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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】複合電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20250307BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250307BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20250307BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
H02J7/00 X
H02J7/00 S
G01R31/392
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023578760
(86)(22)【出願日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2023039332
(87)【国際公開番号】W WO2024135108
(87)【国際公開日】2024-06-27
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/046832
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】712006374
【氏名又は名称】CONNEXX SYSTEMS株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚本 壽
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038884(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092794(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第114138569(CN,A)
【文献】特開2021-083283(JP,A)
【文献】特開2016-046887(JP,A)
【文献】特開2006-054150(JP,A)
【文献】特表2017-512359(JP,A)
【文献】特開2009-123701(JP,A)
【文献】特開2017-208983(JP,A)
【文献】特開2016-116334(JP,A)
【文献】特開2005-056654(JP,A)
【文献】特開2017-112769(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024836(WO,A1)
【文献】特開2010-252566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池および前記リチウムイオン電池を電気的に接続または遮断するスイッチでそれぞれが構成され、互いに並列に接続された複数の主電池部、ならびに、鉛蓄電池で構成され、前記複数の主電池部に並列に接続された補助電池部をそれぞれが備え、互いに直列に接続された複数の複合ユニットと、
前記リチウムイオン電池の充電中および放電中の電圧、電流および温度の測定値を直接的または間接的に取得するHV部と、
前記複数の主電池部に充放電を繰り返すことに伴って劣化したリチウムイオン電池を劣化電池として認識した場合に、前記劣化電池に接続されたスイッチをオフすると共に、外部機器に前記劣化電池を特定する情報を通知するEMSと、
前記複数の複合ユニットおよび前記HV部を収納する筐体と、を有し、
前記EMSは、前記充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、
前記複数の複合ユニットの内の少なくとも1つの複合ユニットにおいて、前記複数の主電池部を構成するリチウムイオン電池が、オンの状態のスイッチに接続された1つ以上の通電電池とオフの状態のスイッチに接続された1つ以上の非通電電池とで構成される場合、前記EMSは、前記通電電池の各容量の合計値と前記非通電電池の各容量の合計値とを比較し、各容量の合計値が小さい方の電池の電圧が、各容量の合計値が大きい方の電池の電圧よりも高い時に、前記非通電電池のオフの状態のスイッチをオンする複合電池システム。
【請求項2】
リチウムイオン電池および前記リチウムイオン電池を電気的に接続または遮断するスイッチでそれぞれが構成され、互いに並列に接続された複数の主電池部、ならびに、鉛蓄電池で構成され、前記複数の主電池部に並列に接続された補助電池部をそれぞれが備え、互いに直列に接続された複数の複合ユニットと、
前記リチウムイオン電池の充電中および放電中の電圧、電流および温度の測定値を直接的または間接的に取得するHV部と、
前記複数の主電池部に充放電を繰り返すことに伴って劣化したリチウムイオン電池を劣化電池として認識した場合に、前記劣化電池に接続されたスイッチをオフすると共に、外部機器に前記劣化電池を特定する情報を通知するEMSと、
前記複数の複合ユニットおよび前記HV部を収納する筐体と、を有し、
前記複数の主電池部は、前記複数の複合ユニットのそれぞれについて仕様に基づいて設定された基本接続数の主電池部および前記基本接続数に対する余剰分として設定された余剰接続数の主電池部で構成され、
前記複数の複合ユニットのそれぞれに対して、前記基本接続数は、4つ以上であり、前記余剰接続数は、1つ以上であり、
前記EMSは、前記充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、前記複数の主電池部のそれぞれを構成する各リチウムイオン電池の充電中および放電中のそれぞれの状態で電流を同時に測定した測定値の内、前記EMSが前記複数の主電池部の中に前記劣化電池として認識したリチウムイオン電池がある場合には、該当するリチウムイオン電池の測定値を除外し、さらに、残りの測定値の中から大きさが最大の1つの測定値および大きさが最小の1つの測定値を除外した残りの測定値の各平均値を算出する複合電池システム。
【請求項3】
前記EMSは、前記複数の複合ユニットのそれぞれについて前記複数の主電池部の中の前記劣化電池の接続数を算出し、前記劣化電池の接続数が前記余剰接続数と等しくなった場合に、前記外部機器に前記劣化電池の交換を要求する信号を送付する請求項2に記載の複合電池システム。
【請求項4】
前記補助電池部は、さらに、前記鉛蓄電池に流れる電流を測定する電流計と、
前記鉛蓄電池を電気的に接続または遮断する補助スイッチと、
補助BMSと、を備え、
前記補助BMSは、前記鉛蓄電池に流れる電流の測定値に基づいて前記補助スイッチをオンオフすると共に、前記鉛蓄電池に流れる電流の測定値を、前記HV部および前記EMSを介して前記外部機器に通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項5】
前記補助電池部は、さらに、前記鉛蓄電池に過電流が流れた場合に前記鉛蓄電池に流れる電流を遮断するヒューズを有する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項6】
前記複数の主電池部のそれぞれは、BMSを備え、
前記BMSは、前記リチウムイオン電池の電圧、電流および温度を測定し、前記電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、前記電圧、電流および温度の測定値ならびに前記SOCおよびSOHの算出値を、前記HV部および前記EMSを介して前記外部機器に通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項7】
前記HV部は、前記リチウムイオン電池の電圧、電流および温度を測定し、前記電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、前記電圧、電流および温度の測定値ならびに前記SOCおよびSOHの算出値を、前記EMSを介して前記外部機器に通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項8】
さらに、前記筐体の内部の温度を測定する温度計と、
前記筐体の内部の温度を変化させる冷暖房装置と、を有し、
前記EMSは、前記リチウムイオン電池の温度および前記温度計の測定値に基づいて前記冷暖房装置および前記スイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、前記外部機器に前記リチウムイオン電池の温度および前記温度計の測定値を通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項9】
さらに、前記筐体の内部に発生した火炎を自動的に検出して消火する消火器を有し、
前記EMSは、前記消火器が作動した場合に前記外部機器に前記消火器の作動を通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項10】
さらに、前記筐体の内部の水素ガスの濃度を測定する水素ガスセンサと、
前記筐体の内部の空気を換気するファンと、を有し、
前記補助電池部は、さらに、前記鉛蓄電池を電気的に接続または遮断する補助スイッチを備え、
前記EMSは、前記水素ガスの濃度の測定値に基づいて前記ファンおよび前記補助スイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、前記外部機器に前記水素ガスの濃度の測定値を通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項11】
さらに、前記筐体の内部の有機ガスの濃度を測定する有機ガスセンサと、
前記筐体の内部の空気を換気するファンと、を有し、
前記EMSは、前記有機ガスの濃度の測定値に基づいて前記ファンおよび前記スイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、前記外部機器に前記有機ガスの濃度の測定値を通知する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項12】
さらに、前記筐体の内部または外部に配置され、前記リチウムイオン電池および前記鉛蓄電池から前記外部機器への放電電力を直流から交流に変換し、前記外部機器から前記リチウムイオン電池および前記鉛蓄電池への充電電力を交流から直流に変換するPCSを有する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項13】
前記EMSは、前記電圧の測定値に基づいて前記スイッチをオンオフすると共に、前記外部機器に前記電圧の測定値を通知し、
前記EMSは、複数の前記筐体にそれぞれ収納された前記HV部からの通知を受信する請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【請求項14】
前記所定の範囲は、充電中の測定値の平均値および放電中の測定値の平均値に対して共に70~130%である請求項1~3のいずれか1項に記載の複合電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池とリチウムイオン電池とで構成され、かつ互いに直列に接続された複数の複合ユニットを用いた複合電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池とリチウムイオン電池とを並列に接続した複合電池は、重量あたりの保有エネルギを大きくすると共に、特に低温パワー性能を向上させることができることが知られている。そして、複合電池の安全性を高めるために、様々な技術が開示されている。特許文献1には、リチウムイオン電池に設けられた電圧センサ、電流センサ、温度センサなどが故障した場合でも、安全性を保つことが可能な複合電池システムが開示されている。一方、蓄電装置を構成する二次電池の劣化時の安全性について、特許文献2には、診断手段がセル群または各セルの電圧に基づいて各電池ユニットの劣化度または故障を診断する組電池が開示され、特許文献3には、充電時、各単電池の電流値を計測し、この計測値に基づいて検出した異常な単電池を、スイッチング素子を制御して並列接続より切り離す充放電制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-208983
【文献】特許第5564561号
【文献】特開2013-038884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、リチウムイオン電池に設けられた電圧センサ、電流センサ、温度センサ等が故障した場合でも、各複合電池の電圧値を検出するための電圧検出器によって過充電および過放電の少なくとも1つが検出された場合に、ユニット断路器を動作させてその電圧検出器を備えた複合電池と同じ複合電池ユニットに含まれる複数の複合電池を電気的に切り離すものの、劣化したリチウムイオン電池を特定してその電池だけを交換することが考慮されていないという問題があった。
【0005】
また、特許文献2は、第一の電流制御素子をオフした状態で、第二の電流制御素子をオフしたときの電圧測定値とオンしたときの電圧測定値との比に基づいて各電池ユニットの劣化度を診断するので、スイッチの数が増えて回路構成が複雑になるという問題があった。さらに、各電池ユニットの劣化度を診断した後に劣化した電池を特定してその電池だけを交換することが考慮されていないという問題があった。さらに、特許文献3は、5個の単電池全てを、充電時には電流計測部を介して充放電経路と接続させ、放電時には電流計測部を介することなく充放電経路と接続させるので、スイッチの数が増えて回路構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、仕様上の蓄電容量を確保しつつ構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を特定してその電池だけを交換することが可能な複合電池システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、従来と同等以上に安全性を保つこと、資源を有効活用すること、用途を広げること、および拡張性を高めることが可能な複合電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、複数の主電池部を、仕様に基づいて設定した基本接続数の主電池部および基本接続数に対して余剰分として設定した余剰接続数の主電池部で構成すること、および複数の主電池部の中の劣化電池の接続数を算出し、劣化電池の接続数が余剰接続数と等しくなった場合に、外部機器に劣化電池の交換を要求する信号を送付することによって、仕様上の蓄電容量を確保しつつ劣化したリチウムイオン電池だけを交換することができることを見出した。
【0008】
また、本発明者は、複数の主電池部に充放電を繰り返すことに伴ってリチウムイオン電池が劣化した結果、複数の主電池部の各リチウムイオン電池の電流の測定値が所定の範囲から逸脱したものと定義することによって、構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を特定することができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明の第1形態は、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池を電気的に接続または遮断するスイッチでそれぞれが構成され、互いに並列に接続された複数の主電池部、ならびに、鉛蓄電池で構成され、複数の主電池部に並列に接続された補助電池部をそれぞれが備え、互いに直列に接続された複数の複合ユニットと、リチウムイオン電池の充電中および放電中の電圧、電流および温度の測定値を直接的または間接的に取得するHV部と、複数の主電池部に充放電を繰り返すことに伴って劣化したリチウムイオン電池を劣化電池として認識した場合に、劣化電池に接続されたスイッチをオフすると共に、外部機器に劣化電池を特定する情報を通知するEMSと、複数の複合ユニットおよびHV部を収納する筐体と、を有し、EMSは、充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、複数の複合ユニットの内の少なくとも1つの複合ユニットにおいて、複数の主電池部を構成するリチウムイオン電池が、オンの状態のスイッチに接続された1つ以上の通電電池とオフの状態のスイッチに接続された1つ以上の非通電電池とで構成される場合、EMSは、通電電池の各容量の合計値と非通電電池の各容量の合計値とを比較し、各容量の合計値が小さい方の電池の電圧が、各容量の合計値が大きい方の電池の電圧よりも高い時に、非通電電池のオフの状態のスイッチをオンする複合電池システムを提供するものである。
【0011】
また、本発明の第形態は、リチウムイオン電池およびリチウムイオン電池を電気的に接続または遮断するスイッチでそれぞれが構成され、互いに並列に接続された複数の主電池部、ならびに、鉛蓄電池で構成され、複数の主電池部に並列に接続された補助電池部をそれぞれが備え、互いに直列に接続された複数の複合ユニットと、リチウムイオン電池の充電中および放電中の電圧、電流および温度の測定値を直接的または間接的に取得するHV部と、複数の主電池部に充放電を繰り返すことに伴って劣化したリチウムイオン電池を劣化電池として認識した場合に、劣化電池に接続されたスイッチをオフすると共に、外部機器に劣化電池を特定する情報を通知するEMSと、複数の複合ユニットおよびHV部を収納する筐体と、を有し、複数の主電池部は、複数の複合ユニットのそれぞれについて仕様に基づいて設定された基本接続数の主電池部および基本接続数に対する余剰分として設定された余剰接続数の主電池部で構成され、複数の複合ユニットのそれぞれに対して、基本接続数は、4つ以上であり、余剰接続数は、1つ以上であり、EMSは、充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、複数の主電池部のそれぞれを構成する各リチウムイオン電池の充電中および放電中のそれぞれの状態で電流を同時に測定した測定値の内、EMSが複数の主電池部の中に劣化電池として認識したリチウムイオン電池がある場合には、該当するリチウムイオン電池の測定値を除外し、さらに、残りの測定値の中から大きさが最大の1つの測定値および大きさが最小の1つの測定値を除外した残りの測定値の各平均値を算出する複合電池システムを提供するものである。
【0012】
さらに、本発明の第2形態においては、EMSは、複数の複合ユニットのそれぞれについて複数の主電池部の中の劣化電池の接続数を算出し、劣化電池の接続数が余剰接続数と等しくなった場合に、外部機器に劣化電池の交換を要求する信号を送付するのが好ましい。
さらに、本発明の第1形態においては、補助電池部は、さらに、鉛蓄電池に流れる電流を測定する電流計と、鉛蓄電池を電気的に接続または遮断する補助スイッチと、補助BMSと、を備え、補助BMSは、鉛蓄電池に流れる電流の測定値に基づいて補助スイッチをオンオフすると共に、鉛蓄電池に流れる電流の測定値を、HV部およびEMSを介して外部機器に通知するのが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の第1形態においては、補助電池部は、さらに、鉛蓄電池に過電流が流れた場合に鉛蓄電池に流れる電流を遮断するヒューズを有するのが好ましい。
複数の主電池部のそれぞれは、BMSを備え、BMSは、リチウムイオン電池の電圧、電流および温度を測定し、電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、電圧、電流および温度の測定値ならびにSOCおよびSOHの算出値を、HV部およびEMSを介して外部機器に通知するのが好ましい。
HV部は、リチウムイオン電池の電圧、電流および温度を測定し、電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、電圧、電流および温度の測定値ならびにSOCおよびSOHの算出値を、EMSを介して外部機器に通知するのが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の第1形態においては、さらに、筐体の内部の温度を測定する温度計と、筐体の内部の温度を変化させる冷暖房装置と、を有し、EMSは、リチウムイオン電池の温度および温度計の測定値に基づいて冷暖房装置およびスイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器にリチウムイオン電池の温度および温度計の測定値を通知するのが好ましい。
さらに、筐体の内部に発生した火炎を自動的に検出して消火する消火器を有し、EMSは、消火器が作動した場合に外部機器に消火器の作動を通知するのが好ましい。
さらに、筐体の内部の水素ガスの濃度を測定する水素ガスセンサと、筐体の内部の空気を換気するファンと、を有し、補助電池部は、さらに、鉛蓄電池を電気的に接続または遮断する補助スイッチを備え、EMSは、水素ガスの濃度の測定値に基づいてファンおよび補助スイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器に水素ガスの濃度の測定値を通知するのが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の第1形態においては、さらに、筐体の内部の有機ガスの濃度を測定する有機ガスセンサと、筐体の内部の空気を換気するファンと、を有し、EMSは、有機ガスの濃度の測定値に基づいてファンおよびスイッチの少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器に有機ガスの濃度の測定値を通知するのが好ましい。
さらに、筐体の内部または外部に配置され、リチウムイオン電池および鉛蓄電池から外部機器への放電電力を直流から交流に変換し、外部機器からリチウムイオン電池および鉛蓄電池への充電電力を交流から直流に変換するPCSを有するのが好ましい。
EMSは、電圧の測定値に基づいてスイッチをオンオフすると共に、外部機器に電圧の測定値を通知し、EMSは、複数の筐体にそれぞれ収納されたHV部からの通知を受信するのが好ましい。
所定の範囲は、充電中の測定値の平均値および放電中の測定値の平均値に対して共に70~130%であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、仕様上の蓄電容量を確保しつつ構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を特定してその電池だけを交換することができる。
また、本発明によれば、上記効果に加え、従来と同等以上に安全性を保つこと、資源を有効活用すること、用途を広げること、および拡張性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の複合電池システムを示すブロック図である。
図2図1の複合電池システムを構成する補助電池部の変形例を示すブロック図である。
図3図1の複合電池システムを構成する主電池部の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。
図4図3の主電池部の他の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。
図5図1の複合電池システムを構成する補助電池部の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。
図6図2の補助電池部の変形例の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の複合電池システムを添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の複合電池システムを示すブロック図である。
【0019】
本発明の第1形態の複合電池システム10は、複数の複合ユニット12とHV部14とEMS16と筐体18とを有する。複数の複合ユニット12は、複数の主電池部20ならびに補助電池部30をそれぞれが備え、互いに直列に接続されたものである。複数の主電池部20は、リチウムイオン電池22およびスイッチ24でそれぞれが構成され、互いに並列に接続されたものである。スイッチ24は、リチウムイオン電池22を電気的に接続または遮断するものである。補助電池部30は、鉛蓄電池32で構成され、複数の主電池部20に並列に接続されたものである。
【0020】
HV部14は、リチウムイオン電池22の充電中および放電中の電圧、電流および温度の測定値を直接的または間接的に取得するものである。EMS16は、複数の主電池部20に充放電を繰り返すことに伴って劣化したリチウムイオン電池22を劣化電池として認識した場合に、劣化電池に接続されたスイッチ24をオフすると共に、外部機器40に劣化電池を特定する情報を通知するものである。筐体18は、複数の複合ユニット12およびHV部14を収納するものである。
【0021】
すなわち、複数の複合ユニット12の全体は、リチウムイオン電池22とスイッチ24とを互いに直列に接続して構成した主電池部20を並列にM個、直列にN個、マトリクス状に接続した後、直列に接続したN個の主電池部20のそれぞれに対して、鉛蓄電池32で構成した補助電池部30を並列に接続して構成したものである。また、劣化電池とは、充電中および放電中のリチウムイオン電池22の内部抵抗が充放電を繰り返すことに伴って徐々に大きくなり、または内部短絡に伴って突然小さくなり、電流の測定値が所定の範囲から外れたリチウムイオン電池22を指すものである。また、劣化電池を特定する情報とは、電流の測定値が所定の範囲から外れたリチウムイオン電池22の製造番号、マトリクス状に接続した状態における並列接続の序数(M個中何番目か)と直列接続の序数(N個中何番目か)との組み合わせなどである。HV部14およびEMS16は、電気回路で構成されるものであり、必要に応じてCPUを備える。
【0022】
次に、本発明の第1形態の複合電池システム10に適用される、劣化電池と新たなリチウムイオン電池との交換後に新たなリチウムイオン電池のスイッチをオンする方法について説明する。
EMS16は、充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識する。複数の複合ユニット12の内の少なくとも1つの複合ユニット12において、複数の主電池部20を構成するリチウムイオン電池22が、1つ以上の通電電池と残りの1つ以上の非通電電池とで構成され、通電電池が、オンの状態のスイッチ24に接続されたものであり、非通電電池が、オフの状態のスイッチ24に接続されたものである場合を想定することができる。その場合には、EMS16は、通電電池の各容量の合計値と非通電電池の各容量の合計値とを比較し、各容量の合計値が小さい方の電池の電圧が、各容量の合計値が大きい方の電池の電圧よりも高い時に、非通電電池のオフの状態のスイッチ24をオンする。なお、所定の範囲は、充電中の測定値の平均値および放電中の測定値の平均値に対して共に70~130%であっても良い。
【0023】
例えば、通電電池の各容量の合計値の方が小さい場合には、通電電池の電圧が非通電電池の電圧よりも高い時、すなわち、通電電池の充電時であれば両者の電圧が等しくなってから満充電になるまでの間、または通電電池の放電時であれば満充電から両者の電圧が等しくなるまでの間に、非通電電池のオフの状態のスイッチ24をオンする。その結果、スイッチ24をオンした時の突入電流は、各容量の合計値が小さい通電電池から各容量の合計値が大きい非通電電池に流れるので、逆方向に電流が流れる場合と比較して突入電流の流入側のCレートが小さくなる。
【0024】
逆に、非通電電池の各容量の合計値の方が小さい場合には、非通電電池の電圧が通電電池の電圧よりも高い時、すなわち、通電電池の充電時であれば完全放電から両者の電圧が等しくなるまでの間、または通電電池の放電時であれば両者の電圧が等しくなってから完全放電になるまでの間に、非通電電池のオフの状態のスイッチ24をオンする。その結果、スイッチ24をオンした時の突入電流は、各容量の合計値が小さい非通電電池から各容量の合計値が大きい通電電池に流れるので、逆方向に電流が流れる場合と比較して突入電流の流入側のCレートが小さくなる。
【0025】
上記両者の電圧の差は、10~100mVであるのが好ましい。両者の電圧の差が10mV未満の場合には、電圧が不安定な場合に逆方向に電流が流れる心配がある。両者の電圧の差が100mV超の場合には、突入電流の大きさが大きくなり過ぎる。なお、Cレートとは、電池容量に対する充放電電流値の比であり、1Cとは、1時間で満充電の状態から完全放電の状態になる時の電流値を表す。
【0026】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、スイッチをオンした時の突入電流がリチウムイオン電池に及ぼすダメージを軽減してそのリチウムイオン電池の寿命を延ばすことができるので、資源を有効活用することができる。
【0027】
次に、参考としての複合電池システム10に適用される、劣化電池の判断基準について説明する。
複数の主電池部20は、複数の複合ユニット12のそれぞれについて仕様に基づいて設定された基本接続数の主電池部および基本接続数に対する余剰分として設定された余剰接続数の主電池部で構成される。複数の複合ユニット12のそれぞれに対して、基本接続数は、2つ以上であっても良いが、3つ以上が好ましく、4つ以上がより好ましい。余剰接続数は、1つ以上であっても良いが、2つ以上が好ましく、3つ以上がより好ましい。EMS16は、充電中および放電中の両方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、複数の主電池部20のそれぞれを構成する各リチウムイオン電池22の充電中および放電中のそれぞれの状態で電流を同時に測定した測定値の各平均値を算出するものであっても良い。なお、所定の範囲は、充電中の測定値の平均値および放電中の測定値の平均値に対して共に70~130%であっても良い。
【0028】
例えば、複数の複合ユニット12のそれぞれに対して、基本接続数が8つであり、余剰接続数が2つである場合、各複合ユニット12は、仕様に基づいて互いに並列に接続された1番目から8番目までのリチウムイオン電池22と、余剰分として互いに並列に接続された9番目と10番目のリチウムイオン電池22と、を互いに並列に接続して構成される。互いに直列に接続されたN個の複合ユニット12の内の1つにおいて、各リチウムイオン電池22の充電中および放電中のそれぞれの状態で電流を同時に測定した測定値がたまたま同じ値であり、例えば、1.2A、14.0A、10.0A、10.1A、10.2A、10.3A、10.4A、10.5A、10.6Aおよび10.7Aであったとする。その場合、測定値の平均値は、9.8Aとなり、測定値の平均値に対して70~130%の範囲は、6.86~12.74Aとなるので、1番目の測定値1.2Aおよび2番目の測定値14.0Aは、充電中および放電中の両方の状態でこの範囲から外れている。
【0029】
したがって、1番目および2番目のリチウムイオン電池は、劣化電池として認識され、カウントされる。なお、この場合、EMS16は、劣化電池に接続されたスイッチ24をオフすると共に、外部機器40に劣化電池を特定する情報を通知する。以上がN個の複合ユニット12の内の1つにおいて実行される具体的な処理内容であり、EMS16は、他の複合ユニットに対しても同様に実行する。充電中および放電中の両方の状態の測定値が各平均値の70%未満の場合には、内部抵抗が大きくなり過ぎているので、完全に劣化したと判断できる。測定値が各平均値の130%超の場合には、内部短絡の兆候があると考えられるので、完全に劣化したと判断できる。
【0030】
このような構成とすることで、参考としての複合電池システムは、特許文献3のように異常な単電池の検出を蓄電装置の充電中にしか行わない場合と比較して、測定異常による判断ミスの可能性を低下させることができるので、構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を適切に特定することができる。
【0031】
次に、本発明の第形態の複合電池システム10に適用される、劣化電池の他の判断基準について説明する。
複数の主電池部20は、複数の複合ユニット12のそれぞれについて仕様に基づいて設定された基本接続数の主電池部および基本接続数に対する余剰分として設定された余剰接続数の主電池部で構成される。複数の複合ユニット12のそれぞれに対して、基本接続数は、4つ以上であっても良いが、5つ以上が好ましく、6つ以上がより好ましい。余剰接続数は、1つ以上であっても良いが、2つ以上が好ましく、3つ以上がより好ましい。EMS16は、充電中および放電中の少なくとも一方の電流の測定値が所定の範囲から逸脱した場合に、そのリチウムイオン電池を劣化電池として認識し、複数の主電池部20のそれぞれを構成する各リチウムイオン電池22の充電中および放電中の少なくとも一方の状態で電流を同時に測定した測定値の内、EMS16が複数の主電池部20の中に劣化電池として認識したリチウムイオン電池がある場合には、該当するリチウムイオン電池の測定値を除外し、さらに、残りの測定値の中から大きさが最大の1つの測定値および大きさが最小の1つの測定値を除外した残りの測定値の平均値を算出するものであっても良い。なお、所定の範囲は、充電中の測定値の平均値および放電中の測定値の平均値に対して共に70~130%であっても良い。
【0032】
例えば、複数の複合ユニット12のそれぞれに対して、基本接続数が8つであり、余剰接続数が2つである場合、各複合ユニット12は、仕様に基づいて互いに並列に接続された1番目から8番目までのリチウムイオン電池22と、余剰分として互いに並列に接続された9番目と10番目のリチウムイオン電池22と、を互いに並列に接続して構成される。互いに直列に接続されたN個の複合ユニット12の内の1つにおいて、各リチウムイオン電池22の充電中および放電中のそれぞれの状態で電流を同時に測定した測定値がたまたま同じ値であり、例えば、1.2A、14.0A、10.0A、10.1A、10.2A、10.3A、10.4A、10.5A、10.6Aおよび10.7Aであり、しかも測定値が1.2Aの1番目のリチウムイオン電池はEMS16が劣化電池として認識したリチウムイオン電池であったとする。その場合、まず1.2Aを除外し、次に14.0Aおよび10.0Aを除外した残りの7つの測定値の平均値は、10.4Aとなり、測定値の平均値に対して70~130%の範囲は、7.28~13.52Aとなるので、2番目の測定値14.0Aは、充電中および放電中の両方の状態でこの範囲から外れている。
【0033】
したがって、2番目のリチウムイオン電池は、新たに劣化電池として認識され、カウントされる。なお、この場合、EMS16は、劣化電池に接続されたスイッチ24をオフすると共に、外部機器40に劣化電池を特定する情報を通知する。以上がN個の複合ユニット12の内の1つにおいて実行される具体的な処理内容であり、EMS16は、他の複合ユニットに対しても同様に実行する。充電中および放電中の少なくとも一方の状態の測定値が各平均値の70%未満の場合には、内部抵抗が大きくなり過ぎているので、完全に劣化したと判断できる。測定値が各平均値の130%超の場合には、内部短絡の兆候があると考えられるので、完全に劣化したと判断できる。
【0034】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、特許文献3のように並列接続されている単電池の平均電流値を単純に算出する場合と比較して、測定異常による判断ミスの可能性を低下させることができるので、構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を適切に特定することができる。
【0035】
次に、劣化電池の交換条件について説明する。
EMS16は、複数の複合ユニット12のそれぞれについて複数の主電池部20の中の劣化電池の接続数を算出し、劣化電池の接続数が余剰接続数と等しくなった場合に、外部機器40に劣化電池の交換を要求する信号を送付する。
【0036】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、リチウムイオン電池が劣化した場合でも、安全性を保つことができる。
【0037】
次に、補助電池部の構成について説明する。
補助電池部30は、さらに、電流計34と補助スイッチ36と補助BMS38とを備えても良い。その場合には、電流計34は、鉛蓄電池32に流れる電流を測定するものである。補助スイッチ36は、鉛蓄電池32を電気的に接続または遮断するものである。補助BMS38は、鉛蓄電池32に流れる電流の測定値に基づいて補助スイッチ36をオンオフすると共に、鉛蓄電池32に流れる電流の測定値を、HV部14およびEMS16を介して外部機器40に通知するものである。
【0038】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、鉛蓄電池に過電流が流れた場合でも、安全性を保つことができる。
【0039】
次に、補助電池部の変形例について説明する。図2は、図1の複合電池システムを構成する補助電池部の変形例を示すブロック図である。本発明の補助電池部30aは、補助電池部30に対して、電流計34および補助スイッチ36の代わりにヒューズ50を有する点、ならびに補助BMS38を有しない点以外は同一の構成を有するものであるので、同一の構成要素の説明を省略する。
補助電池部30は、さらに、ヒューズ50を有しても良い。その場合には、ヒューズ50は、鉛蓄電池32に過電流が流れた場合に鉛蓄電池32に流れる電流を遮断するものである。
【0040】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、鉛蓄電池に過電流が流れた場合でも、安全性を保つことができる。
【0041】
次に、BMSの機能について説明する。
複数の主電池部20のそれぞれは、BMS26を備えても良い。その場合には、BMS26は、リチウムイオン電池22の電圧、電流および温度を測定し、電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、電圧、電流および温度の測定値ならびにSOCおよびSOHの算出値を、HV部14およびEMS16を介して外部機器40に通知するものである。
【0042】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、リチウムイオン電池に付属しているBMSをそのまま使用できるので、資源を有効活用することができる。
【0043】
次に、BMSの機能をHV部に組み込んだ場合について説明する。
HV部14は、リチウムイオン電池22の電圧、電流および温度を測定し、電圧、電流および温度に基づいてSOCおよびSOHを算出し、電圧、電流および温度の測定値ならびにSOCおよびSOHの算出値を、EMS16を介して外部機器40に通知しても良い。
【0044】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、BMSの機能をHV部に統合するので、複合電池システムの構成をシンプルにすることができる。
【0045】
次に、筐体の内部の温度制御について説明する。
複合電池システム10は、さらに、温度計52と冷暖房装置54とを有しても良い。その場合には、温度計52は、筐体18の内部の温度を測定するものである。冷暖房装置54は、筐体18の内部の温度を変化させるものである。EMS16は、リチウムイオン電池22の温度および温度計52の測定値に基づいて冷暖房装置54およびスイッチ24の少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器40にリチウムイオン電池22の温度および温度計52の測定値を通知するものである。
【0046】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、リチウムイオン電池の温度および筐体の内部の温度を安全な範囲に制御するので、安全性を保つことができる。
【0047】
次に、筐体の内部の火災対策について説明する。
複合電池システム10は、さらに、消火器56を有しても良い。その場合には、消火器56は、筐体18の内部に発生した火炎を自動的に検出して消火するものである。EMS16は、消火器56が作動した場合に外部機器40に消火器56の作動を通知するものである。
【0048】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、落雷や配線の短絡などによって筐体内に火災が発生したでも、安全性を保つことができる。
【0049】
次に、筐体の内部の水素ガス対策について説明する。
複合電池システム10は、さらに、水素ガスセンサ58とファン60とを有し、補助電池部30は、さらに、補助スイッチ36を備えても良い。その場合には、水素ガスセンサ58は、筐体18の内部の水素ガスの濃度を測定するものである。ファン60は、筐体18の内部の空気を換気するものである。補助スイッチ36は、鉛蓄電池32を電気的に接続または遮断するものである。EMS16は、水素ガスの濃度の測定値に基づいてファン60およびスイッチ24の少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器40に水素ガスの濃度の測定値を通知するものである。
【0050】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、鉛蓄電池の過充電などによって鉛蓄電池から大量の水素ガスが発生した場合でも、安全性を保つことができる。
【0051】
次に、筐体の内部の有機ガス対策について説明する。
複合電池システム10は、さらに、有機ガスセンサ62とファン60とを有しても良い。その場合には、有機ガスセンサ62は、筐体18の内部の有機ガスの濃度を測定するものである。ファン60は、筐体18の内部の空気を換気するものである。EMS16は、有機ガスの濃度の測定値に基づいてファン60およびスイッチ24の少なくとも一方をオンオフすると共に、外部機器40に有機ガスの濃度の測定値を通知するものである。
【0052】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、リチウムイオン電池の劣化などによってリチウムイオン電池から大量の電解液が漏れた場合でも、安全性を保つことができる。
【0053】
次に、本発明の複合電池システムの用途を広げたり拡張性を高めたりするものについて説明する。
複合電池システム10は、さらに、PCS64を有しても良い。その場合には、PCS64は、筐体18の内部または外部に配置され、リチウムイオン電池22および鉛蓄電池32から外部機器40への放電電力を直流から交流に変換し、外部機器40からリチウムイオン電池22および鉛蓄電池32への充電電力を交流から直流に変換するものである。
【0054】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、複合電池システムの用途を広げることができる。
【0055】
EMS16は、電圧の測定値に基づいてスイッチ24をオンオフすると共に、外部機器40に電圧の測定値を通知しても良い。また、EMS16は、複数の筐体18にそれぞれ収納されたHV部14からの通知を受信しても良い。
【0056】
このような構成とすることで、本発明の複合電池システムは、複合電池システムの拡張性を高めることができる。
【0057】
次に、主電池部および補助電池部の具体的なモジュール構成について説明する。図3は、図1の複合電池システムを構成する主電池部の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。本発明の主電池部20aは、主電池部20に対して、リチウムイオン電池22の代わりに互いに直列に接続された複数のリチウムイオン電池モジュール22mを有する点以外は同一の構成を有するものであるので、同一の構成要素の説明を省略する。図4は、図3の主電池部の他の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。本発明の主電池部20bは、主電池部20に対して、リチウムイオン電池22の代わりに互いに直列に接続された複数のリチウムイオン電池モジュール22mを有し、スイッチ24の代わりに各リチウムイオン電池モジュール22mに対応するスイッチモジュール24mを有し、BMS26の代わりに各リチウムイオン電池モジュール22mに対応するBMSモジュール26mを有するものである。
【0058】
また、図5は、図1の複合電池システムを構成する補助電池部の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。本発明の補助電池部30bは、補助電池部30に対して、鉛蓄電池32の代わりに互いに直列に接続された複数の鉛蓄電池モジュール32mを有する点以外は同一の構成を有するものであるので、同一の構成要素の説明を省略する。図6は、図2の補助電池部の変形例の具体的なモジュール構成を示すブロック図である。本発明の補助電池部30cは、補助電池部30aに対して、鉛蓄電池32の代わりに互いに直列に接続された複数の鉛蓄電池モジュール32mを有する点以外は同一の構成を有するものであるので、同一の構成要素の説明を省略する。
【0059】
一例として、複合電池システムAの構成について説明する。
複合電池システムAでは、複数の複合ユニット12は、互いに直列に接続された2個の複合ユニット12であっても良い。リチウムイオン電池22は、電池容量が5.63kWhで動作電圧が約24Vの互いに直列に接続された17個のリチウムイオン電池モジュール22mであっても良い。鉛蓄電池32は、電池容量が0.36kWhで動作電圧が約12.75Vの互いに直列に接続された32個の鉛蓄電池モジュール32mであっても良い。
【0060】
複合電池システムAでは、リチウムイオン電池モジュール22mは、BYD製AS-OP-8Sであり、リチウムイオン電池22は、電池容量が95.7kWhで動作電圧が約408Vである。鉛蓄電池モジュール32mは、LCPA製33-12であり、鉛蓄電池32は、電池容量が11.5kWhで動作電圧が約408Vである。主電池部20の基本接続数が2つであり、余剰接続数が1つである場合、各複合ユニット12は、基本接続数の電池容量が202.9kWhであり、余剰接続数を含む電池容量が298.6kWhである。複合ユニット12の直列接続数が2つである場合、複数の複合ユニット12の全体は、基本接続数の電池容量が405.8kWhであり、余剰接続数を含む電池容量が597.2kWhであり、動作電圧が約816Vである。
【0061】
他の一例として、複合電池システムBの構成について説明する。
複合電池システムBでは、複数の複合ユニット12は、互いに直列に接続された4個の複合ユニット12であっても良い。リチウムイオン電池22は、電池容量が26.73kWhで動作電圧が約150Vの互いに直列に接続された2個のリチウムイオン電池モジュール22mであっても良い。鉛蓄電池32は、電池容量が0.36kWhで動作電圧が約12.75Vの互いに直列に接続された24個の鉛蓄電池モジュール32mであっても良い。
【0062】
複合電池システムBでは、リチウムイオン電池モジュール22mは、e-BUS電池L173TB2であり、リチウムイオン電池22は、電池容量が53.46kWhで動作電圧が約300Vである。鉛蓄電池モジュール32mは、LCPA製33-12であり、鉛蓄電池32は、電池容量が8.64kWhで動作電圧が約306mVである。主電池部20の基本接続数が2つであり、余剰接続数が1つである場合、各複合ユニット12は、基本接続数の電池容量が115.6kWhであり、余剰接続数を含む電池容量が169.0kWhである。複合ユニット12の直列接続数が4つである場合、複数の複合ユニット12の全体は、基本接続数の電池容量が462.2kWhであり、余剰接続数を含む電池容量が676.1kWhであり、動作電圧が約1200Vである。
【0063】
複合電池システムAおよびBにおいて、リチウムイオン電池モジュール22mの内部にバッテリマネジメントユニット(以下、BMUという)が搭載され、そのBMUを駆動するために制御用12V電源が必要な場合にはそれを接続する。その場合には、複合電池システムAおよびBの起動手順は、まず、外部から電圧が掛かってもリチウムイオン電池モジュール22mが充放電可能な状態になるようにBMSのソフトウェアをあらかじめ変更しておき、次に、リチウムイオン電池モジュール22mと制御用12V電源との間に接続されたスイッチをオンし、次に、リチウムイオン電池モジュール22mのコンタクタをオンしてリチウムイオン電池モジュール22mを充放電可能な状態にする。
本発明の複合電池システムは、基本的に以上のように構成される。
【0064】
以上、本発明の複合電池システムについて詳細に説明したが、本発明は上記記載に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしても良いのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の複合電池システムは、仕様上の蓄電容量を確保しつつ構成をシンプルにし、劣化したリチウムイオン電池を特定してその電池だけを交換することができるという効果に加え、従来と同等以上に安全性を保つこと、資源を有効活用すること、用途を広げること、および拡張性を高めることができるという効果もあるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0066】
10 複合電池システム
12 複合ユニット
14 HV部
16 EMS
18 筐体
20、20a、20b 主電池部
22 リチウムイオン電池
22m リチウムイオン電池モジュール
24 スイッチ
24m スイッチモジュール
26 BMS
26m BMSモジュール
30、30a、30b、30c 補助電池部
32 鉛蓄電池
32m 鉛蓄電池モジュール
34 電流計
36 補助スイッチ
38 補助BMS
40 外部機器
50 ヒューズ
52 温度計
54 冷暖房装置
56 消火器
58 水素ガスセンサ
60 ファン
62 有機ガスセンサ
64 PCS
図1
図2
図3
図4
図5
図6