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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】貴金属錯体の調製物
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20250306BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20250306BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250306BHJP
   C01G 55/00 20060101ALI20250306BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20250306BHJP
   C23C 18/08 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
C09D1/00
B05D3/02 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
C01G55/00
C09D7/63
C23C18/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022576209
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021060795
(87)【国際公開番号】W WO2022012794
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】20185479.1
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】シエヴィ、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ゴック、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ワルター、リチャード
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05763633(US,A)
【文献】特開平08-277473(JP,A)
【文献】特開平09-235287(JP,A)
【文献】特開2013-159855(JP,A)
【文献】特開2004-059987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00
B05D 3/02
B05D 7/24
C01G 55/00
C09D 7/63
C23C 18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)30~90重量%の少なくとも1つの有機溶媒と、
(B)10~70重量%の、[(NBD)Pd[O(CO)R1]、[(NBD)Rh[O(CO)R1]] 型及び[(NBD)Ir[O(CO)R1]]型の貴金属錯体の中から選択され、NBDはノルボルナジエンであり、nは、1又は2に等しく、mは、2に等しく、R1は、非芳香族C5~C17炭化水素残基を表す、貴金属錯体と、
(C)0~10重量%の少なくとも1つの添加剤と、を含有する又はそれらからなり、
前記少なくとも1つの貴金属錯体の分解温度が150~250℃の範囲にある、調製物。
【請求項2】
非コロイド有機溶液の形態である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
2.5~25重量%の範囲内の、前記少なくとも1つの可動金属錯体に由来する貴金属含有量を含む、請求項1又は2に記載の調製物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの添加剤(C)が、湿潤添加剤、レオロジー添加剤、消泡剤、脱気剤、表面張力に影響を及ぼす添加剤及び着臭剤からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項5】
基材上に貴金属含有層を作製するための方法であって、
(1)請求項1~のいずれか一項に記載の調製物の被覆層を基材に塗布する工程と、
(2)前記貴金属含有層を形成することによって前記被覆層を熱分解する工程と、を含む、方法。
【請求項6】
前記基材が、ガラス、炭化物基材、窒化物基材、ホウ化物基材、セラミック基材、半導体基板、金属、プラスチック、天然起源の修飾若しくは未修飾ポリマー、炭素基材、木材、厚紙及び紙からなる群から選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記基材が、内面及び/若しくは外面上に並びに/又は内面及び/若しくは外面の一部分上にコーティング層を備える、請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
前記被覆層の作製に使用される前記塗布方法が、浸漬、噴霧塗布、印刷、塗装ブラシによる塗布、ブラシによる塗布、フェルトによる塗布及びクロスによる塗布からなる群から選択される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(1)で塗布された前記被覆層が、最初に乾燥され、それによって、前記有機溶媒(A)が部分的又は完全に除去された後、工程(2)で前記熱分解に供される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(2)による前記熱分解が、前記少なくとも1つの貴金属錯体の分解温度を超える物体温度への加熱を含む熱処理によって行われる、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記貴金属含有層が、50nm~5μmの厚さを有する、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属錯体の調製物及び基材上に貴金属含有層を作製するための調製物の使用に関する。
【0002】
国際公開第90/07561(A1)号は、式LM[O(CO)R]を有する白金錯体であって、式中、Lは、窒素を含まない環状ポリオレフィン配位子、好ましくはシクロオクタジエン(COD)又はペンタメチルシクロペンタジエンを表し、Mは、白金又はイリジウムを表し、Rは、4個以上の炭素原子を有するベンジル、アリール又はアルキル、特に好ましくはフェニルを表す、白金錯体を開示している。
【0003】
本発明の目的は、特に温度感受性基材上において、貴金属含有層の作製に使用できる調製物を見出すことであった。
【0004】
この目的は、各々ジオレフィン配位子及びC6~C18モノカルボキシレート配位子を含む、それぞれ、パラジウム、ロジウム若しくはイリジウムの貴金属錯体の調製物を提供することによって解決することができる。より正確には、提供されるものは、
(A)30~90重量%(重量パーセント)の少なくとも1つの有機溶媒と、
(B)10~70重量%の、ジオレフィン配位子及びC6~C18モノカルボキシレート配位子を含む少なくとも1つの貴金属錯体であって、[LPd[O(CO)R1]X]型、[LRh[O(CO)R1]]型及び[LIr[O(CO)R1]]型の貴金属錯体からなる群から選択され、Lは、ジオレフィン配位子として作用する化合物を表し、Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物及び-O(CO)R2の中から選択され、-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、好ましくはそれぞれの場合でフェニル酢酸残基を除いて、同一又は異なる非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の整数であり、mは、2以上の整数である、貴金属錯体と、
(C)0~10重量%の少なくとも1つの添加剤と、を含有する又はそれらからなる調製物である。
【0005】
本明細書で使用する「ジオレフィン配位子として作用する化合物」という表現は、貴金属錯体において、その2つのオレフィン二重結合又はそのオレフィン二重結合のうちの2つを、貴金属中心原子に提供して錯体を形成する、又は2つの貴金属中心原子に架橋様式で提供して錯体を形成する、化合物を指す。
【0006】
多核貴金属錯体の場合、数字n及び数字mは一般に、例えば2~5の範囲の整数を表す。言い換えれば、整数n>1は一般に、2~5の範囲にあり、したがって、nは、特に2に等しく、この場合、貴金属錯体はパラジウム二核錯体である。整数mも一般に、2~5の範囲にあり、したがって、mは、特に2に等しく、この場合、貴金属錯体はロジウム二核錯体又はイリジウム二核錯体である。
【0007】
本発明による調製物において、成分(B)は、成分(A)中に溶解した形態で存在する。本発明による調製物中の任意選択の成分(C)の存在下では、この成分(C)もまた、好ましくは成分(A)中に溶解した形態で存在する。言い換えれば、任意選択の成分(C)が存在しない場合、本発明による調製物は、有機溶液、より正確には真の、すなわち非コロイド有機溶液であり、同じことが、好ましい形態、すなわち、成分(A)中の溶解形態の任意選択の成分(C)の存在下で適用される。
【0008】
本発明による調製物は、30~90重量%の少なくとも1つの有機溶媒(A)を含有する。貴金属錯体はそのような有機溶媒に高濃度から無制限に溶解するため、有機溶媒(複数可)は、複数の一般的な有機溶媒から選択することができる。有利には、有機溶媒(複数可)は、本発明による調製物の加工条件下で本質的に揮発性であり、これは特に、本発明による調製物を基材に塗布した後の段階に適用される。有機溶媒(複数可)の沸点は一般に、50~200℃以上、例えば50~300℃の範囲にある。有機溶媒(A)の例としては、それぞれが6~12個の炭素原子を有する脂肪族及び環式脂肪族;ジ-、トリ-及びテトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素;芳香族化合物;トルエン又はキシロールなどのアラリファティック(araliphatics);エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールなどのアルコール;エーテル;モノC1~C4アルキレングリコールエーテル及びジC1~C4アルキレングリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、エチレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、ジエチレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、ジエチレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、プロピレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、プロピレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、ジプロピレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル及びジプロピレングリコールジC1~C4アルキレンエーテルなどのグリコールエーテル;2~12個の炭素原子を有するエステル;並びにアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトンが挙げられる。それに関して、トルエン又はキシロールなどのアラリファティック;エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールなどのアルコール;並びにモノC1~C4アルキレングリコールエーテル及びジC1~C4アルキレンエーテル(alkylene ether)、例えば、エチレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、エチレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、ジエチレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、ジエチレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、プロピレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル、プロピレングリコールジC1~C4アルキレンエーテル、ジプロピレングリコールモノC1~C4アルキレンエーテル及びジプロピレングリコールジC1~C4アルキレンエーテルなどのグリコールエーテルが好ましい。成分(A)又は少なくとも1つの有機溶媒(A)は、それぞれ、特に好ましくは、少なくとも1つのアルコール、具体的には例示的に言及されるアルコールのうちの少なくとも1つ、及び/又は少なくとも1つのグリコールエーテル、具体的には例示的に言及されるグリコールエーテルのうちの少なくとも1つ、からなる。30~70重量部のアルコールと100重量部から欠けている分の重量部のグリコールエーテルとの対応する混合物が、特に成分(A)として好ましい。
【0009】
既に述べたように、本発明による調製物は、成分Bとして、10~70重量%の、ジオレフィン配位子及びC6~C18モノカルボキシレート配位子を含む少なくとも1つの貴金属錯体であって、[LPd[O(CO)R1]X]型、[LRh[O(CO)R1]]型及び[LIr[O(CO)R1]]型の貴金属錯体からなる群から選択され、Lは、ジオレフィン配位子として作用する化合物を表し、Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物及び-O(CO)R2から選択され、-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、好ましくはそれぞれの場合でフェニル酢酸残基を除いて、同一又は異なる非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の整数であり、mは、2以上の整数である、貴金属錯体を含有する。
【0010】
少なくとも1つの可動金属錯体に由来する本発明による調製物の貴金属含有量は、例えば2.5~25重量%の範囲にあり得る。
【0011】
[LPd[O(CO)R1]X]型の単核パラジウム錯体の実施形態の場合、Lは、パラジウム中心原子でのジオレフィン配位子として作用する化合物であり、Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物又は-O(CO)R2を表し、-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、好ましくはそれぞれの場合でフェニル酢酸残基を除いて、同一又は異なる非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表す。nは、ここで1に等しい。
【0012】
[LPd[O(CO)R1]X]型の二核パラジウム錯体又は多核パラジウム錯体の好ましい実施形態の場合、Lは、ジオレフィン配位子として作用する化合物を表し、Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物又は-O(CO)R2を表し、nは、2、3、4又は5、好ましくは2を表し、-O(CO)R1及び
-O(CO)R2は、好ましくはそれぞれの場合でフェニル酢酸残基を除いて、同一又は異なる非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表す。
【0013】
[LRh[O(CO)R1]]型若しくは[LIr[O(CO)R1]]型の二核貴金属錯体又は多核貴金属錯体の好ましい実施形態の場合、それぞれLは、ジオレフィン配位子として作用する化合物を表し、mは、2、3、4又は5、好ましくは2を表し、-O(CO)R1は、好ましくはフェニル酢酸残基を除いて、非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表す。
【0014】
しかしながら、前記貴金属錯体はまた、本発明による調製物中に、個別化されて、しかし関連する形態でも、したがって単独で又はいくつかの異なる種の混合物としても、存在し得る。したがって、パラジウム錯体は、本発明による調製物中に、個別化された又は関連する形態で、したがって[LPd[O(CO)R1]X]型のそれぞれの場合、単独で又はいくつかの異なる種の混合物として存在し得る。ロジウム錯体はまた、本発明による調製物中に、個別化された又は関連する形態で、したがって[LRh[O(CO)R1]]型のそれぞれの場合、単独で又はいくつかの異なる種の混合物として存在し得る。同じように、イリジウム錯体もまた、本発明による調製物中に、個別化された又は関連する形態で、したがって[LIr[O(CO)R1]]型のそれぞれの場合、単独で又はいくつかの異なる種の混合物として存在し得る。言い換えれば、成分(B)は、[LPd[O(CO)R1]X]型及び/又は[LRh[O(CO)R1]]型及び/又は[LIr[O(CO)R1]]型の化合物を含み得る。したがって、成分(B)は、本明細書に開示される型のうちの1つのみ、2つ又は3つすべての化合物を含むことができ、それぞれの型は、1つの個々の形態(個別化された)のみで又は複数の個々の形態(関連する)で表され得る。本明細書のこの文脈で使用される「個々の形態」という用語は、それぞれ、具体的な指数n又はmを有する式の型を指し、例えば、[LRh[O(CO)R1]]は、m=2の一般型[LRh[O(CO)R1]]の個々の形態である。
【0015】
本発明による組成物はまた、[LPt[O(CO)R1]X]型の白金化合物を含み得る。このような白金錯体では、nは、[LPd[O(CO)R1]X]型のパラジウム錯体と同じ意味を有する。そのような白金化合物は、出願番号PCT/EP2020/068465号を有するPCT出願に開示されている。
【0016】
それぞれジオレフィン配位子として機能することができるジオレフィン又はLのタイプの化合物の例としては、COD(1,5-シクロオクタジエン)、NBD(ノルボルナジエン)、COT(シクロオクタテトラエン)及び1,5-ヘキサジエン、特にCOD及びNBDなどの炭化水素が挙げられる。それらは、好ましくは純粋な炭化水素であり、しかしながら、例えば、官能基の形態でヘテロ原子の存在も可能である。
【0017】
Xは、臭化物、塩化物、ヨウ化物又は-O(CO)R2を表すことができ、好ましくは塩化物又は-O(CO)R2、特に-O(CO)R2を表す。
【0018】
それぞれの非芳香族モノカルボン酸残基-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、それぞれの場合で好ましくはフェニル酢酸残基を除いて、同一又は異なる非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表す。この文脈で使用される「非芳香族」という用語は、純粋な芳香族モノカルボン酸残基を除外するが、カルボキシル官能基(複数可)が脂肪族炭素に結合しているアラリファティックモノカルボン酸残基は除外しない。-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、好ましくはフェニル酢酸残基を表さない。-O(CO)R1及び-O(CO)R2は、好ましくは同一の非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基を表すが、それに関して、好ましくはフェニル酢酸残基はない。8~18個の炭素原子を有するモノカルボン酸残基、すなわち非芳香族C8~C18モノカルボン酸残基は、非芳香族C6~C18モノカルボン酸残基の中で好ましい。
【0019】
-O(CO)R1若しくは-O(CO)R2の残基を有する非芳香族C6~C18モノカルボン酸又は好ましいC8~C18モノカルボン酸の例として、いくつかの例を挙げれば、それぞれ、n-ヘキサン酸を含む異性体ヘキサン酸、n-ヘプタン酸を含む異性体ヘプタン酸、n-オクタン酸及び2-エチルヘキサン酸を含む異性体オクタン酸、n-ノナン酸を含む異性体ノナン酸、並びにn-デカン酸を含む異性体デカン酸が挙げられる。直鎖状の代表的なものだけではなく、例えば2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸及びネオデカン酸などの分岐状構造及び/又は環状構造を有するものもまた、取り込まれる。それぞれの場合でカルボキシル基に結合している残基R1及びR2は、それぞれ、5~17個又は7~17個の炭素原子を含み、それに関して、ベンジル残基は、好ましくはそれぞれの場合で除外される。
【0020】
パラジウム錯体の好ましい例としては、[(COD)Pd[O(CO)R1]及び[(NBD)Pd[O(CO)R1]が挙げられ、ここでnは、1又は2に等しく、特に1に等しく、R1は、それぞれの場合で好ましくはベンジルを除いて、非芳香族C5~C17炭化水素残基を表す。
【0021】
ロジウム錯体の好ましい例としては、[(COD)Rh[O(CO)R1]]及び[(NBD)Rh[O(CO)R1]]が挙げられ、ここでmは、2に等しく、R1は、それぞれの場合で好ましくはベンジルを除いて、非芳香族C5~C17炭化水素残基を表す。
【0022】
イリジウム錯体の好ましい例としては、[(COD)Ir[O(CO)R1]]及び[(NBD)Ir[O(CO)R1]]が挙げられ、ここでmは、2に等しく、R1は、それぞれの場合で好ましくはベンジルを除いて、非芳香族C5~C17炭化水素残基を表す。
【0023】
貴金属錯体は、配位子交換によって、特に銀のカルボン酸塩を使用することなく、単純な方法で生成することができる。作製プロセスは、それぞれ二相系の混合若しくは懸濁、又は乳化を含む。それに関して、一方の相は、それぞれLPdX型又は[LRhX]型又は[LIrX]型の出発材料を含み、それぞれの場合で、Xは、臭化物、塩化物及びヨウ化物、好ましくは塩化物の中から選択され、そのような出発物質自体であるか、又は好ましくは、そのような出発物質の少なくとも本質的に水非混和性である有機溶液のいずれかの形態である。トルエン、キシレン、ジクロロメタン、トリクロロメタン及びテトラクロロメタンなどの芳香族並びに塩素系炭化水素に加えて、このタイプの有機溶液の生成に好適であり、少なくとも本質的に水非混和性である有機溶媒の例としてはまた、酸素含有溶媒、例えば対応する水非混和性ケトン、エステル及びエーテルが挙げられる。他方の相は、対照的に、例えば、R1COOHのタイプの及び任意選択で追加的にR2COOH型のC6~C18モノカルボン酸のアルカリ塩(特にナトリウム塩又はカリウム塩)及び/又はマグネシウム塩の水溶液を含む。モノカルボン酸塩(複数可)の種類の選択は、製造される貴金属錯体の型又は製造される貴金属錯体の会合に依存する。2つの相は、例えば振とう及び/又は撹拌することによって、懸濁液又はエマルションを形成することによって激しく混合される。懸濁液又はエマルション状態を維持する目的のために、混合は、例えば0.5~24時間の期間、例えば20~50℃の範囲の温度で行われる。配位子交換はそれによって行われ、形成された貴金属錯体(複数可)は有機相に溶解し、同様に形成されたアルカリX塩又はMgX塩は水相に溶解する。懸濁液又はエマルションの完成後、有機相と水相を互いに分離する。形成された貴金属錯体(複数可)は、有機相から得ることができ、任意選択で、一般的な方法によってその後に精製することができる。
【0024】
例えば1つの具体例を挙げると、(COD)Pd[O(CO)CH(C)Cは例えば、(COD)PdClのジクロロメタン溶液と2-エチルヘキサン酸ナトリウムの水溶液とを合わせて一般的な乳化により製造することができる。乳化が終了した後、配位子交換によって形成される塩化ナトリウム含有溶液は、その結果、ジクロロメタン相から分離することができ、そしてジクロロメタン相から、(COD)Pd[O(CO)CH(C)Cを単離することができ、任意選択で一般的な精製プロセスによって精製することができる。例えば対応する選択された化学量論の場合、パラジウム錯体(COD)Pd[O(CO)CH(C)C]Clもまた、同様に製造することができる。
【0025】
一般的な有機溶媒における上記の溶解度に加えて、例えば150℃~250℃で既に開始し、しばしば200℃以下である成分(B)の貴金属錯体(複数可)の比較的低い分解温度は、重要な特性である。この特性の組み合わせにより、基材上の貴金属含有層の作製のための、本発明による調製物の成分(B)として、そのような貴金属錯体を使用することが可能になり、このタイプの使用の場合、本発明による調製物は、コーティング剤を表し、すなわち、その場合、それを調製し、被覆剤として使用することができる。
【0026】
本発明による調製物は、0~10重量%、好ましくは0~3重量%の少なくとも1つの添加剤(C)を含有する。したがって本発明による調製物は、添加剤を含まなくてもよく、又は最大10重量%の少なくとも1つの添加剤を含有してもよい。添加剤の例としては、湿潤添加剤、レオロジー添加剤、消泡剤、脱気剤、表面張力に影響を及ぼす添加剤、及び着臭剤が挙げられる。
【0027】
本発明による調製物は、成分(A)、(B)及び必要に応じて(C)の単純な混合によって作製することができる。これにより、専門家は、それぞれの意図された目的及び/又はそれによって使用される適用方法に適合された成分の割合を選択する。
【0028】
本発明による調製物は、基材上、特に更には温度感受性基材上での、貴金属含有層の作製に使用することができる。これにより、本発明による調製物は、最初に被覆層(コーティング)の作製に使用され得、その後、熱分解に供され得る。[LPd[O(CO)R1]X]型のパラジウム錯体に基づく本発明による調製物で機能する場合、層の形態の本質的に金属であるパラジウムは、周囲雰囲気として空気の存在下でさえも熱分解に応答して形成され、一方で、[LRh[O(CO)R1]]n型のロジウム錯体に基づく又は[LIr[O(CO)R1]]型のイリジウム錯体に基づく本発明による調製物でそれぞれ機能する場合、熱分解に応答して、本質的に対応する貴金属酸化物層又は更には対応する金属である貴金属を含まない貴金属酸化物層でさえ、周囲雰囲気として空気が存在する場合に形成される。これに関して、本明細書で使用する「貴金属含有層」という表現を、本質的に金属パラジウムを若しくは金属パラジウムのみを含む、若しくはそれからなる層として、本質的に酸化ロジウムを若しくは酸化ロジウムのみを含む、若しくはそれからなる層として、又は本質的に酸化イリジウムを含む、若しくは酸化イリジウムのみを含む、若しくはそれからなる層として、要するに金属パラジウム、酸化ロジウム若しくは酸化イリジウムを含む、又はそれらからなる層として、専門家は理解する。本発明によれば、本発明によって基材上で得ることができるパラジウム層は、専門家によって予想され得る特性を示すことができ、一方で、基板上で得ることができ、本質的に酸化ロジウム若しくは本質的に酸化イリジウムを含む層、又はそれらを備えた基材表面はそれぞれ、興味深い電気的特性を有することができる。
【0029】
本発明による調製物が、任意選択で更に[LPt[O(CO)R1]X]型の上述の白金錯体のうちの1つ若しくはいくつかと組み合わせた、成分(B)として本明細書に開示された貴金属錯体型の2つ若しくはいくつかの組み合わせ、又は成分(B)として本明細書に開示された貴金属錯体型と[LPt[O(CO)R1]X]型の上述の白金錯体の1つ若しくはいくつかとの組み合わせを含む場合、複数の貴金属を含む層も、ある程度同時に基板上に作製することができる。それにより、対応する層中の金属パラジウム、酸化ロジウム、酸化イリジウム及び任意選択で捕捉された金属白金の割合は、対応する層の作製に使用される、本発明による調製物中の貴金属錯体のそれぞれの割合を介して非常に単純な方法で変動可能に設定され得る。特に、複数の貴金属を含む以下のタイプの層が基板上に作製され得る。
-例えば白金/パラジウム合金の形態の金属パラジウム及び金属白金を含む層、
-金属パラジウム及び酸化ロジウムを含む層、
-金属パラジウム及び酸化イリジウムを含む層、
-金属パラジウム、酸化ロジウム及び酸化イリジウムを含む層、
-金属白金及び酸化ロジウムを含む層、
-金属白金及び酸化イリジウムを含む層、
-金属白金、酸化ロジウム及び酸化イリジウムを含む層、
-金属パラジウム、金属白金及び酸化ロジウムを含む層、
-金属パラジウム、金属白金及び酸化イリジウムを含む層、
-金属パラジウム、金属白金、酸化ロジウム及び酸化イリジウムを含む層、
-金属パラジウムを含まず、金属白金を含まない酸化ロジウム及び酸化イリジウムを含む層。
【0030】
熱処理に応答して、コーティング層は、貴金属含有層の形成下で上述のように分解する。すなわち、コーティング層は、最終的に貴金属含有層に移行される。したがって、本発明はまた、基材上の貴金属含有層の作製方法であって、方法は、
(1)本発明による調製物の被覆層を基材に塗布する工程と、
(2)貴金属含有層を形成することによって被覆層を熱分解する工程と、を含む。
【0031】
工程(1)において被覆層が提供される基材は、多種多様な材料を含む基材であり得る。それにより、基材は、1つのみ又はいくつかの材料を含むことができる。材料の例としては、とりわけ、ガラス;例えば炭化チタン、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化ケイ素などの炭化物基材;例えば窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ケイ素などの窒化物基材;例えば、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウムなどのホウ化物基材;酸化物セラミックをベースとしたもの及び不均一触媒において触媒担体として一般的なものを含むセラミック基材;例えば、シリコン基板などの半導体基板;金属;プラスチック;天然起源の修飾又は未修飾ポリマー;炭素基材;木材;厚紙及び紙が挙げられる。基材は、内面及び/若しくは外面上に並びに/又は内面及び/若しくは外面の一部分上にコーティング層を備えることができる。
【0032】
工程(1)によるコーティング層の作製の場合、それ自体が知られている塗布方法も使用することができる。
【0033】
第1の塗布方法は、浸漬である。それによって、被覆層が提供される基材、又は最終的に貴金属含有層が提供される基材はそれぞれ、本発明による調製物に浸漬され、そこから取り出される。浸漬中の成分(A)の割合は、好ましくは本発明による調製物の30~90重量%の範囲にあり、成分(B)の割合は、10~70重量%の範囲にある。
【0034】
第2の塗布方法は、噴霧塗布である。それによって、コーティング層が提供される基材、又は最終的に貴金属含有層が提供される基材はそれぞれ、一般的な噴霧コーティング器具を使用して、本発明による調製物で噴霧コーティングされる。噴霧コーティング器具の例としては、空気圧噴霧ガン、エアレス噴霧ガン、回転噴霧器などが挙げられる。噴霧塗布中の成分(A)の割合は、好ましくは本発明による調製物の50~90重量%の範囲にあり、成分(B)の割合は、10~50重量%の範囲にある。
【0035】
第3の塗布方法は、印刷である。それによって、被覆層が提供される基材、又は最終的に貴金属含有層が提供される基材はそれぞれ、本発明による調製物でインプリントされる。それに関して、好ましい印刷方法はインクジェット印刷であり、本発明による調製物は、ここでインクの形態の被覆剤を表す。更に好ましい印刷方法は、スクリーン印刷である。印刷中の成分(A)の割合は、好ましくは本発明による調製物の50~90重量%の範囲にあり、成分(B)の割合は、10~50重量%の範囲にある。
【0036】
第4の塗布方法は、本発明による調製物に浸漬される塗布器具、例えば塗装ブラシ、ブラシ、フェルト又はクロスによる塗布である。それにより、塗布器具は、本発明による調製物を、コーティング層を提供される基材に又は最終的に貴金属含有層を提供される基材にそれぞれ移させる。このタイプの塗布技術の場合、成分(A)の割合は、好ましくは本発明による調製物の30~90重量%の範囲にあり、成分(B)の割合は、10~70重量%の範囲にある。
【0037】
本発明による及び少なくとも1つの成分(B)を含む調製物から塗布された被覆層は、最初に乾燥させることができ、それにより、有機溶媒(A)を部分的又は完全に除去することができ、その後、それ又は乾燥残留物を、それぞれ貴金属含有層を形成することにより熱分解に供する。
【0038】
熱分解の目的で行われる熱処理は、少なくとも1つの貴金属錯体(B)の分解温度を超える物体温度への加熱を含む。いくつかの異なる貴金属錯体(B)の存在下で、専門家は、最も分解温度の高い(B)型の貴金属錯体の分解温度を超える物体温度を選択する。例えば、分解温度を超える物体温度への加熱は一般的に、この目的のために、例えば150℃超~200℃又は150超~250℃以上、例えば最大1000℃の範囲内の物体温度まで、1分間~30分間の時間にわたって短時間で行われる。加熱は、特に炉内及び/又は赤外線放射によって行われ得る。一般的に、それぞれの分解温度よりわずかに上回る物体温度が選択される。一般的に、加熱は、より正確には、物体温度の維持が15分を超える必要はない。
【0039】
特に、[LPd[O(CO)R1]X]型のパラジウム錯体に基づいて本発明による調製物の実施形態で機能する場合、コロイド状パラジウム又はナノパラジウムを含む調製物を使用する必要がないのは有利であり、それによって、それに関連する可能性のあるリスクを回避することができる。
【0040】
上述の塗布方法の第2及び第3の場合、塗布器具の詰まり、より正確には噴霧塗布器具又はインクジェットノズルの微細な開口又はノズルの詰まりはそれぞれ、本発明による調製物の使用によって回避され得、最終的に、例えば乾燥し始めるか若しくは凝集するコロイド状パラジウム又はナノパラジウムの問題は、ここでは生じない。
【0041】
本発明に従って得ることができるパラジウム層は、粗すぎない平滑な表面を有する基材を用いて作業が実行されれば、鏡と同等の高い金属光沢を特徴とし、したがってパラジウム層は、平滑でザラザラしていない外表面という観点から均質である。
【0042】
本発明に従って得ることができる貴金属含有層の厚さは、例えば50nm~5μmの範囲にあり得、貴金属含有層は、表面積内に所望の中断を伴うか若しくは伴わずに平坦な性質であり得るか、又は所望のパターン若しくはデザインを有し得る。基材の上述の例からわかるように、貴金属含有層は、温度感受性基材上、すなわち、例えば200℃超で温度安定性ではない基板上であっても作製され得、例えば、これらは、温度感受性ポリマー基材、例えばポリオレフィン又はポリエステルに基づくものであり得る。
【実施例
【0043】
実施例1(ポリイミドフィルムへのパラジウム層の付与):
ジクロロメタン 200mL中の(COD)PdCl 35mmolの溶液を撹拌し、水150mL中の2-エチルヘキサン酸ナトリウム 140mmolの溶液を添加した。2相混合物を、激しく撹拌することによって20℃で24時間乳化させた。ジクロロメタン相は、それによって黄色に変わった。
【0044】
ジクロロメタン相を分離し、溶媒を留去した。粘性の黄色残留物を石油ベンジン(40~60)に入れ、溶液を乾燥させ、硫酸マグネシウムで濾過した。次いで、石油ベンジンを完全に留去した。粘性の黄色残留物(COD)Pd[O(CO)CH(C)Cが残った。
【0045】
黄色残留物5gを、溶媒混合物(50重量%のエタノール及び50重量%のプロピレングリコールモノプロピルエーテル)5.60gに溶解させた。この溶液を、エアブラシ噴霧ガンによってKapton(登録商標)フィルム(ポリイミド)上に噴霧した。コーティングされたフィルムを実験室用炉内で200℃の物体温度に加熱し、この温度で5分間保持した。パラジウムの光沢導電層が、フィルム上に形成された。
【0046】
実施例2(ポリイミドフィルムへのパターン化パラジウム層の付与):
Kapton(登録商標)フィルムを、蛇行デザインで、1270dpiの分解能でインクジェットプリンタを用いて実施例1からの溶液でインプリントした。この方法でインプリントされたフィルムを実験室用炉内で200℃の物体温度に加熱し、この温度で5分間保持した。2.5mmの導体経路の幅を有する蛇行デザインの形態のパラジウムの光沢導電層が、フィルム上に形成された。
【0047】
実施例3(ポリイミドフィルムへのパラジウム層の付与):
実施例1を、(COD)PdClの代わりに(NBD)PdClを使用したことだけが異なるが、完全に類似して繰り返した。それによって、(NBD)Pd[O(CO)CH(C)Cの黄色残留物及び最終的には実施例1で得られたコーティングされたフィルムに対応したパラジウム層を備えたポリイミドフィルムを、合成の結果として得た。
【0048】
実施例4(ポリイミドフィルムへのパターン化パラジウム層の付与):
実施例2を、(COD)PdClの代わりに(NBD)PdClを使用したことだけが異なるが、完全に類似して繰り返した。それによって、(NBD)Pd[O(CO)CH(C)Cの黄色残留物、及び最終的にはパターン化パラジウム層を備えた実施例2で得られたフィルムに対応したパターン化パラジウム層を備えたポリイミドフィルムを、合成の結果として得た。
【0049】
実施例5(ポリイミドフィルムへの酸化ロジウム層の付与):
ジクロロメタン 200mL中の[(COD)RhCl] 16.3mmolの溶液を撹拌し、水100mL中の2-エチルヘキサン酸ナトリウム 65.3mmolの溶液を添加した。2相混合物を、激しく撹拌することによって20℃で24時間乳化させた。ジクロロメタン相は、それによって黄色に変わった。
【0050】
ジクロロメタン相を分離し、溶媒を留去した。粘性の黄色残留物を石油ベンジン(40~60)に入れ、溶液を乾燥させ、硫酸マグネシウムで濾過した。次いで、石油ベンジンを完全に蒸留除去した。残存したのは、
[(COD)Rh[O(CO)CH(C)C]]の粘性の黄色残留物であった。
【0051】
黄色残留物5gを石油ベンジン5gに溶解させた。この溶液を、エアブラシ噴霧ガンによってKapton(登録商標)フィルム上に噴霧した。コーティングされたフィルムを実験室用炉内で250℃の物体温度に加熱し、この温度で3分間保持した。本質的に酸化ロジウムの、光沢がない層が、フィルム上に形成された。
【0052】
実施例6(ポリイミドフィルムへのパターン化酸化ロジウム層の付与):
Kapton(登録商標)フィルムを、蛇行デザインで、1270dpiの分解能でインクジェットプリンタを用いて実施例5からの溶液でインプリントした。この方法でインプリントされたフィルムを実験室用炉内で250℃の物体温度に加熱し、この温度で5分間保持した。2.5mmの導体経路の幅を有する蛇行デザインの形態の本質的に酸化ロジウムの、光沢がない層が、フィルム上に形成された。
【0053】
実施例7(ポリイミドフィルムへの酸化ロジウム層の付与):
実施例5を、(COD)RhClの代わりに(NBD)RhClを使用したことだけが異なるが、完全に類似して繰り返した。それによって、(NBD)Rh[O(CO)CH(C)Cの黄色残留物及び最終的には実施例5で得られたコーティングされたフィルムに対応した本質的に酸化ロジウムの、光沢のない層を備えたポリイミドフィルムを、合成の結果として得た。
【0054】
実施例8(ポリイミドフィルムへのパターン化酸化ロジウム層の付与):
実施例6を、(COD)RhClの代わりに(NBD)RhClを使用したことだけが異なるが、完全に類似して繰り返した。それによって、(NBD)Rh[O(CO)CH(C)Cの黄色残留物、及び最終的には本質的に酸化ロジウムのパターン化層を備えた実施例6で得られたフィルムに対応した本質的に酸化ロジウムのパターン化層を備えたポリイミドフィルムを、合成の結果として得た。
【0055】
実施例9(ポリイミドフィルムへの酸化イリジウム層の付与):
ジクロロメタン 200mL中の[(COD)IrCl] 16.3mmolの溶液を撹拌し、水100mL中のネオデカン酸ナトリウム 65.3mmolの溶液を添加した。2相混合物を、激しく撹拌することによって20℃で24時間乳化させた。ジクロロメタン相は、それによって黄色に変わった。
【0056】
ジクロロメタン相を分離し、溶媒を留去した。粘性の黄色残留物を石油ベンジン(40~60)に入れ、溶液を乾燥させ、硫酸マグネシウムで濾過した。次いで、石油ベンジンを完全に留去した。残存したのは、
[(COD)Ir[O(CO)(CHC(CH]]の粘性の黄色残留物であった。
【0057】
黄色残留物5gを石油ベンジン5gに溶解させた。この溶液を、エアブラシ噴霧ガンによってKapton(登録商標)フィルム上に噴霧した。コーティングされたフィルムを実験室用炉内で250℃の物体温度に加熱し、この温度で3分間保持した。本質的に酸化イリジウムの、光沢がない層が、フィルム上に形成された。
【0058】
実施例10(ポリイミドフィルムへのパターン化酸化イリジウム層の付与):
Kapton(登録商標)フィルムを、蛇行デザインで、1270dpiの分解能でインクジェットプリンタを用いて実施例9からの溶液でインプリントした。この方法でインプリントされたフィルムを実験室用炉内で250℃の物体温度に加熱し、この温度で5分間保持した。2.5mmの導体経路の幅を有する蛇行デザインの形態の本質的に酸化イリジウムの、光沢がない層が、フィルム上に形成された。