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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】電動移動体
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/24 20190101AFI20250306BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20250306BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20250306BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20250306BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B60L53/24
B60L58/21
B60L9/18 L
B60L50/60
H02J7/00 P
H02J7/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021091909
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022184200
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 輝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直充
(72)【発明者】
【氏名】叶田 玲彦
(72)【発明者】
【氏名】井出 一正
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓也
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-058045(JP,A)
【文献】再生可能エネルギーによるDC発電と急速充電機能を内蔵する電動車を連携させるシステム,電気学会論文誌 D,Vol.140,No.4,日本,2020年,289-294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/24
B60L 58/21
B60L 9/18
B60L 50/60
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置を備えて、前記第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機を駆動させて移動する電動移動体であって、
前記電動移動体は、前記第1の蓄電装置と前記第1の電力変換装置の直流部を接続する第1のスイッチ、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置を接続する第2のスイッチ、前記第1の電力変換装置の直流部に外部から直流電力を供給する直流接続部、コントローラを備え、
前記第2の蓄電装置と前記第2の電力変換装置の直流部は接続されており、
前記コントローラは、
前記電動移動体が走行するモードのときは前記第1のスイッチをONにし、前記第2のスイッチをOFFにし、
前記直流接続部が外部充電設備に接続して前記第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置を充電するモードのときは、前記第1のスイッチをOFFにし、前記第2のスイッチをONにする
ことを特徴とする電動移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の電動移動体において、
前記電動移動体は、変圧器を備え、
前記第1の電力変換装置を前記変圧器あるいは前記電動機の何れかに接続する第3のスイッチ、前記第2の電力変換装置を前記変圧器あるいは前記電動機の何れかに接続する第4のスイッチを備え、
前記電動移動体が走行するモードのときは、前記第3のスイッチは前記第1の電力変換装置を前記電動機に接続するとともに、前記第4のスイッチは前記第2の電力変換装置を前記電動機に接続する
ことを特徴とする電動移動体。
【請求項3】
請求項2に記載の電動移動体において、
前記直流接続部が前記外部充電設備に接続して前記第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置を充電するモードのときは、前記第3のスイッチは前記第1の電力変換装置を前記変圧器の一端に接続するとともに、前記第4のスイッチは前記第2の電力変換装置を前記変圧器の他端に接続する
ことを特徴とする電動移動体。
【請求項4】
請求項2に記載の電動移動体において、
前記コントローラは、前記電動移動体が走行するモードのときは、前記第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置の端子電圧の差分に応じて、前記第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置に与えるトルク指令を補正する
ことを特徴とする電動移動体。
【請求項5】
第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置を備えて、前記第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機を駆動させて移動する電動移動体であって、
前記電動移動体は、前記第1の蓄電装置と前記第1の電力変換装置の直流部を接続する第1のスイッチ、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置を接続する第2のスイッチ、コントローラを備え、
前記コントローラは、前記電動移動体の走行するモード及び充電するモードの運転モードに応じて、前記第1のスイッチ及び第2のスイッチの状態を切り替えることを特徴とする電動移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速充電機能を搭載した電動移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的に電気自動車(EV)の普及(電動化)が加速しつつある。また、EVに限らず、電動移動体として、船舶や航空機でも電動化が試みられている。また、非電化線区間をバッテリに蓄えられた電力で走行する鉄道車両や、その他、電動化した農業機械も開発されている。例えば、EVでは車載されたバッテリに蓄えられたエネルギーを用いて走行するため、車載されたバッテリを所定の給電設備にて充電する必要がある。したがって、充電機会を高めつつ効率的にEVを充電することができる充電システムが求められている。
【0003】
そのような充電システムを構成するため、再生可能エネルギーによるDC発電(直流発電)と急速充電機能を内蔵するEVを連携させるシステムコンセプトが、特許文献1、非特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6570779号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】井出一正,外3名,"再生可能エネルギーによるDC発電と急速充電機能を内蔵する電動車を連携させるシステムコンセプトの提案",電学論D, Vol.140, No.4, pp.289-294,2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
急速充電機能を内蔵するEVとして、二台のインバータで一台のモータを駆動する構成があり、特許文献1の図6(b)、非特許文献1の図4(b)に開示されている。しかし、この構成の場合、EV走行ときには二台のインバータの交流端子同士及び直流端子同士は互いに接続されるので、二台のインバータ間にループ回路が生成され、二台のインバータがそれぞれの交流端子に出力する電圧に電圧差があると、そのループ回路に電流が流れる。その結果、インバータが過電流により停止するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、二台のインバータ間に流れる電流を抑制することができる電動移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の電動移動体は、第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置を備えて、前記第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機を駆動させて移動する電動移動体であって、前記電動移動体は、前記第1の蓄電装置と前記第1の電力変換装置の直流部を接続する第1のスイッチ、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置を接続する第2のスイッチ、前記第1の電力変換装置の直流部に外部から直流電力を供給する直流接続部、コントローラを備え、前記第2の蓄電装置と前記第2の電力変換装置の直流部は接続されており、前記コントローラは、前記電動移動体が走行するモードのときは前記第1のスイッチをONにし、前記第2のスイッチをOFFにし、前記直流接続部が外部充電設備に接続して前記第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置を充電するモードのときは、前記第1のスイッチをOFFにし、前記第2のスイッチをONにすることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二台のインバータ間に流れる電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る電動移動体の構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係るコントローラの構成を示す図である。
図3】第1実施形態に係るトルク指令補正演算手段の構成を示す図である。
図4】第1実施形態に係るスイッチ制御手段の動作パターンを示す図である。
図5】第1実施形態に係るトルク指令補正演算手段の動作例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る電動移動体が走行するモードのときの回路構成を示す図である。
図7】第1実施形態に係る電動移動体が充電するモードのときの回路構成を示す図である。
図8】第2実施形態に係る電動移動体の構成を示す図である。
図9】第2実施形態に係るコントローラの構成を示す図である。
図10】第2実施形態に係るスイッチ制御手段の動作パターンを示す図である。
図11】第2実施形態に係る電動移動体が走行するモードのときの回路構成を示す図である。
図12】第2実施形態に係る電動移動体が充電するモードのときの回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動移動体の実施形態について、EVを例に、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電動移動体の構成を示す図である。本実施形態の電動移動体1は、インバータ101、インバータ102、バッテリ103、バッテリ104、変圧器105、モータ106、スイッチ107、スイッチ108、スイッチ109、スイッチ110、電動移動体側接続部111、コントローラ112を有している。
【0012】
インバータ101の直流側は、電動移動体側接続部111、スイッチ107に接続され、インバータ101の交流側は、スイッチ109に接続されている。インバータ102の直流側は、バッテリ104、スイッチ108に接続され、インバータ102の交流側は、スイッチ110に接続されている。バッテリ103は、スイッチ107、スイッチ108に接続されている。変圧器105は、スイッチ109、スイッチ110に接続されている。モータ106は、スイッチ109、スイッチ110に接続されている。
【0013】
スイッチ107及びスイッチ108は、ON又はOFFのいずれかの状態を選択するスイッチである。スイッチ109は、インバータ101を変圧器105に接続する状態又はインバータ101をモータ106に接続する状態のいずれかの状態を選択するスイッチである。スイッチ110は、インバータ102を変圧器105に接続する状態又はインバータ102をモータ106に接続する状態のいずれかの状態を選択するスイッチである。
【0014】
コントローラ112は、トルク指令、充電指令、動作モード指令、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値を入力として、インバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令、スイッチ107及びスイッチ108及びスイッチ109及びスイッチ110へのスイッチ制御指令を出力する。
【0015】
電力供給システム2は、電力供給システム側接続部201、直流バス202を有している。直流バス202は、ここでは記載を省略しているが、例えば太陽光発電などの発電システムから所定の直流電圧が供給され、電力供給システム側接続部201へ所定の直流電圧を供給する。
【0016】
電動移動体1のバッテリ103、バッテリ104を充電するときは、電力供給システム側接続部201と電動移動体側接続部111は接続され、電力供給システム2から電動移動体1へ電力が供給される。一方、電動移動体1が走行するときは、電力供給システム側接続部201と電動移動体側接続部111は接続されず、電動移動体1はバッテリ103及びバッテリ104に蓄えられたエネルギーを用いてモータ106を駆動して走行する。
【0017】
図2は、第1実施形態に係るコントローラ112の構成を示す図である。コントローラ112は、トルク指令補正演算手段1121、指令切替手段1122、スイッチ制御手段1123を有している。
【0018】
トルク指令補正演算手段1121は、トルク指令、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値を入力として、インバータ101及びインバータ102へのトルク指令を出力する。
【0019】
指令切替手段1122は、インバータ101及びインバータ102へのトルク指令、充電指令、動作モード指令を入力として、インバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令を出力する。動作モード指令が走行するモードの場合は、電動移動体1が走行するときになるため、インバータ101及びインバータ102へのトルク指令をインバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令として出力する。一方、動作モード指令が充電するモードの場合は、電動移動体1のバッテリ103及びバッテリ104が充電するときになるため、充電指令をインバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令として出力する。
【0020】
スイッチ制御手段1123は、動作モード指令を入力として、スイッチ107及びスイッチ108及びスイッチ109及びスイッチ110への動作指令を出力する。スイッチ制御手段1123の動作の詳細は後述する。
【0021】
図3は、第1実施形態に係るトルク指令補正演算手段1121の構成を示す図である。トルク指令補正演算手段1121は、減算器11211、ゲイン11212、加算器11213、減算器11214を有している。
【0022】
減算器11211は、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値を入力として、それらの差分値を演算し、バッテリ電圧差分値として出力する。ゲイン11212は、バッテリ電圧差分値に所定のゲインを掛けた値をトルク指令補正量として出力する。加算器11213は、トルク指令、ゲイン11212が出力するトルク指令補正量を入力として、それらの加算値を演算し、インバータ101へのトルク指令として出力する。減算器11214は、トルク指令、ゲイン11212が出力するトルク指令補正量を入力として、それらの差分値を演算し、インバータ102へのトルク指令として出力する。
【0023】
図4は、第1実施形態に係るスイッチ制御手段1123の動作パターンを示す図である。スイッチ制御手段1123は、動作モード指令が走行するモードのとき、スイッチ107にON指令を出力、スイッチ108にOFF指令を出力、スイッチ109にモータ106に接続するように指令を出力、スイッチ110にモータ106に接続するように指令を出力する。スイッチ制御手段1123は、動作モード指令が充電するモードのとき、スイッチ107にOFF指令を出力、スイッチ108にON指令を出力、スイッチ109に変圧器105に接続するように指令を出力、スイッチ110に変圧器105に接続するように指令を出力する。
【0024】
図5は、第1実施形態に係るトルク指令補正演算手段1121の動作例を示す図である。時間T1までは、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値は一致しているため、インバータ101及びインバータ102へのトルク指令は一致している。
【0025】
ここで、バッテリ104の残容量がバッテリ103の残容量に対して低下し、それに伴って時間T1からバッテリ104のバッテリ電圧検出値がバッテリ103のバッテリ電圧検出値に対して低下したと仮定する。すると、インバータ101へのトルク指令が増加し、インバータ102へのトルク指令が減少する。その結果、バッテリ104から放電される電力はバッテリ103から放電される電力に対して低下するため、バッテリ103及びバッテリ104の残容量の差分が小さくなるように制御される。そして、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値の差分も小さくなり、時間T2でバッテリ103及びバッテリ104の電圧検出値が一致する。
【0026】
このように、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値に差分が発生すると、その差分を低減する方向にインバータ101及びインバータ102へのトルク指令が補正されることで、電動移動体1が走行中はバッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値が常に一致するように維持される。
【0027】
図6は、第1実施形態に係る電動移動体1が走行するモードのときの回路構成を示す図である。前述したように、電動移動体1が走行するときは、電動移動体側接続部111は電力供給システム2へ接続されない。また、スイッチ107はON、スイッチ108はOFF、スイッチ109はモータ106に接続され、スイッチ110はモータ106に接続される。したがって、インバータ101は、バッテリ103から直流電力を供給されて、コントローラ112からのインバータ制御指令に従ってモータ106を駆動する。同様に、インバータ102は、バッテリ104から直流電力を供給されて、コントローラ112からのインバータ制御指令に従ってモータ106を駆動する。
【0028】
すなわち、このモードのときスイッチ108はOFFのため、インバータ101とインバータ102の間にループ回路は生成されない。したがって、インバータ101とインバータ102の間に電流が流れることはなく、インバータ101とインバータ102の間に流れる過電流でインバータ101とインバータ102が停止するおそれはない。
【0029】
また、電動移動体1が走行するモードのときは、インバータ制御指令は、図2の説明で述べたようにトルク指令で与えられ、トルク指令は図3の説明で述べたようにバッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値に応じて補正される。したがって、インバータ101及びインバータ102に与えられるインバータ制御指令は、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧検出値が常に一致するように補正されたトルク指令となる。
【0030】
その結果、電動移動体1が走行中は常にバッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧は等しい電圧を維持する。バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧を等しく維持する目的は後述する。
【0031】
図7は、第1実施形態に係る電動移動体1が充電するモードのときの回路構成を示す図である。前述したように、電動移動体1が充電するときは、電動移動体側接続部111は電力供給システム側接続部201と接続し、電力供給システム2から電動移動体1へ電力が供給される状態となる。また、スイッチ107はOFF、スイッチ108はON、スイッチ109は変圧器105に接続され、スイッチ110は変圧器105に接続される。
【0032】
したがって、電力供給システム2から供給される直流電力はインバータ101で三相交流電力に変換されて変圧器105の一次側に入力される。変圧器105の一次側に入力された三相交流電力は、変圧器105で絶縁され、更に電圧レベルが変換されて、変圧器105の二次側から三相交流電力として出力される。変圧器105の二次側から出力された三相交流電力はインバータ102で直流電力に変換される。その直流電力はバッテリ103及びバッテリ104の両方に供給されて、バッテリ103及びバッテリ104を充電する。電動移動体1が充電するモードのときは、インバータ制御指令は図2の説明で述べたように充電指令で与えられる。
【0033】
したがって、インバータ101及びインバータ102に与えられるインバータ制御指令は、バッテリ103及びバッテリ104を充電するようにインバータ101及びインバータ102を動作させる充電指令となる。すなわち、電動移動体1が充電するモードのときはインバータ101、変圧器105、インバータ102で絶縁型DC/DC変換器を構成して、電力供給システム2から供給される直流電力はDC/DC変換され、バッテリ103及びバッテリ104に充電される。その結果、バッテリ103及びバッテリ104は所定の充電量まで充電される。
【0034】
ここで、電動移動体1が走行するモードのときに、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧が一致するように制御する目的について述べる。それは、電動移動体1が充電するモードのときにスイッチ108をONにしてバッテリ103及びバッテリ104を並列接続して、バッテリ103及びバッテリ104を同時に充電することができるようにするためである。もし、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧が等しくない場合は、スイッチ108をONにするとバッテリ103及びバッテリ104の電圧差によって両バッテリ間に過電流が流れるおそれがあるが、バッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧が等しければ、そのような過電流が流れるおそれがない。
【0035】
したがって、電動移動体1が走行するモードのときにバッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧を常に等しく維持することで、電動移動体1が充電するモードのときにバッテリ103及びバッテリ104を並列接続して同時充電することができる。これにより、バッテリ103及びバッテリ104を個別に充電する必要がなく、充電作業の簡易化を図れる。
【0036】
以上の構成により、本実施形態では電動移動体1が走行するときにインバータ101及びインバータ102の間にループ回路が生成されず、そのループ回路に電流が流れることを回避することができる。そのため、インバータ101及びインバータ102がその電流により過電流停止することを抑制することが可能となる。
【0037】
また、電動移動体1が充電するときは、バッテリ103及びバッテリ104を並列接続して同時充電することが可能であり、充電作業の簡易化が図れる。
【0038】
なお、図6において、走行するモードのときの回路構成を示したが、走行するモードにおいて、エコモード、パワーモードの運転モードを採用してもよい。すなわち、図6において、走行するモードの場合において、エコモードとして、インバータ101又はインバータ102は、モータ106に電力供給する。パワーモードとして、インバータ101及びインバータ102の両方からモータ106に電力供給するとよい。
【0039】
<実施形態2>
図8は、第2実施形態に係る電動移動体3の構成を示す図である。本実施形態の電動移動体3は、インバータ101、インバータ102、バッテリ103、変圧器105、モータ106、スイッチ107、スイッチ109、スイッチ110、リアクトル113、リアクトル114、電動移動体側接続部111、コントローラ115を有している。第2実施形態の電動移動体3は、第1実施形態の電動移動体1と比較して、バッテリ104及びスイッチ108がなく、リアクトル113及びリアクトル114が追加されている。
【0040】
インバータ101の直流側は、電動移動体側接続部111、スイッチ107に接続され、インバータ101の交流側は、リアクトル113を介してスイッチ109に接続されている。インバータ102の直流側は、バッテリ103、スイッチ107に接続され、インバータ102の交流側は、リアクトル114を介してスイッチ110に接続されている。バッテリ103は、スイッチ107、インバータ102に接続されている。変圧器105は、スイッチ109、スイッチ110に接続されている。モータ106は、スイッチ109、スイッチ110に接続されている。
【0041】
スイッチ107は、ON又はOFFのいずれかの状態を選択するスイッチである。スイッチ109は、リアクトル113を介してインバータ101を変圧器105に接続する状態またはリアクトル113を介してインバータ101をモータ106に接続する状態のいずれかの状態を選択するスイッチである。スイッチ110は、リアクトル114を介してインバータ102を変圧器105に接続する状態またはリアクトル114を介してインバータ102をモータ106に接続する状態のいずれかの状態を選択するスイッチである。
【0042】
コントローラ115は、トルク指令、充電指令、動作モード指令を入力として、インバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令、スイッチ107及びスイッチ109及びスイッチ110への制御指令を出力する。
【0043】
電力供給システム2は、電力供給システム側接続部201、直流バス202を有している。直流バス202はここでは記載を省略しているが、例えば太陽光発電などの発電システムから所定の直流電圧が供給され、電力供給システム側接続部201へ所定の直流電圧を供給する。
【0044】
電動移動体3のバッテリ103を充電するときは、電力供給システム側接続部201と電動移動体側接続部111は接続され、電力供給システム2から電動移動体3へ電力が供給される。一方、電動移動体3が走行するときは、電力供給システム側接続部201と電動移動体側接続部111は接続されず、電動移動体3はバッテリ103に蓄えられたエネルギーを用いてモータ106を駆動して走行する。
【0045】
図9は、第2実施形態に係るコントローラ115の構成を示す図である。コントローラ115は、指令切替手段1151、スイッチ制御手段1152を有している。
【0046】
指令切替手段1151は、トルク指令、充電指令、動作モード指令を入力として、インバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令を出力する。動作モード指令が走行するモードの場合は、電動移動体3が走行するときになるため、トルク指令をインバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令として出力する。一方、動作モード指令が充電するモードの場合は、電動移動体3のバッテリ103を充電するときになるため、充電指令をインバータ101及びインバータ102へのインバータ制御指令として出力する。
【0047】
スイッチ制御手段1152は、動作モード指令を入力として、スイッチ107及びスイッチ109及びスイッチ110への動作指令を出力する。スイッチ制御手段1152の動作の詳細は後述する。
【0048】
図10は、第2実施形態に係るスイッチ制御手段1152の動作パターンを示す図である。スイッチ制御手段1152は、動作モード指令が走行するモードのとき、スイッチ107にON指令を出力、スイッチ109にモータ106に接続するように指令を出力、スイッチ110にモータ106に接続するように指令を出力する。スイッチ制御手段1152は、動作モード指令が充電するモードのとき、スイッチ107にOFF指令を出力、スイッチ109に変圧器105に接続するように指令を出力、スイッチ110に変圧器105に接続するように指令を出力する。
【0049】
図11は、第2実施形態に係る電動移動体3が走行するモードのときの回路構成を示す図である。前述したように、電動移動体3が走行するときは、電動移動体側接続部111は電力供給システム2へ接続されない。また、スイッチ107はON、スイッチ109はモータ106に接続され、スイッチ110はモータ106に接続される。したがって、インバータ101はバッテリ103から直流電力を供給されて、コントローラ115からのインバータ制御指令に従ってモータ106を駆動する。同様に、インバータ102はバッテリ103から直流電力を供給されて、コントローラ115からのインバータ制御指令に従ってモータ106を駆動する。
【0050】
ここで、このモードのときはスイッチ107がONのために、インバータ101とインバータ102の間にループ回路は生成されるが、そのループ回路はリアクトル113及びリアクトル114を含むため、インバータ101とインバータ102の交流端子に出力する電圧に電圧差が発生しても、リアクトル113及びリアクトル114の効果で、そのループ回路に流れる電流は抑制される。そのため、インバータが過電流により停止することはない。なお、リアクトル113及びリアクトル114はいずれか片方があれば同様の効果が得られるため、リアクトル113のみあるいはリアクトル114のみがある構成でもよい。
【0051】
図12は、第2実施形態に係る電動移動体3が充電するモードのときの回路構成を示す図である。前述したように、電動移動体3が充電するときは、電動移動体側接続部111は電力供給システム側接続部201と接続され、電力供給システム2から電動移動体3へ電力が供給される状態となる。また、スイッチ107はOFF、スイッチ109は変圧器105に接続され、スイッチ110は変圧器105に接続される。
【0052】
したがって、電力供給システム2から供給される直流電力はインバータ101で三相交流電力に変換されてリアクトル113を介して変圧器105の一次側に入力される。変圧器105の一次側に入力された三相交流電力は、変圧器105で絶縁され、更に電圧レベルが変換されて、変圧器105の二次側から三相交流電力として出力される。変圧器105の二次側から出力された三相交流電力はリアクトル114を介してインバータ102で直流電力に変換される。その直流電力はバッテリ103に供給されて、バッテリ103を充電する。電動移動体3が充電するモードのときは、インバータ制御指令は図9の説明で述べたように充電指令で与えられる。したがって、インバータ101及びインバータ102に与えられるインバータ制御指令は、バッテリ103を充電するようにインバータ101及びインバータ102を動作させる充電指令となる。
【0053】
すなわち、電動移動体3が充電するモードのときは、インバータ101、リアクトル113、変圧器105、リアクトル114、インバータ102で絶縁型DC/DC変換器を構成して、電力供給システム2から供給される直流電力がDC/DC変換され、バッテリ103が充電される。その結果、バッテリ103は所定の充電量まで充電される。
【0054】
以上の構成により、本実施形態では電動移動体3が走行するときにインバータ101及びインバータ102の間に生成されるループ回路に、リアクトル113及びリアクトル114を備えることで、そのループ回路に流れる電流を抑制することができる。そのため、インバータ101及びインバータ102がその電流により過電流停止することを抑制することが可能となる。
【0055】
以上説明した本実施形態の電動移動体は、次の特徴を有する。
第1実施形態に係る電動移動体1は、第1の蓄電装置(例えば、バッテリ103)及び第2の蓄電装置(例えば、バッテリ104)、第1の電力変換装置(例えば、インバータ101)及び第2の電力変換装置(例えば、インバータ102)を備えて、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機(例えば、モータ106)を回転駆動させて走行(移動)する電動移動体であって、電動移動体は、第1の蓄電装置と第1の電力変換装置の直流部を接続する第1のスイッチ(例えば、スイッチ107)、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置を接続する第2のスイッチ(例えば、スイッチ108)、第1の電力変換装置の直流部に外部から直流電力を供給する直流接続部(例えば、電動移動体側接続部111)、コントローラ112を備える。
【0056】
第2の蓄電装置と第2の電力変換装置の直流部は接続されており、コントローラ112は、電動移動体が走行するモードのときは第1のスイッチをONにし、第2のスイッチをOFFにし、直流接続部が外部充電設備(例えば、電力供給システム2)に接続して第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置を充電するモードのときは、第1のスイッチをOFFにし、第2のスイッチをONにすることを特徴とする。
【0057】
すなわち、インバータ101及びインバータ102でモータ6を回転駆動させて走行する電動移動体1は、バッテリ103とインバータ101の直流部を接続するスイッチ107、バッテリ103とバッテリ104を接続するスイッチ108、インバータ101の直流部に外部から直流電力を供給する電動移動体側接続部111、コントローラ112を備え、バッテリ104とインバータ102の直流部は接続されており、コントローラ112は、電動移動体1が走行するモードのときはスイッチ107をONにし、スイッチ108をOFFにし、電動移動体側接続部111が外部充電設備に接続してバッテリ103及びバッテリ104を充電するモードのときは、スイッチ107をOFFにし、スイッチ108をONにする。これにより、本実施形態では電動移動体1が走行するときにインバータ101及びインバータ102の間にループ回路が生成されず、そのループ回路に電流が流れることを回避することができる。そのため、インバータ101及びインバータ102がその電流により過電流停止することを抑制することが可能となる。
【0058】
電動移動体1は、変圧器105を備え、第1の電力変換装置を変圧器105あるいは電動機の何れかに接続する第3のスイッチ(例えば、スイッチ109)、第2の電力変換装置を変圧器105あるいは電動機の何れかに接続する第4のスイッチ(例えば、スイッチ110)を備える。また、電動移動体1が走行するモードのときは、第3のスイッチは第1の電力変換装置を電動機に接続するとともに、第4のスイッチは第2の電力変換装置を電動機に接続する。これにより、走行するモードのときに、インバータ101及びインバータ102からモータ106に電力供給することができる(図6参照)。
【0059】
直流接続部が外部充電設備に接続して第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置を充電するモードのときは、第3のスイッチは第1の電力変換装置を変圧器の一端に接続するとともに、第4のスイッチは第2の電力変換装置を変圧器の他端に接続する。これにより、充電するモードのときに、電力供給システム2から、インバータ101、変圧器105、インバータ102を介して、バッテリ103及びバッテリ104へ充電することができる(図7参照)。
【0060】
コントローラ112は、電動移動体が走行するモードのときは、第1の蓄電装置及び第2の蓄電装置の端子電圧の差分に応じて、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置に与えるトルク指令を補正する。これにより、電動移動体1が走行するモードのときにバッテリ103及びバッテリ104のバッテリ電圧を常に等しく維持することで、電動移動体1が充電するモードのときにバッテリ103及びバッテリ104を並列接続して同時充電することができる。これにより、バッテリ103及びバッテリ104を個別に充電する必要がなく、充電作業の簡易化を図ることができる(図5参照)。
【0061】
第1実施形態に係る電動移動体1は、第1の蓄電装置(例えば、バッテリ103)及び第2の蓄電装置(例えば、バッテリ104)、第1の電力変換装置(例えば、インバータ101)及び第2の電力変換装置(例えば、インバータ102)を備えて、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機(例えば、モータ106)を回転駆動させて走行する電動移動体であって、電動移動体は、第1の蓄電装置と第1の電力変換装置の直流部を接続する第1のスイッチ(例えば、スイッチ107)、第1の蓄電装置と第2の蓄電装置を接続する第2のスイッチ(例えば、スイッチ108)、コントローラ112を備える。
【0062】
コントローラ112は、電動移動体の走行するモード及び充電するモードの運転モードに応じて、第1のスイッチ及び第2のスイッチの状態を切り替えることを特徴とする。これにより、本実施形態では電動移動体1が走行するときにインバータ101及びインバータ102の間にループ回路が生成されず、そのループ回路に電流が流れることを回避することができる。そのため、インバータ101及びインバータ102がその電流により過電流停止することを抑制することが可能となる。
【0063】
第2実施形態の電動移動体3は、蓄電装置(例えば、バッテリ103)、第1の電力変換装置(例えば、インバータ101)及び第2の電力変換装置(例えば、インバータ102)を備えて、第1の電力変換装置及び第2の電力変換装置で電動機(例えば、モータ106)を回転駆動させて走行する電動移動体であって、蓄電装置は第2の電力変換装置(102)の直流部に接続されており、電動移動体は、蓄電装置と第1の電力変換装置(101)の直流部を接続する第1のスイッチ(例えば、スイッチ107)、変圧器105、第1の電力変換装置を変圧器105あるいは電動機の何れかに接続する第3のスイッチ(例えば、スイッチ109)、第2の電力変換装置を変圧器105あるいは電動機の何れかに接続する第4のスイッチ(例えば、スイッチ110)、コントローラ115を備え、第1の電力変換装置と第3のスイッチの間、あるいは、第2の電力変換装置と第4のスイッチの間、あるいはそれら両方にリアクトル(例えば、リアクトル113,114)を備えることを特徴とする。
【0064】
これにより、電動移動体3が走行するときにインバータ101及びインバータ102の間に生成されるループ回路に、リアクトル113及びリアクトル114を備えることで、そのループ回路に流れる電流を抑制することができる。そのため、インバータ101及びインバータ102がその電流により過電流停止することを抑制することができる。
【0065】
コントローラ115は、電動移動体3が走行するモードのときは第1のスイッチをON、第3のスイッチは、第1の電力変換装置を電動機に接続するとともに、第4のスイッチは第2の電力変換装置を電動機に接続する。これにより、走行するモードのときに、インバータ101及びインバータ102からモータ106に電力供給することができる(図11参照)。
【0066】
電動移動体3は、第1の電力変換装置の直流部に外部から直流電力を供給する直流接続部(例えば、電動移動体側接続部111)を備え、コントローラ115は、直流接続部が外部充電設備(例えば、電力供給システム2)に接続して蓄電装置を充電するモードのときは、第1のスイッチをOFF、第3のスイッチは第1の電力変換装置を変圧器の一端に接続するとともに、第4のスイッチは第2の電力変換装置を変圧器の他端に接続する。これにより、充電するモードのときに、電力供給システム2から、インバータ101、変圧器105、インバータ102を介して、バッテリ103へ充電することができる(図12参照)。
【0067】
なお、本発明は、車両に限らず船舶や航空機の電動化にも適用することができる。また、非電化線区間を蓄電池に蓄えられた電力で走行する鉄道車両や、農業機械などの電動化にも適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 電動移動体
2 電力供給システム(外部充電設備)
3 電動移動体
101 インバータ(第1の電力変換装置)
102 インバータ(第2の電力変換装置)
103 バッテリ(第1の蓄電装置、蓄電装置)
104 バッテリ(第2の蓄電装置)
105 変圧器
106 モータ(電動機)
107 スイッチ(第1のスイッチ)
108 スイッチ(第2のスイッチ)
109 スイッチ(第3のスイッチ)
110 スイッチ(第4のスイッチ)
111 電動移動体側接続部(直流接続部)
112 コントローラ
113 リアクトル
114 リアクトル
115 コントローラ
201 電力供給システム側接続部
202 直流バス
1121 トルク指令補正演算手段
1122 指令切替手段
1123 スイッチ制御手段
1151 指令切替手段
1152 スイッチ制御手段
11211 減算器
11212 ゲイン
11213 加算器
11214 減算器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12