する回収配管と、前記回収配管において前記回収配管内の前記処理液を加熱する回収配管ヒータおよび前記回収槽において前記回収槽内の前記処理液を加熱する回収槽ヒータの少なくとも一方を含み、前記処理液を第1温度に加熱する加熱部材と、前記回収槽内の前記処理液を前記基板処理部に供給する供給配管系と、前記供給配管系にオゾンガスを供給し、前記供給配管系を通過する前記処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス配管と備える、基板処理装置を提供する。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記供給配管系を通過する前記処理液の温度を前記第1温度よりも低い第2温度に調整する温調部材をさらに備える。
【0008】
この基板処理装置によれば、供給配管系を通過する処理液の温度が、回収槽内の処理液の温度である第1温度(たとえば、150℃以上で、かつ、200℃以下の温度)よりも低い第2温度(たとえば、80℃以上で、かつ、130℃以下の温度)に調整される。すなわち、処理液を第1温度に加熱して処理液中のオゾン濃度を充分に低減させた後に、処理液の温度が第2温度に調整される。充分に温度が低下した処理液にオゾンガス配管から供給配管系に供給されるオゾンガスを混合することで、処理液にオゾンガスを溶解させることができる。このように、処理液からオゾンを充分に除去した後に、処理液中のオゾン濃度を再度上昇させることができる。これにより、供給配管系から基板処理部に供給される処理液中のオゾン濃度を精度良く調整できる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記温調部材が、前記供給配管系において前記オゾンガス配管よりも上流側に接続されている。そのため、オゾンガス配管から供給配管系に供給されるオゾンガスと処理液とが混合される前に、処理液の温度が第2温度に調整されている。そのため、供給配管系に供給されたオゾンガスを処理液に速やかに溶解させることができる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記処理液が硫酸を含有する硫酸含有液である。処理液が硫酸含有液であれば、硫酸含有液にオゾンガスを溶解させることで、レジスト除去処理に適した硫酸オゾン混合液(SOM液)を形成することができる。たとえば、主面を有するシリコン層と、シリコン層の主面の保護領域上に形成されたレジスト層とを有する基板にSOM液を供給することでレジスト層を除去できる。
【0011】
SOM液でレジスト層を除去する際、SOM液中のオゾン濃度が高過ぎると、シリコン層の主面における保護領域以外の領域の表層部が酸化され、意図しない酸化層が形成されるおそれがある。
そこで、基板のレジスト除去処理に用いられた硫酸含有液中からオゾンを意図的に除去した後、当該硫酸含有液にオゾンガスを溶解させれば、硫酸含有液をレジスト除去処理に再利用できる。これにより、シリコン層の表層部の意図しない酸化を抑制できる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記供給配管系が、前記処理液を貯留する貯留槽と、前記回収槽から前記貯留槽に前記処理液を送る上流供給配管と、前記オゾンガス配管が接続され、前記貯留槽内の前記処理液を前記基板処理部に向けて供給する下流供給配管とを含む。
この基板処理装置によれば、回収配管内および回収槽内の少なくとも一方で加熱されてオゾン濃度が低減された処理液を貯留槽に貯留することができる。貯留槽内の処理液は、下流供給配管によって基板処理部に向けて供給される。下流供給配管にオゾンガス配管が接続されているため、処理液は、基板処理部に供給される直前にオゾンガスと混合される。したがって、処理液がオゾンガスと混合された後、基板処理部に供給されるまでの間に、処理液からオゾンガスが発生して処理液中のオゾン濃度が低減することを抑制できる。これにより、供給配管系から基板処理部に供給される処理液中のオゾン濃度を精度良く調整できる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記回収槽内の前記処理液中のオゾン濃度または前記回収槽内において処理液の液面に接する空間中のオゾン濃度を測定するオゾン濃度計をさらに備える。
この基板処理装置によれば、オゾン濃度計によって回収槽内の処理液中のオゾン濃度が直接的または間接的に検出される。したがって、加熱部材による加熱によって、回収槽内の処理液中から充分にオゾンガスが除去されているか否かを判別することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記回収槽から前記供給配管系への前記処理液の流入の有無を切り替える切替バルブと、前記オゾン濃度計の検出結果に基づいて前記切替バルブを制御するコントローラとをさらに備える。そして、前記コントローラは、前記オゾン濃度計の検出濃度が所定の閾値以下である場合に前記切替バルブを開き、前記検出濃度が所定の閾値よりも高い場合に前記切替バルブを閉じる。
【0015】
この基板処理装置によれば、オゾン濃度が閾値よりも高ければ切替バルブが閉じられて回収槽から供給配管系への処理液の流入が禁止される。オゾン濃度が閾値以下である場合には切替バルブが開かれて供給配管系への処理液の流入が許容される。そのため、オゾン濃度が閾値以下である処理液のみを供給配管系へ自動的に流入させることができる。よって、供給配管系内において処理液中のオゾン濃度を一層精度良く調整できる。
【0016】
この発明の他の実施形態は、オゾンが溶解されている処理液で基板を処理する基板処理部に、供給配管系から処理液を供給する供給工程と、回収配管を介して前記基板処理部から回収槽に処理液を回収する回収工程と、回収槽内の処理液の温度が第1温度になるように、前記回収槽内の処理液および前記回収配管を通過する処理液の少なくとも一方を加熱する加熱工程と、前記加熱工程によって加熱された処理液を前記供給配管系へ送る送液工程と、前記供給配管系内の処理液の温度を、前記第1温度よりも低い第2温度に調整する温度調整工程と、前記温度調整工程によって温度が調整された前記供給配管系内の処理液にオゾンガスを混合するオゾンガス混合工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0017】
この基板処理方法によれば上述した実施形態と同様の効果を奏する。
この発明の他の実施形態では、前記第1温度が、150℃以上で、かつ、200℃以下の温度であってもよく、前記第2温度が、80℃以上で、かつ、130℃以下の温度であってもよい。
この発明の他の実施形態では、前記処理液が硫酸を含有する硫酸含有液であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の全体構成を示す模式図である。
図2図2は、前記基板処理装置の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。
図3A図3Aは、前記基板処理装置の動作例を説明するための模式図である。
図3B図3Bは、前記基板処理装置の動作例を説明するための模式図である。
図4A図4Aは、オゾンが溶解された硫酸含有液でレジスト除去処理される前の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図4B図4Bは、オゾンが溶解された硫酸含有液でレジスト除去処理された後の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図5図5は、前記基板処理装置の第1変形例を説明するための模式図である。
図6図6は、前記基板処理装置の第2変形例を説明するための模式図である。
図7図7は、前記基板処理装置の第3変形例を説明するための模式図である。
図8図8は、前記基板処理装置の第4変形例を説明するための模式図である。
図9図9は、前記基板処理装置の第5変形例を説明するための模式図である。
図10図10は、前記基板処理装置の第6変形例を説明するための模式図である。
図11A図11Aは、オゾンが溶解されたアンモニア水で洗浄処理される前の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図11B図11Bは、オゾンが溶解されたアンモニア水で洗浄処理された後の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図12A図12Aは、オゾンが溶解されたフッ酸で洗浄処理される前の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図12B図12Bは、オゾンが溶解されたフッ酸で洗浄処理された後の基板の表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<基板処理装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の全体構成を示す模式図である。
基板処理装置1は、半導体ウェハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉処理装置である。この実施形態では、基板処理装置1は、硫酸とオゾンガスとの混合液である硫酸オゾン混合液(SOM液)によって基板Wの上面(上側の主面)からレジスト層103(後述する図4Aを参照)を剥離するレジスト除去処理を実行するように構成されている。
【0020】
基板処理装置1は、オゾンガスが溶解されている硫酸含有液(処理液)で基板Wを処理する基板処理部2と、基板処理部2から排出された硫酸含有液を回収する回収槽3と、基板処理部2および回収槽3を接続する回収配管4と、回収槽3内の硫酸含有液を基板処理部2に供給する供給配管系5と、供給配管系5にオゾンガスを供給し、供給配管系5を通過する硫酸含有液にオゾンガスを混合するオゾンガス配管6と、オゾンガス配管6に接続されオゾンガスを発生させるオゾンガス発生器7と、基板処理装置1の各部材を制御するコントローラ8(後述する図2を参照)とを含む。
【0021】
基板処理部2は、内部空間を有する箱形のチャンバ10と、チャンバ10内で1枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック11(回転保持部材)と、スピンチャック11に保持されている基板Wの上面に、硫酸含有液を供給する硫酸含有液ノズル12と、スピンチャック11を取り囲む筒状の処理カップ13とを含む。硫酸含有液は、硫酸を含有する液体であり、たとえば、濃硫酸等の硫酸水溶液である。
【0022】
チャンバ10の上壁には清浄空気を送る送風ユニット(図示せず)が設けられている。処理カップ13には、排気ダクト14を介して排気装置(図示せず)が接続されている。排気装置は、処理カップ13の底部から処理カップ13内の気体を吸引する。排気ダクト14には、排気装置が吸引する気体中のオゾンを分解するオゾン除害器15が設けられている。
【0023】
スピンチャック11として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック11は、スピンモータ等の回転駆動部材16と、この回転駆動部材16によって駆動されるスピン軸17と、スピン軸17の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース18とを含む。
スピンベース18は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面18aを含む。上面18aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材19が配置されている。複数個の挟持部材19は、スピンベース18の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0024】
硫酸含有液ノズル12は、たとえば、連続流の状態で硫酸含有液を吐出するストレートノズルである。硫酸含有液ノズル12は、ノズル移動機構20によって水平方向に移動される。ノズル移動機構20は、硫酸含有液ノズル12が先端部に取り付けられたノズルアーム20Aと、ノズルアーム20Aを移動させることにより、硫酸含有液ノズル12を水平移動させるアーム移動機構20Bとを含む。硫酸含有液ノズル12は、たとえば、基板Wの上面に垂直な方向に硫酸含有液を吐出する垂直姿勢でノズルアーム20Aに取り付けられている。ノズルアーム20Aは水平方向に延びている。アーム移動機構20Bは、電動モータ、エアシリンダ等のアクチュエータを含む。
【0025】
回収配管4の上流端は、基板処理部2の処理カップ13に接続されており、回収配管4の下流端は、回収槽3に接続されている。回収配管4の下流端は、回収槽3内の硫酸含有液の液面よりも上方に位置している。回収槽3は、回収槽3内の硫酸含有液の液面に接する内部空間SPを有する。
基板処理装置1は、回収配管4を開閉する回収バルブ21と、回収配管4内を通過する硫酸含有液から不純物を除去する回収フィルタ22と、回収配管4内の硫酸含有液を加熱する回収配管ヒータ23と、回収槽3の内部空間SPを排気する排気配管24と、回収槽3の内部空間SP中のオゾン濃度を測定するオゾン濃度計25と、回収槽3内の硫酸含有液を加熱する回収槽ヒータ26と、回収槽3内の硫酸含有液の温度を測定する回収側温度計27とをさらに備える。
【0026】
回収バルブ21は、回収配管4に介装されている。回収フィルタ22は、回収バルブ21よりも下流側で回収配管4に介装されている。回収配管4において回収配管ヒータ23によって加熱される位置(回収加熱位置4a)は、回収フィルタ22よりも下流側に設定されている。
図示しないが、回収バルブ21は、液体が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。以下で説明する他のバルブも回収バルブ21と同様の構成を有する。
【0027】
回収配管ヒータ23は、たとえば、回収配管4の回収加熱位置4aを外部から加熱することによって、回収加熱位置4aを通過する硫酸含有液を加熱する。回収槽ヒータ26は、たとえば、図1に示すように、回収槽3の壁部に外側面から取り付けられたヒータであってもよい。図1では、回収槽ヒータ26は、回収槽3の側壁の外側面に取り付けられているが、回収槽3の底壁の下側面に取り付けられていてもよいし、底壁および側壁の両方に取り付けられていてもよい。図1とは異なり、回収槽ヒータ26は、回収槽3内の硫酸含有液に浸漬されたヒータであってもよい。回収配管ヒータ23および回収槽ヒータ26は、いずれも、加熱部材の一例である。回収配管ヒータ23および回収槽ヒータ26は、いずれも、回収側ヒータということがある。
【0028】
回収槽3は、上部が閉じられたタンクであり、回収槽3の内部空間SPは、排気配管24を介して外部と繋がっている。オゾン濃度計25は、たとえば、測定器本体25Aと、回収槽3の内部空間SPに位置する先端を有し、回収槽3の内部空間SPの気体を測定器本体25Aに送る気体供給管25Bとを含む。
基板処理部2から排出された硫酸含有液は、回収配管ヒータ23および回収槽ヒータ26によって加熱される。そのため、回収槽3内の硫酸含有液の温度が、第1温度に維持される。第1温度は、たとえば、150℃以上200℃以下である。回収槽ヒータ26は、常時稼働されていなくてもよく、回収側温度計27によって測定される温度に基づいて加熱状態と非加熱状態とに切り替えられてもよい。
【0029】
供給配管系5は、硫酸含有液を貯留する貯留槽30と、回収槽3から貯留槽30に硫酸含有液を送る上流供給配管31と、オゾンガス配管6が接続され、貯留槽30内の硫酸含有液を基板処理部2に向けて供給する下流供給配管32と、下流供給配管32内の硫酸含有液を貯留槽30に戻すことによって貯留槽30内の硫酸含有液を循環させる循環配管33とを含む。循環配管33は、下流供給配管32に分岐接続されている。
【0030】
上流供給配管31の上流端は、回収槽3に接続されており、上流供給配管31の下流端は、貯留槽30に接続されている。下流供給配管32の上流端は、貯留槽30に接続されており、下流供給配管32の下流端は、基板処理部2の硫酸含有液ノズル12に接続されている。循環配管33の上流端は、下流供給配管32に接続されており、下流供給配管32の下流端は、貯留槽30に接続されている。
【0031】
基板処理装置1は、回収槽3内の硫酸含有液を上流供給配管31に送る上流送液ポンプ34と、上流供給配管31を開閉する上流供給バルブ35と、貯留槽30内の硫酸含有液を下流供給配管32に送る上流供給ポンプ36と、下流供給配管32を開閉する下流供給バルブ37と、下流供給配管32内の硫酸含有液の流量を調整する下流供給流量調整バルブ38と、循環配管33に介装され循環配管33を開閉する循環バルブ39とをさらに備える。
【0032】
上流送液ポンプ34は、上流供給配管31に介装されている。ポンプは、液体を吸い込み、その吸い込んだ液体を吐出する装置である。以下で説明する他のポンプも上流送液ポンプ34と同様の構成を有する。
上流供給バルブ35は、上流送液ポンプ34よりも下流側で上流供給配管31に介装されている。上流供給バルブ35は、供給配管系5への硫酸含有液の供給の有無を切り替える切替バルブの一例である。
【0033】
上流供給ポンプ36は、下流供給配管32に介装されている。下流供給流量調整バルブ38は、上流供給ポンプ36よりも下流側でかつ循環配管33の接続位置(循環接続位置32a)よりも上流側で下流供給配管32に介装されている。下流供給バルブ37は、循環接続位置32aよりも下流側で下流供給配管32に介装されている。
基板処理装置1は、オゾンガス配管6を開閉するオゾンガスバルブ40と、オゾンガス配管6内のオゾンガスの流量を調整するオゾンガス流量調整バルブ41とをさらに備える。
【0034】
オゾンガス流量調整バルブ41は、オゾンガス配管6に介装されている。オゾンガスバルブ40は、オゾンガス流量調整バルブ41よりも下流側でオゾンガス配管6に介装されている。
基板処理装置1は、供給配管系5を通過する硫酸含有液の温度を第2温度に調整する温調部材としての供給側ヒータ50と、供給配管系5内の硫酸含有液の温度を測定する供給側温度計51とをさらに備える。第2温度は、第1温度よりも低い温度であり、たとえば、80℃以上で、かつ、130℃以下である。
【0035】
供給側ヒータ50は、常時稼働されていなくてもよく、供給側温度計51によって測定される温度に基づいて加熱状態と非加熱状態とに切り替えられてもよい。第2温度が第1温度よりも低いため、加熱状態から非加熱状態への切り替えによって、供給配管系5内の硫酸含有液の温度を低下させて第2温度に調整することが容易となる。
この実施形態では、供給側ヒータ50は、下流供給配管32内の硫酸含有液を加熱する。下流供給配管32において供給側ヒータ50によって加熱される位置(供給加熱位置32b)は、下流供給配管32において上流供給ポンプ36よりも上流側に位置している。
【0036】
供給側ヒータ50は、たとえば、下流供給配管32の供給加熱位置32bを外部から加熱することによって、供給加熱位置32bを通過する硫酸含有液を加熱する。供給側ヒータ50は、この実施形態とは異なり、貯留槽30内に硫酸含有液に浸漬され貯留槽30内の硫酸含有液を加熱するヒータであってもよいし、貯留槽30の側壁の外側面および底壁の下側面の少なくも一方に取り付けられていてもよい。供給側ヒータ50は、循環配管33内の硫酸含有液を加熱するヒータであってもよい。供給側ヒータ50は、温調部材は、これらのヒータの組み合わせであってもよい。
【0037】
基板処理装置1は、下流供給配管32とオゾンガス配管6とが接続される位置に設けられた流体混合器60と、硫酸含有液供給源75から新たな硫酸含有液(新液)を貯留槽30に補充する補充配管70と、回収配管4に接続され、回収配管4内の硫酸含有液を基板処理装置1外へ排出する排液配管80とをさらに備える。流体混合器60は、たとえば、オゾンガスと硫酸含有液とを撹拌して混合する静止型混合器である。流体混合器60は、下流供給バルブ37よりも下流側で下流供給配管32に介装されている。
【0038】
基板処理装置1は、補充配管70に介装され、補充配管70を開閉する補充バルブ71と、排液配管80に介装され、排液配管80を開閉する排液バルブ81とをさらに備える。排液配管80は、回収バルブ21よりも上流側において回収配管4に接続されている。
図2は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。コントローラ8は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
【0039】
具体的には、コントローラ8は、プロセッサ(CPU)8Aと、制御プログラムが格納されたメモリ8Bとを含む。コントローラ8は、プロセッサ8Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
とくに、コントローラ8は、回転駆動部材16、ノズル移動機構20、回収配管ヒータ23、回収槽ヒータ26、供給側ヒータ50、回収側温度計27、供給側温度計51、オゾン濃度計25、上流送液ポンプ34、上流供給ポンプ36、回収バルブ21、上流供給バルブ35、下流供給バルブ37、下流供給流量調整バルブ38、循環バルブ39、オゾンガスバルブ40、オゾンガス流量調整バルブ41、補充バルブ71、排液バルブ81、オゾン濃度計25等を制御するようにプログラムされている。
【0040】
その他、コントローラ8は、後述する各変形例に係る基板処理装置1に備えられる部材の動作も制御する。
<基板処理装置の動作例>
次に、基板処理装置1の動作例について説明する。図3Aおよび図3Bは、基板処理装置1の動作例を説明するための模式図である。
【0041】
まず、チャンバ10内の基板Wが搬入され、スピンチャック11に基板Wが保持される(基板保持工程)。その後、図3Aに示すように、基板Wがスピンチャック11によって回転され(基板回転工程)、かつ、硫酸含有液ノズル12が処理位置に配置される。処理位置は、たとえば、基板Wの上面の中央領域に硫酸含有液が着液する位置である。硫酸含有液ノズル12が処理位置に位置する状態で、オゾンガスバルブ40および下流供給バルブ37が開かれる。オゾンガスバルブ40および下流供給バルブ37が開かれることによって、流体混合器60内で硫酸含有液とオゾンガスとが混合される(オゾンガス混合工程)。
【0042】
流体混合器60内で硫酸含有液とオゾンガスとが混合されることによって、硫酸含有液にオゾンガスが溶解される。流体混合器60内で形成されたSOM液は、硫酸含有液ノズル12から吐出され、回転状態の基板Wの上面に供給される(供給工程)。すなわち、供給配管系5から基板処理部2に、オゾンが溶解されている硫酸含有液が供給される。
詳しくは後述するが、基板Wの上面に、オゾンガスが溶解されている硫酸含有液が供給されることによって、レジスト層103(後述する図4Aを参照)が溶解されて基板Wからレジスト層103が除去される。
【0043】
基板Wの上面に硫酸含有液が供給されている間、回収バルブ21が開かれた状態で維持される。基板Wの上面に供給された硫酸含有液は、基板Wの回転に起因する遠心力によって、基板Wの外側へ向けて飛散し、処理カップ13によって受けられる。処理カップ13によって受けられた硫酸含有液は、回収配管4を介して回収槽3に回収される(回収工程)。
【0044】
オゾンが溶解されている硫酸含有液は、回収配管4を通過する際に回収配管ヒータ23によって加熱される。回収槽3に回収された硫酸含有液は、回収槽ヒータ26によって加熱される。これにより、回収槽3内の液体の温度が第1温度になる。硫酸含有液が加熱されることによって硫酸含有液に溶解されているオゾンがオゾンガスとして発生し、硫酸含有液中のオゾン濃度が低減される。このように、回収槽3内の硫酸含有液の温度が第1温度になるように、回収槽3内の硫酸含有液および回収配管4を通過する硫酸含有液が加熱される(加熱工程)。
【0045】
硫酸含有液からオゾンガスが発生することによって回収槽3の内部空間SP中のオゾン濃度が上昇する。その一方で、内部空間SPのオゾンガスが排気配管24を介して内部空間SPから排出され内部空間SP中のオゾン濃度が低下する。オゾン濃度計25の検出濃度が閾値よりも小さい場合には、内部空間SPに存在するオゾンガスが充分に低減されていることを意味し、回収槽3内の硫酸含有液に溶解しているオゾンの量が充分に低減されていることを意味する。そのため、コントローラ8は、オゾン濃度計25の検出結果(検出濃度)に基づいて上流供給バルブ35を制御する。
【0046】
詳しくは、コントローラ8は、オゾン濃度計25の検出濃度が所定の閾値よりも高い場合に上流供給バルブ35を閉じ、オゾン濃度計25の検出濃度が所定の閾値以下である場合に上流供給バルブ35を開く。したがって、硫酸含有液の加熱温度、加熱時間等が不充分である場合には、図3Aに示すように、上流供給バルブ35が閉じられている。硫酸含有液の回収を開始した直後である場合、あるいは、硫酸含有液の回収量が多い場合には、硫酸含有液の加熱温度、加熱時間等が不充分となることが予想される。
【0047】
硫酸含有液が充分に加熱されて硫酸含有液からオゾンが充分に除去されると、図3Bに示すように、上流供給バルブ35が開かれる。上流供給バルブ35が開かれることによって、回収槽3内の硫酸含有液が供給配管系5に送られる(送液工程)。詳しくは、回収槽3内の硫酸含有液が、上流供給配管31を介して、貯留槽30に送られる。供給配管系5に流入する硫酸含有液中のオゾン濃度は充分に低減されている。
【0048】
貯留槽30内の硫酸含有液は、下流供給配管32を介して硫酸含有液ノズル12に供給される。硫酸含有液は、下流供給配管32を流れる際に、供給側ヒータ50によって調整される(温度調整工程)。硫酸含有液は、循環配管33によって循環されてもよい。硫酸含有液は、循環配管33によって循環されることによって供給加熱位置32bを複数回通過する。これにより、硫酸含有液は、供給側ヒータ50によって複数回加熱され、硫酸含有液の温度は、適切に調整される(循環加熱工程)。温度調整された硫酸含有液は、硫酸含有液ノズル12へ向かう途中で、流体混合器60内でオゾンガスと混合される(オゾンガス混合工程)。
【0049】
この実施形態とは異なり、レジスト除去処理には、硫酸含有液と過酸化水素水との混合液(SPM液)を用いることが可能である。レジスト除去処理によって、SPM液中の過酸化水素が分解されて水が生成される。そのため、レジスト除去処理後の硫酸含有液を再利用するためには、硫酸含有液から水を蒸発させる必要がある。しかしながら、SPM液から水を除去するための設備は大掛かりとなるおそれがある。
【0050】
そこで、この実施形態では、過酸化水素の代わりにオゾンを含有する硫酸含有液を用いてレジスト除去処理が行われる。そのため、水を除去することなく硫酸含有液を再利用することができる。
さらに、この実施形態によれば、レジスト除去処理に用いられた硫酸含有液は、回収配管4内および回収槽3内の少なくとも一方において第1温度まで加熱される。そのため、硫酸含有液に含有されているオゾンがオゾンガスとして発生し、硫酸含有液中のオゾン濃度が低減される。
【0051】
回収槽3内の硫酸含有液は、供給配管系5によって基板処理部2に供給される。供給配管系5を通過する硫酸含有液は、基板処理部2に供給される前に、オゾンガス配管6から供給配管系5に供給されるオゾンガスと混合される。そのため、硫酸含有液にオゾンガスが溶解し、オゾン濃度が充分に上昇した硫酸含有液が基板処理部2に供給される。
以上のように、レジスト除去処理に用いられた硫酸含有液中からオゾンを意図的に除去した後、当該硫酸含有液にオゾンガスを溶解させて硫酸含有液をレジスト除去処理に再利用できる。したがって、硫酸含有液中のオゾン濃度を精度良く調整しながら硫酸含有液を再利用できる。
【0052】
またこの実施形態によれば、供給配管系5を通過する硫酸含有液の温度が、回収槽3内の硫酸含有液の温度(第1温度)よりも低い第2温度に調整される。すなわち、硫酸含有液を第1温度に加熱して硫酸含有液中のオゾン濃度を充分に低減させた後に、硫酸含有液の温度が第2温度に調整される。充分に温度が低下した硫酸含有液にオゾンガス配管6から供給配管系5に供給されるオゾンガスを混合することで、硫酸含有液にオゾンガスを溶解させることができる。このように、硫酸含有液からオゾンを充分に除去した後に、硫酸含有液中のオゾン濃度を再度上昇させることができる。これにより、供給配管系5から基板処理部2に供給される硫酸含有液中のオゾン濃度を精度良く調整できる。
【0053】
また、供給配管系5内の硫酸含有液の温度は、常温(たとえば、25℃)よりも適度に高い第2温度に調整されているため、基板処理部2内の基板Wに対してレジスト除去処理を適切に行うことができる。
またこの実施形態によれば、供給側ヒータ50(温調部材)が、供給配管系5においてオゾンガス配管6よりも上流側に接続されている。そのため、オゾンガス配管6から供給配管系5に供給されるオゾンガスと硫酸含有液とが混合される前に、硫酸含有液の温度が第2温度に調整されている。そのため、供給配管系5に供給されたオゾンガスを硫酸含有液に速やかに溶解させることができる。
【0054】
またこの実施形態によれば、回収配管4内および回収槽3内の両方で加熱されてオゾン濃度が低減された硫酸含有液を貯留槽30に貯留することができる。貯留槽30内の硫酸含有液は、下流供給配管32によって基板処理部2に向けて供給される。下流供給配管32にオゾンガス配管6が接続されているため、硫酸含有液は、基板処理部2に供給される直前にオゾンガスと混合される。したがって、硫酸含有液がオゾンガスと混合された後、基板処理部2に供給されるまでの間に、硫酸含有液からオゾンガスが発生して硫酸含有液中のオゾン濃度が低減することを抑制できる。これにより、供給配管系5から基板処理部2に供給される硫酸含有液中のオゾン濃度を精度良く調整できる。
【0055】
またこの実施形態によれば、オゾン濃度計25によって回収槽3内の硫酸含有液中のオゾン濃度が直接的または間接的に検出される。したがって、回収配管ヒータ23および回収槽ヒータ26による加熱によって、回収槽3内の硫酸含有液中から充分にオゾンガスが除去されているか否かを判別することができる。
またこの実施形態によれば、オゾン濃度が閾値よりも高ければ上流供給バルブ35(切替バルブ)が閉じられて回収槽3から供給配管系5への硫酸含有液の流入が禁止される。オゾン濃度が閾値以下である場合には上流供給バルブ35が開かれて供給配管系5への硫酸含有液の流入が許容される。そのため、オゾン濃度が閾値以下である硫酸含有液のみを供給配管系5へ自動的に流入させることができる。よって、供給配管系5内において硫酸含有液中のオゾン濃度を一層精度良く調整できる。
【0056】
<レジスト除去処理による基板の表面付近の構造の変化>
次に、レジスト除去処理による基板Wの表面付近の構造の変化について説明する。
図4Aは、硫酸含有液でレジスト除去処理される前の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。図4Bは、硫酸含有液でレジスト除去処理された後の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0057】
図4Aを参照して、レジスト除去処理の対象となる基板Wは、たとえば、主面100aを有するシリコン層100を有する。シリコン層100の主面100aは、保護領域101と非保護領域102とを有する。基板Wは、シリコン層100の主面100aの保護領域101上に形成されたレジスト層103と、主面100aの保護領域101上に形成された第1酸化シリコン層104と、第1酸化シリコン層104上に形成された第1ポリシリコン層105と、主面100aの非保護領域102上に形成された第2酸化シリコン層106と、第2酸化シリコン層106上に形成された第2ポリシリコン層107とを有する。レジスト層103は、第1酸化シリコン層104および第1ポリシリコン層105を被覆している。基板Wは、非保護領域102においてシリコン層100の主面100aの表層部に形成された第1導電型(たとえば、n型)の第1不純物領域108と、第1不純物領域108から間隔を空けて、非保護領域102においてシリコン層100の主面100aの表層部に形成された第1導電型の第2不純物領域109とを含む。
【0058】
第2ポリシリコン層107および第2酸化シリコン層106は、第1不純物領域108と第2不純物領域109との間の第2導電型(たとえば、p型)のチャネル領域に対向するようにシリコン層100の主面100a上に形成されたプレーナゲート構造を構成していてもよい。その場合、第1不純物領域108および第2不純物領域109が、それぞれ、ドレイン領域およびソース領域として機能する。
【0059】
硫酸含有液によるレジスト除去処理が行われることによって、図4Bに示すように、基板Wからレジスト層103が除去される。硫酸含有液中のオゾン濃度が高過ぎると、非保護領域102におけるシリコン層100の表層部が酸化される。そのため、第1不純物領域108および第2不純物領域109の表層部も酸化され、酸化膜110が形成される。レジスト除去処理の後に行われる処理で酸化膜110が除去されることによって、ゲートとしての第1ポリシリコン層105と第1不純物領域108および第2不純物領域109の表面との距離が大きくなり、かつ、第1不純物領域108および第2不純物領域109の不純物濃度が低減される。その結果、デバイス不良が生じるおそれがある。具体的には、ドレイン電流が低減されるおそれがある。
【0060】
そこで、基板Wのレジスト除去処理に用いられた硫酸含有液中からオゾンを意図的に除去した後、当該硫酸含有液にオゾンガスを溶解させて硫酸含有液を基板のレジスト除去処理に再利用する構成であれば、シリコン層100の表層部(第1不純物領域108および第2不純物領域109)の意図しない酸化を抑制できる。
<基板処理装置の変形例>
図5図10は、それぞれ、基板処理装置1の第1変形例~第6変形例を説明するための模式図である。
【0061】
図5に示すように、第1変形例に係る基板処理装置1は、供給側ヒータ50の代わりに、供給配管系5内の硫酸含有液を冷却する供給側クーラ52を備えていている。供給側クーラ52は、常時稼働されていなくてもよく、供給側温度計51によって測定される温度に基づいて冷却状態と非冷却状態とに切り替えられてもよい。第2温度が第1温度よりも低いため、非冷却状態から冷却状態への切り替えによって、供給配管系5内の硫酸含有液の温度を低下させて第2温度に調整することが容易となる。
【0062】
この実施形態では、供給側クーラ52は、下流供給配管32内の硫酸含有液を冷却する。下流供給配管32において供給側クーラ52によって冷却される位置(供給冷却位置32c)は、下流供給配管32において上流供給ポンプ36よりも上流側に位置している。
供給側クーラ52は、この実施形態とは異なり、貯留槽30内に硫酸含有液に浸漬され貯留槽30内の硫酸含有液を冷却するクーラであってもよいし、貯留槽30の側壁の外側面および底壁の下側面の少なくも一方に取り付けられていてもよい。供給側クーラ52は、循環配管33内の硫酸含有液を冷却するクーラであってもよい。供給側クーラ52は、温調部材は、これらのクーラの組み合わせであってもよい。
【0063】
第1変形例とは異なり、供給側ヒータ50および供給側クーラ52の両方が設けられていてもよい。
図6に示すように、第2変形例に係る基板処理装置1では、供給配管系5が、貯留槽30および循環配管33を含んでおらず、上流供給配管31および下流供給配管32が一体化された供給配管90を含んでいる。供給配管90は、回収槽3内の硫酸含有液を基板処理部2に供給する。第2変形例に係る基板処理装置1は、回収槽3内の硫酸含有液を供給配管90に送る送液上流供給ポンプ91と、供給配管90内の硫酸含有液を冷却する供給側クーラ52と、供給配管系5内の硫酸含有液の温度を測定する供給側温度計51と、供給配管90を開閉する供給バルブ92と、供給配管90内の硫酸含有液の流量を調整する供給流量調整バルブ93とをさらに備えている。第2変形例では、供給バルブ92が、供給配管系5への硫酸含有液の供給の有無を切り替える切替バルブとして機能する。
【0064】
図7に示すように、第3変形例に係る基板処理装置1では、回収配管ヒータ23が設けられておらず、回収槽ヒータ26が回収側ヒータとして設けられている。図8に示すように、第4変形例に係る基板処理装置1では、回収槽ヒータ26が設けられておらず回収配管ヒータ23が回収側ヒータとして設けられている。このように、回収配管4内の硫酸含有液を第1温度にまで加熱する回収配管ヒータ23(加熱部材)、および、回収槽3内の硫酸含有液を第1温度にまで加熱する回収槽ヒータ26(加熱部材)の少なくとも一方が設けられていればよい。同様に、レジスト除去処理の加熱工程において、回収槽3内の硫酸含有液および回収配管4を通過する硫酸含有液の少なくとも一方が第1温度にまで加熱されればよい。
【0065】
図9に示すように、第5変形例に係る基板処理装置1では、オゾン濃度計25が、回収槽3内の硫酸含有液中のオゾン濃度を測定するように構成されている。第5変形例では、オゾン濃度計25が、測定器本体25Aと、回収槽3内の硫酸含有液の液面よりも下側に位置する先端を有し、回収槽3内の硫酸含有液を測定器本体25Aに送る液体供給管25Cとを含む。
【0066】
図10に示すように、第6変形例に係る基板処理装置1では、複数(この実施形態では2つ)の回収槽3が並列配置されている。
複数の回収槽3は、第1回収槽3Aおよび第2回収槽3Bを含む。第1回収槽3Aおよび第2回収槽3Bは、同様の構成を有している。すなわち、排気配管24、オゾン濃度計25、回収槽ヒータ26、および、回収側温度計27は、第1回収槽3Aおよび第2回収槽3Bの両方に設けられている。
【0067】
回収配管4の上流端は、基板処理部2の処理カップ13(図1を参照)に接続されており、回収配管4の下流端は、第1回収槽3Aに接続されている。上流供給配管31の上流端は、第1回収槽3Aに接続されており、上流供給配管31の下流端は、貯留槽30(図1を参照)に接続されている。
第6変形例に係る基板処理装置1は、回収バルブ21よりも下流側で回収配管4を開閉する下流回収バルブ94と、回収配管4に分岐接続され、第2回収槽3Bに接続される分岐回収配管95と、上流供給配管31に分岐接続され、第2回収槽3Bに接続される分岐供給配管96とをさらに備える。
【0068】
下流回収バルブ94は、回収配管ヒータ23よりも下流側で回収配管4に介装されている。回収配管4において分岐回収配管95が接続される分岐接続位置4bは、回収配管ヒータ23よりも下流側で、かつ、下流回収バルブ94よりも上流側の位置である。上流供給配管31において分岐供給配管96が接続されている分岐接続位置31aは、上流供給バルブ35よりも下流側の位置である。
【0069】
第6変形例に係る基板処理装置1は、分岐回収配管95を開閉する分岐回収バルブ97と、第2回収槽3B内の硫酸含有液を分岐供給配管96に送る分岐送液ポンプ98と、分岐供給配管96を開閉する分岐供給バルブ99とを備えている。分岐回収バルブ97は、分岐回収配管95に介装されている。分岐送液ポンプ98は、分岐供給配管96に介装されており、分岐供給バルブ99は、分岐送液ポンプ98よりも下流側で分岐供給配管96に介装されている。
【0070】
複数の回収槽3が並列配置されている構成において、2つの回収槽3のうち少なくとも1つの回収槽3内の硫酸含有液中のオゾン濃度が充分に低減されていれば、貯留槽30に向けて硫酸含有液を送ることができる。
<硫酸含有液以外の液体による処理>
基板Wの上面に供給する処理液は、硫酸含有液に限られず、アンモニア水またはフッ酸(フッ化水素水)であってもよい。アンモニア水にオゾンガスを溶解させることで洗浄処理に適したアンモニア水オゾン混合液(AOM液)を形成することができる。フッ酸にオゾンガスを溶解させることで、ドライエッチング後の洗浄処理に適したフッ酸オゾン混合液(FOM液)を形成することができる。
【0071】
図11Aは、オゾンが溶解されたアンモニア水で洗浄処理される前の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。図11Bは、オゾンが溶解されたアンモニア水で洗浄処理された後の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
図11Aを参照して、オゾンが溶解されたアンモニア水による洗浄処理の対象となる基板Wは、たとえば、主面100aを有するシリコン層100と、主面100a上に形成された酸化シリコン層111と、酸化シリコン層111上に形成されたポリシリコン層112と、主面100aに形成され酸化シリコン層111およびポリシリコン層112を被覆する層間絶縁膜113と、層間絶縁膜113に形成されたコンタクトホール114に埋設されているコンタクト電極115とを含む。層間絶縁膜113は、たとえば、酸化シリコンおよび窒化シリコンの少なくとも一方によって形成されている。コンタクト電極115は、たとえば、タングステン等の金属である。
【0072】
オゾンが溶解されたアンモニア水による洗浄処理が行われることによって、層間絶縁膜113の表面に付着する異物が洗い流される。アンモニア水中のオゾン濃度が高過ぎると、図11Bに示すように、層間絶縁膜113から露出するコンタクト電極115がエッチングされる。エッチングによりコンタクト電極115の表面が後退することによって、意図しない凹部116が形成されるおそれがある。凹部116の形成によって、デバイス不良が生じるおそれがある。
【0073】
そこで、基板Wの洗浄処理に用いられたアンモニア水中からオゾンを意図的に除去した後、当該アンモニア水にオゾンガスを溶解させれば、アンモニア水を洗浄処理に再利用できる。これにより、基板Wの主面における意図しない凹部116の形成を抑制できる。
図12Aは、オゾンが溶解されたフッ酸で洗浄処理される前の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。図12Bは、オゾンが溶解されたフッ酸で洗浄処理された後の基板Wの表面付近の構造を説明するための模式的な断面図である。
【0074】
図12Aを参照して、オゾンが溶解されたフッ酸による洗浄処理の対象となる基板Wは、たとえば、層間絶縁膜をドライエッチングによって除去した後の基板Wである。オゾンが溶解されたフッ酸による洗浄処理の対象となる基板Wは、具体的には、主面100aを有するシリコン層100と、シリコン層100の主面100aから突出する凸部120と、凸部120の頂部120a上に形成されたパッド酸化物層121と、パッド酸化物層121上に形成された窒化物層122とを含む。凸部120は、シリコンによって形成されている。
【0075】
オゾンが溶解されたフッ酸による洗浄処理が行われることによって、ドライエッチング時のダメージが除去される。オゾンが溶解されたフッ酸中のオゾン濃度が高過ぎると、図12Bに示すように、凸部120の側壁120bがエッチングされる。エッチングにより凸部120の幅が狭くなることによって、デバイス不良が生じるおそれがある。
そこで、基板Wの洗浄処理に用いられたフッ酸中からオゾンを意図的に除去した後、当該フッ酸にオゾンガスを溶解させれば、フッ酸を洗浄処理に再利用できる。これにより、基板Wの主面における意図しない凸部120のエッチングを抑制できる。
【0076】
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、図1に示す形態において、循環バルブ39は、循環接続位置32aよりも上流側において下流供給配管32に介装されていてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、流体混合器60を用いてオゾンガスと硫酸含有液とを混合する。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、流体混合器60の代わりに、硫酸含有液を貯留するタンク内にオゾンガスをバブリングして硫酸含有液にオゾンガスを溶解させるバブリング機構が設けられていてもよい。この場合、オゾンガス配管6は、流体混合器60を介さずに、下流供給配管32に接続される。
【0078】
上述の実施形態では、下流供給配管32において、オゾンガス配管6の接続位置(流体混合器60)よりも上流側に供給加熱位置32b(図1を参照)が設定されている。しかしながら、下流供給配管32において流体混合器60よりも下流側に供給加熱位置32bが設けられていてもよい。
上述の実施形態では、コントローラ8が、オゾン濃度計25の検出濃度が所定の閾値よりも高い場合に上流供給バルブ35を閉じ、オゾン濃度計25の検出濃度が所定の閾値以下である場合に上流供給バルブ35を開く。しかしながら、コントローラ8は、検出濃度が0ppmであるときに上流供給バルブ35を開き、検出濃度が0ppmよりも大きいときに上流供給バルブ35を閉じるように、上流供給バルブ35を制御してもよい。
【0079】
上述の実施形態では、基板処理装置1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉処理装置である。しかしながら、基板処理装置1は、複数枚の基板Wを浸漬槽に貯留された処理液に浸漬して処理する浸漬処理装置であってもよい。
なお、上述の実施形態では、「水平」、「鉛直」といった表現を用いている
が、厳密に「水平」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【0080】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 :基板処理装置
2 :基板処理部
3 :回収槽
3A :第1回収槽
3B :第2回収槽
4 :回収配管
5 :供給配管系
6 :オゾンガス配管
8 :コントローラ
23 :回収配管ヒータ(加熱部材)
25 :オゾン濃度計
26 :回収槽ヒータ(加熱部材)
30 :貯留槽
31 :上流供給配管
32 :下流供給配管
35 :上流供給バルブ(切替バルブ)
50 :供給側ヒータ(温調部材)
52 :供給側クーラ(温調部材)
60 :流体混合器
92 :供給バルブ(切替バルブ)
100 :シリコン層
100a :主面
101 :保護領域
103 :レジスト層
SP :内部空間
W :基板
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B