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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】切削工具及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/22 20060101AFI20250306BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B23C5/22
B23C5/06 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021209542
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023094207
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓子
(72)【発明者】
【氏名】中園 彩
(72)【発明者】
【氏名】宿利 健一
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-114259(JP,A)
【文献】特開2015-229235(JP,A)
【文献】特開昭50-110169(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1929945(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/22
B23B29/00-29/04
B23B27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って先端から後端に向かって延び、且つ、前記先端の側に位置するポケットを有する本体部と、
前記ポケットに位置し、且つ、前記先端の側に位置する切刃を有する切削部と、
前記切削部を前記本体部に固定する固定具と、を有する切削工具であって、
前記ポケットは、
前記回転軸の回転方向を向く座面と、
前記座面に対して前記回転軸の近くに位置する拘束側面と、を有し、
前記切削部は、
前記座面と対向する背面と、
前記拘束側面と対向する内側面と、
前記内側面の反対側に位置する第1外側面と、
該第1外側面よりも前記後端の側に位置し、前記固定具が接する第2外側面と、を有し、
前記背面は、
外周側に位置し、且つ、前記座面に接する外側領域と、
前記内側面及び前記外側領域に接続され、且つ、前記座面から離れた内側領域と、を有する、切削工具。
【請求項2】
前記第2外側面、前記座面は平らであって、
前記切削部が前記固定具で締付けられていない状態において、
前記回転軸に直交する断面において、前記第2外側面を延ばした仮想直線が第1仮想直線、前記座面を延ばした仮想直線が第2仮想直線、前記第1仮想直線及び前記第2仮想直線のなす角が第1角であって、
前記回転軸に沿った方向からの平面透視において、前記第2仮想直線及び前記固定具の中心軸のなす角が第2角であって、
90°>(第1角の角度)+(第2角の角度)である、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記切削部は、前記第2外側面及び前記内側面において開口し、且つ、前記固定具が挿入された貫通孔をさらに有し、
先端透視した場合に、
前記外側領域及び前記貫通孔の間隔は、前記内側領域及び前記貫通孔の間隔よりも大きい、請求項1又は2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記ポケットは、前記拘束側面において開口し、且つ、前記貫通孔と対向するネジ孔をさらに有し、
前記切削部が前記固定具で締付けられていない状態において、
前記貫通孔の中心軸が、前記ネジ孔の中心軸に対して傾斜する、請求項3に記載の切削工具。
【請求項5】
前記固定具は、前記第2外側面と当接するネジ頭を有し、
前記切削部が前記固定具で締付けられていない状態において、
前記ネジ頭は、前記貫通孔の中心軸よりも前記回転方向の反対側のみにおいて前記第2外側面と当接する、請求項3又は4に記載の切削工具。
【請求項6】
先端透視した場合に、前記座面及び前記貫通孔の間隔は、前記回転軸に近づくにつれて小さくなる、請求項3~5のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項7】
先端透視した場合に、前記座面及び前記背面の間隔は、前記回転軸に近づくにつれて大きくなる、請求項1~6のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項8】
前記内側面及び拘束側面は互いに当接し、且つ、曲面形状である、請求項1~7のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項9】
前記切削部は、
前記先端の側に位置する第1部分と、
前記第1部分よりも前記後端の側に位置する第2部分と、を有し、
前記第1部分の外径は、前記第2部分の外径よりも大きく、
前記背面及び前記第1外側面は、前記第1部分に位置し、
前記第2外側面は、前記第2部分に位置する、請求項1~8のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項10】
前記第2外側面は平らであって、
先端透視した場合に、
前記背面は、前記第2外側面を延長させた仮想直線と前記第1外面との交点よりも前記回転軸の回転方向の反対側に位置する、請求項9に記載の切削工具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の切削工具を回転させる工程と、
前記切削工具を被削材に接触させる工程と、
前記切削工具を被削材から離す工程と、を有する切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削工具及び切削加工物の製造方法に関する。切削工具の一例として、いわゆる転削工具(フライス工具)が挙げられる。転削工具は、正面フライス加工及びエンドミル加工のような転削加工に用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
切削工具として、例えば特許文献1及び2に記載の転削工具が知られている。特許文献1及び2に記載の転削工具においては、工具本体に、切削インサートなどの切刃を備えたカートリッジ(切刃部材)が取り付けられている。特許文献1に記載の転削工具は、遠心力の及ぶ方向に口元が幅狭となる取付溝を有している。この取付溝及び取付ボルトによってカートリッジが工具本体に締付け固定されている。これにより、切刃チップや構成部品が遠心力によって飛散することを抑制することができる。また、特許文献2に記載の転削工具においては、切刃部材が、クランプネジによって挿入孔の内面に押し付けられて固定されている。これにより、挿入孔内での軸線回りの向きが固定され、安定した切削加工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-011612号公報
【文献】特開2002-331412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の転削工具において、カートリッジは取付ボルトによって遠心力のかかる方向に対してのみ固定されている。そのため、切削時において回転方向の前方から後方に向かって切削負荷が加わる際には、いわゆるびびり振動が発生するおそれがある。一方で、特許文献2に記載の転削工具において、切刃部材は軸線の回転方向の前方からクランプネジによって挿入孔の内面に押し付けられて固定されている。そのため、クランプネジを取り付ける際に時間がかかり、結果的に加工効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、作業性が高く、切削時のびびり振動の発生を低減できる切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に基づく切削工具は、回転軸に沿って先端から後端に向かって延び、且つ、先端の側に位置するポケットを有する本体部と、ポケットに位置し、且つ、先端の側に位置する切刃を有する切削部と、切削部を本体部に固定する固定具と、を有する。ポケットは、回転軸の回転方向の前方を向く座面と、座面に対して回転軸の近くに位置する拘束側面と、を有する。切削部は、座面と対向する背面と、拘束側面と対向する内側面と、内側面の反対側に位置する第1外側面と、第1外側面よりも後端の側に位置し、固定具が接する第2外側面を有する。背面は、外周側に位置し、且つ、座面に接する外側領域と、内側面及び外側領域に接続され、且つ、座面から離れた内側領域と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記の切削工具は、作業性が高く、切削時のびびり振動の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る切削工具を示す斜視図である。
図2図1に示す切削工具をA1方向から見た平面図である。
図3図1に示す切削工具をA2方向から見た平面図である。
図4】実施形態に係る本体部の一部を示す拡大図である。
図5図1に示す切削工具における本体部、第1切削部及び第1固定具などを示す拡大図である。
図6図5に示す切削工具をA3方向から見た平面図である。
図7図6に示す切削工具において、第1切削部が第1固定具で締め付けられていない状態を示す透視図である。
図8図6に示す切削工具において、第1切削部が第1固定具で締め付けられた状態を示す透視図である。
図9】実施形態に係る第1切削部などを示す斜視図である。
図10図9における第1切削部などをA4方向から見た平面図である。
図11図9における第1切削部などをA5方向から見た平面図である。
図12図2に示すXII―XII断面の拡大図である。
図13図2に示すXIII―XIII断面の拡大図である。
図14】一実施形態に係る切削加工物の製造方法の一工程を示す概略説明図である。
図15】一実施形態に係る切削加工物の製造方法の一工程を示す概略説明図である。
図16】一実施形態に係る切削加工物の製造方法の一工程を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の切削工具1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の切削工具1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0010】
実施形態に係る切削工具1は、図1に示すように、回転軸O1を有しており、いわゆる回転工具である。回転工具としては、例えば、フライス工具及びエンドミルが挙げられる。図に示す一例の回転工具は、フライス工具である。なお、回転軸O1は、切削工具1が回転する際の軸であり、切削工具1が有形物として備えているものではない。
【0011】
切削工具1は、図1などに示すように、本体部3、切削部5及び固定具7を備えている。本体部3は、回転軸O1に沿って先端3Aから後端3Bに向かって延びている。本体部3は、図2に示すように、先端3Aの側に位置するポケット9を有する。なお、図2は、図1に示す切削工具1をA1方向から見た(側面視した)図である。切削部5は、ポケット9に位置し、且つ、先端3Aの側に位置する切刃11を有する。固定具7は、切削部5を本体部3に固定するために用いられる部材であり、図1などに示す一例においては、ネジである。なお、以下において、特に断りのない限り、切削部5に固定具7で締め付けられた状態の切削工具1を示すものとする。
【0012】
本体部3は、切削工具1のベースとなる部分である。ポケット9は、1つのみでもよく、図3に示すように複数であってもよい。なお、図3は、図1に示す切削工具1をA2方向(先端3Aの側)から見た図である。本体部3が複数のポケット9を有する場合に、複数のポケット9の1つを第1ポケット9Aとする。切削部5の数は、特に限定されず、図3に示すように複数であってもよい。本体部3が複数のポケット9を有する場合に、第1
ポケット9Aに位置する切削部5を第1切削部5Aとする。固定具7の数は、特に限定されず、図1に示すように複数であってもよい。切削工具1が複数の固定具7を有する場合に、第1切削部5Aを本体部3に固定する固定具7を第1固定具7Aとする。図5などに示す一例においては、第1固定具7Aを第1ネジとしてもよい。
【0013】
回転方向O2は図1に示す方向に限定されない。例えば、切削工具1が図1に示す構成に対して回転軸O1の周りで反転した構成である場合には、回転方向O2が逆方向であってもよい。
【0014】
図1に示す一例において、切削工具1は、先端3Aから後端3Bに向かって、回転軸O1に沿って延びた円盤形状である。なお、説明の便宜上、本体部3において、先端3Aの側及び後端3Bの側に位置する部分をそれぞれ第1端3A及び第2端とする場合がある。また、切削工具1が、第1ポケット9Aなどを有していることから明らかであるように、切削工具1は厳密な円盤形状ではない。回転軸O1に沿った方向における本体部3の長さは、例えば40mm~80mmである。回転軸O1に直交する方向における本体部3の外径は、例えば40mm~350mmである。
【0015】
本体部3は、回転軸O1を中心に回転することが可能である。本体部3の形状に関しては特に限定はなく、例えば、略円柱形状あるいは略円錐形状であってもよく、凹凸部などを有してもよい。本体部3は、複数の部材によって構成されてもよく、1つの部材によって構成されてもよい。
【0016】
第1ポケット9Aは、図6に示すように、回転軸O1の回転方向O2の前方を向く座面13を有している。なお、本体部3が座面13を有していると言い換えてもよい。座面13は本体部3の第1端3Aの側に位置してもよい。座面13の形状は、図4に示す平面形状に限定されず、曲面形状であってもよく、凹凸部を有してもよい。なお、図6は、図5に示す切削工具1をA3方向(第1端3Aの側)から見た図である。
【0017】
第1ポケット9Aは、座面13に対して回転軸O1の近くに位置する拘束側面15を有している。なお、本体部3が拘束側面15を有していると言い換えてもよい。拘束側面15は回転軸O1から離れる方向、すなわち外周側を向いてもよい。拘束側面15の形状は、特に限定されず、平面形状あるいは曲面形状であってもよく、凹凸部を有してもよい。
【0018】
第1ポケット9Aに位置する第1切削部5Aは、第1端3Aの側に位置する切刃11を有する。この切刃11を用いて被削材を切削することにより切削加工物を製造することができる。第1切削部5Aは、複数の部材によって構成されてもよく、1つの部材によって構成されてもよい。図5に示す一例における第1切削部5Aは、切削インサート17及びカートリッジ19を有する。
【0019】
図5に示す一例においては、切削インサート17が切刃11を有する。切刃11は、切削インサート17における回転方向O2の前方、且つ、第1端3Aの側に位置する。なお、切刃11は、この部分のみに位置する必要はない。例えば、切削インサート17における回転方向O2の前方、且つ、第1端3Aの側に位置する切刃11を第1切刃21とした場合に、切削インサート17が、切削インサート17における回転方向O2の前方、且つ、外周の側にも位置する第2切刃23をさらに有してもよい。図5に示す一例においては、第1切刃21及び第2切刃23は切削インサート17における外周側に位置している。第1切刃21及び第2切刃23は、図5などに示すような直線形状に限定されず、緩やかな曲線形状であってもよい。
【0020】
切削インサート17は、カートリッジ19に対して、第1端3Aの側、外周の側、且つ
、回転方向O2の前方に位置する。切削インサート17は、例えば、カートリッジ19にロウ付けされてもよく、また、図5に示す一例のように、インサート孔25を有し、ネジなどのインサート固定具27を用いてカートリッジ19に固定されてもよい。
【0021】
回転軸O1に沿った方向における第1切削部5Aの長さは、例えば1mm~10mmである。回転軸O1の径方向における第1切削部5Aの長さは、例えば0.5mm~10mmである。
【0022】
第1切削部5Aは、前方面29を有してもよい。前方面29は、第1切削部5Aにおいて、回転方向O2の前方に位置する面である。前方面29は、図5に示すように、切削インサート17によって構成されてもよい。前方面29の形状に関しては特に限定はなく、例えば、平面形状あるいは曲面形状であってもよく、凹凸部を有してもよい。
【0023】
前方面29は第1辺31、第2辺33及び第1コーナ35を有してもよい。図5に示す一例において、第1辺31は、第1端3Aの側に位置している。図5に示す一例において、第2辺33は、回転軸O1から離れた外周の側に位置しており、第1コーナ35は第1辺31及び第2辺33に接続されたコーナである。なお、ここでコーナとは2つの辺が交わる点に限定されるものではなく、巨視的には2つの辺が交わる領域であって、微視的には曲線形状あるいは2つの辺のそれぞれに対して傾斜した直線形状であってもよい。
【0024】
図5に示す一例において、第1切刃21は、第1辺31に位置してもよい。上記の通り、第1辺31が第1端3Aの側に位置することから、第1辺31に位置する第1切刃21は、切削部5における第1端3Aの側に位置することができる。また、第2切刃23は、第2辺33に位置してもよい。上記の通り、第2辺33が回転軸O1から離れた側に位置することから、第2辺33に位置する第2切刃23は、切削部5における回転軸O1から離れた側に位置することができる。
【0025】
第1切削部5Aは、第1コーナ35に位置する第3切刃36を有してもよい。第3切刃36は、第1切刃21及び第2切刃23に接続されてもよい。第3切刃36は曲線形状に限定されず、直線形状の部分を有してもよく、円弧形状であってもよい。
【0026】
第1切削部5Aは、座面13と対向する背面37を有する。座面13が回転軸O1の回転方向O2の前方を向いていることから、背面37は回転軸O1の回転方向O2の後方を向いていると言い換えてもよい。背面37は、本体部3の第1端3Aの側に位置してもよい。背面37の形状は、特に限定されず、平面形状あるいは曲面形状であってもよく、凹凸部を有してもよい。
【0027】
第1切削部5Aは、座面13に対して回転軸O1の近くに位置する内側面39を有している。内側面39は拘束側面15と対向してもよい。拘束側面15は外周側を向いていることから、内側面39は回転軸O1に向かう方向、すなわち内周側を向いていると言い換えてもよい。
【0028】
第1切削部5Aは、図5に示すように、内側面39の反対側に位置する第1外側面41を有している。第1外側面41は、外周側を向いてもよく、第2外側面43を有してもよい。また、第1切削部5Aは、第2外側面43を有してもよい。第2外側面43は、第1外側面41よりも第2端の側に位置してもよい。第2外側面43は、平らな面であってもよい。第2外側面43には、第1固定具7Aが接触可能である。より具体的には、第2外側面43には、第1固定具7Aにおけるネジ頭45が接触可能である。
【0029】
第1切削部5Aは、貫通孔47を有してもよい。貫通孔47は内側面39及び第2外側
面43において開口してもよい。貫通孔47に第1固定具7Aが挿入されてもよい。第1固定具7Aが外周側から挿入されやすいように、貫通孔47は、外周側から内周側にかけて延びてもよい。貫通孔47の形状は、図7などに示す形状に限定されない。
【0030】
第1ポケット9Aはネジ孔48を有してもよい。言い換えれば、拘束側面15(本体部3)がネジ孔48を有してもよい。ネジ孔48は外周側を向いて開口してもよい。図7などに示すように、第1切削部5Aが貫通孔47を有している場合には、第1固定具7Aが貫通孔47を通じてネジ孔48に挿入され、第1切削部5Aが本体部3に固定されてもよい。
【0031】
第1切削部5Aは、中心軸N1を有してもよい。ここで、中心軸N1は、第1切削部5Aが有体物として備えるものではない。また、第1切削部5Aが本体部3に固定される際に、第1切削部5Aは中心軸N1を中心に回転してもよい。第1切削部5Aの形状は特に限定はなく、図9においては、第1切削部5Aは略円柱形状になっている。
【0032】
背面37は、図6などに示すように、座面13に接してもよい。このような場合には、第1切削部5Aに加わる切削負荷を座面13が背面37を通じて受け止めることができるため、安定して切削加工を行うことができる。なお、座面13と背面37の全体が接している必要はなく、例えば、図6に示すように、座面13と背面37の一部のみが接してもよい。
【0033】
背面37は、外側領域49及び内側領域51を有している。ここで、外側領域49とは、図6に示すように背面37のうち外周側に位置し、且つ、座面13に接する領域を指す。また、内側領域51とは、背面37のうち内側面39及び外側領域49に接続され、且つ、座面13から離れた領域を指す。
【0034】
第1端3Aの側から見た場合において、切削インサート17の回転軸O1に近い側の端点を通り、前方面29に対して垂直な仮想直線L1を設定する。外側領域49は、その全体が仮想直線L1よりも外周側に位置してもよい。また、内側領域51は、仮想直線L1と交わってもよい。
【0035】
第1切削部5Aを本体部3に固定する際には、まず、図7に示すように、第1固定具7Aが貫通孔47を通じてネジ孔48に挿入される。すなわち、図7は、第1固定具7Aを用いて第1切削部5Aを本体部3に固定する途中の状態を示している。図7においては、ネジ孔48に第1固定具7Aが完全に挿入されている状態ではなく、第1固定具7Aの底部53の付近の一部がネジ孔48に挿入されている状態が図示されている。
【0036】
ネジ孔48に挿入された第1固定具7Aをネジ締めする際に、第1固定具7Aのネジ頭45が第2外側面43に接触し、第1切削部5Aにネジ締めによる負荷が加わり始めた状態が図7に図示されている。このとき、第1切削部5Aの中心軸N1よりも回転軸O1の回転方向O2の後方においてネジ頭45が第2外側面43に接触しており、第1切削部5Aの中心軸N1よりも回転軸O1の回転方向O2の前方においてネジ頭45が第2外側面43から離れている。
【0037】
図8には、第1切削部5Aがネジ孔48に挿入されている第1固定具7Aで締め付けられた状態が図示されている。上記した通り、第1切削部5Aは中心軸N1を中心に回転可能である。そのため、図7に示すようなネジ頭45及び第2外側面43の接触状態において第1固定具7Aのネジ締めが行われると、図8に図示するように第1切削部5Aが中心軸N1の周りにおいて時計回りで回転する。
【0038】
第1切削部5Aが中心軸N1の周りにおいて時計回りで回転することによって、背面37における内周側の部位が座面13から遠ざかり、背面37における外周側の部位が座面13に押し付けられる。結果として、図8に示すように、第1切削部5Aが第1固定具7Aで締め付けられた状態においては、背面37が、座面13に接する外側領域49と、座面13から離れた内側領域51と、を有することができる。外側領域49及び座面13は、面接触であってもよく、また、点接触であってもよい。
【0039】
第1切削部5Aにおける切刃11が受けて本体部3へと伝わる切削負荷の力積は、回転軸O1から離れる外周側であるほど大きくなる。このとき、図6に示す一例の切削工具1においては、背面37における外側領域49が座面13に接していることから、切刃11で生じた大きな力積の切削負荷を安定して本体部3で受け止めることができる。
【0040】
これは、背面37における外周側の部位が座面13に押し付けられていることから、例えば切削負荷が変動する場合であっても背面37における外周側の部位が座面13から離れにくいからである。背面37における外周側の部位が座面13に安定して当接していることから、切刃11で生じた大きな力積の切削負荷を安定して本体部3で受け止めることができる。
【0041】
特に、図6に示す一例においては、切刃11が第1切削部5Aにおける外周の側に位置していることから、背面37において切刃11に対して回転方向O2の後方に位置する部位となる外側領域49で切削負荷を安定して本体部3へと伝えることができる。
【0042】
なお、貫通孔47がない場合であっても、上記の作用を奏することができる。具体的には、第1固定具7Aが止めネジである場合において、第1固定具7Aを締め付けることで第1固定具7Aの底部53における回転軸O1の回転方向O2の後方に位置する部分が第2外側面43に押し当てられることで、背面37が座面13に押し当てられてもよい。このような場合には、切削加工時において、第1切削部5Aに加わる切削負荷を背面37及び座面13の接触部分を通じて本体部3が安定して受け止めることができ、びびり振動の発生を低減することができる。
【0043】
仮に、背面37の全体、すなわち背面37における内側領域51及び外側領域49の両方が座面13に接触し得る構成の場合、第1切削部5Aが本体部3に第1固定具7Aで締め付けられる際に第1切削部5A及び本体部3の製造バラツキに起因して内側領域51が座面13に接触する一方で外側領域49が座面13から離れてしまう恐れがある。また、第1切削部5Aが本体部3に第1固定具7Aで締め付けられた状態で内側領域51及び外側領域49の両方が座面13に接触していたとしても、切削負荷の変動に起因して内側領域51が座面13に接触する一方で外側領域49が座面13から離れてしまう恐れがある。
【0044】
しかしながら、図8に示す一例においては、背面37における内側領域51が座面13から離れているため、背面37における外側領域49が安定して座面13に接触しやすい。また、内側領域51及び座面13の間に一定の間隔があるため、本体部3に第1切削部5Aを容易に取り付けることができる。なお、座面13と内側領域51の間に0.2mm~1mmの空隙があってもよい。
【0045】
また、外側領域49において第1端3Aの側に位置する稜線を外側稜線55、内側領域51において第1端3Aの側に位置する稜線を内側稜線57としたとき、図6に示すように、外側稜線55は、座面13と接しており、内側稜線57は座面13から離れていてもよい。
【0046】
第1切削部5Aはインサート孔25に対向する切削孔59を有してもよい。インサート固定具27は、インサート孔25を通じて切削孔59に挿入されることで、切削インサート17をカートリッジ19に固定してもよい。なお、切削孔59は、いわゆる止まり穴に限定されず、図10に示すように背面37まで貫通してもよい。なお、図10は、図9における第1切削部5AなどをA4方向から見た図である。
【0047】
切削工具1を第1端3Aの側から透視した場合において、外側領域49は、図8に示すように、切削インサート17の後方に位置してもよく、第1切刃21の後方に位置してもよい。このような場合には、第1切削部5Aに加わる切削負荷を座面13が背面37を通じて安定して受け止めることができる。
【0048】
また、図8に示すように、インサート孔25の後方で座面13と接してもよい。言い換えれば、外側領域49は、切削孔59の後方で座面13と接してもよい。具体的には図8に示すように、第1端3Aの側から平面透視した際に、背面37における、切削孔59の両端部を延長させた2つの仮想延長線と座面13との2つの交点の間に位置する領域(以下、「二点間領域S1」とする)と座面13が接してもよい。
【0049】
第1端3Aの側から透視した場合に、背面37と座面13が二点間領域S1の間において接してもよい。すなわち、外側領域49が二点間領域S1に位置してもよい。このような場合には、第1切削部5Aに加わる切削負荷を座面13が背面37を通じてより安定して受け止めることができる。
【0050】
外側領域49及び内側領域51の形状については特に限定はない。例えば、内側領域51は平らであってもよい。ただし、このような場合でも、外側領域49と内側領域51との境界は曲面であってもよい。
【0051】
ポケット9は、曲面形状である湾曲部61を有してもよい。言い換えれば、本体部3は湾曲部61を有してもよい。第1端3Aの側から見た際に、湾曲部61は曲線形状になってもよく、凹形状になってもよい。また、湾曲部61は、座面13より回転軸O1に近い側に位置し、座面13と隣り合ってもよく、図4に示すように、座面13と拘束面15の間に位置してもよい。
【0052】
湾曲部61は、第1切削部5Aから離れてもよい。ポケット9が湾曲部61を有する場合には、本体部3のポケット9と第1切削部5Aの角に位置する部分とが、切削加工時における振動により互いに衝突し欠損を生じるリスクを低減できる。
【0053】
切削工具1を第1端3Aの側から見たとき、座面13は、直線形状になってもよい。このような場合には、第1切削部5Aに加わった切削負荷を座面13が背面37を通じて効率よく受け止めることができる。ここで直線形状とは、厳密な直線形状になっている必要はなく、肉眼で観察した際に直線になっていれば足りる。なお、座面13全体が平面である場合においても同様の作用を奏することができる。
【0054】
第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる前において、ネジ頭45は、図7に示すように、第1固定具7Aの中心軸N2よりも回転方向O2の後方に位置する部分においてのみ第2外側面43と当接してもよい。このような場合には、第1固定具7Aを第1切削部5Aに締付ける際に、ネジ頭45が第1切削部5Aを回転方向O2の後方に押し付けることで座面13が背面37に押し付けられるように第1切削部5Aが回転し、第1切削部5Aを本体部3に安定して固定することができる。
【0055】
ここで、第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる前とは、図7に示すような、
第1固定具7Aの底部53がネジ孔48内に挿入され、ネジ頭45が第2外側面43に点接触した時点を指す。点接触した時点が分からない場合は、第2外側面43とネジ頭45が接触している状態であって、第1固定具7Aを第1切削部5Aに挿入していく過程において、第1固定具7Aから抵抗を感じた時点を第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる前としてもよい。なお、第1固定具7Aが第1切削部5Aに締付けられる前は、第1固定具7Aが第1切削部5Aに締付けられていない状態と言い換えてもよい。
【0056】
第1固定具7Aで第1切削部5Aに締付けられる前における、回転軸O1に直交する断面において、平らな第2外側面43を延ばした仮想直線が第1仮想直線L21、平らな座面13を延ばした仮想直線が第2仮想直線L22、第1仮想直線L21及び第2仮想直線L22のなす角がθ1、回転軸O1に沿った方向からの平面透視において、第2仮想直線L22及び第1固定具7Aの中心軸N2のなす角がθ2であるとき、90°>θ1+θ2であってもよい。
【0057】
具体的には、図7に示すように第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる前の段階において第2仮想直線L22と第1固定具7Aの中心軸N2との交点P1を通り、第1仮想直線L21に対して垂直な第3仮想直線L23において、第2仮想直線L22及び第3仮想直線L23とがなす角度を便宜的にαとする。図8に示すように第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられることで、第1切削部5Aが中心軸N1の周りで回転し、角度αがθ2に近づく。
【0058】
上記した角度αが角度θ2よりも大きい場合には、第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる際に、内側領域51を座面13から離しつつ外側領域49を安定して座面13に押し付けることができる。図7に示す角度θ1、θ2及びαと、三角形の内角の和が180°であることの関係性から、
θ1+α+90°=180°
∴ α=90°-θ1
であり、角度αが角度θ2よりも大きい場合がα>θ2で表されることから、
α=90°-θ1>θ2
∴ 90°>θ1+θ2
との関係性が導き出される。
【0059】
なお、上記にいう回転軸O1に直交する断面とは、いずれかの面あるいは領域(第1外側面41、第2外側面43、座面13、内側領域51)の中心を含む断面であって、それぞれの面あるいは領域ごとの断面であってもよい。また、図7に示すように、第1仮想直線L21及び第2仮想直線L22は、回転軸O1に沿った方向からの平面透視における第2外側面43及び座面13を延ばした仮想直線であってもよい。
【0060】
切削工具1を第1端3Aの側から透視したとき、外側領域49及び貫通孔47の間隔W1は、内側領域51及び貫通孔47の間隔W2よりも大きい。一般的に、切削加工時において、外側領域49の方が内側領域51に比べて負荷がかかりやすい。このような場合には、外側領域49から貫通孔47までの距離が大きい、すなわち、肉厚である外側領域49において、第1切削部5Aにかかる切削負荷を安定して受け止めることができる一方で、内側領域51においては切削負荷が加わりにくくなるため、切削負荷による貫通孔47の変形のリスクを低減できる。
【0061】
なお、上記の間隔は前方面29に対して垂直な直線に沿った間隔でもよく、前方面29が平らでない等により、一義的に垂直を定められない場合には、第1切刃21あるいは座面13に対して垂直な方向の間隔でもよい。また、上記の間隔は切削工具1を第1端3Aの側から透視した場合の間隔に限定されない。例えば、背面37と貫通孔47を含み、且
つ、回転軸O1に対して垂直な断面における間隔であってもよい。
【0062】
上記間隔の比較は、それぞれの間隔の最大値あるいは最小値に限定した比較であってもよい。例えば、外側領域49と貫通孔47との間隔の最大値と内側領域51と貫通孔47の間隔の最大値の比較であってもよく、外側領域49と貫通孔47との間隔の最小値と内側領域51と貫通孔47の間隔の最小値の比較であってもよい。なお、上記間隔は、図8において、貫通孔47の両端の二つの線のうち、回転方向O2の後方に位置する線と各領域との間隔として評価している。
【0063】
第1切削部5Aが第1固定具7Aで締付けられる前において、切削工具1を第1端3Aの側から透視したときに、貫通孔47の中心軸N3が、ネジ孔48の中心軸N4に対して傾斜してもよい。なお、ネジ孔48の中心軸N4を第1固定具7Aの中心軸N2と言い換えてもよい。上記にいう傾斜とは、貫通孔47の中心軸N3とネジ孔48の中心軸N4とのなす角が0°より大きい角度であればよい。
【0064】
なお、傾斜方向に対しては特に限定はなく、例えば、図7においては、第1端3Aの側から見たとき、貫通孔47の中心軸N3はネジ孔48の中心軸N4よりも回転軸O1の回転方向O2の前方に傾いている。切削加工時において第1切削部5Aの外周側に突発的な切削負荷が加わり、貫通孔47における第2外側面43の側の部分が回転軸O1の回転方向O2の後方に僅かに移動した際に、上記の構成を有していると、第1固定具7Aと貫通孔47が衝突するリスクを低減できる。
【0065】
切削工具1を第1端3Aの側から透視したとき、座面13及び貫通孔47の間隔W3は、回転軸O1に近づくにつれて小さくなってもよい。第1切削部5Aにかかる切削負荷は回転軸O1から離れるにつれて大きくなるため、切削工具1が上記の構成を有する場合には、切削負荷の大きさに対応した第1切削部5Aの肉厚を確保することができる。
【0066】
ここで、上記の間隔は前方面29に対して垂直な直線に沿った間隔でもよく、前方面29が平らでない等により、一義的に垂直を定められない場合には、第1切刃21あるいは座面13に対して垂直な方向の間隔でもよい。また、上記の間隔は切削工具1を第1端3Aの側から透視した場合の間隔に限定されない。例えば、座面13と貫通孔47を含み、且つ、回転軸O1に対して垂直な断面における間隔であってもよい。
【0067】
なお、回転軸O1に近づくにつれて大きくなる、とは、厳密に上記の間隔が大きくなり続ける必要はなく、例えば、上記の間隔が変わらない箇所があってもよい。また、図8において、貫通孔47の両端の二つの線のうち、回転方向O2の後方に位置する線と座面13との間隔を座面13及び貫通孔47の間隔W3としている。
【0068】
切削工具1を第1端3Aの側から透視したとき、座面13及び背面37の間隔W4は、回転軸O1に近づくにつれて大きくなってもよい。第1切削部5Aにかかる切削負荷は回転軸O1から離れるにつれて大きくなるため、切削工具1が上記の構成を有する場合には、切削負荷の大きさに対応した第1切削部5Aの肉厚を確保することができ、切削負荷による貫通孔47の変形のリスクを低減できる。
【0069】
ここで、上記の間隔は、前方面29に対して垂直な直線に沿った間隔でもよく、前方面29が平らでない等により、一義的に垂直を定められない場合には、第1切刃21あるいは座面13に対して垂直な方向の間隔でもよい。また、上記の間隔は切削工具1を第1端3Aの側から透視した場合の間隔に限定されない。例えば、座面13と背面37を含み、且つ、回転軸O1に対して垂直な断面における間隔であってもよい。
【0070】
なお、回転軸O1に近づくにつれて大きくなる、とは、厳密に上記の間隔が大きくなり続ける必要はなく、例えば、上記の間隔が変わらない箇所があってもよい。
【0071】
内側面39及び拘束側面15は、当接してもよい。このような場合には、第1切削部5Aを本体部3に安定して固定することができる。内側面39及び拘束側面15は、図8などに示すように、曲面形状であってもよい。このような場合には、上記の安定固定性を確保しつつ、本体部3に第1切削部5Aを容易に取り付けることができる。また、内側面39及び拘束側面15は、平面形状であってもよい。このような場合には、第1切削部5Aを本体部3により安定して固定することができる。なお、内側面39及び拘束側面15は、平行であってもよい。
【0072】
第1切削部5Aは、図11に示すように、第1端3Aの側に位置する第1部分63と、第1部分63よりも第2端の側に位置する第2部分65を有してもよい。第1部分63の外径R1は、図12及び13のように、第2部分65の外径R2よりも大きくてもよい。このような場合には、切刃11を安定した位置に保持しやすくなる。ここで外径とは、第1部分63あるいは第2部分65が円柱形状であるときは中心軸N1からの半径を比較してもよい。
【0073】
また、第1部分63あるいは第2部分65が円柱形状でないときは、第1部分63の中心軸N5及び第2部分65の中心軸N6から最も離れた端点からの距離どうしを比較してもよく、第1部分63の中心軸N5及び第2部分65の中心軸N6に最も近い端点からの距離どうしを比較してもよい。また、第1部分63及び第2部分65において、第1端3Aの側から第2端の側に向かうにつれて外径が一定でない場合は、回転軸O1に沿う方向における各部分の中点での外径で評価してもよい。
【0074】
なお、図11は、図9における第1切削部5AなどをA5方向から見た図である。図12は切削工具1を図2のXII―XII線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。XII―XII断面は、第1部分63を通り、且つ、回転軸O1に垂直な断面である。図13は切削工具1を図2のXIII―XIII線に沿って切断した状態を拡大して示す断面図である。XIII―XIII断面は、第2部分65を通り、且つ、回転軸O1に垂直な断面である。
【0075】
第1部分63は、背面37を有してもよい。第1部分63は、切刃11を有してもよい。図12においては、第1部分63が背面37及び切削インサート17を有している。背面37と切刃11が同じ部分にある場合には、切削負荷を背面37で安定して受け止めることができる。また、第2部分65は、第2外側面43及び内側面39を有してもよい。図13においては、第2部分65は第2外側面43及び内側面39を有している。上記の場合、すなわち、切刃11と内側面39が別の部分にある場合には、第1固定具7Aに過度な切削負荷がかかり、第1固定具7Aが変形するリスクを低減できる。
【0076】
第2部分65は、図5に示すように貫通孔47を有してもよい。このように、切刃11と貫通孔47が別の部分にある場合には、貫通孔47に過度な切削負荷がかかり、貫通孔47が変形するリスクを低減できるとともに切削部5分の肉厚も確保することができる。
【0077】
切削工具1は、本体部3及び第1切削部5Aの間に、調節部材67を有してもよい。切削工具1が調節部材67を有している場合には、調節部材67によって、切刃11の刃先位置を調節することができる。調節部材67は調節孔69を有してもよい。
【0078】
調節部材67は調節孔69を有してもよい。調節孔69にレンチ等を差し込んで回すことで切刃11の刃先位置を調節することができる。調節孔69の開口部は回転軸O1の回
転方向O2の外周側を向いていてもよい。このような場合にはレンチ等を調節孔69に容易に挿入することができる。調節部材67において調節孔69が位置する部分以外は本体部3によって覆われてもよい。このような場合には、切削加工時に調節部材67が飛散するリスクを低減できる。
【0079】
切削工具1を第1端3Aの側から透視したとき、背面37は、第2外側面43を延長させた仮想直線L3と第1外側面41との交点P2よりも回転軸O1の回転方向O2の後方に位置してもよい。このような場合には、第1切削部5Aにおける外周側の肉厚を確保することができ、安定して切削加工を行うことができる。
【0080】
ネジ頭45は、図8に示すように、回転軸O1の外周側を向いていてもよい。このような場合には第1切削部5Aに第1固定具7Aを容易に挿入することができる。また、切削工具1を第2端の側から透視した際に、ネジ頭45と第1部分63が重なってもよい。このような場合には切削加工の際に切屑が第1部分63にあたることによって第1固定具7Aが損傷するリスクを低減できる。例えば、図10に示すように第1切削部5Aが切削ポケット71を有し、切削ポケット71の上部が曲面形状であって、切削インサート17の一部を上から覆うような形状を採用してもよい。
【0081】
切削工具1を第1端3Aの側から見たときに、座面13と第1切刃21とのなす角が外周側に開いた角であってもよい。このような場合には、第1切削部5Aの切刃11と座面13との距離が大きくなり、肉厚を確保することができ、安定して切削加工を行うことができる。なお、第1切刃21を前方面29と置き換えてもよい。
【0082】
切削工具1を第1端3Aの側から見たときに、座面13と第1切刃21は平行であってもよい。このような場合には、第1切削部5Aに係る切削負荷を座面13が背面37を通じて安定して受け止めることができる。ここで平行とは、厳密に座面13を延長させた直線と第1切刃21を延長させた直線とのなす角が0°であることを意味するものではない。当該角度が-5°~5°であれば、座面13と第1切刃21が平行であると見做してもよい。なお、第1切刃21を前方面29と置き換えてもよい。
【0083】
切削インサート17の材質としては、例えば、超硬合金、サーメット及び硬質材料などが挙げられる。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられる。WC-Coは、炭化タングステン(WC)にコバルト(Co)の粉末を加えて焼結して生成される。WC-TiC-Coは、WC-Coに炭化チタン(TiC)を添加したものである。WC-TiC-TaC-Coは、WC-TiC-Coに炭化タンタル(TaC)を添加したものである。
【0084】
サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料である。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)及び窒化チタン(TiN)などのチタン化合物を主成分としたものが挙げられる。また、硬質材料としては、例えば、cBN(Cubic Boron Nitride)、PCD(PolyCrystalline Diamond)等が挙げられる。
【0085】
切削インサート17の表面は、化学蒸着(CVD)法又は物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされていてもよい。被膜の組成としては、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)及びアルミナ(Al)などが挙げられる。
【0086】
本体部3の材質としては、鋼、鋳鉄及びアルミ合金などを用いることができる。靱性を高めるという観点では、本体部3の材質として、鋼を用いてもよい。
【0087】
<切削加工物(machined product)の製造方法>
次に、限定されない実施形態の切削加工物101の製造方法について、上述の限定されない実施形態に係る切削工具1を用いる場合を例に挙げて詳細に説明する。以下、図14図16を参照しつつ説明する。なお、図14図16においては、切削加工物101の製造方法の一例として、被削材102への切削加工の工程を図示している。また、視覚的な理解を容易にするため、図16において、切削された部分にハッチングを付している。
【0088】
限定されない実施形態にかかる切削加工物101の製造方法は、以下の(1)~(3)の工程を備え得る。
【0089】
(1)切削工具1を、回転軸O1を中心に回転方向O2に回転させ、被削材102に向かって送り方向Y1に切削工具1を近づけてもよい(図14参照)。
【0090】
本工程は、例えば、被削材102を、切削工具1を取り付けた工作機械のテーブル上に固定し、切削工具1を回転した状態で近づけることにより行うことができる。なお、本工程では、被削材102と切削工具1とは相対的に近づけばよく、被削材102を切削工具1に近づけてもよい。
【0091】
(2)切削工具1をさらに被削材102に近づけることによって、回転している切削工具1を被削材102の表面の所望の位置に接触させて、被削材102を切削してもよい(図15参照)。
【0092】
本工程においては、切刃11を被削材102の表面の所望の位置に接触させてもよい。
【0093】
(3)切削工具1を被削材102からY2方向に離してもよい(図16参照)。
【0094】
本工程においても、上述の(1)の工程と同様に、被削材102から切削工具1を相対的に離せばよく、例えば被削材102を切削工具1から離してもよい。なお、切削加工としては、例えば、図に示すようなフライス加工の他にも、プランジ加工、倣い加工及び斜め沈み込み加工などが挙げられ得る。
【0095】
以上のような工程を経ることによって、優れた加工性を発揮することが可能である。
【0096】
なお、以上に示したような被削材102の切削加工を複数回行う場合であって、例えば、1つの被削材102に対して複数の切削加工を行う場合には、切削工具1を回転させた状態を保持しつつ、被削材102の異なる箇所に切削工具1を接触させる工程を繰り返してもよい。
【0097】
被削材102の材質としては、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属などが挙げられ得る。
【符号の説明】
【0098】
1・・・切削工具
3・・・本体部
3A・・・先端(第1端)
3B・・・後端(第2端)
5・・・切削部
5A・・・第1切削部
7・・・固定具
7A・・・第1固定具
9・・・ポケット
9A・・・第1ポケット
11・・・切刃
13・・・座面
15・・・拘束側面
17・・・切削インサート
19・・・カートリッジ
21・・・第1切刃
23・・・第2切刃
25・・・インサート孔
27・・・インサート固定具
29・・・前方面
31・・・第1辺
33・・・第2辺
35・・・第1コーナ
36・・・第3切刃
37・・・背面
39・・・内側面
41・・・第1外側面
43・・・第2外側面
45・・・ネジ頭
47・・・貫通孔
48・・・ネジ孔
49・・・外側領域
51・・・内側領域
53・・・底部
55・・・外側稜線
57・・・内側稜線
59・・・切削孔
61・・・湾曲部
63・・・第1部分
65・・・第2部分
67・・・調節部材
69・・・調節孔
71・・・切削ポケット
101・・・切削加工物
102・・・被削材
O1・・・回転軸
O2・・・回転方向
N1、N2、N3、N4、N5、N6・・・中心軸
L1、L3・・・仮想直線
L21・・・第1仮想直線
L22・・・第2仮想直線
L23・・・第3仮想直線
S1・・・二点間領域
W1、W2、W3、W4・・・間隔
P1、P2・・・交点
R1、R2・・・外径
Y1・・・送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16