(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】ハッチカバーの開閉装置
(51)【国際特許分類】
B63B 19/18 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
B63B19/18 101
(21)【出願番号】P 2024086089
(22)【出願日】2024-05-28
【審査請求日】2024-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521474753
【氏名又は名称】株式会社 ASC
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満晴
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-132878(JP,A)
【文献】実開昭56-029013(JP,U)
【文献】特開平11-152078(JP,A)
【文献】実公昭36-008129(JP,Y1)
【文献】実開昭53-029093(JP,U)
【文献】特開昭54-093585(JP,A)
【文献】特公昭49-016599(JP,B1)
【文献】特開昭58-177793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハッチパネルをスライドさせて順次収納して船倉を開放し、前記複数のハッチパネルをスライドさせて順次展開して前記船倉を閉鎖するハッチカバーの開閉装置であって、
前記複数のハッチパネルをスライドさせるために前記複数のハッチパネルに連結される無端状のチェーン部と、
前記無端状のチェーン部を移動させるための駆動力を出力する駆動チェーンホイール部と、
前記駆動チェーンホイール部の駆動力による前記無端状のチェーン部の移動を案内するための従動チェーンホイール部と、
を備え、
前記駆動チェーンホイール部は、
前記無端状のチェーン部に噛合
し、凹部を含む外周を有する歯車部と、
前記歯車部の手前に所定の間隔をあけて配置され、前記無端状のチェーン部を前記歯車部に案内するために前記無端状のチェーン部を載置する載置部と、
前記載置部から前記歯車部の外周まで延伸して前記無端状のチェーン部に移動を案内する案内部と、
を有
し、
前記案内部は、前記歯車部の最上部に隙間が無い状態で前記無端状のチェーン部を案内するように前記載置部から若干上向きに延伸し、前記歯車部の凹部よりも狭い幅を有することで凹部内に進入して前記歯車部の外周に沿うように先細り形状に形成された先端部を有することを特徴とするハッチカバーの開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハッチカバーの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船の船倉へ貨物を搬入または搬出するために設ける開口の総称をハッチと言い、このハッチを開閉するためのハッチカバーがある。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、バルクキャリア等貨物船のハッチカバーのうち、船体中心線を境に両舷方向に移動開閉する2パネルサイドローリングタイプ、船体中心を跨いだ1パネルサイドローリングタイプ及び船の船首船尾方向に1パネル又は2パネルで開閉するエンドローリングタイプハッチカバーで、開閉にリンク機構を設けたことを特徴とするハッチカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハッチカバーの開閉機構は、ハッチカバーに接続されるチェーンを駆動する歯車にチェーンがうまく誘導されずに歯車の近傍で絡まってしまうといった課題がある。
【0005】
本発明の目的は、ハッチカバーを構成するハッチパネルに接続される無端状のチェーン部をうまく歯車部に誘導するハッチカバーの開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハッチカバーの開閉装置は、複数のハッチパネルをスライドさせて順次収納して船倉を開放し、前記複数のハッチパネルをスライドさせて順次展開して前記船倉を閉鎖するハッチカバーの開閉装置であって、前記複数のハッチパネルをスライドさせるために前記複数のハッチパネルに連結される無端状のチェーン部と、前記無端状のチェーン部を移動させるための駆動力を出力する駆動チェーンホイール部と、前記駆動チェーンホイール部の駆動力による前記無端状のチェーン部の移動を案内するための従動チェーンホイール部と、を備え、前記駆動チェーンホイール部は、前記無端状のチェーン部に噛合し、凹部を含む外周を有する歯車部と、前記歯車部の手前に所定の間隔をあけて配置され、前記無端状のチェーン部を前記歯車部に案内するために前記無端状のチェーン部を載置する載置部と、前記載置部から前記歯車部の外周まで延伸して前記無端状のチェーン部に移動を案内する案内部と、を有し、前記案内部は、前記歯車部の最上部に隙間が無い状態で前記無端状のチェーン部を案内するように前記載置部から若干上向きに延伸し、前記歯車部の凹部よりも狭い幅を有することで凹部内に進入して前記歯車部の外周に沿うように先細り形状に形成された先端部を有することを特徴とします。
【0007】
また、本発明に係るハッチカバーの開閉装置において、前記案内部は、前記歯車部の最上部に前記無端状のチェーン部を案内するように前記歯車部の外周に沿った形状を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハッチカバーを構成するハッチパネルに接続される無端状のチェーン部をうまく歯車部に誘導することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態のハッチカバーの開閉装置を示す図である。
【
図2】従来技術のハッチカバーの開閉装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態のハッチカバーの開閉装置10を示す図である。
図1(a)は、ハッチカバーの開閉装置10の全体構成を示す図であり、
図1(b)は、駆動チェーンホイール部12の側面図である。
【0012】
図1(c)は、駆動チェーンホイール部12を歯車部12a側から見た様子を示す図であり、
図1(d)は、駆動チェーンホイール部12の上面図である。
【0013】
貨物船は、主に貨物輸送を行う船舶であるが、船倉への貨物を搬入または搬出するために設けられた開口であるハッチを開閉するためのハッチカバーを備えている。
図1の例では、いわゆるポンツー型ハッチカバー(FV型ハッチカバー)であるものとして説明する。
【0014】
ハッチカバーは、複数のハッチパネル2を含んで構成されており、これら複数のハッチパネル2が開方向にスライドすることでハッチが開放れたり、また開方向の逆方向である閉方向にスライドすることでハッチが閉鎖されたりする。
【0015】
ハッチカバーの開閉装置10は、複数のハッチパネル2をスライドさせて順次収納して船倉を開放し、複数のハッチパネル2をスライドさせて順次展開して船倉を閉鎖するハッチカバーを開閉するための装置である。
【0016】
複数のハッチパネル2には、複数のハッチパネル2をスライドさせるために無端状のチェーン部11が連結されている。そして、無端状のチェーン部11は、駆動チェーンホイール部12と、従動チェーンホイール部14,16,18に掛渡されている。
【0017】
無端状のチェーン部11は、伝達要素の巻き掛け伝動装置の中でも「確実伝動」に属する。無端状のチェーン部11は、後述する駆動チェーンホイール部12の歯車部12a及び従動チェーンホイール部14,16,18の歯車部に掛けられ、動力や回転運動を伝える。
【0018】
駆動チェーンホイール部12は、歯車部12aと、歯車カバー部12bと、載置部12cと、案内部12dと、油圧モータとを備えている。駆動チェーンホイール部12は、無端状のチェーン部11を移動させるための駆動力を出力するスプロケットを有している。
【0019】
歯車部12aは、無端状のチェーン部11に噛合する機能を有する。歯車部12aは、回転体の外周表面に等間隔の歯型を作り、次々に噛み合うことで動力を効率良く伝達する機械要素である。
【0020】
駆動チェーンホイール部12の歯車部12aと従動チェーンホイール部14,16,18の歯車部の速度比(速度伝達比)を変えたり、回転方向や軸方向を変えたりすることができる。
【0021】
油圧モータは、歯車部12aの回転軸を回転させるように駆動力を出力する三相交流回転電機であるが、その他の回転電機であってもよい。
【0022】
歯車カバー部12bは、回転する歯車部12aに作業者が当たらないように歯車部12aの側面を覆うカバーである。歯車カバー部12bは、適度な強度を有する材質、例えば、金属により形成される。
【0023】
載置部12cは、歯車部の手前に所定の間隔をあけて配置され、無端状のチェーン部11を歯車部12aに案内するために無端状のチェーン部11を載置する。載置部12cは、適度な強度を有する材質、例えば、金属により形成される。
【0024】
載置部12cは、略U字形状(実際には天地が逆)を有する部材である。載置部12cの天井部を架設する棒部の上に無端状のチェーン部11が載置されて無端状のチェーン部11を所定の高さを保った状態で歯車部12aに向けて移動させる役割を担っている。
【0025】
案内部12dは、載置部12cから歯車部12aの外周まで延伸して無端状のチェーン部11に移動を案内する。
【0026】
案内部12dは、
図2(d)に示されるように略U字形状の載置部12cの天井部において、中央部から歯車部12aに向かって延伸する。これにより、
図2(d)に示されるように、載置部12cの天井部と案内部12dとで平面視で略T字を構成している。
【0027】
案内部12dは、歯車部12aの最上部に無端状のチェーン部11を案内するように歯車部12aの外周に沿った形状を有する。具体的には、案内部12dは、載置部12cから若干上向きに延伸して歯車部12aの外周に沿って伸び、
図2(b)に示されるように、先端部で先細りになるように形成されている。
【0028】
なお、案内部12dの天井部は、無端状のチェーン部11が移動しやすいように平坦な面であるが、無端状のチェーン部11を案内するように平坦な面の両側には案内壁が形成されていてもよい。案内部12dは、適度な強度を有する材質、例えば、金属により形成される。
【0029】
従動チェーンホイール部14,16,18は、駆動チェーンホイール部12の駆動力による無端状のチェーン部11の移動を案内するためのスプロケットを有している。
【0030】
従動チェーンホイール部14,16,18は、それぞれ歯車部12aと、歯車カバー部12bとを備えている。従動チェーンホイール部14,16,18の歯車部は、無端状のチェーン部11に噛合する機能を有する。歯車部12aは、回転体の外周表面に等間隔の歯型を作り、次々に噛み合うことで動力を効率良く伝達する機械要素である。
【0031】
従動チェーンホイール部14,16,18の歯車カバー部12bは、回転する従動チェーンホイール部14,16,18の歯車部に作業者が当たらないように歯車部の側面を覆うカバーである。
【0032】
ハッチカバーの開閉装置10は、貨物船内において船倉に荷物を出し入れするためのハッチを開閉する。このため、複数のハッチパネル2をスライドさせることが可能なよう、
図1(a)に示されるように駆動チェーンホイール部12及び従動チェーンホイール部14,16,18が配置される。
【0033】
そして、無端状のチェーン部11は、駆動チェーンホイール部12と、従動チェーンホイール部14,16,18に掛渡されている。これにより、駆動チェーンホイール部12の油圧モータが作動することにより無端状のチェーン部11が移動し、これにより、無端状のチェーン部11に連結されるハッチパネル2がスライドする。
【0034】
続いて、上記構成のハッチカバーの開閉装置10の作用について説明する。
図2、従来技術のハッチカバーの開閉装置を示す図である。従来、貨物船のハッチを開閉するハッチカバーは開閉装置によって開閉されている。これらのハッチカバーはチェーンに連結されており、このチェーンを駆動する駆動チェーンホイールが存在する。
図2に示されるように、幅が狭い状態でチェーンが下がってしまうため、駆動チェーンホイールにチェーンが挟まってチェーンの動きが止まってしまうといった課題がある。このような課題に対して本発明は顕著な効果を発揮する。
【0035】
例えば、499トン型のコンテナのハッチ1枚の重さは6.5トンから8トンある。ハッチが7枚となると50トン近くの重さになるため、ハッチを開閉させる初動の動きに最大の力がかかることになる。なお、ハッチを2枚ほど巻き上げると軽くなるため、その後は比較的スムーズに動く。
【0036】
ハッチカバーの開閉装置10によれば、無端状のチェーン部11を駆動する駆動力を出力する駆動チェーンホイール部12の近傍には略U字状(実際には、天地逆)の載置部12cが設置されており、この載置部12cの天井部に無端状のチェーン部11が設置されて所定の高さに位置したまま駆動チェーンホイール部12の歯車部12aに誘導される。
【0037】
そして、載置部12cと歯車部12aとの間には隙間が形成されているが、この隙間を埋めるように載置部12cの天井部の中央部から歯車部12aの最上部に延伸する案内部12dが設置されている。
【0038】
そして、この案内部12では、
図1に示されるようにチェーンが落ちるまでに
図2に比べて余裕を持たせることができ、載置部12cに載置される無端状のチェーン部11を歯車部12aの最上部に案内することができるため、チェーンが隙間に挟まることなく、滑らかに無端状のチェーン部11を歯車部12aに噛合させてハッチカバーをスムーズに開閉することが出来るという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0039】
2 ハッチパネル、10 ハッチカバーの開閉装置、11 チェーン部、12 駆動チェーンホイール部、12a 歯車部、12b 歯車カバー部、12c 載置部、12d 案内部、14,16,18 従動チェーンホイール部。
【要約】 (修正有)
【課題】ハッチカバーを構成するハッチパネルに接続される無端状のチェーン部をうまく歯車部に誘導するハッチカバーの開閉装置を提供する。
【解決手段】ハッチカバーの開閉装置10は、複数のハッチパネルがスライドして船倉が開放閉鎖される装置であって、複数のハッチパネルをスライドさせるために複数のハッチパネルに連結される無端状のチェーン部11と、無端状のチェーン部11を移動させるための駆動力を出力する駆動チェーンホイール部12と、駆動チェーンホイール部12の駆動力による無端状のチェーン部11の移動を案内するための従動チェーンホイール部14と、無端状のチェーン部11を載置する載置部12cと、無端状のチェーン部11に移動を案内する案内部12dと、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1