(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】電源供給装置
(51)【国際特許分類】
H02H 7/16 20060101AFI20250306BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20250306BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
H02H7/16 A
H02H9/02 D
H02J1/00 309R
(21)【出願番号】P 2023531177
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024473
(87)【国際公開番号】W WO2023275966
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑典
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-015865(JP,A)
【文献】特開2019-004643(JP,A)
【文献】特開平11-308890(JP,A)
【文献】特開2020-157401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 7/16
H02H 9/02
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを作動させるモータに電源を供給する電源供給基板と、
前記電源供給基板の電源ラインに並列に接続され、前記電源ラインのキャパシタンスを増大させる1つ以上の拡張容量基板と、
前記拡張容量基板に設けられ、前記電源ラインのキャパシタンスを増大させるためのキャパシタと、
前記拡張容量基板に設けられ、前記拡張容量基板が前記電源ラインに接続されたときに、前記電源ラインから前記キャパシタへ過大な突入電流が流入するのを抑制する突入電流抑制機構と、
前記電源ラインの電圧が第1所定値以上に上昇したときに、前記拡張容量基板の前記電源ラインへの接続をオンに切り替える第1切替機構と、
を備え
、
前記拡張容量基板はさらに、
前記第1切替機構により前記拡張容量基板の前記電源ラインへの接続がオンに切り替えられた後、前記電源ラインの電圧が第2所定値以上に上昇したときに、前記突入電流抑制機構の前記突入電流の流入抑制をオフに切り替える第2切替機構
を含む、電源供給装置。
【請求項2】
前記ロボットアームは、複数本あり、複数本の前記ロボットアームは、複数の前記モータにより作動され、複数の前記モータへの電源供給は、複数の前記電源供給基板によりなされている場合、
前記拡張容量基板は、複数の前記電源供給基板の間に接続される、
請求項
1に記載の電源供給装置。
【請求項3】
前記拡張容量基板は、複数本の前記ロボットアームのいずれかの中空部分に設置される、
請求項
2に記載の電源供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットアームを作動させるモータに電源を供給する電源供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流電源から電源スイッチを介して直流電圧が供給される負荷に並列接続されたバイパスコンデンサへの電源スイッチのオン時における突入電流の発生を抑制し得る電源制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多関節ロボットやスカラロボットなど、ロボットアームを作動させるモータに印加する電圧値を変動制御するアンプ基板を搭載したロボットにおいて、瞬発的な動作を必要とする場面がある。その瞬発的な動作を実現するために、動力電源ラインに並列に容量の大きい電解コンデンサを接続してキャパシタンスを増加させたい場合があるが、アンプ基板のサイズ制限や組み付け場所の高さ制限などにより、必要なキャパシタンスが得られるだけの電解コンデンサを搭載できないことがある。
【0005】
しかし、特許文献1には、キャパシタンスを増加させることは記載されていないので、特許文献1に記載の電源制御装置を用いたとしても、上記問題を解決することはできない。
【0006】
本開示は、電源ラインのキャパシタンスを増加させたいときに容易にキャパシタンスを増加させることが可能となる電源供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の電源供給装置は、ロボットアームを作動させるモータに電源を供給する電源供給基板と、電源供給基板の電源ラインに並列に接続され、電源ラインのキャパシタンスを増大させる1つ以上の拡張容量基板と、拡張容量基板に設けられ、電源ラインのキャパシタンスを増大させるためのキャパシタと、拡張容量基板に設けられ、拡張容量基板が電源ラインに接続されたときに、電源ラインからキャパシタへ過大な突入電流が流入するのを抑制する突入電流抑制機構と、電源ラインの電圧が第1所定値以上に上昇したときに、拡張容量基板の電源ラインへの接続をオンに切り替える第1切替機構と、を備え、拡張容量基板はさらに、第1切替機構により拡張容量基板の電源ラインへの接続がオンに切り替えられた後、電源ラインの電圧が第2所定値以上に上昇したときに、突入電流抑制機構の突入電流の流入抑制をオフに切り替える第2切替機構を含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電源ラインのキャパシタンスを増加させたいときに容易にキャパシタンスを増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】部品実装機の構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】制御装置の電気的な接続関係を示すブロック図である。
【
図3】電源供給装置の回路構成を示す電気回路図である。
【
図4】突入電流防止抵抗の作用をシミュレーションするために用いた電気回路図である。
【
図5】
図4の電気回路によるシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図4の電気回路に拡張容量を追加した電気回路図である。
【
図7】
図6の電気回路によるシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】動力電源ラインに拡張容量を接続する接続態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、部品実装機10の構成の概略を示し、
図2は、制御装置60の電気的な接続関係を示している。なお、
図1中の上下方向がZ軸方向である。
【0011】
本実施形態の部品実装機10は、垂直多関節ロボット40と、Z軸方向移動装置50と、ノズル53と、制御装置60(
図2参照)とを備える。
【0012】
垂直多関節ロボット40は、4つのロボット可動部(ショルダ42、下アーム43、上アーム44及びリスト45)を備えたものである。4つのロボット可動部は、円柱型のベース部41の上に連結されている。具体的には、ベース部41の上面に、第1関節41jを介してショルダ42が上下軸41aの周りに旋回可能に連結されている。このショルダ42には、第2関節42jを介して下アーム43の下端部が水平軸42aの周りに回転可能に連結されている。下アーム43の上端部には、第3関節43jを介して上アーム44の基端部が水平軸43aの周りに回転可能に連結されている。上アーム44の先端部には、第4関節44jを介してリスト45が上アーム44の長手方向と直交する方向に延びる軸44aの周りに回転可能に連結されている。リスト45には、Z軸方向移動装置50がリスト45と共に軸44aの周りに回転可能に連結されている。第1関節41jは、ショルダ41を回転駆動する第1モータ41mを内蔵し、第2関節42jは、下アーム43を回転駆動する第2モータ42mを内蔵している。第3関節43jは、上アーム44を回転駆動する第3モータ43mを内蔵し、第4関節44jは、リスト45を回転駆動する第4モータ44mを内蔵している。第1~第4モータ41m~44mは、それぞれ第1~第4エンコーダ41e~44e(
図2参照)を備えている。本実施形態では、モータとしてサーボモータ、エンコーダとしてロータリーエンコーダを用いるものとする。
【0013】
Z軸方向移動装置50は、装置本体51と、Z軸スライダ52とを備える。装置本体51は、ここでは略直方体の部材であり、リスト45に固定されている。そのため、装置本体51は、軸44aの周りに回転可能である。Z軸スライダ52は、装置本体51の前面に装置本体51の長手方向に沿ってスライド可能に取り付けられている。このZ軸スライダ52は、装置本体51に取り付けられたZ軸駆動装置54(例えばリニアモータとかボールネジ機構)によって駆動される。
【0014】
ノズル53は、吸着ヘッド55の下面に設けられている。ノズル53は、ノズル先端の圧力が調整されることにより部品を吸着したり吸着した部品を放したりする。このノズル53は、吸着ヘッド55に着脱自在且つ軸回転可能に取り付けられている。吸着ヘッド55は、Z軸スライダ52に固定されている。そのため、ノズル53は吸着ヘッド55及びZ軸スライダ52と共にスライドする。
【0015】
制御装置60は、垂直多関節ロボット40の動作やZ軸方向移動装置50の動作を制御する装置である。制御装置60は、
図2に示すように、CPU61とROM62とHDD63とRAM64とを備える。CPU61には、第1~第4駆動回路41d~44dや第1~第4位置検出回路41p~44p,Z軸駆動回路54d、Z軸位置検出回路54p、入力装置70、出力装置72が接続されている。第1~第4駆動回路41d~44d及びZ軸駆動回路54dは、第1~第4モータ41m~44m及びZ軸駆動装置54のそれぞれに対応して設けられている。第1~第4駆動回路41d~44d及びZ軸駆動回路54dは、CPU61からの指令信号に基づく電気信号を、それぞれに対応する第1~第4モータ41m~44m及びZ軸駆動装置54へ出力する。第1~第4位置検出回路41p~44pは、各ロボット可動部の位置を検出するためのものであり、第1~第4エンコーダ41e~44eのそれぞれに対応して設けられている。Z軸位置検出回路54pは、ノズル53のZ軸位置を検出するためのものであり、Z軸エンコーダ54eに対応して設けられている。第1~第4位置検出回路41p~44pは、それぞれに対応する第1~第4エンコーダ41e~44eから入力した検出信号に基づいて第1~第4モータ41m~44mの角度位置を検出してCPU61へ出力する。Z軸位置検出回路54pは、Z軸エンコーダ54eから入力した検出信号に基づいてノズル53のZ軸位置を検出してCPU61へ出力する。入力装置70は、オペレータが入力操作を行うキーボードやマウスである。出力装置72は、各種データを画像等の視覚的情報として表示するディスプレイである。
【0016】
図3は、電源制御装置100の電気回路の概略を示している。電源制御装置100は主として、交流電源(「電源」と略すこともある)Vと、電源供給基板110と、拡張容量基板120とにより構成されている。電源供給基板110は、電源Vに基づいて動力電源DCLINKをモータ駆動回路112等に供給するものである。拡張容量基板120は、電源供給基板110の動力電源ラインDCLINKのキャパシタンスを拡張させるものである。
【0017】
電源供給基板110は、電源Vの全波整流回路111を介した電源供給基板110への供給をオン/オフする、安全ブレーカとして機能するスイッチS1を備えている。スイッチS1の出力端には、全波整流回路111の入力端が接続されている。全波整流回路111は、電源Vの交流電圧を直流電圧に変換する。全波整流回路111の出力端には、突入電流抑制抵抗R1の一端が接続され、突入電流抑制抵抗R1の他端は、電解コンデンサC1,C2のそれぞれの正極側の一端と接続されている。そして、電解コンデンサC1,C2のそれぞれの負極側の他端は接地されている。また、突入電流抑制抵抗R1と並列に、スイッチS2が接続されている。さらに、電解コンデンサC1,C2のそれぞれの正極側の一端には、モータ駆動回路112の入力端が接続されている。モータ駆動回路112には、上記第1~第4駆動回路41d~44d及びZ軸駆動回路54dが含まれる。モータ駆動回路112の出力端には、モータ200が接続されている。モータ200には、上記第1~第4モータ41m~44m及びZ軸駆動装置54が含まれる。このように電源供給基板110には、スイッチS1からモータ駆動回路112に至るまでの電子部品が載せられている。
【0018】
スイッチS2は、スイッチS1をオンすることにより電源Vから全波整流回路111を介して供給される直流電流(「電流」と略すこともある)を、突入電流抑制抵抗R1を経由して電解コンデンサC1,C2に供給するか、突入電流抑制抵抗R1を迂回してそのまま電解コンデンサC1,C2に供給するかを、スイッチS2のオフとオンにより切り替えるものである。スイッチS2は、動力電源ラインDCLINKの電圧値が所定の電圧値(<全波整流回路111からの出力電圧値)以上に上昇したときに、オフからオンに自動的に切り替わる、例えばリレーにより構成されている。その所定の電圧値、つまり切替閾値は、設定により任意の値に設定できるようになっている。スイッチS1がオフからオンに切り替えられ、電源Vから全波整流回路111を介して電源供給基板110に電流の供給が開始された時点では、電解コンデンサC1,C2に電荷が溜まっていないので、スイッチS2はオフ状態となっている。その後、時間の経過に従って電解コンデンサC1,C2に電荷が溜まっていき、動力電源ラインDCLINKの電圧値が切替閾値以上になると、スイッチS2はオフからオンに自動的に切り替わる。これにより、全波整流回路111から供給される電流は、突入電流抑制抵抗R1を迂回し、スイッチS2を経由して直接、電解コンデンサC1,C2に流れ込む。その後、電解コンデンサC1,C2には電荷が満充電され、動力電源ラインDCLINKの電圧値は全波整流回路111からの出力電圧値まで上昇する。
【0019】
このように、電解コンデンサC1,C2に電荷が溜まっていない初期段階では、全波整流回路111からの電流を、突入電流抑制抵抗R1を経由して電解コンデンサC1,C2に流すようにしたのは、電解コンデンサC1,C2に急激に流れる電流、つまり過大な突入電流を突入電流抑制抵抗R1により制限するためである。過大な突入電流が発生すると、基板の銅箔パターンの焼損や電子部品の破損を招く虞があるため、突入電流抑制抵抗R1により過大な突入電流の発生を抑制している。しかし、全波整流回路111からの電流を常時、突入電流抑制抵抗R1に流していると、動力電源ラインDCLINKの電圧低下や無駄な発熱が生じるため、過大な突入電流が発生する虞がなくなるとき、つまり、所定の電圧値以上に動力電源ラインDCLINKの電圧値が上昇したときに、スイッチS2をオフからオンに切り替えることにより、突入電流抑制抵抗R1を迂回させるようにしている。なお、所定の電圧値は、全波整流回路111からの出力電圧値や用いている電子部品等によって変動するため、汎用的に決定することはできないが、全波整流回路111からの出力電圧値より低い電圧値を経験によりあるいは実験によりその都度決定する。
【0020】
また、電源供給基板110の動力電源ラインDCLINKに並列に、拡張容量基板120が、接続線130を介して接続されている。拡張容量基板120は、スイッチS3,S4と、突入電流抑制抵抗R2と、電解コンデンサC3~C5とを備えている。なお、拡張容量基板120に設けられた電子部品S4,R2,C3~C5の接続関係は、電源供給基板110に設けられた電子部品S2,R1,C1,C2の接続関係と略同一であるので、その説明は省略する。
【0021】
電解コンデンサC3~C5は、動力電源ラインDCLINKのキャパシタンスを増大させるためのキャパシタである。スイッチS3(「第1切替機構」の一例)は、拡張容量基板120の電源供給基板110への実質的な接続のオン/オフを切り替える。スイッチS3も、上記スイッチS2と同様に、動力電源ラインDCLINKの電圧値が所定の電圧値(<全波整流回路111からの出力電圧値)以上に上昇したときに、オフからオンに自動的に切り替わる、例えばリレーにより構成されている。ただし、スイッチS3は、スイッチS2とは、所定の電圧値、つまり切替閾値が同じではないことがある点で異なっている。スイッチS3の切替閾値を以下、「第1所定値」という。突入電流抑制抵抗R2(「突入電流抑制機構」の一例)は、上記突入電流抑制抵抗R1と同様に、過大な突入電流、つまり動力電源ラインDCLINKからの電流が電荷が溜まっていない電解コンデンサC3~C5に流れ込むことで発生する過大な突入電流を抑制するためのものである。スイッチS4(「第2切替機構」の一例)は、上記スイッチS2と同様に、スイッチS3がオンされることにより動力電源ラインDCLINKから供給される電流を、突入電流抑制抵抗R2を経由して電解コンデンサC3~C5に供給するか、突入電流抑制抵抗R2を迂回してそのまま電解コンデンサC3~C5に供給するかを、スイッチS4のオフとオンにより切り替えるものである。スイッチS4も、上記スイッチS2と同様に、動力電源ラインDCLINKの電圧値が所定の電圧値(<全波整流回路111からの出力電圧値)以上に上昇したときに、オフからオンに自動的に切り替わる、例えばリレーにより構成されている。ただし、スイッチS4は、スイッチS2,S3とは、所定の電圧値、つまり切替閾値が同じではないことがある点で異なっている。スイッチS4の切替閾値を以下、「第2所定値」という。
【0022】
図4は、電源供給基板110における突入電流抑制抵抗R1の効果を示すためのシミュレーションに用いた電気回路図である。
図4中、
図3中の電子部品と同じ電子部品には、同一符号を付している。ただし、電源V1は、直流電源を示しており、
図3では、交流電源Vと全波整流回路111とを併せたものに相当する。
図4の電気回路図と
図3の電気回路図を見比べれば分かるように、
図4の電源供給基板110上の電子部品には抵抗R11が追加されている。抵抗R11は、シミュレーションにより得られる出力波形を安定化させるために便宜上用いたものであり、実際には無視してよいものである。なお、各電子部品の近傍に表示された値は、電子部品の規格を示している。
【0023】
図5は、
図4の電気回路によるシミュレーション結果を示している。
図5のシミュレーション結果では、0.5秒後、スイッチS1をオフからオンに切り替え、動力電源ラインDCLINKの電圧値が250Vになると、スイッチS2がオフからオンに切り替わっている。その切り替わった時点は、スイッチS1をオフからオンに切り替えた時点から略0.5秒経過した、略1秒の時点である。
【0024】
図5(a)は、動力電源ラインDCLINKの電圧値G1の推移を示している。
図5(b)は、実線G2が突入電流抑制抵抗R1に流れる電流値の推移を示し、破線G3が電解コンデンサC1に流れる電流値の推移を示している。
図5(c)は、実線G4が突入電流抑制抵抗R1で消費される電力の推移を示し、破線G5が電解コンデンサC1に供給される電力の推移を示している。
【0025】
0.5秒から略1秒までは、電源V1からの電流は突入電流抑制抵抗R1を経由して電解コンデンサC1に供給されるので、
図5(b)の実線G2に示すように、突入電流抑制抵抗R1を流れる電流のピーク値は、略3.0Aとなり、電解コンデンサC1に供給される電流のピーク値も、略1.5Aとなっている。なお、電解コンデンサC1に供給される電流のピーク値が突入電流抑制抵抗R1を流れる電流のピーク値の1/2になっているのは、電解コンデンサC1とC2とで、突入電流抑制抵抗R1を流れる電流を等分割しているからである。このとき仮に、電源V1からの電流を、突入電流抑制抵抗R1を経由させずに直接、電解コンデンサC1に供給したとすると、電解コンデンサC1には、略1400Aの過大な突入電流が瞬間的に流れる。これにより、上述した電源供給基板110上の電子部品の破損や銅箔パターンの焼失などの虞が生ずる。このように突入電流抑制抵抗R1を経由させることで、過大な突入電流の発生が抑制される。一方、0.5秒から略1秒までは、突入電流抑制抵抗R1では、
図5(c)の実線G4に示す電力が消費される。この電力消費により突入電流抑制抵抗R1は発熱するので、電流抑制抵抗R1については、その発熱による耐久性に気を付ける必要がある。
【0026】
図6は、電源供給基板110における突入電流抑制抵抗R1の効果と、電源供給基板110に拡張容量基板120を接続した電源制御装置100における突入電流抑制抵抗R2の効果とを比較するためのシミュレーションに用いた電気回路図である。
図6中、
図3中の電子部品と同じ電子部品には、同一符号を付している。ただし、
図6中の電源供給基板110上の電子部品には、
図4中の電源供給基板110上の電子部品に付した符号に“b”を追加した符号が付されている。これは、電源供給基板110上の電子部品が、拡張容量基板120が接続された電源供給基板110上の電子部品であるか、拡張容量基板120が接続されていない電源供給基板110上の電子部品であるかを区別するためにそうしているに過ぎない。
【0027】
図7は、
図6の電気回路によるシミュレーション結果を示している。
図7のシミュレーション結果でも、
図5のシミュレーション結果と同様に、0.5秒後、スイッチS1,S1bをオフからオンに切り替え、動力電源ラインDCLINK,DCLINKBの電圧値が250Vになると、スイッチS2,S2bがオフからオンに切り替わっている。その切り替わった時点は、スイッチS1,S1bをオフからオンに切り替えた時点から略0.5秒経過した、略1秒の時点である。また、スイッチS3は、動力電源ラインDCLINKの電圧値が250Vになると、オフからオンに切り替わっている。なお、
図7中、
図5中のグラフと対応するグラフには同一符号を付している。
【0028】
図7(a)は、実線G1が動力電源ラインDCLINKの電圧値の推移を示し、破線G11が動力電源ラインexDCLINKの電圧値の推移を示している。
図7(b)は、実線G2が突入電流抑制抵抗R1bに流れる電流値の推移を示し、破線G3が電解コンデンサC1bに流れる電流値の推移を示している。
図7(c)は、実線G21が突入電流抑制抵抗R2に流れる電流値の推移を示し、破線G31が電解コンデンサC3に流れる電流値の推移を示している。
図7(d)は、実線G4が突入電流抑制抵抗R1bで消費される電力の推移を示し、破線G41が突入電流抑制抵抗R2で消費される電力の推移を示している。
図7(e)は、実線G5が電解コンデンサC1bに供給される電力の推移を示し、破線G51が電解コンデンサC3に供給される電力の推移を示している。
【0029】
略1秒から略2.8秒までは、動力電源ラインDCLINKからの電流は突入電流抑制抵抗R2を経由して電解コンデンサC3に供給されるので、
図7(c)の実線G21に示すように、過大な突入電流が抑制される。また、略1秒から略2.8秒までは、突入電流抑制抵抗R2で消費される電力のピーク値は、0.5秒から略1秒までに突入電流抑制抵抗R1で消費される電力のピーク値と比較して低下している。これは、突入電流抑制抵抗R2の値が突入電流抑制抵抗R1の値より大きいため、突入電流抑制抵抗R2を通る電流がより制限されているからである。したがって、突入電流抑制抵抗R2の発熱による温度上昇は、突入電流抑制抵抗R1の発熱による温度上昇より低くなる。その結果、電流抑制抵抗として、R1とR2とで同様の構成のものを用いた場合、突入電流抑制抵抗R2の発熱による耐久性は、電流抑制抵抗R1のそれより向上する。このように突入電流抑制抵抗R2を通る電流をより制限すると、電解コンデンサC3~C5へ供給される突入電流はより制限されるので、電解コンデンサC3~C5へ供給される時間当たりの電荷量が少なくなり、その結果、
図7(a)の破線G11に示すように、動力電源ラインexDCLINKの電圧値の上昇は緩やかになる。つまり、スイッチS1をオフからオンに切り替えてから電源制御装置100がスタンバイ状態になるまでの時間が遅くなる。このため、突入電流抑制抵抗R2の抵抗値は、突入電流抑制抵抗R2の耐久性や電源制御装置100がスタンバイ状態になるまでの時間などを比較考量して決めることが望ましい。
【0030】
また、スイッチS4の上記第2所定値は、過大な突入電流が電解コンデンサC3~C5へ流れ込む虞がなくなるような値になるまで上昇したときの動力電源ラインexDCLINKの電圧値である。この第2所定値も、スイッチS2の上記切替閾値と同様に、汎用的に決定することはできない。つまり、動力電源ラインexDCLINKの電圧値が第2所定値を下回っている間は、動力電源ラインDCLINKからの電流は突入電流抑制抵抗R2を経由して電解コンデンサC3~C5へ供給され、突入電流は突入電流抑制抵抗R2により制限される。しかし、動力電源ラインexDCLINKの電圧値が第2所定値以上になると、動力電源ラインDCLINKからの電流は突入電流抑制抵抗R2を迂回して直接、電解コンデンサC3~C5へ供給される。このとき、動力電源ラインDCLINKと動力電源ラインexDCLINKとの電位差の大きさに応じて突入電流の電流値が決まるが、その電流値は、電解コンデンサC3~C5以降の電子部品の規格等に応じて過大となるかどうかが決まるからである。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の電源制御装置100では、電源供給基板110に拡張容量基板120を接続するだけで、突入電流を抑制しながら動力電源ラインDCLINKのキャパシタンスを増大させることができる。また、拡張容量基板120は、自身で動力電源ラインDCLINKの電圧値を監視し、自動的に電源供給基板110への接続のオン/オフを切り替えるので、外部から切替信号を送信する必要がなく、これにより電源供給基板110全体の製造コストを低減することができる。また、キャパシタンスが増大すると、ロボット40の動作中に減速や急停止したときに動力電源ラインDCLINK上に発生する回生エネルギーを熱エネルギーとして消費させる代わりに、再生利用可能なキャパシタンスとして回収できるので、環境に優しい装置となる。
【0032】
図8は、動力電源ラインに拡張容量を接続する接続態様を示している。そして、
図8(a)は、複数のモータを1つの電源供給基板110で制御する場合に拡張容量基板120を接続する態様を示している。
図8(b)は、複数のモータを複数の電源供給基板110a~110cで制御する場合に拡張容量基板120を接続する態様の一例を示している。
図8(a)の接続態様は、
図3に示す接続態様と同じであるので、これ以上の説明は省略する。
【0033】
図8(b)に示す電源供給基板110a~110cを、例えば、上記垂直多関節ロボット40の関節41j~43jの内部に組み付けた場合、各電源供給基板110a~110cを数珠つなぎにして接続して行くが、制御軸が本体ベース部から離れるほど、電力供給に遅延が発生したり、動力電源ラインDCLINKが揺れてしまったりする虞が生ずる。手先だけ急峻に稼働させることがあったり、電源供給基板110a~110cの構成部品によって動力電源ラインDCLINKを安定させるために電解コンデンサを実装したいが、実装できない状況であったりすると、
図8(b)に示すように、電源供給基板110a~110cの間に拡張容量基板120を接続する態様で電源供給基板110a~110cを中継させることで、動力電源ラインDCLINKのキャパシタンスを増大させて、動力電源ラインDCLINKを安定化させることができる。関節41j~43jの内部は、電源供給基板110a~110cで一杯となっていて、空きがないことが多いので、ロボットアームの中空部分などに拡張容量基板120を設置すれば、空間を無駄なく使用することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。上記実施形態では、1枚の拡張容量基板120を電源供給基板110に接続する例について説明したが、これに限らず、複数枚の拡張容量基板120を電源供給基板110に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
40…垂直多関節ロボット、41m~44m…モータ、60…制御装置、100…電源制御装置、110…電源供給基板、111…全波整流回路、112…モータ駆動回路、120…拡張容量基板、130…接続線、200…モータ、V…交流電源、DCLINK…動力電源ライン、S1~S4…スイッチ、R1,R2…突入電流抑制抵抗、C1~C5…電解コンデンサ。