(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-05
(45)【発行日】2025-03-13
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 40/12 20120101AFI20250306BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20250306BHJP
B60W 30/045 20120101ALI20250306BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20250306BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20250306BHJP
B60T 7/20 20060101ALI20250306BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B60W40/12
B60W30/08
B60W30/045
B60W30/10
B60T7/12 C
B60T7/20
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023552730
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2022031533
(87)【国際公開番号】W WO2023058343
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021165770
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】清宮 大司
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/162576(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0056736(US,A1)
【文献】国際公開第2020/242361(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0235504(US,A1)
【文献】特開2020-101980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0240153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車と荷台とが連結部を介して連結された車両において、
前記荷台は、該荷台の種類を示す荷台型式を少なくとも記憶する記憶部を備え、
前記牽引車は、前記荷台から前記荷台型式を取得し、取得した前記荷台型式に基づいて前記車両の運転支援を行う制御部を備え
、
前記荷台には、前記荷台の周辺の物体を検出する第1外界センサが複数取り付けられ、
前記荷台の記憶部には、前記荷台型式、前記荷台のサイズ情報、前記第1外界センサの情報、及び前記荷台のブレーキシステムを少なくとも含む荷台情報が記憶され、
前記制御部は、前記荷台情報を取得し、取得した前記荷台情報に基づいて前記車両の運転支援を行い、
前記制御部は、カーブ警告減速制御部を更に備え、
前記カーブ警告減速制御部は、
カーブの半径と、前記荷台情報に含まれた荷台重量及び荷台長とに基づいて、カーブ入口の理想速度を計算する理想速度計算部と、
前記理想速度計算部によって計算された理想速度と、前記車両の車速とに基づいて、前記車両の減速度を計算する減速度計算部と、
前記荷台型式ごとに作成され、警報指示及びブレーキ指示を行うためのカーブ警報制動テーブルと、
前記荷台型式に基づいて前記カーブ警報制動テーブルを選択する第3マルチプレクサと、
を有することを特徴とする車両。
【請求項2】
前記牽引車は、前記牽引車の周辺の物体を検出する複数の第2外界センサと、前記牽引車と前記荷台との相対角度を検出する角度検出部とを更に備え、
前記制御部は、各第1外界センサの検出データ及び各第2外界センサの検出データを取得し、取得した各第2外界センサの検出データを各第2外界センサの取付位置を基準とするセンサ座標系から前記連結部を基準とする牽引車座標系に変換し、取得した各第1外界センサの検出データを、各第1外界センサの取付位置を基準とするセンサ座標系から前記連結部を基準とする荷台座標系に変換し、更に前記角度検出部により検出された相対角度に基づいて前記荷台座標系から前記牽引車座標系に変換することで、前記第1外界センサの検出データと前記第2外界センサの検出データとを前記牽引車座標系に統合し、統合したこれらの検出データに基づいて前記車両に対する検出物体の相対位置及び相対速度を算出する請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、前記荷台型式ごとに作成され、前記第1外界センサの検出データのデータ形式を前記牽引車座標系のデータ形式に変換するためのデータ変換テーブルを有する請求項
2に記載の車両。
【請求項4】
前記荷台は、前記牽引車と電気的に接続するためのハーネスを更に備え、
前記牽引車は、複数のCANバスを介して通信を行うゲートウェイを更に備え、
前記ハーネスが前記牽引車と電気的に接続されたとき、前記ゲートウェイは、前記荷台から第1識別子のCANデータを受信し、前記第1識別子のCANデータを解読して前記荷台型式を取得し、取得した前記荷台型式を記憶するとともに前記制御部に送信する請求項
1~
3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記ハーネスが前記牽引車と電気的に接続されたとき、前記ゲートウェイは、前記荷台から第2識別子のCANデータを受信し、前記第2識別子のCANデータを解読して前記荷台情報を読み出すための荷台情報読み出し用診断コマンドを取得し、取得した前記荷台情報読み出し用診断コマンドに基づいて前記荷台情報を取得し、取得した前記荷台情報を記憶するとともに前記制御部に送信する請求項
4に記載の車両。
【請求項6】
前記ハーネスが前記牽引車との電気的な接続が解除されたとき、前記ゲートウェイは、記憶された前記荷台情報を消去する請求項
5に記載の車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記ゲートウェイに荷台接続の診断コマンドを送信し、
前記ゲートウェイは、前記荷台接続の診断コマンドを解読し、前記ハーネスが前記牽引車と電気的に接続されていないとき、前記荷台情報がないことを前記荷台接続の診断コマンドのレスポンスとして前記制御部に送信し、前記ハーネスが前記牽引車と電気的に接続されているとき、前記荷台情報を前記荷台接続の診断コマンドのレスポンスとして前記制御部に送信する請求項
5に記載の車両。
【請求項8】
前記制御部は、自動緊急ブレーキ制御部を更に備え、
前記自動緊急ブレーキ制御部は、
前記車両の車速、舵角、及びヨーレートに基づいて前記車両の軌道を予測する軌道予測部と、
前記軌道予測部によって予測された軌道と、前記制御部によって算出された前記検出物体の相対位置及び相対速度とに基づいて、前記検出物体との衝突余裕時間を計算する衝突余裕時間計算部と、
前記荷台型式ごとに作成され、警報指示及びブレーキ指示を行うための自動緊急ブレーキ警報制動テーブルと、
前記荷台型式に基づいて前記自動緊急ブレーキ警報制動テーブルを選択する第1マルチプレクサと、
を有する請求項
2に記載の車両。
【請求項9】
前記制御部は、車線変更時衝突軽減制御部を更に備え、
前記車線変更時衝突軽減制御部は、
前記車両のウィンカー情報、車速、舵角、ヨーレート、及びレーン検出情報に基づいて車線変更の軌道を予測する車線変更軌道予測部と、
前記車線変更軌道予測部によって予測された軌道と、前記制御部によって算出された前記検出物体の相対位置及び相対速度と、前記車両のウィンカー情報とに基づいて、隣接車線の後続車との衝突余裕時間を計算する隣接車線衝突余裕時間計算部と、
前記車線変更軌道予測部によって予測された軌道と、前記隣接車線衝突余裕時間計算部によって計算された衝突余裕時間と、前記車両の車速と、前記車両に対する隣接車線の後続車の相対速度と、前記荷台情報に含まれた荷台長とに基づいて、許容距離を計算する許容距離計算部と、
前記許容距離計算部により計算された許容距離と、前記車両に対する隣接車線の前記後続車の相対位置とに基づいて、車線変更の可否を判定する車線変更判定部と、
前記荷台型式ごとに作成され、前記車線変更判定部によって車線変更不可と判定された場合に、車線変更を行うことを抑止するように操舵指示を行うための操舵制御テーブルと、
前記荷台型式に基づいて前記操舵制御テーブルを選択する第2マルチプレクサと、
を有する請求項
2に記載の車両。
【請求項10】
前記制御部は、前記荷台型式に対応した前記自動緊急ブレーキ警報制動テーブルのデータを、前記車両と通信可能に接続された外部サーバから取得する請求項
8に記載の車両。
【請求項11】
前記制御部は、前記荷台型式に対応した前記操舵制御テーブルのデータを、前記車両と通信可能に接続された外部サーバから取得する請求項
9に記載の車両。
【請求項12】
前記制御部は、前記荷台型式に対応した前記カーブ警報制動テーブルのデータを、前記車両と通信可能に接続された外部サーバから取得する請求項
1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車と荷台とを有する車両に関する。
本願は、2021年10月7日に出願された日本国特願2021-165770号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
牽引車(トラクタ)と荷台(トレーラ)とを有する車両は、牽引車に設けられたカプラと荷台に設けられたキングピンとを介して牽引車及び荷台を連結する。そして、荷台のサイズによって、車両は大型や超大型の車両になる場合がある。大型トラック又は超大型車両による事故は、交差点での巻き込み事故、車線変更による事故、カーブ走行時の横転事故などが挙げられるが、交差点での巻き込み事故の発生率が最も高い。
【0003】
上述の事故を防止するため、最近ではブラインドスポットワーニング機能を搭載する車両が増えている。また、特許文献1に開示されるように、荷台の最後尾に乗用車が荷台の下部に潜り込まないように配置された車両突入防止装置(マンスフィールドバー)にカメラ又はレーダといった外界センサを設置し、後方の障害物を検出することで、車両の安全運転を実現する技術が開発されている。更に、特許文献2に示すように、荷台に荷台の周りを撮像するカメラを複数設置し、後方に駐車する際に、カメラで撮像された荷台周りの周辺画像を用いて駐車支援を行う技術も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2019/0235519号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0341583号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような車両では、一つの牽引車で、長さ、幅、重量、タイヤ数、外界センサ数及びブレーキシステム等が異なる荷台に対応できる柔軟性が求められている。牽引する荷台の種類によって車両の状況が大きく変わるため、上記特許文献に開示された技術では異なる種類の荷台に対応し切れず、安全運転に限界がある。例えば、特許文献1に開示された技術では、荷台側の外界センサの設置場所が車両突入防止装置に限定されているので、荷台の側面及び前方に外界センサを設置する場合に適用できない問題がある。一方、特許文献2に開示された技術では、荷台の任意の場所に任意の数のカメラを設置することができるが、荷台側のカメラの設置位置が不明のため、牽引車に設置された後方カメラの画像と、荷台側の各カメラの画像の特徴点を比較するキャリブレーションを行うことで後方カメラと荷台側の各カメラとの相対位置を決定する必要がある。
【0006】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、異なる種類の荷台に対応して適切な運転支援を実現できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両は、牽引車と荷台とが連結部を介して連結された車両において、前記荷台は、該荷台の種類を示す荷台型式を少なくとも記憶する記憶部を備え、前記牽引車は、前記荷台から前記荷台型式を取得し、取得した前記荷台型式に基づいて前記車両の運転支援を行う制御部を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る車両では、牽引車は、荷台から荷台型式を取得し、取得した荷台型式に基づいて車両の運転支援を行う制御部を備えるので、荷台の状況に合わせた運転支援を行うことができる。その結果、異なる種類の荷台に対応して適切な運転支援を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる種類の荷台に対応して適切な運転支援を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2A】荷台の第1外界センサの取付位置を示す例である。
【
図2B】荷台の第1外界センサの取付位置を示す例である。
【
図2C】荷台の第1外界センサの取付位置を示す例である。
【
図4】実施形態に係る車両を示すブロック図である。
【
図9】CANデータベース情報(CANDB情報)の取得を示すフローチャートである。
【
図10】荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)の消去を示すフローチャートである。
【
図12】自動緊急ブレーキ作動時の制動距離を示す図である。
【
図13】自動緊急ブレーキ制御部を示すブロック図である。
【
図14】自動緊急ブレーキ警報制動テーブルを示すブロック図である。
【
図15】自動緊急ブレーキ制御を示すフローチャートである。
【
図16】車線変更時における後続車との車間距離を示す図である。
【
図17】車線変更時衝突軽減制御部を示すブロック図である。
【
図18】操舵制御テーブルを示すブロック図である。
【
図19】車線変更時衝突軽減制御を示すフローチャートである。
【
図21】カーブ警告減速制御部を示すブロック図である。
【
図22】カーブ警報制動テーブルを示すブロック図である。
【
図23】カーブ警告減速制御を示すフローチャートである。
【
図24】OTAを用いた車両管理システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る車両の実施形態について説明する。以下の説明では、左右、前後の方向及び位置は、車両ドライバの視線を基準とする。また、説明の煩雑を避けるために、「第1外界センサ」及び「第2外界センサ」をまとめて「外界センサ」と呼ぶ場合がある。
【0012】
図1は実施形態に係る車両を示す側面図である。本実施形態の車両1は、牽引車2と荷台3とを備えている。牽引車2と荷台3とは、牽引車2に設けられたカプラ(図示せず)と荷台3に設けられたキングピン(図示せず)とからなる連結部4を介して連結されている。また、牽引車2及び荷台3には、コネクタ6がそれぞれ配置されている。これらのコネクタ6は、荷台3側に設けられたハーネス5によって電気的に接続されている。コネクタ6,6及びハーネス5によって、牽引車2側の電力は荷台3に供給されるとともに、牽引車2と荷台3との間の信号の送受信も行われる。
【0013】
また、荷台3には、荷台型式等を含む荷台情報と、及び荷台CANデータ等を管理する管理ECU(Electronic Control Unit)20が搭載され、牽引車2には、車両1の運転支援を行うADAS(Advanced Driver Assistance Systems)ECU10が搭載されている。
【0014】
ADAS ECU10は、特許請求の範囲に記載の「制御部」に相当するものであり、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって車両1の各制御を行う。例えば、ADAS ECU10は、異なる種類の荷台3の状況を考慮した運転支援を行いつつ、牽引車2及び荷台3にそれぞれ取り付けられた外界センサを介して車両1の周囲を360度センシングすることで運転支援を実現する。
【0015】
ここで、
図2A~
図2Cに基づいて荷台3に取り付けられた第1外界センサ8を説明する。
図2Aはサイズが比較的に小さい荷台3、
図2Cは比較的にサイズが比較的に大きい荷台3、
図2Bは
図2Aと
図2Cとの間のサイズを有する荷台3をそれぞれ示す。
【0016】
図2A~
図2Cに示すように、各荷台3には複数の第1外界センサ8が取り付けられている。第1外界センサ8は、例えばカメラ、レーダ、ソナーなどからなり、荷台3の周辺(より具体的には、荷台3の左右両側及び後方)に存在する物体を検出する。周辺に存在する物体は、例えば他の車両、歩行者、道路、道路標示、道路標識、信号、ガードレール、中央分離帯、路上設備、電柱、建造物、その他の障害物などを含む。
【0017】
第1外界センサ8の数は、荷台3のサイズに応じて例えば3個(
図2A)、5個(
図2B)、7個(
図2C)等であってもよい。
図2A~
図2Cにおいて、連結部4に対する各第1外界センサ8の相対距離(すなわち、連結部4から第1外界センサ8の取付位置までの距離)を相対座標8aとして示す。
【0018】
図3は車両の360度センシングを示す例であり、
図3では、上記
図2Cに示す荷台3が用いられる。
図3に示すように、荷台3には7個の第1外界センサ8、牽引車2には3個の第2外界センサ9がそれぞれ取り付けられている。第2外界センサ9は、第1外界センサ8と同様にカメラ、レーダ、ソナーなどからなり、牽引車2の周辺(より具体的には、牽引車2の前方及び左右両側)に存在する物体を検出する。また、牽引車2の後部には、連結部4における牽引車2と荷台3との相対角度θを検出するためのリアカメラ7が取り付けられている。リアカメラ7は、後述する荷台角度検出部162とともに特許請求の範囲に記載の「角度検出部」を構成するものである。なお、角度検出部はリアカメラに限定されない。
【0019】
図3において、連結部4に対する各第2外界センサ9の相対距離(すなわち、連結部4から第2外界センサ9の取付位置までの距離)を相対座標9aとして示す。また、扇状領域8b,9bは第1外界センサ8及び第2外界センサ9の視野角(FOV:Field Of View)を示し、すなわち第1外界センサ8及び第2外界センサ9の検出範囲(検出角度及び検出距離)を示す。更に、扇状領域7bはリアカメラ7の視野角(FOV)を示し、すなわちリアカメラ7の検出領域を示す。
【0020】
このように牽引車2と荷台3とが連結部4を介して連結された車両1では、各外界センサの取付位置を基準とするセンサ座標系、連結部4を基準とする荷台座標系、連結部4を基準とする牽引車座標系といった3つの座標系が存在している。従って、車両1の360度センシングを実現するためには、各第1外界センサ8及び第2外界センサ9の検出データを、それぞれ独立したセンサ座標系から共通の座標系(ここでは、牽引車座標系)に変換する必要がある。従って、牽引車2に取り付けられた各第2外界センサ9の検出データに対し、各第2外界センサ9のセンサ座標系から直接牽引車座標系への座標変換を行う。
【0021】
一方、荷台3に取り付けられた各第1外界センサ8の検出データについては、まず各第1外界センサ8のセンサ座標系から荷台座標系に一旦変換し、その後荷台座標系から牽引車座標系に変換するといった2段階の座標変換を行う必要がある。そして、各第1外界センサ8のセンサ座標系から荷台座標系に変換する際に、連結部4に対する各第1外界センサ8の相対座標8aが用いられる。荷台座標系から牽引車座標系に変換する際に、連結部4における牽引車2と荷台3との相対角度θが用いられる。
【0022】
図4は実施形態に係る車両を示すブロック図である。
図4に示すように、車両1において、牽引車2及び荷台3は、CANバス50を介して互に通信可能に接続されている。牽引車2は、上述したADAS ECU10、複数(a~z)の第2外界センサ9及びリアカメラ7に加えて、複数のCANバス51,52,53と、CANデータを適切なCANバスに転送するゲートウェイ機能を有するセントラルゲートウェイ(CGW)30と、外部サーバ等との通信を行う通信ユニット(TCU:Tele-Communication Unit)44と、レーンや交差点などの地図情報を取り扱う地図ユニット(MPU:MAP Processing Unit)45と、音声や画面でドライバに情報を表示するヒューマンマシンインターフェース(HMI)46と、ブレーキ制御ECU41と、操舵制御ECU42と、駆動力制御ECU43とを備えている。なお、ブレーキ制御ECU41、操舵制御ECU42、及び駆動力制御ECU43はアクチュエータ制御とされている。
【0023】
ADAS ECU10は、更にCANバス51とのインターフェースを行うインターフェース部(IF部)15と、フュージョン部16と、制御アプリ部11と、荷台3から取得された荷台情報を記憶する荷台情報記憶部18と、荷台3から取得された荷台CANデータを記憶する荷台CANデータベース(荷台CANDB)17とを有する。制御アプリ部11は、限定されないが、アプリケーションとして、自動緊急ブレーキ制御部12、車線変更時衝突軽減制御部13、及びカーブ警告減速制御部14を有する。CGW30は、バス管理部31、中継部32、OTA(Over-the-air)管理部33と、荷台情報記憶部34及び荷台CANDB35を有する。
【0024】
一方、荷台3は、上述したように、管理ECU20と複数(1~n)の第1外界センサ8とを備えている。管理ECU20は、荷台3の各処理を行う処理部21と、CANバス50とのインターフェースを行うIF部22と、ROM23とを有する。ROM23は、特許請求の範囲に記載の「記憶部」に相当するものであって、不揮発メモリからなる。そして、ROM23には、荷台情報、及び荷台CANデータがそれぞれ記憶されている。
【0025】
ROM23に記憶される荷台情報として、例えば表1に示すものが挙げられる。すなわち、荷台情報には、荷台型式、荷台情報読み出しのための荷台情報読み出し用診断コマンド、荷台のサイズ情報、第1外界センサ8の情報、及び荷台のCANデータを意味解釈(解読)するためのCANデータベース情報が含まれている。なお、表1には示されていないが、荷台情報には、タイヤ数、及び荷台3のブレーキシステム等が更に含まれている。
【0026】
荷台型式は荷台3の種類を示すものである。荷台情報読み出し用診断コマンドとは、荷台情報を読み出すために、専用のCANIDが記載されている。このCANIDを持つCANメッセージを牽引側が送信し、荷台側が受信することで、荷台の管理ECUは、荷台情報を返信する。荷台3のサイズ情報には、荷台長、荷台幅、荷台重量、キングピン高さ、連結全長等が含まれている。センサ情報には、荷台3に取り付けられた第1外界センサ8の数、各第1外界センサ8の識別子、連結部4に対する各第1外界センサ8(i=1~N)の取付位置の座標、各第1外界センサ8のFOVが含まれている。なお、i(i=1~N)は各第1外界センサ8の識別子である。これらのセンサ情報は車両1の360度センシングを実現するために必要な情報である。一方、CANデータベース情報には、荷台3のCANデータベースの形式、及び、荷台CANデータベース(CANDB情報)読み出し用診断コマンドが含まれている。
【0027】
なお、荷台3のサイズ情報、第1外界センサ情報、及び荷台のCANデータを意味解釈(解読)するためのCANデータベース情報は必ずしもROM23に記憶される必要がなく、荷台型式が分かれば、荷台型式を基にデータセンタなどの外部サーバからこれらの情報を取得するようにしてもよい。また、荷台情報読み出し用診断コマンド、及び荷台CANデータ読み出し用診断コマンドは必ずしもROM23に記憶される必要がなく、CANデータの種別が分かれば、該CANデータの種別を基にデータセンタなどの外部サーバからこれらのコマンドを取得するようにしてもよい。
【0028】
【0029】
ROM23に記憶される荷台CANデータベース情報(荷台CANDB)として、例えば表2に示すものが挙げられる。荷台CANデータベース情報は、荷台から出力される全てのCANデータの意味解釈(解読)ができる情報である。荷台のCANデータのCANID、データ(ペイロード)のデータがどこに格納され、どのような単位のデータなのかが記載されたテーブルである。このテーブルを用いることで、荷台CANデータから必要なデータを抽出することができる。例えば、複数(j=1…N)の第1外界センサ8がそれぞれどのようにCANデータに格納されているかが記載されており、第1外界センサのCANIDやデータ形式が分かるため、ADAS ECU10のIF部15は、この荷台CANデータから各第1外界センサ8の情報を分離又は抽出することができる。
【0030】
【0031】
フュージョン部16は、まず取得した各第1外界センサ8の検出データを、各第1外界センサ8のセンサ座標系から荷台座標系に変換し、更に荷台座標系から牽引車座標系に変換することで、第1外界センサ8の検出データと第2外界センサ9の検出データとを牽引車座標系に統合する。次に、フュージョン部16は、共通の牽引車座標系において第1外界センサ8の検出データと第2外界センサ9の検出データとを整理し、更に時系列等の規則に沿うようにこれらのデータを並べ替える。その後、フュージョン部16は、複数の第1外界センサ8及び第2外界センサ9により検出された検出物体が同一か否かを判定し、車両1に対する検出物体の相対座標及び相対速度を出力する。なお、検出物体の相対座標は、すなわち検出物体の相対位置を示すものである。
【0032】
図5はフュージョン部を示すブロック図である。
図5に示すように、フュージョン部16は、複数のデータ変換テーブル160と、マルチプレクサ(MUX)161と、荷台角度検出部162と、荷台座標変換部163と、牽引車座標変換部164と、入力有効化部165と、統合計算部166とを有する。
【0033】
データ変換テーブル160は、各第1外界センサ8の検出データのデータ形式をフュージョン部16のデータ形式に合うように変換するためのテーブルである。データ変換テーブル160は、荷台型式ごとに作成されている。データ変換テーブル160は、荷台型式を基に、例えばデータセンタなどの外部サーバからOTA(Over-the-air)を介してダウンロードされ、フュージョン部16に記憶されている。荷台の種類によって異なるため、データ変換テーブル160はそれぞれ独立になっている。なお、
図5では3つの荷台型式(荷台A、荷台B、荷台C)のデータ変換テーブルを示す。
【0034】
図6はデータ変換テーブルを示す例である。データ変換テーブル160への入力として、荷台3に取り付けられた各第1外界センサ8の検出データのうち、IF部15によって分離されたものであって、各第1外界センサ8の識別ID、各第1外界センサ8によって検出された検出物体の種別、各第1外界センサ8によって検出された検出物体の相対座標及び相対速度、連結部4に対する各第1外界センサ8の相対位置が挙げられる。なお、データ変換テーブル160への入力は周期的に行われる。
【0035】
データ変換テーブル160では、後のフュージョン部16での計算に対応できるように、入力されたデータに対し、単位変換のための計算、及び検出データの並び替えが行われる。これによって、各第1外界センサ8の検出データが単位変換され、例えば昇順に並び替えられる。一方、データ変換テーブル160からの出力として、例えばi個の第1外界センサ8の識別ID、i個の第1外界センサ8によって検出された検出物体の種別、i個の第1外界センサ8によって検出された検出物体の相対座標及び相対速度、連結部4に対するi個の第1外界センサ8の相対位置が挙げられる。
【0036】
荷台3の種類(言い換えれば、荷台型式)によって、取り付けられた第1外界センサ8の数は異なっているが、牽引車2にどの荷台3が接続するか不明のため、統合計算部166としては有効となる第1外界センサ8の数が不明である。そこで、統合計算部166は、最大数の第1外界センサ8の情報が常に入力されることを前提にし、統合計算を行う。そして、統合計算部166の上流側に入力有効化部165を設け、第1外界センサ8の数が該最大数に満たない場合は、余剰分を無効IDとして扱う。
【0037】
図7は入力有効化部を示すブロック図である。入力有効化部165は、センサ活性設定部1651と、マルチプレクサ(MUX)1652とを有する。入力有効化部165への入力として、荷台座標変換部163によって座標変換された各第1外界センサ8の識別ID、各第1外界センサ8によって検出された検出物体の相対座標及び相対速度である。ここでは、荷台情報中の接続された第1外界センサ数の情報が用いられる。例えば、荷台3の第1外界センサ8の数が5個だとすると、第1外界センサ8の昇順の並び替えは、データ変換テーブル160で済ませているので、第1外界センサ8がN個入力のうち、昇順の1~5のみはそれぞれの識別IDがMUX1652で通過し、6~Nはそれぞれの識別IDを無効IDとしてゼロが出力されることにより、後の統合計算部166で無効IDとして計算から除外される。
【0038】
上述したように、牽引車2及び荷台3はハーネス5によって電気的に接続されている。そして、例えば車両1のドライバによるイグニッションオンの時に、牽引車2は荷台3から荷台情報などを取得する。取得された荷台情報は、電源を遮断しても保持されるように不揮発メモリである荷台情報記憶部18に記憶されている。以下、
図8を基に荷台情報取得の処理を説明する。
【0039】
図8は荷台情報取得を示すフローチャートである。
図8に示すように、まずステップS10では、車両1は、荷台3のハーネス5が牽引車2のコネクタ6と電気的に接続されているかを判定する。荷台3のハーネス5が電気的に接続されていると判定した場合、車両1は、電気的に接続されることをCGW30に通知する。ステップS10の判定処理はハーネス5が電気的に接続されていると判定されるまで繰り返し行われる。
【0040】
ステップS10に続くステップS11では、CGW30のバス管理部31は、荷台3のCANバス50がハーネス5を通してCGW30と接続されたことを確認する。これにより、荷台3からCGW30にCANデータを送信できる状態になる。
【0041】
ステップS11に続くステップS12では、荷台3の管理ECU20は、まずROM23に記憶された荷台情報中の荷台型式を読み出す。次に、管理ECU20は、特定のCANID(例えば0x0)のデータフィールドに荷台型式を記載したCANメッセージをCGW30に送信する。ここの荷台型式を記載したCANメッセージは、すなわち特許請求の範囲に記載の「第1識別子のCANデータ」に相当するものである。この場合、CGW30は、受信した荷台型式を記載したCANメッセージをバス管理部31に解読させ、荷台型式を取得し、取得した荷台型式を記憶するとともにADAS ECU10に送信する。
【0042】
ステップS12に続くステップS13では、管理ECU20は、特定のCANID(例えば0x1)のデータフィールドに荷台情報読み出し用診断コマンドを記載したCANメッセージをCGW30に送信する。ここの荷台情報読み出し用診断コマンドを記載したCANメッセージは、すなわち特許請求の範囲に記載の「第2識別子のCANデータ」に相当するものである。ここで、荷台情報読み出し用診断コマンドは、荷台情報を読み出すために、専用のCANIDが記載されている。このCANIDを持つCANメッセージを牽引側が送信し、荷台側が受信することで、荷台の管理ECUは、荷台情報を返信する。
【0043】
ステップS13に続くステップS14では、CGW30は、受信した上記CANメッセージをバス管理部31に解読させ、荷台情報読み出し用診断コマンドを荷台3の管理ECU20に送信する。
【0044】
ステップS14に続くステップS15では、荷台3の管理ECU20は、受信した荷台情報読み出し用診断コマンドに基づいて、ROM23に記憶された荷台情報を読み出し、読み出した荷台情報をCGW30に送信する。
【0045】
ステップS15に続くステップS16では、CGW30は、荷台3から送信された荷台情報を受信し、荷台情報記憶部34に記憶させる。
【0046】
ステップS16に続くステップS17では、CGW30は、荷台情報記憶部34に記憶された荷台情報をADAS ECU10に送信する。なお、車両1が起動されると、CGW30は、ADAS ECU10から定期的に荷台接続の診断コマンドを受信して解読する。そして、荷台3のハーネス5が牽引車2のコネクタ6と電気的に接続されているとき、CGW30は、荷台接続の診断コマンドのレスポンスとして、荷台3から受信して荷台情報記憶部34に記憶された荷台情報をADAS ECU10に送信する。一方、荷台3のハーネス5が牽引車2のコネクタ6と電気的に接続されていないとき、CGW30は、荷台接続の診断コマンドのレスポンスとして、荷台情報がないことをADAS ECU10に送信する。
【0047】
ステップS17に続くステップS18では、ADAS ECU10はCGW30から送信された荷台情報を受信し、受信した荷台情報を荷台情報記憶部18に記憶させる。これによって、荷台情報取得に関する処理が終了する。
【0048】
牽引車2は、荷台3から荷台情報を取得すると、荷台情報の車両通信を確立するために、荷台3のCANデータベース情報(DB情報)を更に取得する。このCANデータベース情報(CANDB情報)の用途としては、IF部で使用され、荷台から出力される全てのCANデータを意味解釈(解読)し、適切な情報(シグナル)をCANデータから抽出することに用いられる。例えば、荷台からのCANデータとして、第1外界センサ8の検出データは、該当するCANデータにパッキングされているが、CANデータベース情報を用いて解読することで、パッキングデータを分解することができ、第1外界センサ8により検出された検出物体の相対速度及び相対座標などのシグナルを抽出することができる。他のCANデータも同様に解読される。
図9にADAS ECU10内にCANデータベース情報(CANDB情報)を保存する方法を説明する。
【0049】
図9はCANデータベース情報(CANDB情報)の取得を示すフローチャートである。なお、CANデータベース情報(CANDB情報)は、荷台情報と同じく、電源を遮断しても保持されるように荷台の管理ECU内の不揮発メモリであるROM23に記憶されている。
【0050】
図9に示すように、まずステップS20では、ADAS ECU10は、荷台情報記憶部18に保持される荷台情報に含まれるCANデータベース(CANDB情報)読み出し用診断コマンドをCGW30に送信する。CANデータベース(CANDB情報)読み出し用診断コマンドとは、CANデータベース(CANDB情報)読み出すための診断用途のCANメッセージである。CANデータベース(CANDB情報)読み出し用診断コマンドを生成するのに必要な情報は荷台情報記憶部18に記憶されている。
【0051】
ステップS20に続くステップS21では、CGW30は、まず荷台情報記憶部34からCANデータベース情報(CANDB情報)を読み出し、中継部32にデータ中継設定を実施させる。そして、CGW30は、上記CANデータベース情報(CANDB情報)読み出し用診断コマンドが荷台向けであることを解釈し、荷台3のCANバス50にCANデータ読み出し用診断コマンドを中継する。
【0052】
ステップS21に続くステップS22では、荷台3の管理ECU20は、CANデータベース情報(CANDB情報)読み出し用診断コマンドを受け取り、ROM23からCANデータベース情報(CANDB情報)を読み出し、CANバス50を介してCGW30に送信する。
【0053】
ステップS22に続くステップS23では、CGW30は、荷台3から送信されたCANデータベース情報(CANDB情報)をADAS ECU10に中継する。ADAS ECU10は、中継されたCANデータベース情報(CANDB情報)を取得して荷台CANDB17に記憶させる。
【0054】
これによって、ADAS ECU10内にCANデータベース情報(CANDB情報)取得並びに保存が終了する。
【0055】
なお、牽引車2のコネクタ6と荷台3のハーネス5との電気的な接続が解除された場合、牽引車2側で記憶された荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を消去する必要がある。荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)は、電源を遮断しても保持できるCGW30及びADAS ECU10の不揮発メモリ(すなわち、CGW30の荷台情報記憶部34及び荷台CANDB35、ADAS ECU10の荷台情報記憶部18及び荷台CANDB17)にそれぞれ記憶されているため、両方の消去処理を行うことで、不揮発メモリから当該データを消去する。以下、
図10を基に荷台情報及び荷台CANデータの消去に関する処理を説明する。
【0056】
図10は荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)の消去を示すフローチャートである。
図10に示すように、まずステップS30では、車両1は、牽引車2のコネクタ6と荷台3のハーネス5との電気的な接続が解除されたか否かを判定する。ステップS30の判定処理は接続が解除されたと判定されるまで繰り返し行われる。そして、牽引車2のコネクタ6と荷台3のハーネス5との電気的な接続が解除されたと判定した場合、車両1は、解除されたことをCGW30に通知する。
【0057】
ステップS30に続くステップS31では、CGW30は、ADAS ECU10に荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を消去するCANメッセージを送信する。
【0058】
ステップS31に続くステップS32では、ADAS ECU10は、CGW30から上記CANメッセージを受信し、荷台情報記憶部18に記憶された荷台情報及び荷台CANDB17に記憶された荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を消去する。
【0059】
ステップS32に続くステップS33では、CGW30は、荷台情報記憶部34に記憶された荷台情報及び荷台CANDB35に記憶された荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を消去する。これによって、荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)の消去が終了する。このように牽引車2のコネクタ6と荷台3のハーネス5との電気的な接続が解除されたときにADAS ECU10及びCGW30に記憶された荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を消去することで、次に別の荷台が電気的に接続されたときに、誤った荷台情報や荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を使わなくて済むため、牽引車2が接続された荷台の間違った情報を使用しない。
【0060】
図8及び
図9を用いて説明したように、ADAS ECU10には、荷台情報及び荷台CANデータベース情報(CANDB情報)が記憶されており、ADAS ECU10は荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を用いて、荷台からのCANデータの意味解釈(解読)を行うことができる。例えば、荷台CANデータベース情報(CANDB情報)を用いてデコードすることにより、第1外界センサ8の情報を含むCANデータから第1外界センサ8により検出された検出物体の相対速度及び相対座標などの情報を取得し、荷台情報に基づいて第1外界センサ8の数及び連結部4に対する第1外界センサ8の相対座標などの情報を取得する。
【0061】
以下、
図11を基に、フュージョン部16が荷台3に取り付けられた各第1外界センサ8の検出データと、牽引車2に取り付けられた各第2外界センサ9の検出データとをそれぞれのセンサ座標系から共通の牽引車座標系に統合する(以下、座標系統合)ことで、360度センシングを実現することを説明する。
【0062】
図11は座標系統合を示すフローチャートである。
図11に示すように、まずステップS40では、牽引車2に取り付けられた各第2外界センサ9、及び荷台3に取り付けられた各第1外界センサ8は、それぞれの検出データを周期的にCANバス50,53を介してCGW30に送信する。
【0063】
ステップS40に続くステップS41では、ADAS ECU10のIF部15は、荷台3と牽引車2のCANデータを用いて、CANメッセージをデコードし、第1外界センサ8の検出データ及び第2外界センサ9の検出データのシグナルを作成する。ここでのシグナルとは、第1外界センサ8及び第2外界センサ9によりそれぞれ検出された検出物体の相対座標及び相対速度等を指し、それぞれのセンサ座標系を基準としたものである。
【0064】
ステップS41に続くステップS42では、牽引車座標変換部164は、牽引車2の第2外界センサ9の検出データを、センサ座標系から牽引車座標に変換する。変換された検出データは統合計算部166に入力される。
【0065】
ステップS42に続くステップS43では、荷台3の第1外界センサ8の検出データは、荷台型式ごとに作成されたデータ変換テーブル160で牽引車2側のデータフォーマットに変換され(言い換えれば、データ形式の変換が行われ)、更にMUX161で荷台型式に基づいて選択される。
【0066】
ステップS43に続くステップS44では、荷台角度検出部162は、リアカメラ7により撮像された画像に基づいて、牽引車2と荷台3との相対角度θを検出する。
【0067】
ステップS44に続くステップS45では、荷台座標変換部163は、ステップS43でデータフォーマットに変換された第1外界センサ8の検出データに対し、2段階の座標変換を行う。1段階目は、連結部4に対する第1外界センサ8の相対位置を用いて、第1外界センサ8のセンサ座標系から荷台座標系に変換する。2段階目は、牽引車2と荷台3との相対角度θを用いて、荷台座標系から牽引車座標系に変換する。
【0068】
ステップS45に続くステップS46では、入力有効化部165は、荷台3の接続された第1外界センサ8の数を基に、第1外界センサ8が有効又は無効であるかを定め、更に無効な第1外界センサ8に関する無効IDを出力する。なお、特に制限されないが、データ変換テーブル160の出力として、第1外界センサ8の検出の結果が有効なものから昇順に並べられている場合、例えばi個の第1外界センサ8の総検出結果がk個だとすると、1~k個は有効ID、それ以外は無効IDとして出力される。
【0069】
ステップS46に続くステップS47では、入力有効化部165は、牽引車座標系に変換された有効な第1外界センサ8の検出データを、荷台3側の情報として統合計算部166に出力する。
【0070】
ステップS47に続くステップS48では、統合計算部166は、入力有効化部165から出力された有効な第1外界センサ8の検出データと、牽引車座標変換部164によって牽引車座標系に変換された第2外界センサ9の検出データとを用いて、これらの検出データを時系列に並び替え、検出物体の同一性判定を行い、統合認識データを計算する。これによって、座標系統合が終了する。
【0071】
本実施形態の車両1では、牽引車2は、荷台3から荷台型式を取得し、取得した荷台型式に基づいて360度センシングを実現する。異なる種類の荷台に対しては、その荷台ごとに取り付けられたセンサ情報を用いた360度センシングとなる。具体的には、牽引車2のフュージョン部16において、荷台3の各第1外界センサ8の検出データと、牽引車2の各第2外界センサ9の検出データとに対し、共通の牽引車座標系への統合を行うことで、車両1の360度センシングを実現できる。
【0072】
更に、車両1の360度センシングを実現することにより、様々な先進運転支援のアプリケーションを車両1で実現することが可能となる。この場合において、車両1は、異なる種類の荷台3の特性を考慮しつつ、荷台連結における制御特性を変更する必要がある。以下、先進運転支援のアプリケーションとして、自動緊急ブレーキ支援、車線変更時衝突軽減支援、及びカーブ警告減速支援の例を挙げて説明する。
【0073】
[自動緊急ブレーキ支援について]
図12は自動緊急ブレーキ作動時の制動距離を示す図である。
図12において、左側は牽引車2のみの場合、右側は牽引車2に荷台3が連結された場合(以下、「荷台連結」という)をそれぞれ示す。
図12に示すように、同一の速度で走行したときの歩行者60に対する制動距離が、牽引車2のみの場合と荷台連結の場合とで異なっている。すなわち、牽引車2のみの場合の制動距離61と比べて、荷台連結の場合の制動距離62は長くなる。
【0074】
また、荷台連結の場合においても、荷台3のサイズ及びブレーキシステムによって制動距離の長さが異なる。このため、自動緊急ブレーキ制御においては、荷台3の接続の有無、荷台情報の違いに応じて、警報発動時間とブレーキ制御方法を変える必要がある。
【0075】
図13は自動緊急ブレーキ制御部を示すブロック図である。
図13に示すように、自動緊急ブレーキ制御部12は、軌道予測部121、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)計算部122、複数の自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120、及びMUX123を有する。軌道予測部121は、車両1の車速、舵角、及びヨーレートに基づいて車両1の軌道を予測する。
【0076】
TTC計算部122は、軌道予測部121によって予測された軌道と、フュージョン部16により算出された検出物体(例えば、車両前方の歩行者)の相対速度及び相対座標とに基づいて、検出物体との衝突余裕時間(TTC)を計算する。自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120は、各荷台3のサイズ及びブレーキシステムに適した警報指示及びブレーキ指示を行うためのテーブルであり、荷台型式ごとに作成されている。MUX123は、特許請求の範囲に記載の「第1マルチプレクサ」に相当するものであり、荷台型式に基づいて自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120を選択する。
【0077】
図14は自動緊急ブレーキ警報制動テーブルを示すブロック図である。
図14に示すように、自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120は、減加速度要求計算部1201と、警報指示部1202と、ブレーキ指示部1203とを有する。減加速度要求計算部1201は、衝突余裕時間(TTC)、車両1の車速及び積載量に基づいて、制御モード及び減加速度要求を計算する。制御モードには、警報モード、予備制動モード、及び緊急制動モードなどが含まれている。また、計算された制御モード及び減加速度要求は、次回の計算時の入力としても使用される。
【0078】
警報指示部1202は、警報モードであることが入力されると、警報指示を出力する。ブレーキ指示部1203は、予備制動モードまたは緊急制動モードにおいて、それぞれの減加速度要求及び車速に基づいて、牽引車2と荷台3が有するブレーキシステムのうち適切なブレーキ指示を行う。ブレーキ指示には、油圧ブレーキ指示、エアブレーキ指示、排気ブレーキ指示、及びリターダブレーキ指示が含まれているが、ブレーキ指示はこれらのものに制限されない。
【0079】
図15は自動緊急ブレーキ制御を示すフローチャートである。
図15に示すように、まずステップS50では、軌道予測部121は、車両1の車速、舵角、及びヨーレートに基づいて、車両1の軌道を予測する。
【0080】
ステップS50に続くステップS51では、TTC計算部122は、ステップS50で予測された軌道と、フュージョン部16により算出された検出物体の相対速度及び相対座標とに基づいて、予測された軌道上にある最も近い物体との衝突余裕時間(TTC)を計算する。
【0081】
ステップS51に続くステップS52では、自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120は、ステップS52で計算されたTTCと、車両1の車速とに基づいて、警報指示及びブレーキ指示をMUX123に出力する。
【0082】
ステップS52に続くステップS53では、MUX123は、荷台型式に基づいて、該荷台型式に対応した自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120を選択する。
【0083】
ステップS53に続くステップS54では、自動緊急ブレーキ制御部12は、選択された自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120を用いて、荷台型式に対応した警報指示及びブレーキ指示を出力する。これによって、自動緊急ブレーキ制御に関する処理が終了する。
【0084】
このようにすれば、車両1の360度センシングを実現できるとともに、荷台型式に適した自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120を用いることで、より適切な自動緊急ブレーキ支援を行うことができる。
【0085】
[車線変更時の衝突軽減支援]
図16は車線変更時における後続車との車間距離を示す図である。
図16において、左側は牽引車2のみの場合、右側は荷台連結の場合をそれぞれ示す。
図16に示すように、同一の速度で走行したとき、荷台の有無によって、車線変更時における後続車63との許容距離が変わる。すなわち、牽引車2のみの場合の許容距離64と比べて、荷台連結の場合の許容距離65は長くなる。また、荷台連結の場合においても、荷台のサイズにより、車両1の加速度も変わるため、車線変更に時間を要することも考慮に入れる必要がある。
【0086】
車線変更時における後続車との許容距離dは下記式(1)により算出される。
d=(TT+TL)・Vr (1)
【0087】
式(1)において、TTは衝突余裕時間(単位:sec)、TLはレーンチェンジ時間(単位:sec)、Vrは隣接車線の後続車との相対速度(単位:m/s)を示す。そして、TLは荷台長に関連するので、可変なパラメータである。
【0088】
図17は車線変更時衝突軽減制御部を示すブロック図である。
図17に示すように、車線変更時衝突軽減制御部13は、車線変更軌道予測部131と、隣接車線TTC計算部132と、許容距離計算部133と、車線変更判定部134と、復帰経路計算部136と、複数の操舵制御テーブル130と、MUX135とを有する。
【0089】
車線変更軌道予測部131は、車両1のウィンカー情報、車速、舵角、ヨーレート、及びレーン検出情報に基づいて車線変更の軌道を予測する。なお、レーン検出情報は例えば牽引車2の前方に取り付けられた第2外界センサ9の検出データから得られる。隣接車線TTC計算部132は、車線変更軌道予測部131によって予測された軌道と、フュージョン部16により算出された検出物体(ここでは、後続車)の相対速度及び相対座標と、車両1のウィンカーの情報とに基づいて、隣接車線の後続車との衝突余裕時間(TTC)を計算する。
【0090】
許容距離計算部133は、車線変更軌道予測部131によって予測された軌道と、隣接車線TTC計算部132によって計算されたTTCと、車両1の車速、車両1に対する隣接車線の後続車の相対速度と、荷台長とに基づいて、許容距離dを計算する。
【0091】
車線変更判定部134は、許容距離計算部133により計算された許容距離dに基づいて、車両1に対する隣接車線の後続車の相対位置が許容距離dより大きいか否かで車線変更の可否を判定する。そして、車線変更が不可と判定した場合、車線変更判定部134は、警報を発動しつつ、車線変更不可時にドライバが操舵して車線変更を行うことを抑止するように操舵指示を行う。復帰経路計算部136は、車線変更不可と判定された場合、レーンに復帰するための復帰旋回半径を計算する。
【0092】
操舵制御テーブル130は、荷台型式ごとに作成されている。この操舵制御テーブル130は、車線変更判定部134によって車線変更不可と判定された場合に、車線変更を行うことを抑止するように操舵指示を行うにあたり、各荷台3のサイズ及びブレーキシステムに適した操舵指示を行うためのテーブルである。MUX135は、特許請求の範囲に記載の「第2マルチプレクサ」に相当するものであり、荷台型式に基づいて操舵制御テーブル130を選択する。
【0093】
図18は操舵制御テーブルを示すブロック図である。
図18に示すように、操舵制御テーブル130は、目標操舵角計算部1301と、指示舵角計算部1302とを有する。目標操舵角計算部1301は、車両1の車速、舵角、車線変更不可判定情報、及び復帰旋回半径情報に基づいて、車線変更不可と判定されたときに、レーンと並行に戻す復帰旋回半径を満たすように目標操舵角を計算する。指示舵角計算部1302は、牽引車2と荷台3が有する操舵システムに対して適切な操舵指示を行うように指示舵角を計算する。
【0094】
図19は車線変更時衝突軽減制御を示すフローチャートである。
図19に示すように、まずステップS60では、車線変更軌道予測部131は、車両1の車速、舵角、ヨーレート、レーン検出情報、及びウィンカー情報に基づいて、レーンに対する車両1の軌道を予測する。
【0095】
ステップS60に続くステップS61では、隣接車線TTC計算部132は、ウィンカー作動時に、フュージョン部16により算出された検出物体(ここでは、後続車)の相対速度及び相対座標に基づいて、ウィンカーが示す側の隣接車線を走行する後続車との衝突余裕時間(TTC)を計算する。
【0096】
ステップS61に続くステップS62では、許容距離計算部133は、後続車との衝突余裕時間(TTC)と、予測された軌道からのレーンチェンジ時間と、後続車の相対速度とに基づいて、許容距離dを計算する。
【0097】
ステップS62に続くステップS63では、車線変更判定部134は、隣接車線の後続車の相対位置が許容距離dより大きいか否かを判定する。後続車の相対位置が許容距離dより大きい場合、車線変更判定部134は車線変更可と判定し、これによって処理は終了する。一方、後続車の相対位置が許容距離d以下である場合、車線変更判定部134は車線変更不可と判定する。
【0098】
ステップS63に続くステップS64では、車線変更判定部134は、警報指示を出力し、レーンに復帰するための旋回半径を計算し、更に車線変更不可及び復帰旋回半径を操舵制御テーブル130に出力する。
【0099】
ステップS64に続くステップS65では、MUX135は、荷台型式に基づいて、該荷台型式に対応した操舵制御テーブル130を選択する。
【0100】
ステップS65に続くステップS66では、車線変更時衝突軽減制御部13は、選択された操舵制御テーブル130を用いて、荷台型式に対応した操舵指示を出力する。これによって、車線変更時衝突軽減制御に関する処理が終了する。
【0101】
このようにすれば、車両1の360度センシングを実現できるとともに、荷台型式に適した操舵制御テーブル130を用いることで、より適切な車線変更時衝突軽減支援を行うことができる。
【0102】
[カーブ警告減速支援]
カーブ警告減速支援は、車両1がカーブを走行する際に、カーブの半径Rに応じて、カーブの入口で車速が速すぎる場合に警報を発動してドライバへの注意喚起を行い、それでもドライバの減速が不十分な場合に減速制御支援を行うことである。そして、荷台の有無、荷台のサイズ及びブレーキシステムによって状況が変わるため、荷台型式ごとに警報及び減速制御の方法を変更する必要がある。
【0103】
図20はカーブ警告減速制御が適される例である。
図20に示すように、車両1がカーブの入口付近を走行しており、前方に他車両66,67,68がカーブを走行中である。カーブ警告減速制御部14は、MPU45からカーブの半径Rを取得し、カーブの半径Rと荷台サイズ等に基づいてカーブ入口の理想速度を算出し、現在の車速から理想速度になるように警報の発動または減速の制御を行う。
【0104】
図21はカーブ警告減速制御部を示すブロック図である。
図21に示すように、カーブ警告減速制御部14は、理想速度計算部141と、減速度計算部142と、複数のカーブ警報制動テーブル140と、MUX143とを有する。理想速度計算部141は、MPU45から取得されたカーブの半径R、荷台情報に含まれた荷台重量及び荷台長に基づいて、カーブ入口の理想速度を計算する。減速度計算部142は、理想速度計算部141によって計算された理想速度と、現在の車速とに基づいて、時々刻々の減速度を計算する。
【0105】
カーブ警報制動テーブル140は、荷台型式ごとに作成されている。このカーブ警報制動テーブル140は、減速度計算部142により計算された減速度と、MPU45から取得されたカーブ入口までの距離と、車両1の積載量とに基づき、各荷台3のサイズ及びブレーキシステムに適した警報及び駆動力制御を行うためのテーブルである。MUX143は、特許請求の範囲に記載の「第3マルチプレクサ」に相当するものであり、荷台型式に基づいてカーブ警報制動テーブル140を選択する。なお、カーブ警報制動テーブルの駆動力制御は、ブレーキ制御を行う。ブレーキ制御にエンジンブレーキ制御としてのアクセル制御を含めてもよい。
【0106】
図22はカーブ警報制動テーブルを示すブロック図である。カーブ警報制動テーブル140は、減加速度要求計算部1401と、警報指示部1402と、ブレーキ指示部1403とを有する。減加速度要求計算部1401は、車両1の車速、減速度計算部142により計算された減速度、車両1の積載量、及びカーブ入口までの距離に基づいて、制御モード及び減加速度要求を計算する。制御モードには、警報モード、予備制動モード、及び緊急制動モードなどが含まれている。また、計算された制御モード及び減加速度要求は、次回の計算時の入力としても使用される。
【0107】
警報指示部1402は、警報モードであることが入力されるときに、警報指示を出力する。ブレーキ指示部1403は、予備制動モード、緊急制動モードにおいて、それぞれ減加速度要求及び車速に基づいて、牽引車2と荷台3が有するブレーキシステムのうち適切なブレーキ指示を行う。ブレーキ指示には、油圧ブレーキ指示、エアブレーキ指示、排気ブレーキ指示、及びリターダブレーキ指示が含まれているが、ブレーキ指示はこれらのものに制限されない。
【0108】
図23はカーブ警告減速制御を示すフローチャートである。
図23に示すように、まずステップS70では、理想速度計算部141は、MPU45から取得されたカーブの半径R、荷台情報に含まれた荷台重量及び荷台長に基づいて、カーブ入口の理想速度を計算する。
【0109】
ステップS70に続くステップS71では、減速度計算部142は、車両1の車速とステップS70で計算された理想速度との差に基づいて減速度を計算する。
【0110】
ステップS71に続くステップS72では、カーブ警報制動テーブル140は、車両1の車速、減速度、車両1の積載量、及びカーブ入口までの距離に基づいて、警報指示及びブレーキ指示を出力する。
【0111】
ステップS72に続くステップS73では、MUX143は、荷台型式に基づいて、該荷台型式に対応したカーブ警報制動テーブル140を選択する。
【0112】
ステップS73に続くステップS74では、カーブ警告減速制御部14は、選択されたカーブ警報制動テーブル140を用いて、荷台型式に対応した警報指示及びブレーキ指示を出力する。これによって、カーブ警告減速制御に関する処理が終了する。
【0113】
このようにすれば、車両1の360度センシングを実現できるとともに、荷台型式に適したカーブ警報制動テーブル140を用いることで、より適切なカーブ警告減速支援を行うことができる。
【0114】
上述した実施形態では、荷台型式ごとに各テーブルの切り替えを行っているが、これらのテーブルは、荷台情報とともに荷台型式ごとにデータセンタのデータベースに登録されてもよい。この場合、車両1は、荷台型式とテーブル形式を指定し、OTAを介してデータセンタに荷台情報及びテーブルの送信を要求し、荷台情報の取得と車両1内のテーブルへのデータ書き込みをしてもよい。以下では、
図24を基に説明する。
【0115】
図24はOTAを用いた車両管理システムを示すブロック図である。
図24に示すように、車両管理システム100は、車両1、データセンタ80、及び通信用の基地局85を備えている。データセンタ80は、荷台情報サービス部81と、荷台情報データベース82と、OTAサービス部83と、OTAプログラム、顧客情報と車両情報等を保存するOTAプログラムデータベース84とを有する。
【0116】
荷台情報サービス部81は、荷台型式とテーブル形式とを用いて、データベースを参照してテーブルプログラムを生成する。OTAサービス部83は、顧客情報と車両情報を基にOTAプログラムデータベース84を参照し、テーブルプログラムをOTAサービスとして構成する。また、OTAサービス部83は、車両1にOTAとしてテーブルのプログラムの配信を行う。なお、ここでのテーブルとは、上述したデータ変換テーブル160、自動緊急ブレーキ警報制動テーブル120、操舵制御テーブル130、カーブ警報制動テーブル140を指す。
【0117】
そして、車両1は、通信機能を有するTCU44を介し、顧客情報、車両情報、荷台型式、テーブル形式をデータセンタ80に送信し、データセンタ80からOTAのプログラムを受信する。そして、CGW30のOTA管理部33は、受信したOTAのプログラムを解読し、ADAS ECU10の不揮発メモリの決められたアドレスに、各テーブル120、130、140、160のデータの書き込みを行う。図では分散しているが、一つの不揮発メモリに配置されてもよい。これによって、データセンタ80からOTAを介し、各テーブルへのデータの書き込みを行うことができるので、テーブルのデータを容易に取得することができる。
【0118】
このとき、テーブルに限らず、荷台型式に対応した荷台情報及び荷台CANデータをOTAとしてADAS ECU10の荷台CANDB17と荷台情報記憶部18への書き込みを行うことで、荷台情報及び荷台CANデータを取得するのが好ましい。また、荷台情報は荷台型式のような必要最低限の情報でよいので、荷台3に取り付けたバーコードから必要最低限の情報を取得するという手段にしてもよい。
【0119】
このようにすれば、必要に応じてデータセンタ80から各テーブルのデータ、荷台情報荷台CANデータを容易に取得することができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0121】
1:車両、2:牽引車、3:荷台、4:連結部、5:ハーネス、6:コネクタ、7:リアカメラ、8:第1外界センサ、9:第2外界センサ、10:ADAS ECU、11:制御アプリ部、12:自動緊急ブレーキ制御部、13:車線変更時衝突軽減制御部、14:カーブ警告減速制御部、15:IF部、16:フュージョン部、17:荷台CANDB、18:荷台情報記憶部、20:管理ECU、21:処理部、22:IF部、23:ROM、30:CGW、31:バス管理部、32:中継部、33:OTA管理部、34:荷台情報記憶部、35:荷台CANDB、41:ブレーキ制御ECU、42:操舵制御ECU、43:駆動力制御ECU、44:TCU、45:MPU、46:HMI、50,51,52,53:CANバス