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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】オレフィン多量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/24 20060101AFI20250306BHJP
   B01J 31/18 20060101ALI20250306BHJP
   B01J 31/34 20060101ALI20250306BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20250306BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250306BHJP
【FI】
C07C2/24
B01J31/18 Z
B01J31/34 Z
C07C11/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021059744
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156184
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 聖一
(72)【発明者】
【氏名】村田 進
(72)【発明者】
【氏名】藤田 照典
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6828161(JP,B1)
【文献】特開2020-111570(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009390(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/005003(WO,A1)
【文献】特開平10-007715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィン多量化反応を行うオレフィン多量体の製造方法。
(A)クロム化合物
(B)下記一般式(1)で表されるアミン化合物
【化1】
(一般式(1)中、R1~R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。
Yは、置換基R5およびR6を有する炭素原子(-CR56-で表される構造)を示す。R5およびR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R5とR6は互いに連結していてもよく、またR1~R4の何れかと連結していてもよい。
Zは1~10の整数を示す。)
(C)ハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1~20のアルコールとを接触させ、次いで下記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物とを接触させて得られる成分
【化2】
(式中、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン原子または水素原子、nは1~3の実数を示し、Rが複数ある場合は各々のRは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合は、各々のXは同じでも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)において、R1はR3およびR4とは連結しておらず、R2はR3およびR4とは連結していないアミン化合物(B)を用いる請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項3】
一般式(1)において、Zが1~3の整数であるアミン化合物(B)を用いる請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項4】
一般式(1)において、Zが1であるアミン化合物(B)を用いる請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン多量化用触媒が、成分(A)~(C)に加えて、下記成分(D)を含む請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
(D)成分(A)~(C)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を担持するための担体。
【請求項6】
帯電防止剤の存在下で、オレフィンの多量化反応を行う請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項7】
オレフィンがエチレンである請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【請求項8】
オレフィン多量体が1-オクテンである請求項1に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた活性を有し、特定のオレフィン多量体の選択性および/または生産効率が高いオレフィン多量化用触媒の存在下で行うオレフィン多量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-オレフィンは、例えばポリオレフィンの原料として広く工業的に用いられる重要な化合物である。例えば1-ヘキセンおよび1-オクテンは、ポリオレフィンの原料として需要が高い。α-オレフィンの製造方法のうち工業化されている方法としては、有機アルミニウムや遷移金属化合物を触媒として使用する方法がある。しかし、工業化されている方法においては、通常、多種類のα-オレフィンの混合物が得られる。このため、各成分の市況の変化に対して柔軟な事業的対応が困難となる場合がある。したがって、目的とするα-オレフィンの選択性の高い製造方法が望まれる。
【0003】
近年、本発明者らは、フェノキシイミン配位子を有する遷移金属錯体化合物を利用して、エチレンの3量化反応によって1-ヘキセンを選択的に製造できる触媒を報告している(例えば特許文献1)。
【0004】
また、1-オクテンを選択的に製造する為の触媒として、リン原子を含有する配位子を用いたクロム系触媒が開示されている(例えば特許文献2~4)。
本出願人もクロム系触媒を用いたオレフィン多量化方法を開示している。(特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/005003号
【文献】国際公開第2004/056479号
【文献】国際公開第2013/137676号
【文献】国際公開第2009/022770号
【文献】国際公開第2019/009390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、従来の触媒では、高い効率、オレフィンの選択性を示すものが多いが、反応条件によってはα-オレフィンの選択性が低下(副生するエチレン重合体が増大)することがある。よって様々の反応条件において、α-オレフィンの選択性が高い触媒やオレフィンの重合方法を準備しておくことが望まれる。好ましくは1-オクテンの選択率が高い方法が望まれる。
【0007】
1-オクテンは、1-ヘキセンと同様にポリオレフィン原料として重要な成分であり、特に高性能ポリオレフィンを製造する場合に重要な成分である。また1-オクテンは、潤滑油の原料としても重要になる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の様な課題に鑑みてされたものである。すなわち本発明の目的は、優れた活性を有し、特に1-オクテンの選択性および/または生産効率が高いオレフィン多量体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の遷移金属化合物、特定の構造を有するアミン化合物および特定の方法で調製される助触媒を含有する触媒が優れた高い活性および/または高い1-オクテンの選択性を有し、この触媒の存在下ではオレフィンの多量化反応を好適に行うことができ、特にオレフィンとしてエチレンを用いた場合はエチレンの4量体である1-オクテンを高活性で得ることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
【0010】
[1]下記成分(A)~(C)を含むオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィン多量化反応を行うオレフィン多量体の製造方法。
(A)クロム化合物
(B)下記一般式(1)で表されるアミン化合物
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(1)中、R1~R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。
【0013】
Yは、置換基R5およびR6を有する炭素原子(-CR56-で表される構造)を示す。R5およびR6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R5とR6は互いに連結していてもよく、またR1~R4の何れかと連結していてもよい。
Zは1~10の整数を示す。)
【0014】
(C)ハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1~20のアルコールとを接触させ、次いで下記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物とを接触させて得られる成分
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン原子または水素原子、nは1~3の実数を示し、Rが複数ある場合は各々のRは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合は、各々のXは同じでも異なっていてもよい。)
【0017】
[2]一般式(1)において、R1はR3およびR4とは連結しておらず、R2はR3およびR4とは連結していないアミン化合物(B)を用いる[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【0018】
[3]一般式(1)において、Zが1~3の整数であるアミン化合物(B)を用いる[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
[4]一般式(1)において、Zが1であるアミン化合物(B)を用いる[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【0019】
[5]前記オレフィン多量化用触媒が、成分(A)~(C)に加えて、下記成分(D)を含む[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
(D)成分(A)~(C)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を担持するための担体。
【0020】
[6]帯電防止剤の存在下で、オレフィンの多量化反応を行う[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
[7]オレフィンがエチレンである[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
[8]オレフィン多量体が1-オクテンである[1]に記載のオレフィン多量体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、例えば低い反応温度であっても優れた活性を有し、特に1-オクテンの選択性および/または生産効率が高いオレフィン多量化用触媒の存在下で行うオレフィン多量体の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明においてオレフィンの多量化とは、オレフィンを2~10量体にすることを意味し、好ましくはオレフィンを3量体~4量体にすることを意味する。
【0023】
<クロム化合物(A)>
本発明に用いるクロム化合物(A)は、通常、クロムの無機塩、有機塩または金属有機錯体である。クロム化合物(A)の具体例としては、塩化クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(III)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(III)、ヨウ化クロム(II)、フッ化クロム(III)、フッ化クロム(II)、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)アセチルアセトナート、クロム(III)トリフルオロアセチルアセトナート、クロム(III)ヘキサフルオロアセチルアセトナートが挙げられる。ただし、クロム化合物(A)はこれらに限定されない。これらの中では、3価のクロム化合物が好ましい。また、ハロゲン原子を含有するクロム化合物も好ましい。
【0024】
<アミン化合物(B)>
本発明に用いるアミン化合物(B)は、下記一般式(1)で表される。
【0025】
【化3】
【0026】
一般式(1)において、R1~R4は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうち2個以上が互いに連結していてもよい。より具体的には、R1~R4が水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリーロキシ基、アリールチオ基、アシル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、イミド基、アミノ基、イミノ基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、メルカプト基、アルミニウム含有基またはヒドロキシ基であることが好ましい。
【0027】
1~R4の少なくとも1つがハロゲン原子である場合、その具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
1~R4の少なくとも1つが炭化水素基である場合、その炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル、アリル(allyl)、イソプロペニルなどの炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数が3~30、好ましくは3~20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニルなどの炭素原子数5~30の環状不飽和炭化水素基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6~30、好ましくは6~20のアリール(aryl)基;トリル、イソプロピルフェニル、t-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-t-ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基;ベンジリデン、メチリデン、エチリデンなどの炭素原子数が1~30、好ましくは5~10のアルキリデン基が挙げられる。
【0028】
1~R4の少なくとも1つが炭化水素基である場合、その炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。その具体例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0029】
1~R4の少なくとも1つが炭化水素基である場合、その炭化水素基は、水素原子が他の炭化水素基で置換されていてもよい。その具体例としては、ベンジル、クミル、ジフェニルエチル、トリチルなどのアリール基置換アルキル基が挙げられる。
【0030】
1~R4の少なくとも1つが炭化水素基である場合、その炭化水素基は、さらに、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチオシアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。中でも、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、アダマンチルなどの炭素原子数1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、特に好ましくは2~10の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1~30、好ましくは1~20のアルキル基、アルコキシ基またはアミノ基、炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1~5個置換した置換アリール基が好ましい。
【0031】
1~R4の少なくとも1つが酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基および/またはリン含有基である場合、それら基の具体例としては、炭化水素基に含まれていてもよい置換基として先に例示したものと同様のものが挙げられる。中でも、酸素含有基、窒素含有基、イオウ含有基が好ましく、酸素含有基、窒素含有基がより好ましい。
【0032】
前記窒素含有基としては、例えば、アミド基、アミノ基、イミド基、イミノ基がある。アミド基の具体例としては、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルベンズアミドが挙げられる。アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジフェニルアミノが挙げられる。イミド基の具体例としては、アセトイミド、ベンズイミドが挙げられる。イミノ基の具体例としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノが挙げられる。
【0033】
前記イオウ含有基としては、例えば、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオエステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基がある。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ、エチルチオが挙げられる。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、ナフチルチオが挙げられる。チオエステル基の具体例としては、アセチルチオ、ベンゾイルチオ、メチルチオカルボニル、フェニルチオカルボニルが挙げられる。スルホンエステル基の具体例としては、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸フェニルが挙げられる。スルホンアミド基の具体例としては、フェニルスルホンアミド、N-メチルスルホンアミド、N-メチル-p-トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0034】
1~R4の少なくとも1つがヘテロ環式化合物残基である場合、そのヘテロ環式化合物残基の具体例としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1~30、好ましくは1~20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基が挙げられる。
【0035】
1~R4の少なくとも1つがホウ素含有基である場合、そのホウ素含有基の具体例としては、炭化水素基に含まれていてもよい置換基として先に例示したものと同様のものが挙げられる。さらに、アルキル基置換ホウ素、アリール基置換ホウ素、ハロゲン化ホウ素、アルキル基置換ハロゲン化ホウ素の基も挙げられる。アルキル基置換ホウ素の基としては、例えば、(Et)2B-、(iPr)2B-、(iBu)2B-、(Et)3B、(iPr)3B、(iBu)3Bがある。アリール基置換ホウ素の基としては、例えば、(C652B-、(C653B、(C653B、(3,5-(CF32633Bがある。ハロゲン化ホウ素の基としては、例えば、BCl2-、BCl3がある。アルキル基置換ハロゲン化ホウ素の基としては、例えば、(Et)BCl-、(iBu)BCl-、(C652BClがある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。また、三置換のホウ素は、配位結合した状態にある場合がある。
【0036】
1~R4の少なくとも1つがアルミニウム含有基である場合、そのアルミニウム含有基の具体例としては、アルキル基置換アルミニウム、アリール基置換アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムの基が挙げられる。アルキル基置換アルミニウムの基としては、例えば、(Et)2Al-、(iPr)2Al-、(iBu)2Al-、(Et)3Al、(iPr)3Al、(iBu)3Alがある。アリール基置換アルミニウムの基としては、例えば、(C652Al-がある。ハロゲン化アルミニウムの基としては、例えば、AlCl2-、AlCl3がある。アルキル基置換ハロゲン化アルミニウムの基としては、例えば、(Et)AlCl-、(iBu)AlCl-がある。ここで、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、iBuはイソブチル基を表す。また、三置換のアルミニウムは、配位結合した状態にある場合がある。
【0037】
1~R4の少なくとも1つがケイ素含有基である場合、そのケイ素含有基の具体例としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基が挙げられる。炭化水素置換シリル基としては、例えば、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ジメチル-t-ブチルシリル、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリルがある。中でも、メチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルフェニルシリル、トリフェニルシリルが好ましく、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリルがより好ましい。炭化水素置換シロキシ基としては、トリメチルシロキシがある。
【0038】
1~R4の少なくとも1つがゲルマニウム含有基および/またはスズ含有基ケイ素含有基である場合、それらの基の具体例としては、先に例示したケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換したものが挙げられる。
【0039】
一般式(1)において、Yは、置換基R5、R6を有する炭素原子(-CR56-で表される構造)を示す。R5、R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これら各基の例は、R1~R4の例と同様である。R5とR6は互いに連結していてもよく、またR1~R4と連結していてもよい。
【0040】
一般式(1)において、Zは1~10の整数を示す。Zは、2~10であることが好ましい場合がある。一方で、Zは好ましくは1~3の整数、より好ましくは1または2、特に好ましくは1である。Zが2以上の場合、複数のYは互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
一般式(1)において、R1~R4のうち2個以上は互いに連結していてもよい。ただし、R1はR3およびR4とは連結しておらず、R2はR3およびR4とは連結していないことが好ましい。このような特定の基が連結していない好ましいアミン化合物としては、例えば、以下の一般式(1A)~(1C)で表される3つの態様のアミン化合物がある。
【0042】
【化4】
(一般式(1A)中、各基の定義は一般式(1)の各基の定義と同じである。ただし、R1~R4は何れの基とも連結していない。)
【0043】
【化5】
(一般式(1B)中、各基の定義は一般式(1)の各基の定義と同じである。ただし、R1とR2は連結し、R3とR4は連結している。)
【0044】
【化6】
(一般式(1C)中、各基の定義は一般式(1)の各基の定義と同じである。ただし、R1とR2は何れの基とも連結しておらず、R3とR4は連結している。)
【0045】
一般式(1)においては、R1~R4は直鎖状または分岐状の基であってもよいし、環状構造を含む基であってもよいし、R1~R4のうち2個以上が互いに連結していて環状構造を形成していてもよい。例えば、R1とR3、R2とR4の何れか片方が連結する(結合する)場合は、結合数は好ましくは4以上であり、R1とR3、R2とR4の両方が連結する(結合する)する場合は結合数は好ましくは3以上である。ただし、一般式(1A)~(1C)で表されるように、R1はR3およびR4とは連結しておらず、R2はR3およびR4とは連結していないことが好ましい。またR1~R4の各々は、環状構造の置換基を有していないこと、すなわち直鎖状または分岐状の基であることが好ましい。R1~R4が直鎖状または分岐状の基(例えば置換基を有していてもよい直鎖状または分岐状の炭化水素基)である場合、その直鎖状または分岐状の基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~15、特に好ましくは3~10である。また、その場合のR1~R4の炭素原子数の合計は、好ましくは8以上である。そのR1~R4は、好ましくは直鎖状である。
【0046】
1~R4が以上の好ましい各基のうちの何れかである場合、オレフィンの反応活性がより高くなる傾向があり、かつオレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)である比較的低沸点のα-オレフィンをより効率的に製造し易くなる傾向がある。ここで原料がエチレンの場合は、その3~4量体はヘキセンおよびオクテンに相当する。すなわち、炭素原子数が10以下のオレフィンの製造に適する傾向がある。
【0047】
本発明のアミン化合物(B)を含むオレフィン多量化触媒を用いると、上記のようなオレフィンの多量体、すなわちオレフィンの2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量の全生成物の生成量に対する割合が高くなる傾向がある。具体的には、この割合は、望ましくは85重量%以上、好ましくは88重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは91重量%以上である。このように、例えば2~5量体(好ましくは3~4量体)の生成量の割合が高い場合は、生成する多量体の種類が少なくなる傾向にある。また、各成分の沸点の差も比較的大きいので蒸留で分離することが容易になる(例えば、1-ヘキセンの沸点は63℃、1-オクテンの沸点は122~123℃)。その結果、製造コストを抑制でき、市況の影響にも対応し易いと考えられる。
【0048】
一方、R1とR2とが同じ構造であり、および/または、R3とR4が同じ構造であることも好ましい。この場合、エチレンの4量体、すなわち1-オクテンの選択率が高くなることがある。例えば、後述する実施例に使用した各アミン化合物(B)のうち、R1~R4が全てメチル基であるアミン化合物(B-1)および(B-11)がこの場合に相当する。
【0049】
1とR2が連結して環構造を形成する場合、および/または、R3とR4が連結して環構造を形成する場合も、R1とR2とが同じ構造であり、および/または、R3とR4が同じ構造であることが好ましい。この場合の「同じ構造」とは、Nから見た環構造が左右対称であること、すなわち環構造のR1側(またはR3側)の構造と、R2側(またはR4側)の構造とが同じであることを意味する。この場合も、エチレンの4量体、すなわち1-オクテンの選択率が高くなることがある。例えば、後述する実施例に使用した各アミン化合物(B)のうち、R1とR2が連結しかつR3とR4が連結して各々5員環を形成しているアミン化合物(B-2)、およびR1とR2が連結しかつR3とR4が連結して各々6員環を形成しているアミン化合物(B-10)がこの場合に相当する。
【0050】
なお、R1とR2が連結している場合、および/または、R3とR4が連結している場合、本発明においては、R1とR2の各々の炭素原子数(および/またはR3とR4の各々の炭素原子数)は、連結構造を構成する炭素原子の数の1/2の地点を境目として定義する。例えば、後述する実施例に使用した各アミン化合物(B)のうち、アミン化合物(B-4)のR1~R4の各々の炭素原子数は3であり、アミン化合物(B-3)のR1およびR3の各々の炭素原子数は3.5、R2およびR4の各々の炭素原子数は2.5である。
【0051】
1とR2とが同じ構造であり、および/または、R3とR4が同じ構造である場合に、より優れた効果が得られる理由は必ずしも明らかではない。ただし、R1~R4は中心金属であるクロム化合物(A)のクロム原子の比較的近傍に位置すると考えられるので、上記のような構造のR1~R4の立体的な影響によって、メタラサイクルへのエチレン配位のし易さや、挿入反応の活性化エネルギーが適切に制御されているのではないかと推測される。
【0052】
本発明において、オレフィン多量化用触媒の性能を総合的に判断する為の指標の一つとして、後述する実施例に記載の1-オクテンの触媒活性が挙げられる。1-オクテンの触媒活性とは、単位時間当たりおよび触媒の単位量当たりの1-オクテンの生成量、すなわち、1-オクテンの生成効率である。なお、この1-オクテンの生成効率は、1-オクテンの選択率とは異なる指標である。
【0053】
さらに、以上説明した好適な各態様においては、エチレンの3量体(1-ヘキセン)や4量体(1-オクテン)の生成効率がより向上するだけでなく、エチレンの反応活性や1-オクテンの効率的な製造の点においても好ましい。
【0054】
本発明においてエチレンの多量体を製造する場合、1-ヘキセンおよび1-オクテンが主生成物となる。そして、両者は蒸留によって分離することが比較的容易である。したがって、先に説明した1-オクテンの生成効率は、工業的な観点から重要な指標となると考えられる。特に、1-ヘキセンと1-オクテンとを併産する為の製造設備を使用する場合、重要な項目となる場合がある。
【0055】
以下にアミン化合物(B)の具体例を示す。ただし、アミン化合物(B)はこれらに限定されない。
【0056】
【化7】
【0057】
【化8】
【0058】
上記各化合物において、Meはメチル基、Etはエチル基、nPrはノルマルプロピル基、iPrはイソプロピル基、Phはフェニル基を示す。上記各化合物のNとNとの間の炭素原子数は1または2であるが、このNとNとの間の炭素原子数を3以上に変更した化合物も使用可能である。
【0059】
アミン化合物(B)としては、市販のアミン化合物を使用してもよい。アミン化合物(B)を合成する場合は、例えば、特定のアミン化合物を一般的な方法でアルキル化またはアリール化することによって、アミン化合物(B)を得ることができる。また、イミン化合物を一般的な方法で還元することによっても、アミン化合物(B)を得ることができる。また本発明においては、複数種のアミン化合物(B)を併用することもできる。
【0060】
本発明のアミン化合物(B)を含むオレフィン多量化触媒を用いると、以上説明したように1-オクテンを効率的に生成できる傾向がある。例えば、生成する炭素原子数が10以下のオレフィン多量体の中で、1-オクテンの割合は、望ましくは40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上、最も好ましくは70重量%以上である。
【0061】
アミン化合物(B)とクロム化合物(A)は、別々に反応器へ添加してもよい。ただし、予めアミン化合物(B)とクロム化合物(A)を反応させることにより形成した遷移金属錯体を、反応器へ添加することが好ましい。例えば、アミン化合物(B)を溶媒に溶解し、これをクロム化合物(A)と混合し、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、-78℃から室温または還流条件下で、約5分~48時間撹拌することによって、遷移金属錯体を得ることができる。
【0062】
遷移金属錯体を合成する際に用いる溶媒は特に限定されない。このような反応において使用可能なことが知られている一般的な溶媒を使用できる。溶媒の具体例としては、エーテル、テトラヒドロフランなどの極性溶媒;トルエン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素溶媒;塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素溶媒が挙げられる。
【0063】
遷移金属錯体は、溶媒に溶解または懸濁した状態で得られる。この遷移金属錯体の溶液または懸濁液をそのまま使用してもよいし、また遷移金属錯体を一度単離して、再び溶媒に溶解または懸濁させて使用してもよい。
【0064】
<化合物(C)>
本発明のオレフィン多量体の製造方法においては、下記の様な方法で得られる化合物(C)を、前記のクロム化合物(A)、アミン化合物(B)と組み合わせて用いる。
【0065】
化合物(C)は、ハロゲン化マグネシウムと炭素原子数1~20のアルコールとを接触させ、次いで下記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物とを接触させて得られる成分である。
【0066】
【化9】
(式中、Rは炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン原子または水素原子、nは1~3の実数を示し、Rが複数ある場合は各々のRは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合は、各々のXは同じでも異なっていてもよい。)
【0067】
本発明の化合物(C)を得る方法について、以下、説明する。
本発明の化合物(C)は、ハロゲン化マグネシウムと炭素数1~20のアルコールを接触(以下、この接触を「第1接触」と呼ぶ場合がある。)させ、次に前記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物と接触(以下、この接触を「第2接触」と呼ぶ場合がある。)させることにより得られる。その方法について、以下により詳細に説明するが、その方法に限定されない。
【0068】
ハロゲン化マグネシウムとしては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムが好んで用いられる。このようなハロゲン化マグネシウムは市販品をそのまま使用しても良いし、別途アルキルマグネシウムから調製しても良いし、また後者の場合はハロゲン化マグネシウムを単離することなく用いることもできる。
【0069】
炭素数1~20のアルコールとしては、前記の炭素数1~20のアルコキシ基に対応したアルコールを例示でき、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-アミルアルコール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、n-オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、クミルアルコール、i-プロピルベンジルアルコール等、トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどのハロゲン含有アルコール、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトール等の低級アルキル基含有フェノール等を例示することができるが、これらの中ではメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、i-アミルアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノールが好ましい。
【0070】
ハロゲン化マグネシウムと炭素数1~20のアルコールを接触させる場合は、溶媒存在下で行ってもよい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンジクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを例示することができる。
【0071】
接触は通常、加熱下で行うことが好ましい。加熱する場合は、その温度は使用する溶媒の沸点までの温度を任意に選択することができる。上記の加熱する時間は、温度や前記のマグネシウム化合物とアルコールとの比率にもよるが、例えばマグネシウム化合物/アルコールのモル比が1/3程度で溶媒としてn-デカンを使用し、加熱温度130℃の条件下では約4時間で溶液状とすることが出来る。また前記の溶液調製時、撹拌装置を利用することが好ましい。
【0072】
このようにして調製されたハロゲン化マグネシウムと炭素数1~20のアルコールの接触化物(以下、「第1接触化物」と呼ぶ場合がある。)は、接触時に使用した溶媒類を除去して用いてもよいし、溶媒を留去することなく使用してもよい。通常は溶媒を留去することなく次の工程に供される。
【0073】
上記の方法で得られた第1接触化物は、次いで下記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物と接触(=第2接触)される。
【0074】
【化10】
【0075】
一般式(α)において、Rは炭素数1~20の炭化水素基、具体的には
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、を例示することができる。Xは塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子または水素原子を示す。nは1~3の実数を示し、好ましくは2または3である。Rが複数ある場合は各Rは同じでも異なっていてもよく、Xが複数ある場合は、各Xは同じでも異なっていてもよい。有機アルミニウム化合物としては、具体的には以下のような化合物が用いられる。このような要件を満たす有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;イソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示できるが、これらの中では、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが好ましい。
【0076】
この第2接触における接触方法は特に制限されないが、通常前記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物を、撹拌下で第1接触化物に添加する方法によって実施される。この際に第1接触化物は溶剤に希釈されていても良く、このような溶剤としては活性水素を保有しない炭化水素類であれば特に制限なく使用できるが、通常は第1接触時に使用した溶媒を留去することなく第2接触時の溶媒としてそのまま使用するのが効率的である。第1接触化物に添加する有機アルミニウム化合物は、溶媒に希釈して使用しても良いし、溶媒に希釈せず添加してもよいが、通常はn-デカン、n-ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒に希釈された形態で用いられる。有機アルミニウム化合物を添加する際には、通常5分~5時間かけて第1接触化物に添加される。接触系内の徐熱能力が十分であれば短時間の添加で済ませることができ、一方能力が不十分な場合は長時間かけて添加するのがよい。有機アルミニウム化合物の添加は一括して添加してもよいし、何回かに分けて分割添加をしてもよい。分割添加を行なう場合は、各々の添加における有機アルミニウム化合物は同一でも異なっていてもよく、また各々の添加における第1接触化物の温度は同一でも異なっていてもよい。
【0077】
第2接触時における、前記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物の使用量は、通常は第1接触化物中のマグネシウム原子の量に対して0.1~50倍モル、好ましくは0.5~30倍モル、より好ましくは1.0~20倍モル、さらに好ましくは1.5~15倍モル、特に好ましくは2.0~10倍モルのアルミニウム原子となるように有機アルミニウム化合物が使用される。
【0078】
上記の第2接触の方法や条件の好ましい例を以下に述べる。
第1接触化物と前記一般式(α)で表される有機アルミニウム化合物の接触に際しては、例えばマグネシウム化合物の炭化水素希釈溶液と、炭化水素溶媒に希釈した有機アルミニウム化合物とを接触させる等の両液状物の反応による手段が好ましい。その際の有機アルミニウム化合物の使用量は、その種類、接触条件によって異なるが、マグネシウム化合物1モルに対し、通常2~10モルとするのが好ましい。得られる化合物(C)の反応性の観点の他、この工程で発生する場合がある固体生成物の形状、粒径の観点からも、これらの成分の接触は温和な条件で行うことが好ましい。例えばマグネシウム化合物と有機アルミニウム化合物を互いに液状状態で接触混合して相互反応によって固体生成物を形成させる場合には、それらの接触によって急速な変化が行らないような低い温度で両者を混合した後、昇温して徐々に反応を進行させるのがよい。この方法によれば、固体状となる場合は、比較的粒度分布の狭い顆粒状または球状の固体生成物を得やすく、均質な反応性を有する成分を得易い。
【0079】
上記の化合物(C)は固体状となる場合があり、その場合は本発明のオレフィン多量化触媒の担体としても用いることも出来る。上記の化合物(C)が固体状である場合、マグネシウム原子、アルミニウム原子および炭素数1~20のアルコキシ基を共に含有し、炭化水素溶媒に不溶であり、平均粒径が3~80μmであることが好ましい。担体成分中のマグネシウム原子とアルミニウム原子のモル比(Mg/Al)は、1.0<Mg/Al≦300.0の範囲内にあり、アルコキシ基とアルミニウム原子のモル比(OR/Al)が0.05<OR/Al<2.0であることが好ましい。
【0080】
なお、炭化水素溶媒に不溶であるとは、ヘキサン、デカンおよびトルエンから選ばれる少なくても1種の溶媒に、常圧下、0℃~その溶媒の固有の沸点までの温度範囲で1分~1時間撹拌してもマグネシウム原子の溶解分が0.5重量%以下であり、かつ、ヘキサン、デカンおよびトルエンから選ばれる少なくても1種の溶媒に、常圧下、室温で1分~1時間撹拌しても、アルミニウム原子およびアルコキシ基の溶解分が各1重量%以下であることを言う。
【0081】
本発明の化合物(C)は、上記の様なマグネシウム、アルミニウム、アルコキシ基以外にも、他の金属原子や他の有機基を含んでいても良い。好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの4族遷移金属原子は含まれない。この様な成分が含まれると、後述するオレフィンの多量化反応の際に、オレフィン重合体が複製する場合がある。
【0082】
前記化合物(C)が上記の様な固体状の成分である場合、マグネシウム原子、アルミニウム原子および炭素数1~20のアルコキシ基の合計量は通常10~90重量%の範囲にあり、後述する担体成分を含む重合用触媒のオレフィン重合活性や、重合の結果得られるポリオレフィンの粉体性状の視点から、好ましくは15~60重量%、特に好ましくは20~40重量%の範囲にある。担体成分中に占めるマグネシウム原子、アルミニウム原子および炭素数1~20のアルコキシ基以外の成分は、ハロゲン原子が最も大きなウェイトを占める。ハロゲン原子が塩素原子の場合、担体成分中の塩素原子量は、少ない場合で約20重量%、多い場合では約80重量%に達する。また、化合物(C)にはその他に炭素数1~20のアルコキシ基に対応するアルコールや分散媒(溶媒と言うこともある)として用いる炭化水素化合物等が含まれる場合もある。
【0083】
上記の様な固体状の化合物(C)である場合、その中の炭素数1~20のアルコキシ基は、後述する担体成分調製時に原料成分として使用される炭素数1~20のアルコールに起因する基である。炭素数1~20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、i-アミロキシ基、n-ヘキソキシ基、n-ヘプトキシ基、2-エチルヘキソキシ基、n-オクトキシ基、ドデコキシ基、オクタデシロキシ基、オレイロキシ基、ベンジロキシ基、フェニルエトキシ基、クミロキシ基、i-プロピルベンジロキシ基等、トリクロロメトキシ基、トリクロロエトキシ基、トリクロロヘキソキシ基などのハロゲン含有アルコキシ基、フェノキシ基、クレゾキシ基、エチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、クミルフェノキシ基、ナフトキシ基等の低級アルキル基含有フェノキシ基等を例示することができるが、これらの中では、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、i-アミロキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、2-エチルヘキソキシ基、オクトキシ基、ドデコキシ基が好ましい。
【0084】
上記の様な固体状の化合物(C)である場合、その中のマグネシウム原子とアルミニウム原子のモル比(Mg/Al)は通常、1.0<Mg/Al≦300.0の範囲内にあり、オレフィン重合活性や生成ポリオレフィンの粉体性状の点から、好ましくは30.0<Mg/Al≦250.0、より好ましくは30.0<Mg/Al≦200.0、さらに好ましくは35.0<Mg/Al≦200.0、特に好ましくは40.0<Mg/Al≦150.0の範囲内にある。アルコキシ基とアルミニウム原子のモル比(OR/Al)は通常、0.05<OR/Al<2.0であり、オレフィン重合活性をさらに高める点で、好ましくは0.1≦OR/Al<1.8、特に好ましくは0.2≦OR/Al<1.0の範囲内にある。
【0085】
上記の様な固体状の化合物(C)である場合、その平均粒径は3~80μm、好ましくは3~50μmであると、後述する副生オレフィン重合体が粒状になり易く、反応器の内壁や反応プロセス中の配管や冷却装置などに付着し難い場合があるので好ましい態様である。 前記の微結晶サイズは、通常3~80(Å)、好ましくは10~75(Å)、より好ましくは12~70(Å)、さらに好ましくは15~60(Å)、特に好ましくは20~55(Å)である。
【0086】
本発明に用いる化合物(C)は、上記の化合物以外に、本発明の目的に反しない限り、下記の様な化合物を併用することが出来る。
有機金属化合物(C-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(C-3)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。以下、これら化合物(C-1)~(C-3)について説明する。以下の記載において、化合物(C-3)は「イオン化イオン性化合物(C-3)」と記す。
【0087】
[有機金属化合物(C-1)]
有機金属化合物(C-1)としては、例えば、以下に記載する化合物(C-1a)、(C-1b)および(C-1c)のような周期律表第1、2、12、13族の有機金属化合物を使用できる。また、これらの化合物は、前記の一般式(α)で表される化合物が含まれる。
本発明において、有機金属化合物(C-1)には後述する有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は含まれないものとする。
【0088】
(C-1a):一般式Ra mAl(ORbnpq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。
【0089】
(C-1b):一般式M2AlRa 4(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す)で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0090】
(C-1c):一般式Rab3(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである)で表される周期律表第2または12族金属のジアルキル化合物。
【0091】
前記有機アルミニウム化合物(C-1a)としては、例えば、一般式Ra mAl(ORb3-m(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAlX3-m(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAlH3-m(式中、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3の数である)で表される有機アルミニウム化合物、一般式Ra mAl(ORbnq(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物を使用できる。
【0092】
前記有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ(n-ブチル)アルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリ(n-アルキル)アルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ(sec-ブチル)アルミニウム、トリ(tert-ブチル)アルミニウム、トリ(2-メチルブチル)アルミニウム、トリ(3-メチルブチル)アルミニウム、トリ(2-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(3-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(4-メチルペンチル)アルミニウム、トリ(2-メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(3-メチルヘキシル)アルミニウム、トリ(2-エチルヘキシル)アルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;(iC49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。iC49はイソブチル基を表す。)などで表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;例えばRa 2.5Al(ORb0.5(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよい炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。)で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドのように部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドのように部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドのように部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムが挙げられる。
【0093】
有機アルミニウム化合物(C-1a)に類似する化合物、例えば、(C252AlN(C25)Al(C252のように窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物も使用できる。
【0094】
前記化合物(C-1b)の具体例としては、LiAl(C254、LiAl(C7154が挙げられる。
前記化合物(C-1c)の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムが挙げられる。
【0095】
以上説明した化合物(C-1a)~(C-1c)以外の有機金属化合物(C-1)の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドが挙げられる。
【0096】
多量化反応系内で有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せを使用することもできる。
【0097】
以上説明した有機金属化合物(C-1)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。また、以上説明した有機金属化合物(C-1)の中では、有機アルミニウム化合物(C-1a)が特に好ましい。
【0098】
[有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)]
有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。従来公知のアルミノキサンは、例えば以下の方法によって製造でき、通常、溶液として得られる。
【0099】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類(例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物)と炭化水素溶媒を含む懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0100】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0101】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの溶媒中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物にジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0102】
アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。上記各方法において回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒および未反応有機アルミニウム化合物を蒸留除去し、そのアルミノキサンをさらに溶媒に再溶解させてもよいし、アルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0103】
アルミノキサンの製造の為に用いる有機アルミニウム化合物の具体例は、先に説明した有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例と同様である。有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
【0104】
アルミノキサンの製造の為に用いる溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒を使用できる。炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ガソリン、灯油、軽油などの石油留分;芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素または脂環族炭化水素のハロゲン化物(特に塩素化物または臭素化物)が挙げられる。エーテル系溶媒の具体例としては、エチルエーテル、テトラヒドロフランが挙げられる。中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が好ましい。ベンゼンに対して不溶性または難溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を使用する場合、60℃のベンゼンに溶解するAl成分の量はAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0105】
有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)としては、下記一般式(5)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も使用できる。
【0106】
【化11】
(一般式(5)中、R7は炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。R8は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~10の炭化水素基を示す。)
【0107】
一般式(5)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、例えば、下記一般式(6)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、-80℃~室温の温度で1分~24時間反応させることにより製造できる。
【0108】
【化12】
(一般式(6)中、R7は上記一般式(5)におけるR7と同じ基を示す)
【0109】
一般式(6)で表されるアルキルボロン酸の具体的例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸が挙げられる。中でも、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらアルキルボロン酸は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0110】
アルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物の具体例は、先に説明した有機アルミニウム化合物(C-1a)の具体例と同様である。有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。中でも、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
以上説明した有機アルミニウムオキシ化合物(C-2)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0111】
[イオン化イオン性化合物(C-3)]
イオン化イオン性化合物(C-3)は、遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物である。したがって、少なくとも遷移金属化合物と接触させるとイオン対を形成する性質を有する化合物は、このイオン化イオン性化合物(C-3)に相当する。
【0112】
イオン化イオン性化合物(C-3)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物、カルボラン化合物を使用できる。さらに、ヘテロポリ化合物、イソポリ化合物も使用できる。
【0113】
前記ルイス酸としては、例えば、一般式BR3(Rはフッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である)で表される化合物がある。その具体例としては、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンが挙げられる。
【0114】
前記イオン性化合物の具体例としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化13】
【0116】
一般式(7)中、R9+としては、例えば、H+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが挙げられる。R10~R13は、互いに同一でも異なっていてもよい有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。
【0117】
9+がカルボニウムカチオンである場合の具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンが挙げられる。
【0118】
9+がアンモニウムカチオンである場合の具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0119】
9+がホスホニウムカチオンである場合の具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0120】
9+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンがより好ましい。
【0121】
以上説明した一般式(7)で表される化合物以外に、前記イオン性化合物としては、さらにトリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩も使用できる。
【0122】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩の具体例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-プロピル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-プロピル)アンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボレートが挙げられる。
【0123】
前記N,N-ジアルキルアニリニウム塩の具体例としては、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0124】
前記ジアルキルアンモニウム塩の具体例としては、ジ(n-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0125】
以上説明した各塩以外に、前記イオン性化合物としては、さらにトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記一般式(8)または(9)で表されるホウ素化合物も使用できる。
【0126】
【化14】
(一般式(8)中、Etはエチル基を示す。)
【0127】
【化15】
(一般式(9)中、Etはエチル基を示す。)
【0128】
前記ボラン化合物の具体例としては、デカボラン(14);ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩が挙げられる。
【0129】
前記カルボラン化合物の具体例としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、6,9-ジカルバデカボラン(14)、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン(13)、2,7-ジカルバウンデカボラン(13)、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(14)、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート(13)、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート(12)、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩が挙げられる。
【0130】
前記ヘテロポリ化合物は、通常、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素または錫からなる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とからなる。その具体例としては、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸が挙げられる。また、これら各酸の塩であってもよい。塩の具体例としては、例えば、周期律表第1または2族の金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム)との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩、イソポリ化合物が挙げられる。
【0131】
以上説明したイオン化イオン性化合物(C-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
上記のような化合物(C-1)、(C-2)、(C-3)は、化合物(C)のマグネシウム化合物のマグネシウム原子1モルに対するアルミニウム原子換算で、好ましくは10モル以下、より好ましくは1モル以下、さらに好ましくは0,5モル以下、特に好ましくは0.1モル以下となるような量で用いられる。
【0132】
<担体(D)>
本発明のオレフィン多量化用触媒は、担体(D)を含んでいてもよい。担体(D)は、無機化合物または有機化合物であって、通常、顆粒状または微粒子状の固体である。本発明において、担体(D)はクロム化合物(A)、アミン化合物(B)および/または化合物(C)を担持する。無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物が好ましい。
【0133】
前記多孔質酸化物の具体例としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2、またはこれらを含む複合物もしくは混合物(例えば、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgO)が挙げられる。中でも、SiO2および/またはAl23を主成分とする多孔質酸化物が好ましい。多孔質酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO43、BaSO4、KNO3、Mg(NO32、Al(NO33、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩または酸化物成分を含有していてもよい。多孔質酸化物の粒径、比表面積、細孔容積は特に限定されず、材料の種類や製法に応じて適宜決定すればよい。本発明において、多孔質酸化物の粒径は好ましくは0.5~300μm、より好ましくは20~200μmであり、比表面積は好ましくは50~1000m2/g、より好ましくは100~700m2/gであり、細孔容積は好ましくは0.3~3.0cm3/gである。多孔質酸化物は、必要に応じて、好ましくは100~1000℃、より好ましくは150~700℃で焼成される。
【0134】
前記無機ハロゲン化物の具体例としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2が挙げられる。無機ハロゲン化物は、そのまま使用してもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に使用してもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを使用することもできる。
【0135】
前記粘土は、通常、粘土鉱物を主成分として含む。また、前記イオン交換性層状化合物は、イオン結合によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能な化合物である。イオン交換性層状化合物としては、例えば、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物を使用できる。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。これらの粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物としては、天然のものに限らず、人工合成物も使用できる。
【0136】
粘土、粘土鉱物の具体例としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、雲母、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライト、リョクデイ石、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトが挙げられる。イオン交換性層状化合物の具体例としては、α-Zr(HAsO42・H2O、α-Zr(KPO42・3H2O、α-Ti(HPO42、α-Ti(HAsO42・H2O、α-Sn(HPO42・H2O、γ-Zr(HPO42、γ-Ti(HPO42、γ-Ti(NH4PO42・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩が挙げられる。中でも、粘土、粘土鉱物が好ましく、合成雲母、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトがより好ましい。
【0137】
粘土、粘土鉱物およびイオン交換性層状化合物の細孔容積は、好ましくは0.1cc/g以上、より好ましくは0.3~5cc/gである。この細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20~3×104オングストロームの範囲について測定した容積である。半径20オングストローム以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合は、高い多量化活性が得られにくい傾向がある。
【0138】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、例えば、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理がある。化学処理の具体例としては、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くだけでなく、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大できる。アルカリ処理は、粘土の結晶構造を破壊して、粘土の構造を変化させることができる。塩類処理や有機物処理は、イオン複合体、分子複合体または有機誘導体を形成することによって、表面積や層間距離を変化させることができる。
【0139】
イオン交換性層状化合物は、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することによって層間を拡大した状態の層状化合物であってもよい。この嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担い、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することは、インターカレーションと言う。インターカレーションするゲスト化合物(別の物質)の具体例としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)247+、[Zr4(OH)142+、[Fe3O(OCOCH36+などの金属水酸化物イオンが挙げられる。ゲスト化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。ゲスト化合物をインターカレーションする際に、例えば、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)を加水分解して得た二量化物、SiO2などのコロイド状無機化合物を共存させることもできる。ピラーの具体例としては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後で加熱脱水することにより生成する酸化物が挙げられる。
【0140】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま使用してもよいし、ボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に使用してもよい。また、新たに水を添加して吸着させた後に使用してもよいし、あるいは加熱脱水処理した後に使用してもよい。
【0141】
前記有機化合物としては、例えば、粒径が10~300μmの顆粒状または微粒子状の固体有機化合物が挙げられる。有機化合物を構成する重合体のモノマーの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2~14のα-オレフィンを主成分として生成される(共)二量化体、ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)二量化体、およびそれらの変成体が挙げられる。
【0142】
<有機化合物成分(E)>
本発明のオレフィン多量化用触媒は、さらに必要に応じて有機化合物成分(E)を含んでいてもよい。
【0143】
本発明において、有機化合物成分(E)は、例えば、多量化性能を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、例えば、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、スルホン酸塩を使用できる。ただし、有機化合物成分(E)はこれに限られるものではない。
【0144】
前記アルコール類および前記フェノール性化合物としては、通常、R14-OHで表される化合物が使用される。R14は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示す。アルコール類としては、R14がハロゲン化炭化水素である化合物が好ましい。フェノール性化合物としては、水酸基のα,α'-位が炭素原子数1~20の炭化水素で置換された化合物が好ましい。
【0145】
前記カルボン酸としては、通常、R15-COOHで表される化合物が使用される。R15は炭素原子数1~50の炭化水素基または炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基を示す。特に、R15が炭素原子数1~50のハロゲン化炭化水素基である化合物が好ましい。
【0146】
前記リン化合物としては、P-O-H結合を有するリン酸類、P-OR結合またはP=O結合を有するホスフェートまたはホスフィンオキシド化合物が好ましい。
前記スルホン酸塩としては、例えば、下記一般式(10)で表される化合物を使用できる。
【0147】
【化16】
【0148】
一般式(10)中、M2は周期律表第1~14族の元素であり、R14は水素、炭素原子数1~20の炭化水素基または炭素原子数1~20のハロゲン化炭化水素基であり、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1~20の炭化水素基または炭素原子数が1~20のハロゲン化炭化水素基であり、tは1~7の整数であり、uは1≦u≦7の整数であり、かつt-u≧1である。
【0149】
<オレフィン多量化用触媒>
本発明のオレフィン多量化用触媒は、オレフィンの多量化反応に使用される触媒である。そのオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、1-オクテン、1-デセンなどのビニル化合物、2-ブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネンなどの内部オレフィンが挙げられる。中でも、エチレンが好ましい。2種以上のオレフィンを共多量化させてもよい。
【0150】
<オレフィン多量体の製造方法>
本発明のオレフィン多量体の製造方法は、以上説明したオレフィン多量化用触媒の存在下でオレフィンの多量化反応(好ましくは3量化~4量化反応、より好ましくは4量化反応)を行う方法である。
【0151】
多量化させるオレフィンの具体例は、先に記載のとおりであり、中でもエチレンが好ましい。具体的には、エチレンの多量化反応により多量体を製造することが好ましく、エチレンの3量化および4量化反応により1-ヘキセンおよび1-オクテンを高い選択率で製造することがより好ましく、エチレンの4量化反応により1-オクテンを高い選択率で製造することが特に好ましい。
【0152】
多量化の際、上記クロム化合物(A)、アミン化合物(B)、化合物(C)およびその他の成分(例えば担体(D)、有機化合物成分(E))を反応器に添加する順序は特に限定されない。添加方法の具体例は以下の通りである。
【0153】
(1)成分(A)と、成分(B)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
(2)成分(A)と、成分(B)とを予め接触させて形成した遷移金属錯体を反応器に添加する方法。
(3)成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とをそのまま任意の順序で反応器に添加する方法。
その他、前記の特許文献5に記載の方法を例示することが出来る。
【0154】
本発明においては、以上説明したオレフィン多量化用触媒の存在下で、オレフィンを多量化することによりオレフィン多量体を得る。多量化は、溶解反応や懸濁反応などの液相反応法、気相反応法のいずれにおいても実施できる。
【0155】
液相反応法においては、通常、不活性炭化水素媒体を用いる。不活性炭化水素媒体の具体例としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラリンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、ペンタン、n-ヘキサン、n-へプタンなどの炭素数5~7の直鎖状飽和炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの脂環式飽和炭化水素が好ましい。
【0156】
オレフィン多量化用触媒を用いて、例えば、主としてエチレンの3~4量化反応により1-ヘキセンや1-オクテンを製造する場合は、成分(A)中のクロム原子は、反応容積1リットル当り、通常10-12~10-2モル、好ましくは10-10~10-3モルとなるような量で用いられる。本発明では、成分(A)を比較的低い濃度で用いた場合であっても、高活性でオレフィン多量体を得ることができる。
【0157】
成分(B)は成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比〔(B)/M〕が、通常0.1~10、好ましくは0.5~2となるような量で用いられる。
成分(C)のアルミニウム原子と、成分(A)中のクロム原子(M)とのモル比は、通常、Al/Cr比で0.01~100000、好ましくは0.05~50000となるような量で用いられる。
【0158】
成分(D)は、成分(A)中のクロム原子(M)のモル当たりに対する成分(D)の質量(g)の比(g/mol)が通常100~10000、好ましくは1000~5000となるような量で用いられる。
【0159】
成分(C)と、成分(E)は、(E)/Alモル比は通常0.01~10、好ましくは0.1~5となるような量で用いられる。
多量化の反応温度は、通常-50~200℃、好ましくは0~170℃、より好ましくは20~120℃の範囲である。本発明のオレフィン多量化反応では、比較的低温で実施することが好ましい場合がある。より好ましくは0~50℃、さらに好ましくは10~40℃の範囲で、エチレンの多量化反応の場合、エチレン重合体の副生が少なく、エチレンの4量体である1-オクテン生成の選択率が高い傾向がある。
【0160】
本発明者らの検討によれば、公知のオレフィン多量化触媒の場合、反応温度が低くなるにつれてオレフィン重合体の副生量が多くなる傾向を示す場合がある。このような傾向について、その原因が定かではないが、本発明者らは以下の様に考えている。
【0161】
従来態様であるクロム化合物(A)と、アミン化合物(B)と、前記の(C-1)、(C-2)、(C-3)から選ばれる1以上の成分とを含むオレフィン多量化触媒においては、前記の(C-1)、(C-2)、(C-3)のような所謂助触媒成分と、クロム化合物(A)と、アミン化合物(B)との相互作用が低い反応温度では少なくなり、例えば、エチレンから1-ヘキセンや1-オクテンを選択的に生成させるメタラサイクル機構での反応の進行が起き難くなり、相対的に重合体の生成が優位になっているのかもしれない。
【0162】
一方、本発明の化合物(C)は、含まれる、(微分散した)マグネシウム成分が有機アルミニウム化合物の反応性を調整する作用や、前記マグネシウム成分が、比較的低温であってもクロム化合物(A)とアミン化合物(B)と有機アルミニウム化合物との相互作用をサポートするような作用がある為、メタラサイクル機構での反応の進行が起こりやすいので、良好な反応活性とα―オレフィン選択率とを示すのではないかと推測している。
【0163】
本発明のオレフィン多量化反応において。その反応圧力は、通常、常圧~10MPa、好ましくは常圧~6MPa、より好ましくは常圧~5MPaである。また下限値は、好ましくは0.5MPa、より好ましくは0.9MPa、特に好ましくは1.5MPaである。最も好ましい上限値は、4MPaである。
【0164】
多量化反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
多量化反応は、帯電防止剤を添加して行ってもよい。帯電防止剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールジステアレート、エチレンジアミン-PEG-PPG-ブロックコポリマー、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシアルキレン(例えばポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコールブロック共重合体(PEG-PPG-PEG))が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレン(例えばPEG-PPG-PEG)が好ましい。帯電防止剤は、成分(A)中のクロム原子(M)のモル当たりに対する質量(g)の比(g/mol)が通常100~10000、好ましくは100~1000となるような量で用いられる。
【0165】
多量化反応は、水素を添加して行ってもよい。反応の水素の圧力は通常0.01MPa~5MPa、好ましくは0.01MPa~1MPaである。
本発明のオレフィン多量化反応で得られるα-オレフィン、好ましくは1-ヘキセンや1-オクテンは、従来のα-オレフィンを使用する用途に制限なく用いることが出来る。例えば、オレフィン重合体製造時の主モノマー成分やコモノマー成分の他、その二重結合の反応性を生かした多様な有機化合物合成の原材料として利用することも出来る。
【実施例
【0166】
以下、合成例および実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0167】
[反応生成物の定量]
反応生成物の定量を、ノナンを内部標準物質とするガスクロマトグラフィー(島津GC-14A型装置、J&WScientificDB-5カラム使用)により行った。
【0168】
[触媒活性]
触媒活性は、単位時間当たりに得られた反応生成物の質量を、多量化に使用した遷移金属触媒成分中の遷移金属原子量(ミリモル)で除して求めた。
【0169】
[1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率]
1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率は、以下の式に従い求めた。
S(%)=Wp/Wr×100
S(%):1-ヘキセンまたは1-オクテンの選択率(質量分率)
Wr(質量):反応により生成した炭素原子数が4以上からなる生成物の合計質量
Wp(質量):反応により生成した1-ヘキセンまたは1-オクテンの質量
以下に、触媒の合成例、およびエチレン多量化の実施例を示す。
【0170】
[合成例1]
(クロム化合物の調製)
【0171】
【化17】
【0172】
充分に乾燥した100mLのシュレンク管に、上記式構造式で特定される化合物(B1)を0.698g(3.829mmol)、三塩化クロムトリステトラヒドロフラン1.305g(3.483mmol)、ジクロロメタン70mLを加え、アルゴン雰囲気下で16時間撹拌した。反応液を減圧下、重量比で約1/7まで濃縮した後、ジエチルエーテルを15mL加え、しばらく攪拌した後、不溶分をガラスフィルターでろ取し、ジエチルエーテル20mLで洗浄し減圧乾燥することでクロム化合物(I)0.67gを得た。
【0173】
[合成例2]
(塩化マグネシウム・アルコール反応物成分(C1)の調製)
無水塩化マグネシウム 95.2g(1.0モル)、デカン 242ml、2-エチルヘキシルアルコール260.4g(2.0モル)および2-オクチルドデカノール298.6g(1.0モル)を155℃で4時間反応を行い均一溶液[成分(C1)]を得た。
【0174】
[合成例3]
(Mg含有担体成分(C1-1)の調製)
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(1)50ml(マグネシウム原子換算で50ミリモル)、デカン400ml、を装入し、スリーワンモータを用い、回転数500rpmの攪拌下、液温を20℃に保持しながら、デカンで希釈したトリエチルアルミニウム 52ミリモルを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を3.5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、デカン希釈のトリエチルアルミニウム 98ミリモルを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mlのトルエンを加えて固体触媒成分(C1-1)のトルエンスラリーにした。
【0175】
[実施例1]
(エチレンの多量化反応)
充分に窒素置換した内容積100mLのオートクレーブにトルエン30mLを入れ、トリイソブチルアルミニウムを0.03mmol(アルミニウム原子換算)添加した。さらにMg含有担体成分(C1-1)のトルエンスラリーをマグネシウム原子換算で0.4mmolになるように加えた。気相部をエチレンに置換後、このスラリー液を30℃に昇温した。別途、アルゴン雰囲気下、充分に乾燥したシュレンク管に、合成例1で得られたクロム化合物(I)0.02mmol(クロム原子換算)とトルエン19.5mLを加え、1mol/Lトリエチルアルミニウム/トルエン溶液0.5mL(アルミニウム原子換算 0.5mmol)を接触させ、その混合液0.5mL(クロム原子換算0.5μmol)を、前記オートクレーブに加えた。反応装置内の圧力が0.8MPa-Gに維持されるようにエチレンを供給しながら30℃で60分間保持した。その後、脱圧して未反応のエチレンを除去し、少量のイソプロパノールを添加して反応を停止した。反応終了後、0.1規定塩酸水および純水で反応液を洗浄し、減圧下に液体窒素トラップを用いて低沸点成分(炭素原子数10以下の成分)を高沸点成分およびポリエチレンから分離し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。低沸点成分の生成量(炭素原子数10以下の成分の生成量)は636mg、ポリエチレンの生成量は50mgであり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は1370(g/mmol-Cr・hr)であった。1-ヘキセンの選択率は5.4質量%、1-オクテンの選択率は86.8質量%、1-オクテンの触媒活性は1190(g/mmol-Cr・hr)であった。
【0176】
[実施例2]
実施例1で反応温度を30℃の代わりに25℃にする以外は同様の条件で反応を行った。低沸点成分の生成量(炭素原子数10以下の成分の生成量)は764mg、ポリエチレンの生成量は79mgであり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は1690(g/mmol-Cr・hr)であった。1-ヘキセンの選択率は4.2質量%、1-オクテンの選択率は86.0質量%、1-オクテンの触媒活性は1450(g/mmol-Cr・hr)であった。
【0177】
[比較例1]
実施例1でMg含有担体成分(C1-1)のトルエンスラリーを添加しない以外は同様の条件で反応を行った。低沸点成分の生成量(炭素原子数10以下の成分の生成量)は92mg、ポリエチレンの生成量は62mgであり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は310(g/mmol-Cr・hr)であった。1-ヘキセンの選択率は31.7質量%、1-オクテンの選択率は27.4質量%、1-オクテンの触媒活性は85(g/mmol-Cr・hr)であった。
【0178】
[比較例2]
充分に窒素置換した内容積100mLのオートクレーブにトルエン30mLを入れ、メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケムMMAO-3A、5.7質量%ヘキサン溶液)をアルミニウム原子換算で0.5mmol加えた。気相部をエチレンに置換後、このスラリー液を25℃に昇温した。別途、アルゴン雰囲気下、充分に乾燥したシュレンク管に、合成例1で得られたクロム化合物(I)をトルエンに溶解し、クロム原子換算で0.001mmol/mLのトルエン溶液(触媒溶液)を調製した。この溶液0.1mL(Cr原子換算0.1μmol)を前記オートクレーブに加えた。反応装置内の圧力が0.8MPa-Gに維持されるようにエチレンを供給しながら25℃で60分間保持した。その後、実施例1と同様にして、生成物の分析を行った。低沸点成分の生成量(炭素原子数10以下の成分の生成量)は147mg、ポリエチレンの生成量は59mgであり、これらの生成物量合計から算出した触媒活性は2060(g/mmol-Cr・hr)であった。1-ヘキセンの選択率は3.2質量%、1-オクテンの選択率は67.6質量%、1-オクテンの触媒活性は1390(g/mmol-Cr・hr)であった。
【0179】
上記の結果から、本発明のオレフィン多量体の製造方法は、オレフィン重合体の副生が少なく、選択的にオレフィン多量体を製造出来ることが分かる。特にエチレンの多量化反応における4量体である1-オクテンの製造に好適な傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明のオレフィン多量体の製造方法は、比較的低温においても優れた反応活性を有し、オレフィン重合体の副生が少なく、即ち、オレフィン多量体生成の選択率が高く、オレフィン多量体の製造において極めて有用である。またエチレンの多量化反応の場合、その4量体である1-オクテン選択性が高い傾向がある。従って、本発明は工業的に極めて高い価値がある。