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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】詰め物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20250307BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20250307BHJP
   D02G 3/34 20060101ALI20250307BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20250307BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20250307BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20250307BHJP
   A47G 9/08 20060101ALI20250307BHJP
   A47G 9/02 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
A47C27/12 F
D02G3/04
D02G3/34
D02G3/38
D02G3/44
A47G9/10 B
A47G9/08 B
A47G9/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020051261
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146064
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-10-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友隆
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-067430(JP,A)
【文献】特開2014-101597(JP,A)
【文献】特開平10-110343(JP,A)
【文献】特開2008-075196(JP,A)
【文献】特開2013-177721(JP,A)
【文献】国際公開第2012/026424(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 1/00 - B68G 99/00
A47C 27/00 - A47C 31/12
A47G 9/00 - A47G 11/00
D02G 3/00 - D02G 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地からなる側地生地内に長繊維中綿を充填した詰め物体の製造方法であって、
前記長繊維中綿は芯糸と花糸を含み、前記花糸は芯糸に比べて相対的に長く、前記芯糸と前記花糸の構成繊維は互いに絡まっており、前記花糸が開繊されて部分的にループ状繊維を形成しており、
前記長繊維中綿は、表地及び裏地の少なくとも一方の生地と一体化されており、
前記長繊維中綿はナイロン繊維を含み、前記表地及び裏地の少なくとも一方の側地生地はポリエステル繊維生地とし、
前記長繊維中綿を長さ方向に配列して側地内に充填して詰め物体とし、
前記詰め物体を酸性染料で製品染色し、前記長繊維中綿のナイロン繊維は染色し、前記ポリエステル繊維生地は非染色とすることを特徴とする詰め物体の製造方法。
【請求項2】
前記長繊維中綿は、全部染色されている請求項1に記載の詰め物体の製造方法。
【請求項3】
前記長繊維中綿は、部分染色されている請求項1に記載の詰め物体の製造方法。
【請求項4】
前記長繊維中綿の芯糸と花糸は、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工及び長繊維中綿の芯糸と花糸に対して圧空を噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されている請求項1~3のいずれか1項に記載の詰め物体の製造方法。
【請求項5】
前記詰め物用糸の質量が0.01~3g/mの範囲である請求項1~4のいずれかに記載の詰め物体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中綿が長繊維で構成される詰め物体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品に充填される羽毛は、一般的には水鳥の羽毛が使用されている。水鳥としてはグース(ガチョウ)、ダック(アヒル)、北極圏の海岸線に生息するアイダー(野生の鴨)などである。羽毛には、胸毛にあたるダウンと、羽根と呼ばれるフェザーがあり、ともに羽毛製品に使われている。羽毛の産地はポーランド、ハンガリーなどの中欧、スカンジナビア半島を含む北欧、中国などである。羽毛は、嵩高性に優れ、暖かく、掛け布団や羽毛ジャケットの羽毛製品として高級素材の地位を占めている。
【0003】
しかし、天然の羽毛は水鳥に依存しており、その供給量には限度がある上、自然条件や厄病(例えば鳥ウィルス)の影響によって供給量も変動するという問題がある。あるいは自然保護の観点から、野生の鳥を捕捉することには限度がある。その上、天然の羽毛は、洗いが不充分であると悪臭の原因となるため、事前に悪臭の原因となる汚物を除去し、羽毛の洗浄の程度を見る清浄度と酸素計数を一定のレベルに保つ管理が必要である。加えて、羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品の洗濯は容易ではないという基本的な問題がある。
【0004】
そこで、従来から詰め綿については多くの提案がある。特許文献1にはポリエステル繊維を加熱処理により収縮させて捲縮を発現させ、嵩高と弾力性を持たせることが提案されている。本出願人は特許文献2~3において芯糸と花糸を交絡した詰め綿を提案している。特許文献4には芯糸に花糸を巻き付けて絡ませた詰め綿が提案されている。さらに特許文献5には、糸長差を有する糸条を噴射気流により旋回させて嵩高加工することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-93513号公報
【文献】特開2012-067429号公報
【文献】特開2012-067430号公報
【文献】特開2016-027213号公報
【文献】特開2017-122304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来技術の詰め物体は、染色により中綿が変質してしまうという問題もあった。
本発明は、前記問題を解決するため、製品染色が可能で、変質も少ない詰め物体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の詰め物体の製造方法は、表地と裏地からなる側地生地内に長繊維中綿を充填した詰め物体の製造方法であって、
前記長繊維中綿は芯糸と花糸を含み、前記花糸は芯糸に比べて相対的に長く、前記芯糸と前記花糸の構成繊維は互いに絡まっており、前記花糸が開繊されて部分的にループ状繊維を形成しており、
前記長繊維中綿は、表地及び裏地の少なくとも一方の生地と一体化されており、
前記長繊維中綿はナイロン繊維を含み、前記表地及び裏地の少なくとも一方の側地生地はポリエステル繊維生地とし、
前記長繊維中綿を長さ方向に配列して側地内に充填して詰め物体とし、
前記詰め物体を酸性染料で製品染色し、前記長繊維中綿のナイロン繊維は染色し、前記ポリエステル繊維生地は非染色とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法で得られる詰め物体は、中綿は表地及び裏地の少なくとも一方の生地と一体化されていることにより、染色しても中綿の収縮、偏りなどの問題はなく、変質は少ないか無い。また、中綿は表地及び裏地の少なくとも一方の生地に比べて相対的に濃色に染まることにより、製品染色しても、着色された中綿を詰め込まれた詰め物体と同様に中綿の色調が外部から判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施例における交絡糸の側面図である。
図2図2は本発明の一実施例における長繊維エアー交絡糸の製造方法の模式的説明図である。
図3図3は本発明の実施例1の詰め物体の平面写真である。
図4図4は本発明の実施例2の詰め物体の平面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、表地、裏地及び表地と裏地の間に介在される中綿を含む詰め物体である。中綿は表地及び裏地の少なくとも一方の生地と一体化されている。一体化はスティッチ、キルトなどの縫製によることが好ましいが、熱融着布を介して生地と中綿を一体化することもできる。縫製による一体化は、風合いを良好に保てる。縫製は中綿が表地及び裏地の少なくとも一方の生地と一体化できればどのような縫製でもよいが、好ましくは中綿の両端を縫製する、あるいは中綿の両端と両端の間の任意の位置を縫製する。
【0011】
本発明の詰め物体は、中綿は表地及び裏地の少なくとも一方の生地に比べて相対的に濃色に染まる。このようにするには、中綿は特定の染料に染まる繊維を選択し、表地及び裏地の少なくとも一方の生地はその染料に染まりにくい繊維を選択するのが好ましい。あるいは表地及び裏地の少なくとも一方の生地を撥水処理し、染料に染まりにくくすることもできる。すなわち、防染する。このような技術としては特開2018-197406号公報がある。
【0012】
本発明の詰め物体は、製品染めされている。通常、製品を製造にはすでに染色された構成部材が使われるが、製品染めは無染色の部材で製品を製造し、製品の形にしたのち染色する方法である。製品染は後染ともいう。製品染めを行うことにより、多数の色調の中綿の準備は不要であり、コストを安くできる。従来技術は、中綿を染色することは考慮されておらず、中綿を染色するとしても綿染してから製品にするため、多くの色調の中綿を準備しなくてはならず、在庫管理も必要で、コストが高くなるという問題があった。また、フィラメントを事前に染める方法で嵩高性糸を生産すると、巻き取る際の糸切れ、収縮などの品質が低下する他、糸の嵩高性の低下があった。さらに、交絡糸(嵩高性糸)に対し染めを行うと同様の問題があるうえ、染まり方にムラが発生する問題があった。これに対して本発明はこれらの問題を解決できる。製品染めされていることは、生地、縫い糸、芯地その他の副資材が中綿を染めた染料によりわずかに染色(汚染)されていることにより判別できる。なお、染色は常法でよい。
【0013】
詰め物体は、表地及び裏地の少なくとも一方の生地側から見て、生地が透けて染色された中綿の色調が判別できるようにしてもよい。使用する生地は、生地が透けて染色された中綿の色調が判別できるものであればどのようなものも使用できる。前記生地の厚みは薄くし、無色にするのが好ましい。生地を構成する糸は細く、高密度に織られた織布が好ましい。この構成により、中綿が生地の外に出るのを防止でき、かつ外から中綿の色調が判別できる。一例として、詰め物体が中綿入り衣服の場合は、表地から見て中綿の色調が判別できるのが好ましく、クッションなどの場合は片面からでも両面からでも中綿の色調が判別できるのが好ましい。また、詰め物体は、部分染色されていてもよい。例えば中綿入り衣服の場合、腕の部分のみを染色してもよい。
【0014】
本発明の中綿(詰め物用糸)は、少なくとも2種類の長繊維A及び長繊維Bで構成される。長繊維A及び長繊維B以外の繊維を加えることは任意であるが、詰め物用糸を100質量%としたとき長繊維A及び長繊維B合計で70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。長繊維A及び長繊維Bは一体化されている。ここで一体化とは、繊維同士が絡み合ったり巻き付いた状態をいう。長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短い。長繊維Aと長繊維Bとの長さの差を設けることで嵩高性を出す。
【0015】
長繊維Bは単繊維繊度が3decitex以上のポリエステル中空糸を使用するのが好ましい。これにより嵩高性と保温効果が高くなる。単繊維繊度が3decitex未満では、嵩高性と保温効果は期待できない。なお、decitexはTとも表示する。
【0016】
中綿(詰め物用糸)のJIS L 1903-1998「羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法」に準拠した測定方法で140mm以上の嵩高性があることが好ましい。これにより保温性を向上できる。
【0017】
長繊維Bは、単繊維繊度が3decitex以上かつ中空率が30%を超えることが好ましい。これにより、嵩高性と保温性を高く維持できる。
【0018】
詰め物用糸の質量は0.01~3g/mが好ましく、0.02~1.5g/mがさらに好ましい。この範囲であると、詰め物加工にする際の取り扱いに便利である。
【0019】
花糸(長繊維B)と芯糸(長繊維A)の重量比は、花糸(長繊維B)と芯糸(長繊維A)を母数にしたとき、花糸(長繊維B)の割合は51~99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80~98wt%の範囲、特に好ましくは85~97wt%の範囲である。前記範囲であれば、芯糸(長繊維A)による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。
【0020】
長繊維Bは、長繊維Aに比べて1.1~100倍長いことが好ましく、より好ましくは2~100倍であり、さらに好ましくは4~60倍である。この範囲であると、長繊維Bが長い分だけループ繊維になり、嵩高くできる。
【0021】
長繊維A及び長繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されているのが好ましい。交絡加工は長繊維Aと長繊維Bの走行方向に対して垂直方向に圧空を噴射するエアー交絡機による加工である。エアージェット加工はいわゆるタスラン加工であり、長繊維Aと長繊維Bに対して進行方向に圧空を押し込む加工である。巻き付け加工は長繊維Aに対して長繊維Bを巻き付け、一体化する加工である。長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工は、長繊維Aに長繊維Bを噴射させ絡めたり旋回させる加工である。
【0022】
本発明の詰め物用糸は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、スカート、ベスト、コート、防寒衣料、インナー衣料及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つの詰め物体に充填されている。
【0023】
前記詰め物体は洗濯機で洗濯可能である。洗濯ができるウォッシャブル性があることから、寝具類はホテル用、レンタル用、災害用、病院用、老人施設用などに好適であり、衣類はスポーツ用に好適である。
【0024】
本発明の詰め物体は、長繊維詰め物用糸を詰め物の長さ方向に配列して充填され、詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定されているのが好ましい。これにより、固定箇所の間で詰め物用糸の長さは変化することはなく、長繊維AとBは一体化しているので、洗濯を繰り返しても詰め綿の動きは制限され、片寄りが少なく、かさも高い詰め物製品となる。なお、本発明の詰め物体は、長繊維詰め物用糸とともに、その他長繊維詰め物を用いてもよく、その他長繊維詰め物と本発明の長繊維詰め物用糸とを混合して、複数本のキルト糸により側地と固定してもよい。また、他の羽毛、人工羽毛、短繊維綿と併用してもよい。
【0025】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。また以下においては、長繊維詰め物用糸は一例として交絡糸の場合を説明する。図1は本発明の一実施例における長繊維詰め物用糸の側面図である。この長繊維詰め物用糸1は、芯糸2(長繊維A)と花糸3(長繊維B)の構成繊維が互いに絡まっており、花糸3(長繊維B)が開繊されて部分的にループ状繊維を形成している。
【0026】
図2はエアー交絡糸の製造方法を示す模式的説明図である。巻き糸体4から芯糸4a(長繊維A)を引き出し、巻き糸体5から花糸5a(長繊維B)引き出し、2個のフィードローラ6、7と糸ガイド8を通過させてエアー交絡装置10に供給する。エアー交絡装置10に圧力空気11を供給すると、糸道9内の繊維は開繊されたり旋回されることにより、互いに交絡する。12は混繊交絡糸である。芯糸の供給速度は10~200m/分、花糸の供給速度は20~10000m/分、巻き取り速度10~200m/分、空気圧力0.01~1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ13とワインダーローラ14を通過後の糸を巻き糸体20に巻き取る。この方法は、糸の巻き取り速度を20~1500m/分と高速化でき、生産性が高いところに利点がある。
【0027】
得られた交絡糸は、シリコーン樹脂を付与する。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH2)等を有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”バルキーシリコーン、“TERON E 731”、“TERON E 722”等のソフトシリコーンを使用できる。付与量は、乾燥重量で中綿に対し0.1~10質量%付与するのが好ましい。次に熱処理工程において、120~190℃で1~18分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングする。
【0028】
繊維素材と染料との関係は表1に示すとおりであり、染めたい繊維と染めたくない繊維を選択する。表1における評価基準は次のとおりである。
A:よく染まる。
B:普通に染まる。
C:染まりにくい。
【0029】
【表1】
【実施例
【0030】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
各物性の測定方法について説明する。
【0031】
(実施例1)
<中綿1:酸性染料易染繊維使い>
芯糸として、中空ナイロンフィラメント糸(ナイロン,中空率20~30%)、繊度28decitex、フィラメント数12本を使用し、花糸として中空ナイロンフィラメント糸(ナイロン,中空率20~30%)、繊度28decitex、フィラメント数12本を使用し、詰め物用糸を作製した。この詰め物用糸の質量は0.12g/mであった。
次にシリコーン樹脂付与工程において、シリコーン樹脂を付与した。シリコーン樹脂付与工程では、上記詰め物用糸を15本束状にして行った。シリコーン樹脂としては、松本油脂製薬社製“テロンE-530”、0.5質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。次に熱処理工程において、120~170℃で1~18分間熱処理し、シリコーン樹脂を熱キュアリング固定した。
<中綿2:酸性染料難染繊維使い>
芯糸として、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸、繊度41decitex、フィラメント数12本を使用し、花糸としてポリエチレンテレフタレート(PET)中空フィラメント糸(中空率35%)、繊度41decitex、フィラメント数12本を使用し、詰め物用糸を作製した。詰め物用糸の質量は0.15g/mであった。中綿1と同様にシリコーン樹脂を付与した。
<側地>表地及び裏地としてポリエステルフィラメント糸100質量%(繊度11.1decitex)を使用し、経糸密度240本/インチ、緯糸密度240本/インチ、単位面積当たりの質量(目付)49g/mのリップストップ生地とした。
この織物をタテ44cm,ヨコ30cmにカットし、長辺中央部で半分に折り畳み、折り畳み線と平行に3.5cm間隔でキルトを入れた。この内部に前記中綿1と中綿2を揃えて充填した。充填量はトータル11.5g(生地6.5g、中綿5.0g)であった。その後1.5cm幅で横辺を三つ折りし、中綿の両端を表地、裏地とともに縫製した。
<染色>
酸性染料を1.0% o.w.f使用し、浴比1:15、温度:100℃、時間:60分で染色した。染色後はソーピングし、3回水洗し、乾燥した。
図3は実施例1の染色後の中綿入り生地サンプルの平面写真である。灰色の部分は中綿が染まっている中綿1の部分、白い部分は中綿が染まっていない中綿2の部分である。
【0032】
(実施例2)
中綿として中綿2を使用せず、全部中綿1を使用して中綿入り生地サンプルを作成した以外は実施例1と同様に実施した。
図4は実施例2の染色後の中綿入り生地サンプルの平面写真である。中綿入りの部分は灰色に染まって見える。図4の背面下部には白い紙を置いている。
【0033】
(比較例1)
中綿としてポリエステル繊維製中綿2を全量使用し、表地及び裏地としてナイロンフィラメント糸を使用し、分散染料を使用して染色した以外は実施例1と同様に実施した。この染色物は中綿も表地及び裏地も同色に染まってしまい、中綿を染める意味がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の詰め物体は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、スカート、ベスト、コート、防寒衣料、インナー衣料、作業着、ネックウォーマーなどに有用である。
【符号の説明】
【0035】
1 詰め物用糸
2,4a 芯糸(長繊維A)
3,5a 花糸(長繊維B)
4,5,20 巻き糸体
6,7 フィードローラ
8 糸ガイド
9 交絡機の糸道
10 エアー交絡装置
11 圧力空気
12 混繊交絡糸
13 デリベリローラ
14 ワインダーローラ
図1
図2
図3
図4