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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】超音波処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20250306BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
A61B17/32 510
A61B17/00 700
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023529465
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2022003420
(87)【国際公開番号】W WO2022269971
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】63/214,193
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】木本 宏治
(72)【発明者】
【氏名】山田 順久
(72)【発明者】
【氏名】一方井 真倫
(72)【発明者】
【氏名】吉嶺 英人
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健
(72)【発明者】
【氏名】目黒 親芳
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110790(JP,A)
【文献】特開2016-022136(JP,A)
【文献】特開昭61-073639(JP,A)
【文献】特開2001-321388(JP,A)
【文献】特表2021-502171(JP,A)
【文献】特開2018-149285(JP,A)
【文献】特開2020-142074(JP,A)
【文献】特開2022-088636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項11】
前記超音波トランスデューサは、
前記ハンドル部材に対して前記超音波トランスデューサを支持させるために用いられるフランジ部を備え、
前記フランジ部の外径寸法は、
前記超音波トランスデューサ全体において最大となる外径寸法よりも小さい請求項1に記載の超音波処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波トランスデューサが発生させた超音波振動を利用し、生体組織の切開及び切削等を行う超音波処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の超音波処置具では、術者が把持するグリップ部の内部に超音波トランスデューサが配置されている。また、グリップ部の外表面には、当該グリップ部を通して超音波トランスデューサに発生する熱を外部に放熱するための放熱フィンが立設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-321388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の超音波処置具では、術者は、放熱フィンを直接、把持することとなり、当該術者の手に熱が伝達されてしまう。また、当該術者の手への熱の影響を考慮すると、放熱フィンの高さ寸法を大きくする必要があり、当該放熱フィンの高さ寸法分、グリップ部及び当該放熱フィンを含む把持部分が大径化してしまう。
そこで、超音波トランスデューサに発生する熱に対して十分に対応しつつ、術者が把持する把持部分の大径化を回避することができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、超音波トランスデューサに発生する熱に対して十分に対応しつつ、術者が把持する把持部分の大径化を回避することができる超音波処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波処置具は、超音波振動を発生させる超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサが内部に収容されるハンドル部材と、前記超音波トランスデューサに対して接続され、前記超音波トランスデューサが発生させた超音波振動を伝達する振動伝達部材と、を備え、前記ハンドル部材は、外装を形成するアウター部材と、前記アウター部材の内部に配置され、前記超音波トランスデューサが内部に収納されるインナー部材と、を備え、前記インナー部材は、前記アウター部材よりも熱容量が大きい材料によって構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る超音波処置具によれば、超音波トランスデューサに発生する熱に対して十分に対応しつつ、術者が把持する把持部分の大径化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る処置システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、超音波処置具を示す図である。
図3図3は、ハンドルユニットの内部構造を示す図である。
図4図4は、アウター部材の外表面の形状を説明する図である。
図5図5は、アウター部材の外表面の形状を説明する図である。
図6図6は、アウター部材の外表面の形状を説明する図である。
図7図7は、アウター部材の外表面の形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0010】
〔処置システムの概略構成〕
図1は、実施の形態に係る処置システム1の概略構成を示す図である。
処置システム1は、骨等の生体組織に対して超音波振動を付与することによって、当該生体組織を処置する。ここで、当該処置とは、例えば、骨等の生体組織の除去や切削を意味する。なお、図1では、当該処置システム1として、前十字靭帯再建術を行う処置システムを例示している。
この処置システム1は、図1に示すように、内視鏡装置2と、処置装置3と、ガイディングデバイス4と、灌流装置5とを備える。
【0011】
内視鏡装置2は、図1に示すように、内視鏡21と、第1の制御装置22とを備える。
内視鏡21は、図1に示すように、膝関節J1の関節腔C1の内部と皮膚外とを連通する第1のポータルP1を通して、挿入部211の先端部分が当該関節腔C1の内部に挿通される。そして、内視鏡21は、関節腔C1の内部に照射し、当該関節腔C1の内部で反射された照明光(被写体像)を取り込み、当該被写体像を撮像する。
第1の制御装置22は、内視鏡21によって撮像された撮像画像に対して種々の画像処理を実行するとともに、当該画像処理後の撮像画像を表示装置(図示略)に表示させる。
【0012】
処置装置3は、図1に示すように、超音波処置具6と、第2の制御装置31と、フットスイッチ32とを備える。
第2の制御装置31は、図1に示すように、電気ケーブルCBによって超音波処置具6と接続されている。そして、第2の制御装置31は、術者によるフットスイッチ32への操作に応じて、超音波処置具6に対して駆動電力を供給する。なお、当該駆動電力の供給については、フットスイッチ32への操作に限らず、例えば、超音波処置具6に設けられた操作部(図示略)への操作に応じて行われても構わない。
【0013】
超音波処置具6は、第2の制御装置31から供給された駆動電力に応じて超音波振動を発生する。この超音波処置具6の先端部分は、関節腔C1の内部と皮膚外とを連通する第2のポータルP2を通して当該関節腔C1の内部に挿通されたガイディングデバイス4によって案内されつつ、当該関節腔C1の内部に挿通される。そして、骨の処置対象部位に対して超音波処置具6の先端部分である先端処置部731(図2参照)を接触させた状態で超音波振動を発生させると、ハンマーリング作用によって、当該先端処置部731と機械的に衝突した骨の部分が微細な粒状に粉砕される。また、術者によって先端処置部731が処置対象部位に対して押し込まれると、当該先端処置部731は、骨を粉砕しながら当該処置対象部位の内部に進入していく。これによって、処置対象部位には、当該先端処置部731の断面形状に応じた断面形状の骨孔が形成される。
なお、超音波処置具6の詳細な構成については、後述する「超音波処置具の構成」において説明する。
【0014】
ガイディングデバイス4は、第2のポータルP2を通して関節腔C1の内部に挿通され、超音波処置具6における先端部分の当該関節腔C1の内部への挿通を案内する。
【0015】
ここで、関節腔C1の内部は、生理食塩水等の灌流液によって満たされている。そして、当該灌流液は、灌流装置5によって、関節腔C1の内部に送出されるとともに、当該関節腔C1の外部に排出される。この灌流装置5は、図1に示すように、液体源51と、送液チューブ52と、送液ポンプ53と、排液ボトル54と、排液チューブ55と、排液ポンプ56とを備える。
液体源51は、灌流液を収容する。
送液チューブ52は、一端が液体源51に対して接続され、他端が内視鏡21に対して接続されている。
送液ポンプ53は、送液チューブ52を通して、液体源51から内視鏡21に向けて灌流液を送出する。そして、内視鏡21に送出された灌流液は、挿入部211の先端部分に形成された送液孔(図示略)から関節腔C1の内部に送出される。
【0016】
排液ボトル54は、関節腔C1の外部に排出された灌流液を収容する。
排液チューブ55は、一端がガイディングデバイス4に対して接続され、他端が排液ボトル54に対して接続されている。
排液ポンプ56は、関節腔C1の内部に挿通されたガイディングデバイス4から排液チューブ55に至る流路を辿って、当該関節腔C1の内部の灌流液を排液ボトル54に排出する。
【0017】
〔超音波処置具の構成〕
次に、超音波処置具6の構成について説明する。
図2は、超音波処置具6を示す図である。
なお、超音波処置具6の構成を説明するにあたって、シース72の中心軸Axに沿う一方側を先端側Ar1と記載し、他方側の基端側Ar2と記載する。
超音波処置具6は、図2に示すように、ブレードユニット7と、ハンドルユニット8とを備える。
【0018】
ブレードユニット7は、ハンドルユニット8に対して先端側Ar1に設けられ、骨の処置対象部位を処置するエンドエフェクタである先端処置部731を有する部分である。このブレードユニット7は、図2に示すように、ブレードカバー71と、シース72と、ブレード73とが一体化されたユニットである。
【0019】
ブレードカバー71は、中心軸Axと同軸となる筒体によって構成され、ハンドルユニット8における先端側Ar1の端部に配設される。
シース72は、中心軸Axに沿って延在した円筒形状を有し、基端側Ar2の端部がブレードカバー71の内部に挿通された状態で当該ブレードカバー71に支持される。
【0020】
ブレード73は、本発明に係る振動伝達部材に相当する。このブレード73は、例えばチタン合金等によって構成され、中心軸Axに沿って延在する長尺形状を有する。そして、ブレード73は、基端側Ar2の端部がシース72の内部に挿通され、先端側Ar1が当該シース72から外部に突出した状態で当該シース72によって支持される。また、ブレード73における基端側Ar2の端部は、ハンドルユニット8に対してブレードユニット7が接続された状態で、ハンドルユニット8の内部に収納された超音波トランスデューサ9(図3参照)に対して接続される。そして、ブレード73は、超音波トランスデューサ9が発生させた超音波振動を基端から先端まで伝達する。本実施の形態では、当該超音波振動は、ブレード73の長手方向(中心軸Axに沿う方向)に沿う縦振動である。また、ブレード73の先端側Ar1の端部には、図2に示すように、先端処置部731が設けられている。
【0021】
図3は、ハンドルユニット8の内部構造を示す図である。具体的に、図3は、中心軸Axを含む平面によってハンドルユニット8を切断した断面図である。
ハンドルユニット8は、図3に示すように、超音波トランスデューサ9と、ハンドル部材10とを備える。
【0022】
超音波トランスデューサ9は、図3に示すように、圧電素子ユニット91と、素子装着部92と、ホーン93と、ブレード装着部94と、締結部95とを備える。
圧電素子ユニット91は、超音波振動を発生させる部分である。この圧電素子ユニット91は、図3に示すように、第1,第2の電極板911,912と、複数(本実施の形態では4枚)の圧電素子913と、電気絶縁性を有する2枚の絶縁板914とを備える。
【0023】
第1,第2の電極板911,912は、第2の制御装置31から駆動電力が供給される部分である。
第1の電極板911は、図3に示すように、複数(本実施の形態では3枚)の負電極板9111と、複数(本実施の形態では2つ)の負電極配線部(図示略)と、負電極端子9113とを備える。
複数の負電極板9111は、中央に開口9111A(図3)を有する円板形状をそれぞれ有し、中心軸Axに沿って並設されている。
複数の負電極配線部は、互いに隣り合う負電極板9111の外縁部同士を電気的に接続する部分である。
負電極端子9113は、複数の負電極板9111のうち、最も基端側Ar2に位置する負電極板9111の外縁から基端側Ar2に向けて延在している。また、負電極端子9113は、電気ケーブルCBを経由することによって、第2の制御装置31と電気的に接続する。
【0024】
第2の電極板912は、図3に示すように、複数(本実施の形態では2枚)の正電極板9121と、正電極配線部9122(本実施の形態では1つ)と、正電極端子9123とを備える。
複数の正電極板9121は、中央に開口9121A(図3)を有する円板形状をそれぞれ有し、中心軸Axに沿って並設されている。なお、正電極板9121は、負電極板9111と略同一の形状を有する。そして、負電極板9111及び正電極板9121は、図3に示すように、中心軸Axに沿って交互に配設されている。
正電極配線部9122は、互いに隣り合う正電極板9121の外縁部同士を電気的に接続する部分である。
正電極端子9123は、複数の正電極板9121のうち、最も基端側Ar2に位置する正電極板9121の外縁から基端側Ar2に向けて延在している。また、正電極端子9123は、電気ケーブルCBを経由することによって、第2の制御装置31と電気的に接続する。そして、負電極端子9113及び正電極端子9123間には、第2の制御装置31から駆動電極が供給される。
【0025】
複数の圧電素子913は、中央に開口9131(図3)を有する円板形状をそれぞれ有し、負電極板9111及び正電極板9121の間にそれぞれ配設されている。すなわち、複数の圧電素子913は、中心軸Axに沿って積層されている。そして、複数の圧電素子913は、第1,第2の電極板911,912に供給された駆動電力に応じて、中心軸Axに沿う積層方向に電位差が生じることによって、圧電特性が生じ、当該積層方向に沿って変位を交互に繰り返す。これによって、圧電素子ユニット91は、当該積層方向を振動方向とする縦振動の超音波振動を発生させる。
【0026】
本実施の形態では、圧電素子913の外径寸法は、17mm以上、30mm以下に設定されている。なお、当該圧電素子913の外径寸法は、超音波トランスデューサ9全体において、最大となる外径寸法に相当する。
また、積層された複数の圧電素子913における積層方向の長さ寸法は、15mm以上、30mm以下に設定されている。
【0027】
素子装着部92、ホーン93、及びブレード装着部94は、金属材料等によって一体に構成された部材である。
具体的に、素子装着部92は、中心軸Axに沿って直線状に延在するボルトであり、複数の負電極板9111の各開口9111A、複数の正電極板9121の各開口9121A、及び複数の圧電素子913の各開口9131にそれぞれ挿通される。そして、素子装着部92における基端側Ar2の端部には、図3に示すように、金属材料等によって構成されたナットである締結部95が取り付けられる。
【0028】
また、ホーン93は、圧電素子ユニット91が発生させた超音波振動の振幅を拡大する機能を有する。このホーン93は、素子装着部92における先端側Ar1の端部に設けられ、中心軸Axに沿って直線状に延在する略円柱形状を有する。また、ホーン93は、図3に示すように、基端側Ar2の端部が素子装着部92よりも径寸法が大きく設定されている。このため、複数の負電極板9111、複数の正電極板9121、及び複数の圧電素子913は、素子装着部92が中心軸Axに沿って貫通した状態で、ホーン93と締結部95との間に挟持されることによって、略円柱形状を有した状態で一体に締結されている。すなわち、超音波トランスデューサ9は、ボルト締めランジュバン型振動子(Bolt-clamped Langevin-type transducer)によって構成されている。なお、絶縁板914は、
ホーン93と複数の負電極板9111のうち最も先端側Ar1に位置する負電極板9111との間、及び締結部95と複数の負電極板9111のうち最も基端側Ar2に位置する負電極板9111との間にそれぞれ配置されている。
【0029】
このホーン93には、図3に示すように、フランジ部931が設けられている。
フランジ部931は、ハンドル部材10に対して超音波トランスデューサ9を支持させるために用いられる部分である。このフランジ部931は、圧電素子ユニット91が発生させた超音波振動の節位置PN(図3)に設けられている。
ここで、フランジ部931の外径寸法は、超音波トランスデューサ9全体において最大となる外径寸法である圧電素子913の外径寸法よりも小さく設定されている。
【0030】
ブレード装着部94は、図3に示すように、ホーン93における先端側Ar1の端部に設けられ、中心軸Axに沿って直線状に延在している。そして、ブレード装着部94における先端側Ar1の端部は、ハンドルユニット8に対してブレードユニット7を接続することによって、ブレード73と機械的に接続する。
【0031】
ハンドル部材10は、ハンドルユニット8の外装を構成するとともに、超音波トランスデューサ9が収納される部分である。このハンドル部材10は、図3に示すように、アウター部材11と、インナー部材12とを備える。
アウター部材11は、樹脂材料によって構成され、中心軸Axと同軸となり、当該中心軸Axに沿って直線状に延在する筒体であり、ハンドルユニット8の外装を構成する。
なお、アウター部材11の外表面の形状については、後述する「アウター部材の外表面の形状」において説明する。
【0032】
インナー部材12は、中心軸Axと同軸となり、当該中心軸Axに沿って直線状に延在する筒体である。そして、インナー部材12は、アウター部材11の内部に配置されるとともに、超音波トランスデューサ9が内部に収納される。
このインナー部材12は、アウター部材11よりも熱容量が大きい材料によって構成されている。また、インナー部材12は、熱伝導率が80W/(m・K)以上、420W/(m・K)以下の材料によって構成されている。このインナー部材12の材料としては、アルミニウム、銅、グラファイト及びそれらの化合物等を例示することができる。
【0033】
また、インナー部材12は、図3に示すように、フランジ部931との間に支持部材13を挟んだ状態で、当該支持部材13を介して超音波トランスデューサ9を支持する。
ここで、支持部材13は、小径部131と、大径部132とが一体化された全体略円環形状を有する。
【0034】
小径部131は、内径寸法がフランジ部931の外径寸法よりも小さく、外径寸法がインナー部材12の内径寸法と略同一に設定された略円環形状を有する。
大径部132は、小径部131における基端側Ar2の端面に一体に形成され、内径寸法がフランジ部931の外径寸法と略同一であり、外径寸法がインナー部材12の内径寸法と略同一に設定された略円環形状を有する。
本実施の形態では、支持部材13は、中心軸Axを含む平面によって2体に分割され、中心軸Axに直交する断面においてそれぞれ半円の円弧形状を有し、ホーン93を挟持する第1,第2の支持部材13A,13B(図3)によって構成されている。
以上説明した支持部材13の材料としては、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、鉄、または、カーボン等を例示することができる。
【0035】
以上説明したインナー部材12は、以下に示すように、アウター部材11に対して固定される。
作業者は、インナー部材12における基端側Ar2の端部をアウター部材11の内部に挿通し、当該アウター部材11の内周面における基端側Ar2の端部に設けられたリブ111(図3)に当て付ける。なお、リブ111は、アウター部材11の内周面において、中心軸Axまわりに複数、設けられているが、図3では、1つのみを図示している。この後、作業者は、アウター部材11における先端側Ar1の端部に円環状のキャップ部材CP(図3)を取り付け、当該キャップ部材CPと複数のリブ111との間でインナー部材12を挟持することによって当該インナー部材12をアウター部材11に対して固定する。この状態では、図3に示すように、アウター部材11の内周面とインナー部材12の外周面との間には、隙間が形成される。
【0036】
また、支持部材13は、フランジ部931とインナー部材12との間において、以下に示す状態で固定される。
支持部材13における大径部132は、フランジ部931とインナー部材12との間に配置される。また、支持部材13における小径部131は、インナー部材12の内部に挿通され、キャップ部材CPから基端側Ar2に押圧されるゴム部材RB(図3)と当該フランジ部931との間に挟持される。
【0037】
〔アウター部材の外表面の形状〕
次に、アウター部材11の外表面の形状について説明する。
図4ないし図7は、アウター部材11の外表面の形状を説明する図である。具体的に、図4は、アウター部材11を中心軸Axに直交する方向から見た図である。図5は、図4のV-V線の断面図である。図6は、図4のVI-VI線の断面図である。図7は、超音波処置具6の握り方の一例を示す図である。
アウター部材11は、図4に示すように、先端側Ar1に位置する先端部112と、当該先端部112の基端側Ar2に連接され、当該先端部112から基端側Ar2に延在するアウター部材本体113と、当該アウター部材本体113の基端側Ar2に連接される基端部114とを備える。
【0038】
ここで、基端部114の外表面には、中心軸Axまわりに等間隔で設けられ、当該基端部114の外表面からそれぞれ突出するとともに、当該中心軸Axに沿って直線状にそれぞれ延在する複数の突起115が設けられている。
【0039】
アウター部材本体113の外表面には、図4ないし図7に示すように、複数(本実施の形態では6つ)の円弧部1131と、複数(本実施の形態では6つ)の凸部1132とが設けられている。
複数の円弧部1131は、図5及び図6に示すように、中心軸Axに直交する端面において当該中心軸Axを中心とする円弧形状をそれぞれ有し、当該中心軸Axに沿ってそれぞれ延在する。本実施の形態では、複数の円弧部1131における中心軸Axまわりの長さ寸法(円弧の長さ寸法)は、同一である。また、複数の円弧部1131における中心軸Axに沿う方向の長さ寸法も、同一である。
【0040】
複数の凸部1132は、図5及び図6に示すように、中心軸Axまわりについて円弧部1131と交互に配置され、当該中心軸Axに直交する断面において当該円弧部1131よりもアウター部材11の径方向の外側にそれぞれ突出し、当該中心軸Axに沿ってそれぞれ延在する。本実施の形態では、複数の凸部1132における中心軸Axに直交する断面形状は、同一である。また、複数の凸部1132における中心軸Axに沿う方向の長さ寸法も、同一である。
以上説明した複数の凸部1132は、図5及び図6に示すように、中心軸Axに直交する断面において、当該中心軸Axを中心とする仮想的な多角形VP(本実施の形態では正六角形)の頂部をそれぞれ構成する。
【0041】
また、複数の凸部1132における円弧部1131よりもアウター部材11の径方向の外側にそれぞれ突出する突出寸法DAは、図5及び図6に示すように、アウター部材11の先端から基端に向かうにしたがって次第に小さくなる。
さらに、複数の凸部1132の突端を結ぶ仮想円VC(図5図6)の径寸法は、28mm以上、40mm以下に設定されている。
【0042】
そして、超音波処置具6は、図7に示すように、例えば、術者の手H0の全体で握る状態で保持され、アウター部材本体113の先端側Ar1の部分において、当該手H0の親指F1、人差し指F2、及び中指F3の指先によって保持される。
【0043】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る超音波処置具6では、超音波トランスデューサ9が内部に収容されるハンドル部材10は、アウター部材11と、当該アウター部材11の内部に配置され、超音波トランスデューサ9が内部に収納されるインナー部材12とを備える。すなわち、ハンドル部材10は、二重構造によって構成されている。そして、インナー部材12は、アウター部材11よりも熱容量が大きいアルミニウム等の材料によって構成されている。
このため、超音波トランスデューサ9に発生した熱は、インナー部材12に伝導し、当該インナー部材12に蓄熱される。すなわち、超音波トランスデューサ9から外装であるアウター部材11への熱伝導を抑制することができる。また、ハンドル部材10を二重構造とすることでアウター部材11への熱伝導を抑制しているため、当該ハンドル部材10の外表面に従来のような高さ寸法の大きい放熱フィンを設ける必要がない。すなわち、ハンドル部材10の大径化を回避することができる。
したがって、本実施の形態に係る超音波処置具6によれば、超音波トランスデューサ9に発生する熱に対して十分に対応しつつ、術者が把持するハンドル部材10の大径化を回避することができる。
特に、アウター部材11の内周面とインナー部材12の外周面との間の少なくとも一部には、隙間が設けられている。このため、当該隙間に存在する空気層が断熱層となり、インナー部材12からアウター部材11への熱伝導を効果的に抑制することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る超音波処置具6では、フランジ部931の外径寸法は、超音波トランスデューサ9全体において最大となる外径寸法よりも小さく設定されている。そして、フランジ部931とインナー部材12との間には、PEEK等から構成された支持部材13が設けられている。
すなわち、フランジ部931の小径化によって振動がアウター部材11に伝わり難くなり、また、当該フランジ部931からアウター部材11への振動伝達経路に支持部材13を設けることによって制振効果を高めることができる。したがって、術者が把持するハンドル部材10の振動に対して十分に対応することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る超音波処置具6では、アウター部材11の外表面には、中心軸Axに直交する断面において円と正六角形とを組み合わせることによって構成された複数の円弧部1131及び複数の凸部1132が設けられている。また、突出寸法DAは、アウター部材11の先端から基端に向かうにしたがって次第に小さくなる。
このため、術者にとってアウター部材11を把持したときのフィット感を向上させ、把持し易い形状を実現することができる。
特に、複数の凸部1132の突端を結ぶ仮想円VCの径寸法は、28mm以上、40mm以下である。これは、人間が握り易い太さとして知られている30mm~40mmの範囲に相当する。このため、当該径寸法によっても、術者にとってアウター部材11を把持し易い形状を実現することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る超音波処置具6では、圧電素子913の外径寸法は、17mm以上、30mm以下である。そして、超音波トランスデューサ9では、4枚の圧電素子913を積層している。
このため、超音波トランスデューサ9が大型化しないためアウター部材11を把持し易い形状を実現しつつ、高出力化を実現することができる。
【0047】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態では、骨等の生体組織の除去や切削を行う超音波処置具6に本発明を適用していたが、これに限らず、血管等の生体組織の封止や切開を行う超音波処置具に本発明を適用しても構わない。
上述した実施の形態では、仮想的な多角形VPとして、正六角形を採用していたが、正六角形以外の他の多角形としても構わない。
上述した実施の形態において、ブレードユニット7が取り外された状態のハンドルユニット8側の装着部分を洗浄する際、段差を有する当該装着部分の当該段差を効果的に洗浄することができるように、U字状のブラシを用いても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 処置システム
2 内視鏡装置
3 処置装置
4 ガイディングデバイス
5 灌流装置
6 超音波処置具
7 ブレードユニット
8 ハンドルユニット
9 超音波トランスデューサ
10 ハンドル部材
11 アウター部材
12 インナー部材
13 支持部材
13A 第1の支持部材
13B 第2の支持部材
21 内視鏡
22 第1の制御装置
31 第2の制御装置
32 フットスイッチ
51 液体源
52 送液チューブ
53 送液ポンプ
54 排液ボトル
55 排液チューブ
56 排液ポンプ
71 ブレードカバー
72 シース
73 ブレード
91 圧電素子ユニット
92 素子装着部
93 ホーン
94 ブレード装着部
95 締結部
111 リブ
112 先端部
113 アウター部材本体
114 基端部
115 突起
131 小径部
132 大径部
211 挿入部
731 先端処置部
911 第1の電極板
912 第2の電極板
913 圧電素子
914 絶縁板
931 フランジ部
1131 円弧部
1132 凸部
9111 負電極板
9111A 開口
9113 負電極端子
9121 正電極板
9121A 開口
9122 正電極配線部
9123 正電極端子
9131 開口
Ar1 先端側
Ar2 基端側
Ax 中心軸
C1 関節腔
CB 電気ケーブル
CP キャップ部材
DA 突出寸法
F1 親指
F2 人差し指
F3 中指
H0 手
J1 膝関節
P1 第1のポータル
P2 第2のポータル
PN 節位置
RB ゴム部材
VC 仮想円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7