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7645266リソグラフィに基づく3次元(3D)構造体の付加製造のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】リソグラフィに基づく3次元(3D)構造体の付加製造のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20250306BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20250306BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20250306BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250306BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/129
B33Y50/02
B33Y10/00
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022538780
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 IB2020062290
(87)【国際公開番号】W WO2021130657
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】19020726.6
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519053061
【氏名又は名称】クビキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グマイナー、ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】フェルスター - ロムスビンケル、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ノイバウアー、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブセッティ、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ステイガー、ウォルフガンク
(72)【発明者】
【氏名】クロバス、ラファエル
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518171(JP,A)
【文献】特表2018-534185(JP,A)
【文献】特表2012-513325(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109734(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 造形面を画定する造形プラットフォームと、
- 光エンジンであって、前記光エンジンの露光フィールドにおいて光を動的にパターニングするために設計された、光エンジンと、
- 前記露光フィールドを横切って材料層を輸送するための第1の駆動手段を備える材料輸送ユニットと、
- 前記造形面に平行に延在する変位経路に沿って、前記造形プラットフォームに対する前記光エンジンの相対移動を引き起こすための第2の駆動手段と、
- 前記光エンジンの前記造形プラットフォームに対する前記相対移動中に、前記露光フィールドにおける前記材料層と前記造形プラットフォームとの相対移動を最小限に抑えるように、前記第1及び/又は第2の駆動手段を制御するように構成された第1の制御手段と、
- 一連のパターン・セクション・データを調整可能な供給速度で前記光エンジンに供給するためのパターン・データ供給手段であって、その供給により、前記変位経路に沿った前記光エンジンと前記造形プラットフォームとの前記相対移動中に、前記光エンジンに一連のパターン・セクションを前記供給速度で放射させる、パターン・データ供給手段と、
- 前記造形プラットフォームに対する前記光エンジンの位置及び/又は速度を感知するためのリニア・エンコーダと、
- 前記リニア・エンコーダによって感知された前記位置又は前記速度に基づいて、前記パターン・データ供給手段の前記供給速度を調整するための第2の制御手段と、
を備える、リソグラフィに基づく3次元構造体の付加製造のための装置。
【請求項2】
前記光エンジンが、調整可能な光パルス・レートで前記露光フィールドに光を断続的に放射するように設計されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光エンジンが、前記光パルス・レートを前記パターン・データ供給手段の前記供給速度に同期させるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記光エンジンが、前記光パルスのパルス・デューティ係数を調整するように構成されている、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記パルス・デューティ係数が、0.1~0.8に設定されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記パターン・データ供給手段が、前記造形プラットフォーム上に構築される材料層のパターンを表すパターン・データを記憶するデータ記憶装置を備え、前記パターン・データが、前記第2の駆動手段の前記変位経路に沿って測定される前記パターンの長さ寸法に関連付けられ、前記パターン・データが、前記パターンの前記長さに沿った前記パターンの複数のパターン・セクションを表すパターン・セクション・データを含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記パターン・データが、複数列の画素を含む矩形格子の画素として構成され、各パターン・セクションが、少なくとも1列の画素を含む、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記光エンジンに供給される前記一連のパターン・セクション・データが、1列分の画素だけ互いにオフセットされたパターン・セクションを表す、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記材料輸送ユニットが、前記光エンジンによって放射された前記光に対して少なくとも部分的に透明である可撓性キャリア・フィルムを備え、コーティング手段が、前記可撓性キャリア・フィルムの前面を前記材料層でコーティングするように構成され、前記キャリア・フィルムの前記前面が、前記露光フィールドを横切って移動する際に前記造形プラットフォームに面する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記光エンジン、前記可撓性キャリア・フィルム、及び前記コーティング手段が、印刷ヘッドの中又は上に配置され、前記印刷ヘッドが、前記造形プラットフォームに対する前記印刷ヘッドの相対移動を引き起こすための前記第2の駆動手段によって移動可能である、請求項に記載の装置。
【請求項11】
案内板が前記光エンジンと前記キャリア・フィルムとの間の前記露光フィールド内に配置されて、前記キャリア・フィルムと前記造形面との間に間隙を画定し、前記案内板が前記光エンジンによって放射される前記光に対して少なくとも部分的に透明である、請求項又は10に記載の装置。
【請求項12】
前記案内板が前記造形面に垂直な方向に調整可能である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記案内板を加熱するための第1の加熱手段が設けられている、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記コーティング手段と前記露光フィールドとの間に、前記材料層を加熱するための第2の加熱手段が配置されている、請求項から13までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記造形面に垂直に延在する変位経路に沿って、前記輸送ユニットと前記造形プラットフォームとの相対移動を引き起こすための第3の駆動手段が設けられている、請求項1から14までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
少なくとも1つの二次材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットが、前記印刷ヘッドに隣接して配置されている、請求項10および請求項10に従属する請求項11から15までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記二次材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットが、前記造形面に平行に延在する変位経路に沿って、前記造形プラットフォームに対して相対移動するように案内される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
- フォトポリマ樹脂を材料輸送ユニットのキャリア・フィルム上に吐出して、前記キャリア・フィルム上に前記フォトポリマ樹脂の少なくとも1つの材料層を生成するステップと、
- 前記材料輸送ユニットを駆動して、前記フォトポリマ樹脂の前記材料層を、光エンジンからの光を造形プラットフォームの造形面の少なくとも一部に向けて曝露するように構成された露光フィールドに向けて輸送するステップと、
- 前記造形面に平行に延在する変位経路に沿って、前記造形プラットフォームに対する前記露光フィールドの相対移動を引き起こすステップと、
- 前記造形プラットフォームに対する前記露光フィールドの前記相対移動中に、前記露光フィールドにおける前記材料層と前記造形プラットフォームとの相対移動を最小限に抑えるように、前記材料輸送ユニット、前記露光フィールド及び/又は前記造形プラットフォームの移動を制御するステップと、
- 一連のパターン・セクション・データを前記光エンジンに供給するステップと、
- 前記変位経路に沿った前記露光フィールドと前記造形プラットフォームとの前記相対移動中に、前記光エンジンが調整可能な供給速度で一連のパターン・セクションを放射し、それによって、前記一連のパターン・セクションに従って前記造形面の前記一部の前記材料層を選択的に硬化させるステップと、
- 前記造形プラットフォームに対する前記露光フィールド及び/又は前記光エンジンの位置若しくは速度を感知し、前記位置若しくは速度の感知に応答してセンサ信号を提供するステップと、
- 前記センサ信号に応答して前記供給速度を調整するステップと、
を含む、リソグラフィに基づく3次元構造体の付加製造のための方法。
【請求項19】
前記光エンジンからの光を前記造形プラットフォームの前記造形面の前記一部に向けて曝露するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
調整可能な光パルス・レートで光を断続的に曝露するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記光パルス・レートを前記一連のパターン・セクションの前記供給速度に同期させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光パルスのパルス・デューティ係数を調整するステップをさらに含む、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記パルス・デューティ係数が、0.1~0.8に設定されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記材料輸送ユニットを駆動して、前記フォトポリマ樹脂の前記材料層を前記露光フィールドに向けて輸送するステップが、前記キャリア・フィルムを前記露光フィールドに向けて回転させるステップを含む、請求項18から23までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記材料層の一部が前記露光フィールド内の前記造形面上にある間に、前記材料層の前記一部を加熱するステップをさらに含む、請求項18から24までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記材料層の前記一部を前記露光フィールドに向けて輸送する前に、前記材料層の前記一部を特定の温度に維持するステップをさらに含む、請求項18から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記材料層の前記一部を前記露光フィールドに向けて輸送する前に、前加熱板(24)を用いて、前記材料層の前記一部を特定の温度に維持するステップをさらに含む、請求項18から25までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記材料層の前記一部を前記露光フィールドから離れるように輸送した後に、前記材料層の前記一部を特定の温度に維持するステップをさらに含む、請求項18から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記材料層の前記一部を前記露光フィールドから離れるように輸送した後に、後加熱板(24)を用いて、前記材料層の前記一部を特定の温度に維持するステップをさらに含む、請求項18から27までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記キャリア・フィルムを前記造形プラットフォームに対して特定の位置に案内して、前記キャリア・フィルムと前記造形プラットフォームとの間に特定の幅を有する間隙を生成するステップをさらに含む、請求項18から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記フォトポリマ樹脂の前記材料層を特定の厚さに維持するステップをさらに含む、請求項18から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記キャリア・フィルム上のコーティング・ゾーンにおいて、前記フォトポリマ樹脂の前記少なくとも1つの材料層を混合するステップをさらに含む、請求項18から31までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記1つ又は複数の材料層に対して、構造化、配置、除去、又はそれらの何らかの組合せを実行するステップをさらに含む、請求項18から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記材料層の前記一部が前記露光フィールド内の前記造形面上にある間に、非接触加熱ランプ(30)及び赤外線ランプ(30)のうちの1つ又は複数を用いて前記材料層の前記一部を加熱するステップをさらに含む、請求項18から33までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィに基づく3次元(3D)構造体の付加製造のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマの多くの付加製造(AM:additive manufacturing)プロセスは、高い表面品質並びに小さな特徴解像度を良好な熱機械材料特性と組み合わせるという課題に対処する。立体造形(SLA:stereolithography)は、高い精度が望まれる特徴を有する物品を製造するための有望な候補である。SLAプロセスの中には、大きなフォトポリマ樹脂槽を使用して、このフォトポリマ樹脂槽に、造形プラットフォーム及び造形プラットフォーム上に既に印刷された構造体の層を印刷プロセス中に浸漬させるものがある。これらのシステムでは、液体樹脂の表面に新たな層が互いに重なり合って追加される。液体フォトポリマ樹脂層の光重合を誘発するために、典型的には異なる光源が使用される。一例として、フォトポリマ樹脂の表面に光情報を選択的に投影するために、デジタル光処理(DLP:Digital Light Processing)、他のアクティブ・マスク投影システム、及び/又はレーザ・スキャナ・ベースのシステムが使用されることがある。これらの印刷コンセプトは、有利なことに、大きな樹脂槽の使用を可能にし、多くの場合、大きな造形面積が得られる。
【0003】
しかしながら、浸漬させた構造体と液体樹脂浴の自由表面との間に薄い樹脂層を生成することは、使用する樹脂配合物の粘度及び/又は表面張力現象を含む様々な要因により、精度(例えば、液体層の厚さに関して)が限定される。さらに、大きな造形面積を使用する場合は、レーザ/スキャナシステムを使用する場合であっても、特徴の精度は典型的には制限される。スキャナレンズ構造の光学的制限、従来から使用されているパルス・レーザ源のタイミング限界、並びに走査範囲の大きな偏差角により、印刷プロセス全体の精度が制限され、走査の中心部と端部とで精度がずれる。別の非常に重要な問題は、印刷ジョブ(例えば、槽充填手順)が開始可能になる前に、かなりの量のフォトポリマ材料が必要なことである。フォトポリマ樹脂は、化学的に不安定になる可能性があるため、樹脂の保管及び劣化、並びに大きな樹脂槽の洗浄が経済的問題になる可能性があり、プロセスの経時的な安定性を制限する。
【0004】
立体造形手法の中には、液体樹脂を透明材料槽に充填する、槽ベースのコンセプトを使用するものがある。これらのアプローチによると、液体樹脂の層は、下方から、例えば、材料槽の底部を介して、選択的な光情報によって照射され、その結果、印刷された構成部品が、いわゆる造形プラットフォームに付着して上下逆さまに生成される。これらのシステムは、造形プラットフォームを樹脂槽内に降ろすことによって樹脂層の高さを機械的に調整できるなどのいくつかの利点を提示する。こうすることによって、所望の厚さを有する樹脂の層(例えば、樹脂の薄層)及び/又は所望の解像度の特徴を有する製品が可能になっている。しかしながら、多くのこのようなシステムは、その最大印刷面積が制限されている。造形プラットフォームを樹脂浴内に降ろし、所望の層厚を生成する際、狭くなっている間隙から残留樹脂を押し出す必要がある。このプロセスは、2次元プレート間プレス現象を特徴とするため、間隙内の圧力は、印刷面積に対して(例えば、印刷面積の2乗で)上昇することが多い。さらに、多くの場合、このような層は、光重合後に材料槽の底部から分離しなければならないことがある。このプロセスもまた、印刷面積のサイズに応じて強い力を生成する可能性がある。コンセプト自体が、印刷された構成部品の物理的寸法において制限されることがある。
【0005】
プレート間SLAのコンセプトに関連する問題を少なくとも部分的に克服するために、様々な解決策が提案されてきた。Gmeinerらに対する「Method and Device for Lithography-Based Generative Production of Three-Dimensional Forms」と題する欧州特許出願公開第3418033A1号は、造形プラットフォームが降ろされる際に層の間隙から液体材料層中に押し出される材料が少なくて済むように、透明材料支持要素をフォトポリマ樹脂の薄層でコーティングするプロセスを記載している。このような材料支持要素を精密に加熱することによって、様々な粘度のフォトポリマ配合物(例えば、高粘性フォトポリマ配合物)でさえも処理することができる。このような材料支持要素に対して最適化された表面材料又はライニングを使用することによって、新たに印刷された層と支持要素との間の分離力をさらに低減することができる。
【0006】
コンセプトの中には(例えば、Ermoshkinらに対する「Method and apparatus for three-dimensional fabrication」と題された米国特許出願公開第2017/0066185A1号に記載されているコンセプト)、材料支持要素と樹脂との間に、いわゆる「デッド・ゾーン」を生成するための酸素透過性膜を含むものがあり、光重合が酸素分子により化学的に阻止されている。しかしながら、このようなデッド・ゾーンの化学的安定性は、制御するのが困難である可能性があるため、この技術は、組成物が経時的にその品質において安定であることが望ましいことがある多くの工業生産プロセスには適していない。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0066185A1号によると、キャリア・フィルムを使用して、液体樹脂の層をプロセス・ゾーンに輸送し、キャリア・フィルムが、樹脂層を重合するために使用される放射線に対して透明である。キャリア・フィルムによって担持される液体材料の層が造形プラットフォームと徐々に接触するにつれ、樹脂層を照射するために使用される放射源が、造形プラットフォームの長さに沿って移動する。このように、接触ゾーンが、放射線源の露光ゾーンと共に造形プラットフォームの長さに沿って移動するため、比較的小さな可動印刷ヘッドによって広い面積を印刷することができる。米国特許出願公開第2017/0066185A1号に開示されているシステムは、印刷ヘッドが造形プラットフォームに対して移動するため、印刷ヘッドの変位経路に沿った位置決め誤差のリスクを伴い、結果としてそれぞれの構造化誤差、並びに重ね合わされた層間の位置合わせ不良のリスクをもたらす。さらに、このような動的システムでは、フォトポリマ樹脂材料の固化を得るのに十分な露光を提供するように露光時間を制御することが複雑になる。
【0008】
これは、様々なフォトポリマによって課される特定の要件をさらに考慮した場合に当てはまることがある。熱機械的特性を向上させたフォトポリマを印刷する際のさらなる課題は、このような樹脂の反応性が比較的低いことに関連する。ほとんどのSLA樹脂配合物は、大きな割合の二官能性又は多官能性モノマー若しくはオリゴマーを含有する。反応性基(例えば、アクリレート基又はメータクリレート基中の二重結合)の含有量が高いと、配合物のゲル化点が早くなることがある。これは、二重結合変換率が比較的低くても(時には15~30%)、液体樹脂がゲル化して、十分に固く強固になるため、前の層の構造的完全性を損なわずに(例えば、前の層を破壊及び/又は変形させずに)新たな層を再コーティングすることができることを意味する。このような場合、材料が特定の量を超えて硬化するまで露光(例えば、十分な量の固化のための露光)を提供するのに、(例えば、表面上でレーザビームを走査することによって)非常に短い光パルスが必要なだけである。残った未硬化の二重結合は、後硬化ステップによって変換され、最終的に高度に架橋されたポリマとなることができる。このような高度に架橋されたポリマは、高いガラス転移温度(Tg)を示すことがあるが、共有結合ネットワークのために靭性が低いという欠点があり、したがって、工業用途及び/又は大量生産用途には限定的にしか使用されない場合がある。
【0009】
対照的に、多官能性モノマーの量が少ない樹脂では、架橋の少ないポリマ・ネットワークが得られ、ポリマの靭性が向上するが、ガラス転移温度はより低い温度に低下する。高い靭性並びに高いガラス転移温度を得るために、強い二次結合(例えば、水素結合、ファンデルワールス結合)及び大きな分子量を有するモノマー又はオリゴマーと組み合わせた、少量の多官能性モノマーを有するフォトポリマ配合物を使用することができる。強い二次結合は、ガラス転移温度及び最終的なポリマ・ネットワークの剛性を高め、高分子量(長鎖)を有するオリゴマーは、破断点伸びを高め、さらなる結果として材料の靭性を向上させる。したがって、このようなフォトポリマ・ネットワークは、現在射出成形によって処理され、多種多様な工学用途で使用されている熱可塑性材料と同様の熱機械特的性を提供する。
【0010】
強い二次結合を有するこのような低架橋フォトポリマ・ネットワークを処理するための課題は2つある。反応性基の含有量が低いと、ゲル化点が遅れることがあり、高分子量オリゴマーと組み合わせた強い二次結合は、配合物の粘度を著しく増加させ、リソグラフィに基づくAMのための最先端システムでは処理することができない配合物となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第3418033A1号
【文献】米国特許出願公開第2017/0066185A1号
【文献】国際公報第2019/213585A1号
【文献】国際公報第2019/213588A1号
【文献】欧州特許第3319543A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、強い二次結合を有する低架橋フォトポリマ・ネットワークを処理するのに適した、リソグラフィに基づく3次元(3D)構造体の付加製造のための改善された装置及び方法を提供することである。特に、本明細書に記載される装置及び/又は方法は、大きな造形プラットフォーム上での3D構造体の精密な製造を可能にするものであり、その印刷面積は、光エンジンの露光フィールドの倍数である。さらに、本明細書に記載される装置及び/又は方法は、フォトポリマ樹脂材料の固化を得るのに十分な露光を提供するように露光時間を精密に制御することを可能にする。例えば、露光時間は、材料が特定の量を超えて硬化するまでの露光(例えば、十分な量の固化のための露光)を提供する。これは、材料を固体状態にするための露光、しきい値を超えて完全に及び/又は部分的に材料を硬化させるための露光などであってもよい。
【0013】
本発明のさらなる目的は、フォトポリマ物質(非充填及び充填フォトポリマ樹脂)のための安定且つ連続的な付加製造プロセスを提供することであり、同時に、高い印刷精度、フォトポリマ樹脂の化学組成に関する大きなプロセス柔軟性、高い生産安定性、高い自律性、及び印刷パラメータを著しく変更することなく物理的に拡張可能な全体的なプロセス・コンセプトを提供することである。目標とするフォトポリマは、優れた熱機械特性を提供し、低反応性、低架橋密度、遅延ゲル点及び高粘度を有する樹脂を処理することができる印刷プロセスを支持するはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これら及び他の目的を解決するために、本発明は、リソグラフィに基づく3次元構造体の付加製造のための装置を提供し、本装置は、
- 造形面を画定する造形プラットフォームと、
- 光エンジンであって、前記光エンジンの露光フィールドにおいて光を動的にパターニングするために設計された、光エンジンと、
- 露光フィールドを横切って材料層を輸送するための第1の駆動手段を備える材料輸送ユニットと、
- 造形面に平行に延在する変位経路に沿って光エンジンと造形プラットフォームとの相対移動を引き起こすための第2の駆動手段と、
- 光エンジンの造形プラットフォームに対する前記相対移動中に、前記露光フィールドにおける材料層と造形プラットフォームとの相対移動を最小限に抑えるように、前記第1及び/又は第2の駆動手段を制御するように構成された第1の制御手段と、
- 一連のパターン・セクション・データを調整可能な供給速度で光エンジンに供給するためのパターン・データ供給手段であって、その供給により、変位経路に沿った光エンジンと造形プラットフォームとの前記相対移動中に、光エンジンに一連のパターン・セクションを前記供給速度で放射させる、パターン・データ供給手段と、
- 造形プラットフォームに対する光エンジンの位置及び/又は速度を感知するためのリニア・エンコーダと、
- リニア・エンコーダによって感知された位置又は速度に基づいて、パターン・データ供給手段の供給速度を調整するための第2の制御手段と、
を備える。
【0015】
本明細書で使用される「パターン・データ」は、光源(例えば、光エンジン)に提供され、光エンジンに、特定のパターンに従って造形プラットフォーム上の材料を選択的に硬化させるデータを含むことができる。
【0016】
装置は、大きな造形プラットフォーム上での3D構造体の製造を可能にするために、光エンジンと造形プラットフォームとの相対移動を特徴とし、その印刷面積は、光エンジンの露光フィールドの倍数、特に光エンジンの露光フィールドの少なくとも3倍である。本開示によると、2つの装置の「相対移動」とは、2つの装置のいずれか一方又は両方が他方に対して移動することを意味してもよい。例えば、光エンジンと造形プラットフォームとの「相対移動」とは、光エンジンと造形プラットフォームが互いに対して移動することを意味してもよい。例えば、造形プラットフォームが静止している場合、第2の駆動手段は、光エンジンを変位経路に沿って移動させることができる。代替として、光エンジンは静止していてもよく、造形プラットフォームが変位経路に沿って造形プラットフォームに対して移動するように駆動されてもよい。
【0017】
本明細書に記載されるように、「光」は、フォトポリマ樹脂の重合を誘発することができる任意の電磁放射線を含むことができる。「光」という用語は、可視光、例えば、人間の目によって知覚され得るスペクトルの部分に限定される必要はない。
【0018】
光エンジンは、光エンジンの露光フィールドにおいて光をパターニングするように設計され、パターンに従ってフォトポリマ樹脂を選択的に硬化させることができる。特に、これは、光エンジンの露光フィールドにおける光の動的パターニングを伴ってもよい。光のパターニングは、フォトポリマ樹脂の表面に光情報を選択的に投影するために、デジタル光プロセッサ(DLP)又は他のアクティブ・マスク投影システム並びにレーザ・スキャナ・ベースのシステムによって達成されてもよい。動的光エンジンは、動的投影画像、レーザ走査、又は他の0次元、1次元、若しくは2次元の動的光情報などの動的光情報を生成することができる。特に、本発明は、調整可能な供給速度で一連のパターン・セクション・データを光エンジンに供給するためのパターン・データ供給手段を提供する。光エンジンの露光フィールドは、造形プラットフォームの一部の長さにわたってのみ延在するため、光エンジンには、パターン全体の一連のセクションが提供される。光エンジンがパターン・データ供給手段から受け取った個々のパターン・セクションは、印刷されるパターンの精密な制御を保護するために、遅延なく投影される。パターン・セクションが光エンジンに供給される供給速度を制御することによって、一連の光パターン・セクションが材料層上に放射される速度が制御される。
【0019】
一連のパターン・セクション・データを光エンジンに供給するステップは、制御データ又はパターン・データを光エンジンに供給するステップを含み、制御又はパターン・データは、前記制御又はパターン・データによって表されるそれぞれの光パターンを光エンジンに放射させるように適合される。
【0020】
本発明によると、変位経路に沿った光エンジンと造形プラットフォームとの相対移動中に、光エンジンに一連の光パターン・セクションを材料上に放射させる。このようにして、一連のパターン・セクションが特定の速度で投影されている間に、光エンジンを造形プラットフォームに対して連続的に移動させ、又はその逆に連続的に移動させる連続的なプロセスが達成される。
【0021】
このような連続的なプロセスでは、多くの場合、光エンジンによる光の動的パターニングを、光エンジン及び造形プラットフォームの相対移動と同期させることが望ましい。このような同期により、各パターン・セクションが、造形プラットフォームに対してタイミング的及び位置的に正確に配置され、材料層が、位置合わせされて互いに重なり合って正確に構築されることになる。本発明によると、前記同期は、造形プラットフォームに対する光エンジンの位置及び/又は速度を感知するためのリニア・エンコーダを設けることによって達成され、第2の制御手段が、リニア・エンコーダによって感知された位置又は速度に基づいてパターン・データ供給手段の供給速度を調整するために設けられている。このようにして、動的光情報は、この光情報の動的速度(すなわち、一連のパターン・セクションが投影される速度、例えば、パターンの「スクロール速度」)が、光エンジンと造形プラットフォームとの間の相対移動の物理的速度に可能な限り一致するように、フォトポリマ樹脂上に投影される。
【0022】
変位経路全体にわたって適切な同期を行うために、リニア・エンコーダは、造形プラットフォームに対する光エンジンの変位経路全体にわたって、造形プラットフォームに対する光エンジンの位置及び/又は速度を感知するように構成されている。さらに、リニア・エンコーダは、好ましくは、位置及び/又は速度を連続的に若しくは規定された間隔で感知するように構成されている。したがって、第2の制御手段は、好ましくは、供給速度を連続的に又は前記規定された間隔で調整するように構成されている。
【0023】
高精度を確保するために、リニア・エンコーダは、光エンジンと造形プラットフォームとの間の実際の相対位置又は速度を正確に、好ましくは0.1ナノメートル(nm)~1.000マイクロメートル(μm)の精度で検出することができる。様々な実施例において、精度は、1nm~10μmであってもよく、リニア・エンコーダは、同時に、この位置又は速度情報を高い繰り返し率で測定し、第2の制御手段に供給することが可能であってもよい。リニア・エンコーダは、10Hz~100MHzの周波数で相対位置又は速度を検出するように構成されているのが好ましい。好ましい実施例では、このようなリニア・エンコーダは、離散的な位置決め信号を解釈することができ、好ましくは移動ユニットに取り付けられたアクティブ・エンコーダ・ユニット(論理ユニット)と、位置信号情報を物理的に特徴付ける(例えば、光学マーク、電磁マーク、磁気マークなど)、好ましくは非移動ユニットに取り付けられた物理測定バー又はエンコーダ・バーと、を備える。リニア・エンコーダは、好ましくは、光学的、電磁的又は磁気的などの非接触様式で位置及び/又は速度データを感知する。
【0024】
リアルタイムの位置又は速度データを提供するために、リニア・エンコーダは、50μsのレイテンシ、好ましくは30μsのレイテンシで、その位置及び/又は速度データを第2の制御手段に供給するように構成されている。
【0025】
第2の駆動手段は、光エンジンと造形プラットフォームとの間の相対速度が、安定且つ均一な印刷条件を提供するために、確実に可能な限り一定となるように制御されてもよい。付加製造プロセスを物理的にスケーリングする能力は、速度一貫性のこの要件から恩恵を受けている。移動部分に質量を加えることは、一定速度を達成するための制御アルゴリズム及び駆動エンジンの選択を容易にするのに役立つ。しかしながら、パターン・データ供給手段の供給速度は、光エンジンの移動速度の変化に合わせて調整することができるため、一定速度を達成することは、正確な付加製造のための前提条件である必要はない。したがって、造形面積に対する十分な動的光精度が、光エンジンと造形プラットフォームとの間の移動において、例えば造形プラットフォームの端部に向かう加速段階及び減速段階中にも完全に達成される。
【0026】
本発明の好ましい実施例によると、光エンジンは、調整可能な光パルス・レートで前記露光フィールドに光を断続的に放射するように設計され、光エンジンは、好ましくは、光パルス・レートをパターン・データ供給手段の供給速度に同期させるように構成されている。光パルスを生成するように光エンジンを断続的にオン及びオフにすることによって、材料層は、利用可能なタイム・スロット、すなわちパターン・データ供給手段の供給速度によって規定されるタイム・スロットの一部分にわたってのみ照射される。特に、光パルスは、光エンジンが新しいパターン・セクションに切り替わる(例えば、「スクロールする」)たびに、光パルスが生成されるように、パターン・データ供給手段の供給速度と同期している。光パルスは、第2の駆動手段が光エンジンと造形プラットフォームとを相対移動させている間に放射されるため、材料層上に放射されるパターニングされた光の位置がタイム・スロット中に変化し、これにはぼかし効果がある。利用可能なタイム・スロットの一部分にわたってのみ光を放射することによって、このような影響を最小限に抑えることができる。
【0027】
同時に、様々なフォトポリマ及び/又は先進のフォトポリマ樹脂が、重合を誘発するためにしきい値量の放射エネルギー(例えば、最小放射エネルギーを超える)を受けることが望ましい場合がある。これが適用され得るフォトポリマ配合物の非限定的な例としては、国際公報第2019/213585A1号、同2019/213588A1号、及び欧州特許第3319543A1号に記載されているものが挙げられる。これらの出願の内容は、あたかも本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
好ましい実施例によると、光エンジンは、光パルスのパルス・デューティ係数を調整するように構成される。パルス・デューティ係数は、パルス期間に対するパルス持続時間の比である。例えば、より多量の放射エネルギーを必要とするフォトポリマ材料では、より高いパルス・デューティ係数が選択されることがあり、より少量の放射エネルギーを必要とするフォトポリマ材料では、より低いパルス・デューティ係数が選択されることがある。
【0029】
パルス・デューティ係数が0.1~0.8、好ましくは0.2~0.7の値に設定される場合、これらの相反する考慮事項間の良好な妥協を達成することができる。
【0030】
パターン・データ供給手段に関連して、好ましい実施例は、パターン・データ供給手段が、造形プラットフォーム上に構築される材料層のパターンを表すパターン・データを記憶するデータ・ストレージを備え、前記パターン・データが、第2の駆動手段の変位経路に沿って測定された前記パターンの長さ寸法に関連付けられており、前記パターン・データが、前記パターンの長さに沿った前記パターンの複数のパターン・セクションを表すパターン・セクション・データを備えることを提供する。
【0031】
パターン・データは、複数の画素列を含む矩形画素格子として構成されているのが好ましく、各パターン・セクションは、少なくとも1列の画素を含む。
【0032】
各パターン・セクションが正確に1列の画素を含む場合、各画素列がパターン・データ供給手段の供給速度に対応する頻度で次々に材料層上に投影される。
【0033】
各パターン・セクションが複数列の画素を含む場合、本発明の好ましい実施例は、光エンジンに供給される前記一連のパターン・セクション・データが、1列の画素だけ互いにオフセットされたパターン・セクションを表すことを提供する。したがって、一連のパターン・セクションに順次配置されたパターン・セクションは、互いに重なり合い、光エンジンが1列の画素の寸法に対応する距離だけ造形プラットフォームに対して移動するにつれ、1つのパターン・セクションから次のパターン・セクションへの移行は、露光フィールドの前端に新しい画素列を追加し、露光フィールドの後端の画素列を除去することによって行われる。このようにして、光エンジンは、造形プラットフォームに対する光エンジンの移動速度に対応する速度でパターンをスクロールする。
【0034】
前述したように、露光フィールドを横切って材料層を輸送するための材料輸送ユニットが設けられている。好ましい実施例によると、材料輸送ユニットは、光エンジンによって放射される光に対して少なくとも部分的に透明である可撓性キャリア・フィルムを備え、コーティング手段(例えば、コーティング・ブレード)は、可撓性キャリア・フィルムの前面を材料層でコーティングするように配置され、キャリア・フィルムの前面は、露光フィールドを横切って移動する際に造形プラットフォームに面している。キャリア・フィルムは、好ましくは、エンドレス・キャリア・フィルム、連続的なキャリア・フィルム、ベルト又は他の駆動機構を使用して回転する、露光フィールドの上流の位置でコーティングされるキャリア・フィルムとして設計される。コーティング除去システムが露光フィールドの下流に設けられてもよいのが好ましく、これにより、新たな層が塗布される前にキャリア・フィルムからフォトポリマ材料の最終的な残留物を除去することが可能になる。コーティング除去システムは、スクレーパ・ブレードを備えるのが好ましく、スクレーパ・ブレードは、移動するキャリア・フィルムが間に挟まれた状態で支持板に押し付けられている。一部の実施例では、このようなシステムは、掻き出された材料を回収し、これを貯蔵領域又は貯蔵タンクに向けて送り返す。
【0035】
一部の実施例では、キャリア・フィルムがエンドレス・フィルムでない場合、その長さは、造形プラットフォームの長さに適合されるか、又はキャリア・フィルムは、造形プラットフォームよりも著しく長い。
【0036】
光エンジン、(エンドレス)可撓性キャリア・フィルム、及びコーティング手段は、印刷ヘッドの中又は上に配置されるのが好ましく、印刷ヘッドは、造形プラットフォームに対する印刷ヘッドの相対移動を引き起こすための第2の駆動手段によって移動可能である。このように、印刷ヘッドは、造形プラットフォームに対して移動する全ての部品を組み込んでいる。ここで、造形プラットフォームは、印刷ヘッドが第2の駆動手段によって移動している間、長さ方向に静止したままのプラットフォームとして設計することができる。
【0037】
印刷ヘッドは、フィルムの適切な張力を提供することができるキャリア・フィルム張力付与機構(例えば、キャリア・フィルムに張力を追加、除去、修正などをする機構)を備えてもよい。キャリア・フィルムの十分な張力は、良好な樹脂コーティング及び露光結果を得るために有利である。好ましい実施例では、前記張力付与機構は、キャリア・フィルムを案内するローラに直接取り付けられる。
【0038】
さらに、1つ又は複数のローラ(例えば、ローラのアレイ)が、前記プロセスにおけるその動作中に、キャリア・フィルムを案内するために設けられてもよい。このようなローラは、材料層との直接接触を回避するために、キャリア・フィルムの一方の側にのみ、例えば、エンドレス・キャリア・フィルムの内側に配置されるのが好ましい。しかしながら、本発明は、必要に応じて装置の代替の実施例において、ローラがキャリア・フィルムのコーティングされた側に取り付けられる実施例も包含する。この場合、ローラ表面は、例えば、特定のローラ表面又はテクスチャを選択することによって、材料層に接触するように適合されてもよい。任意選択で、このようなローラは、制御された仕方で個々に加熱されてもよい。
【0039】
本発明によると、光エンジンの造形プラットフォームに対する前記相対移動中に、前記露光フィールドにおける材料層と造形プラットフォームとの相対移動を最小限に抑えるように、前記第1及び/又は第2の駆動手段を制御する第1の制御手段が設けられている。前記第1の制御手段は、材料層と造形プラットフォームとの間に本質的に相対移動がないように、前記第1及び/又は第2の駆動手段を制御するように構成されているのが好ましい。
【0040】
材料層を輸送するための第1の駆動手段は、好ましくは、キャリア・フィルムの速度を第2の駆動手段によって引き起こされる相対移動に同期させるように、制御された仕方でキャリア・フィルムを移動させるための、例えば前記第1の制御手段によって制御される駆動エンジンを備える。このような同期により、光エンジンの造形プラットフォームに対する相対移動中に、材料層と造形プラットフォームとの接触ゾーンにおいて相対移動がなくなる。
【0041】
一部の実施例では、第1の駆動手段は、キャリア・フィルム・システムのローラのうちの1つに結合されてもよく及び/又は直接取り付けられてもよい。例えば、2つ以上のローラが駆動エンジンに接続され、例えば、1つの従動ローラがコーティング・ゾーンの近くにあってもよく、別の従動ローラが案内ローラであってもよい。
【0042】
ドリフト問題の観点から、キャリア・フィルムを操縦することができる操縦可能な案内ローラ・システムなどの、キャリア・フィルムを案内するための案内機構が設けられているのが好ましい。このようなローラは、キャリア・フィルム・モータ駆動装置に直接接続されているのが好ましい。任意選択で、このような機構を、制御された仕方で加熱することができる。
【0043】
案内板が光エンジンとキャリア・フィルムとの間の露光フィールド内に配置されて、キャリア・フィルムと造形面との間の間隙を画定し、案内板が光エンジンによって放射される光に対して少なくとも部分的に透明であるのが好ましい。案内板は、キャリア・フィルムが露光フィールドを横切って移動するときにキャリア・フィルムが案内板と接触する関係になるように配置され、それによってキャリア・フィルムを案内する。したがって、案内板は、可撓性キャリア・フィルムの裏側に接触しており、キャリア・フィルムの裏側は、露光フィールドを横切って移動する際に、造形プラットフォームとは反対を向いている。案内板は、2つの平行な平面である、案内板の平面と、造形プラットフォームの造形面との間に間隙が形成されるように、造形プラットフォームに面する側に平面を含むことができる。間隙の幅は、露光フィールドにおいて光エンジンの放射に曝される材料層の厚さを画定する。
【0044】
任意選択で、案内板は、必要に応じて間隙の幅を調整するために、造形面に垂直な方向に調整可能である。
【0045】
先進のフォトポリマ樹脂の高粘度を考慮すると、本発明の装置は、好ましくは、材料層の温度を制御するための加熱手段を備えていてもよい。特に、感光性ポリマの化学反応性は、その温度によって直接影響されるため、材料層の温度は、露光フィールドにおいて制御されてもよい。露光フィールドにおける温度の制御は、露光フィールドにおいてキャリア・フィルムを案内する案内プレートを加熱することによって達成することができる。したがって、好ましい実施例は、案内板を加熱するための第1の加熱手段を設けることを提供する。特に、加熱手段は、露光フィールド内の案内板を加熱するように構成される。
【0046】
案内板は、樹脂硬化に用いられる波長又は波長範囲に対して光学的に透明であるため、間接的な加熱手段が好ましい。好ましい加熱手段としては、周囲の空気又はプロセス・ガスを加熱するように構成された加熱手段などの熱風加熱、案内板を通して圧送される又は案内板をその一方の側で取り囲む透明液体を加熱するように構成された加熱手段、及び露光フィールドに隣接する領域で案内板を伝導的に加熱するための加熱素子を備える加熱手段が挙げられる。好ましい実施例によると、加熱手段は、造形プラットフォームとは反対向きの側から案内板を加熱するために、赤外線放射器などの赤外線加熱素子を備える。このようにして、赤外線放射は、感光材料に当たる前にまず案内板に当たる。これに関連して、好ましい実施例は、案内板が、赤外線放射に対しては不透明又は部分的にのみ透明であり、且つフォトポリマ樹脂を硬化させるために用いられる放射波長に対しては透明又は少なくとも部分的に透明である材料から作製されることを提供する。
【0047】
温度制御するために考慮すべき別のプロセス・ゾーンは、キャリア・フィルムがフォトポリマ樹脂でコーティングされるコーティング・ゾーンである。コーティング・ゾーンを特定の温度に加熱することは、フォトポリマ樹脂の粘度を低下させるために有利である可能性があり、樹脂の粘度はその温度によって決定される。キャリア・フィルムをフォトポリマ樹脂の薄層でコーティングするために、コーティング手段は、キャリア・フィルムの表側に配置されたドクター・ブレードなどのレーケル機構(rakel mechanism)を備え、キャリア・フィルムは、レーケル機構に対向してキャリア・フィルムの裏側に配置された支持板によってコーティング・ゾーンにおいて支持されている。ドクター・ブレードなどのレーケル機構を加熱するための加熱素子が設けられているのが好ましい。さらに、好ましくは、支持板を加熱するための加熱素子も設けられてもよい。加熱されると、支持板は、熱をキャリア・フィルムに伝達し、キャリア・フィルムは、コーティング・ゾーンにおいてキャリア・フィルム上にコーティングされたフォトポリマ樹脂を加熱する。
【0048】
さらに、樹脂をキャリア・フィルムによって露光フィールドに移動させる前に、樹脂の加熱をサポートし、結果として樹脂の粘度を下げるために、露光フィールドの周囲に前加熱及び後加熱ゾーンを実装することができる。後加熱ゾーンは、滑らかな温度勾配の調整に役立ち、さらなるプロセスの安定性を加えることができる。これに関連して、本発明の好ましい実施例は、コーティング手段と露光フィールドとの間に、材料層を加熱するための第2の加熱手段が配置されることを提供する。
【0049】
樹脂温度は、樹脂が冷たい造形プラットフォームに塗布された場合、著しく低下するため、造形プラットフォームの温度を制御するための追加の加熱手段が設けられているのが好ましい。このことは、造形プラットフォーム上に印刷された最初の層にとって、このような層が造形プラットフォームの表面と直接接触するため、重要である。造形プラットフォームの温度が適切に制御されていない場合は、造形プレートの熱膨張現象が経時的に印刷精度に悪影響を及ぼすため、印刷プロセスの後の方で、造形プラットフォームを加熱することも好ましい。造形プラットフォームの加熱は、加熱パッド又は他の加熱素子を使用することによって、造形プラットフォーム又は造形プラットフォームを運ぶためのキャリア要素を加熱することによって達成されてもよい。
【0050】
これに関連して、本発明の好ましい実施例によると、造形プラットフォームは、交換可能に配置される。例えば、造形プラットフォームは、キャリア要素上に交換可能に配置されてもよく、又はキャリア要素に接続されていてもよい。これにより、印刷プロセスが終了した後に造形プラットフォームを容易に取り外すことができ、次の印刷プロセスのために新しい造形プラットフォームを設置することができる。造形プラットフォームを取り外し、設置するプロセスは、造形プラットフォームとキャリア要素とを互いに結合するように構成された結合ユニット、並びに/又は電気信号によって作動及び解除することができるキャリア要素上に造形プラットフォームを固定するための手段などによって、自動的に行うことができることが好ましい。好ましい実施例では、造形プラットフォームは、真空装置又は電磁装置によってキャリア要素に交換可能に固定される。特に、キャリア要素の表面には、少なくとも1つのチャネルが設けられており、このチャネルが造形プラットフォーム・キャリアと、交換可能な造形プラットフォームとの間に負圧を生成することができる真空源に接続されている。このような実施例では、交換可能な造形プラットフォームは、単純なシート状金属板であってもよい。さらに、このようなキャリア要素は、自動造形プラットフォーム交換手段を備えることもできる。好ましい実施例では、交換手段は、キャリア要素の下に配置された突起と位置合わせされたキャリア要素の孔又は間隙を備える。キャリア要素が下方に移動すると、突起が、下から孔又は間隙を貫通し、造形プラットフォームをキャリア要素から持ち上げる。好ましい実施例では、このような突起要素は、車輪又はキャリア・ベルト機構を備え、これらは、キャリア要素から造形プラットフォームを持ち上げることができるだけでなく、造形プラットフォームを印刷ゾーンから移動又は運搬することもできる。このような機構は、自動化された造形プラットフォーム交換機構の一部とすることができるのが好ましく、これは自律的な印刷手順にとって有益である。
【0051】
好ましい実施例では、キャリア要素は、加熱素子が上に(例えば、底部及び/又は側部に)設置された金属板から構成されている。
【0052】
本発明の好ましい実施例によると、造形プラットフォーム及び輸送ユニットは、造形面に垂直な方向に相対移動するように構成されている。この目的のために、好ましくは、造形面に垂直に延在する変位経路に沿って輸送ユニットと造形プラットフォームとを相対移動させるための駆動手段が設けられている。この高さ調整によって、造形プラットフォームとキャリア・フィルムの樹脂側との間の間隙の幅を調整して、材料層の層厚を画定することができる。
【0053】
さらに、造形プラットフォームと輸送ユニットとの相対的な可動性により、システムを調整して、最初の層を造形プラットフォーム上に印刷した後に追加の層を重ねて印刷することができる。追加の層ごとに、造形プラットフォームとキャリア・フィルムとの間の距離が層厚に対応する寸法だけ増加する。
【0054】
したがって、造形プラットフォーム及び印刷ヘッドは、造形面に平行に延在する変位経路に沿って、及び造形面に垂直に延在する変位経路に沿って、2つの方向に互いに対して移動可能である。これに関連して、好ましい実施例は、造形プラットフォームが造形面に垂直に延在する方向に移動可能であるが、印刷ヘッドが前記方向に固定され、印刷ヘッドが造形面に平行に延在する方向に移動可能であるが、造形プラットフォームが前記方向に固定されることを提供する。代替の実施例は、印刷ヘッドが造形面に垂直に延在する方向に移動可能であり、造形プラットフォームが造形面に平行に延在する方向に移動可能であることを提供する。
【0055】
本発明の装置は、印刷プロセスを他の製造システム、特に非リソグラフィ付加製造システム及び/又は非付加製造システムと組み合わせる大きな可能性を示すことができる。これは、部品のリソグラフィ付加製造中に、このような部品の内部のあらゆる体積点が、他の機械的、化学的、又は物理的製造ステップにとって容易にアドレス可能であるという事実に起因することができる。好ましい実施例によると、少なくとも1つの二次材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットが、印刷ヘッドに隣接して配置され、前記材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットは、好ましくは、造形面に平行に延在する変位経路に沿って造形プラットフォームに対して相対移動するように案内される。
【0056】
材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットの例としては、インクジェット印刷ユニット、熱溶解積層ユニット、繊維配置又は繊維コーティング・ユニット、穴開け及びボーリング・ユニット、はんだ付けユニット、色素コーティング・ユニット、ダイ・ボンディング・ユニット、プラズマ・コーティング・ユニットなどの低温及び高温プラズマ処理ユニット、ワイヤ・ボンディング・ユニット、スプレー・コーティング又は微小液滴ユニット、印刷されたシェルに同じ又は別の材料を充填することができるシェル充填機構などの鋳造ユニット、切断ユニット、並びにロボット・アーム又は他の物理的物体マニピュレータなどの多目的ピック・アンド・プレース・ユニットが挙げられる。このようなプロセス強化ユニットは、印刷ヘッドに物理的に接続され、したがってリニア・エンコーダなどの同じ又は追加の位置決め制御システムを使用するという点で実際のリソグラフィ印刷プロセスと相互作用することができ、或いは印刷ヘッド又は造形プラットフォームと同じ又は異なる物理的案内システムによって造形プラットフォーム領域に沿って個々に移動することができる。上述した製造及び操作システムの一部は、機械的な関節及び/或いは固定された若しくは移動する取り付け点又は関節を使用して、横方向に又は3次元的に、或いは複合的に移動することができるロボット・アーム又は他の物体操作システムに取り付けることもできる。
【0057】
別の態様によると、本発明は、3次元(3D)プリンタ・システムに言及する。3Dプリンタ・システムは、造形面を画定する造形プラットフォームを含むことができる。3Dプリンタ・システムの材料輸送ユニットは、キャリア・フィルムを含むことができる。キャリア・フィルムは、本明細書に記載されるように、フォトポリマ樹脂を受け取る及び/又は移動させる1つ若しくは複数の表面を有することができる。本明細書に記載されるように、キャリア・フィルムは、連続的な/エンドレスのキャリア・システムを含むことができる。3D印刷システムは、キャリア・フィルム上にフォトポリマ樹脂を吐出するためのノズル又は他の装置を含むことができる。ノズル/他の装置は、フォトポリマ樹脂の1つ又は複数の材料層を生成することができる。一部の実施例では、ノズル/他の装置は、キャリア・フィルム上にフォトポリマ樹脂の単一の材料層を生成するのに十分な樹脂を吐出するように構成されている。
【0058】
3D印刷システムは、フォトポリマ樹脂の材料層を特定の厚さに維持するための装置を含むことができる。一例として、3D印刷システムは、ノズルからキャリア・フィルム上に吐出された材料層を特定の厚さに維持するように構成されたコーティング・ブレードを含むことができる。コーティング・ブレードは、キャリア・フィルム上に堆積させる材料層の厚さを調整することができるように、キャリア・フィルムに直交する方向に調整可能であってもよい。一部の実施例では、3D印刷システムは、キャリア・フィルム上のコーティング・ゾーン内にフォトポリマ樹脂の材料層を混合するための装置を含む。このような装置の例としては、スクレーパ、ミキサなどが挙げられる。
【0059】
3D印刷システムは、1つ若しくは複数の材料層に対して構造化、配置、除去、又はそれらの何らかの組合せを実行するように構成された材料管理ユニットを含むことができる。材料管理ユニットは、例えば、ロボット・アーム、1つ又は複数の材料層を感知するように構成されたセンサなどを含むことができる。
【0060】
3D印刷システムは、フォトポリマ樹脂を硬化させるための光を提供するように構成された光エンジンを含むことができる。光エンジンは、光源を含むことができ、光源に電力を供給する電源を含んでもよく/電源に結合されてもよい。光エンジンに関連付けられた露光フィールドは、光エンジンが光エンジンからの光を造形プラットフォームの少なくとも一部(場合によっては全部)に曝露することを可能にしてもよい。一部の実施例では、露光フィールドは、光源からの光に対して実質的に透明である窓又は他の領域に関連付けられている。1つ又は複数のセンサは、造形プラットフォームに対する光エンジンの位置、速度、加速度、角運動などの属性を感知することができる。センサは、リニア・エンコーダ、較正器、及び/又は造形プラットフォームに対する光エンジンの属性を感知する他の装置を含むことができる。一部の実施例では、センサは、光エンジンの光学測定を行う。
【0061】
一部の実施例では、3D印刷システムは、ある供給速度(例えば、調整可能な供給速度)でパターン・セクション・データに従って材料層の一部を硬化させるために、ある供給速度でパターン・セクション・データを光エンジンに供給するように構成されたパターン・データ供給装置を含む。光エンジンは、光エンジン及び造形プラットフォームのうちの1つ又は複数が変位経路に沿って互いに対して移動するときに、ある供給速度(例えば、調整可能な供給速度)で一連のパターン・セクションを放射するように構成されてもよい。パターン・データ供給装置は、本明細書に記載されるように、1つ又は複数の制御ユニットからの命令を受け取ることができる。
【0062】
3D印刷システムは、3D印刷システムの構成要素を互いに対して移動させるように構成された1つ又は複数の駆動機構を含むことができる。本明細書で使用される「駆動機構」は、アイテムを移動させるように構成された装置を含むことができ、アクチュエータ、トランスデューサ、電気構成部品などを含むことができる。3D印刷システムの駆動機構は、材料層を3D印刷システムの造形プラットフォーム、露光フィールド、及び/又は他の領域に向けて輸送するように構成されてもよい。一部の実施例では、駆動機構は、材料輸送ユニット、光エンジン、及び/又は造形プラットフォームを互いに対して移動させる第1の駆動機構を含む。第1の駆動機構は、1つ又は複数の材料層(例えば、ノズルから吐出されたフォトポリマ樹脂から形成されたもの)を光エンジンの露光フィールド及び/又は造形プラットフォームの一部に向けて輸送するように構成されてもよい。一部の実施例では、第1の駆動機構は、キャリア・フィルム上のコンベヤ若しくは他の構造体を露光フィールド及び/又は造形プラットフォームに向けて回転させるように構成されてもよい。第1の駆動機構は、キャリア・フィルムの張力を管理するように構成されたテンション・ローラ、調整可能ローラなどのローラ、及び/又は他の装置を含んでもよい。
【0063】
3D印刷システムの駆動機構は、光エンジン及び/又は造形プラットフォームを互いに対して移動させるように構成されてもよい。一部の実施態様では、駆動機構は、光エンジンが造形プラットフォームに対して移動するように、光エンジン及び/又は造形プラットフォームを移動させるように構成された第2の駆動機構を含む。このような相対移動は、造形プラットフォームによって画定される造形面に沿って達成されてもよい(が、そうである必要はない)。
【0064】
3D印刷システムは、1つ又は複数の制御ユニットを含むことができる。制御ユニットのいずれも、メモリ及び1つ若しくは複数のプロセッサ、揮発性及び/又は不揮発性ストレージ、データ入力及び/又は出力などを含むことができる。制御ユニットのいずれも、光エンジンなどの他の構成要素の属性を感知するセンサからセンサデータを受け取ることができる。1つ若しくは複数のプロセッサは、メモリ及び/又はストレージに記憶されたコンピュータ・プログラム命令を実行することができる。一部の実施態様では、制御ユニットは、造形プラットフォームに対する材料輸送ユニット及び光エンジンの移動を最適化する(例えば、低減する、最小限に抑えるなど)ように駆動機構に命令するように構成された第1の制御ユニットを備える。命令は、材料輸送ユニットのキャリア・フィルムの位置及び/又は速度を変更するための第1の駆動機構への命令を含んでもよい。これには、材料輸送ユニットの速度を落とすこと又は速度を上げることが含まれることがある。第1の制御ユニットからの命令は、材料輸送ユニットと光エンジンとが互いに(例えば、時間及び/又は空間において)同期するように、光エンジン及び/又は造形プラットフォームを移動させるための第2の駆動機構への命令を含むこともできる。制御ユニットは、材料輸送ユニット、光エンジン、及び造形プラットフォームのうちの1つのみに、又は2つ以上に命令を提供することができる。制御ユニットの1つ又は複数は、センサ信号に応答してパターン・データ供給装置の供給速度を調整することができる。
【0065】
3D印刷システムは、材料層が光エンジンに関連付けられた露光フィールド内の造形面の少なくとも一部の上にある間に材料層を加熱するように構成された加熱システムを含むことができる。加熱システムは、造形面上にある間に材料層を3D印刷することができるように、フォトポリマ樹脂の粘度を低下させるように構成されてもよい。光源への曝露は、3D印刷プロセス中に材料層を少なくとも部分的に硬化させることを可能にしてもよい。加熱システムの例としては、非接触加熱ランプ、赤外線ランプなどが挙げられる。
【0066】
一部の実施例では、3D印刷システムは、材料層の少なくとも一部を、例えば加熱システムによって加熱する前に、特定の温度に維持するように構成された前加熱板を含む。前加熱板は、キャリア・フィルムの一部、例えば、材料輸送ユニットが造形面に向けて移動するキャリア・フィルムの一部に結合されてもよいが、そうである必要はない。3D印刷システムは、材料層が加熱及び/又は印刷された後に材料層を特定の温度に維持するように構成された後加熱板を含むことができる。
【0067】
3D印刷システムは、光源からの光の波長に対して少なくとも部分的に透明である案内板を含むことができる。案内板は、光源からの光が、案内板を通過し、露光フィールドを通過して造形面に達することを可能にしてもよい。一部の実施例では、案内板は、キャリア・フィルムを造形プラットフォームに対して特定の位置に案内する。このような構成は、キャリア幅と造形プラットフォームとの間に特定の幅の間隙を生成して、案内板と造形プラットフォームとの間で材料層を3D印刷及び/又は硬化させることを可能にしてもよい。
【0068】
別の態様によると、本発明は、リソグラフィに基づく3次元構造体の付加製造のための請求項16に記載の方法を提供し、本方法は、
- フォトポリマ樹脂を材料輸送ユニットのキャリア・フィルム上に吐出して、キャリア・フィルム上にフォトポリマ樹脂の少なくとも1つの材料層を生成するステップと、
- 材料輸送ユニットを駆動して、フォトポリマ樹脂の材料層を、光エンジンからの光を造形プラットフォームの造形面の少なくとも一部に向けて曝露するように構成された露光フィールドに向けて輸送するステップと、
- 造形面に平行に延在する変位経路に沿って、造形プラットフォームに対する露光フィールドの相対移動を引き起こすステップと、
- 造形プラットフォームに対する露光フィールドの前記相対移動中に、前記露光フィールドにおける材料層と造形プラットフォームとの相対移動を最小限に抑えるように、材料輸送ユニット、露光フィールド及び/又は造形プラットフォームの移動を制御するステップと、
- 一連のパターン・セクション・データを光エンジンに供給するステップと、
- 変位経路に沿った露光フィールドと造形プラットフォームとの前記相対移動中に、光エンジンが調整可能な供給速度で一連のパターン・セクションを放射し、それによって、前記一連のパターン・セクションに従って造形面の一部の材料層を選択的に硬化させるステップと、
- 造形プラットフォームに対する露光フィールド及び/又は光エンジンの位置若しくは速度を感知し、位置若しくは速度の感知に応答してセンサ信号を提供するステップと、
- 前記センサ信号に応答して前記供給速度を調整するステップと、
を含む。
【0069】
本方法の好ましい実施例は、従属請求項において定義される。
【0070】
以下では、本発明の特定の好ましい実施例を参照することによって、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の印刷装置の第1の例示的な実施例である。
図2図1の装置で使用するための印刷ヘッドである。
図3】本発明の印刷装置の第2の例示的な実施例である。
図4】本発明の装置に供給される画素の格子として構成されたパターン・データである。
図5】3D印刷システムを使用して物体を3D印刷するための例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1において、造形プラットフォーム1は、板状キャリア要素2上に交換可能に配置されている。印刷ヘッドは、参照番号3によって示され、連続的なベルト(例えば、エンドレス・ベルト)として設計されている可撓性キャリア・フィルム4を備える。コーティング・ゾーン6において、キャリア・フィルム4は、フォトポリマ樹脂の層でコーティングされ得る。キャリア・フィルム4は、光エンジン(図2に示す)の露光フィールド7を横切って材料層を連続的に輸送するために、第1の駆動機構によって矢印5又は9に従って移動するように駆動される。光エンジンは、露光フィールド7において光を動的にパターニングするために設計されており、キャリア・フィルム4と造形プラットフォーム1との間のキャリア・フィルム4上に配置されたフォトポリマ樹脂層の重合を誘発する。
【0073】
第2の駆動機構は、造形プラットフォーム1の造形面に平行に延在する変位経路8に沿って印刷ヘッド3を造形プラットフォーム1に対して移動させるために設けられている。第1の制御ユニットは、キャリア・フィルム4の循環速度を、造形プラットフォーム1に対する印刷ヘッド3の速度と同一になるように制御するために設けられ、その結果、造形プラットフォーム1に対する印刷ヘッド3の相対移動中に露光フィールド7において材料層と造形プラットフォーム1との相対移動がない。換言すれば、キャリア・フィルム4は、印刷ヘッドが造形プラットフォーム1に沿って矢印8の方向に移動するのと同じ速度で材料層を露光フィールド7に供給する。この目的のために、キャリア・フィルム4は、印刷ヘッド4が右から左に移動する場合は、矢印5に従って循環し、キャリア・フィルム4は、印刷ヘッド4が左から右に移動する場合は、矢印9に従って循環する。印刷ヘッド3が造形プラットフォーム1上を通過するごとに(右から左又は逆方向のいずれかに)、造形プラットフォーム1又は半完成ワークピース上に固化材料の層が生成され、各通過後に、固化層を重ねて生成することができるように、造形プラットフォーム1を矢印10の方向に下降させる。しかしながら、一部の実施例では、印刷ヘッド3は、新しい層を印刷するために矢印8に沿って一方向にのみ移動し、その初期位置に戻るためにのみ逆方向移動を使用してもよい。このような構成では、印刷ヘッド3がその初期位置に戻ることができるように、造形プラットフォーム1を、一時的に2層の厚さ以上、下降させ、その後、印刷ヘッド3がその初期位置に到達した後、造形プラットフォーム1を次の層印刷位置まで持ち上げて戻す。このような構成では、キャリア・フィルム4は、印刷プロセスを実行するために、矢印5又は9の一方に従ってのみ循環する。
【0074】
各層は、光エンジンに供給されるパターン・データによって決定される画定されたパターンに従って構造化されてもよい。例えば、印刷される構成要素の全長にわたる印刷ヘッド3の直線移動を中断することなく、印刷ヘッド3を造形プラットフォーム1に沿って連続的に移動させる連続的なプロセスを可能にするために、パターン・セクション・データのデータ・シーケンスを光エンジンに供給するためのパターン・データ供給装置が設けられ、その供給により、造形プラットフォーム1に対する印刷ヘッド3の移動中に、光エンジンに一連のパターン・セクションを放射させる。
【0075】
印刷プロセスの所望の精度を達成するために、パターン・データ供給装置の供給速度を印刷ヘッド3の移動速度と同期させる。この目的のために、造形プラットフォーム1に対する印刷ヘッド3の位置及び/又は速度を感知するよう、印刷ヘッド3には、静止したリニア・エンコーダ・バー12に沿って移動するリニア・エンコーダ11が設けられている。パターン・データ供給装置の供給速度は、リニア・エンコーダ11によって得られた位置及び/又は速度信号に基づいて制御される。前記制御プロセスは、印刷ヘッド3の移動経路全体にわたって同期を達成するために、連続的に又は高い頻度で実行される。
【0076】
本装置は、光エンジンの光学測定を可能にするために、較正器13を備えることができる。このような測定は、手動又は自動で実現することができる。較正器13は、カメラ・システム(例えば、可視又はUV範囲の)、光センサ(例えば、信号タイミング若しくは位置決め制御システム用、又は光若しくは放射強度測定用の)などの様々な光学素子を備えることができる。このようなシステムを用いて、焦点面の測定及び潜在的なステッチ現象、例えば、複数の動的光エンジンを組み合わせて、プロセスの造形面積を物理的に拡大させるか、又は露光フィールドの光エネルギーをより多くしてプロセスのスループットを増加させた場合のステッチ・ゾーン現象も調べることができる。
【0077】
さらに、余分な樹脂を回収するために、樹脂オーバーフロー回収器40が、造形プラットフォーム1の両端又は全側面に配置されてもよい。
【0078】
さらに、造形プラットフォーム1をキャリア要素2に着脱可能に固定するために、真空装置が設けられてもよい。この目的のために、真空ライン14がキャリア要素2に接続されてもよい。代替として、キャリア要素2の上に造形プラットフォーム1を固定するために、電磁要素などの磁気手段が設けられてもよい。
【0079】
キャリア要素2を加熱し、したがって、造形プラットフォーム1を加熱するために、加熱パッド15がキャリア要素2の下側に配置されている。
【0080】
造形プラットフォーム1を交換するための交換機構は、車輪41又は他の搬送要素を備え、車輪41は、回転軸42を中心に回転するように支持されている。交換機構を造形プレートに向けて上昇させると、車輪41は、キャリア要素2に設けられたスロット(図示せず)を通って突出し、造形プラットフォーム1の下側と接触すると、造形プラットフォームをキャリア要素から持ち上げる。次いで、車輪41の回転により、造形プラットフォームが印刷ゾーンから搬送される。
【0081】
印刷ヘッド3は、図2により詳細に示されている。印刷ヘッド3は、閉じた経路に沿って循環するように案内されるエンドレス・キャリア・フィルム4を備える。キャリア・フィルム4は、偏向ローラ16、テンション・ローラ17、及び調整可能ローラ18を含む複数のローラによって案内される。コーティング・ゾーン6には、樹脂供給ホース20に接続されたノズル19が設けられている。ノズル19は、キャリア・フィルム4上にフォトポリマ樹脂を吐出する。一実施例では、樹脂は、環境と比較したときのホース20及びノズル19内の過圧(例えば、許容可能なしきい値を超える圧力)の結果として吐出され、過圧は、機械的又は空気圧システムによって生成され、粘性フォトポリマ樹脂を貯蔵タンクからコーティング・ゾーン6に向けて圧送することができる。一部の実施例では、貯蔵タンク、ホース20及びノズル19を含むこのようなコーティング機構は、制御された仕方で加熱されてもよい。
【0082】
コーティング・ブレード21は、キャリア・フィルム4上に規定された厚さの材料層を画定する役割を果たす。コーティング・ブレード21は、所望の層厚を調整するために高さ方向に調整可能である。さらに、コーティング・ゾーン6内の材料をリフレッシュ又は混合するためにスクレーパ22が設けられている。様々な実施例において、スクレーパ22は、制御された仕方で加熱されてもよい。コーティング・ゾーン6内のキャリア・フィルム4の裏側に支持板27が配置されている。支持板27は、必要に応じて加熱素子として機能してもよい。
【0083】
参照番号23によって示される任意選択のコーティング除去システムは、プロセス洗浄又は材料交換手順中に様々な目的のためにキャリア・フィルム4をコーティング除去(例えば、キャリア・フィルム4から材料を除去)するように動作することができる。コーティング除去システム23は、移動するキャリア・フィルム4が間に挟まれた状態で支持板26に押し付けられたスクレーパ・ブレードを備えてもよい。
【0084】
材料層を高温に維持又は加熱するために、前加熱板24及び後加熱板25を含む加熱素子が設けられてもよい。キャリア・フィルム4の移動方向に応じて、前加熱板又は後加熱板としての前記加熱板の機能が切り替わってもよい。一例として、キャリア・フィルム4が反時計回り方向に回転している場合は、素子24は、前加熱板として動作し、素子25は、後加熱板として動作してもよく、逆に、キャリア・フィルム4が時計回り運動で回転している場合は、素子25は、前加熱板として動作し、素子24は、後加熱板として動作してもよい。
【0085】
印刷ヘッド3の光エンジン28は、参照番号28で示され、露光フィールド7に光を放射する。露光フィールド7には、光エンジン28によって放射された光の波長に対して少なくとも部分的に透明な案内板29が配置されている。案内板は、キャリア・フィルム4の裏側に配置され、キャリア・フィルム4と造形プラットフォーム1との間に配置された精密に画定された間隙によって、造形プラットフォーム1に対するキャリア・フィルム4の精密な位置を規定するようにキャリア・フィルム4を案内する働きをする。透明な案内板29は、赤外線ランプ30を含む非接触加熱システムによって加熱される。
【0086】
図3による補足的な実施例では、1つ又は複数の材料管理ユニット(例えば、材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニット)が印刷ヘッド3に隣接して配置され、前記材料構造化及び/又は材料配置及び/又は材料除去ユニットは、造形プラットフォーム1の造形面に平行に延在する変位経路8に沿って造形プラットフォーム1に対して移動するように案内される。
【0087】
一部の実施例では、材料管理ユニットは、スプレー・コーティング・システム31、インクジェット・システム32、はんだ付けシステム、プラズマ・コーティング・システム又は配線システム33、及び多目的ロボット・アーム34を含むことができる。これらのユニットのそれぞれは、それ自身のリニア・エンコーダ11を有することができる。
【0088】
図4は、印刷プロセス中に特定の層に印刷されるパターンを表す画素36の仮想グリッド35の形態でのパターン・データの構造化を概略的に示す。方向8に沿ったパターンの長さは、印刷される構成要素の長さに対応する。パターンは、1列又は複数列37のパターンを含むことができる複数のパターン・セクションに分割されてもよい。例えば、第1のパターン・セクションは、38で示され、5つの列37を含む。第2のパターン・セクションは、39で示され、第1のパターン・セクション38に対して1列37だけオフセットされている。同じことが、1列の画素によってそれぞれオフセットされるさらなるパターン・セクションにも当てはまる。印刷ヘッド3が造形プラットフォーム1に対して連続的に移動するにつれ、印刷ヘッド3の現在位置にパターンを適合させるために、一連のパターン・セクション38、39などが光エンジン28に供給される。本発明によると、一連のパターン・セクションの供給速度は、精密な印刷プロセスを保護するために、リニア・エンコーダ11によって感知される印刷ヘッド3の速度に適合されている。
【0089】
印刷プロセスは、変位経路8に沿って延在する最大造形プラットフォーム長の観点から物理的にスケーリングすることができる。さらに、露光フィールドの適切な幅、例えば光エンジンの幅(レーザ走査線の長さ又はLED若しくはマイクロLEDアレイの長さなど)を選択することによって、或いは複数の光エンジンを並べて使用することによって、造形プラットフォーム幅の観点からスケーリングすることができる。印刷プロセスの精度は、パターン・データ供給装置の供給速度を制御する位置及び/又は速度測定システムのために、印刷ヘッドと造形プラットフォームとの相対速度に依存しないため、プロセスは、スループット又は露光速度の観点からスケーリングすることもできる。最大印刷速度には光化学的制約があるが、これらの制限は、材料に強く依存しており、したがって、感光性物質の違いや、印刷温度及び大気条件(例えば、プロセス・ガス)などの印刷条件の違いによっても著しく変化する可能性がある。
【0090】
図5は、3D印刷システムを用いて物体を3D印刷するための例示的な方法の流れ図500を示す。流れ図500は、図1図4の文脈で説明した例示的な構造に関連して説明される。しかしながら、流れ図500の動作は、図1図4に示すもの以外の構造及び/又は装置によって実行されてもよいことに留意されたい。流れ図500の動作は単なる例であり、様々な実施態様は、図5に示す動作よりも多い又は少ない数の動作を採用することができることに留意されたい。
【0091】
動作52において、フォトポリマ樹脂が材料輸送ユニットのキャリア・フィルム上に吐出され、キャリア・フィルム上にフォトポリマ樹脂の1つ又は複数の材料層を生成することができる。一部の実施例では、ノズル19は、キャリア・フィルム4上のコーティング・ゾーン6上にフォトポリマ樹脂を吐出することができる。本明細書に記載されるように、これは、支持板27に隣接するキャリア・フィルム4の表面及び/又はキャリア・フィルムの他の都合のよい表面で行われてもよい。
【0092】
動作54において、1つ又は複数の材料層の厚さは、特定の厚さに維持されてもよい。一部の実施例では、1つ又は複数の材料層の厚さを維持することは、それらの材料層の少なくとも一部を除去して、それらの材料層を平坦化することを伴ってもよい。図2を参照すると、コーティング・ブレード21は、例えば、材料層を除去及び/又は平坦化することによって、材料層を所望の厚さに維持するように動作することができる。
【0093】
動作56において、1つ又は複数の材料層がキャリア・フィルム上のコーティング・ゾーンにおいて混合されてもよい。図2を参照すると、スクレーパ22は、例えば、キャリア・フィルム4のコーティング・ゾーン6上の材料層を混合するように動作することができる。
【0094】
動作58において、材料輸送ユニットは、造形プラットフォームの造形面の少なくとも一部に向けて光源からの光を曝露するように構成された露光フィールドに向けて1つ又は複数の材料層を輸送するように駆動されてもよい。再び図2を参照すると、キャリア・フィルム4は、実施例に応じて、第1の駆動機構によって矢印5又は矢印9に沿って駆動されて、コーティング・ゾーン6上に堆積させた1つ又は複数の材料層を、造形プラットフォーム1上の造形面に向けて、及び/又は光エンジン28に関連付けられた露光フィールド7に向けて輸送することができる。本明細書に記載されるように、他の駆動機構を使用して、材料層を露光フィールド及び/又は造形面に向けて同様に駆動することができる。
【0095】
動作60において、造形プラットフォームに対する光エンジンの位置又は速度が感知されてもよい。光エンジンの位置又は速度の感知に応答して、センサ信号が提供されてもよい。図1及び図2を参照すると、リニア・エンコーダ11は、造形プラットフォーム1に対する光エンジン28の位置/速度を感知するように動作することができる。本明細書に記載されるように、リニア・エンコーダ11は、リニア・エンコーダ11の内部に存在してもよい及び/又はリニア・エンコーダ11に結合されてもよい制御ユニットにセンサ信号を提供することができる。一部の実施例では、リニア・エンコーダ11は、位置/速度測定値を導出するために、光エンジン28の光学測定を行うことができる。リニア・エンコーダ11はまた、光学マーク、電磁マーク及び/又は磁気マークを感知するように構成されてもよい。本明細書に記載されるように、制御ユニットは、センサ信号に応答して、パターン・データ供給装置の供給速度を調整することができる。
【0096】
動作62において、1つ又は複数の材料層が露光フィールド内の造形面上にある間に、造形プラットフォームに対する材料輸送ユニット又は光エンジンの移動を最適化するための命令が提供されてもよい。(場合によってはリニア・エンコーダ11の外部の又は内部に存在する)制御ユニットは、キャリア・フィルム4、光エンジン28、造形プラットフォーム1、又はそれらの何らかの組合せの移動を最適化して、それらの互いに対する移動を最適化する命令を提供するように構成されてもよい。一部の実施例では、これは、キャリア・フィルム4、光エンジン28、及び/又は造形面1が位置並びに/或いは速度において同期するように、相対移動を最小化すること及び/又はそれらの移動を同期させることを伴ってもよい。
【0097】
動作64において、材料輸送ユニット、光エンジン、及び/又は造形プラットフォームの移動は、命令に応答して最適化されてもよい。例えば、キャリア・フィルム4、光エンジン28、及び/又は造形プラットフォーム1の移動は、キャリア・フィルム4、光エンジン28、及び/又は造形面1が、位置及び/又は速度において同期するように最適化(例えば、最小化など)されてもよい。本明細書に記載されるように、テンション・ローラ17及び/又は調整可能ローラ18は、命令に応答して、キャリア・フィルムの位置/速度を修正するように動作することができる。印刷ヘッド3は、命令に応答して、光エンジン28の位置/速度を修正するように同様に動作することができる。一部の実施例では、テンション・ローラ17及び/又は調整可能ローラ18の動きを印刷ヘッド3の動きと同期させて、造形プラットフォーム1に対するキャリア・フィルム4と光エンジン28との間の移動を最適化する。
【0098】
動作66において、キャリア・フィルムを造形プラットフォームに対して特定の位置に案内して、キャリア・フィルムと造形プラットフォームとの間に特定の幅を有する間隙を生成してもよい。例えば、キャリア・フィルム4を造形プラットフォームに対して特定の位置に案内して、キャリア・フィルム4と造形プラットフォーム1との間に特定の幅を有する間隙を生成してもよい。この間隙により、キャリア・フィルム4と造形プラットフォーム1との間の3D印刷及び/又は選択的硬化(本明細書で詳細に説明される)が可能になることがある。
【0099】
動作68において、1つ又は複数の材料層は、例えば露光フィールド内で加熱されることによって、特定の温度に維持されてもよい。一例として、キャリア・フィルム4が矢印5に沿って移動している場合、前加熱板24(又は代替として、キャリア・フィルムが矢印9に沿って移動している場合は、素子25)は、材料層が露光フィールド7内で非接触加熱システム30によって加熱される前に、材料層を加熱するように動作することができる。
【0100】
動作70において、材料層の少なくとも一部は、露光フィールド7内の造形面上にある間に加熱されてもよい。一部の実施例では、非接触加熱システム30は、材料層が露光フィールド7内の造形プレート1上にある間に材料層を加熱することができる。
【0101】
動作72において、パターン・セクション・データは、ある供給速度で光エンジンに供給されてもよい。一連のパターン・セクションは、変位経路に沿った光エンジンと造形プラットフォームとの相対移動中にこの供給速度で放射されてもよい。一部の実施例では、パターン・データ供給装置は、ある供給速度でパターン・セクション・データを光エンジン28に供給することができる。本明細書に記載されるように、供給速度は、リニア・エンコーダ11に結合された、又はリニア・エンコーダ11の内部にある制御ユニットによって制御されてもよい。これは、変位経路(例えば、変位経路8)又は他の経路に沿って行われてもよい。
【0102】
動作74において、造形プラットフォームの造形面の少なくとも一部に光エンジンからの光が曝露されてもよい。一部の実施例では、光エンジン28は、造形プラットフォーム1に向けて(例えば、案内板29を通して)光を曝露するように動作することができる。材料層の位置決め及び/又は加熱のために、光エンジン7からのこのような光が、従来は3D印刷するのが困難であった粘度を有する配合物を有するものであっても、材料を3D印刷するように動作することができるのが有利である。
【0103】
動作76において、材料層の少なくとも一部は、それらが加熱及び/又は硬化された後に、特定の温度(場合によっては、光硬化前に維持されていた特定の温度と必ずしも同じではない)に維持されてもよい。本明細書に記載されるように、方向に応じて、後加熱板25又は素子24がこの動作を実行することができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B