(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20250307BHJP
B63B 15/00 20060101ALI20250307BHJP
B63B 21/04 20060101ALI20250307BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20250307BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20250307BHJP
B63B 11/04 20060101ALN20250307BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B15/00 Z
B63B21/04 Z
B63B25/00 102Z
F02M21/02 X
B63B11/04 B
(21)【出願番号】P 2020015244
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-08-25
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】戸田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩宗
(72)【発明者】
【氏名】竹村 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】栗林 周平
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】横溝 顕範
【審判官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508916(JP,A)
【文献】特開2018-134923(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146087(WO,A1)
【文献】特開2019-18638(JP,A)
【文献】特開2017-226335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B21/00
B63B15/00
B63B25/00
B63B11/04
F02M21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の舷側及び船底を有する船体と、
前記船体内の機関室に設けられた熱機関と、
前記一対の舷側の間に設けられた
上甲板としての曝露甲板と、
前記上甲板としての前記曝露甲板上に設けられた上部構造と、
前記曝露甲板上に船幅方向に間隔をあけて設けられた複数の液化ガスタンクと、
前記曝露甲板上における複数の前記液化ガスタンクの間に挟まれるように設けられ、前記液化ガスタンクに収容された液化ガスを気化させて前記熱機関に供給する燃料供給装置と、を備え、
前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置は、前記曝露甲板における船首尾方向船尾側に設けられ、
前記上部構造は、前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置に対して船首尾方向船首側に、前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置との間に隙間をあけて設けられ、
前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置が設けられた部分の前記曝露甲板の下方に、車両が搭載される車両甲板を備える船舶。
【請求項2】
前記曝露甲板上における前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置に対して船首尾方向船尾側に設けられ、前記船体を係留するための係船装置を備える係船部をさらに備える請求項1に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液化ガス(液化ガス燃料)を貯留する液化ガスタンク(液化ガス燃料タンク)と、液化ガスタンクに貯蔵された液化ガスをエンジンに供給する燃料供給装置(燃料供給手段)と、を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように船舶に液化ガスタンクや燃料供給装置を設ける場合、例えば上部構造等との干渉を避けつつ、船舶の限られたスペースに効率良く配置することが望まれる。
【0005】
本開示は、液化ガスタンクや燃料供給装置を船舶の限られたスペースに効率良く配置することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る船舶は、船体と、熱機関と、曝露甲板と、複数の液化ガスタンクと、燃料供給装置と、を備える。船体は、一対の舷側及び船底を有する。熱機関は、前記船体内の機関室に設けられている。曝露甲板は、上甲板として前記一対の舷側の間に設けられている。複数の液化ガスタンクは、前記曝露甲板上に船幅方向に間隔をあけて設けられている。燃料供給装置は、前記曝露甲板上における複数の前記液化ガスタンクの間に挟まれるように設けられている。燃料供給装置は、前記液化ガスタンクに収容された液化ガスを気化させて前記熱機関に供給する。前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置は、前記曝露甲板における前記機関室の鉛直上方となる船首尾方向船尾側に設けられている。前記上部構造は、前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置に対して船首尾方向船首側に、前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置との間に隙間をあけて設けられている。前記液化ガスタンク及び前記燃料供給装置が設けられた部分の前記曝露甲板の鉛直下方に、車両が搭載される車両甲板を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶によれば、液化ガスタンクや燃料供給装置を船舶の限られたスペースに効率良く配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る船舶の全体の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶の船尾側の構成を示す拡大側面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る船舶の船尾側の構成を示す平面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る船舶に設けられた液体ガスタンク、及び燃料供給装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本開示の実施形態の変形例に係る船舶の船尾側の構成を示す平面図である。
【
図6】本開示の実施形態の他の変形例に係る船舶の船尾側の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(船舶の全体構成)
以下、本開示の実施形態に係る船舶について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造7と、熱機関20と、複数の液化ガスタンク30と、燃料供給装置40と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えばフェリー、RORO船(Roll-on/Roll-off船)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等を例示できる。
【0010】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板からなる。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板からなる。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0011】
船体2は、その内部に、複数層の甲板5を備えている。複数層の甲板5は、船体2内において船体2の上下方向Dvに間隔をあけて設けられている。複数層の甲板5のうちの一部は、全通甲板5Sとされている。全通甲板5Sは、船体2の船首尾方向FA船首側の船首部2aから、船首尾方向FA船尾側の船尾部2bまで連続して設けられている。満載喫水線よりも上方に配置される全通甲板5Sのうち、最下層に配置される全通甲板5Sは、乾舷甲板53である。全通甲板5Sのうち、最上層に配置される全通甲板5Sは、上甲板55である。この実施形態の上甲板55は、外部に露出する曝露甲板8Aである。この実施形態で例示する船体2は、更に、乾舷甲板53の下方に、底部甲板6を備えている。
【0012】
(機関室の構成)
図2に示すように、船体2は、乾舷甲板53と底部甲板6との間に、後部隔壁11と、前部隔壁12と、を備えている。後部隔壁11と、前部隔壁12とは、船首尾方向FAに間隔を空けて配置されている。後部隔壁11、前部隔壁12は、それぞれ舷側3Aから舷側3Bに至るとともに、それぞれ乾舷甲板53から底部甲板6に至っている。つまり、乾舷甲板53と底部甲板6との間の空間は、これら後部隔壁11、前部隔壁12により、船首尾方向に区切られている。この実施形態において、乾舷甲板53と底部甲板6との間で且つ、後部隔壁11と前部隔壁12との間の区画は、機関室10(言い換えれば、主機室)とされている。
【0013】
(船倉の構成)
図1に示すように、船体2内には、貨物等を搭載する船倉15が設けられている。この実施形態で例示する船体2は、船倉15に、車両を搭載する。そのため、この実施形態に例示する複数層の甲板5のうち、上甲板55よりも下層に配置された各甲板51~54は、車両が乗り入れ可能な車両甲板5Cとされている。乾舷甲板53よりも下層に配置された甲板51,52は、前部隔壁12に対して船首尾方向FA船首側に設けられている。
【0014】
(上部構造の構成)
上部構造7は、船体2の上甲板55上に設けられている。上部構造7は、その内部に、複数層の甲板71~74を備えている。複数層の甲板71~74は、上部構造7において上下方向Dvに間隔をあけて設けられている。上部構造7の最上部(上面)に配置された甲板74は、外部に露出する曝露甲板8Bである。上部構造7内の甲板71~73上は、客室、食堂等が設けられる居住区75とされている。
【0015】
(熱機関の構成)
熱機関20は、機関室10内に収容されている。熱機関20は、液化ガスを燃料とする内燃機関又は外燃機関である。この実施形態における船舶1は、熱機関20として、主機21と発電機用エンジン22と、を備えている。
主機21は、船舶1を航行させる推進力を発揮する。主機21は、船体2の船尾部2bの外部に設けられたスクリュー9を回転駆動させる。主機21は、例えば蒸気タービン、ガスタービン、レシプロエンジン等を用いることができる。
【0016】
発電機用エンジン22は、発電機(図示せず)を駆動させる。発電機用エンジン22は、例えばガスタービンやレシプロエンジン等を用いることができる。発電機用エンジン22で発生した回転エネルギーは、発電機で電気エネルギーに変換され、船体2内各部へ供給される。
【0017】
(液化ガスタンクの構成)
図2、
図3に示すように、複数の液化ガスタンク30は、曝露甲板8Aである上甲板55上に、船幅方向Wに間隔をあけて設けられている。液化ガスタンク30は、主機21や発電機用エンジン22の燃料となる液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)等の液化ガスを貯留するための専用の燃料タンクである。この実施形態では、二つの液化ガスタンク30が設けられている。この実施形態では、液化ガスタンク30は、上甲板55のうち、船首尾方向FA船尾側に配置された上甲板船尾部55b上に設けられている。この実施形態では、更に、これら二つの液化ガスタンク30が船幅方向Wの中心C(一点鎖線で示す)を挟んで対称に配置されている場合を例示している。
【0018】
図2に示すように、船舶1には、上方に向けて延びるベントライザ31が設けられている。ベントライザ31は、緊急時等に液化ガスタンク30内で気化したボイルオフガスを排出する。
【0019】
(バンカーステーションの構成)
船舶1は、バンカーステーション33を備えている。バンカーステーション33は、例えば、陸上側の設備等の船外設備との間で液化ガスタンク30の積み下ろしを行う。バンカーステーション33は、陸上側の設備等の船外設備に接続可能な接続口と、この接続口と液化ガスタンク30との間を接続する接続管と、接続管を通して液化ガスを送給するための荷役ポンプ等(いずれも図示せず)と、を備えている。
【0020】
船舶1は、バンカーステーション33と液化ガスタンク30とを接続する配管35を備えている。配管35は、船体2内に形成された第一ダクト36内に挿通されている。第一ダクト36の下端部は、バンカーステーション33に接続されている。第一ダクト36の上端部は、上甲板55上で上方に向かって開口している。第一ダクト36内から上甲板55の上方に延びる配管35は、後述する燃料供給装置40を通して、各液化ガスタンク30に接続されている(
図3において図示せず)。
【0021】
(燃料供給装置の構成)
燃料供給装置40は、液化ガスタンク30に収容された液化ガスを気化させて熱機関20(主機21、発電機用エンジン22)に供給する。
図4に示すように、燃料供給装置40は、ポンプ41と、蒸発器42と、ガスヒータ43と、バッファータンク44と、ケーシング45と、を主に備えている。ポンプ41は、液化ガスタンク30内の液化ガスG1を、後述する燃料供給配管46に送り出す。蒸発器42は、液化ガスG1を蒸発させて気化させ、燃料ガスG2を生成する。ガスヒータ43は、液化ガスタンク30内で発生したボイルオフガスG3を加熱して昇圧させる。バッファータンク44は、蒸発器42で生成された燃料ガスG2を一時的に貯留する。ケーシング45は、燃料供給装置40の外殻をなし、中空の箱状をなしている。ケーシング45は、その内部に、ポンプ41、蒸発器42、ガスヒータ43、およびバッファータンク44を収容する。
【0022】
燃料供給配管46は、燃料供給装置40と、主機21とを接続している。燃料供給配管46は、更に、燃料供給装置40と、発電機用エンジン22と、を接続している。
図2、
図3に示すように、燃料供給配管46は、船体2内に形成された第二ダクト47内に挿通されている。第二ダクト47の下端部は、機関室10に連通している。第二ダクト47の下端部から機関室10内に延びる燃料供給配管46は、主機21、発電機用エンジン22に接続されている。第二ダクト47の上端部は、上甲板55上で上方に向かって開口している。第二ダクト47内から上甲板55の上方に延びる燃料供給配管46は、燃料供給装置40のケーシング45内でバッファータンク44に接続されている。
【0023】
ポンプ41は、液化ガスタンク30内の液化ガスG1を吸い出す。このポンプ41で吸い出された液化ガスG1は、蒸発器42で蒸発することで気化して、燃料ガスG2となる。燃料ガスG2は、バッファータンク44を介し、燃料供給配管46を通して、機関室10内の熱機関20(主機21、発電機用エンジン22)に供給される。また、ガスヒータ43で昇圧されたボイルオフガスG3は、燃料供給装置40の外部に設けられたガス焼却炉48で燃焼される。
【0024】
(燃料供給装置の配置)
図3に示すように、燃料供給装置40は、曝露甲板8Aである上甲板55上において、船幅方向Wにて複数の液化ガスタンク30の間に挟まれるように配置されている。この実施形態における燃料供給装置40は、船体2の船幅方向Wの中心C(一点鎖線で示す)上に配置されている。この実施形態における燃料供給装置40は、曝露甲板8Aのうち、上甲板船尾部55b上に設けられている。具体的には、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40は、船舶1において外気に曝される曝露甲板である上甲板55及び上部構造7の甲板74(曝露甲板8B等)のうち、上甲板55(曝露甲板8A)に、並べて設けられている。このように液化ガスタンク30及び燃料供給装置40を上甲板55上に配置することで、上部構造7の甲板74に液化ガスタンク30及び燃料供給装置40を配置する場合と比較して、船舶1が低重心化される。なお、この実施形態における船舶1では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が配置される曝露甲板8A(上甲板55)の上甲板船尾部55bの下方には、車両が搭載される車両甲板5Cが設けられている。
【0025】
図2に示す船幅方向Wから見た側面視で、燃料供給装置40の少なくとも一部は、船首尾方向FAで複数の液化ガスタンク30と重なるように配置されている。この実施形態では、上記側面視で、燃料供給装置40の全てが複数の液化ガスタンク30と重なるように配置されている場合を例示している。換言すると、この実施形態における燃料供給装置40のケーシング45の全ては、上記側面視で、複数の液化ガスタンク30と重なっている。ケーシング45の船首尾方向FAの長さL1は、液化ガスタンク30における船首尾方向FAの長さL2以下である。ケーシング45の船首尾方向FA船首側の第一端部45aは、液化ガスタンク30の船首側の前端部30aよりも船尾側に配置されている。ケーシング45の船首尾方向FA船尾側の第二端部45bは、液化ガスタンク30の船尾側の後端部30bよりも船首側に配置されている。
【0026】
この実施形態では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40は、曝露甲板8A上に配置された上部構造7のうち最も船尾側に配置されたファンネル70に対し、隙間Ssをあけて船尾側に離れて配置されている(
図2、
図3参照)。
【0027】
船舶1は、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40よりも船尾側に係船部Skを備えている。係船部Skは、船体2を係留するための係船装置50を曝露甲板8A上に備えている。係船装置50としては、例えば、係船ロープを繰り出す係船機、係船ロープを係止するボラード、フェアリーダー等を例示できる。
(作用効果)
上記実施形態の船舶1では、燃料供給装置40が、船幅方向Wに間隔をあけて設けられた複数の液化ガスタンク30の間に配置されている。これにより、船首尾方向FAや上下方向Dvにおいて液化ガスタンク30と異なる位置に燃料供給装置40を設置する必要がない。したがって、液化ガスタンク30や燃料供給装置40を、船舶1の限られたスペースに効率良く配置することが可能となる。
【0028】
上記実施形態の船舶1では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が、曝露甲板8Aのうち船首尾方向FA船尾側の曝露甲板8Aに設けられている。これにより、曝露甲板8Aのうち、船首尾方向FA船尾側の曝露甲板8A上のスペースを、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40の設置スペースとして用いることができる。
【0029】
上記実施形態の船舶1では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船首側に、隙間Ssをあけて上部構造7が設けられている。これにより、船首尾方向FAにおける液化ガスタンク30及び燃料供給装置40と上部構造7との間のスペースを、例えば、燃料供給配管46等を敷設するスペースとして利用できる。また、上部構造7と、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40とが十分に離れて配置されていれば、例えば、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40から燃料漏れ等が生じた場合に備えて上部構造7の電気設備等に対して防爆構造を採用する必要がなくなり、コスト上昇を抑えることもできる。また、上部構造7の居住区75と液化ガスタンク30及び燃料供給装置40とを隔離することで、旅客を含めた乗員の安全性を高めることができる。
【0030】
上記実施形態の船舶1では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40の船尾側に、係船装置50を備える係船部Skが設けられている。この係船部Skが設けられている場合に、上記のように液化ガスタンク30の間に燃料供給装置40を配置することで、係船部Skの設置スペースを確保できる。したがって、船体2の船首尾方向の長さが拡大することを抑制できる。
【0031】
上記実施形態の船舶1では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が設けられた曝露甲板8Aよりも下層に車両甲板5Cが設けられている。そのため、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40を設けた場合であっても、船体2の長さを拡大せずに車両甲板5Cの車両搭載スペースを確保することができる。したがって、船体2の船首尾方向の長さが拡大することを抑制できる。
【0032】
(実施形態の変形例)
上記実施形態では、船幅方向Wに間隔を空けて設けられた二つの液化ガスタンク30の間に、燃料供給装置40を備えるようにしたが、これに限らない。
例えば、
図5に示すように、曝露甲板8A上に、船幅方向Wに間隔を空けて例えば四つの液化ガスタンク30を備えるようにしてもよい。この場合、燃料供給装置40は、船幅方向W一方側の二つの液化ガスタンク30と、船幅方向W他方側の二つの液化ガスタンク30との間に配置する。
また、
図6に示すように、曝露甲板8A上に、船幅方向Wに間隔を空けて設けられた複数(例えば二つ)の液化ガスタンク30を、船首尾方向FAに複数組(例えば2組)設けるようにしてもよい。この場合、燃料供給装置40は、船幅方向W一方の側で船首尾方向FAに並ぶ複数の液化ガスタンク30と、船幅方向W他方の側で船首尾方向FAに並ぶ複数の液化ガスタンク30との間に配置する。
【0033】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0034】
上記実施形態では、
図3に示すように、燃料供給装置40の高さ寸法が、液化ガスタンク30の高さ寸法よりも小さい場合を例示した。しかし、燃料供給装置40の高さ寸法は、液化ガスタンク30の高さ寸法よりも大きくしてもよい。
【0035】
上記実施形態では、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が、曝露甲板8Aにおける船首尾方向FA船尾側に設けられているようにしたが、これに限らない。液化ガスタンク30及び燃料供給装置40は、曝露甲板8Aにおける船首尾方向FA中間部や船首尾方向FA船首側の部分に設けるようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態において、熱機関20として、主機21及び発電機用エンジン22を示したが、これに限らない。液化ガスタンク30から燃料ガスG2が供給される熱機関20は、主機21と発電機用エンジン22との一方のみであってもよい。その場合、燃料ガスG2が供給されない他方は、燃料ガスG2以外を燃料とする熱機関や、電動機等としてもよい。
【0037】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0038】
(1)第1の態様に係る船舶1は、一対の舷側3A,3B及び船底4を有する船体2と、前記船体2内の機関室10に設けられた熱機関20と、前記一対の舷側3A,3Bの間に設けられた曝露甲板8Aと、前記曝露甲板8A上に船幅方向Wに間隔をあけて設けられた複数の液化ガスタンク30と、前記曝露甲板8A上における複数の前記液化ガスタンク30の間に挟まれるように設けられ、前記液化ガスタンク30に収容された液化ガスを気化させて前記熱機関20に供給する燃料供給装置40と、を備える。
曝露甲板8Aの例としては、上甲板55が挙げられる。
【0039】
この船舶1は、燃料供給装置40が、船幅方向Wに間隔をあけて設けられた複数の液化ガスタンク30の間に配置されている。これにより、船首尾方向FAや上下方向Dvにおいて液化ガスタンク30と異なる位置に燃料供給装置40を設置する必要がない。したがって、液化ガスタンク30や燃料供給装置40を、船舶1の限られたスペースに効率良く配置することが可能となる。
【0040】
(2)第2の態様の船舶1は、(1)の船舶1であって、前記液化ガスタンク30及び前記燃料供給装置40は、前記曝露甲板8Aにおける船首尾方向FA船尾側に設けられている。
【0041】
この船舶1は、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が、曝露甲板8Aにおける船首尾方向FA船尾側に設けられている。これにより、曝露甲板8A上において、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船尾側のスペースを、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40の設置スペース以外の用途に有効に用いることができる。
【0042】
(3)第3の態様の船舶1は、(2)の船舶1であって、前記曝露甲板8A上における前記液化ガスタンク30及び前記燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船首側に、前記液化ガスタンク30及び前記燃料供給装置40との間に隙間Ssをあけて設けられた上部構造7をさらに備える。
【0043】
この船舶1は、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船尾側のスペースを、上部構造7を設けるために用いることができる。また、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40との間に隙間Ssを隔てることで、上部構造7を、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40から燃料漏れ等が生じた場合に備えて防爆構造とする必要がなく、コスト上昇を抑えることができる。また、上部構造7と液化ガスタンク30及び燃料供給装置40とを隔離することで、旅客を含めた乗員の安全性を高めることができる。
【0044】
(4)第4の態様の船舶1は、(2)又は(3)の船舶1であって、前記曝露甲板8A上における前記液化ガスタンク30及び前記燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船尾側に設けられ、前記船体2を係留するための係船装置50を備える係船部Skをさらに備える。
【0045】
この船舶1は、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40に対して船首尾方向FA船尾側のスペースを、係船部Skとして有効に用いることができる。
【0046】
(5)第5の態様の船舶1は、(1)~(4)の何れか一つの船舶1であって、前記液化ガスタンク30及び前記燃料供給装置40が設けられた部分の前記曝露甲板8Aの下方に、車両が搭載される車両甲板5Cをさらに備える。
【0047】
この船舶1は、液化ガスタンク30及び燃料供給装置40が設けられた部分の前記曝露甲板8Aの下方に車両甲板5Cを設けるようにした。これにより、車両甲板5Cは、居住区75ではないことから、旅客を含めた乗員の安全性を高めている。
【符号の説明】
【0048】
1…船舶
2…船体
2a…船首部
2b…船尾部
3A、3B…舷側
4…船底
5…甲板
5C…車両甲板
5S…全通甲板
6…底部甲板
7…上部構造
8A、8B…曝露甲板
9…スクリュー
10…機関室
11…後部隔壁
12…前部隔壁
15…船倉
20…熱機関
21…主機
22…発電機用エンジン
30…液化ガスタンク
30a…前端部
30b…後端部
31…ベントライザ
33…バンカーステーション
35…配管
36…第一ダクト
40…燃料供給装置
41…ポンプ
42…蒸発器
43…ガスヒータ
44…バッファータンク
45…ケーシング
45a…第一端部
45b…第二端部
46…燃料供給配管
47…第二ダクト
48…ガス焼却炉
50…係船装置
51、52、54、71、72、73、74…甲板
53…乾舷甲板
55…上甲板
55b…上甲板船尾部
70…ファンネル
75…居住区
C…中心
Dv…上下方向
FA…船首尾方向
G1…液化ガス
G2…燃料ガス
G3…ボイルオフガス
Sk…係船部
Ss…隙間
W…船幅方向