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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】改善されたT細胞受容体共刺激分子キメラ
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20250307BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250307BHJP
   A61K 35/17 20250101ALI20250307BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250307BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250307BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20250307BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20250307BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
C07K19/00
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N5/0783
【請求項の数】 54
(21)【出願番号】P 2023509453
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2021091897
(87)【国際公開番号】W WO2021223707
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】202010377726.2
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010449454.2
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011549176.4
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522260986
【氏名又は名称】ブリスター イムノテック リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】513244281
【氏名又は名称】チンファ ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジアシェン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, リ
(72)【発明者】
【氏名】ジア, レメイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ユエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, シュエチアン
(72)【発明者】
【氏名】ルイ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, ジーシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, グァンナ
(72)【発明者】
【氏名】リン, シン
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500848(JP,A)
【文献】国際公開第2018/200582(WO,A1)
【文献】特表2020-506700(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110964122(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110818802(CN,A)
【文献】特表2017-524372(JP,A)
【文献】J Biol Chem.,1994年,Vol. 269, No. 36,pp. 22758-22763
【文献】Eur J Immnol.,1997年,Vol. 27,pp. 1433-1441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/0-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変T細胞受容体(TCR)であって、
前記TCRが、TCRα鎖及びTCRβ鎖を含み、少なくとも1つのOX40が、前記TCRα鎖及びTCRβ鎖のうちの少なくとも1つのC末端に接続しており、
前記TCRα鎖が、第1の標的結合領域及び第1の定常領域を含み、前記TCRβ鎖が、第2の標的結合領域及び第2の定常領域を含み、
前記第1及び/又は第2の標的結合領域が抗原結合領域である
改変T細胞受容体。
【請求項2】
前記抗原結合領域が、
i)抗体、
ii)受容体、又は
iii)リガンド
に由来する、請求項1に記載の改変T細胞受容体。
【請求項3】
前記TCRα鎖及びTCRβ鎖のうちの少なくとも1つの天然のエンドドメインが欠失している、請求項1又は2に記載の改変T細胞受容体。
【請求項4】
前記OX40が、前記天然のエンドドメインが欠失している前記TCRα鎖及びTCRβ鎖のうちの少なくとも1つのC末端に直接又はリンカーを介して連結されている、請求項3に記載の改変T細胞受容体。
【請求項5】
前記リンカーが(GS)nであり、式中、nが1~10の整数を表す、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項6】
nが3である、請求項5に記載の改変T細胞受容体。
【請求項7】
少なくとも1つのOX40が、TCRα鎖及びTCRβ鎖のうちの1つのみのC末端に接続している、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項8】
少なくとも1つのOX40が、TCRα鎖のC末端に接続している、請求項7に記載の改変T細胞受容体。
【請求項9】
前記TCRα鎖の天然のエンドドメインが欠失している、請求項8に記載の改変T細胞受容体。
【請求項10】
前記OX40が、前記天然のエンドドメインが欠失している前記TCRα鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結されている、請求項9に記載の改変T細胞受容体。
【請求項11】
前記リンカーが(GS)nであり、式中、nが1~10の整数を表す、請求項10に記載の改変T細胞受容体。
【請求項12】
nが3である、請求項11に記載の改変T細胞受容体。
【請求項13】
少なくとも1つのOX40が、TCRβ鎖のC末端に接続している、請求項7に記載の改変T細胞受容体。
【請求項14】
前記TCRβ鎖の天然のエンドドメインが欠失している、請求項13に記載の改変T細胞受容体。
【請求項15】
前記OX40が、前記天然のエンドドメインが欠失している前記TCRβ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結されている、請求項14に記載の改変T細胞受容体。
【請求項16】
前記リンカーが(GS)nであり、式中、nが1~10の整数を表す、請求項15に記載の改変T細胞受容体。
【請求項17】
nが3である、請求項16に記載の改変T細胞受容体。
【請求項18】
少なくとも1つのOX40が、TCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれのC末端に接続している、請求項1~5のいずれか一項記載の改変T細胞受容体。
【請求項19】
前記TCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれの天然のエンドドメインが欠失している、請求項18に記載の改変T細胞受容体。
【請求項20】
前記OX40が、前記天然のエンドドメインがそれぞれ欠失しているTCRα鎖及びTCRβ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して接続している、請求項19に記載の改変T細胞受容体。
【請求項21】
前記リンカーが(GS)nであり、式中、nが1~10の整数を表す、請求項20に記載の改変T細胞受容体。
【請求項22】
nが3である、請求項21に記載の改変T細胞受容体。
【請求項23】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のOX40が、TCRα鎖及びTCRβ鎖の少なくとも1つのC末端に接続している、請求項1~22のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項24】
前記第1の定常領域が天然のヒトTCRα鎖定常領域又は天然のマウスTCRα鎖定常領域である、請求項1~23のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項25】
前記第1の定常領域が、改変TCRα鎖定常領域である、請求項1~24のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項26】
前記改変TCRα鎖定常領域が、48位のアミノ酸であるトレオニン(T)がシステイン(C)に変異しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する、請求項25に記載の改変T細胞受容体。
【請求項27】
記改変TCRα鎖定常領域が、112位のアミノ酸であるセリン(S)がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸であるメチオニン(M)がイソロイシン(I)に変異しており、115位のアミノ酸であるグリシン(G)がバリン(V)に変異しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する、請求項25に記載の改変T細胞受容体。
【請求項28】
前記改変TCRα鎖定常領域が、マウスTCRα鎖定常領域に由来し、6位のアミノ酸であるEがDで置換され、13位のKがRで置換され、15~18位のアミノ酸が欠失している、請求項25に記載の改変T細胞受容体。
【請求項29】
前記改変TCRα鎖定常領域が、マウスTCRα鎖定常領域に由来し、48位のアミノ酸であるトレオニン(T)がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸であるセリン(S)がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸であるメチオニン(M)がイソロイシン(I)に変異しており、115位のアミノ酸であるグリシン(G)がバリン(V)に変異している、請求項25に記載の改変T細胞受容体。
【請求項30】
前記改変TCRα鎖定常領域が、マウスTCRα鎖定常領域に由来し、6位のアミノ酸であるEがDで置換されており、13位のKがRで置換されており、15~18位のアミノ酸が欠失しており、48位のアミノ酸であるトレオニン(T)がシステイン(C)に変異しており、112位のアミノ酸であるセリン(S)がロイシン(L)に変異しており、114位のアミノ酸であるメチオニン(M)がイソロイシン(I)に変異しており、115位のアミノ酸であるグリシン(G)がバリン(V)に変異している、請求項25に記載の改変T細胞受容体。
【請求項31】
前記第1の定常領域が、配列番号1、3、5、7、8、26、41、42及び56のうちの1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項32】
前記第2の定常領域が天然のヒトTCRβ鎖定常領域又は天然のマウスTCRβ鎖定常領域である、請求項1~31のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項33】
前記第2の定常領域が、改変TCRβ鎖定常領域である、請求項1~31のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項34】
前記改変TCRβ鎖定常領域が、56位のアミノ酸であるセリン(S)がシステイン(C)に変異しているマウスTCRβ鎖定常領域に由来する、請求項33に記載の改変T細胞受容体。
【請求項35】
前記改変TCRβ鎖定常領域が、マウスTCRβ鎖定常領域に由来し、3位のアミノ酸であるRがKに置換され、6位のアミノ酸であるTがFに置換され、9位のKがEに置換され、11位のSがAに置換され、12位のLがVに置換され、17、21~25位のアミノ酸が欠失している、請求項33に記載の改変T細胞受容体。
【請求項36】
前記改変TCRβ鎖定常領域が、マウスTCRβ鎖定常領域に由来し、56位のアミノ酸であるセリン(S)がシステイン(C)に変異しており、3位のアミノ酸であるRがKに置換され、6位のアミノ酸であるTがFに置換され、9位のKがEに置換され、11位のSがAに置換され、12位のLがVに置換され、17、21~25位のアミノ酸が欠失している、請求項33に記載の改変T細胞受容体。
【請求項37】
前記改変TCRβ鎖定常領域が、配列番号2、4、6、9、27、43及び57のうちの1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項38】
前記第1の標的結合領域及び前記第2の標的結合領域が独立して又は組み合わせて標的抗原に特異的に結合する、請求項1~37のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項39】
前記標的抗原が、ホスファチジルイノシトールプロテオグリカン3(GPC3)、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、CD138、ErbB2(HER2/neu)、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α胎児グロブリン(AFP)、外因性レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、Prostein、PSMA、生存及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF1)-I、IGF-II、IGFI受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合遺伝子(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍マトリックス抗原、フィブロネクチンのエクトドメインA(EDA)及びエクトドメインB(EDB)、テネイシン-CのA1ドメイン(TnC A1)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、Foxp3、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、内皮因子、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)及びFCRL5(UNIPROT Q68SN8)からなる群から選択される癌関連抗原である、請求項38に記載の改変T細胞受容体。
【請求項40】
前記第1の標的結合領域が、標的抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含み、前記第2の標的結合領域が、前記抗体の軽鎖可変領域を含み、又は前記第1の標的結合領域が、標的抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含み、前記第2の標的結合領域が、前記抗体の重鎖可変領域を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項41】
i)第1の標的結合領域は配列番号50に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、かつ第2の標的結合領域は配列番号51に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むか、若しくは、第1の標的結合領域は配列番号51に示されるように軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、かつ第2の標的結合領域は配列番号50に示されるように重鎖可変領域アミノ酸配列を含むか;又は
ii)第1の標的結合領域は配列番号54に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、かつ第2の標的結合領域は配列番号55に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含むか、若しくは、第1の標的結合領域は配列番号55に示されるように軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、かつ第2の標的結合領域は配列番号54に示されるように重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、
それにより改変T細胞受容体がCD19に特異的に結合する、請求項1~40のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項42】
前記第1の標的結合領域が、標的抗原に特異的に結合する一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含み、及び/又は前記第2の標的結合領域が、標的抗原に特異的に結合する一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体。
【請求項43】
i)第1の標的結合領域及び/又は第2の標的結合領域が、配列番号50に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号51に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含むか;及び/又は
ii)第1の標的結合領域及び/又は第2の標的結合領域が、配列番号54に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号55に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含み、
それにより改変T細胞受容体がCD19に特異的に結合する、請求項42に記載の改変T細胞受容体。
【請求項44】
前記一本鎖抗体が、リンカーによって連結された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項42又は43に記載の改変T細胞受容体。
【請求項45】
リンカーが(GS)nである、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項46】
nが1又は3である、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項47】
前記第1の標的結合領域及び前記第2の標的結合領域が同じ標的抗原に結合する、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項48】
前記第1の標的結合領域及び前記第2の標的結合領域が前記同じ標的抗原の異なる領域に結合する、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項49】
前記第1の標的結合領域及び前記第2の標的結合領域が異なる標的抗原に結合する、請求項4に記載の改変T細胞受容体。
【請求項50】
請求項1~4のいずれか一項に記載の改変T細胞受容体を含む単離された治療用免疫細胞。
【請求項51】
T細胞又はNK細胞である、請求項50に記載の治療用免疫細胞。
【請求項52】
請求項50又は51に記載の治療用T細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項53】
対象における疾患を治療するための薬物の調製における、請求項50若しくは51に記載の治療用T細胞又は請求項52に記載の医薬組成物の使用。
【請求項54】
疾患が癌である、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学の分野、改善されたT細胞受容体-共刺激分子キメラ、特に共刺激分子を含むT細胞受容体(TCR)又はTCR複合体、TCR又はTCR複合体を含む免疫細胞、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞療法、特にT細胞関連療法が今年急速に発展しており、その中でもキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法及びTCR-T療法が大きな注目を集めている。
【0003】
CAR-T療法は、T細胞におけるCAR分子の発現に基づく。CAR分子は、抗体由来の抗原認識ドメインであり、標的抗原の認識を担うエクトドメイン;膜貫通ドメイン;及びT細胞受容体に由来するシグナル分子及び共刺激シグナル分子であり、刺激を受けた後にT細胞活性化シグナルを伝達する役割を果たすエンドドメインの3つの部分からなる。CAR分子がその対応する抗原に結合すると、それらは凝集し、T細胞のエフェクター機能を開始し、標的腫瘍細胞を殺傷させる。
【0004】
TCR-T療法は、T細胞受容体(TCR)に基づく。TCRはT細胞の同一性であり、TCRの種類に基づいてαβT細胞とγδT細胞とに分けることができる。発生において、T前駆細胞は、TCRγ鎖及びTCRδ鎖においてVDJ再編成を受け、これは、再編成が成功した場合、γδT細胞に発達するか、又は再編成が失敗して終わる場合、TCRα鎖及びTCRβ鎖においてVDJ組換えを受け、次いでαβT細胞に発達する。αβT細胞は末梢血T細胞の90%~95%を占め、γδT細胞は末梢血T細胞の5%~10%を占める。2種類のT細胞は、それぞれMHC拘束性及びMHC非拘束性の方法で抗原を認識し、病原体及び腫瘍に対する免疫において重要な役割を果たす。
【0005】
T細胞受容体(TCR)複合体分子は複数の鎖を含み、TCRα鎖及びTCRβ鎖(又はTCRγ鎖及びTCRδ鎖)はMHCポリペプチド分子の認識を担い、他の6つのCD3サブユニットはTCRα/β鎖(又はTCRγ/δ鎖)に結合してシグナル伝達の役割を果たす。天然のTCR複合体は10個のITAMシグナル配列を含み、これは理論上CARよりも強いシグナルを伝達することができる。天然のTCRのシグナル伝達機能を利用することにより、T細胞障害を緩和するための新しい受容体を構築することが可能であり、これはより良好な抗固形腫瘍の役割を果たすことができる。TCRのエクトドメインは、抗体のFabドメインと非常に類似しているため、TCRの可変領域配列を抗体の可変領域配列で置き換えて、抗体特異性を有するだけでなく、T細胞活性化を媒介することに対する天然TCRの優れたシグナル伝達機能も有する合成TCR及び抗原受容体(STAR)を得ることができる。
【0006】
しかしながら、天然のTCRに由来するSTAR-Tは、T細胞活性化における共刺激シグナルを欠き、その増殖及び活性化能がしばしば影響を受ける。したがって、この分野では、改善されたTCR及び対応するTCR-T療法が依然として必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】定常領域システイン改変、膜貫通ドメイン及びエンドドメイン改変によるSTARの最適化の概略図である。
図2】共刺激分子受容体エンドドメインをα鎖及び/又はβ鎖に付加することによるSTARの最適化の概略図である。
図3】α鎖及び/又はβ鎖エンドドメインの欠失後に、共刺激分子受容体エンドドメインを直接又はリンカーを介して付加することによるSTARの最適化の概略図である。
図4】共刺激分子受容体エンドドメインをCD3サブユニットに付加することによるSTARの最適化の概略図である。
図5】サイトカイン受容体シグナル伝達ドメインをα鎖及び/又はβ鎖に付加することによるSTARの最適化の概略図である。
図6】WT-STAR T細胞とmut-STAR T細胞との腫瘍標的細胞殺傷能の比較の図である。
図7】異なるエフェクター対標的(E:T)比でのSTAR-T細胞の標的殺傷能力に対する異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図8】異なる共培養時間でのSTAR-T細胞の標的殺傷能力に対する異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図9】異なるE:T比でのSTAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、α鎖、β鎖、α鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図10】異なる共培養時間でのSTAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、α鎖、β鎖、α鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図11】STAR-T細胞のサイトカイン分泌に対する異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図12】STAR-T細胞の増殖に対する異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図13】STAR-T細胞の標的殺傷能に対する、α鎖、β鎖、α鎖及びβ鎖に付加されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図14】TCRα鎖に連結された異なる共刺激受容体エンドドメインを有するmut-STARの腫瘍殺傷能力の図である。
図15】STAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、異なるCD3サブユニットに付加された異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図16】STAR-T細胞の増殖に対する、異なるCD3サブユニットに付加された異なる共刺激受容体エンドドメインの効果の図である。
図17】STAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失α鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図18】STAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失β鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図19】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失α鎖及び/又はβ鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図20】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失α鎖及び/又はβ鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果の図である。
図21】セントラルメモリーT細胞分化に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失α鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果を示す図である。
図22】T細胞分化に対する、異なるG4Sリンカーを介してエンドドメイン欠失α鎖に連結されたOX40エンドドメインの効果を示す図である。
図23】STAR-T細胞の標的殺傷能力に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリジン改変の効果の図である。
図24】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリジン改変の効果の図である。
図25】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリジン改変の効果の図である。
図26】セントラルメモリーT細胞分化に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリジン改変の効果の図である。
図27】T細胞分化に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるリジン改変の効果の図である。
図28】STAR-T細胞の標的殺傷能力に対する、α鎖及び/又はβ鎖に連結された異なるサイトカイン受容体シグナル伝達形質導入ドメインの効果の図である。
図29】接続された異なるサイトカイン受容体刺激ドメインを有する変異型STARとα-del-(G4S)3-OX40-STARとの間の殺傷効果の比較の図である。
図30】STAR-T細胞のIL-2分泌に対する、α鎖及び/又はβ鎖に連結された異なるサイトカイン受容体シグナル伝達形質導入ドメインの効果の図である。
図31】STAR-T細胞のIFN-γ分泌に対する、α鎖及び/又はβ鎖に連結された異なるサイトカイン受容体シグナル伝達形質導入ドメインの効果の図である。
図32】セントラルメモリーT細胞分化に対する、α鎖及び/又はβ鎖に連結された様々なサイトカイン受容体シグナル伝達形質導入ドメインの効果の図である。
図33】T細胞分化に対する、α鎖及び/又はβ鎖に連結された様々なサイトカイン受容体シグナル伝達形質導入ドメインの効果の図である。
図34】インビボでのマウス腫瘍モデルにおけるαβ OX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tの抗腫瘍インビボ効果の図である。
図35】αβ OX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tを投与したマウスの生存曲線の図である。
図36】マウスにおけるαβ OX40-STAR T、mut-STAR T及びCAR-Tのインビボ増殖の図である。
図37】マウス腫瘍モデルにおける異なるSTAR構造及びCAR-Tの抗腫瘍インビボ効果の図である。
図38】αβTCRと定常領域変異体の模式図である。
図39】armored-TCRの例示的な模式図である。
図40】armored-CD3の例示的な模式図である。
図41】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、異なるTCR定常領域に組み込まれた共刺激エンドドメインを有するarmored-TCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。
図42】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、異なる共刺激ドメインによって改変されたarmored-TCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。A:E141-TCR;B:E315-TCR。
図43】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、TCR分子のエンドドメインが欠失しているか又は欠失していない(G4S)nリンカー含armored-TCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。
図44】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、4-1BBエンドドメインに接続したTCRα鎖、TCRβ鎖、又はTCRα鎖及びTCRβ鎖を有するarmored-TCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。A:E141-TCR;B:E315-TCR。
図45】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、OX40エンドドメインに接続したTCRα鎖、TCRβ鎖、又はTCRα鎖及びTCRβ鎖を有するarmored-TCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。A:E141-TCR;B:E315-TCR。
図46】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、TCRα、αβの欠失又はCD3δ分子への付加を伴う又は伴わない、TCR-T細胞増殖及び標的細胞殺傷能力に対する、G4Sリンカーによって連結されたOX40及びCD40細胞内ドメインの効果の図である。
図47】armored-TCR T細胞機能の評価のためのマウス腫瘍モデルの実験スキーム及び腫瘍進行のインビボイメージング結果の図である。
図48】マウスにおけるヒトTCR T細胞の増殖の統計グラフである。
図49】armored-TCR T細胞の再注入後の担癌マウスの生存曲線の図である。
図50】インビトロでの過剰な標的細胞による長期刺激下での、armored-CD3分子を発現するTCR T細胞の増殖及び殺傷能力の図である。
図51】インビトロでの7日間の過剰な標的細胞刺激後の、armored-CD3分子を発現するTCR T細胞の殺傷能力の検出の図である。
図52】インビトロでの7日間の過剰な標的細胞刺激後の、armored-CD3分子を発現するTCR T細胞からのIFNγ放出の図である。
図53】armored-CD3分子を発現するTCR T細胞の機能の評価のためのマウス腫瘍モデルの実験スキーム及び腫瘍進行のインビボイメージング結果の図である。
図54】マウスにおけるヒトarmored-CD3を発現するTCR T細胞の増殖の統計グラフである。
図55】armored-TCR T細胞の再注入後の担癌マウスの生存曲線の図である。
図56】TCRγ鎖、TCRδ鎖、TCRγ及びδ鎖の定常領域C末端に直接連結されるか、G4Sリンカーを介してTCRγ鎖及びδ鎖のC末端に直接連結されるか、又は細胞内アミノ酸が欠失したTCRγ鎖及びδ鎖のC末端に連結されたOX40エンドドメインを有するγδTCR T細胞の殺傷能に対する効果の図である。
図57】TCRγ鎖、TCRδ鎖、TCRγ及びδ鎖の定常領域C末端に直接連結されるか、G4Sリンカーを介してTCRγ鎖及びδ鎖のC末端に直接連結されるか、又は細胞内アミノ酸が欠失したTCRγ鎖及びδ鎖のC末端に連結されたOX40エンドドメインを有するγδTCR T細胞のIFNγ分泌に対する効果の図である。
図58】定常領域システイン改変、膜貫通ドメイン及びN末端再編成によるSTARの最適化の概略図である。
図59】共刺激分子ドメインとSTAR構造との連結位置の例の図である。α鎖への接続のみが示されている。
図60】共刺激分子ドメインを含むSTAR構造の例の図である。
図61】共刺激因子を含むSTAR及びSTARの殺傷能力の図である。
図62】共刺激因子を含むSTAR及び複数のSTARの増殖シグナルに関連する核RelBレベルの図である。
図63】異なるSTARに対する抗CD19の結果の図である。
図64】異なるSTARに対する抗CD19及びCD20の結果の図である。
【発明の詳細な説明】
【0008】
別段の指示又は定義がない限り、使用される全ての用語は、当業者によって理解されるように、当分野で共通の意味を有する。例えば、Sambrook et al.,’’Molecular cloning:a laboratory manual’’;Lewin,’’Genes VIII’’、及びRoitt et al.,’’Immunology’’(8nd edition)等の標準マニュアル、及び本明細書に引用される一般的な先行技術を参照されたく、更に、特に明記しない限り、具体的に詳述されていない全ての方法、ステップ、技術及び動作は、それ自体公知の方法で実行されてもよく、実行され、当業者には理解されるであろう。また、例えば、標準マニュアル、上記の一般的な先行技術、及びそこに引用されている他の参考文献を参照されたい。
【0009】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、その用語に関連する項目の全ての組合わせを包含し、本明細書で別個に列挙されたと見なされるものとする。例えば、「A及び/又はB」は、「A」、「A及びB」、「B」を網羅する。例えば、「A、B及び/又はC」は、「A」、「B」、「C」、「A及びB」、「A及びC」、「B及びC」、及び「A及びB及びC」を網羅する。
【0010】
「含む」という用語は、本明細書では、タンパク質又は核酸の配列を記載するために使用され、前記配列からなり得るか、又は前記タンパク質又は核酸の一方又は両方の末端に追加のアミノ酸又はヌクレオチドを有し得るが、依然として本明細書に記載の活性を有する。更に、当業者は、ポリペプチドのN末端の開始コドンによってコードされるメチオニンが、特定の実際の状況(例えば、特定の発現系で発現される場合)では保持されるが、ポリペプチドの機能に実質的に影響を及ぼさないことを理解するであろう。したがって、特定のポリペプチドアミノ酸配列の説明では、それはそのN末端に開始コドンによってコードされるメチオニンを含有し得ないが、その時点までにメチオニンを含む配列を依然として包含し、それに対応して、そのコードヌクレオチド配列はまた、開始コドンを含有し得、逆もまた同様である。
【0011】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸番号が配列番号xを参照している」(配列番号xは、本明細書に列挙される特定の配列である)は、記載される特定のアミノ酸の位置番号が、配列番号x上のそのアミノ酸に対応するアミノ酸の位置番号であることを意味する。異なるアミノ酸配列間のアミノ酸対応は、当技術分野で公知の配列アラインメント方法によって決定することができる。例えば、アミノ酸対応は、EMBL-EBIオンラインアライメントツール(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/)によって決定することができ、このツールでは、デフォルトパラメータを用いてNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用して2つの配列をアライメントすることができる。例えば、ポリペプチドのN末端から開始する46位のアラニンが、配列番号xの48位のアミノ酸と配列アライメントにおいてアライメントされる場合、ポリペプチド中のアミノ酸は、本明細書において「ポリペプチドの48位におけるアラニンであり、アミノ酸位置が、配列番号xを参照する」とも記載され得る。本発明において、α鎖定常領域に関するアミノ酸位置については、配列番号3を参照する。本発明において、β鎖定常領域に関するアミノ酸位置については、配列番号4を参照する。
【0012】
一態様では、改変T細胞受容体(TCR)複合体が本明細書で提供され、ここで、TCRはαβTCRであり得、αβTCR複合体は、TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζを含み、少なくとも1つの機能的ドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの少なくとも1つのC末端に接続しており、式中、TCRα鎖は第1の定常領域を含み、TCRβ鎖は第2の定常領域を含むか、又は
TCRは、γδTCRであり得、γδTCR複合体は、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζを含み、少なくとも1つの機能的ドメインは、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの少なくとも1つのC末端に接続しており、TCRγ鎖は第1の定常領域を含み、TCRδ鎖は第2の定常領域を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、TCRα鎖は第1の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態では、TCRβ鎖は、第2の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRα鎖は第1の標的結合領域を更に含み、TCRβ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、TCRγ鎖は第1の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRδ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRγ鎖は第1の標的結合領域を更に含み、TCRδ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。
【0015】
一般に、TCRでは、標的結合領域は定常領域のN末端に配置され、その両方は直接又はリンカーを介して接続することができる。
【0016】
一態様では、改変T細胞受容体(TCR)が本明細書で提供され、ここで、TCRは、TCRα鎖及びβ鎖を含むαβTCRであり得、少なくとも1つの機能的ドメインは、TCRα鎖及び/又はβ鎖のC末端に接続しており、式中、TCRα鎖は第1の定常領域を含み、TCRβ鎖は第2の定常領域を含むか、又は
TCRは、TCRγ鎖及びδ鎖を含むγδTCRであり得、少なくとも1つの機能的ドメインは、TCRγ鎖及び/又はδ鎖のC末端に接続しており、式中、TCRγ鎖は第1の定常領域を含み、TCRδ鎖は第2の定常領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、TCRα鎖は第1の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態では、TCRβ鎖は、第2の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRα鎖は第1の標的結合領域を更に含み、TCRβ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、TCRγ鎖は第1の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRδ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。いくつかの実施形態において、TCRγ鎖は第1の標的結合領域を更に含み、TCRδ鎖は第2の標的結合領域を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、αβTCR複合体中のTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの少なくとも1つの天然のエンドドメインが欠失しているか、又はγδTCR複合体中のTCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの少なくとも1つの天然のエンドドメインが欠失している。
【0020】
いくつかの実施形態では、αβTCR中のTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖の天然のエンドドメインが欠失しているか、又はγδTCR複合体中のTCRγ鎖及び/又はTCRδ鎖の天然のエンドドメインが欠失している。
【0021】
いくつかの実施形態では、αβTCR複合体において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの少なくとも1つのC末端に、直接又はリンカーを介して連結されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、αβTCR複合体において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRα鎖及びTCRβ鎖のC末端に直接又はリンカーを介して連結される。
【0023】
いくつかの実施形態では、γδTCR複合体において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの少なくとも1つのC末端に、直接又はリンカーを介して連結されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、γδTCR複合体において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRγ鎖、TCRδ鎖の少なくとも1つのC末端に直接又はリンカーを介して接続される。
【0025】
いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表す。好ましくは、nは1~6の整数であり、より好ましくはnは2~5の整数であり、最も好ましくはnは3である。
【0026】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR複合体においてTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの1つのC末端に接続している。
【0027】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR中のTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖のC末端に接続している。
【0028】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR複合体においてTCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの1つのC末端に接続している。
【0029】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR中のTCRγ鎖及び/又はTCRδ鎖のC末端に接続している。
【0030】
いくつかの実施形態では、TCR複合体中のCD3δ、CD3γ、CD3ε及びCD3ζは、そのC末端に更に接続された少なくとも1つの機能的ドメインを含まない。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR複合体中のTCRα鎖のC末端に接続している。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCRのTCRα鎖のC末端に接続している。
【0033】
いくつかの実施形態において、TCRα鎖の天然のエンドドメインは、欠失している。
【0034】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRα鎖のC末端に直接、又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0035】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR複合体中のTCRβ鎖のC末端に接続している。
【0036】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCRのTCRβ鎖のC末端に接続している。
【0037】
いくつかの実施形態において、TCRβ鎖の天然のエンドドメインは、欠失している。
【0038】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRβ鎖のC末端に直接、又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0039】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR複合体中のTCRγ鎖のC末端に接続している。
【0040】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCRにおいてTCRγ鎖のC末端に接続している。
【0041】
いくつかの実施形態において、TCRγ鎖の天然のエンドドメインは、欠失している。
【0042】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRγ鎖のC末端に直接、又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0043】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR複合体中のTCRδ鎖のC末端に接続している。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCRにおいてTCRδ鎖のC末端に接続している。
【0045】
いくつかの実施形態において、TCRδ鎖の天然のエンドドメインは、欠失している。
【0046】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRδ鎖のC末端に直接、又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0047】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR複合体においてTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの2つのC末端に接続している。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR複合体においてTCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの2つのC末端に接続している。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCR複合体中のTCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれのC末端に接続している。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、αβTCRのTCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれのC末端に接続している。
【0051】
いくつかの実施形態において、TCRα鎖及びTCRβ鎖のそれぞれの天然のエンドドメインは、欠失している。
【0052】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRα鎖及びTCRβ鎖の各々のC末端に直接又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCR複合体中のTCRγ鎖及びTCRδ鎖のそれぞれのC末端に接続している。
【0054】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの機能的ドメインは、γδTCRのTCRγ鎖及びTCRδ鎖のそれぞれのC末端に接続している。
【0055】
いくつかの実施形態において、TCRγ鎖及びTCRδ鎖のそれぞれの天然のエンドドメインは、欠失される。
【0056】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、天然のエンドドメインが欠失しているTCRγ鎖及びTCRδ鎖の各々のC末端に直接又はリンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~5の整数を表し、最も好ましくはnは3である。
【0057】
いくつかの実施形態では、αβTCR複合体中のTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの2つ以上は、同じ又は異なる機能的ドメインと接続している。
【0058】
いくつかの実施形態では、αβTCR中のTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖は、同じ又は異なる機能的ドメインに接続されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、γδTCR複合体中のTCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの2つ以上は、同じ又は異なる機能的ドメインに接続されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、γδTCR中のTCRγ鎖及び/又はTCRδ鎖は、同じ又は異なる機能的ドメインに接続されている。
【0061】
いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える機能的ドメインが、αβTCR複合体におけるTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの少なくとも1つのC末端に接続している。
【0062】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える機能的ドメインが、αβTCR中のTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖のC末端に接続している。
【0063】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える機能的ドメインが、γδTCR複合体中のTCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの少なくとも1つのC末端に接続している。
【0064】
いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える機能的ドメインが、γδTCR中のTCRγ鎖及び/又はTCRδ鎖のC末端に接続している。
【0065】
いくつかの実施形態では、共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインは、複合体中のTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの1、2、3、4、5又は6つのC末端に結合している。
【0066】
いくつかの実施形態では、共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインは、複合体中のTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの1つのC末端に結合している。
【0067】
例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの機能的ドメイン(例えば、共刺激分子エンドドメイン等)が複合体におけるTCRα鎖のC末端に接続される。いくつかの好ましい実施形態において、共刺激分子エンドドメインはOX40又はICOSである。いくつかの実施形態では、TCRβ鎖、CD3δ、CD3γ、CD3ε及びCD3ζは、そのC末端に更に結合した共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインを含まない。
【0068】
あるいは、いくつかの実施形態において、共刺激分子エンドドメイン等少なくとも1つの機能的ドメインが複合体におけるCD3δのC末端に接続される。いくつかの実施形態において、TCRα、TCRβ、CD3γ、CD3ε及びCD3ζは、そのC末端に接続した、共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインを含有しない。
【0069】
いくつかの実施形態では、共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインは、複合体中のTCRα鎖、TCRβ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζの2つのC末端に結合している。
【0070】
例えば、いくつかの実施形態では、共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインは、複合体中のTCRα鎖及びTCRβ鎖のC末端に結合している。いくつかの好ましい実施形態において、共刺激分子エンドドメインはOX40又はICOSである。いくつかの実施形態では、CD3δ、CD3γ、CD3ε及びCD3ζは、そのC末端に更に結合した共刺激分子エンドドメイン等の少なくとも1つの機能的ドメインを含まない。
【0071】
いくつかの実施形態では、機能的ドメインは外因性機能的ドメインである。いくつかの実施形態において、機能的ドメインは外因性エンドドメイン、例えば細胞内形質導入機能を担うドメインである。
【0072】
本明細書で使用される場合、「外因性」は、外来種に由来するタンパク質又は核酸配列を意味するか、又は同じ種に由来する場合、意図的なヒトの介入によってその天然の形態から組成及び/又は位置の有意な変化を受けたタンパク質又は核酸配列を意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「機能的ドメイン」は、CD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB、CD27、及びCD137等の共刺激分子のエンドドメイン;又はTIM3、PD1、CTLA4及びLAG3等の共阻害分子のエンドドメイン;又はインターロイキン受容体(例えば、IL-2受容体、IL-7α受容体、又はIL-21受容体)、インターフェロン受容体、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体、コロニー刺激因子受容体、ケモカイン受容体、成長因子受容体、若しくは他の膜タンパク質等のサイトカイン受容体のエンドドメイン、又はNIK等の細胞内タンパク質のドメインから選択される。機能的ドメインはまた、サイトカイン受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分(配列番号35に示されるアミノ酸配列)との直接又はリンカー(例えば、(G4S)n(式中、nは1~10の整数を表す))を介したいずれかの融合であり得る。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態において、機能的ドメインは、共刺激分子エンドドメイン、好ましくはOX40又はICOSエンドドメイン、より好ましくはOX40エンドドメインである。
【0075】
例示的なCD40エンドドメインは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含有する。例示的なOX40エンドドメインは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む。例示的なICOSエンドドメインは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含有する。例示的なCD28エンドドメインは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含有する。例示的な4-1BBエンドドメインは、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む。例示的なCD27エンドドメインは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含有する。例示的なIL-2β受容体エンドドメインは、配列番号32に示されるアミノ酸配列を含む。例示的なIL-17α受容体エンドドメインは、配列番号33に示されるアミノ酸配列を含む。例示的なIL-21受容体エンドドメインは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含有する。IL-2β受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分との例示的な融合アミノ酸配列を配列番号36に示す。IL-17α受容体エンドドメインとヒトSTAT5活性化部分との例示的な融合アミノ酸配列を配列番号37に示す。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1の定常領域は天然のTCRα鎖定常領域であり、例えば天然のヒトTCRα鎖定常領域(例示的なヒトTCRα鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号1に示す)若しくは天然のマウスTCRα鎖定常領域(例示的なマウスTCRα鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号3に示す)であり、又は第1の定常領域は、天然のTCRγ鎖定常領域、例えば、天然のヒトTCRγ鎖定常領域(例示的なヒトTCRγ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号58に示す)若しくは天然のマウスTCRγ鎖定常領域(例示的なマウスTCRγ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号59に示す)である。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1の定常領域は、改変TCRα鎖定常領域又は改変TCRγ鎖定常領域である。
【0078】
いくつかの実施形態では、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、トレオニン(T)等の48位のアミノ酸がシステイン(C)に変異しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0079】
いくつかの実施形態では、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、セリン(S)等の112位のアミノ酸がロイシン(L)に変異しており、メチオニン(M)等の114位のアミノ酸がイソロイシン(I)に変異しており、グリシン(G)等の115位のアミノ酸がバリン(V)に変異しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0080】
いくつかの実施形態では、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、6位のアミノ酸(例えば、E)がDで置換され、13位のKがRで置換され、15~18位のアミノ酸が欠失しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0081】
いくつかの実施形態では、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、チロシン(T)等の48位のアミノ酸がシステイン(C)に変異しており、セリン(S)等の112位のアミノ酸がロイシン(L)に変異しており、メチオニン(M)等の114位のアミノ酸がイソロイシン(I)に変異しており、グリシン(G)等の115位のアミノ酸がバリン(V)に変異している、マウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0082】
いくつかの実施形態では、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、6位のアミノ酸(例えば、E)がDに置換され、13位のKがRに置換され、15~18位のアミノ酸が欠失し、トレオニン(T)等の48位のアミノ酸がシステイン(C)に変異し、セリン(S)等の112位のアミノ酸がロイシン(L)に変異し、メチオニン(M)等の114位のアミノ酸がイソロイシン(I)に変異し、グリシン(G)等の115位のアミノ酸がバリン(V)に変異しているマウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0083】
いくつかの実施形態において、改変TCRα鎖定常領域は、野生型マウスTCRα鎖定常領域と比較して、定常領域エンドドメインが欠失している、例えば、136~137位のアミノ酸が欠失している、マウスTCRα鎖定常領域に由来する。
【0084】
いくつかの実施形態において、第1の定常領域は、配列番号1、3、5、7、8、26、41、42及び56のうちの1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2の定常領域は、天然のTCRβ鎖定常領域、例えば、天然のヒトTCRβ鎖定常領域(例示的なヒトTCRβ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号2に示す)若しくは天然のマウスTCRβ鎖定常領域(例示的なマウスTCRβ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号4に示す。)であるか、又は第2の定常領域は、天然のTCRδ鎖定常領域、例えば天然のヒトTCRδ鎖定常領域(例示的なヒトTCRδ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号60に示す)若しくは天然のマウスTCRδ鎖定常領域(例示的なマウスTCRδ鎖定常領域アミノ酸配列を配列番号61に示す)である。
【0086】
いくつかの実施形態において、第2の定常領域は、改変TCRβ鎖定常領域、又は改変TCRδ鎖定常領域である。
【0087】
いくつかの実施形態では、改変TCRβ鎖定常領域は、野生型マウスTCRβ鎖定常領域と比較して、トレオニン(S)等の56位のアミノ酸がシステイン(C)に変異しているマウスTCRβ鎖定常領域に由来する。
【0088】
いくつかの実施形態では、改変TCRβ鎖定常領域は、野生型マウスTCRβ鎖定常領域と比較して、6位のアミノ酸(例えば、R)がKに置換され、6位のアミノ酸(例えば、T)がFに置換され、9位のKがEに置換され、11位のSがAに置換され、12位のLがVに置換され、17及び21~25位のアミノ酸が欠失しているマウスTCRβ鎖定常領域に由来する。
【0089】
いくつかの実施形態では、改変TCRβ鎖定常領域は、野生型マウスTCRβ鎖定常領域と比較して、セリン(S)等の56位のアミノ酸がシステイン(C)に変異しており、3位のアミノ酸(例えば、R)がKに置換されており、6位のアミノ酸(例えば、T)がFに置換され、9位のKがEに置換され、11位のSがAに置換され、12位のLがVに置換されており、17位及び21~25位のアミノ酸が欠失している、マウスTCRβ鎖定常領域に由来する。
【0090】
いくつかの実施形態では、改変TCRβ鎖定常領域は、野生型マウスTCRβ鎖定常領域と比較して、定常領域エンドドメインが欠失している、例えば167~172位のアミノ酸が欠失しているマウスTCRβ鎖定常領域に由来する。
【0091】
いくつかの実施形態では、改変TCRβ鎖定常領域は、配列番号2、4、6、9、27、43、及び57のうちの1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
本明細書で使用される場合、「標的結合領域」は、標的分子に結合することができる(好ましくは特異的に結合する)ドメインを指す。いくつかの実施形態において、標的は抗原である。したがって、いくつかの実施形態において、標的結合領域は、「抗原結合領域」である。
【0093】
いくつかの実施形態では、標的結合領域(好ましい抗原結合領域)は、単独で、又は別の標的結合領域(好ましい抗原結合領域)と組み合わせて、標的分子(好ましい標的抗原)に特異的に結合し得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、第1の標的結合領域及び第2の標的結合領域は、標的抗原に特異的に結合するために互いに組み合わされる。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する抗体に由来する。いくつかの実施形態では、抗原結合領域はまた、受容体のリガンドが標的とされる抗原として機能し得る特異的受容体に由来し得る。例えば、特異的受容体は天然T細胞受容体であり得る。いくつかの実施形態において、抗原結合領域は天然T細胞受容体由来の可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合領域はまた、特に標的となる抗原が受容体である場合、リガンドに由来し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域は天然特異的T細胞受容体に由来する。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号44に示される可変領域を含み、第2の抗原結合領域は配列番号45に示される可変領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号46に示される可変領域を含み、第2の抗原結合領域は配列番号47に示される可変領域を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は配列番号48に示される可変領域を含み、第2の抗原結合領域は配列番号49に示される可変領域を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、疾患関連抗原、好ましくは癌関連抗原、例えばホスファチジルイノシトールプロテオグリカン3(GPC3)、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、CD138、ErbB2(HER2/neu)、癌胎児性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRバリアントIII(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、α胎児グロブリン(AFP)、外因性レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、Prostein、PSMA、生存及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン増殖因子(IGF1)-I、IGF-II、IGFI受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍マトリックス抗原、フィブロネクチンのエクトドメインA(EDA)及びエクトドメインB(EDB)、テネイシン-CのA1ドメイン(TnC A1)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、Foxp3、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、内皮因子、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)及びFCRL5(UNIPROT Q68SN8)からなる群から選択される癌関連抗原である。
【0098】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、RSVF(呼吸器合胞体ウイルスの予防)、PA(吸入炭疽)、CD4(HIV感染症)等の病原体に由来する抗原又は病原体に感染した細胞の表面抗原である。
【0099】
いくつかの実施形態では、標的抗原は、CD3(移植拒絶を含む)、CD25(腎移植の急性拒絶を含む)、C5(発作性夜間ヘモグロビン尿症を含む)、IL-1β(クリオピリン関連周期性症候群)、RANKL(癌関連骨損傷を含む)、フォン・ヴィルブランド因子(成人後天性血栓性血小板紫斑病を含む)、血漿カリクレイン(血管浮腫を含む)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体(成人片頭痛を含む)、FGF23(X連鎖低リン血症を含む)等の、細胞によって産生され分泌される疾患原因細胞又は分子である。
【0100】
抗原結合領域は、FMC63、リツキシマブ、アレムツズマブ、エプラツズマブ、トラスツズマブ、ビバツズマブ、セツキシマブ、ラベツズマブ、パリビズマブ、セビルマブ、ツビルマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、インフリキシマブ、オマリズマブ、エファリズマブ、ケリキシマブ、シプリズマブ、ナタリズマブ、クレノリキシマブ、ペムツモマブ、エドレコロマブ、カンツズマブ等の任意の市販の抗体を含む1つ以上の公知の抗体に由来し得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を含み、第2の抗原結合領域は、抗体の軽鎖可変領域を含み、又は第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域を含み、第2の抗原結合領域は、抗体の重鎖可変領域を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含み、及び/又は第2の抗原結合領域は、標的抗原に特異的に結合する一本鎖抗体又は単一ドメイン抗体を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、一本鎖抗体は、(G4S)n等のリンカーによって連結された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくはnは1又は3である。
【0104】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は同じ標的抗原に結合する。
【0105】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は同じ標的抗原の異なる領域(例えば異なるエピトープ)に結合する。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域及び第2の抗原結合領域は、異なる標的抗原に結合する。
【0107】
例えば、いくつかの例示的実施形態において、2つの抗原結合領域はそれぞれCD19及びCD20に、又はそれぞれCD19及びCD22に、又はそれぞれCD38及びBCMAに、又はそれぞれPDL1及びEGFRに結合し得る。いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域はCD19に特異的に結合する。
【0108】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は配列番号50に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号51に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、あるいは、第1の抗原結合領域は配列番号51に示されるように軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号50に示されるように重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、それによってTCR又はTCR複合体はCD19に特異的に結合する。
【0109】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は配列番号52に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号53に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、あるいは、第1の抗原結合領域は配列番号53に示される重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号52に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、それによってTCR又はTCR複合体はGPC3に特異的に結合する。
【0110】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は配列番号54に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号55に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、あるいは、第1の抗原結合領域は配列番号55に示されるように軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号54に示されるように重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、それによってTCR又はTCR複合体はCD19に特異的に結合する。
【0111】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は配列番号62に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号63に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、あるいは、第1の抗原結合領域は配列番号63に示されるように軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号62に示されるように重鎖可変領域アミノ酸配列を含み、それによってTCR又はTCR複合体はCD20に特異的に結合する。
【0112】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、配列番号50に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号51に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域はCD19に特異的に結合する。特定の実施形態において、配列番号50に示される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号51に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくはnは1又は3である。
【0113】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、配列番号62に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号63に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域はCD20に特異的に結合する。特定の実施形態において、配列番号62に示される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号63に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくはnは1又は3である。
【0114】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、配列番号52に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号53に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域はGPC3に特異的に結合する。特定の実施形態において、配列番号52に示される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号53に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくはnは1又は3である。
【0115】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域は、配列番号54に示す重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号55に示す軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む一本鎖抗体を含み、それによって第1の抗原結合領域及び/又は第2の抗原結合領域はCD19に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、配列番号54に示される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号55に示される軽鎖可変領域アミノ酸配列は、リンカーを介して接続される。いくつかの実施形態では、リンカーは(G4S)nであり、式中、nは1~10の整数を表し、好ましくはnは1又は3である。
【0116】
いくつかの実施形態において、第1の抗原結合領域は配列番号38に示すscFvアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号39に示すscFvアミノ酸配列を含み、あるいは、第1の抗原結合領域は配列番号39に示されるscFvアミノ酸配列を含み、第2の抗原結合領域は配列番号38に示されるscFvアミノ酸配列を含み、それによってTCR又はTCR複合体はCD19及びCD20の両方に特異的に結合する。
【0117】
いくつかの実施形態では、CD3γ、CD3δ、CD3ε及び/又はCD3ζはヒト化されている。いくつかの実施形態において、ヒトCD3γは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトCD3γは、配列番号29に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトCD3γは、配列番号30に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、ヒトCD3γは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含む。
【0118】
別の態様では、本発明の改変T細胞受容体(TCR)又はTCR複合体を含む単離された治療用免疫細胞が本明細書で提供される。
【0119】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。他の実施形態では、免疫細胞はNK細胞である。
【0120】
別の態様において、本発明は、上で定義されるようなTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供し、少なくとも1つの外因性機能性エンドドメインは、TCRα鎖、TCRβ鎖、TCRγ鎖、TCRδ鎖、CD3ε、CD3γ、CD3δ及びCD3ζのうちの少なくとも1つのC末端に接続している。
【0121】
別の態様では、本発明は、上に定義されるTCRをコードするヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0122】
いくつかの実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、そのC末端において少なくとも1つの共刺激分子エンドドメインに接続されているTCRα鎖及び/又はTCRβ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、i)α鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)β鎖をコードするヌクレオチド配列、及びiii)同じリーディングフレーム内のi)とii)との間に配置される自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。α鎖をコードするヌクレオチド配列は、β鎖をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端に配置され得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、単離されたポリヌクレオチドは、そのC末端において少なくとも1つの共刺激分子エンドドメインに接続されているTCRγ鎖及び/又はTCRδ鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、i)γ鎖をコードするヌクレオチド配列、ii)δ鎖をコードするヌクレオチド配列、及び同じ読み枠でiii)i)とii)との間に配置される自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。γ鎖をコードするヌクレオチド配列は、δ鎖をコードするヌクレオチド配列の5’末端又は3’末端に配置され得る。
【0126】
本明細書において、「自己開裂ペプチド」とは、細胞内で自己開裂を行うことができるペプチドを意味する。例えば、自己切断ペプチドは、細胞内のプロテアーゼによって認識され、特異的に切断されるように、プロテアーゼ認識部位を含み得る。
【0127】
あるいは、自己切断ペプチドは2Aポリペプチドであり得る。2Aポリペプチドは、ウイルス由来の短いペプチドの一種であり、その自己切断は翻訳中に起こる。2つの異なる標的タンパク質が2Aポリペプチドによって連結され、同じ読み枠で発現される場合、2つの標的タンパク質はほぼ1:1の比で生成される。一般的な2Aポリペプチドは、ブタテッショウウイルス(techovirus)-1由来のP2A、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス由来のT2A、ウマ鼻炎Aウイルス由来のE2A、及び口蹄疫ウイルス由来のF2Aであり得る。これらの中でも、P2Aが最も切断効率が高く、したがって好ましい。これらの2Aポリペプチドの様々な機能的変異体も当技術分野で公知であり、これも本発明で使用することができる。
【0128】
別の態様において、本発明は、調節配列に作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0129】
本発明の「発現ベクター」は、直鎖状核酸断片、環状プラスミド、ウイルスベクター又は翻訳可能なRNA(例えばmRNA)であってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスベクター等のウイルスベクターである。
【0130】
「調節配列」及び「調節要素」という用語は、コード配列の上流(5’非コード配列)、中間又は下流(3’非コード配列)に配置され、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング又は安定性又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指すために互換的に使用される。発現調節エレメントは、目的のヌクレオチド配列の転写、RNAプロセシング若しくは安定性、又は翻訳を制御することができるヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、エンハンサー、及びポリアデニル化認識配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0131】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」という用語は、ヌクレオチド配列転写が転写調節要素によって制御及び調節されるように、調節要素(例えば、限定されないが、プロモーター配列、転写終結配列等)が核酸配列(例えば、コード配列又はオープンリーディングフレーム)に連結されていることを意味する。調節エレメント領域を核酸分子に作動可能に連結するための技術は、当技術分野で公知である。
【0132】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又は発現ベクターを免疫細胞に導入することを含む、本発明の治療用免疫細胞の調製方法を提供する。
【0133】
T細胞又はNK細胞等の本発明の免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の非限定的な供給源から様々な非限定的な方法によって得ることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、健康なドナー又は癌と診断された患者に由来し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型プロファイルを示す細胞の混合集団の一部であり得る。例えば、T細胞は、末梢血単核球(PBMC)を単離し、次いで、特定の抗体で活性化及び増幅することによって得ることができる。
【0134】
本発明の実施形態のいくつかの実施形態では、T細胞等の免疫細胞は、対象の自己細胞に由来する。本明細書で使用される場合、「自家」は、対象を治療するために使用される細胞、細胞株、又は細胞の集団が対象に由来することを意味する。いくつかの実施形態では、T細胞等の免疫細胞は、対象のヒト白血球抗原(HLA)と適合するドナー等の同種細胞に由来する。ドナー由来の細胞を、標準的なプロトコルを使用して非アロ反応性細胞に変換し、必要に応じて複製して、1人以上の患者に投与することができる細胞を産生することができる。
【0135】
別の態様では、本発明は、本発明の治療用免疫細胞及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0136】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる生理学的に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤並びに吸収遅延剤等を含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、又は表皮投与(例えば、注射又は注入によって)に適している。
【0137】
別の態様では、本発明は、対象の疾患を治療するための医薬品の調製における本発明の治療用免疫細胞の使用を提供する。
【0138】
本明細書で使用される場合、「対象」は、本発明の細胞、方法、又は医薬組成物によって治療することができる疾患(例えば、癌)に罹患しているか、又は罹患する傾向がある生物を指す。非限定的な例には、ヒト、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカ、及び他の非哺乳動物が含まれる。いくつかの好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0139】
別の態様では、本発明は、対象の癌等の疾患を治療する方法を提供し、有効量の本発明の治療用免疫細胞又は医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0140】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「治療有効用量」又は「有効量」は、対象への投与後に治療効果を生じるのに少なくとも十分な物質、化合物、材料又は細胞の量を指す。したがって、疾患又は障害の症状を予防、治癒、改善、遮断又は部分的に遮断するのに必要な量である。例えば、本発明の細胞又は医薬組成物の「有効量」は、好ましくは、障害症状の重症度の低下、障害の無症候期間の頻度及び持続期間の増加、又は障害に罹患した結果としての傷害若しくは障害の予防をもたらし得る。例えば、腫瘍の治療のために、本発明の細胞又は医薬組成物の「有効量」は、好ましくは、未処置の被験体と比較して、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、腫瘍細胞成長又は腫瘍成長を阻害し得る。腫瘍成長を阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測し得る動物モデル系において評価することができる。あるいは、当業者に公知の試験によってインビトロで決定され得る腫瘍細胞の成長を阻害する能力を調べることによって評価を行うことが可能である。
【0141】
実際には、本発明の医薬組成物中の細胞の用量レベルは、患者に対する毒性なしに特定の患者、組成物及び投与経路に対する所望の治療応答を効果的に達成することができる有効成分の量を得るために変動し得る。選択された用量レベルは、適用された本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、適用された特定の化合物の排泄速度、治療期間、適用された特定の組成物と組み合わせた適用された他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身健康状態及び病歴、並びに医療分野で公知の同様の因子を含む、様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0142】
本発明による治療用免疫細胞又は医薬組成物又は薬物の投与は、注射、注入、埋込み又は移植等の任意の好都合な様式で行われ得る。本明細書に記載の細胞又は組成物の投与は、静脈内、リンパ内、皮内、腫瘍内、髄内、筋肉内、又は腹腔内投与であり得る。一実施形態では、本発明の細胞又は組成物は、好ましくは静脈内注射によって投与される。
【0143】
本発明の様々な実施形態の実施形態では、疾患は、例えば、癌であり、そのような癌の例には、肺癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、肝臓癌、リンパ腫、悪性血液疾患、頭頸部癌、神経膠腫、胃癌、上咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、子宮体腫瘍、骨肉腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、前立腺癌、子宮癌、肛門癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病を含む)、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓癌又は尿管癌、腎盂腎癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌(アスベスト誘発性癌を含む)、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明の様々な実施形態の実施形態では、疾患は、例えば、病原体感染のものであり、病原体の例には、呼吸器合胞体ウイルス、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ヒト免疫不全ウイルス等が含まれるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の様々な実施形態の実施形態では、疾患は、例えば、心血管疾患、糖尿病、神経疾患、移植後の拒絶反応等の疾患である。
【実施例
【0146】
実施例1 STARの改良
1.野生型T細胞受容体及びその定常領域変異STAR分子の設計
1.1 STARのプロトタイプ設計
B細胞によって産生される分泌抗体(抗体、Ab)又はB細胞受容体(BCR)は、遺伝子構造、タンパク質構造及び空間的立体配座の点でT細胞受容体(TCR)と大きな類似性を有する。抗体及びTCRの両方は、可変領域及び定常領域からなり、可変領域は抗原認識及び結合の役割を果たし、定常領域ドメインは構造的相互作用及びシグナル伝達の役割を果たす。TCRα鎖及びβ鎖(又はTCRγ鎖及びδ鎖)の可変領域を抗体の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)で置き換えることによって、合成T細胞受容体及び抗体受容体(STAR/WT-STAR)と呼ばれる人工的に合成されたキメラ分子を、図1(左)に示されるその構造で構築することができる。
【0147】
STAR分子は2本の鎖を有し、第1の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体重鎖可変領域)をT細胞受容体α鎖(TCRα)の定常領域(C α)と融合することによって得られ、第2の鎖は、抗原認識配列(例えば、抗体軽鎖可変領域)をT細胞受容体β鎖(TCRβ)の定常領域(C β)と融合することによって得られる。構築物中の抗原認識ドメイン(VH、VL又はscFv等)及び定常ドメイン(TCRα、β、γ及びδの定常ドメイン)を配置及び組み合わせて、異なる構成であるが同様の機能を有する様々な構築物を形成することができる。
【0148】
STAR分子の第1及び第2の鎖は、T細胞で発現した後、小胞体内の内因性CD3εδ、CD3γε及びCD3ζ鎖と結合して8サブユニット複合体を形成し、これは複合体の形態で細胞膜の表面に存在する。免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)は、YxxL/Vのその保存された配列を有するTCR分子中のシグナル伝達モチーフである。CD3ε鎖、δ鎖、γ鎖及びε鎖のエンドドメインは1つのITAM配列を含み、CD3ζ鎖のエンドドメインは3つのITAM配列を含むので、完全なSTAR複合体は合計10個のITAM配列を有する。STAR受容体の抗原認識配列がその特異的抗原に結合すると、細胞内ITAM配列が連続的にリン酸化され、次いで下流のシグナル伝達経路を活性化し、NF-κβ、NFAT、及びAP-1等の転写因子を活性化して、T細胞の活性化を開始し、エフェクター機能を産生する。本発明者による以前の研究は、STARが従来のキメラ抗原受容体CARよりも良好にT細胞を活性化することができ、抗原刺激の非存在下でのバックグラウンド活性化が有意に減少し、したがって有意な利点を有することを示した(中国発明特許出願第201810898720.2号明細書を参照されたい)。しかしながら、STARに対する更なる改善が依然として望まれている。
【0149】
1.2.変異型STAR(mut-STAR)並びに膜貫通ドメイン及びエンドドメインが改変されたSTAR(ub-STAR)の設計
STARプロトタイプ設計は、ヒト化TCRα/β鎖(又はTCRγ及びδ鎖)定常領域配列(野生型ヒトTCRα定常領域、配列番号1;野生型ヒトTCRβ定常領域、配列番号2)を使用した。ヒト、霊長類及びマウスのTCRα/β鎖(マウスTCRaC-WT、配列番号3;マウスTCRbC-WT、配列番号4)の定常領域配列は高度に保存されており、同じ重要なアミノ酸配列も有するため、それらは互いに置換することができる。
【0150】
T細胞に移入された後、STAR分子は、定常領域を介してT細胞の内因性TCRとミスマッチする。一方で、このミスマッチ問題は、STAR分子の正しいペアリングの効率を低下させ、それらの機能を弱め、他方で、ミスマッチに起因する未知の特異性の可能性を増加させ、セキュリティリスクを増加させ得る。この問題を解決するために、本発明者らは、ヒトT細胞に移入された後のSTAR分子の機能を高めるために、STAR分子の定常領域をマウス配列に置き換えた。STAR分子の設計を更に最適化するために、本発明者らは、分子間ジスルフィド結合を導入するためにSTAR分子にシステイン変異を実施し、それによってSTAR分子の2つの鎖間の相互対合を強化し、内因性TCRとのミスマッチを減少させた。具体的には、TCRα鎖定常領域において、48位のトレオニン(T)がシステイン(C)(マウスTCRaC-Cys、配列番号5)に変異し、TCRβ鎖定常領域において、56位のセリン(S)がシステイン(C)(マウスTCRbC-Cys、配列番号6)に変異した。2つの新たに付加されたシステインは、STARの2つの鎖の間にジスルフィド結合を形成し、それにより、内因性TCR鎖とのSTARの2つの鎖の間のミスマッチを低減し、STAR分子がより安定な複合体を形成するのを助け、それにより、より良好な機能を得る。更に、STAR分子の設計を更に最適化するために、本発明者らは、STAR分子の安定性を高め、より持続的な機能を果たすのを助けるために、STAR分子の膜貫通ドメインに対して疎水性アミノ酸置換を行った。具体的には、TCRα鎖定常領域の膜貫通ドメインの111~119のアミノ酸位置において、3つのアミノ酸変異を実施し、112位のセリン(S)をロイシン(L)に変異させ、114位のメチオニン(M)をイソロイシン(I)に変異させ、115位のグリシン(G)をセリン(V)に変異させた。この領域の全アミノ酸配列をLSVMGLRILからLLVIVLRILに変更し、この改変をマウスTCRaC-TM9と呼び、配列番号7の定常領域配列を産生した。この設計は、膜貫通ドメインの疎水性を高め、TCR膜貫通ドメインによって運ばれる正電荷によって引き起こされる不安定性を打ち消し、STAR分子を細胞膜上でより安定にし、したがって、図1(中央)に示されるその構造でより良好な機能を得る。
【0151】
TCRが抗原に結合し、活性化が完了した後、TCR分子のエンドドメイン及び膜貫通ドメイン中のリジンは、ユビキチン活性化酵素、ユビキチン結合酵素及びユビキチンリガーゼユビキチナートによる一連のユビキチン化反応を介してユビキチン改変を受け、それによってT細胞エンドサイトーシスを生成し、リソソームによる更なる分解のための細胞内へのTCR分子のエンドサイトーシスをもたらし、したがってT細胞膜の表面上のTCR分子の濃度を低下させ、T細胞活性化の効果の連続的な低下をもたらした。mut-STAR分子中のα鎖及びβ鎖の膜貫通ドメイン又はエンドドメイン中のアミノ酸は、本発明者らによって改変され、それは、STAR分子のα鎖定常領域のエンドドメイン及びβ鎖定常領域の膜貫通ドメイン中のリジンをアルギニンに変異させることと、マウスTCRαC-Arg mutの定常領域配列(配列番号8)及びマウスTCRβC-Arg mutの定常領域配列(配列番号9)をそれぞれ生成して、リジンユビキチン化によって引き起こされるSTAR分子のエンドサイトーシスを減少させることと、を含む。この設計は、STAR分子の膜貫通ドメイン及びエンドドメインのユビキチン化の可能性を低下させ、したがって、STAR分子のエンドサイトーシスを低下させ、図1(右)に示されるその構造を用いて、STAR分子を細胞膜上でより安定にし、より良好な機能を得ることを可能にする。
【0152】
2.共刺激受容体エンドドメインを含む野生型及び変異型STAR分子の設計
mut-STAR細胞のインビボでの増殖能、有効生存時間及び腫瘍微小環境に浸潤して標的細胞を効率的に殺傷させる能力を改善するために、本発明者らによって新しい構造が設計され、ここで、mut-STAR複合体は改変され、増強されたmut-STAR細胞は、TCR-Tの臨床応答を改善し、持続的な治癒効果を実現するために、必要に応じて調整することができる。
【0153】
2.1.共刺激分子受容体エンドドメインを含むmut-STAR分子(co-STAR)の設計
TCRは、全てのT細胞の表面上の特別なマーカーであり、αβTCR及びγδTCRに分けることができ、その対応するT細胞はそれぞれαβT細胞及びγδT細胞である。αβ-STAR及びγδ-STARは、αβT細胞及びγδT細胞の性能をそれぞれ改善するために、本発明者らによって共刺激シグナルでそれぞれ改変された。
【0154】
αβT細胞のTCRは、TCRα鎖及びTCRβ鎖からなり、全T細胞の90%~95%を占める。αβTCRは、可変領域と定常領域とからなり、可変領域は広い多様性を有し、抗原認識及び結合の役割を果たすが、定常領域ドメインは構造的相互作用及びシグナル伝達の役割を果たす。T細胞の毒性及び増殖持続性を増強するために、本発明によれば、ヒト化共刺激受容体のエンドドメイン配列をαβ-STAR定常領域のC末端に導入して(図2)、STAR T細胞機能に対する影響を試験する。本発明のSTAR定常領域は、未改変のWT-STAR定常領域、付加的な分子間ジスルフィド結合を含むcys-STAR定常領域、マウス化hm-STAR定常領域、及び、サブセクション1に記載した3つの改変を組み合わせたmut-STARを含む。共刺激シグナル伝達構造は、それぞれ配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15の配列を有するCD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB又はCD27の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。共刺激エンドドメインは、TCRα鎖若しくはTCRβ鎖、又はTCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に接続することができる(co-STAR)。更に、共刺激エンドドメインは、TCR定常領域のC末端、又はTCR分子のエンドドメイン配列が欠失した(システイン置換及び疎水性領域改変の両方を含むエンドドメイン欠失TCRα鎖定常領域(マウスTCRaC-del mut、配列番号26)、システイン置換を含むエンドドメイン欠失TCRβ鎖定常領域(マウスTCRβC-del mut、配列番号27))(co-リンカー-STAR、図3)のTCR定常領域のC末端に、直接又はリンカーG4S/(G4S)n(G4Sリンカー配列は、それぞれ、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25である)を介して連結され得る。
【0155】
γδT細胞のTCRは、TCRγ鎖及びTCRδ鎖からなり、γδT細胞は、TCRδ鎖のタイプに基づいて3つのサブグループ:γδ1、γδ2及びγδ3に分割することができ、異なるサブグループはヒト体内で異なる分布を有する。γδT細胞は、病原体及び腫瘍の監視において重要な役割を果たすMHC拘束性の様式で抗原を認識する。実験は、CD28又は4-1BB及び同様の共刺激シグナルが、γδT細胞の活性化及び増殖において重要な役割を果たすことを示した。ヒト共刺激分子受容体のエンドドメイン配列を、本発明者らによって、TCRγ及びTCRδのC末端にそれぞれ導入して(図2、右)、γδT細胞の性能を改善した。
【0156】
2.2.共刺激分子受容体エンドドメインを含むCD3分子(co-CD3-STAR)の設計
CD3サブユニットは、γ鎖、δ鎖、ε鎖及びζ鎖を含み、細胞の状態及び刺激に対する応答を調節するために、エクトドメインからエンドドメインにシグナルを伝達するTCR分子とT細胞受容体複合体を形成する。増強されたTCR T細胞を設計し、インビボでのT細胞の腫瘍殺傷能力、増殖能力及び生存時間を改善するために、CD3γ鎖(配列番号28)、δ鎖(配列番号29)、ε鎖(配列番号30)及びζ鎖(配列番号31)のC末端にヒト共刺激分子受容体エンドドメインを導入することによってCD3分子を本発明者らによって改変した(図4)。改変されたCD3分子を、その機能を改善するためにmut-STAR T細胞において発現させた。
【0157】
2.3.サイトカイン受容体(サイトカイン-STAR、CK-STAR)の刺激領域を含むCD3分子の設計
サイトカインは、T細胞の増殖、抗腫瘍及び分化において重要な役割を果たす。様々なサイトカインがそれらのそれぞれの受容体と組み合わさって、細胞の状態及び刺激に対する応答を調節するように、エクトドメインからエンドドメインにシグナルを伝達する。更に、研究は、下流分子STAT5(配列番号35)がIL-2受容体エンドドメインでのカスケード反応によって活性化され、したがってT細胞増殖関連分子の転写を増強し、CAR-T細胞の増殖能を増強することを示した。増強されたSTAR-T細胞を設計し、インビボでのT細胞の腫瘍殺傷能力、増殖能及び生存時間を改善するために、STAR分子を、本発明者らによって、ヒトサイトカイン受容体(例えば、IL-2β受容体エンドドメインIL2Rb、配列番号32;IL-7α受容体エンドドメイン、配列番号33;IL-21受容体エンドドメイン、配列番号34等)の細胞内シグナル伝達ドメインを、TCRα鎖若しくはβ鎖又はα鎖及びβ鎖の両方のC末端に連結することによって、又はSTAT5活性化部分をG4S(IL-2RbQ、配列番号36;IL-7RbQ、配列番号37)を介してIL-2β若しくはIL-7Rα受容体エンドドメインに更に連結することによって改変した(図5)。
【0158】
3.共刺激分子受容体エンドドメインを含む野生型及び変異型STAR分子のベクターの構築
3.1 ベクター供給源
本発明で使用されるウイルスベクター、プラスミドベクター等のベクターは、商業的企業から購入又は合成され、これらのベクターの全長配列が得られ、特定の切断部位は公知である。
【0159】
3.2.断片供給源
本発明で言及されるTCRは、本発明で使用されるWT-STAR、mut-STAR、ub-STAR、co-STAR、co-リンカー-STAR、CK-STAR、co-CD3-STAR等を含む任意の機能性TCRであり得る。本発明で用いられる遺伝子断片、例えば、TCRの可変領域、TCRの定常領域、共刺激分子受容体のエンドドメイン、サイトカイン受容体の細胞内シグナル伝達領域、タグ配列、リンカー等は、いずれも商業的企業によって合成された。これらの遺伝子断片をPCRで連結した。
【0160】
この実施例では、TCR複合体の最適化を、配列番号38(CD20標的化抗体、OFAに由来する)に示されるScFv及び/又は配列番号39(CD19標的化抗体FMC63由来)に示されるScFvを含むSTARを使用して検証し、配列番号40(赤色蛍光タンパク質、RFP)に示されるRFPタンパク質のみを発現するブランク対照群Mockと比較した。
【0161】
3.3.ベクター構築
ここで用いたレンチウイルスベクターはpHAGE-EF1α-IRES-RFPであり、直鎖状ベクターは制限酵素Not I/Nhe Iによって得られ、遺伝子断片は合成及びPCRによって得られ、完全ベクターは相同組換えによって得られた。
【0162】
4細胞株の構築:
4.1プラスミドpHAGE-ルシフェラーゼ-GFPの構築
レンチウイルスベクターとして、pHAGEは、標的細胞のゲノムに標的遺伝子を安定に挿入することができ、安定な細胞株を構築するための重要な方法である。ルシフェラーゼは、基質の化学的自己発光を触媒して、標的細胞にルシフェラーゼを安定に発現させることができる触媒活性を有する酵素の一種であり、基質を添加した後に標的細胞の数を示すことができ、したがって、標的細胞に対する機能性細胞の効果を反映している。制限エンドヌクレアーゼNotI/ClaI切断部位を持つpHAGE-EF1Aベクターを2つの酵素で切断し、NCBIによりルシフェラーゼ及びGFP配列を取得し、市販のRuiboxingkeによりOverlap PCRを用いてルシフェラーゼ遺伝子とGFP遺伝子を組み合わせて断片を合成した後、相同組換えによりルシフェラーゼ-GFP断片をpHAGEベクターに連結した。
【0163】
4.2 ルシフェラーゼを有する標的細胞株の構築
ルシフェラーゼ及びGFPを有するレンチウイルスベクターの構築に成功し、レンチウイルスをLenti-X-293Tでパッキングし、PEG8000でレンチウイルス溶液を濃縮した後、勾配希釈法でウイルス力価を測定し、次いでリンパ腫細胞株Rajiに感染させ、感染72時間後、蛍光顕微鏡でGFP陽性細胞の有無を観察した後、フロー分類器でGFP陽性細胞を分取し、ライブラリ構築及び保存用にモノクローナル細胞を選択した。同時に、ルシフェラーゼ基質を使用して標的細胞とインキュベートし、ルシフェラーゼの発現及び検出レベルを検出して発現レベルを決定した。
【0164】
4.3 TCRα-βノックアウトJurkat細胞株の構築
TCRの構造及び配列特性に基づいて、α鎖及びβ鎖の定常領域にガイド配列を設計して、TCRα-β-Jurkat細胞株を構築した。TCRα鎖及びβ鎖の定常領域のエクソン配列をNCBIで取得し、TCRα鎖及びβ鎖の定常領域のエクソン1配列をガイド配列の設計のためにtools.genome-engineering.orgのウェブサイトに提出し、その結果に基づいてオリゴ配列を合成し、次いでsgRNA-LentiCRISPRレンチウイルスベクター(Aidi geneから購入)を構築した。α鎖のガイド配列をLentiCRISPR-puroに連結し、β鎖のガイド配列をLentiCRISPR-BSDに連結した。
【0165】
sgRNA-LentiCRISPRレンチウイルス:HEK-293Tのパッケージングを予め10cmディッシュにプレーティングし、細胞が80%~90%まで成長したら、トランスフェクションシステムをHEK-293Tに加え、細胞を37℃のインキュベータに戻して培養した。この時間を0時間としてカウントし、トランスフェクションの12時間後、新鮮な10%FBS-DMEMを添加した。トランスフェクションの48時間後及び72時間後にウイルスを回収した。ウイルスを含有する培養培地を遠心分離し、濾過し、PEG8000と混合し、4℃で12時間超置いた後、次いで3500rpmで30分間遠心分離し、上清を廃棄した後、適切な体積の培地で再懸濁し、沈殿させた。-80℃で凍結又は直接使用した。
【0166】
Jurkat T細胞の感染及びスクリーニング並びにモノクローナル細胞株の同定:Jurkat T細胞を12又は24ウェルプレートに接種し、続いてα鎖及びβ鎖のsgRNA-LentiCRISPRウイルスを適切な体積で同時に、並びにポリブレン(総体積に基づいて1:1000の比で添加)を添加し、十分に混合した。遠心分離感染を1000rpm、32℃で90分間行った。得られたものを0時間としてカウントしながら37℃のインキュベータに入れた。10~12時間後に液体を交換し、48時間後、ピューロマイシンを適切な最終濃度まで添加し、更に48時間処理した後、示されるように、非感染対照群の細胞は全て殺傷した。生存している細胞を吸引し、遠心分離し、完全培地で培養して、TCRα-β-Jurkat細胞バンクを得た。TCRα-β-Jurkat細胞バンクからの単一細胞をフロー分類器Ariaによって96ウェルプレートに選別し、2週間の培養後、増殖したモノクローンを増幅培養のために吸引した。モノクローナル細胞株をTCRα鎖及びβ鎖抗体でそれぞれ同定し、両方の鎖が欠損した細胞株を増幅して、内因性TCRノックアウトJurkat-T細胞株を得た。
【0167】
5.T細胞を形質導入するためのウイルスパッケージング系の構築物
5.1 レンチウイルス系及びパッケージング方法(異なる世代)
Lentix-293T細胞を5×105/mLで10cm培養ディッシュに接種し、5%CO2、37℃のインキュベータ内で培養し、細胞密度が約80%に達したときにトランスフェクションを行った(顕微鏡下で観察)。3つのプラスミドを、1:2:3の比率のPMD2.G:PSPAX:移入プラスミドに従って500μLの無血清DMEMと混合した。54μLのPEI-Max及び500uLの無血清DMEMを均一に混合し、室温で5分間放置した(PEI-Maxとプラスミドとの体積質量比3:1)。PEI-max混合物をプラスミド混合物にゆっくり添加し、穏やかに吹き込み、均一に混合し、次いで室温で15分間放置した。最終混合物を培養培地にゆっくり添加し、均一に混合し、次いで別の培養のために12時間~16時間インキュベータに戻し、次いで別の培養のために6%FBS DMEM培地に交換し、ウイルス溶液を48時間及び72時間で回収した。
【0168】
5.2 ウイルス力価測定
Jurkat-C5細胞を1.5×105細胞/mLで平底96ウェルプレートに接種し、10%FBS及び0.2μLの1000×ポリブレンを含有する100uLの1640培地を各ウェルに添加した。10倍希釈の1640完全培地を用いてウイルス希釈を行い、第1のウェル中のウイルス投与量は、ウイルス原液と判定した場合は100μL、濃縮液と判定した場合は1μLであった。希釈した細胞を100μL/ウェルでウイルスウェルに添加し、32℃で混合し、1500rpmで90分間遠心分離し、5%CO2を含む37℃のインキュベータ内で72時間培養した。平底96ウェルプレートからの細胞を丸底96ウェルプレートに吸引し、4℃及び1800rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。200uLの1×PBSを添加した後、4℃、1800rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。4%組織固定液を200uL添加し、得られた溶液を遮光し、フローサイトメトリーで測定した。感染効率をフローサイトメトリーで測定し、力価(TU/mL)=1.5×104×陽性率/ウイルス量(μL)×1000の式に従って力価を算出する際に、有効率2~30%のウェルを選択した。以下のプラスミドのウイルスを上記の方法によってパッケージングした。pHAGE-EF1A-IRES-RFP、WT-STAR、mut-STAR、co-WT-STAR(αβ-4-1BB-WT、αβ-CD27-WT、αβ-CD28-WT、αβ-ICOS-WT、αβ-OX40-WT、αβ-OX40-WT)、co-STAR(αβ-4-1BB、αβ-CD27、αβ-CD28、αβ-ICOS、αβ-OX40、αβ-OX40)、co-CD3-STAR(CD3δ-4-1BB、CD3δ-CD28、CD3δ-ICOS、CD3δ-OX40、CD3ε-4-1BB、CD3ε-CD28、CD3ε-ICOS、CD3ε-OX40、CD3γ-OX40、CD3γ-ICOS、CD3γ-OX40、CD3ζ-41BB、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40)、co-リンカー-STAR(TCRβ-del-OX40、TCRα-del-G4S-OX40、TCRα-del-G4S-OX40、TCRβ-del-(G4S)3-OX40、TCRβ-del-(G4S)7-OX40)、C K-STAR(β-IL-2Rb STAR、β-IL-2RbQ STAR、α-IL-2RbQ STAR、α-IL-7RA STAR、α-IL-7RAQ STAR、α-IL-21R STAR)等。
【0169】
6.T細胞培養及び感染方法の確立
6.1 Jurkat T細胞株培養
Jurkat T細胞株を、3*105/ml及び3*106/mlまでの培養密度を有する10% FBSを含有するRPMI1640培地中で培養し、1~2日ごとに継代培養した。細胞計数後、必要な数の細胞を採取し、培養培地を補充して上記密度に調整し、培養のためにCO2インキュベータに入れた。
【0170】
6.2 Jurkat T細胞株感染
細胞を計数し、1×106/mlの細胞を採取し、遠心分離し、液体で交換し、10% FBSを含有する1mLのRPMI1640培地で再懸濁し、適切な量のウイルス溶液も添加した24ウェルプレートに添加し、1500rpmで90分間遠心分離し、培養のためにCO2インキュベータに入れた。感染の12時間後に10%FBSを含有する新鮮なRPMI1640培地で液体を完全に変化させ、72時間後に陽性率を検出した。
【0171】
6.3 ヒト初代T細胞培養
初代T細胞をFicoil法によって単離し、10%FBS及び100IU/mL IL-2を含有するX-VIVO培地中で培養し、初期培養密度は1×106/mLであり、次いで、CD3-及びレトロネクチンのr-フィブロネクチン(それぞれ最終濃度5ug/ml)プレコートウェルプレートに加えた。後期培養の密度は5×105/mLから3×106/mLまでであり、継代培養は1~2日ごとに行った。
【0172】
6.4 ヒト初代T細胞感染
48時間培養した後、初代T細胞にMOI=20のウイルス溶液を添加し、1500rpmで90分間遠心分離し、次いで培養のためにCO2インキュベータに入れた。24時間感染させた後、10%FBS及び100IU/mL IL-2を含むX-VIVO培地を補充し、ウェルを回転させ、72時間後、タグタンパク質又は抗体によって感染効率を検出した。
【0173】
6.5.感染効率の検出方法
72時間の感染後、細胞を均一に吹き込み、計数し、5×105/mlで採取し、遠心分離し、次いで上清を捨て、使用した染色溶液はPBS+2%FBS+2mMのEDTAであり、対応する抗体を30分間のインキュベーションのために添加し、次いでPBSを洗浄のために2回添加し、検出をコンピュータで行った。
【0174】
7.WT-STAR受容体及びその変異型mut-STAR T細胞のインビトロ機能アッセイ
7.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞であるRaji-ルシフェラーゼ、RajiCD19KO-ルシフェラーゼ、RajiCD20KO-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培地と混合し、培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、フローサイトメトリーによって感染効率を検出し、標的細胞に対するエフェクター細胞の比を決定し、1:1の比で一般的に使用し、T細胞の総数を感染効率に従って計算し、標的細胞の一般的な使用法は1×105/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0175】
7.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は、一般に、T細胞の機能を検出するためのT細胞活性化に直接使用することができる細胞表面タンパク質である。陽性T細胞を通常1×105個/ウェルで加え、遠心分離し、24時間活性化した後、T細胞又は標的細胞を回収してT細胞機能を検出した。
【0176】
7.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と24時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を採取し、白色の96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0177】
7.4.ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果は、図6及び表1に示されるように、CD19及びCD20を標的とするmut-STAR T細胞が、Raji-ルシフェラーゼ、RajiCD19KO-ルシフェラーゼ及びRajiCD20KO-ルシフェラーゼを殺傷させた後、変異型mut-STAR T細胞がより強いT細胞殺腫瘍能を示すことを示し、残存腫瘍の生存率はそれぞれ2.41%、13.94%及び24.40%であり、WT-STARの生存率よりも45.73%、77.00%及び76.16%有意に良好であり、変異型mut-STARがより有意な殺腫瘍効果を有することを示した。
【表1】
【0178】
8.TCRα鎖及びTCRβ鎖の両方のC末端、又はTCRα鎖若しくはTCRβ鎖のC末端に接続した共刺激エンドドメインの、STAR-T細胞の機能に対する効果
8.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培養培地と混合し、次いで培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、エフェクター細胞対標的細胞の比を決定し、共インキュベーションを通常8:1、4:1、2:1、1:1、1:2、1:4及び1:8の比で行い、共インキュベーションの時間との差も通常6時間、12時間、24時間、36時間及び48時間に検出された。co-STAR T細胞の増殖を検出するために、標的細胞Raji-ルシフェラーゼを初代T細胞と7日間インキュベートして細胞増殖数及びIL-2分泌の変化を観察し、次いで陽性T細胞をフローサイトメトリーによって選別し、抗原刺激なしで2日間休止培養し、次いで標的細胞と24時間再び共培養してT細胞の殺傷を検出し、標的細胞の一般的な使用量は1×105/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0179】
8.2.標的抗原によってT細胞を刺激する方法
本発明の標的抗原は、一般に細胞表面タンパク質であり、T細胞を活性化してT細胞の機能を検出するために直接使用することができ、特に、標的抗原に通常1×105/ウェルの陽性T細胞を添加し、24時間遠心分離及び活性化してT細胞機能を検出するための細胞懸濁液又は培養上清を回収するか、又は6時間、12時間、24時間、36時間、48時間若しくは7日間活性化してT細胞の殺傷機能を検出した。
【0180】
8.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と異なる時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を採取し、白色の96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0181】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果から、図7及び表2に示されるように、TCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に連結された共刺激エンドドメインを有するmut-STARは、T細胞及び標的細胞の異なるE:T比で同様の腫瘍殺傷効果を示し、異なるE:T比での残存腫瘍生存率に有意差はないことが示された。しかしながら、異なる時点での腫瘍殺傷の検出結果に関して、図8及び表3に示されるように、TCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に接続したOX40エンドドメインを有するmut-STAR(αβ-OX40)及びRaji-ルシフェラーゼとの48時間のインキュベーションを伴うmut-STARは、同様の腫瘍殺傷効果をそれぞれ約24%及び19%示し、これらは、TCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に接続した他の共刺激エンドドメインを有するmut-STAR(αβ-41BB、αβ-CD27、αβ-CD28、αβ-ICOS)よりも有意に優れていた。以上の結果から、共刺激分子OX40のエンドドメインをTCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に連結しても、mut-STARの殺傷効果に影響を及ぼさないことが見出された。加えて、上記の結果から、ルシフェラーゼアッセイにより、TCRα鎖(α-OX40)又はβ鎖(β-OX40)のC末端にOX40エンドドメインが連結したmut-STARのみがT細胞の殺傷機能上で検出され、検出結果は、T細胞と共インキュベートした腫瘍細胞との異なるE:T比又は24時間の共インキュベートでは、図9及び10、並びに表4及び5に示すように、α-OX40及びβ-OX40は、α-β-OX40と有意な差を表さないことを示した。上記の殺傷結果から、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖及びβ鎖の両方(αβ-OX40)のC末端に連結されたmut-STARと、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖のC末端に連結されたmut-STAR(α-OX40)又はβ鎖のC末端に連結されたmut-STAR(β-OX40)単独との間に有意な差はなかったが、それらの殺腫瘍能はmut-STARよりも有意に優れていた。
【0182】
8.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化の間、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等の多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺傷させるか、又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けた。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を収集し、遠心分離し、上清を採取した。使用したTNF-α、IFN-γ及びIL-2ELISAキットは、ヒトIL-2非被覆ELISA、ヒトTNF-α非被覆ELISA及びヒトIFN-γ非被覆ELISA(それぞれ、第88-7025号、第88-7346号、第88-7316号)であった。具体的な工程は以下の通りであった。10Xコーティング緩衝液をddH2Oで1Xに希釈し、コーティング抗体(250X)を添加し、ウェルを混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加した。ラップで封止し、4℃で一晩静置した後、1×PBST(0.05%Tween20を添加した1×PBS)を用いて、毎回260μL/ウェルで3回洗浄し、5×ELISA/ELISPOT DiluentをddH2Oで1×に希釈した後、200μL/ウェルで96ウェルプレートに添加し、室温で1時間静置した。PBSTで1回洗浄し、検量線(それぞれ2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈し、1xDiluentで20~50倍に希釈した。検量線に従って希釈した試料を100マイクロリットル/ウェルで添加し、2つの並列ウェルを採取し、室温で2時間インキュベートし、PBSTを3回洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈した検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを3回の洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈したHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、発色時間が15分未満であるTMBを発色のために添加し、終了のために2NのH2SO4を添加し、450nmでの光吸収を検出した。
【0183】
ELISAの結果は、T細胞を標的細胞と24時間共インキュベートした後、TCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端にOX40エンドドメインが連結されたmut-STAR(αβ-OX40)のIL-2分泌が約10000pg/mlであり、これは他の構造を有するSTARのIL-2分泌よりも有意に高く、mut-STAR、αβ-41BB、αβ-CD27、αβ-CD28及びαβ-ICOSのIL-2分泌はそれぞれ約7700pg/ml、6450pg/ml、6690pg/ml、6000pg/ml及び6050pg/mlであったことを示し、TNFα及びIFN-γの分泌に関して、αβ-OX40もまた、mut-STARと同様の結果を示したが、図11及び表6に示されるように、他の構造は異なる減少を示した。ELISAの結果から、共刺激分子OX40のエンドドメインがTCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に連結されたmut-STAR(αβ-OX40)によるIL-2分泌は、mut-STARよりも有意に高いことが示された。
【0184】
8.5.T細胞増殖変化の検出:フローサイトメトリーによる計数
T細胞活性化の間、T細胞が標的細胞を殺傷させるか又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けるために多数のサイトカインが放出され、T細胞増殖の最も明白な発生は、T細胞の数の有意な変化であった。T細胞を標的細胞と7日間インキュベートし、次いで遠心分離し、PBSで200uLに再懸濁し、陽性T細胞の数をフローサイトメトリーによって計数した。T細胞増殖の変化:増殖倍率=7日後の陽性T細胞の数/添加した陽性T細胞の初期数。
【0185】
分取後、種々の構造を有するmut-STAR-T細胞を、0日目として計数しながら1:3のE:T比でRaji-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、その後、細胞を1日目及び7日目にそれぞれフロー分析のために回収した。このうち、使用した培地はIL-2を含まない1640完全培地であり、TCR T細胞の初期数は1×105細胞であり、各時点の試料を独立してインキュベートし、残りの共インキュベートした試料を翌日に液体で半交換し、標的細胞を補充した。フロー分析に使用した細胞を予め抗ヒトCD3抗体で染色し、その特定の体積を収集し、機械で分析したときに記録し、システム中のT細胞の数及び割合を変換によって知った。図12及び表7に示されるように、mut-STAR細胞の絶対数の増殖倍率曲線から、OX40エンドドメインがTCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に接続したmut-STAR(αβ-OX40)は、標的細胞エピトープを認識した後、より良好な活性化及び増殖を示し、これはmut-STARよりも有意に高かった。OX40エンドドメインがTCRα鎖(α-OX40)又はβ鎖(β-OX40)のみのC末端に結合したmut-STARの増殖を図13及び表8に示すと、7日後におけるOX40エンドドメインがTCRα鎖のみ(α-OX40)のC末端に結合したmut-STARのT細胞増殖は11.75倍であったのに対して、mut-STAR、β-OX40及びαβ-OX40のような他の構造はそれぞれ2.755倍、4.128倍及び6.744倍であり、α-OX40の増殖効果は他の構造よりも有意に高かった。上記の腫瘍殺傷結果、ELISA結果及びT細胞増殖結果を組み合わせると、TCRα鎖のC末端に接続したOX40エンドドメイン(α-OX40)のみを有するmut-STARは、他の構造よりも増強された増殖及び腫瘍殺傷能力を示した。
【0186】
以上の結果より、T細胞の殺傷効果にも影響を与えずに、共刺激分子OX40をTCR-α鎖に連結することにより、最良の増殖効果が得られることが見出された。したがって、異なる共刺激分子の細胞内ドメインを有するmut-STARがTCRα鎖にタンデムに連結した。異なるT細胞及び標的細胞のエフェクター対標的比は、mut-STARに連結された共刺激分子OX40の細胞内ドメインの殺傷効果が、他の共刺激ドメインが連結されたSTARの殺傷効果よりも良好であることを示した。1:2及び1:4のE:T比では、共刺激分子OX40のエンドドメインが結合した(α-OX40)mut-STAR T細胞の効果は、αβ-OX40の効果と同様であり、他の共刺激分子が結合したmut-STAR T細胞の効果よりも優れていた。結果を図14及び表9に示した。上記の殺傷結果に基づいて、TCRα鎖にOX40エンドドメインを連結したmut-STAR(α-OX40)によって得られた殺腫瘍能及び増殖能は、mut-STARの殺腫瘍能及び増殖能よりも有意に優れていた。
【0187】
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】
【0188】
9.STAR-T細胞の機能に対する異なるCD3鎖(co-CD3-STAR)に接続した共刺激構造の効果
9.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培養培地と混合し、次いで培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、エフェクター細胞対標的細胞の比を決定し、通常1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、更に、標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして細胞増殖数の変化を観察した。感染効率に基づいて総T細胞数を算出し、標的細胞の一般的な用法は1×105個/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0189】
9.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は、一般に、T細胞の機能を検出するためのT細胞活性化に直接使用することができる細胞表面タンパク質である。陽性T細胞に通常1×105/ウェルを添加され、遠心分離し、24時間活性化し、細胞懸濁液又は培養上清を回収してT細胞機能を検出した。
【0190】
9.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と異なる時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を採取し、白色の96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0191】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果は、共刺激エンドドメインがCD3δ又はCD3γ又はCD3ε又はCD3ζ鎖のC末端に接続され、mut-STAR T上で共発現される場合、標的細胞に対する異なるT細胞の1:1のE:T比での結果は、全てのco-CD3-STARがαβ-OX40よりも良好な標的細胞殺傷効果を示さないが、mut-STAR、CD3δ-OX40、CD3ζ-41BB、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40と比較して、同様の腫瘍殺傷効果を示し、co-CD3-STARの残存腫瘍生存率は、図15及び表10に示されるように、1:1のE:T比で有意に異ならなかったことを示した。上記の結果に基づいて、共刺激エンドドメインを異なるCD3鎖のC末端に連結することによって、mut-STARの腫瘍殺傷効果は有意に改善されなかったが、CD3ζ鎖のC末端に連結された共刺激エンドドメインを有するmut-STARの効果は有意に減少しなかった。
【0192】
9.4 T細胞増殖変化の検出:フローサイトメトリーによる計数
T細胞活性化の間、T細胞が標的細胞を殺傷させるか又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けるために多数のサイトカインが放出され、T細胞増殖の最も明白な発生は、T細胞の数の有意な変化であった。T細胞を標的細胞と7日間インキュベートし、次いで遠心分離し、PBSで200uLに再懸濁し、陽性T細胞の数をフローサイトメトリーによって計数した。T細胞増殖の変化:増殖倍率=7日後の陽性T細胞の数/添加した陽性T細胞の初期数。
【0193】
分取後、種々の構造を有するmut-STAR-T細胞を、0日目として計数しながら1:3のE:T比でRaji-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、その後、細胞を1日目及び7日目にそれぞれフロー分析のために回収した。このうち、使用した培地はIL-2を含まない1640完全培地であり、TCR T細胞の初期数は1×105細胞であり、各時点の試料を独立してインキュベートし、残りの共インキュベートした試料を翌日に液体で半交換し、標的細胞を補充した。フロー分析に使用した細胞を予め抗ヒトCD3抗体で染色し、その特定の体積を収集し、機械で分析したときに記録し、システム中のT細胞の数及び割合を変換によって知った。図16及び表11に示されるように、mut-STAR細胞の絶対数の増殖倍率曲線から、αβ-OX40-mut-STARと比較して、全てのco-CD3-STARはより良好な標的細胞殺傷効果を示さなかったが、CD3ε-CD28、CD3δ-OX40、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、CD3ζ-OX40等は同様の増殖効果を示したことが分かる。ルシフェラーゼアッセイによる殺傷の検出結果及びT細胞増殖の結果を考慮すると、共刺激エンドドメインがCD3δ又はCD3γ又はCD3ε又はCD3ζ鎖のC末端に連結され、mut-STAR T上で共発現される構造は、αβ-OX40-mut-STAR T細胞と比較して、腫瘍殺傷及び増殖のより良好な効果を示さなかった。
【0194】
【表10】

【表11】
【0195】
10.STAR-T細胞の機能に対する、エンドドメイン欠失α又はβ定常領域に連結されたリンカーG4Sを含む共刺激エンドドメインの効果
10.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培養培地と混合し、次いで培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、エフェクター細胞対標的細胞の比を決定し、通常1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、更に、標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして細胞増殖数の変化を観察した。感染効率に基づいて総T細胞数を算出し、標的細胞の一般的な用法は1×105個/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0196】
10.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的抗原は、一般に細胞表面タンパク質であり、T細胞を活性化してT細胞の機能を検出するために直接使用することができ、特に、標的抗原に通常1×105/ウェルの陽性T細胞を添加し、24時間遠心分離及び活性化してT細胞機能を検出するための細胞懸濁液又は培養上清を回収した。
【0197】
10.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と異なる時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を白色の96ウェルプレートに採取し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0198】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果は、異なる長さのG4Sリンカーを有する共刺激エンドドメインが、エンドドメイン欠失α又はβ定常領域に連結されていることを示し、T細胞対標的細胞の1:1のE:T比における結果は、リンカーがα定常領域エンドドメインに連結されている場合、α-del-OX40、α-OX40、α-del-G4S-OX40、α-del-(G4S)3-OX40及びα-β-ox40は、α-del-(G4S)7-OX40及びα-del-(G4S)10-OX40よりも優れた同様の殺傷効果を示し、リンカーがβ定常領域エンドドメインに連結されている場合、β-del-OX40、β-ox40、β-del-(G4S)3-OX40及びα-β-ox40は同様の殺傷効果を示したが、それでもリンカーが長いほどT細胞の殺傷効果は弱かった。定常領域エンドドメインを除去した後のOX40(α-del-OX40又はβ-del-OX40)との接続は、そのような除去がない場合と比較して効果の差をほとんど示さなかったが、リンカーを添加した後(リンカーの数は3以下であった)、α-del-(G4S)1-3-OX40又はβ-del-(G4S)1-3-OX40の効果は、α-del-OX40又はβ-del-OX40の効果よりも良好であった。リンカーをα定常領域エンドドメインに連結した場合の効果と、リンカーをβ定常領域エンドドメインに連結した場合の効果とを比較すると、リンカーをα定常領域エンドドメインに連結した場合の効果の方が、リンカーをβ定常領域エンドドメインに連結した場合よりも優れていた。しかし、図17及び図18、並びに表12及び表13に示すように、2:1のE:T比で残存腫瘍生存率に有意差はなかった。上記の結果に基づいて、エンドドメイン欠失α又はβ定常領域に連結されたG4Sリンカーを含む共刺激エンドドメインを有するmut-STARは、mut-STARの腫瘍殺傷効果に影響せず、α定常領域エンドドメインに連結した場合の効果は、β定常領域エンドドメインに連結した場合よりも良好であったが、リンカーの長さが長いほど、代わりに腫瘍殺傷効果が弱くなった。
【0199】
10.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化の間、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等の多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺傷させるか、又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けた。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を収集し、遠心分離し、上清を採取した。使用したTNF-α、IFN-γ及びIL-2ELISAキットは、ヒトIL-2非被覆ELISA、ヒトTNF-α非被覆ELISA及びヒトIFN-γ非被覆ELISA(それぞれ、第88-7025号、第88-7346号、第88-7316号)であった。具体的な工程は以下の通りであった。10Xコーティング緩衝液をddH2Oで1Xに希釈し、コーティング抗体(250X)を添加し、ウェルを混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加した。ラップで封止し、4℃で一晩静置した後、1×PBST(洗浄緩衝液とも呼ばれる、0.05%Tween20を添加した1×PBS)を用いて、毎回260μL/ウェルで3回洗浄し、5×ELISA/ELISPOT DiluentをddH2Oで1×に希釈した後、200μL/ウェルで96ウェルプレートに添加し、室温で1時間静置した。PBSTで1回洗浄し、検量線(それぞれ2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈し、1xDiluentで20~50倍に希釈した。検量線による試料を100マイクロリットル/ウェルで添加し、2つの並列ウェルを採取し、室温で2時間インキュベートし、PBSTを3回洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈した検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを3回の洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈したHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、発色時間が15分未満であるTMBを発色のために添加し、終了のために2NのH2SO4を添加し、450nmでの光吸収を検出した。
【0200】
ELISAの結果は、T細胞を標的細胞と24時間共インキュベートした後、α-del-(G4S)7-OX40OX40の構造を有するmut-STARのIL-2及びIFN-γの分泌は、mut-STARの分泌よりも有意に低かったが、他の構造β-del-OX40、α-del-OX40、α-del-G4S-OX40及びα-del-(G4S)3-OX40のIL-2分泌は、それぞれmut-STARのIL-2分泌と同様であったことを示し、図19及び図20並びに表14及び表15に示されるように、β-del-OX40のみがmut-STARのIFN-γ分泌と同様のIFN-γ分泌を示したが、他の構造のIFN-γ分泌は異なる減少を示した。ELISAの結果によれば、α又はβ定常領域のエンドドメインを有する構造では、α鎖のエンドドメインの欠失はIFN-γ分泌に影響を及ぼしたが、IL-2分泌には影響を及ぼさず、β鎖のエンドドメインの欠失はIL-2及びIFN-γのいずれの分泌にも影響を及ぼさず、同時に、α鎖のエンドドメインを欠失させた後、リンカーを使用してOX40エンドドメインに連結し、7未満の長さを有するリンカーの場合、IL-2分泌に影響を及ぼさないが、IFN-γ分泌を減少させた。
【0201】
10.5.T細胞分化変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞活性化中に、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、シグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を介して核内に伝達されてT細胞の分化を調節した。T細胞は、初期T細胞(ナイーブ)からセントラルメモリーT細胞(Tcm)、エフェクターメモリーT細胞(Tem)、そして最後にエフェクターT細胞(Teff)に分化する。しかしながら、インビボでのT細胞の増殖及び持続性は、セントラルメモリーT細胞(Tcm)からエフェクターメモリーT細胞(Tem)に分化したT細胞の数によって影響される。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類され得る。セントラルメモリーT細胞の分化比は、インビボでのT細胞の持続的殺傷効果に影響を及ぼす。エフェクターT細胞に対する初期T細胞の比は、インビボでのT細胞の腫瘍殺傷効果及び持続性に影響を及ぼす。T細胞の表面におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーにより検出することにより、T細胞の分化を知ることができる。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再度遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0202】
フローサイトメトリーの結果から、図21及び表16に示されるように、G4Sリンカーを含む共刺激性エンドドメインと、α又はβ定常領域のエンドドメインが欠失した構造とを連結させた場合、得られたα-del-(G4S)3-OX40は、セントラルメモリーT細胞の有意な分化を示したが、α(α-del-OX40)又はβ(β-del-OX40)定常領域のエンドドメインにOX40が直接連結した構造も、セントラルメモリーT細胞の分化を促進した。同時に、種々の改変構造を有するmut-STAR T細胞のエフェクターT細胞の数は、mut-STARのエフェクターT細胞の数よりも有意に少なかったが、図22及び表17に示すように、ナイーブT細胞の割合はそれぞれ、mut-STARのエフェクターT細胞の割合よりも有意に高かった(28.3%)。腫瘍殺傷結果、ELISA結果及び細胞分化のフローサイトメトリー検出を組み合わせると、欠失し、(G4S)3リンカーを介してOX40エンドドメインに接続されたα又はβ定常領域のエンドドメインを有するmut-STARは、腫瘍殺傷効果及びIL-2分泌に影響を及ぼすことなく、T細胞のメモリー細胞集団の分化を有意に改善することができる。
【0203】
【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】
【0204】
11.変異型STAR-T細胞の機能に対する膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるアルギニンへのTCRエンドサイトーシス関連リジン改変の効果
11.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培養培地と混合し、次いで培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、エフェクター細胞対標的細胞の比を決定し、通常1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、更に、標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして細胞増殖数の変化を観察した。感染効率に基づいて総T細胞数を算出し、標的細胞の一般的な用法は1×105個/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0205】
11.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的は、一般に細胞表面タンパク質であり、T細胞を活性化してT細胞の機能を検出するために直接使用することができ、特に、標的抗原に通常1×105/ウェルの陽性T細胞を添加し、24時間遠心分離及び活性化してT細胞機能を検出するための細胞懸濁液又は培養上清を回収した。
【0206】
11.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と異なる時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を白色の96ウェルプレートに採取し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0207】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果は、図23及び表18に示されるように、T細胞対標的細胞の2:1又は1:1のE:T比での、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおいてアルギニンに改変されたTCRエンドサイトーシス関連リジンを有するmut-STARであるub-STARの腫瘍細胞殺傷効果が、mut-STAR T細胞の腫瘍細胞殺傷効果よりも有意に低いことを示した。
【0208】
11.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化の間、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等の多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺傷させるか、又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けた。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を収集し、遠心分離し、上清を採取した。使用したIFN-γ及びIL-2ELISAキットは、ヒトIL-2非被覆ELISA、ヒトIFN-γ非被覆ELISA(それぞれ、第88-7025号、第88-7346号、第88-7316号)であった。具体的な工程は以下の通りであった。10Xコーティング緩衝液をddH2Oで1Xに希釈し、コーティング抗体(250X)を添加し、ウェルを混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加した。ラップで封止し、4℃で一晩静置した後、1×PBST(洗浄緩衝液とも呼ばれる、0.05%Tween20を添加した1×PBS)を用いて、毎回260μL/ウェルで3回洗浄し、5×ELISA/ELISPOT DiluentをddH2Oで1×に希釈した後、200μL/ウェルで96ウェルプレートに添加し、室温で1時間静置した。PBSTで1回洗浄し、検量線(それぞれ2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈し、1xDiluentで20~50倍に希釈した。検量線に従って希釈した試料を100マイクロリットル/ウェルで添加し、2つの並列ウェルを採取し、室温で2時間インキュベートし、PBSTを3回洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈した検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを3回の洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈したHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、発色時間が15分未満であるTMBを発色のために添加し、終了のために2NのH2SO4を添加し、450nmでの光吸収を検出した。
【0209】
ELISAの結果は、図24、25及び表19、20に示されるように、T細胞対標的細胞の2:1又は1:1又は1:2のE:T比で標的細胞と24時間共インキュベートした、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおいてアルギニンに改変されたTCRエンドサイトーシス関連リジンを有するmut-STARである、ub-STARによるIL-2及びIFN-γ分泌が、mut-STAR T細胞のub-STARによるIL-2及びIFN-γ分泌よりも有意に低いことを示した。
【0210】
11.5.T細胞分化変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞活性化中に、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、シグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を介して核内に伝達されてT細胞の分化を調節し、インビボでのT細胞の増殖及び持続性は、メモリーT細胞に分化したT細胞の数によって影響された。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類され得る。T細胞の表面におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーにより検出することにより、T細胞の分化を知ることができる。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再度遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0211】
フローサイトメトリーの結果は、mut-STAR及びub-STAR(膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおいてアルギニンに改変されたTCRエンドサイトーシス関連リジンを有するmut-STAR)の間で、セントラルメモリーT細胞の分化及びナイーブT細胞とエフェクターT細胞との比のいずれにも有意差が見られないことを示し、図26及び図27並びに表21及び表22に示されるように、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおけるアルギニンへのTCRエンドサイトーシス関連リジン改変が、mut-STAR T細胞の分化に有意な影響を及ぼさなかったことを示した。腫瘍殺傷結果、ELISA結果及び細胞分化のフローサイトメトリー試験を組み合わせると、ub-STAR、すなわち、膜貫通ドメイン又はエンドドメインにおいてアルギニンに改変されたTCRエンドサイトーシス関連リジンを有するmut-STARは、mut-STAR改変に対する効果的な促進効果を有さなかった。
【0212】
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】
【0213】
12.STAR-T細胞の機能に対する、α又はβ定常領域エンドドメインに接続された異なるサイトカイン受容体刺激領域を有する変異型STARの効果
12.1.T細胞及び標的細胞のインビトロ共培養方法
標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞は浮遊細胞であり、共インキュベーションのために、対応する数の細胞を採取し、標的細胞培養培地と混合し、次いで培養のために遠心分離した。具体的な工程は以下の通りであった。初代T細胞をパッケージング及び精製されたWT-STAR及びmut-STAR Tウイルスに感染させ、共培養の1日前に、感染効率をフローサイトメトリーによって検出し、エフェクター細胞対標的細胞の比を決定し、通常1:1又は2:1の比で共インキュベーションを行い、更に、標的細胞Raji-ルシフェラーゼ及び初代T細胞を7日間共インキュベートして細胞増殖数の変化を観察した。感染効率に基づいて総T細胞数を算出し、標的細胞の一般的な用法は1×105個/ウェル(96ウェルプレート)であった。
【0214】
12.2.標的抗原によるT細胞の刺激
本発明の標的は、一般に細胞表面タンパク質であり、T細胞を活性化してT細胞の機能を検出するために直接使用することができ、特に、標的抗原に通常1×105/ウェルの陽性T細胞を添加し、24時間遠心分離及び活性化してT細胞機能を検出するための細胞懸濁液又は培養上清を回収した。
【0215】
12.3.T細胞殺傷機能の検証:ルシフェラーゼアッセイ
T細胞を標的細胞と異なる時間共培養し、次いで、細胞懸濁液を穏やかに均一に吹き込み、ウェル当たり150μLの細胞懸濁液を採取し、白色の96ウェルプレートに添加し、1500rpm/分で5分間遠心分離し、上清を採取し、室温で15分間溶解するための細胞溶解物を添加し、次いで、4000rpm/分で15分間4℃で遠心分離し、次いで、各ウェルに2つの平行ウェルを採取して上清を採取し、ルシフェラーゼ基質(ホタルルシフェラーゼアッセイ試薬)を添加し、次いで、ゲイン値を100に固定して多機能性マイクロプレートリーダーによって検出して化学発光値を得た。細胞殺傷計算:細胞殺傷効率=100%-(ウェル当たりのエフェクター細胞-標的細胞値/ウェル当たりの対照細胞-標的細胞値)。
【0216】
ルシフェラーゼアッセイによるT細胞殺傷機能試験の検出結果は、図28及び表23に示されるように、異なるサイトカイン受容体刺激領域が変異型STARのα又はβ領域エンドドメインに接続されたとき、T細胞対標的細胞の2:1のE:T比において、β-IL-2Rb、α-IL-2Rb、α-IL-7RA、α-IL21Rは全て、mut-STARの殺傷効果と同様の殺傷効果を示したが、β-IL2RbQ、α-IL2RbQ及びα-IL7RAQは、mut-STARの殺傷効果よりも有意に低い殺腫瘍効果を示した。更に、異なるサイトカイン受容体刺激領域が連結された変異型STARの殺傷効果を検出し、α-del-(G4S)3-OX40-STARの殺傷効果と比較したところ、図29及び表24に示すように、2:1及び1:1のE:T比では、α-IL7RAの殺傷効果はα-del-(G4S)3-OX40-STARの殺傷効果よりもわずかに低かったが、他のサイトカイン受容体構造が連結されたSTARの殺傷効果はα-del-(G4S)3-OX40-STARの殺傷効果よりも有意に低かった。
【0217】
12.4.T細胞によるサイトカイン分泌の分析:ELISA
T細胞活性化の間、TNF-α、IFN-γ及びIL-2等の多数のサイトカインが放出されて、T細胞が標的細胞を殺傷させるか、又はT細胞自体の増殖を促進するのを助けた。T細胞を標的細胞又は抗原によって刺激した後、T細胞を収集し、遠心分離し、上清を採取した。使用したIFN-γ及びIL-2ELISAキットは、ヒトIL-2非被覆ELISA、ヒトIFN-γ非被覆ELISA(それぞれ、第88-7025号、第88-7346号、第88-7316号)であった。具体的な工程は以下の通りであった。10Xコーティング緩衝液をddH2Oで1Xに希釈し、コーティング抗体(250X)を添加し、ウェルを混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加した。ラップで封止し、4℃で一晩静置した後、1×PBST(洗浄緩衝液とも呼ばれる、0.05%Tween20を添加した1×PBS)を用いて、毎回260μL/ウェルで3回洗浄し、5×ELISA/ELISPOT DiluentをddH2Oで1×に希釈した後、200μL/ウェルで96ウェルプレートに添加し、室温で1時間静置した。PBSTで1回洗浄し、検量線(それぞれ2~250、4~500、4~500の範囲)に従って希釈し、1xDiluentで20~50倍に希釈した。検量線に従って希釈した試料を100マイクロリットル/ウェルで添加し、2つの並列ウェルを採取し、室温で2時間インキュベートし、PBSTを3回洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈した検出抗体を添加し、1時間のインキュベーション後、PBSTを3回の洗浄に使用し、次いで1xDiluentで希釈したHRPを添加し、30分間のインキュベーション後、溶液を6回洗浄し、発色時間が15分未満であるTMBを発色のために添加し、終了のために2NのH2SO4を添加し、450nmでの光吸収を検出した。
【0218】
ELISAの結果は、T細胞を標的細胞と24時間、1:1又は1:2のE:T比でインキュベートした場合、β-IL-2RbのIL-2分泌はmut-STARのIL-2分泌よりも有意に高かったが、α-IL-2Rb、β-IL-2RbQ及びα-IL-7RAQは同様のIL-2分泌を示したが、図30及び表25に示すように、α-IL-2RbQのIL-2分泌はmut-STARのIL-2分泌よりも有意に低かったことを示した。図31及び表26に示すように、β-IL-2RbのIFN-γ分泌はmut-STARのIFN-γ分泌よりも有意に高かったが、他の構造のIFN-γ分泌はmut-STARのIFN-γ分泌よりも有意に低かった。
【0219】
12.5.T細胞分化変化の検出:フローサイトメトリーによる分析
T細胞活性化中に、多数のサイトカイン及び他のケモカインが放出され、シグナルがサイトカイン又はケモカイン受容体を介して核内に伝達されてT細胞の分化を調節し、インビボでのT細胞の増殖及び持続性は、メモリーT細胞に分化したT細胞の数によって影響された。メモリーT細胞は、幹細胞T細胞、セントラルメモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞に分類され得る。T細胞の表面におけるCD45RA及びCCR7の発現をフローサイトメトリーにより検出することにより、T細胞の分化を知ることができる。T細胞を標的細胞と共に7日間インキュベートし、遠心分離し、抗ヒト-CD45RA-Percp-cy5.5及び抗ヒト-CCR7-APCフロー抗体で30分間染色し、再度遠心分離し、PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド溶液で固定し、T細胞の分化をフローサイトメトリーによって検出した。
【0220】
α又はβ定常領域エンドドメインに連結された異なるサイトカイン受容体刺激領域を有する変異型STARは、セントラルメモリーT細胞の分化及びナイーブT細胞とエフェクターT細胞との比において様々な差異を示し、ここで、α-IL-2Rb、β-IL-2Rb、α-IL-2RbQ、β-IL-2RbQは、mut-STARと比較して有意差を示さなかったが、α-IL-7RA、α-IL-7RAQ及びα-IL-21Rは、図32及び図33、並びに表27及び表28に示されるように、mut-STARと比較して有意差を示さなかった。上記の結果に基づいて、mut型STAR T細胞の分化は、異なるサイトカイン受容体刺激領域が変異型STARのα又はβ定常領域エンドドメインに接続した場合に有意に影響を受けた。
【0221】
【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】
【0222】
13.様々なSTAR様T細胞のインビボ増殖及び抗腫瘍能力の評価
1)実験動物モデル
本実験では、NSG免疫不全マウスをモデルとして用いた。マウス遺伝子型は、T細胞、B細胞及びNK細胞を欠くNOD-Prkdcem26Il2rgem26/Njuであり、マクロファージ及び樹状細胞も欠損していた。NSGマウスは、現時点で最も完全な免疫不全マウス系統であり、移植腫瘍及びT細胞を拒絶しないため、T細胞療法の前臨床研究において広く使用することができる。この実験では、6~8週齢の雌NSGマウスを使用し、各バッチのマウスの体重差を2g以内に制御した。マウスを、特定の病原体フリー(SPF)バリア内の独立した換気ケージで飼育し、病原体の汚染を防ぐために、通常の食餌及びpHがわずかに酸性の飲料水を与えた。
【0223】
2)腫瘍モデルの構築
血液腫瘍モデルの構築では、ヒトバーキットリンパ腫細胞株Raji細胞を異種移植に使用した。Raji細胞は、レンチウイルスベクターによってルシフェラーゼ遺伝子を発現する細胞株であり、Raji腫瘍の発生及び変化を、マウスのフルオレセイン化学発光及びインビボイメージングによってリアルタイムで監視した。このモデルでは、異なる用量(一般に約1~3×106細胞)のRaji-ルシフェラーゼ細胞をマトリクスゲルと混合し、腹腔内注射によって6~8週齢の雌NSGマウスに接種した。3日後、マウスにフルオレセインカリウム塩溶液を腹腔内注射し、腫瘍細胞の蛍光シグナルをインビボイメージングによって検出した。Raji細胞は、腹腔内に固形腫瘍を生じ、マウスの体重減少等の症状を引き起こし、マウスにおいて急速に増殖した。治療的処置の非存在下では、Raji腫瘍量はマウスにおいて約40日間で死亡をもたらした。
【0224】
3)動物実験操作
全ての動物操作は、Animalプロトコルの承認後に実施した。
【0225】
4)腫瘍成長をモニタリングするための手段
この実験では、インビボ蛍光イメージングを、基本的に、ルシフェラーゼ遺伝子を有する腫瘍細胞をコロニー形成のために動物に注射することによって使用した。酵素の存在下で特定の波長の光を基質として放出するフルオレセインカリウム塩溶液をマウスの腹腔内に注射し、インビボイメージングによってインビボで腫瘍細胞の蛍光シグナルを検出した。蛍光シグナルの定量分析を行い、ヒートマップを描画して腫瘍成長を定量的に反映させた。
【0226】
5)動物におけるT細胞活性及び増幅を検出する方法
インビボでのT細胞の生存及び増殖は、それらの最終的な抗腫瘍効果に直接関係している。動物におけるT細胞の活性及び増殖を検出するために、血液試料をマウスから定期的に採取し、末梢血中のSTAR-T細胞の割合、細胞状態及び細胞グループ分けを分析した。具体的な操作は以下の通りであった。3~4日ごとに、マウスをイソフルランで麻酔し、マウスの眼窩から約100uLの血液を採取した。血液試料を抗凝固、血漿収集及び赤血球切断に供し、次いで残りの細胞をフロー染色に供して、CD4対CD8の比並びにT細胞サブセット分析及び細胞状態分析に使用したCCR7、CD45RA、PD-1、LAG-3及びTIM-3等の分子を検出した。同時に、マウスの末梢血中のSTAR-T細胞の絶対数をフローサイトメトリー又はデジタルPCRによって得た。更に、実験の最後に、マウスを解剖して、マウスの他の免疫器官におけるT細胞の割合を検出することができる。
【0227】
6)動物におけるT細胞安全性の評価方法
STAR-T細胞の毒性及び安全性を評価するために、実験動物においてSTAR-T細胞によって副作用が引き起こされているかどうかを調べた。マウスの行動状態を観察し、マウスの病態を解析し、マウスの重要な器官から採取した切片を解析することにより、再注入されたT細胞が有意な毒性を有するかどうかを評価することができた。同時に、マウスの非腫瘍組織におけるT細胞の浸潤を分析することによって、T細胞がマウスの非腫瘍組織に対してオフターゲット殺傷効果を有するかどうかを決定することができる。更に、マウス血液中のIL-2、IFN-γ、TNFα又はIL-6等のサイトカインのレベルを検出することによって、T細胞が全身性サイトカインストームを引き起こし得るかどうかを決定することができる。
【0228】
7)T細胞腫瘍浸潤能の評価方法
T細胞が腫瘍に浸潤する能力は、固形腫瘍をチャレンジするT細胞の中核能力である。T細胞の浸潤能を検出するために、腫瘍組織を最初に分離し、続いて消化及び粉砕して単一細胞を得ることができ、これをフロー染色に供して腫瘍組織中のT細胞の割合を検出した。同時に、腫瘍懸濁液中の腫瘍細胞、腫瘍間質細胞及び免疫細胞を密度勾配遠心分離(例えば、Percoll勾配、Ficoll勾配等)によって更に分離して、精製された腫瘍浸潤T細胞を得ることができ、精製された腫瘍浸潤T細胞の特徴、例えばケモカイン受容体発現、T細胞枯渇等を配列決定及び他の方法によって詳細に分析することができる。
【0229】
8)結果
上記のインビトロ機能の結果に従って、5×105個のRaji-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を、6週齢~8週齢のNCG雌マウスに尾静脈を介して接種して、マウス腫瘍モデルを構築し(図34)、αβ OX40-STAR又はmut-STAR T細胞を発現するインビボ機能を更に評価した。6日目に、担癌マウスを4つの群に分けた。A:PBS注射群(等量のPBSを注射);B:mut-STAR T細胞注射群;C:αβ OX40-STAR T細胞注射群;D:BBz-CAR-T細胞注射群。B/C/D群のマウスには、尾静脈によって5×105個のTCR T細胞を注射し、A群のマウスには等量の200μLのPBSを注射した。次の数週間で、腫瘍細胞成長、インビボでのTCR T細胞増殖及びマウス生存をモニタリングした。図34及び図35に示すように、対照群と比較して、本実施例で構築したαβ OX40-STAR T及びmut-STAR T細胞は、担癌マウスの生存時間を有意に延長することができるが、腫瘍が消失し、腫瘍細胞を異なる時点でマウスに再注入した後、αβOX40-STAR T及びmut-STAR Tは腫瘍細胞を適切に排除することができ、αβOX40-STAR Tの効果はmut-STAR Tの効果よりも良好であり、αβOX40-STAR T群のマウスの生存時間はSTAR-T群及びCAR-T群の生存率よりも高かった。また、図36に示すように、STAR-T群と比較して、αβOX40-STAR T細胞のインビボでの増殖効果はSTAR-T細胞よりも良好であり、腫瘍再注入の場合、αβOX40-STAR T細胞ではわずかに増殖したが、STAR-T細胞では生じなかった。以上の動物実験の結果から、αβOX40-STAR構造のインビトロ及びインビボでの効果は、mut-STARよりも良好であることを見出すことができる。
【0230】
上記インビトロ機能の結果に従って、2×106個のRaji-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を6週齢~8週齢のNCG雌マウスに腹腔内接種して、マウス腫瘍モデルを構築し(図37)、異なる効果を発現するmut-STAR T細胞のインビボ機能を更に評価した。8日目に、担癌マウスを7つの群に分けた。A:PBS注射群(等量のPBSを注射);B:dual-car;C:dual-STAR-T細胞注射群;D:αβOX40-STAR T細胞注射群;E:α-del-OX40-STAR-T細胞注射群;F:α-del-(G4S)3-OX40-STAR-T細胞注入群;及びG:α-IL7R-STAR-T細胞注射群。B/C/D/E/F/G群のマウスには、尾静脈によって2×106個のTCR T細胞を注射し、A群のマウスには等体積の200μLのPBSを注射した。次の数週間で、腫瘍細胞成長、インビボでのSTAR-T細胞増殖及びマウス生存をモニタリングした。図37に示すように、本実施例で構築したα-del-(G4S)3-OX40-STAR-T細胞は、コントロール群と比較して担癌マウスの腫瘍細胞を有意に殺傷させることができ、α-del-(G4S)3-OX40-STAR-T細胞の効果は他の群よりも優れていた。動物実験の結果から、α-del-(G4S)3-OX40-STAR構造のインビトロ及びインビボでの効果は、mut-STARよりも良好であることを見出すことができる。
【0231】
実施例2 改善されたTCR
1.定常領域変異を有するT細胞受容体及びT細胞受容体の変異体の設計
T細胞に移入された後、外因性TCR分子は、T細胞の内因性TCRとミスマッチしてミスマッチを形成し得、これは一方では、TCR分子の正しい対合の効率を低下させ、TCR T細胞の機能を弱め得、他方、潜在的なオフターゲット毒性をもたらし、治療のリスクを増加させる可能性がある。この問題を解決するために、本発明によれば、野生型αβTCR配列(wtTCR、図38の左側)の定常領域を変異改変し、それぞれcysTCR、hmTCR及びmut-ohmTCRの設計をもたらした(図38)。
【0232】
1.1.定常領域に分子間ジスルフィド結合を導入したcysTCRの設計
本発明者らは、TCRα鎖定常領域の48位のトレオニン(Thr)をシステイン(Cys)に変異させ、TCRβ鎖定常領域の56位のセリン(Ser)をシステイン(Cys)に変異させた。2つの新たに付加されたシステインは、外因性TCR(cysTCR、図38の左側の2つ目)の2つの鎖の間にジスルフィド結合を形成し、それによってTCR分子がより安定な複合体を形成するのを助け、したがってより良好な機能を得る。
【0233】
1.2.マウスhmTCRの設計
TCRα鎖及びβ鎖の定常領域配列は、ヒト及びマウス等の異なる種において高度に保存されている。研究により、マウスTCR定常領域はヒト化TCR定常領域とのミスマッチを形成しにくく、マウス定常領域はヒトCD3分子との親和性がより高く、ヒトT細胞においてより安定な複合体を形成し、TCR T細胞の機能を大幅に改善することができることが示されている。したがって、ヒト化TCRの定常領域配列をマウスTCRの定常領域配列に置き換えて、マウス定常領域を有するTCR分子、すなわちhmTCRを構築した(図38の右側の2つ目)。
【0234】
1.3.膜貫通疎水性アミノ酸置換及び更なる分子間ジスルフィド結合を有するマウスmut-ohmTCRの設計
TCR分子の設計を更に最適化するために、hmTCR用に設計されたマウス定常領域を、ヒトT細胞におけるTCR分子の発現に適合するようにコドンヒト化した。同時に、マウスTCRα鎖定常領域の48位のトレオニン(Thr)をシステイン(Cys)に変異させ、TCRβ鎖定常領域の56位のセリン(Ser)をシステイン(Cys)に変異させて、更なる分子間ジスルフィド結合を形成してTCR分子がより安定な複合体を形成するのを助けた。また、研究は、TCRα鎖膜貫通領域の111から119のアミノ酸領域をLSVMGLRILからLLVIVLRILに変更したこと、すなわち、112位のセリン(Ser)をロイシン(Leu)に、114位のメチオニン(Met)をイソロイシン(Ile)に、115位のグリシン(Gly)をバリン(Val)に変異させたことにより、膜貫通領域の疎水性を高め、TCR膜貫通領域が有する正電荷による不安定性を相殺し、TCR分子を細胞膜上でより安定にすることができ、したがってより良好な機能が得られることを示した。したがって、これら3つの考え方(図38の右側)を組み合わせて、Mut-ohmTCR構造を設計して、TCR T細胞の機能を向上させた。
【0235】
2.共刺激分子受容体エンドドメインを含むTCR-CD3分子の設計
TCR T細胞の、インビボでの増殖能力、効果生存時間、及び標的細胞を効率的に殺傷させるために腫瘍微小環境に浸潤する能力を改善するために、本発明者らによってTCR-CD3複合体を改変することによって新しい構造が設計され、それによって、TCR-Tの臨床応答を改善して持続的な治癒効果を達成するために、必要に応じて調節強化されたTCR-CD3細胞を可能にした。
【0236】
2.1.共刺激分子受容体エンドドメインを含むTCR分子(armored-TCR)の設計
TCRは、全てのT細胞表面の特別なマーカーであり、αβTCR及びγδTCRに分割され、対応するT細胞:αβT細胞及びγδT細胞を有していた。αβTCR及びγδTCRは、それぞれαβT細胞及びγδT細胞の性能を改善するために、本発明者らによって共刺激シグナルでそれぞれ改変された。
【0237】
αβT細胞のTCRは、TCRα鎖及びTCRβ鎖からなり、全T細胞の90%~95%を占めた。αβTCRは、可変領域と定常領域とからなり、可変領域は広い多様性を有し、抗原認識及び結合の役割を果たしたが、定常領域ドメインは構造的相互作用及びシグナル伝達の役割を果たした。T細胞の毒性及び増殖持続性を増強するために、本発明によれば、ヒト化共刺激分子受容体のエンドドメイン配列をαβTCR定常領域のC末端に導入して(左、図39)、STAR T細胞の機能に対する効果を研究した。本発明のαβTCR定常領域は、改変されていないwtTCR定常領域、追加の分子間ジスルフィド結合を含むcysTCR定常領域、マウスhmTCR定常領域、及びサブセクション1に記載の3つの改変の組合わせを有するmut-STARを含んでいた。共刺激シグナル伝達構造は、CD40/OX40/ICOS/CD28/4-1BB/CD27の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでいた。共刺激エンドドメインは、TCRα鎖若しくはTCRβ鎖、又はTCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に接続することができた。更に、共刺激分子ドメインは、TCR分子のエンドドメイン配列を欠失させた後に、直接又はG4S/(G4S)nを介して、TCR定常領域のC末端に、又はTCR定常領域のC末端に接続することができた。
【0238】
γδT細胞のTCRは、TCRγ鎖及びTCRδ鎖からなり、γδT細胞は、TCRδ鎖のタイプに基づいて3つのサブグループ:γδ1、γδ2及びγδ3に分割することができ、異なるサブグループはヒト体内で異なる分布を有する。γδT細胞は、MHC拘束性の様式で非ペプチド抗原を認識し、病原体及び腫瘍の監視において重要な役割を果たした。実験は、CD28/4-1BB及び同様の共刺激シグナルが、γδT細胞の活性化及び増殖において重要な役割を果たすことを示した。ヒト共刺激分子受容体のエンドドメイン配列を、本発明者らによって、TCRγ及びTCRδのC末端にそれぞれ導入して(右、図39)、γδT細胞の性能を改善した。
【0239】
2.2.共刺激分子受容体エンドドメインを含むCD3分子(armored-CD3)の設計
CD3サブユニットは、γ鎖、δ鎖、ε鎖及びζ鎖を含み、細胞の状態及び刺激に対する応答を調節するために、エクトドメインからエンドドメインにシグナルを伝達するTCR分子とT細胞受容体複合体を形成した。増強されたTCR T細胞を設計し、インビボでのT細胞の腫瘍殺傷能力、増殖能力及び生存時間を改善するために、CD3γ鎖、δ鎖、ε鎖及びζ鎖のC末端にヒト共刺激分子受容体エンドドメインを導入することによってCD3分子を本発明者らによって改変し(図40)、改変されたCD3分子をTCR T細胞において発現させてTCR T細胞の機能を改善した。
【0240】
3.共刺激分子受容体エンドドメイン及びその変異体を含むTCRのプラスミド構築
3.1 プラスミド供給源
レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、タンパク質発現ベクター、食細胞、レンチウイルスパッケージングプラスミド、レトロウイルスパッケージングプラスミド等を含む本発明で使用されるベクターは、商業的企業から購入されるか、又は商業的企業によって合成され、これらのベクターの全長配列が得られ、特異的切断部位は既知であった。
【0241】
3.2.断片供給源
本発明で言及されるTCRは、本発明で使用されるTCR-E 141、TCR-E 315、TCR-E 316を含む任意の機能性TCRであり得る。本発明で使用される遺伝子断片には、TCR-E141/TCR-E315/TCR-E316の可変領域、wtTCR定常領域、cysTCR定常領域、hmTCR定常領域、mut-ohmTCR定常領域、共刺激受容体エンドドメイン、タグ配列及びリンカー等が含まれ、これらは全て商業的会社から合成された。1つ以上の標的断片を、対応する機能的配列を得るためにプライマーを合成するPCRによって連結した。
【0242】
3.3 ベクター構築
ここで用いたレンチウイルスベクターはpHAGE-EF1α-IRES-RFPであり、直鎖状ベクターは制限酵素Not I/Nhe Iによって得られ、遺伝子断片は合成及びPCRによって得られ、完全ベクターは相同組換えによって得られた。
【0243】
4.ヒト初代TCR T細胞及び標的細胞株の構築
4.1 レンチウイルスパッケージング
無菌的に抽出した標的遺伝子プラスミド及びパッケージングプラスミドpsPAX2及びpMD2.Gを一定の割合でPEI(ポリエチレンイミン、PEI)と混合してLenti-X293T細胞をトランスフェクトし、細胞培養上清を48時間及び72時間で収集し、次いでこれを濾過し、PEG8000(ポリエチレングリコール、PEG)と混合し、続いて4℃で一晩静置し、上清を廃棄した後、3500rpmで30分間遠心分離し、次いで少量の培地で再懸濁して、濃縮レンチウイルスを得た。
【0244】
4.2 ヒト初代T細胞の単離、培養及びレンチウイルス感染
末梢血単核球(PBMC)を、リンパ球の分離に使用される溶液であるFicollを用いてボランティアの末梢血から単離し、次いで、T細胞を、EasySepヒトT細胞単離キット(stem cell technologies)の製品説明書に従って陰性選択によってPBMCから得、これをIL-2(100U/mL)を含有する1640完全培地を用いて1×106細胞/mLに再懸濁し、次いで、抗CD3/CD28抗体でコーティングされた培養皿で活性化した。48時間の活性化の後、32℃で2時間、1500rpmで遠心分離することによって、レンチウイルス系を用いて、TCR又は/及びCD3がロードされたウイルス粒子でT細胞に感染させ、次いで取り出し、37℃の細胞培養インキュベータ内で10時間インキュベートし、次いで培地の添加によって感染を終了させ、細胞を37℃の細胞培養インキュベータ内で連続培養した。感染の3日後に、TCR陽性細胞をフローサイトメトリーによって選別した。
【0245】
4.3 標的細胞株の構築
対数増殖期のRaji細胞に、レンチウイルス系を使用して、LMP2-RFP、HLA-A*1101-BSD及びルシフェラーゼ-GFPをそれぞれ負荷したウイルス粒子を感染させた。薬物スクリーニング及びフローソーティングにより、LMP2、HLA-A*1101分子及びルシフェラーゼを同時に安定に発現するRaji細胞が得られ、これをRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と命名した。
【0246】
5.異なる定常領域を有するTCR T細胞の機能に対する共刺激シグナルの効果
共刺激シグナルがインビボでの増殖を改善し、TCR T細胞の腫瘍殺傷効果を増強することができるかどうかを調べるために、OX40、CD40及びICOSエンドドメインを、4つの異なる定常ドメインを有するTCRα鎖及びβ鎖のC末端(wtE141、cysE141、hmE141、mut-ohmE141)にそれぞれ付加し、したがってプラスミドwtE141-αβ-OX40、cysE141-αβ-OX40、hmE141-αβ-OX40、mut-ohmE141-αβ-CD40、cysE141-αβ-CD40、hmE141-αβ-CD40、mut-ohmE141-αβ-CD40、wtE141-αβ-ICOS、cysE141-αβ-ICOS、hmE141-αβ-ICOS、mut-ohmE141-αβ-ICOS及びmut-ohmE141-αβ-ICOSを構築した。更に、様々な定常領域を有するTCR-E315及びTCR-E316のα鎖及びβ鎖のC末端にOX40、CD40又はICOSを付加することによってもプラスミドを構築した。ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドでパッケージングし、次いで、これを初代T細胞に感染させ、陽性細胞を選別するために使用した。選別したTCR T細胞を、0日目として計数しながら、セクション5のスキームに従ってRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、次いで、フロー分析のためにそれぞれ1日目、3日目、5日目、7日目及び10日目に細胞を回収した。このうち、使用した培地はIL-2を含まない1640完全培地であり、TCR T細胞の初期数は1×105細胞であり、各時点の試料を独立してインキュベートし、残りの共インキュベートした試料を翌日に液体で半交換し、標的細胞を補充した。フロー分析に使用した細胞を予め抗ヒトCD3抗体で染色し、その特定の体積を収集し、機械で分析したときに記録し、システム中のT細胞の数及び割合を変換によって得た(図41A)。E141 TCR T細胞(左、図41A)の絶対数の増殖曲線から分かるように、標的細胞エピトープを認識した後、TCR定常領域のC末端にOX40受容体が付加されたTCR T細胞は、より良好な活性化及び増殖を示した。更に、システム中のT細胞及び残存標的細胞の割合を分析し(右、図41A)、OX40を添加したTCR T細胞が、特にmut-ohmE141 TCR T細胞について、より強い腫瘍クリアランス能力を示し、共刺激シグナルがT細胞の機能を有意に改善することが見出された。更に、CD40又はICOSを添加したTCR-E141のインビトロでの長期共培養もまた、キメラ共刺激シグナルが細胞増殖を有意に改善し、T細胞の腫瘍殺傷能力を増強し得ることを示した。TCRをTCR-E315(図41B)及びTCR-E316に置き換えた場合、同様の結果が得られた。上記の実験結果によれば、TCRのC末端におけるOX40、CD40及びICOS等の共刺激ドメインのエンドドメインの融合は、TCR T細胞の増殖能力及び腫瘍細胞を殺傷させる能力を有意に増強することができ、その中で、共刺激ドメインのエンドドメインをmut-ohm TCRの定常領域に付加することによって、対応するTCR T細胞の増殖及び殺傷能力の改善が最も有意であった。
【0247】
6.TCR T細胞機能に対する異なる共刺激シグナルの効果
異なる共刺激シグナルによって改変されたTCR T細胞の性能を比較するために、4-1BB、CD28、ICOS、OX40、OX40、CD27及びCD40分子のエンドドメインをそれぞれmut-ohmE141 TCR定常領域のC末端に付加し、次いで、構築したmut-ohmE141-αβ-4-1BB、mut-ohmE141-αβ-CD28、mut-ohmE141-αβ-ICOS、mut-ohmE141-αβ-OX40、mut-ohmE141-αβ-CD27、mut-ohmE141-αβ-CD27、mut-ohmE141-αβ-CD40TCR T細胞を、セクション5の共培養スキームに従ってRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、システム中のT細胞の数及び割合をフローサイトメトリーによって分析した。増殖曲線及びT細胞の絶対数のE:T比(図42A)の結果から、CD40、OX40、ICOS又はCD28をTCR定常領域のC末端に添加したTCR T細胞は、共刺激シグナル改変を伴わないmut-ohmE141-αβ-wtと比較して、優れた活性化及び増殖能及び有意に改善された殺傷機能を示したことが分かる。これらの中で、CD40及びOX40を添加したTCR T細胞は、より有意な活性化、増殖及び腫瘍クリアランスを示した。加えて、同様に、この実施例に記載される共刺激分子に接続されたα鎖及びβ鎖の両方のC末端を有するTCR-E315及びTCR-E316プラスミドを構築し、いずれかのTCR T細胞による標的細胞の殺傷に対する異なる共刺激分子の効果を分析した。結果は、TCR-E141と同様の結果がTCR-E315(図42B)及びTCR-E316からも得られたことを示し、機能的TCR定常領域のいずれかのC末端で共刺激シグナルを選択的にキメラ化することによって、対応するTCR T細胞の増殖及び殺傷能力を有意に増加させることができたことを示した。これに基づいて、TCR T細胞は、共刺激シグナル又はTCR C末端の他の機能的ドメインをキメラ化することによってTCR T細胞の性能を改善するための要件に従ってカスタマイズすることができる。
【0248】
7.armored--TCR T細胞の機能に対するTCR分子の(G4S)nリンカー及びエンドドメイン配列の効果
(G4S)nリンカーは、タンパク質工学において広く使用され、融合分子に融合分子の機能を改善するためのより良好な柔軟性を与えることができる。共刺激受容体エンドドメインを組み込んだTCR分子の機能を更に改善するために、融合タンパク質armored-TCR分子の機能に対する(G4S)nリンカーの効果を研究した。mut-ohmE141-αβ-G4S-OX40及びmut-ohmE141-αβ-(G4S)3-OX40プラスミドを、共刺激受容体ドメインとmut-ohmE141TCR分子のC末端との間に1つ又は3つのG4Sリンカーを導入することによって構築し、加えて、mut-ohmE141-αβ-delC-G4S-OX40及びmut-ohmE141-αβ-delC-(G4S)3-OX40プラスミドも、mut-ohmTCRαβ定常領域のC末端のエンドドメインを欠失させ、次いで1つ又は3つのG4Sリンカーを介して共刺激受容体ドメインに接続することによって設計した。同様に、mut-ohmE141-αβ-CD40、mut-ohmE141-αβ-ICOS、並びにOX40、CD40及びICOS改変を有するTCR-E315及びTCR-E316にリンカーを導入し、対応するプラスミドを構築した。Lenti-X293Tを第2世代のパッケージングプラスミドでトランスフェクションした後、ウイルスを得、これを使用して初代T細胞を感染させ、陽性細胞を選別した。選別したTCR T細胞を、0日目として計数しながら、セクション5のスキームに従ってRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、次いで、フロー分析のためにそれぞれ1日目、3日目、5日目、7日目及び10日目に細胞を回収した。T細胞の増殖曲線及び絶対数のE:T比(図43A)の結果から、TCR定常領域のC末端とOX40エンドドメインとの間に1つ又は3つのG4Sを導入すると、TCR T細胞の増殖及び殺傷能力を高めることができ、TCR定常領域のC末端における細胞内アミノ酸の欠失は、リンカーを添加しないmut-ohmE141-αβ-wtと比較して、TCR T細胞の機能を更に改善することができることが分かる。OX40をCD40又はICOSで更に置換した後、TCR T細胞の増殖及び殺傷能力もまた、対照群のmut-ohmE141-αβ-CD40及びmut-ohmE141-αβ-ICOSと比較して、上記改変後に有意に増強された。一方、TCR-E315(図43B)及びTCR-E316からも同様の結果が得られた。
【0249】
8.TCR T細胞の機能に対する異なるTCR鎖への共刺激構造の連結の効果
T細胞機能に対する異なるTCR鎖への共刺激ドメインの連結の効果を調べるために、4-1BB及びOX40のエンドドメインをTCRα鎖、又はTCRβ鎖、又はTCRα鎖とβ鎖の両方のC末端に付加して、以下のようにプラスミドを構築した。mut-ohmE141-α-4-1BB、mut-ohmE141-β-4-1BB、mut-ohmE141-αβ-4-1BB、mut-ohmE141-α-OX40、mut-ohmE141-β-ox40、及びmut-ohmE141-αβ-ox40。同様に、TCR-E315及びTCR-E316の異なる鎖にOX40又は4-1BBエンドドメインを付加したプラスミドも構築した。ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドでパッケージングし、次いで、これを初代T細胞に感染させるために使用した。TCR陽性T細胞を、0日目として計数しながら、セクション5のスキームに従ってRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、次いで、フロー分析のためにそれぞれ1日目、3日目、5日目、7日目及び10日目に細胞を回収した。増殖曲線の結果及びT細胞の絶対数のE:T比(図44図45;AはE141であり、BはE315である)から分かるように、共刺激シグナルが付加されていないmut-ohmE141-wtと比較して、TCRα鎖又はβ鎖定常領域の一方のみのC末端に4-1BBドメインが導入されたTCR T細胞は、TCRα鎖及びβ鎖の両方のC末端に導入された場合よりも良好な活性化及び増殖を示し、このような導入はTCRα鎖のみで行われた場合の方が、TCRβ鎖のみで行われた場合よりもわずかに良好な効果を示した。対照的に、OX40ドメインをTCRα鎖定常領域のみのC末端に導入する設計は、TCRβ鎖のみに導入する設計又は両鎖に導入する設計よりも有意に優れていた(図45)。一方、TCR-E315及びTCR-E316からも同様の結果が得られた。上記の実験結果は、TCRα鎖のC末端における共刺激エンドドメインの導入が、標的細胞の抗原性エピトープの認識後のTCR T細胞の最良の活性化及び増殖を促進し、TCRβ鎖のみ又はTCRα鎖及びβ鎖の両方において同時に共刺激ドメインをキメラ化することと比較して、強力な殺傷機能の改善を示すことを示した。
【0250】
9.TCR T細胞の機能に対するTCRα鎖のC末端へのG4Sリンカーを含む共刺激エンドドメインの連結の効果
サブセクション6、7及び8の結果を組み合わせて、共刺激受容体エンドドメインを組み込んだarmored-TCR T細胞の機能を更に改善するために、細胞内アミノ酸を除去した後、共刺激受容体エンドドメインをTCRα鎖のC末端に直接又はTCRα鎖のC末端に連結することによる、armored-TCR T細胞の機能に対する効果を試験した。プラスミド:wtE141-α-OX40、wtE141-α-G4S-OX40、wtE141-α-delC-G4S-OX40、wtE141-αβ-delC-G4S-OX40、hmE141-α-OX40、hmE141-α-G4S-OX40、hmE141-α-delC-G4S-OX40、hmE141-αβ-delC-G4S-OX40、cysE141-α-OX40、cysE141-α-G4S-OX40、cysE141-α-delC-G4S-OX40、cysE141-αβ-delC-G4S-OX40、mut-ohmE141-α-OX40、mut-ohmE141-α-G4S-OX40、mut-ohmE141-α-delC-G4S-OX40及びmut-ohmE141-αβ-delC-G4S-OX40を構築した。プラスミド:CD40及びICOSを付加したTCR-E141、並びにOX40、CD40及びICOSを付加したTCR-E315、TCR-E316も構築した。ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドでパッケージングし、次いで、これを初代T細胞に感染させるために使用した。TCR陽性T細胞を、0日目として計数しながら、セクション5のスキームに従ってRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ細胞と共培養し、次いで、フロー分析のためにそれぞれ1日目、3日目、5日目、7日目及び10日目に細胞を回収した。結果(図46)から、TCRα鎖のC末端と共刺激分子との間に1つのG4Sを導入することにより、TCR T細胞の増殖能及び殺傷能が増大し、TCR定常領域のC末端の細胞内アミノ酸を欠失させることにより、リンカーを添加しない対照群と比較して、TCR T細胞の機能を更に向上させることができることが示された。キメラ分子をTCRα鎖及びβ鎖の両方に同時に付加した群と比較して、α鎖に対する同じ改変は、両方の鎖に対する同時の同じ改変よりも有意に良好な効果を示した。更に、OX40をCD40又はICOSで更に置換した後、対照群と比較して、α鎖の細胞内アミノ酸を除去した後にG4Sを介してCD40又はICOSに連結されたTCRTの増殖及び殺傷能力も有意に増強された。一方、TCR-E315及びTCR-E316からも同様の結果が得られた。
【0251】
10.armored-TCR T細胞のインビボ増殖及び抗腫瘍能力の評価
共刺激ドメインを含むTCR T細胞の増殖及び抗腫瘍効果をインビボで検証するために、4×105個のRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を、5週齢~6週齢のNOD/Scid IL-2R γ null(NCG)雌マウスに尾静脈によって接種して、マウス腫瘍モデルを構築した(図47参照)。6日目に、マウスを以下のように5つの群に分けた。A:PBS注射群(等量のPBSを注射);B:mut-ohmE141 TCR T細胞注入群;C:mut-ohmE141-αβ-ox40 TCR T細胞注射群、D:mut-ohmE141-α-OX40 TCR T細胞注射群、及びE:mut-ohmE141-αβ-delC-G4S-OX40 TCR T細胞注射群であり、B/C/D/E群のマウスに尾静脈によって4×105個のTCR T細胞を注射し、A群には等容量の200μLのPBSを注射した。次の数週間において、マウスにおける腫瘍細胞成長、マウスにおけるヒトTCR T細胞増殖及びマウス生存をモニタリングした。図48に示されるように、本実施例において構築された共刺激分子を含むTCR T細胞は、コントロール群と比較して、マウスにおいてより良好な増殖を示した。また、図47及び図49に示されるように、コントロール群と比較して、この実施例において構築されたmut-ohmE141-α-OX40 TCR T細胞は、担癌マウスの生存期間を有意に延長し、したがって、マウスの生存率を改善した。
【0252】
11.armored-CD3分子を発現するTCR T細胞の機能の評価
(1)インビトロでの機能評価
TCR T細胞の機能に対するδ鎖、ε鎖、γ鎖及びζ鎖を含む異なるCD3サブユニットのC末端へのヒト共刺激受容体エンドドメインの導入の効果を比較するために、本発明によれば、CD3分子を改変して以下のプラスミド:CD3δ-4-1BB、CD3δ-CD28、CD3δ-ICOS、CD3δ-OX40、CD3ε-4-1BB、CD3ε-CD28、CD3ε-ICOS、CD3ε-OX40、CD3γ-4-1BB、CD3γ-CD28、CD3γ-ICOS、CD3γ-OX40、CD3ζ-4-1BB、CD3ζ-CD28、CD3ζ-ICOS、及びCD3ζ-OX40を構築し、ここで、CD3は、(G4S)3リンカーを介して共刺激受容体ドメインに連結されていた。改変されたarmored-CD3分子及びcysE141 TCR分子をT細胞において同時に発現させ、次いで、フローソーティングによって得られた二重陽性細胞を、Raji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼとセクション5に従って共培養して、TCR T細胞の機能を評価した。インビボでのT細胞増殖曲線、図50に示すE:T比、及び図51に示す7日目のE:T比の結果から、CD3δ-OX40分子又はCD3γ-ICOS分子を発現しているcysE141 TCR T細胞は、他のarmored-CD3TCR T細胞又はarmored-CD3分子を有さないcysE141 TCR T対照群と比較して、増殖能及び殺傷能が有意に優れていた。同時に、7日目に収集した共培養上清中のサイトカインIFNγレベル(図52)は、armored-CD3分子を含まないcysE141と比較して、CD3δ-OX40又はCD3γ-ICOSの発現がcysE141 TCR T細胞のより良好な活性化を促進することを示した。一方、TCR-E315及びTCR-E316からも同様の結果が得られた。
【0253】
(2)インビボでの機能評価
上記のインビトロ機能の結果に従って、4×105個のRaji-HLA-A*1101-LMP2-ルシフェラーゼ腫瘍細胞を、5週齢~6週齢のNCG雌マウスに尾静脈により接種して、マウス腫瘍モデルを構築し(図53)、CD3δ-OX40又はCD3γ-ICOS分子を発現するcysE141 TCR T細胞のインビボ機能を更に評価した。6日目に、担癌マウスを以下の4つの群に分けた。A:PBS注射群(等量のPBSを注射);B:cysE141TCR T細胞注入群;C:CD3δ-OX40cysE141TCR T細胞注入群;及びD:CD3γ-ICOS cysE141TCR T細胞注射群であり、B/C/D/E群のマウスに4×105個のTCR T細胞を尾静脈によって注射し、一方、A群のマウスに等量の200μLのPBSを注射した。次の数週間で、腫瘍細胞成長、インビボでのTCR T細胞増殖及びマウス生存をモニタリングした。図53及び図55に示すように、対照群と比較して、この実施例で構築されたCD3δ-OX40cysE141TCR T細胞は、担癌マウスの生存期間を有意に延長した。更に、図54に示すように、対照群と比較して、CD3δ-OX40分子を発現するcysE141TCR T細胞は、マウスにおいてより良好な増殖を示した。
【0254】
12.TCR T細胞機能に対する共刺激シグナルの効果
共刺激分子がγδTCR T細胞の機能に影響を及ぼすかどうかを調べるために、ヒト共刺激分子のエンドドメイン配列を、TCRγ鎖、TCRδ鎖、TCRγ鎖及びTCRδ鎖定常領域の両方のC末端にそれぞれ導入した。共刺激受容体エンドドメインを組み込んだγδTCR T細胞の機能を更に改善するために、共刺激受容体ドメインを、G4Sリンカーを介してTCRγ鎖及びδ鎖のC末端に直接連結し、その細胞内アミノ酸を除去して、又は除去せずに、以下のようにプラスミドを構築した。TCR-G115-γ-OX40、TCR-G115-δ-OX40、TCR-G115-γδ-OX40、TCR-G115-γδ-G4S-OX40、TCR-G115-γδ-delC-G4S-OX40。ウイルスを第2世代パッケージングプラスミドでパッケージングし、次いで、これを初代T細胞に感染させ、陽性細胞を選別するために使用した。選別したγδTCR T細胞をエフェクター細胞として使用し、ヒトDaudi細胞(バーキットリンパ腫)を標的細胞として使用した。IL2を含まない1640の完全培地を培地として、5:1のE:T比で24時間共培養した。操作は乳酸脱水素酵素(LDH)放出法(Promega)の指示に従って行った。細胞殺傷率は以下のように計算した。細胞殺傷率(%)=[(A実験細胞-Aエフェクター細胞自発的放出ウェル-A標的細胞自発的ウェル)/(A標的細胞自発的最大放出ウェル-A標的細胞自発的ウェル)]×100%。また、24時間共培養した後の上清を回収し、ELISA kit(Invitrogen)の指示に従って操作し、上清中のIFN-γレベルを検出した。結果(図56及び57)から、コントロール群と比較して、TCRのC末端に共刺激分子のエンドドメインが付加されたγδT細胞の方が、より強い腫瘍クリアランス能を有しており、TCRγ鎖及びδ鎖の両方のC末端にOX40を導入する設計は、TCRγ鎖及びδ鎖の一方のみのC末端にOX40を導入する設計よりも有意に優れていた。そのような導入のない対照群と比較して、細胞内アミノ酸の欠失を伴うTCR定常領域のC末端と共刺激分子との間にG4Sを導入することによる設計は、γδTCR T細胞の殺傷能力を増加させた。
【0255】
実施例3 STARの定常領域のN末端改変によるSTARへの効果
1.STAR受容体定常領域ドメインの設計
この実施例では、hSTARは、ヒトTCR定常領域を含むSTARを指した。hmct STARは、実施例1に示すシステイン置換及び膜貫通ドメイン改変を有する定常領域を含むSTARを指し、マウスTCRα鎖定常領域はhmct STAR TCRα(配列番号41)であり、マウスTCRβ鎖定常領域はhmct STAR TCRb(配列番号6)であり、具体的な構造は図58に示す。
【0256】
STAR分子の設計を更に最適化するために、α鎖定常領域における定常領域マウス化、システイン部位変異及び疎水性アミノ酸変異に基づいて、より良好な結果を得るために、STAR分子の定常領域のN末端を特異的に再配置した。再配置は、いくつかの配列が欠失され、一方、いくつかの配列のヒト化変異が行われたことを意味する。ヒト化突然変異の重要性は、STAR分子の機能を保証しながら、STAR-T細胞が臨床応用における受容体によって拒絶される可能性を最大限回避するために、STAR分子中の非ヒト配列を可能な限り減少させることにあった。
【0257】
TCRα鎖定常領域のN末端における18アミノ酸再編成(マウス配列はDIQNPEPAVYQLKDPRSQであった)のスケジュールをアミノ酸特性に基づいて分析したところ、マウス及びヒト化配列におけるE6D、K13R、R16K及びQ18Sは相同アミノ酸置換に属し、一方、P15S置換は非極性アミノ酸から極性アミノ酸への置換に属していたことが見出されたため、この部位付近のタンパク質は本質的に保存的ではなく、タンパク質機能に影響を及ぼすことなく改変することができると考えることができた。要約すると、1~14位のアミノ酸配列を保持し、ヒト化し、15~18位のアミノ酸を欠失させた。
【0258】
TCRβ鎖定常領域のN末端における25アミノ酸再編成(マウス配列はDLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKであった)のスケジュールをアミノ酸特性に基づいて分析したところ、マウス及びヒト化配列中のR3K及びL12Vのみが相同なアミノ酸置換であり、T6F、K9E、S11A、K17E、A21S、N22H及びK23Tは不均一なアミノ酸置換であることが見出されたため、これらの部位付近のタンパク質は本質的に保存的ではなく、タンパク質の機能に影響を及ぼすことなく改変することができると考えることができた。要約すると、1~16位のアミノ酸配列を保持し、ヒト化し、17及び21~25位のアミノ酸を欠失させた。
【0259】
図58に具体的な構造を示すと、N末端配置後、得られたTCRα鎖定常領域はNrec STAR TCRa(配列番号42)であり、得られたTCRβ鎖定常領域はNrec STAR TCRb(配列番号43)であった。
【0260】
2.STAR共刺激因子の設計
1)STARの異なる最適化手法の組合わせ
異なるSTAR機能に対する共刺激因子の効果を検証するために、元の最適化されていないSTAR構造(ヒトTCRα/β STAR、hSTAR)、C領域マウス化、シスチン改変及び膜貫通改変を伴うhSTARに基づくhmct STAR、並びにN末端改変を伴うhmct STARに基づくNrec STARを選択した。
【0261】
2)共刺激因子を含むSTAR構造の設計
本発明によれば、STAR-T細胞の毒性及びT細胞増殖持続性を増強するために、STAR定常領域のC末端にヒト化共刺激受容体のエンドドメイン配列を導入して(図59)、STAR-T細胞機能に対する効果を研究した。本発明のSTAR定常領域構造として、元の非最適化STAR構造(ヒトTCRα/βSTAR、hSTAR)、hSTARをベースに改変したhmct STAR、及びN末端を改変したhmct STARをベースとしたNrec STARの上記3つの構造を選択した。共刺激シグナル伝達構造は、CD40、OX40、ICOS、CD28、4-1BB及びCD27の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでいた。本発明では、改変は、TCRα鎖、β鎖、並びにα鎖及びβ鎖で起こり得る。本発明では、共刺激分子改変は、図60に示すように、TCRα鎖及びβ鎖で生じた。
【0262】
3.GPC39を標的とするGC33-STAR-T機能
1)CD19標的化抗体配列の決定
公開されたscFv配列FMC63を、GPC3標的化抗体重鎖可変領域(抗GPC3 GC33VH、配列番号53)及び抗体軽鎖可変領域((抗GPC3 GC33-VL、配列番号52)として選択した。
【0263】
2)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むベクターの構築
STARは、2つのポリペプチド鎖:抗GPC3 FMC63-VLをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR bC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第1のポリペプチド鎖、及び抗GPC3 GC33 VHをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR aC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第2のポリペプチド鎖を含んでいた。GM-CSFシグナルペプチドを両方の鎖に使用した。hSTAR/hmct STAR/Nrec STARの2つの鎖配列は、Furin-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片によって連結され、一緒にタンパク質に転写及び翻訳され、次いで、Furin及びp2Aに対応するプロテアーゼによって切断され、最終的に2つの独立したタンパク質鎖を産生した。遺伝子全体を、制限エンドヌクレアーゼ部位NheI及びNotIを介してレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF 1 αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子と共に有していた。以下のプラスミドを遺伝子断片:GC33-hSTAR、GC33-hmct STAR及びGC33-Nrec STARのクローニング、アセンブリング、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって得た。
【0264】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:3つのGPC3標的化STARベクター:GC33-hSTAR、GC33-hmct STAR及びGC33-Nrec STARに基づき、共刺激因子CD40、OX40、ICOS、CD28、41BB及びCD27を含むSTARベクターを構築し、上記の配列を遺伝子合成によって得た。共刺激因子を、PCRによってGC33-hSTAR、GC33-hmct STAR及びGC33-Nrec STARベクターに加え、同時にTCRα鎖及びβ鎖に同じ共刺激因子を付加することによる相同組換えを付加した。GC33-hSTAR-CD40、GC33-hSTAR-OX40、GC33-hSTAR-ICOS、GC33-hSTAR-CD28、GC33-hSTAR-41BB、GC33-hSTAR-CD27、GC33-hmct STAR-CD40、GC33-hmct STAR-OX40、GC33-hmct STAR-ICOS、GC33-hmct STAR-CD28、GC33-hmct STAR-41BB、GC33-hmct STAR-CD27、GC33-Nrec STAR-CD40、GC33-Nrec STAR-OX40、GC33-Nrec STAR-ICOS、GC33-Nrec STAR-CD28、GC33-Nrec STAR-41BB及びGC33-Nrec STAR-CD27を最終的に構築した。
【0265】
3)共刺激因子を含むCD19標的化STAR及びSTAR-Tの殺傷能力の検出
非感染T細胞(NC群)、並びにGC33-hSTAR、GC33-hmct STAR、GC33-Nrec STAR GC33-hSTAR-CD40、GC33-hSTAR-OX40、GC33-hSTAR-ICOS、GC33-hSTAR-CD28、GC33-hSTAR-41BB、GC33-hSTAR-CD27、GC33-hmct STAR-CD40、GC33-hmct STAR-OX40、GC33-hmct STAR-ICOS、GC33-hmct STAR-CD28、GC33-hmct STAR-41BB、GC33-hmct STAR-CD27、GC33-Nrec STAR-CD40、GC33-Nrec STAR-OX40、GC33-Nrec STAR-ICOS、GC33-Nrec STAR-CD28、GC33-Nrec STAR-41BB及びGC33-Nrec STAR-CD27を発現するT細胞を、24ウェルプレート中で24時間、HUH-7-luc細胞と共培養した。T細胞の陽性数をRFP陽性率に従ってそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数は4E5であり、合計1mLの共培養系であった。24時間共培養した後、細胞を1500rpm及び室温で5分間遠心分離し、上清を穏やかに廃棄した後、400マイクロリットルのタンパク質溶解物を室温で添加して10分間振盪下で溶解し、次いでEPチューブに移し、4℃で12000rpmで10分間遠心分離し、ウェル当たり20マイクロリットルで2つの複数のウェルを各試料について採取し、白色96ウェルプレートに添加し、50μLのルシフェラーゼ基質を添加して多機能マイクロプレートリーダーによって蛍光値を検出し、各群の標的細胞の殺傷を計算した。結果は、hSTARの殺傷効率がhmct STAR及びNrec STARの殺傷効率よりも有意に低いことを示し、そのうち、Nrec STARが最も高かった。共刺激因子を含む同じSTARの結果は、OX40及びICOSがSTARの殺傷効果を有意に増加させ得ることを示したが、他の共刺激因子はSTARの殺傷能力に有意な効果を有さず、41BBはSTARの殺傷機能を低下させたが、有意差はなかった(図61)。
【0266】
図4.共刺激因子を含むGPC3標的化STAR及びSTAR-Tの核RelBレベルの検出
得られた以下のウイルス:GC33-hSTAR、GC33-hmct STAR、GC33-Nrec STAR、GC33-hSTAR-CD40、GC33-hSTAR-OX40、GC33-hSTAR-ICOS、GC33-hSTAR-CD28、GC33-hSTAR-41BB、GC33-hSTAR-CD27、GC33-hmct STAR-CD40、GC33-hmct STAR-OX40、GC33-hmct STAR-ICOS、GC33-hmct STAR-CD28、GC33-hmct STAR-41BB、GC33-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27をJurkat細胞でMOI=1の力価で感染させ、感染の4日後、STAR-T細胞が4E6であり、標的細胞が2E5である12ウェルプレート中でT細胞株をHUH-7-luc細胞株と共培養し(標的細胞を1日前に12ウェルプレートに接種した)、6時間共培養した後、核タンパク質の抽出のために細胞を回収し、核RelBレベルについてウェスタンブロット法によって検出した。結果は、図62に示すように、共刺激因子を添加した後、共刺激因子を含まないGC33-hSTAR、GC33-hmct STAR及びGC33-Nrec STAR群では核RelBレベルが非常に低いことを示し、これは非感染STAR-T群と一致し、CD28を除く他の共刺激因子は核RelBレベルを有意に増加させ、そのうち41BBは核RelBレベルを最も改善した。
【0267】
4.CD19標的化FMC63-STAR-T機能
1)CD19標的化抗体配列の決定
公開されたscFv配列FMC63を、CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VH、配列番号50)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VL、配列番号51)として選択した。
【0268】
2)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むベクターの構築
STARは、2つのポリペプチド鎖:抗CD19 FMC63-VLをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR bC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第1のポリペプチド鎖、及び抗CD19 FMC63 VHをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR aC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第2のポリペプチド鎖を含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両方の鎖に使用した。hSTAR/hmct STAR/Nrec STARの2つの鎖配列は、Furin-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片によって連結され、一緒にタンパク質に転写及び翻訳され、次いで、Furin及びp2Aに対応するプロテアーゼによって切断され、最終的に2つの独立したタンパク質鎖を産生した。遺伝子全体を、制限エンドヌクレアーゼ部位NheI及びNotIを介してレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF 1 αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子と共に有していた。以下のプラスミドを遺伝子断片:FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STARのクローニング、アセンブリング、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって得た。
【0269】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:3つのCD19標的化STARベクター、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STARに基づいて、共刺激因子CD40、OX40、ICOS、CD28、41BB及びCD27を構築し、遺伝子合成によって上記の配列を得た。共刺激因子を、PCR及びTCRα鎖及びβ鎖に同時に同じ共刺激因子を付加することによる相同組換えによって、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STARベクターに付加した。FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27を最終的に構築した。
【0270】
3)共刺激因子を含むCD19標的化STAR及びSTAR-Tの殺傷能力の検出
非感染T細胞(NC群)、FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STAR、FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27を、24ウェルプレート中で24時間、RAJI-luc細胞と共培養した。T細胞の陽性細胞数をRFP陽性率に従ってそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数は4E5であり、合計1mLの共培養系であった。24時間の共培養の後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質を加え、暗所で10分間低速振盪した後、多機能マイクロプレートリーダーによって蛍光値を検出し、各群の標的細胞殺傷効果を計算した。結果は、hSTARの殺傷効率がhmct STAR及びNrec STARの殺傷効率よりも有意に低いことを示し、そのうち、Nrec STARが最も高かった。共刺激因子を含む同じSTARの結果は、OX40及びICOSがSTARの殺傷効果を有意に増加させ得ることを示したが、他の共刺激因子はSTARの殺傷能力に有意な効果を有さず、41BBはSTARの殺傷機能を低下させたが、有意差はなかった(図61)。
【0271】
4)共刺激因子を含むCD19標的化STAR及びSTAR-Tの核RelBレベルの検出
得られたウイルス:FMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR、FMC63-Nrec STAR、FMC63-hSTAR-CD40、FMC63-hSTAR-OX40、FMC63-hSTAR-ICOS、FMC63-hSTAR-CD28、FMC63-hSTAR-41BB、FMC63-hSTAR-CD27、FMC63-hmct STAR-CD40、FMC63-hmct STAR-OX40、FMC63-hmct STAR-ICOS、FMC63-hmct STAR-CD28、FMC63-hmct STAR-41BB、FMC63-hmct STAR-CD27、FMC63-Nrec STAR-CD40、FMC63-Nrec STAR-OX40、FMC63-Nrec STAR-ICOS、FMC63-Nrec STAR-CD28、FMC63-Nrec STAR-41BB及びFMC63-Nrec STAR-CD27をMOI=1の力価でJurkat細胞で感染させ、感染4日後に、STAR-T細胞が4E6であり、標的細胞が2E5である12ウェルプレート(2μg/mL、500μLを12ウェルプレートにコーティングし、4℃の冷蔵庫に一晩放置した)中で、T細胞株及びCD19タンパク質を共培養し(標的細胞を1日前に12ウェルプレートに接種した)、6時間培養した後、核タンパク質の抽出のために細胞を回収し、これを核RelBレベルについてウェスタンブロッティングにより検出した。結果は、図62に示すように、共刺激因子を添加した後、共刺激因子を含まないFMC63-hSTAR、FMC63-hmct STAR及びFMC63-Nrec STAR群では核RelBレベルが非常に低いことを示し、これは非感染STAR-T群と一致し、CD28を除く他の共刺激因子は核RelBレベルを有意に増加させ、そのうち41BBは核RelBレベルを最も改善した。
【0272】
5.CD19標的化334-STAR-T機能
1)CD19標的化抗体配列の決定
本発明者らによって開発された334抗体配列を、CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 334-VH、配列番号54)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 334-VL、配列番号55)として選択した。
【0273】
2)CD19標的化STAR及び共刺激因子を含むベクターの構築
STARは、2つのポリペプチド鎖:抗CD19 334-VLをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR bC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第1のポリペプチド鎖、及び抗CD19 334 VHをhSTAR/hmct STAR/Nrec STARのTCR aC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第2のポリペプチド鎖を含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両方の鎖に使用した。hmct STAR/Nrec STARの2つの鎖配列は、Furin-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片によって連結され、一緒にタンパク質に転写及び翻訳され、次いで、Furin及びp2Aに対応するプロテアーゼによって切断され、最終的に2つの独立したタンパク質鎖を産生した。遺伝子全体を、制限エンドヌクレアーゼ部位NheI及びNotIを介してレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF 1 αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子と共に有していた。以下のプラスミドを遺伝子断片:334-hmct STAR、334-Nrec STARのクローニング、アセンブリング、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって得た。
【0274】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:CD19標的化STARベクター、334-hmct STAR及び334-Nrec STARに基づいて、共刺激因子OX40を構築し、上記の配列を遺伝子合成によって得た。共刺激因子を、PCR及びTCRα鎖及びβ鎖に同時に同じ共刺激因子を付加することによる相同組換えによって、334-hmct STAR及び334-Nrec STARベクターに付加した。最後に、334-hmct STAR-OX40及び334-Nrec STAR-OX40を構築した。
【0275】
3)共刺激因子を含むCD19標的化STAR及びSTAR-Tの殺傷能力の検出
非感染T細胞(NC群)、334-hmct STAR、334-Nrec STAR、334-hmct STAR-OX40及び334-Nrec STAR-OX40を、24ウェルプレートにおいてRAJI-luc細胞と24時間共培養した。T細胞の陽性細胞数をRFP陽性率に従ってそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数は4E5であり、合計1mLの共培養系であった。24時間の共培養の後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質を加え、暗所で10分間低速振盪した後、多機能マイクロプレートリーダーによって蛍光値を検出し、各群の標的細胞殺傷効果を計算した。結果は、hmct STARの殺傷効率が、最も高かったNrec STARの殺傷効率よりも有意に低いことを示した。更に、OX40は、STARの殺傷効果及び核RelBレベルを有意に増加させることができる。図63を参照されたい。
【0276】
6.CD19及びCD20の二重標的化STAR-T機能
1)CD19及びCD20標的化抗体配列の決定
CD19標的化抗体重鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VH、配列番号50)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD19 FMC63-VL、配列番号51);CD20標的化抗体重鎖可変領域(抗CD20 2C6-VH、配列番号62)及び抗体軽鎖可変領域(抗CD20 2C6-VL、配列番号63)。
【0277】
2)共刺激因子を含む、CD19及びCD20標的化STAR及びベクターの構築
STARは、2つのポリペプチド鎖:抗CD20 2C6 VL-(G4S)3-VHをhmct STAR/Nrec STARのTCR bC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第1のポリペプチド鎖、及びnti-CD19 FMC63 VL-(G4S)3-VHをhmct STAR/Nrec STARのTCR aC鎖と融合することによってそれぞれ形成された第2のポリペプチド鎖を含んでいた。GM-CSFRシグナルペプチドを両方の鎖に使用した。hmct STAR/Nrec STARの2つの鎖配列は、Furin-SGSG-p2Aプロテアーゼ切断部位のポリペプチド断片によって連結され、一緒にタンパク質に転写及び翻訳され、次いで、Furin及びp2Aに対応するプロテアーゼによって切断され、最終的に2つの独立したタンパク質鎖を産生した。遺伝子全体を、制限エンドヌクレアーゼ部位NheI及びNotIを介してレンチウイルス発現ベクターpHAGEに挿入した。ベクターは、アンピシン耐性遺伝子、EF 1 αプロモーター及びIRES-RFP蛍光レポーター遺伝子と共に有していた。以下のプラスミドを遺伝子断片:FMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STARのクローニング、アセンブリング、形質転換、配列決定及びプラスミド抽出によって得た。
【0278】
共刺激因子を含むSTARベクターの構築:CD19及びCD20標的化STARベクター、FMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STARに基づいて、共刺激因子OX40を構築し、上記の配列を遺伝子合成によって得た。共刺激因子を、PCR及びTCRα鎖及びβ鎖に同時に同じ共刺激因子を付加することによる相同組換えによって、FMC63-2C6-hmct STAR及びFMC63-2C6-Nrec STARベクターに付加した。最後に、FMC63-2C6-hmct STAR-OX40及びFMC63-2C6-Nrec STAR-OX40を構築した。
【0279】
3)共刺激因子を含むCD19及びCD20標的化STAR及びSTAR-Tの殺傷能力の検出
非感染T細胞(NC群)、FMC63-2C6-hmct STAR、FMC63-2C6-Nrec STAR、FMC63-2C6-hmct STAR-OX40及びFMC63-2C6-Nrec STAR-OX40を、24ウェルプレートにおいてRAJI-luc細胞と24時間共培養した。T細胞の陽性数をRFP陽性率に従ってそれぞれ4E5に調整し、RAJI-luc細胞の数は4E5であり、合計1mLの共培養系であった。24時間の共培養の後、共培養した細胞を均一に混合し、150μLの懸濁液を吸い出し、70μLのルシフェラーゼ基質を加え、暗所で10分間低速振盪した後、多機能マイクロプレートリーダーによって蛍光値を検出し、各群の標的細胞殺傷効果を計算した。結果は、hmct STARの殺傷効率が、最も高かったNrec STARの殺傷効率よりも有意に低いことを示した。更に、OX40は、STARの殺傷効果及び核RelBレベルを有意に増加させることができる。図64を参照されたい。
【0280】
配列表
配列番号1 野生型ヒトTCRα定常領域のアミノ酸配列
DIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDF KSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLS VIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*
配列番号2 野生型ヒトTCRβ定常領域のアミノ酸配列
DLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVST DPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAK PVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVK RKDF*
配列番号3 野生型マウスTCRα定常領域のアミノ酸配列
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号4 野生型マウスTCRβ定常領域のアミノ酸配列
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号5 システイン置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-Cys)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLSVMGLRILLLKVAGFNLLMTLR LWSS
配列番号6 システイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRβC-Cys)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
配列番号7 疎水性アミノ酸置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-TM9)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKTVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRL WSS
配列番号8 膜貫通ドメインにシステイン置換を有するマウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRaC-Arg mut)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLRVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号9 エンドドメインにシステイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRβC-Arg mut)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGRATLYAVLVSTLVVMAMVRRRNS
配列番号10 CD40エンドドメインのアミノ酸配列
KKVAKKPTNKAPHPKQEPQEINFPDDLPGSNTAAPVQETLHGCQPVTQEDGKESRISV
配列番号11 OX40エンドドメインのアミノ酸配列
RRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
配列番号12 ICOSエンドドメインのアミノ酸配列
KKKYSSSVHDPNGEYMFMRAVNTAKKSRLTDVTL
配列番号13 CD28エンドドメインのアミノ酸配列
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
配列番号14 4-1BBエンドドメインのアミノ酸配列
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
配列番号15 CD27エンドドメインのアミノ酸配列
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCRYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
配列番号16 G4Sリンカーのアミノ酸配列
GGGGS
配列番号17 (G4S)2リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGS
配列番号18 (G4S)3リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGS
配列番号19 (G4S)4リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号20 (G4S)5リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号21 (G4S)6リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号22 (G4S)7リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号23 (G4S)8リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号24 (G4S)9リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号25 (G4S)10リンカーのアミノ酸配列
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
配列番号26 システイン置換及び疎水性改変を有するエンドドメイン欠失マウスT細胞受容体α鎖定常領域(マウスTCRαC-del mut)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLW
配列番号27 システイン置換されたエンドドメイン欠失マウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRβC-del mut)
DLRNVTPPKVSLFEPSKAEIANKQKATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAM
配列番号28 ヒトCD3γのアミノ酸配列
MEQGKGLAVLILAIILLQGTLAQSIKGNHLVKVYDYQEDGSVLLTCDAEAKNITWFKDGKMIGFLTEDKKKWNLGSNAKDPRGMYQCKGSQNKSKPLQVYYRMCQNCIELNAATISGFLFAEIVSIFVLAVGVYFIAGQDGVRQSRASDKQTLLPNDQLYQPLKDREDDQYSHLQGNQLRRN
配列番号29 ヒトCD3δのアミノ酸配列
MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRMCQSCVELDPATVAGIIVTDVIATLLLALGVFCFAGHETGRLSGAADTQALLRNDQVYQPLRDRDDAQYSHLGGNWARNK
配列番号30 ヒトCD3εのアミノ酸配列
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI
配列番号31 ヒトCD3ζのアミノ酸配列
MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号32 ヒトIL-2β受容体エンドドメインのアミノ酸配列
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号33 ヒトIL-7α受容体エンドドメインのアミノ酸配列
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
配列番号34 ヒトIL-21受容体エンドドメインのアミノ酸配列
SLKTHPLWRLWKKIWAVPSPERFFMPLYKGCSGDFKKWVGAPFTGSSLELGPWSPEVPSTLEVYSCHPPRSPAKRLQLTELQEPAELVESDGVPKPSFWPTAQNSGGSAYSEERDRPYGLVSIDTVTVLDAEGPCTWPCSCEDDGYPALDLDAGLEPSPGLEDPLLDAGTTVLSCGCVSAGSPGLGGPLGSLLDRLKPPLADGEDWAGGLPWGGRSPGGVSESEAGSPLAGLDMDTFDSGFVGSDCSSPVECDFTSPGDEGPPRSYLRQWVVIPPPLSSPGPQAS
配列番号35 ヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
YRHQ
配列番号36 ヒトIL-2β受容体エンドドメイン及びヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLVGGGGSYRHQ
配列番号37 ヒトIL-7α受容体エンドドメイン及びヒトSTAT5活性化部分のアミノ酸配列
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQGGGGSYRHQ
配列番号38 抗CD20 OFA ScFvのアミノ酸配列
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPITFGQGTRLEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFNDYAMHWVRQAPGKGLEWVSTISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKKSLYLQMNSLRAEDTALYYCAKDIQYGNYYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号39 抗CD19 FMC63 ScFvのアミノ酸配列
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEITGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号40 赤色蛍光タンパク質のアミノ酸配列
MASSEDVIKEFMRFKVRMEGSVNGHEFEIEGEGEGRPYEGTQTAKLKVTKGGPLPFAWDILSPQFQYGSKAYVKHPADIPDYLKLSFPEGFKWERVMNFEDGGVVTVTQDSSLQDGEFIYKVKLRGTNFPSDGPVMQKKTMGWEASTERMYPEDGALKGEIKMRLKLKDGGHYDAEVKTTYMAKKPVQLPGAYKTDIKLDITSHNEDYTIVEQYERAEGRHSTGA*
配列番号41 マウスTCRaC-Cys-TM9(hmct STAR TCRaC)
DIQNPEPAVYQLKDPRSQDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号42 マウスTCRaC-Cys-TM9-N.Rec(Nrec STAR TCRaC)
DIQNPDPAVYQLRDDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS
配列番号43 N末端改変及びシステイン置換を有するマウスT細胞受容体β鎖定常領域(マウスTCRbC-Cys-N.Rec,Nrec STAR TCRbC)
DLKNVFPPEVAVFEPSAEIATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAMVKRKNS
>配列番号44 TCR-E141α可変領域のアミノ酸配列
MKRILGALLGLLSAQVCCVRGIQVEQSPPDLILQEGANSTLRCNFSDSVNNLQWFHQNPWGQLINLFYIPSGTKQNGRLSATTVATERYSLLYISSSQTTDSGVYFCAVLNNNDMRFGAGTRLTVKP
>配列番号45 CR-E141β可変領域のアミノ酸配列
MGCRLLCCAVLCLLGAVPIDTEVTQTPKHLVMGMTNKKSLKCEQHMGHRAMYWYKQKAKKPPELMFVYSYEKLSINESVPSRFSPECPNSSLLNLHLHALQPEDSALYLCASSQGRWYEQYFGPGTRLTVT
>配列番号46 TCR-E315α可変領域のアミノ酸配列
METLLGLLILWLQLQWVSSKQEVTQIPAALSVPEGENLVLNCSFTDSAIYNLQWFRQDPGKGLTSLLLIQSSQREQTSGRLNASLDKSSGRSTLYIAASQPGDSATYLCAGKTSYDKVIFGPGTSLSVIP
>配列番号47 TCR-E315β可変領域のアミノ酸配列
MGTRLLCWAALCLLGAELTEAGVAQSPRYKIIEKRQSVAFWCNPISGHATLYWYQQILGQGPKLLIQFQNNGVVDDSQLPKDRFSAERLKGVDSTLKIQPAKLEDSAVYLCASSVFPTSVEQYFGPGTRLTVT
>配列番号48 TCR-E316α可変領域のアミノ酸配列
MSLSSLLKVVTASLWLGPGIAQKITQTQPGMFVQEKEAVTLDCTYDTSDQSYGLFWYKQPSSGEMIFLIYQGSYDEQNATEGRYSLNFQKARKSANLVISASQLGDSAMYFCAMVSGAGGGADGLTFGKGTHLIIQP
>配列番号49 TCR-E316β可変領域のアミノ酸配列
MSNQVLCCVVLCLLGANTVDGGITQSPKYLFRKEGQNVTLSCEQNLNHDAMYWYRQDPGQGLRLIYYSQIVNDFQKGDIAEGYSVSREKKESFPLTVTSAQKNPTAFYLCASSIGVGLSNTEAFFGQGTRLTVV
配列番号50 抗CD19 FMC63 VH
EVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS
配列番号51 抗CD19 FMC63 VL
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIT
配列番号52 抗GPC3 GC33 VL
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLVHSNRNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCSQNTHVPPTFGQGTKLEIKR
配列番号53 抗GPC3 GC33 VH
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYEMHWVRQAPGQGLEWMGALDPKTGDTAYSQKFKGRVTLTADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTRFYSYTYWGQGTLVTVSS
配列番号54 抗CD19 334 VH
QVQLQQSGAELVRPGASVKLSCKALGFIFTDYEIHWVKQTPVHGLEWIGAFHPGSGGSAYNQKFKGKATLTADKSSSTAYMELSSLTFEDSAVYHCTRQLGPDWGQGTLVTVS
配列番号55 抗CD19 334 VL
DVVMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLLESDGKTYLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLRISRVEAEDLGVYYCWQGTQFPWTFGGGTKLEIK
配列番号56 N末端改変、システイン置換及び膜貫通ドメインに疎水性改変を有するエンドドメイン欠失マウスT細胞受容体α鎖定常領域
DIQNPDPAVYQLRDDSTLCLFTDFDSQINVPKTMESGTFITDKCVLDMKAMDSKSNGAIAWSNQTSFTCQDIFKETNATYPSSDVPCDATLTEKSFETDMNLNFQNLLVIVLRILLLKVAGFNLLMTLRLW
配列番号57 N末端改変及びシステイン置換を有するエンドドメイン欠失マウスT細胞受容体β鎖定常領域
DLKNVFPPEVAVFEPSAEIATLVCLARGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVCTDPQAYKESNYSYCLSSRLRVSATFWHNPRNHFRCQVQFHGLSEEDKWPEGSPKPVTQNISAEAWGRADCGITSASYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSTLVVMAM
配列番号58 TCRγ鎖定常領域の野生型ヒトのアミノ酸配列
DKQLDADVSPKPTIFLPSIAETKLQKAGTYLCLLEKFFPDVIKIHWQEKKSNTILGSQEGNTMKTNDTYMKFSWLTVPEKSLDKEHRCIVRHENNKNGVDQEIIFPPIKTDVITMDPKDNCSKDANDTLLLQLTNTSAYYMYLLLLLKSVVYFAIITCCLLRRTAFCCNGEKS
配列番号59 野生型マウスTCRγ鎖定常領域のアミノ酸配列
XKRLDADISPKPTIFLPSVAETNLHKTGTYLCLLEKFFPDVIRVYWKEKDGNTILDSQEGDTLKTNDTYMKFSWLTVPERAMGKEHRCIVKHENNKGGADQEIFFPSIKKVAVSTKPTTCWQDKNDVLQLQFTITSAYYTYLLLLLKSVIYLAIISFSLLRRTSVCGNEKKS
配列番号60 TCRδ鎖定常領域の野生型ヒトのアミノ酸配列
XSQPHTKPSVFVMKNGTNVACLVKEFYPKDIRINLVSSKKITEFDPAIVISPSGKYNAVKLGKYEDSNSVTCSVQHDNKTVHSTDFEVKTDSTDHVKPKETENTKQPSKSCHKPKAIVHTEKVNMMSLTVLGLRMLFAKTVAVNFLLTAKLFFL*
配列番号61 野生型マウスTCRδ鎖定常領域のアミノ酸配列
XSQPPAKPSVFIMKNGTNVACLVKDFYPKEVTISLRSSKKIVEFDPAIVISPSGKYSAVKLGQYGDSNSVTCSVQHNSETVHSTDFEPYANSFNNEKLPEPENDTQISEPCYGPRVTVHTEKVNMMSLTVLGLRLLFAKTIAINFLLTVKLFF*
配列番号62 抗CD20 2C6 VH
AVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASGFTFGDYTMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGSIGYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTALYYCTKDNQYGSGSTYGLGVWGQGTLVTVSS
配列番号63 抗CD20 2C6 VL
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSG TDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWPLTFGGGTKVEIK
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【配列表】
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