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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 19/40 20250101AFI20250306BHJP
   H10F 71/00 20250101ALI20250306BHJP
   H10F 77/14 20250101ALI20250306BHJP
【FI】
H10F19/40
H10F71/00 160
H10F77/14 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022541553
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2021028729
(87)【国際公開番号】W WO2022030471
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2020134104
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 紳平
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146366(WO,A1)
【文献】特開2018-186248(JP,A)
【文献】特開2020-13868(JP,A)
【文献】国際公開第2010/021204(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0108796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0296171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10F 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する半導体基板と、
前記半導体基板の裏面に形成され、前記半導体基板と異なる導電型を有する第1半導体層、及び前記半導体基板と同じ導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層に積層される第1電極パターン及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンと、
を備え、
前記第1半導体層は、
前記半導体基板の第1方向一方側の端部に前記第1方向と交差する第2方向の全長に亘って形成される第1基端部、及び前記第1基端部から前記第1方向他方側に延出する複数の第1収集部を有し、前記第1電極パターンが積層される主機能部と、
前記半導体基板の前記第1方向他方側の端部に前記第2方向の全長に亘って線状に形成され、前記第1電極パターンが積層されない隔離部と、
を有し、
前記第2半導体層は、前記隔離部の前記第1方向一方側に隣接し、前記第2方向に延びる第2基端部、及び前記第2基端部から前記第1方向一方側に延出する複数の第2収集部と、を有する、太陽電池セル。
【請求項2】
前記隔離部の前記第1方向の平均幅は前記第1収集部の前記第2方向の平均幅より小さく、前記第1収集部の前記第2方向の平均幅は前記第1基端部の前記第1方向の平均幅より小さい、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
前記隔離部の前記第1方向の平均幅は2000μm以下である、請求項1又は2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
第1の導電型を有する半導体ウエハの裏面に、前記半導体ウエハと異なる導電型を有する第1半導体層及び前記半導体ウエハと同じ導電型を有する第2半導体層、並びに前記第1半導体層に積層される第1電極パターン及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンをそれぞれ有する複数のセル構造を形成する工程と、
前記セル構造の境界で前記半導体ウエハを切断する工程と、
を備え、
前記複数のセル構造は、第1方向に並んで、同一方向に配向して形成され、
前記第1半導体層は、
前記セル構造の前記第1方向一方側の端部に前記第1方向と交差する第2方向の全長に亘って形成される第1基端部、及び前記第1基端部から前記第1方向他方側に延出する複数の第2収集部を有し、前記第1電極パターンが積層される主機能部と、
前記セル構造の前記第1方向他方側の端部に前記第2方向の全長に亘って線状に形成され、前記第1電極パターンが積層されない隔離部と、
を有し、
前記セル構造を形成する工程において、前記主機能部と、前記第1方向一方側に隣接する前記セル構造の前記隔離部とは連続して形成され、
前記半導体ウエハを切断する工程において、前記主機能部と前記第1方向一方側に隣接する前記セル構造の前記隔離部とが分離される、太陽電池セル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の裏面側の相補的な領域に互いに導電型が異なる一対の半導体層を形成し、それぞれの半導体層に電極パターンを積層したバックコンタクト型の太陽電池セルが知られている。バックコンタクト型の太陽電池セルにおいて、キャリアの移動距離を小さくするためには、平面視で極性が異なる帯状半導体膜を交互に配置し、極性が同じ帯状半導体膜を接続する構成とすることが好ましい。複数の太陽電池セルを接続することによりモジュールを形成することを考慮すると、各帯状半導体膜を太陽電池セル接続方向に延びるよう配置し、太陽電池セル接続方向一方側に一方の導電型の帯状半導体の端部を接続する基端部を設け、太陽電池セル接続方向他方側で他方の導電型の帯状半導体の端部を接続する基端部を設ける構成、つまり、一対の半導体層をそれぞれ櫛型に形成し、互いの歯を噛み合わせるようにして配置することが想定される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、半導体ウエハに一対の太陽電池セルのセル構造(半導体層及び電極)を一方の半導体層の接続部が隣り合うよう鏡写し(線対称)に形成し、セル構造の境界で半導体ウエハを切断することで、2つの太陽電池セルを得る製造方法が開示されている。特許文献1では、四隅に面取り部を有する八角形状の半導体ウエハを中央で切断することで、2つの太陽電池セルを形成する結果、各太陽電池セルは、一方の半導体層の基端部が形成される側の角部が面取りされた非対称な形状を有する。
【0004】
複数の太陽電池セルを用いて太陽電池モジュールを形成する場合、それぞれ複数の太陽電池セルを一列に並べて形成される複数の太陽電池ストリングを並べて配置することが一般的である。特許文献1に記載の太陽電池モジュールは、太陽電池セルの形状が非対称であるため、太陽電池ストリングにおける太陽電池セルの向きが容易に確認できる。太陽電池ストリングの向きは、電気的接続に依存して定められるため、特許文献1の太陽電池モジュールでは、一列ごとに太陽電池セルの向きが逆転している。そこで半導体ウエハに複数の太陽電池セルを同じ向きに配向して形成すれば、半導体層の極性を反転した太陽電池セルを得ることができるため、太陽電池モジュールにおける面取り部を同じ側に統一することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-163988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、太陽電池セルの間に隙間が形成されているが、モジュールの面積当たりの出力を向上する構成として、太陽電池セルの端部を一定方向に重ねるいわゆるシングリング構造が採用される場合がある。この場合、表側の太陽電池セルの端部の電極構造が、裏側の太陽電池セルの半導体基板(受光面)に当接する。表側の太陽電池セルの電極構造の当接部分の極性が裏側の半導体基板の極性と等しい場合、太陽電池セルが短絡する可能性がある。上述のように、半導体ウエハに複数の太陽電池セルを同じ方向に配向して形成する場合、切断位置の誤差により、太陽電池セルの端部に意図しない極性を有する微小な半導体層が形成され得る。このため、半導体ウエハに複数の太陽電池セルを同じ方向に配向して形成すると、シングリング接続時に短絡が生じるおそれがある。かかる事情に鑑みて、本発明は、シングリング接続時の短絡を防止できる太陽電池セル及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池セルは、第1の導電型を有する半導体基板と、前記半導体基板の裏面に形成され、前記半導体基板と異なる導電型を有する第1半導体層、及び前記半導体基板と同じ導電型を有する第2半導体層と、前記第1半導体層に積層される第1電極パターン及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンと、を備え、前記第1半導体層は、前記半導体基板の第1方向一方側の端部に前記第1方向と交差する第2方向の全長に亘って形成される第1基端部、及び前記第1基端部から前記第1方向他方側に延出する複数の第1収集部を有し、前記第1電極パターンが積層される主機能部と、前記半導体基板の前記第1方向他方側の端部に前記第2方向の全長に亘って線状に形成され、前記第1電極パターンが積層されない隔離部と、を有し、前記第2半導体層は、前記隔離部の前記第1方向一方側に隣接し、前記第2方向に延びる第2基端部、及び前記第2基端部から前記第1方向一方側に延出する複数の第2収集部と、を有する。
【0008】
前記太陽電池セルにおいて、前記隔離部の前記第1方向の平均幅は前記第1収集部の前記第2方向の平均幅より小さく、前記第1収集部の前記第2方向の平均幅は前記第1基端部の前記第1方向の平均幅より小さくてもよい。
【0009】
前記太陽電池セルにおいて、前記隔離部の前記第1方向の平均幅は2000μm以下であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る太陽電池セル製造方法は、第1の導電型を有する半導体ウエハの裏面に、前記半導体ウエハと異なる導電型を有する第1半導体層及び前記半導体ウエハと同じ導電型を有する第2半導体層、並びに前記第1半導体層に積層される第1電極パターン及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンをそれぞれ有する複数のセル構造を形成する工程と、前記セル構造の境界で前記半導体ウエハを切断する工程と、を備え、前記複数のセル構造は、第1方向に並んで、同一方向に配向して形成され、前記第1半導体層は、前記セル構造の前記第1方向一方側の端部に前記第1方向と交差する第2方向の全長に亘って形成される第1基端部、及び前記第1基端部から前記第1方向他方側に延出する複数の第2収集部を有し、前記第1電極パターンが積層される主機能部と、前記セル構造の前記第1方向他方側の端部に前記第2方向の全長に亘って線状に形成され、前記第1電極パターンが積層されない隔離部と、を有し、前記セル構造を形成する工程において、前記主機能部と、前記第1方向一方側に隣接する前記セル構造の前記隔離部とは連続して形成され、前記半導体ウエハを切断する工程において、前記主機能部と前記第1方向一方側に隣接する前記セル構造の前記隔離部とが分離される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シングリング接続時の短絡を防止できる太陽電池セルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の太陽電池セルの裏面図である。
図2図1の太陽電池セルのA-A線断面図である。
図3図1の太陽電池セルの製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4図3のセル構造形成工程後の半導体ウエハの断面図である。
図5図1の太陽電池セルを有する太陽電池モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、簡略化のために、部材の図示、符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の形状及び寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0014】
<太陽電池セル>
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池セル1を示す裏面図である。図2は、太陽電池セル1の断面図である。太陽電池セル1は、第1の導電型を有する半導体基板10と、半導体基板10の裏面(受光面と反対側の面)に形成され、半導体基板10と異なる導電型を有する第1半導体層20及び半導体基板10と同じ導電型を有する第2半導体層30と、第1半導体層20に積層される第1電極パターン40及び第2半導体層30に積層される第2電極パターン50と、を備える。
【0015】
半導体基板10は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成することができる。また、ガリウムヒ素(GaAs)等の他の半導体材料から形成されてもよい。半導体基板10は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板10は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板10の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0016】
第1半導体層20及び第2半導体層30は、半導体基板10の内部から、互いに極性が異なるキャリアを誘引することにより、異なる極性の電荷をして収集する。具体的には、半導体基板10がn型である場合、第1半導体層20はp型半導体から形成され、第2半導体層30はn型半導体から形成される。第1半導体層20及び第2半導体層30は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0017】
第1半導体層20と第2半導体層30とは、半導体基板10の裏面に、略相補的な形状に形成される。つまり、半導体基板10の裏面の略全ての領域は、第1半導体層20及び第2半導体層30のいずれかに覆われる。
【0018】
第1半導体層20は、第1電極パターン40が積層される主機能部21と、主機能部21から隔離され、第1電極パターン40が積層されない隔離部22と、を有する。主機能部21は、半導体基板10の第1方向一方側の端部に、第1方向と交差する第2方向の略全長に亘って形成される第1基端部23、及び第1基端部23から第1方向他方側に延出する複数の第1収集部24を有する。隔離部22は、半導体基板10の第1方向他方側の端部に、第2方向の全長に亘って線状に形成される。
【0019】
第2半導体層30は、隔離部22の第1方向一方側に隣接し、第2方向に延びる第2基端部31、及び第2基端部31から第1方向一方側に延出する複数の第2収集部32と、を有する。
【0020】
第1収集部24及び第2収集部32は、半導体基板10内でのキャリアの移動距離を小さくして光電変換効率を向上するために、後述する第1電極パターン40又は第2電極パターン50を積層できる程度の比較的小さい一定の幅で交互に形成されることが好ましい。第1基端部23及び第2基端部31は、第1収集部24及び第2収集部32で取り出した電荷が流入するため、電気抵抗を小さくするために第1収集部24及び第2収集部32よりも大きい幅を有することが好ましい。隔離部22は、光電変換に寄与しないため、隔離部22の第2方向の平均幅は第1方向に連続して形成可能な最低限度の幅とすることが好ましい。このため、隔離部22の第1方向の平均幅は第1収集部24の第2方向の平均幅より小さく、第1収集部24の第2方向の平均幅は第1基端部23の第1方向の平均幅より小さいことが好ましい。具体的には、隔離部の第1方向の平均幅の下限としては100μmが好ましく、200μmがより好ましい。一方、隔離部の第1方向の平均幅の上限としては2000μmが好ましく、1000μmがより好ましい。
【0021】
第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、例えば金属等の高い導電性を有する材料によって形成される。また、第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、第1半導体層20及び第2半導体層30に積層される例えばITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)等からなる透明電極層と、金属を主体とする金属電極層との積層体であってもよい。
【0022】
第1電極パターン40は第1半導体層20から電荷を取り出すために設けられ、第2電極パターン50は第2半導体層30から電荷を取り出すために設けられる。第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、短絡を防止するために、第1半導体層20(主機能部21)及び第2半導体層30の外縁部にマージンを残すよう積層される。
【0023】
具体的に説明すると、第1電極パターン40は、第1基端部23に積層され、第2方向に延びる第1バスバー電極41と、第1バスバー電極41から第1方向他方側に延出し、それぞれの第1収集部24に積層される複数の第1フィンガー電極42と、を有する。第2電極パターン50は、第2基端部31に積層され、第2方向に延びる第2バスバー電極51と、第2バスバー電極51から第1方向一方側に延出し、それぞれの第2収集部32に積層される複数の第2フィンガー電極52と、を有する。
【0024】
以上のように、太陽電池セル1は、第1方向の両端に第1方向の全長に亘って半導体基板10と異なる導電型を有する第1半導体層20(第1基端部23及び隔離部22)が存在する。このため、複数の太陽電池セル1を第1方向にシングリング接続した場合に、半導体基板10が隣接する太陽電池セル1の第1半導体層20と接触することはあっても、第2半導体層30と接触することがない。このため、シングリング接続時に太陽電池セル1が短絡することがない。なお、図では第1電極パターン40及び第2電極パターン50の厚さによって裏側の太陽電池セル1の半導体基板10と表側の太陽電池セル1の第1半導体層20及び第2半導体層30とは接触しないように見えるが、実際の第1電極パターン40及び第2電極パターン50の厚さは小さいため、裏側の太陽電池セル1の半導体基板10は、僅かな傾斜や変形によって隔離部22に容易に当接し得る。
【0025】
<太陽電池セル製造方法>
太陽電池セル1は、図3に示す、本発明の一実施形態に係る太陽電池セル製造方法によって製造することができる。
【0026】
本実施形態の太陽電池セル製造方法は、半導体ウエハWの裏面に複数のセル構造Cを形成する工程(ステップS1:セル構造形成工程)と、セル構造Cの境界で半導体ウエハWを切断する工程(ステップS2:切断工程)と、を備える。半導体ウエハWは、切断することによって複数の半導体基板10を切り出すことができる大きい板状の半導体である。セル構造Cは、各太陽電池セルの半導体基板10以外の構成要素、つまり第1半導体層20、第2半導体層30、第1電極パターン40及び第2電極パターン50をまとめた概念である。
【0027】
ステップS1のセル構造形成工程では、図4に示すように、半導体ウエハWに、複数のセル構造Cを、第1方向に並んで同一方向に配向して形成する。なお、図4は、図2と同じ位置での断面、つまり図1のA-A線での断面を示す。太陽電池セル1の説明から明らかなように、第1半導体層20は、各セル構造Cの第1方向一方側の端部に第1方向と交差する第2方向の全長に亘って形成される第1基端部23、及び第1基端部23から第1方向他方側に延出する複数の第1収集部24を有し、第1電極パターン40が積層される主機能部21と、各セル構造の第1方向他方側の端部に第2方向の全長に亘って線状に形成され、第1電極パターン40が積層されない隔離部22と、を有する。
【0028】
セル構造形成工程において、第1方向他方側のセル構造Cの主機能部21と、第1方向一方側に隣接するセル構造Cの隔離部22とは、連続して形成される。つまり、第1半導体層20をセル構造Cの境界(一点鎖線で図示)を跨いで延在するよう形成することで、第1方向他方側のセル構造Cの主機能部21と第1方向一方側のセル構造Cの隔離部22とを一体に形成する。つまり、図4において、右側のセル構造Cの第1半導体層20がセル構造Cの境界を僅かに越えて左側のセル構造Cまで延在しており、このセル構造Cの境界を超える部分が左側のセル構造Cの隔離部22を構成している。
【0029】
第1半導体層20及び第2半導体層30は、レジストパターンを形成して例えばCVD等の成膜技術によって半導体材料を選択的に積層することによって形成することができる。第1電極パターン40及び第2電極パターン50は、例えば、スパッタリング等で形成したシード層を被着体とするメッキにより形成した金属層のエッチング、導電性ペーストの印刷及び焼成などの方法によって形成することができる。
【0030】
ステップS2の切断工程では、セル構造Cの境界に沿って半導体ウエハWを切断することによって、第1方向他方側のセル構造Cの主機能部21と第1方向一方側に隣接するセル構造Cの隔離部22とを分離して、太陽電池セル1を切り出す。
【0031】
半導体ウエハWの切断は、例えばレーザの照射、ミリング等によってスクライブ溝を形成し、半導体ウエハWに曲げを作用させる割断によって行うことができる。
【0032】
<太陽電池モジュール>
図5は、複数の太陽電池セル1を有する太陽電池モジュールMの断面図である。太陽電池モジュールMは、それぞれ複数の太陽電池セル1を一列に並べて接続することにより形成される複数の太陽電池ストリング100と、複数の太陽電池ストリング100の表側を覆う板状の表面保護材200と、複数の太陽電池ストリング100の裏側を覆う板状又はシート状の裏面保護材300と、表面保護材200と裏面保護材300との間に充填される封止材400と、を備える。
【0033】
太陽電池ストリング100は、第1方向に一列に並ぶ複数の太陽電池セル1と、隣り合う太陽電池セル間を接続するインターコネクタ2とを有する。太陽電池ストリング100において、太陽電池セル1の第1方向一方側の端部は、隣接する太陽電池セル1の第1方向他方側の端部の裏側に重ねて配置される。インターコネクタ2は、金属箔、金属網線等の導電体から形成され、表側に重ねられる太陽電池セル1の第1バスバー電極41と裏側に重ねられる太陽電池セル1の第2バスバー電極51とを接続する。
【0034】
太陽電池ストリングにおいて、図示するように、インターコネクタ2が、第1半導体層20の隔離部22に当接し得るが、隔離部22は、光電変換に寄与する主機能部21から隔離されているため、インターコネクタ2が接触しても不都合は生じない。
【0035】
表面保護材200は、封止材400を介して、太陽電池ストリング100の表面を覆うことにより、太陽電池ストリング100を保護する。表面保護材200は、例えばガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂などの透明で耐傷性を有する材料から形成され、対候性に優れることが好ましい。具体的には、表面保護材200の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表面保護材200の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。表面保護材200は、外周部に遮光領域を有してもよい。
【0036】
表面保護材200は、太陽電池モジュールMの形状を保持できる強度を備えるために十分な厚さを有することが好ましい。また、予め所望の形状に成形した表面保護材200を用いることによって、所望の形状の太陽電池モジュールMを得ることができる。
【0037】
太陽電池ストリング100は、表面保護材200の遮光領域の内側の透光領域の第1方向の長さと略等しい長さを有するよう形成され得る。これにより、太陽電池ストリング100が受光する有効面積を大きくしつつ、太陽電池ストリング100の端部の太陽電池セル1の一部に光が入射しないことによる光電変換効率の低下を防止できる。なお、複数の太陽電池ストリング100は、不図示の配線材によって互いに接続され得る。
【0038】
裏面保護材300は、太陽電池ストリング100の裏面側を保護する層である。裏面保護材300の材質としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材質が好ましい。具体的には、裏面保護材300は、例えばガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、含シリコーン樹脂等の樹脂等から形成できる。また、裏面保護材300は、樹脂の層と、例えばアルミニウム箔等の金属の層との積層体としてもよい。また、裏面保護材300の表側面から見た際の色(光の反射特性)は、太陽電池ストリング100間の隙間を目立ちにくくして太陽電池モジュールMの美観を向上するために、太陽電池セル1の表側面の色と近似していることが好ましい。
【0039】
封止材400は、表面保護材200と裏面保護材300との間の空間内で太陽電池ストリング100を封止し、水分等により太陽電池ストリング100が劣化することを抑制する。封止材400は、透明性を有し、表面保護材200及び太陽電池ストリング100に対する密着性を有する材料から形成される。封止材400を形成する材料は、熱プレスにより表面保護材200と太陽電池ストリング100との隙間を封止できるよう、熱可塑性を有することが好ましい。具体的には、封止材400を形成する材料としては、例えばエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を主成分する樹脂組成物を用いることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。また、本発明に係る太陽電池セルは、上述した実施形態において説明したもの以外の構成要素を有してもよい。例として、本発明に係る太陽電池セルは、第1半導体層と第2半導体層とを隔離する真性半導体層を有してもよい。また、第1半導体層の主機能部の平面形状及び第2半導体層の平面形状ひいては第1電極パターン及び第2電極パターンの平面形状は、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 太陽電池セル
2 インターコネクタ
10 半導体基板
20 第1半導体層
21 主機能部
22 隔離部
23 第1基端部
24 第1収集部
30 第2半導体層
31 第2基端部
32 第2収集部
40 第1電極パターン
41 第1バスバー電極
42 第1フィンガー電極
50 第2電極パターン
51 第2バスバー電極
52 第2フィンガー電極
100 太陽電池ストリング
200 表面保護材
300 裏面保護材
400 封止材
C セル構造
M 太陽電池モジュール
W 半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5