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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】剥離シートのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20250307BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20250307BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20250307BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20250307BHJP
   G01N 5/00 20060101ALN20250307BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20250307BHJP
【FI】
B29B17/00
B29C33/68 ZAB
G01N21/3563
G01N29/04
G01N5/00 Z
B29K67:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023125004
(22)【出願日】2023-07-31
(65)【公開番号】P2025021220
(43)【公開日】2025-02-13
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 衛
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛三
(72)【発明者】
【氏名】川端 大暉
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-079071(JP,A)
【文献】特開2002-214136(JP,A)
【文献】特開平09-010703(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3505880(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/00
B29C 33/68
G01N 21/3563
G01N 29/04
G01N 5/00
B29K 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着シートと貼り合わされ、離型剤層が形成された第一面と、前記第一面に対向する第二面とを有し、樹脂材料からなる基材を有する剥離シートとを備えた樹脂シート積層体を使用事業者に供給するステップと、
前記樹脂シート積層体から剥離された使用済み剥離シートを回収容器を用いてロールシート及び枚葉シートから選ばれるいずれかの形状で前記使用事業者から回収するステップと、
記憶部、照射部、検出部及び判断部を有する分析システムの前記記憶部が前記剥離シートの構成を記憶するステップと、
前記使用事業者から回収した前記回収容器の内容物を分別検査するステップと、
分別検査によって前記使用済み剥離シートではないと判断された異物を前記回収容器の内容物から除去するステップと、
前記使用済み剥離シートを樹脂原料に再生するステップとを備えており、
前記回収容器の内容物を分別検査するステップは、
前記照射部から前記内容物に照射され、前記内容物から反射され、又は前記内容物を透過した可視光、赤外光又は超音波を前記検出部が検出するステップと、
前記検出部で検出された可視光、赤外光又は超音波に基づいて前記内容物の構成を分析するステップと、
前記分析された内容物の構成と前記記憶部に記憶された前記剥離シートの構成とを照合するステップと、
前記内容物のうち、記憶された前記剥離シートの構成と一致しない構成を有するロールシート又は枚葉シートを、前記使用済み剥離シートではないと判断するステップと
を含む、剥離シートのリサイクル方法。
【請求項2】
前記剥離シートには、平坦な形状を有するものと、前記第一面に凹凸が形成されたものとが含まれている、請求項1に記載の剥離シートのリサイクル方法。
【請求項3】
前記分析システムは、前記照射部と前記検出部とを含む接触式の分析装置を有している、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項4】
前記樹脂シート積層体の前記使用事業者への供給量を供給量記憶部に記憶するステップと、
前記使用事業者から回収した前記回収容器の質量を計測して、前記回収容器内の前記使用済み剥離シートの量を回収量として算出するステップと、
前記供給量記憶部に記憶された前記供給量に基づいて、前記使用事業者からの前記使用済み剥離シートの回収量予測値を演算部において算出するステップと、
前記回収量と、前記回収量予測値とを評価部において比較し、前記回収量と前記回収量予測値との間のずれが所定の範囲を超える場合には、前記回収容器の内容物を分別検査の対象と判断するステップとをさらに備え、
前記回収容器の内容物を分別検査をするステップでは、前記回収量と前記回収量予測値とを用いて、前記分別検査の対象と判断された回収容器の内容物に対して検査を実施する、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項5】
前記剥離シートの基材は、ポリエステル樹脂により構成されている、請求項1に記載のリサイクル方法。
【請求項6】
前記剥離シートの基材は、リサイクルされた樹脂原料を10質量%以上含んでいる、請求項1~5のうちいずれか1項に記載のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、剥離シートのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護意識の高まりから、工業製品から日用品に至る様々な製品について、再使用やリサイクルすることが提言されている。樹脂製品の回収とリサイクルについては、プラスチック資源循環促進法が制定されており、特に注目が高い。例えば、偏光板を含む積層体の製造工程で使用された樹脂基材を再利用することが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
リサイクルにおいては、効率よく資材を回収し、分別することが重要である。印刷用資材について、リサイクルのシステムを構築することも検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-118388
【文献】特開2017-139008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、単に樹脂材料をリサイクルするだけでなく、使用済みの製品から回収した樹脂材料を再生し、同じ製品の材料として使用する水平リサイクルへの取り組みも始まっている。水平リサイクルの場合、再生された樹脂材料が未使用材料に近い品質を維持している必要があるため、使用済み材料を回収する際の異物の混入はより大きな問題となる。
【0005】
水平リサイクルの1つとして、粘着剤層を有し、剥離シートが設けられたラベルの使用後に、剥離シートを回収して樹脂材料に再生し、再び剥離シートの製造に使用しようとする試みが始まりつつある。ラベルの種類や素材は様々であるが、剥離シートは1種類で多くのラベルに対応できるため、剥離シートを回収することで、効果的にリサイクルすることができる。しかし、剥離シートの水平リサイクルは新しい取り組みであるため、これを実現するための方法は完全には確立されていない。
【0006】
本発明の目的は、剥離シートを効率的にリサイクルしつつ、精度良く異物を除去可能な剥離シートのリサイクル方法と、この方法に適した剥離シートとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示された剥離シートのリサイクル方法は、粘着剤層を有する粘着シートと、前記粘着シートと貼り合わされ、離型剤層が形成された第一面と、前記第一面に対向する第二面とを有し、樹脂材料からなる基材を有する剥離シートとを備えた樹脂シート積層体を使用事業者に供給するステップと、前記樹脂シート積層体から剥離された使用済み剥離シートを回収容器を用いてロールシート及び枚葉シートから選ばれるいずれかの形状で前記使用事業者から回収するステップと、記憶部、照射部、検出部及び判断部を有する分析システムの前記記憶部が前記剥離シートの構成を記憶するステップと、前記使用事業者から回収した前記回収容器の内容物を分別検査するステップと、分別検査によって前記使用済み剥離シートではないと判断された異物を前記回収容器の内容物から除去するステップと、前記使用済み剥離シートを樹脂原料に再生するステップとを備えている。前記回収容器の内容物を分別検査するステップは、前記照射部から前記内容物に照射され、前記内容物から反射され、又は前記内容物を透過した可視光、赤外光又は超音波を前記検出部が検出するステップと、前記検出部で検出された可視光、赤外光又は超音波に基づいて前記内容物の構成を分析するステップと、前記分析されたステップと前記記憶部に記憶された前記剥離シートの構成とを照合するステップと、前記内容物のうち、記憶された前記剥離シートの構成と一致しない構成を有するロールシート又は枚葉シートを、前記使用済み剥離シートではないと判断するステップとを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に開示されたリサイクル方法によれば、可視光、赤外光又は超音波を用いた剥離シートの構成検査を分別検査に利用できるので、使用済み剥離シートの効率的なリサイクルを実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法に適用される剥離シートの一例を備えた樹脂シート積層体を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す剥離シートを粘着剤層と接する面側から見た平面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法に適用される剥離シートの他の例を備えた樹脂シート積層体を示す断面図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法を示すフロー図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るリサイクル方法で用いられる検査システムを示すブロック図である。
図6図6は、内容物の分別検査を行うステップの詳細を示すフローチャート図である。
図7図7は、本開示の第2の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法を示すフローチャート図である。
図8図8は、第2の実施形態の方法で用いられるリサイクル原料判定装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、剥離シートを備えた樹脂シート積層体を示す断面図であり、図2は、剥離シートを粘着剤層と接する面側から見た平面図である。図3は、剥離シートの別の例を示す断面図である。これらの剥離シート10、10Aは、第1の実施形態に係るリサイクル方法に適用される。
【0011】
図4は、第1の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法を示すフローチャート図であり、図5は、本実施形態のリサイクル方法で用いられる分析システムを示すブロック図である。
【0012】
本実施形態のリサイクル方法では、図1に示す樹脂シート積層体20から剥がされた剥離シート10、又は樹脂シート積層体20Aから剥がされた剥離シート10Aを回収する。樹脂シート積層体20は、基材シート7と、基材シート7の一方の面に設けられた粘着剤層5とを有する粘着シート15と、粘着剤層5に貼り合わされた剥離シート10とを備えている。
【0013】
剥離シート10は、離型剤層3が形成された第一面6と、第一面6に対向する第二面8とを有し、第一面6及び第二面8の少なくとも一方に三次元形状4が形成された、樹脂材料からなる基材1を有している。ここで、「三次元形状」とは、凹部や凸部、凹凸部など、平面に対して立体的な形状を意味しており、立体的であれば特に形状は限定されない。基材1はシート状で、図1及び図2では、三次元形状4は錐台型に凹んだ凹部である例を示している。第一面6には、凹部が一定間隔で二次元方向に繰り返して配置された凹凸パターンが形成されており、粘着剤層5にはこの凹凸パターンに対応した、複数の凸部13が格子状の溝11によって区画された逆凹凸パターンが形成されている。第一面6に形成された凹凸パターンは、格子状の突条部9により形成されているとも言える。
【0014】
この構成により、粘着シート15が被着体に貼り付けられる際には溝11から空気が抜けるので、空気を噛み込むことなく被着体に貼り付けることが可能となる。
【0015】
図3に示す樹脂シート積層体20Aに用いられる剥離シート10Aのように、三次元形状が形成されておらず、平坦な離型面を有する剥離シートであっても本リサイクル方法で再生できる。
【0016】
基材シート7は、樹脂シート、紙及び合成紙から選ばれた1つ以上の材料により形成されていてもよく、これら材料の積層体であってもよい。粘着シート15がラベル等である場合、基材シート7の粘着剤層5と接する面、及びこの面と反対側の面の少なくとも一方に、インクとの密着性を向上させる易接着層が形成されていてもよい。
【0017】
剥離シート10に形成される凹凸パターンのサイズは特に限定されないが、三次元形状4の高さが例えば5μm以上100μm以下、縦横の長さが20μm以上1000μm以下、隣接する三次元形状4同士の間隔が20μm以上1000μm以下程度であり、粘着剤層5に空気の通路となる溝11が形成できるパターンであれば、粘着シート15の貼付け時に効果的に空気の噛み込みを低減できるので、好ましい。
【0018】
粘着剤層5は、ウレタン系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系及びゴム系から選ばれた1種以上の粘着剤を用いて形成されていてもよい。粘着剤としては植物由来の粘着剤を使用してもよいし、植物由来の粘着付与剤等が添加されていてもよい。
【0019】
剥離シート10、10Aの基材1は再生可能な樹脂材料により構成されていればよい。樹脂材料は特に限定されないが、ポリエステル樹脂、その中でもポリエチレンテレフタレート(PET)は、汎用性が高く、リサイクル技術が確立されている点で好ましく使用できる。基材1は透明であってもよいし、白色であってもよいが、インク等による着色は、再利用の観点から、されていなくてもよい。基材1が多孔質の樹脂材料により形成されている場合、白色となる。基材1が多孔質であることにより、透明の一般的な樹脂フィルムを用いる場合に比べて使用する樹脂材料の量を少なくすることができる。基材1としては、例えば東洋紡(株)のカミシャイン(登録商標)を使用することができる。環境配慮の観点から、基材1が植物由来材料を含むバイオマスポリエステルを含んでいてもよい。
【0020】
離型剤層3は、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を含む離型剤を含んでおり、図1に示す例では、三次元形状4の形状に追従するように形成されている。離型剤層3の厚さは一般的に5μm以下程度となっている。基材1の第二面8及び/又は第一面6には帯電防止層が設けられていてもよい。
【0021】
図5に示す分析システム30は、例えば、各層の厚みや材質など、剥離シート10、10Aの構成情報を記憶できる記憶部21と、ロールシート又は枚葉シートの状態の検査対象物の構成を分析する分析装置25と、判断部27とを備えている。
【0022】
分析装置25は、検査対象物に可視光や赤外光又は超音波等を照射する照射部24と、検査対象物からの反射光又は検査対象物の透過光を検出して検査対象物の層構成や厚み、構成材料を分析する検出部22とを有している。分析装置25の方式は特に限定されないが、検査対象物の構成の違いを十分な精度で検出できる装置であることが望ましい。分析装置25が赤外光を使用する場合は、分散型であってもよいし、フーリエ変換型(FT-IR)であってもよい。フーリエ変換型の分析装置25を用いることによって、高い精度で高速に分析することが可能となる。
判断部27は、記憶部21から読み出された剥離シート10、10Aの構成情報と、分析装置25により分析された検査対象物の構成とを照合し、検査対象物の構成が剥離シート10、10Aの構成と一致する場合は、ロールシート又は枚葉シートは剥離シート10、10Aであると判断し、検査対象物の構成が剥離シート10、10Aの構成と一致しない場合は、ロールシート又は枚葉シートは剥離シート10、10Aではないと判断する。本ステップにおいて、異物であるか否かの判断は、ロールシートごと、枚葉シートごとに行う。
【0023】
記憶部21及び判断部27のうち少なくとも1つは、分析装置25内に設けられていてもよいし、分析装置25の外部に設けられていてもよい。分析装置25はハンディタイプであってもよいし、位置が固定された設置型であってもよい。設置型の分析装置25を使用する場合は、例えばベルトコンベヤ等の搬送装置によって運搬される検査対象物を連続的に検査することができる。連続的な検査に使用するには、分析装置25による分析が例えば1秒以内で完了することが好ましい。分析装置25がハンディタイプの場合は、分析に数秒~数十秒程度の時間を要する場合であっても使用できる他、検査対象物に接触させる接触式とすることで、反射光又は透過光をより確実に検出することができるので、分析精度を向上させることができる。
【0024】
図4に示す手順により、剥離シート10、10Aのリサイクルが行われる。まず、ステップS1において、使用事業者に樹脂シート積層体20、20Aが供給・販売されるか、加工事業者に販売され、加工事業者が加工した後、使用事業者に供給される。加工事業者は、粘着シート15の表面に印刷したり、抜き加工やハーフカット等の加工を行ったりする。また、使用事業者が自ら印刷等の加工を行う場合もある。
【0025】
次に、ステップS2において、樹脂シート積層体20、20A又はそれらの加工品を供給された使用事業者は、粘着シート15を剥離シート10、10Aから剥がして使用する。使用事業者は、剥離した後の使用済み剥離シート10、10Aを廃棄せずに保管、集積する。
【0026】
ステップS3において、所定量に達した使用済み剥離シート10、10Aは、回収容器を用いてロールシート及び枚葉シートから選ばれるいずれかの形状で使用事業者から回収される。ロールシートの長さや枚葉シートの大きさ、裁断箇所の有無は、特に限定されない。
【0027】
ステップS4において、記憶部21が剥離シート10、10Aの構成を記憶する。具体的には、剥離シート10、10Aの層構成、各層の材質及び厚み等が記憶される。本ステップは、後の分別検査の前であればどのタイミングで行ってもよい。
【0028】
ステップS5において、回収容器の内容物の分別検査を行う。本ステップの詳細を図6に示す。
【0029】
まず、ステップS5Aにおいて、回収容器の内容物の構成の分析を、ロールシートごと又は枚葉シートごとに順次行う。分析装置25による分析結果は、判断部27へと送られる。
【0030】
次に、ステップS5B、S5Cにおいて、判断部27が、内容物の構成と記憶部21に記憶された剥離シート10、10Aの構成とを照合する。内容物のうち、記憶された剥離シート10、10Aの構成と一致しない構成を有するロールシート又は枚葉シートは、判断部27が使用済みの剥離シート10、10Aではないと判断する。剥離シート10、10Aの構成と一致する構成を有するロールシート又は枚葉シートは、使用済みの剥離シート10、10Aであると判断する。
【0031】
検査対象物が使用済みの剥離シート10、10Aではないと判断された場合、ステップS5Dにおいて、当該検査対象物を異物と判断する。この方法によれば、剥離シート10と剥離シート10Aのように、形状が異なるもののシート構成が同じである剥離シートを容易に検出できるので、再生に回したい剥離シートが複数種類ある場合であっても、確実に分別を行うことが可能となる。一方で、剥離シート10、10Aが白色である場合等、光学特性での分別が困難である場合であってもシートの構造に基づく正確な分別が可能となる。
【0032】
樹脂シート積層体20、20Aには、複数の剥離シート10、10Aが接続テープにより連結された構成を有している場合がある。この場合、接続テープと剥離シート10、10Aとの材質の違いに基づいて、接続テープを容易に分別できる。検査対象物がロールシートである場合は、一部分を検査すればよく、シート全体を検査する必要はない。
【0033】
次に、図4に示すステップS6では、分別検査において使用済み剥離シート10、10Aではないと判断された異物を回収容器の内容物から除去する。
【0034】
ステップS7においては、必要に応じて内容物の前処理を行ってもよい。例えば、使用済み剥離シート10、10Aを温水又はアルカリ水で洗浄することで離型剤層3や帯電防止層の除去を行った後、適切なサイズに裁断して加熱及び溶融することにより、ペレット形状にしてもよい。特に問題が無ければ、離型剤層3を除去せずにペレット形状にしてもよい。
【0035】
ステップS8において、使用済み剥離シート10、10Aは、樹脂原料に再生される。樹脂原料への再生方法は特に限定されず、剥離シート10の樹脂組成に応じた種々の方法を用いることができる。再生された樹脂原料は、再び剥離シートの生産に用いることができる。剥離シートを生産する際には再生原料のみ用いることもできるが、未使用の原料と混合して使用することもできる。環境への負荷を考慮すれば、新たに生産される剥離シートの基材に、リサイクルされた樹脂原料が少なくとも10質量%以上含まれていることが好ましい。使用済みの剥離シートから再生された、いわゆる水平リサイクルされた樹脂原料が剥離シート10、10Aに含まれていてもよい。水平リサイクルされた材料の使用は、石油資源の直接的な節約につながるので、好ましい。
【0036】
本実施形態の方法においては、樹脂シート積層体20、20Aに含まれる粘着シート15は、必ずしも基材シート7を有している必要はなく、基材シートを有さず、2枚の剥離シート10、10Aに挟まれた構成を有していてもよい。また、離型剤層3が基材1の両面に設けられ、いわゆる基材レスタイプの粘着シート15の一方の面にのみ剥離シート10が設けられた樹脂シート積層体20をステップS1で販売してもよい。この場合、樹脂シート積層体20は、剥離シート10の背面(第二面)が粘着剤層5の剥離シート10とは反対側の面に接するように巻回されたロールの状態で提供されてもよい。
【0037】
なお、図4に示す記憶工程(ステップS4)、検査工程(ステップS5)及び異物の除去工程(ステップS6)は、ステップS3で使用事業者から回収した剥離シートを受け入れた後、連続的に実施されてもよい。あるいは、ステップS4及びステップS5は使用事業者から回収した剥離シートの受け入れ検査として行われてもよい。その場合、許容範囲以上の異物が剥離シートに含まれることが分かった段階で受け入れ拒否をすることもできる。
【0038】
(第2の実施形態)
本開示の第2の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法を説明する。図7は、第2の実施形態に係る剥離シートのリサイクル方法を示すフローチャート図であり、図8は、本実施形態の方法で用いられるリサイクル原料判定装置を示すブロック図である。
【0039】
図8に示すように、リサイクル原料判定装置40は、粘着シートの使用事業者への供給量のデータを記憶する供給量記憶部51と、検査対象物の質量を計測する計測部57と、演算部53と、計測部57からの計測データと演算部53により算出されたデータとに基づいて所定の判断を行う評価部55とを備えている。
【0040】
図1及び図3に示す樹脂シート積層体20、20Aは、図7に示すステップS11において、使用事業者に供給される。樹脂シート積層体20、20Aは、加工事業者により基材シート7表面への印刷や、抜き加工等の加工が施された状態で使用事業者に供給されてもよい。ここで、最終的な使用事業者への樹脂シート積層体20、20A又はその加工品の供給量等のデータが、供給量記憶部51に使用事業者ごとに記憶される。
【0041】
ステップS12において、使用事業者は、粘着シート15を剥離シート10、10Aから剥がして使用する。使用事業者は、剥離した後の使用済み剥離シート10、10Aを廃棄せずに保管、集積する。
【0042】
ステップS13において、所定量に達した使用済み剥離シート10、10Aは、回収容器を用いてロールシート及び枚葉シートから選ばれるいずれかの形状で使用事業者から回収される。ここで使用される回収容器は、後工程での計測を容易にするために、サイズや質量、容量等の規格が統一された専用容器であることが好ましい。専用容器には容器番号が付され、容器質量と紐づけされていてもよい。専用容器の具体例として、例えば、フレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)と金属枠とを組み合わせたフレコンボックスが挙げられる。フレコンボックスを用いることにより、単位容器ごとの物品集配輸送サービス(JITBOXチャーター便(登録商標)等)を利用して効率良く使用済み剥離シート10、10Aが回収できるようになる。
【0043】
ステップS14において、使用事業者から配送システムにより回収された回収容器は、所定の拠点に集積される。集積された回収容器は計量され、使用事業者ごとに回収容器内の回収量が記憶、集計される。回収容器自体の質量が分かっている場合や、専用容器を回収容器としている場合、回収量は内容物込みの回収容器の質量と空の回収容器の質量との差により求めることができる。
【0044】
ステップS15において、記憶部21が剥離シート10、10Aの構成を記憶する。本ステップは、後の分別検査の前であればどのタイミングで行ってもよい。
【0045】
ステップS16において、使用事業者からの使用済み剥離シート10の回収量予測値を、記憶させた樹脂シート積層体20、20Aの供給量に基づいて算出する。回収予測値の算出は、例えば樹脂シート積層体20、20Aの単位質量あたりの剥離シート10、10Aの質量割合を、供給した樹脂シート積層体20の質量にかけることにより求めることができる。樹脂シート積層体20、20Aの販売時に販売面積(m)を記憶しておき、販売面積に剥離シート10の単位面積当たりの質量を乗じて回収予測値を算出してもよい。精度を高めるために、過去の回収量実績等を種々のパラメータとして加味して演算部53が回収量予測値を算出することもできる。回収量予測値の算出は、樹脂シート積層体20、20Aの供給量が決定してから、回収量と比較するまでの任意の間に行うことができる。
【0046】
ステップS17において、使用事業者ごとの回収量を、回収量予測値と比較し、該当する回収容器が検査対象になるかどうかを判定する。使用事業者から使用済み剥離シート10、10Aが正しく回収できた場合には、回収量と回収量予測値とがほぼ一致するはずである。回収量が回収量予測値から大きく下回る場合は、使用事業者が使用済み剥離シート10、10Aを十分に回収していなかったり、使用済み剥離シート10、10A以外のものが回収容器に入れられていたりすることが疑われる。また、回収量が回収量予測値を大きく上回る場合は、使用済み剥離シート10、10A以外のものも回収容器に入れられたことが疑われる。回収量と回収量予測値とが大きくずれている場合には、いずれにしても使用済み剥離シート10、10Aが正しく回収できていない可能性が高いため、該当する回収容器に対して内容物の検査を行う。一方、回収量と回収量予測値とが一致する場合には、該当する回収容器の内容物の検査を行わないか、簡単な検査のみを行うようにできる。
【0047】
評価部55における、回収量と回収量予測値とが一致しているかどうかの判定は、両者の差が所定の範囲内にあるかどうかにより行うことができる。所定の範囲は、10%~30%程度の値を一律に設定したり、統計的解析を行ってその結果に基づいて設定したりすることができる。
【0048】
先のステップで検査を行うと判断された場合、ステップS18において、回収容器の内容物の分別検査を行う。本ステップでは、第1の実施形態で説明した、図6に示すステップS5A~ステップS5Dの手順で検査を行い、内容物に異物が混入しているか否かを判断する。本ステップでは、検査対象物の全光線透過率やヘイズ値等の光学的特性や破断強度やヤング率等の物理的特性を検査してもよいし、目視による検査をしてもよい。
【0049】
次に、ステップS19では、分別検査において使用済み剥離シート10、10Aではないと判断された異物を回収容器の内容物から除去する。
【0050】
ステップS20では、必要に応じて内容物の前処理を行ってもよい。次いで、ステップS21において、使用済み剥離シート10は、樹脂原料に再生される。
【0051】
本実施形態の方法において、回収量と回収量予測値とが一致しているかどうかの判定は、図8に示すリサイクル原料判定装置40により自動的に行うことができる。回収容器内の内容物の量は計測部57により算出され、回収量予測値は、演算部53により算出される。評価部55は、回収量と回収量予測値とを比較して、差異が所定の範囲を超える場合には、分別検査の対象となる回収容器であると決定する。
【0052】
供給量記憶部51は、樹脂シート積層体20の供給量が直接入力される構成とすることができるが、サーバー上の営業情報を読み出す構成とすることもできる。計測部57は、回収容器の質量を計測する計測ユニットと一体となって自動的に回収容器の質量を取得して回収量を算出する構成とすることができるが、回収容器の質量測定は独立した装置で行う構成とすることもできる。評価部55は、評価結果に基づいて、該当する回収容器に貼付するラベル等を出力する機能を有していてもよい。回収量予測値を算出する演算部53は、評価部55と兼用する構成とすることができる。また、回収容器の質量から回収量を算出する機能を評価部55が担う構成とすることもできる。
【0053】
本実施形態の方法において、回収量のデータは、他の目的に用いることもできる。例えば、使用事業者から回収した回収容器を第1の拠点に集積した後、より大きな回収容器に移し替えて、再生を行う第2の拠点に移動させる場合、回収量のデータを用いて第1の拠点に集積している使用済み剥離シート10、10Aの在庫管理を行うことができる。この場合、使用事業者への樹脂シート積層体20、20Aの供給量のデータに基づいて、第1の拠点における使用済み剥離シート10、10Aの集積量が所定の値を超える時期の予測を行い、回収容器ごとの第2の拠点への移送スケジュールを立案することができる。また、このスケジュールに基づいて配送業者へ移送の手配を行うことができる。このようにすれば、拠点間の移送をスムーズに行うことができ、集積場所の確保も最小限にすることができるので、効率的にリサイクルを行うことができる。第1の拠点が複数ある場合には、それぞれの第1の拠点のデータを集中して管理することにより、さらに効率的に移送やリサイクル設備の稼働の計画を立案することができる。
【0054】
第1の拠点では、第2の拠点での再生を円滑に行えるように、使用済み剥離シート10、10AにステップS20の前処理を行ってもよい。第2の拠点には、前処理された加工物を移送してもよい。この場合、使用済み剥離シート10、10Aの加工物の在庫量も管理しておいてもよく、使用済み剥離シート10、10Aの集積量の予測値に基づいて立案された使用済み剥離シート10、10Aの加工物の移送スケジュールを、加工物の在庫量に応じて修正してもよい。
【0055】
回収量のデータは、使用事業者に支払う対価を算出する際にも使用することができる。使用事業者に対価を支払うことにより、よりスムーズに回収を行うことができる。また、再生が容易な状態で使用済み剥離シート10、10Aを回収できた使用事業者により高い対価を支払うことにより、使用事業者の意識を高め、より状態がよい使用済み剥離シート10、10Aを回収できる。例えば、使用事業者に支払う対価を、異物の混入が少ない場合と、異物が規定値以上に多い場合とに生じるリサイクル費用の差を反映させたものとすることができる。この場合、剥離シート10、10Aの運送費用やリサイクルに使用する薬剤の価格等、リサイクルに要する費用に影響を与える種々のパラメータを記憶させたシステムを用いて、リサイクルに要する費用を包括的に算出することが好ましい。このようにすれば、使用事業者の納得性がより高まり、意識の向上に繋がる。なお、リサイクルされた樹脂原料の取引価格の情報を事前に供給量記憶部51等に記憶させておき、樹脂原料の取引価格から上述のリサイクル費用を差し引くことで使用事業者に支払う対価を算出してもよい。
【0056】
本実施形態のリサイクル方法によれば、回収量と回収量予測値との比較に基づいて回収容器が検査対象になるか否かを簡易に判別しているので、第1の実施形態に係る方法に比べて分別検査の効率を上げることができる。その一方で、検査対象と判断された回収容器の内容物については、剥離シート10、10Aの分析結果を用いた方法で精度良く、且つ効率的に異物の検出及び除去を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示の剥離シートのリサイクル方法は、ラベル等、環境に配慮した粘着シートの分野において、有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 基材
3 離型剤層
4 三次元形状
5 粘着剤層
7 基材シート
9 突条部
10、10A 剥離シート
11 溝
13 凹部
15 粘着シート
20、20A 樹脂シート積層体
21 記憶部
22 検出部
24 照射部
25 分析装置
27 判断部
30 分析システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8