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特許7645238ヘモグロビンの影響軽減方法、糖化ヘモグロビンの測定方法、糖化ヘモグロビン測定試薬、及び糖化ヘモグロビン測定キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】ヘモグロビンの影響軽減方法、糖化ヘモグロビンの測定方法、糖化ヘモグロビン測定試薬、及び糖化ヘモグロビン測定キット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/26 20060101AFI20250306BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20250306BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20250306BHJP
   C12P 3/00 20060101ALN20250306BHJP
【FI】
C12Q1/26 ZNA
C12Q1/28
G01N33/72 A
C12P3/00 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022509274
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047934
(87)【国際公開番号】W WO2021192466
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020055731
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】キヤノンメディカルダイアグノスティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
(72)【発明者】
【氏名】荒武 知子
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012607(WO,A1)
【文献】特開2010-187604(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021530(WO,A1)
【文献】国際公開第01/002438(WO,A1)
【文献】特表2009-544315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定するヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法において、
前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、6,6-ジチオジニコチン酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-エチルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させることを特徴とする糖化ヘモグロビンの測定方法における、ヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項2】
前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、糖化ヘモグロビンの変性剤存在下に反応させる、請求項1に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項3】
前記過酸化水素の測定が、過酸化水素測定試薬により行われる、請求項1又は2に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項4】
前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、請求項に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項5】
前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、請求項に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項6】
前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、請求項に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
【請求項7】
ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、6,6-ジチオジニコチン酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-エチルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定することを特徴とする、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項8】
前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、糖化ヘモグロビンの変性剤存在下に反応させる、請求項に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項9】
前記過酸化水素の測定が、過酸化水素測定試薬により行われる、請求項7又は8に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項10】
前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、請求項に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項11】
前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、請求項10に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項12】
前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、請求項11に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
【請求項13】
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、及び6,6-ジチオジニコチン酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-エチルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定試薬。
【請求項14】
さらに、糖化ヘモグロビンの変性剤を含む、請求項13に記載の測定試薬。
【請求項15】
さらに、過酸化水素測定試薬を含む、請求項13又は14に記載の測定試薬。
【請求項16】
前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、請求項15に記載の測定試薬。
【請求項17】
前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、請求項16に記載の測定試薬。
【請求項18】
前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、請求項17に記載の測定試薬。
【請求項19】
6,6-ジチオジニコチン酸、6-マレイミドヘキサン酸、N-エチルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第1試薬と、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを含む第2試薬とを含むヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定キット。
【請求項20】
糖化ヘモグロビンの変性剤を、第1試薬と第2試薬のいずれか一方又は両方に含む、請求項19に記載の測定キット。
【請求項21】
さらに、ペルオキシダーゼ及びロイコ型色原体を、それぞれ第1試薬と第2試薬、又は、第2試薬と第1試薬に含む、請求項19又は20に記載の測定キット。
【請求項22】
前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、請求項21に記載の測定キット。
【請求項23】
前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、請求項22に記載の測定キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘモグロビンの影響軽減方法、糖化ヘモグロビンの測定方法、糖化ヘモグロビン測定試薬、及び糖化ヘモグロビン測定キットに関する。
本願は、2020年3月26日に、日本に出願された特願2020-55731号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
糖化タンパク質は、生体内の血液等の体液や毛髪等の生体試料中に含まれている。血液中に存在する糖化タンパク質の濃度は、血清中に溶解しているグルコース等の糖類の濃度に依存しており、臨床診断分野において、血液中の糖化タンパク質であるヘモグロビンA1c(以下、HbA1cという)の濃度の測定が、糖尿病の診断やモニタリングに用いられている(非特許文献1参照)。ヘモグロビンは、α鎖及びβ鎖の2種類のサブユニットを各々2つ持つ、分子量64,000のヘムタンパク質である。HbA1cは特にβ鎖のN末端バリン残基が糖化されたものと定義されている。このHbA1cを測定する方法としては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いる機器分析的方法(非特許文献2参照)、抗原抗体反応を用いる免疫測定法(非特許文献3)等が知られていた。
【0003】
近年、汎用性のある自動分析装置への適用が可能であり、また、操作も簡便なHbA1cの酵素的測定法の開発が進んでおり、種々の方法が報告されている。これまで報告されているHbA1cの酵素的測定法は、主として、プロテアーゼと糖化ペプチドオキシダーゼとを用いる方法である。すなわち、血球中のHbA1cにプロテアーゼを作用させて、糖化ペプチドであるフルクトシルジペプチド(Fru-Val-His)を生成させ、生成した当該フルクトシルジペプチドに対して、フルクトシルペプチドオキシダーゼを作用させて過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を測定することにより、検体中のHbA1cを測定する方法(特許文献1参照)や、血球中のHbA1cにプロテアーゼを作用させて、糖化ペプチドであるフルクトシルヘキサペプチド(Fru-Val-His-Leu-Thr-Pro-Glu)を生成させ、生成した当該フルクトシルヘキサペプチドに対して、フルクトシルヘキサペプチドオキシダーゼを作用させて過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を測定することにより、検体中のHbA1cを測定する方法(特許文献2~4参照)である。一方で、プロテアーゼを用いることなく、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を用いて、検体中の糖化ヘモグロビンを測定する方法も知られている(特許文献4~7、非特許文献4参照)。
【0004】
また、プロテアーゼと糖化ペプチドオキシダーゼとを用いる糖化ヘモグロビン測定方法において、糖化ヘモグロビン測定用試料に添加されたヘモグロビン安定化剤であるチオール化合物の影響を軽減するためにチオール封鎖剤を用いる方法が報告されている(特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-95598号公報
【文献】国際公開第2008/108385号
【文献】国際公開第2013/162035号
【文献】国際公開第2015/005258号
【文献】国際公開第2015/005257号
【文献】国際公開第2015/060429号
【文献】国際公開第2018/021530号
【文献】特開2010-187604号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Clin Chem Lab Med,第36巻、p.299-308(1998).
【文献】Diabetes,第27巻、第2号、p.102-107(1978).
【文献】日本臨床検査自動化学会会誌、第18巻、第4号、p.620 (1993).
【文献】Scientific Reports(2019) 9:942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プロテアーゼを用いることなく、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を用いる糖化ヘモグロビンの測定方法においては、ヘモグロビン含有試料中に存在する還元性物質であるヘモグロビンの影響を受け、正確に検体中の糖化ヘモグロビンの濃度を測定できないという課題がある。
従って、本発明の目的は、プロテアーゼを用いることなく、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を用いる糖化ヘモグロビンの測定方法において、ヘモグロビン含有試料中に存在するヘモグロビンの影響を軽減する方法、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定を簡便かつ正確に測定する方法、糖化ヘモグロビン測定試薬及び糖化ヘモグロビン測定キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討し、プロテアーゼを用いることなく、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を用いるヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させることにより、ヘモグロビン含有試料中に存在するヘモグロビンの影響が軽減され、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを簡便かつ正確に測定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[27]に関する。
[1] ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定するヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法において、
前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させることを特徴とする糖化ヘモグロビンの測定方法における、ヘモグロビンの影響軽減方法。
[2] 前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、糖化ヘモグロビンの変性剤存在下に反応させる、[1]に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[3] 前記ジチオ系化合物が、6,6-ジチオジニコチン酸又はその誘導体である、[1]又は[2]に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[4] 前記マレイミド系化合物が、6-マレイミドヘキサン酸又はその誘導体である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[5] 前記過酸化水素の測定が、過酸化水素測定試薬により行われる、[1]~[4]のいずれか一項に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[6] 前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、[5]に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[7] 前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、[6]に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[8] 前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、[7]に記載のヘモグロビンの影響軽減方法。
[9] ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定することを特徴とする、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[10] 前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、糖化ヘモグロビンの変性剤存在下に反応させる、[9]に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[11] 前記ジチオ系化合物が、6,6-ジチオジニコチン酸又はその誘導体である、[9]又は[10]に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[12] 前記マレイミド系化合物が、6-マレイミドヘキサン酸又はその誘導体である、[9]~[11]のいずれか一項に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[13] 前記過酸化水素の測定が、過酸化水素測定試薬により行われる、[9]~[12]のいずれか一項に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[14] 前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、[13]に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[15] 前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、[14]に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[16] 前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、[15]に記載の糖化ヘモグロビンの測定方法。
[17] 糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、及びジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定試薬。
[18] さらに、糖化ヘモグロビンの変性剤を含む、[17]に記載の測定試薬。
[19] さらに、過酸化水素測定試薬を含む、[17]又は[18]に記載の測定試薬。
[20] 前記過酸化水素測定試薬が、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬である、[19]に記載の測定試薬。
[21] 前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、[20]に記載の測定試薬。
[22] 前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、[21]に記載の測定試薬。
[23] ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第1試薬と、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを含む第2試薬とを含むヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定キット。
[24] 糖化ヘモグロビンの変性剤を、第1試薬と第2試薬のいずれか一方又は両方に含む、[23]に記載の測定キット。
[25] さらに、ペルオキシダーゼ及びロイコ型色原体を、それぞれ第1試薬と第2試薬、又は、第2試薬と第1試薬に含む、[23]又は[24]に記載の測定キット。
[26] 前記ロイコ型色原体が、フェノチアジン系色原体である、[25]に記載の測定キット。
[27] 前記フェノチアジン系色原体が、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン又はその塩である、[26]に記載の測定キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、プロテアーゼを用いることなく、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を用いるヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法において、ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンの影響を軽減する方法、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを簡便かつ正確に測定する方法、糖化ヘモグロビン測定試薬及び糖化ヘモグロビン測定キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】FPOX-47△3を第2試薬に含むキットAを用いる、ヘモグロビン含有試料中のHbA1cの測定における、HbA1c濃度と吸光度差△Eとの関係を示すグラフである。縦軸は吸光度差△E(Abs×10000)を、横軸はHbA1c濃度(μmol/L)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)糖化ヘモグロビン測定方法における、ヘモグロビンの影響軽減方法
本発明の糖化ヘモグロビン測定方法における、ヘモグロビンの影響軽減方法は、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定するヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法において、前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させることを特徴とする方法である。
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定方法は、具体的には、以下の工程を含む方法である。
【0013】
(i)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させて、過酸化水素を生成させる工程;
(ii)前記工程(i)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(iii)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(i)及び(ii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(ii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
【0014】
上記工程(i)において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させる工程は、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンとを水性媒体中で反応させた後に、前記水性媒体に糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を添加して、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させる工程であってもよい。具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0015】
(i)ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンと、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを水性媒体中で反応させる工程;
(ii)糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を、前記工程(i)の水性媒体に添加して、過酸化水素を生成させる工程;
(iii)前記工程(ii)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(iv)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(i)~(iii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(iii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
【0016】
また、本発明のヘモグロビンの影響軽減方法における、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法は、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量(すなわち、ヘモグロビンと糖化ヘモグロビンを合わせた総量)に対する割合を算出する工程をも包含する。この場合、本発明のヘモグロビンの影響軽減方法における、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法は、具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0017】
(i)ヘモグロビン含有試料中の総ヘモグロビン量を測定する工程;
(ii)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させて、過酸化水素を生成させる工程;
(iii)前記工程(ii)で生成した前記過酸化水素を測定する工程;
(iv)既知量の糖化ヘモグロビンを用いて上記(ii)及び(iii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン量との関係を表す検量線に、前記工程(iii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量を測定する工程;及び、
(v)前記工程(i)で測定した前記総ヘモグロビン量と、前記工程(iv)で測定した前記糖化ヘモグロビン量とから、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量に対する割合を算出する工程。
【0018】
上記工程(ii)において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させる工程は、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンとを水性媒体中で反応させた後に、前記水性媒体に糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を添加して、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させる工程であってもよい。具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0019】
(i)ヘモグロビン含有試料中の総ヘモグロビン量を測定する工程;
(ii)ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンと、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを水性媒体中で反応させる工程;
(iii)糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を、前記工程(ii)の水性媒体に添加して、過酸化水素を生成させる工程;
(iv)前記工程(iii)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(v)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(ii)~(iv)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(iv)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
(vi)前記工程(i)で測定した前記総ヘモグロビン量と、前記工程(v)で測定した前記糖化ヘモグロビン量とから、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量に対する割合を算出する工程。
【0020】
尚、前記工程(i)の総ヘモグロビン量の測定は、ヘモグロビン含有試料に、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を添加した後に行うこともできる。
【0021】
また、前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応は、糖化へモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応を促進するように、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの構造を変化させる、糖化ヘモグロビンの変性剤の存在下で行うこともできる。糖化へモグロビンの変性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばアルキルグルコシド、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば第四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、イソキノリニウム塩等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えばN-アシルタウリン、アルキルスルホ酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、N-アシルアミノ酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルリン酸、アルキルリン酸、アルキルスルホン酸、アルケニルスルホン酸、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルカルボキシベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法における、糖化ヘモグロビンの変性剤の反応液中の濃度は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はないが、0.01~50g/Lが好ましく、0.1~5g/Lがより好ましく、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50g/Lである。
【0022】
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法におけるヘモグロビン含有試料は、ヘモグロビンを含有し、本発明における糖化ヘモグロビンの測定方法が適用可能な試料であれば特に制限はなく、例えば全血、血球、血球に血漿が混在した試料、これらの試料を溶血処理した試料等が挙げられる。溶血処理としては、全血、血球、血球に血漿が混在した試料を溶血させる処理であれば特に制限はなく、例えば物理的方法、化学的方法、生物学的方法等が挙げられる。物理的方法としては、例えば蒸留水等の低張液を用いる方法、超音波を用いる方法等が挙げられる。化学的方法としては、例えばメタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒を用いる方法、ポリオキシエチレン系界面活性剤を用いる方法等が挙げられる。生物学的方法としては、例えば抗体や補体を用いる方法等が挙げられる。
【0023】
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法における糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビンにグルコース等の糖が結合して生成したものであり、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、HbA1c等が挙げられ、HbA1cが好ましい。
【0024】
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法においては、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が使用される。
【0025】
本発明のヘモグロビンの影響軽減方法における、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の反応液中の濃度は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はないが、0.01~10g/Lが好ましく、0.1~1g/Lがより好ましく、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10g/Lである。
【0026】
前記ジチオ系化合物としては、特に制限はなく、例えば、6,6-ジチオジニコチン酸、2,2-ジチオジ安息香酸、5,5-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)、4,4-ジチオ二酪酸、5,5-ジチオビス(1-フェニル-1Hテトラゾール)等が挙げられるが、6,6-ジチオジニコチン酸(DTDN)又はその誘導体が好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記マレイミド系化合物としては、特に制限はなく、例えば、6-マレイミドヘキサン酸、N-エチルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられるが、6-マレイミドヘキサン酸(6-MH)又はその誘導体が好ましい。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記ジチオ系化合物と前記マレイミド系化合物とを組み合わせて用いることもできる。
【0028】
総ヘモグロビン量は、公知の方法、例えばシアンメトヘモグロビン法、オキシヘモグロビン法、SLS-ヘモグロビン法等によって測定することができる。総ヘモグロビン量は、ヘモグロビン含有試料そのもののみならず、ヘモグロビン含有試料に、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を添加して得られる試料に対して、シアンメトヘモグロビン法、オキシヘモグロビン法、SLS-ヘモグロビン法等を適用することによっても測定することができる。
【0029】
ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中での、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応は、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素が糖化ヘモグロビンに作用し得る条件であれば、いかなる条件下でも行うことができる。
【0030】
ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応は、水性媒体中で行うことが好ましい。
水性媒体としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする水性媒体であれば特に制限はなく、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等が挙げられ、緩衝液が好ましい。
水性媒体のpHは、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とするpHであれば特に制限はなく、例えばpH4、5、6、7、8、9、10である。水性媒体として緩衝液を用いる場合には、設定するpHに応じた緩衝剤を用いることが望ましい。緩衝液に用いる緩衝剤としては、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、グッドの緩衝剤等が挙げられる。
【0031】
グッドの緩衝剤としては、例えば2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸(HEPES)、3-〔N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ〕-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕-2-ヒドロキシ-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、3-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)、3-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕プロパンスルホン酸〔(H)EPPS〕、N-〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕グリシン(Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-シクロヘキシル-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)等が挙げられる。
緩衝液の濃度は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はないが、0.001~2.0mol/Lが好ましく、0.005~1.0mol/Lがより好ましく、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mol/Lである。
【0032】
ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応における反応温度は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする反応温度であれば特に制限はないが、10~50℃が好ましく、20~40℃がより好ましく、例えば、10、15、20、25、30、35、37、40、45、50℃である。また、当該反応における反応時間は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする反応時間であれば特に制限はないが、1分間~3時間が好ましく、2.5分間~1時間がより好ましく、例えば、1分、1.5分、2分、2.5分、3分、3.5分、4分、4.5分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、20分、30分、40分、50分、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間である。糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素の濃度としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はないが、0.1~30kU/Lが好ましく、0.2~15kU/Lがより好ましく、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30kU/Lである。
【0033】
本発明において、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素の酵素活性(U)は、以下の方法により算出することができる。
<酵素活性測定用試薬>
第1試薬
リン酸緩衝液(pH8.0) 0.1mmol/L
N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-サクシニルエチレンジアミン(EMSE) 0.3g/L
ペルオキシダーゼ 3kU/L
4-アミノアンチピリン 0.1g/L
【0034】
第2試薬
フルクトシルバリン水溶液 1.7mmol/L
なお、上記フルクトシルバリン水溶液は、J. Agric. Food Chem., 第24巻、第1号、p.70-73 (1976) に記載された方法により調製することができる。
【0035】
<検体希釈液>
リン酸緩衝液(pH8.0) 10mmol/L
牛血清アルブミン 0.15%
<サンプル>
FPOX-47△3(糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素)を上記の検体希釈液で希釈したもの
【0036】
<測定>
反応セルへ、上記サンプル(2μL)と上記酵素活性測定用試薬の第1試薬(150μL)とを添加し、37℃で3分間反応(第1反応)させた後、上記酵素活性測定用試薬の第2試薬(20μL)を添加し、当該第2試薬を添加した3分後の反応液の吸光度[Abs酵素(3分後)]、及び、当該第2試薬を添加した5分後の反応液の吸光度[Abs酵素(5分後)]を、共に主波長546nm、副波長700nmで測定し、Abs酵素(5分後)からAbs酵素(3分後)を差し引き、吸光度差△Abs’酵素を算出し、さらに算出した吸光度差△Abs’酵素を2(分)で除して、1分間当たりの吸光度変化量△Abs’酵素/分を算出した。
上記サンプルの代わりに上記検体希釈液を用いる以外は、同様の方法により、吸光度差△Abs’ブランク/分を算出した。
算出した△Abs’酵素/分から△Abs’ブランク/分を差し引き、当該酵素に対する吸光度差△Abs酵素/分を決定した。
【0037】
<酵素活性>
上記で決定した△Abs酵素/分を基に、以下の式(I)により酵素活性を算出した。
【0038】
【数1】
上記式(I)において、33.8は、反応により生成されるキノイミン色素のミリモル吸光係数[(mmol/L)-1・cm-1]である。
上記式(I)において、0.5は、1molの過酸化水素により生成されるキノイミン色素のmol数である。
【0039】
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素としては、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンに作用し、糖化ヘモグロビンから過酸化水素を生成させる酵素であれば特に制限はなく、例えば国際公開第2015/005258号に記載の酵素、国際公開第2015/060429号に記載のアマドリア一ゼ等が挙げられ、それらの内容をここに援用する。具体的には、国際公開公報第2015/005258号に記載されたFPOX-18A、FPOX-18B、FPOX-18C、FPOX-18D、FPOX19~46等が挙げられる。該酵素の改変体の具体例としては、例えば後述する参考例1で製造されるFPOX-47△3等が挙げられる。
【0040】
生成した過酸化水素の測定方法としては、過酸化水素を測定し得る方法であれば特に制限はなく、例えば電極を用いる方法、過酸化水素測定用試薬を用いる方法等が挙げられ、過酸化水素測定用試薬を用いる方法が好ましい。過酸化水素測定用試薬は、過酸化水素を検出可能な物質に変換するための試薬である。検出可能な物質としては、例えば色素、光(発光)、蛍光等が挙げられ、色素が好ましい。
【0041】
検出可能な物質が色素の場合、過酸化水素測定用試薬は、ペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質と酸化発色型色原体を含む試薬等が挙げられる。酸化発色型色原体としては、酸化カップリング型色原体、ロイコ型色原体等が挙げられ、ロイコ型色原体が好ましい。
【0042】
本発明において、ロイコ型色原体とは、過酸化水素および過酸化活性物質の存在下、単独で色素へ変換される物質をいう。過酸化活性物質としては、例えばペルオキシダーゼ等が挙げられる。
ロイコ型色原体としては、例えばフェノチアジン系色原体、トリフェニルメタン系色原体、ジフェニルアミン系色原体、o-フェニレンジアミン、ヒドロキシプロピオン酸、ジアミノベンジジン、テトラメチルベンジジン等が挙げられ、フェノチアジン系色原体が好ましい。
フェノチアジン系色原体としては、例えば10-N-カルボキシメチルカルバモイル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン(CCAP)、10-N-メチルカルバモイル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン(MCDP)、10-N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン ナトリウム塩(DA-67)等が挙げられる。フェノチアジン系色原体の中でも、10-N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10H-フェノチアジン ナトリウム塩(DA-67)が特に好ましい。
トリフェニルメタン系色原体としては、例えばN,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサ(3-スルホプロピル)-4,4’,4’’-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS)等が挙げられる。ジフェニルアミン系色原体としては、例えばN-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミンナトリウム塩(DA-64)、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、ビス〔3-ビス(4-クロロフェニル)メチル-4-ジメチルアミノフェニル〕アミン(BCMA)等が挙げられる。
【0043】
本発明において、酸化カップリング型色原体とは、過酸化水素及び過酸化活性物質の存在下、酸化的カップリングにより色素が生成される、2つの化合物をいう。2つの化合物の組み合わせとしては、カプラーとアニリン類との組み合わせ、カプラーとフェノール類との組み合わせ等が挙げられる。
カプラーとしては、例えば4-アミノアンチピリン(4-AA)、3-メチル-2-ベンゾチアゾリノンヒドラジン等が挙げられる。
アニリン類としては、N-(3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン(MAOS)、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(DAOS)、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メチルアニリン(TOPS)、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)、N,N-ジメチル-3-メチルアニリン、N,N-ビス(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン、N-エチル-N-(3-スルホプロピル)-3,5-ジメチルアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メトキシアニリン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)アニリン、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-サクシニルエチレンジアミン(EMSE)、N-エチル-N-(3-メチルフェニル)-N’-アセチルエチレンジアミン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-4-フルオロ-3,5-ジメトキシアニリン(F-DAOS)等があげられる。
フェノール類としては、フェノール、4-クロロフェノール、3-メチルフェノール、3-ヒドロキシ-2,4,6-トリヨード安息香酸(HTIB)等があげられる。
【0044】
検出可能な物質が光(発光)の場合、過酸化水素測定用試薬は、ペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質と化学発光物質を含む試薬等が挙げられる。化学発光物質としては、例えばルミノール、イソルミノール、ルシゲニン、アクリジニウムエステル等が挙げられる。
検出可能な物質が蛍光の場合、過酸化水素測定用試薬は、ペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質と蛍光物質を含む試薬等が挙げられる。蛍光物質としては、例えば4-ヒドロキシフェニル酢酸、3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、クマリン等が挙げられる。
【0045】
(2)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法
本発明の、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法は、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の存在下に反応させて過酸化水素を生成させ、生成した前記過酸化水素を測定することを特徴とする方法である。
具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0046】
(i)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させて、過酸化水素を生成させる工程;
(ii)前記工程(i)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(iii)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(i)及び(ii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(ii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
【0047】
上記工程(i)において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させる工程は、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンとを水性媒体中で反応させた後に、前記水性媒体中に糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を添加して、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させる工程であってもよい。具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0048】
(i)ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンと、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを水性媒体中で反応させる工程;
(ii)糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を、前記工程(i)の水性媒体に添加して、過酸化水素を生成させる工程;
(iii)前記工程(ii)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(iv)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(i)~(iii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(iii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
【0049】
また、本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法は、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量(すなわち、ヘモグロビンと糖化ヘモグロビンを合わせた総量)に対する割合を算出する工程をも包含する。この場合、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法は、具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0050】
(i)ヘモグロビン含有試料中の総ヘモグロビン量を測定する工程;
(ii)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させて、過酸化水素を生成させる工程;
(iii)前記工程(ii)で生成した前記過酸化水素を測定する工程;
(iv)既知量の糖化ヘモグロビンを用いて上記(ii)及び(iii)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン量との関係を表す検量線に、前記工程(iii)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量を測定する工程;及び、
(v)前記工程(i)で測定した前記総ヘモグロビン量と、前記工程(iv)で測定した前記糖化ヘモグロビン量とから、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量に対する割合を算出する工程。
【0051】
上記工程(ii)において、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中で反応させる工程は、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンとを水性媒体中で反応させた後に、前記水性媒体中に糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を添加して、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素とを、反応させる工程であってもよい。具体的には、以下の工程を含む測定方法である。
【0052】
(i)ヘモグロビン含有試料中の総ヘモグロビン量を測定する工程;
(ii)ヘモグロビン含有試料中のヘモグロビンと、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とを水性媒体中で反応させる工程;
(iii)糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を、前記工程(ii)の水性媒体に添加して、過酸化水素を生成させる工程;
(iv)前記工程(iii)で生成した過酸化水素を測定する工程;及び、
(v)既知濃度の糖化ヘモグロビンを用いて上記(ii)~(iv)により測定を行い予め作成した、過酸化水素量と糖化ヘモグロビン濃度との関係を表す検量線に、前記工程(iv)で測定した前記過酸化水素量を照らし合わせて、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン濃度を決定する工程。
(vi)前記工程(i)で測定した前記総ヘモグロビン量と、前記工程(v)で測定した前記糖化ヘモグロビン量とから、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン量の総ヘモグロビン量に対する割合を算出する工程。
【0053】
尚、前記工程(i)の総ヘモグロビン量の測定は、ヘモグロビン含有試料に、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を添加した後に行うこともできる。
【0054】
また、前記ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応は、糖化へモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応を促進するように、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの構造を変化させる、糖化ヘモグロビンの変性剤の存在下で行うこともできる。糖化へモグロビンの変性剤としては、前述の糖化ヘモグロビンの変性剤が挙げられる。
本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法における、糖化ヘモグロビンの変性剤の反応液中の濃度は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする濃度であれば特に制限はないが、前述の糖化ヘモグロビンの変性剤の反応液中の濃度が挙げられる。
【0055】
本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法における、ヘモグロビン含有試料、及び糖化ヘモグロビンは、前述のヘモグロビン含有試料、及び糖化ヘモグロビンが挙げられる。
また、本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法における、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物は、前述のジチオ系化合物及びマレイミド系化合物が挙げられる。
【0056】
総ヘモグロビン量の測定方法は、前述の総ヘモグロビン量の測定方法が挙げられる。また、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中での、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応は、前述のジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む水性媒体中での、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応が挙げられる。
【0057】
ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応における反応温度と反応時間は、前述のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンと、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応における反応温度と反応時間が挙げられる。また、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、該酵素の濃度、及び、生成した過酸化水素の測定方法は、前述の糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、該酵素の濃度、及び、過酸化水素の測定方法が挙げられる。
【0058】
(3)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定試薬
本発明の、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定試薬は、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、及びジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む試薬であり、本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定方法に用いられる。本発明の測定試薬は、さらに、過酸化水素測定試薬を含んでいてもよい。
【0059】
本発明の測定試薬における、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素;ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物;及び、過酸化水素測定試薬としては、例えば、前述の糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素;ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物;及び、過酸化水素測定試薬等がそれぞれ挙げられる。
【0060】
本発明の糖化ヘモグロビン測定試薬は、凍結乾燥された状態でも、水性媒体に溶解された状態でもよい。水性媒体としては、例えば前述の水性媒体等が挙げられる。凍結乾燥された状態の試薬を用いてヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを測定する場合には、当該試薬は水性媒体に溶解して使用される。
本発明の糖化ヘモグロビン測定試薬における糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素の含量としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、水性媒体で溶解された状態での濃度が、0.1~30kU/Lである含量が好ましく、0.2~15kU/Lである含量がより好ましく、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30kU/Lである含量である。
【0061】
本発明の糖化ヘモグロビン測定試薬における、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の含量としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、水性媒体で溶解された状態での濃度が、0.01~10g/Lである含量が好ましく、0.1~1g/Lである含量がより好ましく、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10g/Lである含量である。
【0062】
本発明の糖化ヘモグロビン測定試薬は、糖化へモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応を促進するように、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの構造を変化させる、糖化ヘモグロビンの変性剤を含むこともできる。糖化へモグロビンの変性剤としては、前述の糖化ヘモグロビンの変性剤が挙げられる。
本発明の糖化ヘモグロビン測定試薬における、糖化ヘモグロビンの変性剤の含量としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、水性媒体で溶解された状態での濃度が、0.01~50g/Lである含量が好ましく、0.1~5g/Lである含量がより好ましく、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50g/Lである。
本発明の測定試薬には、必要に応じて、水性媒体、安定化剤、防腐剤、塩類、干渉物質消去剤、有機溶媒等が含有されてもよい。水性媒体としては、例えば前述の水性媒体等が挙げられる。安定化剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シュークロース、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、フェロシアン化カリウム、牛血清アルブミン(BSA)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤、グリセリン、アルキレングリコール等が挙げられる。アルキレングリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質等があげられる。塩類としては、例えば塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、ギ酸カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。干渉物質消去剤としては、例えばアスコルビン酸の影響を消去するためのアスコルビン酸オキシダーゼ等が挙げられる。有機溶媒としては、例えばロイコ型色原体の水性媒体への溶解補助剤としてのジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキサイド(DMSO)、ジオキサン、アセトン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0063】
(4)ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定キット
本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定試薬は、キットの形態で保存、流通及び使用されてよい。本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビン測定キットは、本発明のヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの測定方法に用いられる。
本発明の測定キットとしては、例えば2試薬系のキット、3試薬系のキット等が挙げられ、2試薬系キットが好ましい。
【0064】
本発明において、2試薬系キットを用いてヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを測定する場合には、例えば反応セルに、ヘモグロビン含有試料と第1試薬とを添加し、一定時間、一定温度で反応を行った後、第2試薬を添加し、生成した過酸化水素を測定することにより、糖化ヘモグロビンを測定することができる。
【0065】
・キット1
ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第1試薬;並びに、
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を含む第2試薬を含むキット。
【0066】
・キット2
ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第1試薬;並びに、
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を含む第2試薬を含み、過酸化水素測定試薬を、第1試薬、第2試薬のいずれか又は両方に含むキット。
【0067】
過酸化水素測定試薬として、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬を用いる場合は、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とは別々の試薬に含まれることが好ましい。すなわち、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とが、それぞれ第1試薬と第2試薬に、又は、第2試薬と第1試薬に含まれることが好ましい。
【0068】
・キット3
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を含む第1試薬;並びに、
ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第2試薬
を含むキット。
【0069】
・キット4
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素を含む第1試薬;並びに、
ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第2試薬
を含み、過酸化水素測定試薬を、第1試薬、第2試薬のいずれか又は両方に含むキット。
【0070】
過酸化水素測定試薬として、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬を用いる場合は、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とは別々の試薬に含まれることが好ましい。すなわち、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とが、それぞれ第1試薬と第2試薬に、又は、第2試薬と第1試薬に含まれることが好ましい。
【0071】
・キット5
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、並びに、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第1試薬;並びに、
過酸化水素測定試薬を含む第2試薬
を含むキット。
【0072】
・キット6
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素と、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、過酸化水素測定試薬とを含む第1試薬;並びに、
過酸化水素測定試薬を含む第2試薬
を含むキット。
【0073】
過酸化水素測定試薬として、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬を用いる場合は、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とは別々の試薬に含まれることが好ましい。すなわち、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とが、それぞれ第1試薬と第2試薬に、又は、第2試薬と第1試薬に含まれることが好ましい。
【0074】
・キット7
過酸化水素測定試薬を含む第1試薬;並びに、
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素、並びに、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含む第2試薬
を含むキット。
【0075】
・キット8
過酸化水素測定試薬を含む第1試薬;並びに、
糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素と、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、過酸化水素測定試薬を含む第2試薬を含むキット。
【0076】
本発明の糖化ヘモグロビン測定キットに含まれる試薬は、糖化へモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素との反応を促進するように、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンの構造を変化させる、糖化ヘモグロビンの変性剤を含むこともできる。糖化へモグロビンの変性剤としては、前述の糖化ヘモグロビンの変性剤が挙げられる。
本発明の糖化ヘモグロビン測定キットを構成する試薬における、糖化ヘモグロビンの変性剤の含量としては、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、前述の糖化ヘモグロビンの変性剤の水性媒体で溶解された状態での濃度となる含量が挙げられる。
【0077】
過酸化水素測定試薬として、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とを含む試薬を用いる場合は、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とは別々の試薬に含まれることが好ましい。すなわち、ペルオキシダーゼとロイコ型色原体とが、それぞれ第1試薬と第2試薬に、又は、第2試薬と第1試薬に含まれることが好ましい。
【0078】
本発明の糖化ヘモグロビン測定キットは、凍結乾燥された状態でも、水性媒体に溶解された状態でもよい。水性媒体としては、例えば前述の水性媒体等が挙げられる。凍結乾燥された状態のキットを用いてヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを測定する場合には、当該キットを構成する試薬は水性媒体に溶解して使用される。
本発明の測定キットを構成する試薬における、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素の含量は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、水性媒体で溶解された状態での濃度が、0.1~60kU/Lである含量が好ましく、0.4~30kU/Lである含量がより好ましく、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60kU/Lである含量である。
【0079】
本発明の測定キットを構成する試薬における、ジチオ系化合物及びマレイミド系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の含量は、本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法を可能とする含量であれば特に制限はないが、水性媒体で溶解された状態での濃度が、0.01~10g/Lである含量が好ましく、0.1~1g/Lである含量がより好ましく、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10g/Lである含量である。
【実施例
【0080】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。尚、本実施例、比較例及び試験例においては、下記メーカーの試薬及び酵素を使用した。
【0081】
Bis-Tris(同仁化学研究所社製)、DA-67(和光純薬工業社製)、4-アミノアンチピリン(アクテック社製)、EMSE(同仁化学研究所社製)、ペルオキシダーゼ(東洋紡社製)、フルクトシルバリン(J. Agric. Food Chem., 第24巻、第1号、p.70-73 (1976) に記載された方法により調製)、6,6-ジチオジニコチン酸(東京化成工業社製)、2,2-ジチオジ安息香酸(東京化成工業社製)、6-マレイミドヘキサン酸(東京化成工業社製)、N-エチルマレイミド(東京化成工業社製)、N-メチルマレイミド(東京化成工業社製)、N-ベンジルマレイミド(東京化成工業社製)、N-シクロヘキシルマレイミド(東京化成工業社製)
NIKKOL LMT[N-アシルタウリン塩(N-ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム);日光ケミカルズ社製]
NIKKOL サルコシネートLN[N-アシルアミノ酸塩(N-ラウロイルサルコシンナトリウム);日光ケミカルズ社製]
NIKKOL ECTD-3NEX[ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸(ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム);日光ケミカルズ社製)]
KリポランPJ-400J[アルケニルスルホン酸(テトラデセンスルホン酸ナトリウム);花王社製]
【0082】
[参考例1]FPOX-47△3の造成
(1)FPOX-47発現ベクターpTrc-FPOX-47の造成
配列番号1で表される塩基配列からなるDNAを含む発現プラスミドpTrc-FPOX-42をテンプレートDNAとして用い、配列番号2で表される塩基配列からなるFPOX-42 F342V-F及び配列番号3で表される塩基配列からなるFPOX-42 F342V-Rをフォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれ用いて、以下の試薬組成及びPCR条件により、PCRを行い、PCR産物を得た。pTrc-FPOX-42は、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素であるFPOX-42をコードするDNAを含む発現プラスミドであり、国際公開第2015/005258号に開示されている方法に従って造成することができる。PCRは、東洋紡社製のPCRキット、DNA polymerase「KOD-Plus-」のプロトコールに基づいて実施した。
【0083】
(試薬組成)
・KOD-Plus-バッファー
・テンプレートDNA(pTrc-FPOX-42) 1~2 ng/μL
・フォワードプライマー(FPOX-42 F342V-F) 0.3 μmol/L
・リバースプライマー(FPOX-42 F342V-R) 0.3 μmol/L
・dNTP 混合液 各0.2 mmol/L
・MgSO4 1 mmol/L
・DNA ポリメラーゼ(KOD-Plus-) 0.02 U/μL
・滅菌水添加により、50 μLとした。
【0084】
(PCR条件)
1. 94℃ 2分
2. 98℃ 15秒
3. 60℃ 30秒
4. 68℃ 6分
5. 2~4の繰り返し(全30サイクル)
6. 68℃ 10分
【0085】
得られたPCR産物50 μLにニューイングランドバイオラボ社製「制限酵素Dpn I」1μLを添加し、37℃、1時間インキュベーションすることでテンプレートDNAを分解した。制限酵素処理したPCR産物をPromega社製「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up System」を用いて、当該キットのプロトコールに従って精製し、PCR産物の精製試料を得た。
次いで、得られたPCR産物の精製試料を用いて東洋紡社製の大腸菌コンピテントセル「Competent high DH5α」に形質転換した。50 mg/L アンピシリンを含有したLB寒天培地上に生育したコロニーを選択し、Promega社製「Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification」を使用して、当該キットのプロトコールに従い、プラスミドを抽出した。
抽出したプラスミドをDNAシークエンサーで配列解析することにより、FPOX-47をコードする、配列番号4で表される塩基配列を有するDNAを含むプラスミド、pTrc-FPOX-47が造成されていることを確認した。配列解析には、pTrc99aベクター(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のマルチクローニングサイト直前、直後の塩基配列を反映した配列番号5で表される塩基配列からなるpTrc-F及び配列番号6で表される塩基配列からなるpTrc-Rをフォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれ使用した。
【0086】
(2)FPOX-47△3発現ベクターpTrc-FPOX-47△3の造成
プラスミドpTrc-FPOX-47に含まれるFPOX-47をコードする塩基配列の3’末端側の終止コドンの直前に位置する9塩基を除き、終止コドンおよびBam HI制限酵素認識サイトを付加した、配列番号7で表される塩基配列からなるFPOX-47△3-R、及び、pTrc99aベクターのマルチクローニングサイト直前の塩基配列を反映した配列番号5で表される塩基配列からなるpTrc-Fを設計し、化学合成した。
pTrc-F及びFPOX-47△3-Rをプライマー対として用い、pTrc-FPOX-47をテンプレートとして、以下の試薬組成及びPCR条件によりPCRを行い、FPOX-47のC末端の3つのアミノ酸を欠失した欠失体FPOX-47△3をコードする塩基配列を含むDNA断片を含んだPCR産物を得た。
PCRは、東洋紡社製のPCRキット、DNA polymerase「KOD-Plus-」のプロトコールに基づいて実施した。
【0087】
(試薬組成)
・KOD-Plus-バッファー
・テンプレートDNA(pTrc-FPOX-47) 0.2~0.5 ng/μL
・フォワードプライマー(pTrc-F) 0.3 μmol/L
・リバースプライマー(FPOX-47△3-R) 0.3 μmol/L
・dNTP 混合液 各0.2 mmol/L
・MgSO4 1 mmol/L
・DNA ポリメラーゼ(KOD-Plus-) 0.02 U/μL
・滅菌水添加により、50 μLとした。
【0088】
(PCR条件)
1. 94℃ 2分
2. 98℃ 15秒
3. 60℃ 30秒
4. 68℃ 2分
5. 2~4の繰り返し(全30サイクル)
6. 68℃ 5分
【0089】
得られたPCR産物の一部を用いて1%アガロースTAEゲルで電気泳動し、想定したサイズのDNA断片が得られていることを確認した。
得られたPCR産物を、Promega社製「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up system」を用いて、当該キットのプロトコールに従って精製し、FPOX-47△3をコードするDNAを含むDNA断片を得た。得られた当該DNA断片を2種類の制限酵素Nco I及びBam HI(共に、タカラバイオ社製)により37℃で1時間処理し、得られた反応混合物をPromega社製「Wizard SV Gel and PCR Clean-Up system」を用いて、当該キットのプロトコールに従い精製し、制限酵素処理断片を得た。
【0090】
また、国際公開第2010/041715号パンフレットに記載されているフルクトシルヘキサペプチドを酸化する活性のない糖化ペプチドオキシダーゼFPOX-15を発現させるpTrc-FPOX-15を同じ制限酵素で同様に処理し、1% アガロースTAEゲルで電気泳動し、ベクターに相当するDNA断片を切り出し、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up systemを用いてDNA断片を精製し、FPOX-15をコードするDNAが除去されたプラスミド断片を得た。
得られた制限酵素処理断片と、FPOX-15をコードするDNAが除去されたプラスミド断片とを混合し、DNA Ligation Kit(タカラバイオ社製)を用いてライゲーションした後、ライゲーション産物を東洋紡社製の大腸菌コンピテントセル「Competent high DH5α」に導入した。
ライゲーション産物が導入された大腸菌を50 mg/L アンピシリンを含むLB寒天培地に植菌し、37℃で14時間培養し、出現したコロニーを選択した。選択したコロニーを、50 mg/L アンピシリンを含むLB液体培地で、37℃で14時間培養し、Promega社製「Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification」を使用して、当該キットのプロトコールに従い、プラスミドを調製した。配列番号5で表される塩基配列からなるpTrc-F及び配列番号6で表される塩基配列からなるpTrc-Rをフォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれ用いてPCRを行い、調製したプラスミドの塩基配列を確認し、当該プラスミド上に、FPOX-47の塩基配列の、終止コドンを除いた3’側9塩基が欠失した配列番号8で表される塩基配列が含まれることを確認した。同プラスミドをpTrc-FPOX-47△3と称する。
【0091】
(3)FPOX-47△3の取得
上記(2)で得られたpTrc-FPOX-47△3を含む大腸菌を、アンピシリン50 mg/Lを含有するLB培地で、37℃、14時間振盪培養した。得られた培養液を用いて、国際公開第2010/041715号パンフレットに記載されている糖化ペプチドオキシダーゼFPOX-9及びFPOX-15の精製方法に従って精製し、精製FPOX-47△3の溶液を得た。FPOX-47のアミノ酸配列を配列番号9に、FPOX-47△3のアミノ酸配列を配列番号10にそれぞれ示す。
【0092】
(4)FPOX-47△3の糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する酵素活性(以下、糖化ヘモグロビンオキシダーゼ活性と称する)の確認
上記(3)で得られた精製FPOX-47△3の溶液を用いて、以下の測定キット及び測定手順により、FPOX-47△3のHbA1cに対する糖化ヘモグロビンオキシダーゼ活性を確認した。
【0093】
<測定キットA>
第1試薬
Bis-Tris(pH6.5) 50mmol/L
DA-67 40μmol/L
NIKKOL LMT 1g/L
第2試薬
リン酸緩衝液(pH6.5) 10mmol/L
FPOX-47△3 1.5kU/L
ペルオキシダーゼ 200kU/L
【0094】
<測定キットa>
第1試薬
Bis-Tris(pH6.5) 50mmol/L
DA-67 40μmol/L
第2試薬
リン酸緩衝液(pH6.5) 10mmol/L
FPOX-47△3 1.5kU/L
ペルオキシダーゼ 200kU/L
【0095】
測定キットaは、第1試薬中にNIKKOL LMTが含まれていないこと以外は、測定キットAと同じである。
【0096】
<サンプル>
ヒトの血液を遠心分離して得られる血球を脱イオン水で希釈して溶血させて調製され、HbA1c測定の基準法であるKO500法と、総ヘモグロビン測定法の1つであるSLS-ヘモグロビン法とから、HbA1c濃度が2.6μmol/L、4.5μmol/L、6.4μmol/L、8.4μmol/Lと値付けされている溶血試料をサンプルとして用いた。
【0097】
<測定手順>
反応セルへ、上記の各サンプル(10μL)と上記測定キットAの第1試薬(100μL)とを添加し、37℃で5分間反応(第1反応)させ、反応液の吸光度(E1)を主波長660nm、副波長800nmで測定し、次いで、この反応液に上記測定キットAの第2試薬(40μL)を添加し、さらに37℃で5分間反応(第2反応)させ、反応液の吸光度(E2)を主波長660nm、副波長800nmで測定した。E2からE1を差し引き、吸光度差△E’を算出した。
反応セルへ、上記の各サンプル(10μL)と上記測定キットaの第1試薬(100μL)とを添加し、37℃で5分間反応(第1反応)させ、反応液の吸光度(E3)を主波長660nm、副波長800nmで測定し、次いで、この反応液に上記測定キットaの第2試薬(40μL)を添加し、さらに37℃で5分間反応(第2反応)させ、反応液の吸光度(E4)を主波長660nm、副波長800nmで測定した。E4からE3を差し引き、吸光度差△E’を算出した。
△E’から△E’を差し引き、各サンプルに対する吸光度差△Eとした。各サンプルにおけるHbA1c濃度と△Eとの関係を図1に示す。
【0098】
第1図から明らかな様に、アニオン性界面活性剤であるN-アシルタウリンを含む本発明のキット(キットA)を用いた測定において、HbA1c濃度と吸光度との間に定量関係が認められた。従って、FPOX-47△3が、糖化ヘモグロビンを酸化して過酸化水素を生成させる反応を触媒する活性を有する酵素であることを確認した。
【0099】
[実施例1]
以下の第1試薬及び第2試薬からなるHbA1c測定用キット(キット1A~1O)を調製した。
【0100】
第1試薬
(1-A)試薬
Bis-Tris(pH7.0) 50mmol/L
NIKKOL LMT 3g/L
DA-67 80μmol/L
(1-B)試薬
Bis-Tris(pH7.0) 50mmol/L
ジチオ系化合物又はマレイミド系化合物(表1参照)
(1-B)試薬を4℃又は30℃で1週間保存した後、(1-A)試薬と容量比1:1で混合し、第1試薬とした。
第2試薬
Bis-Tris(pH7.0) 50mmol/L
FPOX-47△3 1.5kU/L
ペルオキシダーゼ 200kU/L
【0101】
[比較例1]
(1-B)試薬が、ジチオ系化合物又はマレイミド系化合物を含まない以外は実施例1と同様にして、第1試薬及び第2試薬からなるHbA1c測定用キット(キット1a)を調製した。
【0102】
[実施例2]
HbA1c測定用キットとして、実施例1のキット1Aを用い、試料として、HPLC法であるKO500法によって、HbA1c濃度がそれぞれ5.11%、5.73%、6.40%、7.45%、8.55%及び10.56%と値付けされている、6濃度の全血を用いて、以下の手順により、各試料におけるHbA1c濃度(量)の総ヘモグロビン濃度(量)に対する割合[HbA1c(%)]を決定した。
【0103】
(1)総ヘモグロビン濃度決定のための検量線の作成
総ヘモグロビン測定用キットであるヘモグロビンB-テストワコー(SLS-ヘモグロビン法)(和光純薬工業社製)及びヘモグロビンB-テストワコーに付属の標準品(総ヘモグロビン濃度:15.0mg/ml)を用いて、以下の手順に従って測定を行い、当該標準品に対する吸光度を測定した。
反応セルヘ、当該標準品(10μL)とヘモグロビンB-テストワコー(250μL)とを添加し、37℃で10分間反応させ、反応液の吸光度(E)を主波長546nm、副波長660nmで測定し、当該標準品に対する吸光度とした。当該標準品の代わりに生理食塩水を用いる以外は同様の方法により測定し、生理食塩水に対する吸光度とした。当該標準品に対する吸光度から、生理食塩水に対する吸光度を差し引いて算出した値を、当該標準品に対するブランク補正吸光度とした。当該標準品に対するブランク補正吸光度と、生理食塩水に対するブランク補正吸光度(0Abs)とから、総ヘモグロビン濃度(μmol/L)と吸光度との間の関係を示す検量線を作成した。
【0104】
(2)HbA1c濃度決定のための検量線の作成
K0500法によりHbA1c濃度が3.94μmo1/L、10.82μmol/Lと値付けされている2つの溶血した血球画分について、実施例1のHbA1c測定用キット1Aを用いて、以下の手順に従って測定し、各血球画分に対する吸光度を測定した。
反応セルヘ、上記の溶血した各血球画分(9.6μL)と実施例1のキットの第1試薬(120μL)とを添加し、37℃で5分間反応(第1反応)させ、反応液の吸光度(E1)を主波長660nm、副波長800nmで測定し、次いで、この反応液に実施例1のHbA1c測定用キット1Aの第2試薬(40μL)を添加し、さらに37℃で5分間反応(第2反応)させ、反応液の吸光度(E2)を主波長660nm、副波長800nmで測定した。E2からE1を差し引き、吸光度差△E’1Aを算出し、各血球画分に対する吸光度とした。上記の各血球画分の代わりに生理食塩水を用いる以外は同様の方法により、吸光度差△E’生理食塩水を算出し、生理食塩水に対する吸光度とした。当該血球画分に対するそれぞれの吸光度から、生理食塩水に対する吸光度を差し引いて算出した値を、当該血球画分に対するブランク補正吸光度とした。当該血球画分に対するブランク補正吸光度と、生理食塩水に対するブランク補正吸光度(0Abs)とから、HbA1c濃度(μmol/L)と吸光度との間の関係を示す検量線を作成した。
【0105】
(3)各血球画分における総ヘモグロビン濃度の決定
6濃度の全血試料の各々について、25℃、3000rpm(1500×G)で5分間遠心分離を行い、血球画分を得た。各血球分画100μLに、精製水4mLを添加し、溶血した血球分画を得た。溶血した各血球画分について、ヘモグロビンB-テストワコーを用いて(1)と同様の方法により測定を行い、得られた測定値と(1)の検量線とから、各血球画分中の総ヘモグロビン濃度(μmol/L)を決定した。
【0106】
(4)各血球画分におけるHbA1c濃度の決定
(3)で得られた溶血した各血球画分について、本発明の測定キット1Aを用いて(2)と同様の方法により測定を行い、得られた測定値と(2)の検量線とから、各血球画分中のHbA1c濃度(μmol/L)を決定した。
【0107】
(5)HbA1c(%)(HbA1c濃度の総ヘモグロビン濃度に対する割合)の決定
上記(3)で決定した各血球画分における総ヘモグロビン濃度(μmol/L)と、上記(4)で決定した各血球画分におけるHbA1c濃度(μmol/L)とから、以下の式(II)により、HbA1c(%)をNGSP値(国際標準値)として算出した。
【0108】
【数2】
【0109】
(6)本発明の測定方法とKO500法との相関
本発明の測定方法を用いて、上記(5)で決定したHbA1c(%)と、予めKO500法を用いて値付けされたHbA1c(%)とから、本発明の測定方法とKO500法との間の相関関係を検証し、相関係数を決定した。その結果を表1に示す。
【0110】
実施例1のキット1Aの代わりに、実施例1のキット1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1K、1L、1M、1N及び1Oの各キットを用いる以外は上記と同様の手順により、各試料中のHbA1c(%)を決定し、キット1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1K、1L、1M、1N及び1Oの各キットを用いる測定方法とKO500法との間の相関関係を検証し、相関係数を決定した。その結果を表1に示す。
【0111】
[比較例2]
実施例1のキット1Aの代わりに、比較例1のキット1aを用いる以外は実施例2と同様の手順により、各血球画分中のHbA1c(%)を決定し、キット1aを用いる測定方法とKO500法との間の相関関係を検証し、相関係数を決定した。その結果を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示したように、本発明のキット1A~1Oを用いる測定においては、KO500法との間の相関係数がジチオ系化合物又はマレイミド系化合物の濃度によらず、又、第1試薬調製時の(1-B)試薬の保存温度が4℃の場合でも、30℃の場合でも、0.998~1.000となり、両測定法間に良好な相関関係が認められた。従って、実施例1のキット1A~1Oを用いる本発明の測定方法により、試料中のHbA1cを正確に測定できることが明らかとなった。
【0114】
[実施例3]
(1)溶血検体の調製
ヒト血液を遠心分離して得られた血球画分100μLに、精製水4mLを添加し、溶血した血球分画を得た。次いで、該溶血した血球分画を、総ヘモグロビン測定試薬であるヘモグロビンB-テストワコーを用いて上記実施例2の(1)と同様の測定を行い、得られた吸光度と実施例2の(1)で作成した総ヘモグロビン濃度(μmol/L)と吸光度との間の関係を示す検量線とから、該血球画分の総ヘモグロビン濃度を決定した。次いで、この値付けされた該血球画分を精製水で希釈して、総ヘモグロビン濃度が4mg/mL、6mg/mL及び8mg/mLの各溶血検体を調製した。
【0115】
(2)各溶血検体におけるHbA1c濃度の決定
(1)で調製した各溶血検体について、実施例1のHbA1c測定用キット1Aを用いて上記実施例2の(2)と同様の方法により測定を行い、得られた測定値と上記実施例2の(2)で作成したHbA1c濃度(μmol/L)と吸光度との間の関係を示す検量線とから、各溶血検体中のHbA1c濃度(μmol/L)を測定した。
【0116】
(3)HbA1c(%)(=HbA1c濃度の総ヘモグロビン濃度に対する割合)の決定
上記(1)で調製した各溶血検体における総ヘモグロビン濃度(μmol/L)と、上記(2)で測定した各溶血検体におけるHbA1c濃度(μmol/L)とから、上記式(II)により、HbA1c(%)をNGSP値(国際標準値)として算出した。
【0117】
(4)総ヘモグロビン濃度の影響の評価
総ヘモグロビン濃度が6mg/mlである溶血検体でのHbA1c濃度(%)を基準0とし、その基準からの各溶血検体のHbA1c濃度(%)の差[△HbA1c濃度(%)]を算出した。その結果を表2に示す。
【0118】
HbA1c測定用キットとして、実施例1のHbA1c測定用キット1Aの代わりに、実施例1のキット1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1K、1L、1M、1N及び1Oの各キットを用いて同様の測定を行い、各キットに対して、各溶血検体中のHbA1c濃度(%)を測定した。総ヘモグロビン濃度が6mg/mlである溶血検体でのHbA1c濃度(%)を基準0とし、その基準からの各溶血検体のHbA1c濃度(%)の差[△HbA1c濃度(%)]を算出した。その結果を表2に示す。
【0119】
[比較例3]
実施例1のキット1Aの代わりに、比較例1のキット1aを用いる以外は、実施例3と同様の方法により、キット1aに対して、各溶血検体中のHbA1c濃度(%)を測定した。総ヘモグロビン濃度が6mg/mLである溶血検体でのHbA1c濃度(%)を基準0とし、その基準からの各溶血検体のHbA1c濃度(%)の差[△HbA1c濃度(%)]を算出した。その結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
前述の通り、測定に用いた溶血検体は、同一のヒト血液より調製されたものであるため、総ヘモグロビンに対するHbA1cの割合(%)は、総ヘモグロビン濃度に拠らず一定である。従って、△HbA1c濃度(%)が0に近い程、ヘモグロビンの影響を受けない、ということになる。表2から明らかな通り、本発明のキット1A~1Oの各キットを用いる本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法は、比較例1のキット1aを用いる糖化ヘモグロビンの測定方法と比較して、ヘモグロビンの影響が軽減されていることが判明した。
【0122】
[実施例4]
以下の第1試薬及び第2試薬からなるHbA1c測定用キット(キット2A~2E)を調製した。
第1試薬
Bis-Tris(pH7.0) 50mmol/L
DA-67 40μmol/L
6,6-ジチオジニコチン酸(DTDN) 0.3g/L
界面活性剤(表3参照)
第2試薬
Bis-Tris(pH7.0) 50mmol/L
FPOX-47△3 1.5kU/L
ペルオキシダーゼ 200kU/L
【0123】
[比較例4]
第1試薬が、6,6-ジチオジニコチン酸(DTDN)を含まない以外は実施例4と同様にして、第1試薬及び第2試薬からなるHbA1c測定用キット(キット2a~2e)を調製した。
【0124】
[実施例5]
HbA1c測定用キットとして、実施例1のHbA1c測定用キット1Aの代わりに、実施例4のHbA1c測定用キット2A、2B、2C、2D及び2Eの各キットを用いる以外は、実施例2と同様の手順により、各試料中のHbA1c(%)を決定し、キット2A、2B、2C、2D及び2Eの各キットを用いる測定方法とKO500法との間の相関関係を検証し、相関係数を決定した。
【0125】
また、HbA1c測定用キットとして、実施例1のHbA1c測定用キット1Aの代わりに、実施例4のHbA1c測定用キット2A、2B、2C、2D及び2Eの各キットを用いる以外は、実施例3と同様の測定を行い、各キットに対して、各溶血検体中のHbA1c濃度(%)を測定した。総ヘモグロビン濃度が6mg/mlである溶血検体でのHbA1c濃度(%)を基準0とし、その基準からの各溶血検体のHbA1c濃度(%)の差[△HbA1c濃度(%)]を算出した。その結果を表3に示す。
【0126】
[比較例5]
実施例1のキット1Aの代わりに、比較例4のキット2a、2b、2c、2d及び2eの各キットを用いる以外は、実施例3と同様の方法により、キット2a、2b、2c、2d及び2eの各キットに対して、各溶血検体中のHbA1c濃度(%)を測定した。総ヘモグロビン濃度が6mg/mLである溶血検体でのHbA1c濃度(%)を基準0とし、その基準からの各溶血検体のHbA1c濃度(%)の差[△HbA1c濃度(%)]を算出した。その結果を表3に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
表3から明らかな通り、本発明のキット2A~2Eの各キットを用いる本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法は、比較例4のキット2a~2eの各キットを用いる糖化ヘモグロビンの測定方法と比較して、ヘモグロビンの影響を受けなかった。このことから、糖化ヘモグロビンの変性剤の種類を変えた場合でも、ジチオ系化合物である6,6-ジチオジニコチン酸を用いる本発明の糖化ヘモグロビンの測定方法は、ヘモグロビンの影響が軽減されていることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明により、糖尿病等の診断に有用なヘモグロビンの影響軽減方法、ヘモグロビン含有試料中の糖化ヘモグロビンを測定方法、及び、糖化ヘモグロビン測定試薬及び糖化ヘモグロビン測定キットが提供される。
図1
【配列表】
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