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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】充填物処理方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/00 20060101AFI20250307BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250307BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20250307BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20250307BHJP
【FI】
F23G7/00 A
B01D53/62 ZAB
F23J15/00 Z
C02F1/28 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023217209
(22)【出願日】2023-12-22
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-30566(JP,A)
【文献】特開2012-130844(JP,A)
【文献】特開2002-257312(JP,A)
【文献】特開平11-169602(JP,A)
【文献】特許第4418872(JP,B2)
【文献】特開2003-205202(JP,A)
【文献】特開2023-13309(JP,A)
【文献】特開2024-6549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/00
F04B 39/16
B01D 53/62
C02F 1/28
F16T 1/00
F15B 21/041
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気圧回路に配設され、少なくともアミン付油分吸着剤が充填されて成る分離槽から、充填物を取り出し処理するための方法であって、
設置施設にて機能が低下した分離槽を圧縮空気圧回路から取り外し流入孔及び排出孔を閉塞する閉塞工程と、
閉塞された分離槽を設置施設から交換施設に移送する第一移送工程と、
移送された分離槽に充填されている充填物を取り出す分解工程と、
該分解工程にて取り出した充填物を密閉容器に密閉する密閉工程と、
該密閉工程にて密閉した充填物を交換施設から焼却施設へ移送する第二移送工程と、
移送された充填物を焼却施設にて焼却処理する焼却工程と、から成る充填物処理方法。
【請求項2】
前記焼却工程において発生する排気からCO2を分離・回収するCO2回収工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の充填物処理方法。
【請求項3】
前記第二移送工程において、充填物の密閉時に使用される密閉容器がバイオマスプラスチックで成形されて成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分離槽充填物処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離槽に充填された充填物の処理方法に関し、詳しくは、ドレン浄化機能が低下した分離槽に充填された充填物を取り出し、該充填物の焼却処理を行う処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮空気圧回路において、圧縮空気中の異物を除去する際に生成されるドレンには油分等の異物が含有されるため、異物を除去する分離槽を介することでドレンの清浄化が行われ外部に排出される。そして、予め規定された運転時間や分離槽に充填されている充填剤の劣化状態等により交換時期となった使用済み分離槽は、製品メーカに該当分離槽の交換を依頼する、といった方法が採られている。
【0003】
使用済みとなった分離槽には、ドレンに含有されていた異物やCO2を吸着した充填物と、ヘンリーの法則に従って圧力に比例するようにCO2等の気体が多く溶け込んだドレンが充填されており、分離槽の充填物にかかる圧力が低下することでCO2が大気中に放出されてしまう、といった問題があった。また、充填物として備えられたアミンが、異物として充填物に吸着した硝化菌等の微生物によって分解される過程で窒素酸化物等の温室効果ガスが生成されてしまい、大気中に放出されてしまう、といった問題もあった。
そこで、分離槽の交換時において、充填物から発生されるCO2や窒素酸化物といった温室効果ガスを大気中へ放出させることなく、充填物を移送及び処分できる手段が求められていた。
【0004】
そこで本出願人は、上記問題を解決すべく、使用済み油水分離装置に収納されている収納品の交換方法を開発し、特許第4418872号公報(特許文献1)に記載の技術提案を行っている。かかる技術提案によれば、油水分離装置において、収納品が収められている槽本体にドレン水漏洩防止手段を配設し、該槽本体のみを所定箇所へ配送することで、一定の技術を持った人による充填物の交換が行われる、と言った優れた効果を奏するものであった。
しかしながら、特許文献1に記載の技術提案によれば、槽からドレン水の漏洩を防止する手段としては有用であるものの、槽本体に充填された充填物に対する密閉方法については特に指定しておらず、さらに、充填物の処理方法についても記載がないため、未だ上記問題の解決には至っていない。
【0005】
そこで、本出願人は、分離槽に充填された充填物の焼却施設への移送時に、該充填物からCO2や窒素酸化物といったガス体が分離・放出されてしまうといった問題に着目し、ガス体の外気放出を完全に防いだ状態で移送できないものかとの着想のもと、使用済み分離槽内から取り出した充填物を密閉した状態で焼却施設へ移送させると共に、充填物の焼却時に発生するCO2を焼却施設にて回収を行うことで、大気へのCO2及び窒素酸化物の放出を防ぐことが可能な分離槽の充填物処理方法を開発し、本発明にかかる「充填物処理方法」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6247788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、使用済み分離槽内から取り出した充填物を密閉した状態で焼却施設へ移送させると共に、充填物の焼却時に発生するCO2を焼却施設にて回収を行うことで、大気へのCO2及び窒素酸化物の放出を防ぐことが可能な分離槽の充填物処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、圧縮空気圧回路に配設され、少なくともアミン付油分吸着剤が充填されて成る分離槽から、充填物を取り出し処理するための方法であって、設置施設にて機能が低下した分離槽を圧縮空気圧回路から取り外し流入孔及び排出孔を閉塞する閉塞工程と、閉塞された分離槽を設置施設から交換施設に移送する第一移送工程と、移送された分離槽に充填されている充填物を取り出す分解工程と、該分解工程にて取り出した充填物を密閉容器に密閉する密閉工程と、該密閉工程にて密閉した充填物を交換施設から焼却施設へ移送する第二移送工程と、移送された充填物を焼却施設にて焼却処理する焼却工程と、から成る手段を採用する。
【0009】
また、本発明は、焼却工程において発生する排気からCO2を分離・回収するCO2回収工程を備える手段を採用する。
【0010】
さらに、本発明が、第二移送工程において、充填物の密閉時に使用される密閉容器がバイオマスプラスチックで成形されて成る手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる充填物処理方法によれば、少なくともアミン付油分吸着剤が充填されて成る分離槽の充填物について、分解工程で取り出された後から焼却工程が行われるまで密閉容器によって密閉状態のまま処理されることから、アミン付油分吸着剤に吸着した微生物によってアミンが分解され、窒素酸化物の一種であるN2O等の温室効果ガスが生成された場合でも、大気へ放出されずに焼却施設まで移送されることとなり、充填物の焼却に伴う高熱によって温室効果ガスを分解させることが可能である、といった優れた効果を奏する。
【0012】
また、本発明にかかる充填物処理方法によれば、CO2回収工程を備えることにより、充填物の焼却過程にて発生するCO2及び充填物に吸着していたCO2を焼却施設内で回収することで大気への放出を防ぐと共に、回収したCO2をタンク等に貯留し有効活用することも可能であって、枯渇油田に圧入して油田の残存原油を回収したり、産業用炭酸ガスとして使用したり、植物の育成等に使用することも可能である、といった優れた効果を奏するものである。
【0013】
そして、本発明にかかる充填物処理方法によれば、充填物の密閉時に使用される密閉容器がバイオマスプラスチックで成形されて成ることにより、焼却処理によってCO2を発生させたとしても、総体的にはCO2量を増加させることにはならないため、結果として温室効果ガスの削減に資する、といった優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる充填物処理方法を示すフロー図である。
図2】本発明にかかる充填物処理方法の実施形態を示す説明図である。
図3】本発明にかかる充填物処理方法の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる充填物処理方法1は、使用済み分離槽17に充填されていた充填物20が密閉状態のまま焼却施設32へ移送されることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる充填物処理方法1の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
尚、本発明にかかる充填物処理方法1は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0017】
図1は、本発明にかかる充填物処理方法1を示すフロー図である。図2は、本発明にかかる充填物処理方法1の実施形態を示す説明図である。図3は、本発明にかかる充填物処理方法1の実施形態を示す説明図であり、(a)は分解工程4及び密閉工程6の説明図、(b)は焼却工程8及びCO2回収工程9の説明図である。
本発明にかかる充填物処理方法1は、圧縮空気圧回路10から排出されるドレンを浄化する分離槽17及び充填物20の劣化に伴い行われる処理方法であり、主に閉塞工程2と、第一移送工程3と、分解工程4と、密閉工程6と、第二移送工程7と、焼却工程8にて構成される。
【0018】
圧縮空気圧回路10は、設置施設30に設置され、コンプレッサ11にて生成された圧縮空気を後段に接続された利用機器へ送気するものであり、利用機器の使用態様により、圧縮空気を一時的に貯留するエアタンク12や、圧縮空気を乾燥することで温度を低下させるエアドライヤ13、圧縮空気に含有されるオイルミストや塵埃等の異物(以降、単に「異物」という場合がある。)を分離・除去するサイクロンセパレータ14等の各装置が配設される。
圧縮空気圧回路10に配設される各装置の種類、台数について特に限定はなく、圧縮空気を利用する目的や利用機器によって適宜決定されることになる。また、コンプレッサ11と各装置、及び利用機器間には、当然に圧縮空気の送気が可能な配管が備えられる。
その際、圧縮空気に含有される水蒸気が各装置の内壁や配管等に付着・結合することにより水分であるドレンが発生することとなり、ヘンリーの法則に従って高圧環境下にあるドレンには圧縮空気内のCO2が多く溶け込むことになる。その後、圧縮空気圧回路10の各所にて発生したドレンは、各装置に配設されたドレントラップ15にて排出管を介して適宜排出されることとなるが、各装置から除去された異物もドレン内に含有された状態で排出されるため、ドレンから異物及びCO2を分離・除去可能な分離槽17が配設されることとなる。
【0019】
分離槽17は、圧縮空気圧回路10から排出され排出管を介して流入したドレンから、異物及びCO2を分離・吸着した後、清浄なドレンとして外部へ排出させる槽である。
分離槽17は、中空部を有すると共に、天面部及び底面部が閉塞されている筒状体であり、中空部にはドレンに含有された異物及びCO2を分離・吸着可能な充填物20が充填されると共に、底面部(下部)から中空部へドレンを流入させる流入孔18と、中空部から天面部(上部)へドレンを排出させる排出孔19が夫々形成される。
分離槽17の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。また、分離槽17の構成素材等についても特に限定はしないが、一部又は全部を強化プラスチックやガラス等の透明もしくは半透明な素材を使用して、中空部に充填された吸着材の劣化状態を確認視認可能な態様が好適である。
【0020】
充填物20は、分離槽17に流入したドレンに含有された異物及びCO2を分離・吸着を行うものであり、分離槽17の中空部に充填されるものである。
充填物20の素材については、ドレンに含有される異物及びCO2を分離・吸着可能な従来公知の素材を種々適用すればよく、例えば、活性炭27やゼオライト28、アミン付油分吸着剤29等の素材が考え得る。また、これらの素材を交互に積層して充填し、吸着効率を高めた態様も好適である。
吸着剤としてアミン付油分吸着剤29を使用する態様を採る場合、CO2吸着による化学反応にてアミンがカルバミン酸に変化し、且つ、すぐさまCO2や油分といった酸性環境下でカルバミン酸アンモニウム塩へ更に変化する。このカルバミン酸アンモニウム塩は、圧力の変化等によりアミン付油分吸着剤29から脱離してしまう可能性がある。そのため、CO2並びにカルバミン酸及びカルバミン酸アンモニウム塩を吸着可能な活性炭27を、アミン付油分吸着剤29と共に中空部に積層させて充填させる態様が望ましい。
さらに、アミン付油分吸着剤29における作用として、好気環境下において、アミン類やカルバミン酸塩は、ドレン中に存する硝化菌により、CO2を利用して亜硝酸へ、さらに亜硝酸を硝酸塩に分解することとなる。また、嫌気環境下においては、亜硝酸及び硝酸塩ガスは、脱窒菌態により一酸化窒素(NO)や一酸化二窒素(N2O)といった窒素化合物に還元されることとなる。どちらの反応であっても、一酸化二窒素を発生させることとなる。一酸化二窒素(別名;亜酸化窒素)は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの主要なものの一つであり、CO2やメタンといった他の温室効果ガスと比べて大気中の濃度は低いが、単位濃度あたりで温暖化をもたらす能力は298~310倍高い。そこで、アミン付油分吸着剤29にて発生した窒素化合物を効果的に吸着するゼオライト28を、アミン付油分吸着剤29と共に中空部に積層させて充填させる態様が好適である。
【0021】
活性炭27は、ドレンに含有された油分や臭気等を分離・除去すると共に、高圧環境下においてCO2並びにカルバミン酸塩を吸着させるものである。活性炭27の原材料等についても植物質や石炭質、石油質など特に限定するものではない。また、活性炭27の形状については、分離・除去作用を発生させる表面積を大きくするため、微細な粒状にする態様が好ましい。
ゼオライト28は、ドレンに含有された金属イオン等の吸着を行うと共に、活性炭27と同様、高圧環境下においてCO2を選択的に吸着させる多孔体を有する鉱物である。ゼオライト28の形状は特に限定はなく、例えば、丸粒状やペレット状、破砕状といった形状にすることで、外気に接触可能な表面積を広くし、CO2の吸着を効果的に行うといった態様が考え得る。
アミン付油分吸着剤29は、エマルジョン化したドレンと油分を分解させると共に、CO2を化学的吸着させるものである。アミン付油分吸着剤29は、脂肪族第一、第二及び第三アミン、並びにポリアミン、ポリイミン、環式アミン、アミジン化合物、ヒンダードアミン、アミノーシロキサン化合物、アミノ酸等を使用し、不織布に塗布または浸透させる態様が好適である。
【0022】
なお、本発明にかかる分離槽17は、設置期間や吸着度合い等による基準に則り、分離槽17本体の交換が必要と判断されたものであり、さらに、中空部へ充填されている充填物20は、既にドレンに含有されていた異物及びCO2が吸着されている状態となっている。
【0023】
閉塞工程2は、設置施設30において、圧縮空気圧回路10に配設された分離槽17を取り外し、流入孔18及び排出孔19を閉塞する工程である。
閉塞工程2は、交換が必要な分離槽17を、圧縮空気圧回路10として該分離槽17に接続されている配管等を取り外した後に、開口状態である流入孔18及び排出孔19を閉塞手段によって閉塞させる工程であり、分離槽17の中空部に滞留したドレンが、流入孔18及び排出孔19を介し外部へ漏出することを防ぐものである。分離槽17の取り外し手順は特に限定はないが、該分離槽17の取り外し前に、流入孔18の前段及び排出孔19の後段に設けられたバルブ16等により流路を遮断しておくことで、ドレンの流入及び逆流を未然に防ぐことが可能となる。また、流入孔18及び排出孔19の閉塞手段についても特に限定はないが、例えば、嵌め込み式のキャップや螺子等の閉塞部品24を使用し流入孔18及び排出孔19の開口部を確実に閉塞させる、といった態様が好適である。
【0024】
第一移送工程3は、設置施設30において、閉塞工程2によって圧縮空気圧回路10から取り外された分離槽17を梱包し、交換施設31への移送を行う工程である。
第一移送工程3は、圧縮空気圧回路10から取り外し流入孔18及び排出孔19の開口部が閉塞された分離槽17を、交換施設31へ移送するための梱包を行った後、移送手段によって設置施設30から交換施設31へ移送させる工程であり、該分離槽17への梱包方法については、移送に伴う分離槽17への振動や衝撃を緩和可能な方法であればよく、例えば、移送する分離槽17本体に衝撃緩衝材等を巻き付けた状態で段ボールにて形成された収納ケース等に収納する、といった態様が考え得る。また、設置施設30から交換施設31への移送手段についても特に限定はないが、主に設置施設30から交換施設31までの距離によって適宜必要な方法が採られることとなる。
【0025】
分解工程4は、交換施設31において、設置施設30から移送された分離槽17を分解し、該分離槽17の中空部に充填されている充填物20を取り出す工程である。
分解工程4は、設置施設30から移送された分離槽17を交換施設31にて受け取り、梱包を取り外した後、閉塞工程2にて取り付けられた閉塞部品24と、分離槽17本体を構成している構成部品23を夫々に分解しつつ、分離槽17の中空部に充填されている充填物20を取り出す工程である。
分解工程4において、分離槽17から充填物20を取り出す際の圧力変動により、充填物20にて吸着されていたCO2が大気中に放出・拡散してしまう可能性があるため、加圧環境下で分解作業を行う態様等、充填物20によるCO2吸着が維持可能な態様を採ることが望ましい。
分解工程4にて分解される分離槽17は、設置施設30の設置環境や圧縮空気圧回路10から排出されたドレンとの接触により汚れや摩耗が発生している可能性があるため、分離槽17の分解後に構成部品23及び閉塞部品24の洗浄や摩耗のひどい部品の交換等を行う態様が好適である。また、分離槽17から取り出された充填物20は、水分であるドレンを含んだ状態であるため、ビニール製の袋体や撥水・耐水性を有した収納容器等へ一時的に収納した後に密閉工程6を行う態様が好適である。
【0026】
分解工程4にて構成部品23及び閉塞部品24に分解された分離槽17は、洗浄や部品交換が行われた後に再度組み立てを行い、分離槽17の中空部に未使用の充填物20を充填する再生工程5が行われる態様が好ましい。この態様を採ることにより、分離槽17本体及び充填物20の劣化に伴う交換が行われる際に、摩耗した部品や充填物20の交換と洗浄のみで再び分離槽17として再利用可能になる、といった優れた効果を奏する。
【0027】
密閉工程6は、交換施設31において、分解工程4によって分離槽17から取り出された充填物20を、密閉容器25によって密閉状態にする工程である。
密閉工程6は、分解工程4により分離槽17から取り出された充填物20、もしくは、取り出した充填物20をビニール製の袋体や撥水・耐水性を有した収納容器等に収納させたものを、事前に用意した密閉容器25に収納することで該充填物20の周囲環境を密閉状態にする工程である。
密閉工程6によって充填物20を密閉状態にすることにより、充填物20から放出される窒素酸化物やCO2等の気体、ドレン及び異物の漏出を防ぐこととなる。かかる充填物20として活性炭27が選択されていた場合、減圧環境下において、該活性炭27に予め吸着されていたCO2が外気に放出されてしまう可能性があり、また、アミン付油分吸着剤29が選択されていた場合においても、ドレン中の異物や大気との接触時に硝化菌が該アミン付油分吸着剤29に付着し、アミンの分解作用が発生しN2Oが発生してしまう可能性もあるため、分解工程4及び密閉工程6において充填物20が外気に触れる時間を短くする態様が好適である。
密閉工程6にて使用される密閉容器25は、充填物20に吸着しているCO2や、充填物20として使用されているアミン付油分吸着剤29が分解されることで発生するN2O等の温室効果ガスが外気へ漏出しないよう、密閉状態を維持させることが可能であれば形状や構造、素材等に特に指定はなく、例えば、図3に図示したようなビニール製の袋体を二重に使用し夫々の袋体を密閉状態にする態様や、プラスチック製の箱体に充填物20を収容し開口部を閉塞することで密閉状態にする態様等が考え得る。また、図3に図示したように、密閉対象である充填物20として複数の吸着素材が使用されている場合であっても、一の密閉容器25に纏めて収納し密閉させる態様が好ましい。かかる態様を採ることにより、密閉工程6の効率化に資すると共に、焼却施設32へ移送する密閉容器25の削減が可能となる、といった優れた効果を奏する。
【0028】
密閉容器25の素材について、後述する焼却工程8における焼却処理に際しダイオキシンを発生させることのない素材が望ましく、例えば、ポリエチレンやバイオマスプラスチックなどが考え得るが、なかでもバイオマスプラスチックにより成形された容器を使用する態様が好適である。バイオマスプラスチックとは、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的もしくは生物学的に合成した高分子材料であって、焼却処分してCO2を排出しても、生育時の二酸化炭素の吸収量と焼却時の二酸化炭素の排出量の総量がプラスマイナスゼロとなるため、高いカーボンニュートラル性を発揮し得る環境にやさしいプラスチックである。密閉容器25をバイオマスプラスチックで成形することで、後述する焼却工程8における焼却処理によってCO2が生成されたとしても、総体的にはCO2量を増加させることにはならず、結果として温室効果ガスの排出削減に資することとなる。
【0029】
第二移送工程7は、交換施設31において、密閉工程6により密閉された充填物20を、焼却施設32へ移送する工程である。具体的には、密閉容器25に収納され密閉状態にある充填物20を、密閉状態のまま、所定の移送手段によって交換施設31から焼却施設32へ移送させる工程である。
かかる第二移送工程7において、密閉容器25の移送に際し、必要に応じて密閉容器25を梱包する態様も採用し得る。その場合の梱包方法については、第一移送工程3と同様、移送に伴う密閉容器25への振動や衝撃を緩和可能な方法であればよい。また、交換施設31から焼却施設32への移送手段について、特に限定するものではなく、主に交換施設31から焼却施設32までの距離によって適宜必要な方法が採られることとなる。
【0030】
焼却工程8は、焼却施設32において、交換施設31から移送された充填物20を焼却することで、充填物20及び充填物20に吸着していた異物を焼却処理する工程である。
焼却工程8は、交換施設31から移送された密閉容器25を焼却施設32にて受け取り、梱包されている場合は梱包を解き、焼却施設32内の焼却炉へ密閉容器25ごと投入することで、密閉容器25に収納されていた充填物20である活性炭27やゼオライト28、アミン付油分吸着剤29といった吸着剤と、夫々の吸着剤に吸着している異物を焼却処理する工程である。
焼却施設32におけるの焼却方法については、特に限定するものではなく、従来公知の技術を使用すれば良いが、該充填物20としてアミン付油分吸着剤29が使用されている場合は、硝化菌によるアミンの分解作用によりN2Oが発生している可能性があるため、N2Oを熱分解可能な温度(約600度)まで加熱・燃焼させる態様が望ましい。
【0031】
焼却工程8によって焼却処理される際、充填物20によって吸着されていたCO2の放出が行われ、焼却炉から排出されるガス体には通常の燃焼処理よりも多くのCO2が含有されることとなる。そのため、焼却施設32の後段にCO2回収施設33を設け、焼却施設32から排出される排ガスからCO2を選択的に回収し、貯留するCO2回収工程9を備える態様が好適である。
CO2回収工程9による、排ガスからのCO2回収・貯留方法については特に限定はなく、アミン水溶液を使用した化学吸収法等を利用するなど、従来公知の技術を採用すれば良い。また、貯留されたCO2の利用方法にも特に限定はなく、食品・産業用ガスとしての利用や、枯油層に注入し原油の汲み上げを行うといった利用方法等も考え得る。
CO2回収工程9によってCO2が回収された排ガスは、清浄な排ガスとして外部へ排出されることとなる。
【0032】
以上の構成から成る充填物処理方法1について、その主な処理フローを図1に基づき説明する。
まず、閉塞工程2として、設置施設30に配設された圧縮空気圧回路10にから排出されるドレンによって交換時期を迎えた分離槽17を該圧縮空気圧回路10から取り外し、開口部分である流入孔18及び排出孔19に、夫々閉塞部品24を取り付ける。そして、第一移送工程3により分離槽17は梱包され、交換施設31へ移送されることとなる。
【0033】
次に、分解工程4として、交換施設31へ移送された分離槽17の梱包が外され、構成部品23と閉塞部品24、そして分離槽17の中空部に充填されていた充填物20へと分解される。そして、取り出された充填物20は、密閉工程6により密閉容器25へ収納され、充填物20に吸着していたCO2の外部放出を防ぐこととなる。その後、密閉工程6により密閉された充填物20は、第二移送工程7により焼却施設32へ移送されることとなる。また、分解された構成部品23及び閉塞部品24は、再生工程5により洗浄及び部品交換並びに充填物20の充填が行われ、再利用品として設置施設30へ移送される。
【0034】
第二移送工程7による充填物20の移送に際し、該充填物20にはドレンである水分を含有していることから、その水分が密閉容器25の内部で蒸発し、密閉容器25の内部圧力が少なからず高くなる。したがって、移送時に活性炭27に吸着されているカルバミン酸塩からCO2が放出されたとしても、そのCO2は加圧環境下で水やゼオライト28に吸着されることとなる。換言すれば、密閉容器25内に存する水とゼオライト28が、CO2のバッファとなり得る。
【0035】
第二移送工程7により焼却施設32へ移送された密閉容器25は、必要に応じて梱包が解かれ、焼却工程8として焼却施設32内に設置された焼却炉にて焼却処理が行われる。その際、充填物20が収納された状態のまま、密閉容器25ごと焼却処理に付される。これにより、充填物20を外気に晒すことなく焼却することができる。焼却処理にて発生した排ガスは、焼却施設32の後段に配設されたCO2回収施設33によってCO2が取り除かれ、清浄な排ガスとして外部へ排出されることとなる。
【0036】
以上、本発明にかかる充填物処理方法1について説明したが、本発明は、上記実施形態で示した構造・態様に限定されるものではない。
例えば、焼却工程8において、充填物20が収納された密閉容器25ごと焼却処理に付する態様ではなく、密閉容器25から充填物20を取り出して充填物20だけを焼却する態様を採ることも可能であって、密閉容器25の再利用並びにCO2排出削減に貢献し得る。
【0037】
以上のように、本発明にかかる充填物処理方法1によれば、分離槽17に充填された充填物20を密閉した状態で焼却施設32へ移送させることにより、活性炭27から脱着されたCO2及びアミン付油分吸着剤29にて発生したN2Oをはじめとする窒素酸化物の外気放出を防ぐと共に、焼却工程8によって窒素酸化物が熱分解された後、CO2回収工程9によってCO2が回収されることで、焼却施設32から排出される排ガスの清浄化に資し、さらには、回収したCO2の有効利用にも資する、といった優れた効果を奏する。
【0038】
また、本発明にかかる充填物処理方法1によれば、移送中に生じるCO2の分離は、ゼオライト28と硝化菌分解によって所定程度担保されると共に、移送中の硝化菌による分解の際に発生するN2Oは、ゼオライト28に吸着され、最終的には高温焼却炉によって効率的に分解され、さらに、焼却処理される油吸着材並びに吸着油は、焼却炉の高温燃焼に資すると共に、高温で焼却することによってダイオキシン類の発生も抑制される、といった優れた効果を発揮する。。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、流体の清浄化に伴って劣化する処理槽内の充填物を処理するための方法であって、汚染物質の拡散防止に資する充填物の処理方法として、あらゆる流体流路に備えられた処理槽に対し採用することが可能であり、しかも、地球温暖化の原因ともいわれる大気中の温室効果ガス削減の施策として、その一翼を担うものである。したがって、本発明にかかる「充填物処理方法」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0040】
1 充填物処理方法
2 閉塞工程
3 第一移送工程
4 分解工程
5 再生工程
6 密閉工程
7 第二移送工程
8 焼却工程
9 CO2回収工程
10 圧縮空気圧回路
11 コンプレッサ
12 エアタンク
13 エアドライヤ
14 サイクロンセパレータ
15 ドレントラップ
16 バルブ
17 分離槽
18 流入孔
19 排出孔
20 充填物
23 構成部品
24 閉塞部品
25 密閉容器
27 活性炭
28 ゼオライト
29 アミン付油分吸着剤
30 設置施設
31 交換施設
32 焼却施設
33 CO2回収施設

【要約】      (修正有)
【課題】大気へのCO2及び窒素酸化物の放出を防ぐことが可能な分離槽の充填物処理方法を提供する。
【解決手段】圧縮空気圧回路に配設され、少なくともアミン付油分吸着剤が充填されて成る分離槽から、充填物を取り出し処理するための方法であって、設置施設にて機能が低下した分離槽を圧縮空気圧回路から取り外し流入孔及び排出孔を閉塞する閉塞工程と、閉塞された分離槽を設置施設から交換施設に移送する第一移送工程と、移送された分離槽に充填されている充填物を取り出す分解工程と、該分解工程にて取り出した充填物を密閉容器に密閉する密閉工程と、該密閉工程にて密閉した充填物を交換施設から焼却施設へ移送する第二移送工程と、移送された充填物を焼却施設にて焼却処理する焼却工程と、から成る手段を採用する。
【選択図】図1
図1
図2
図3