(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
A01B69/00 303F
(21)【出願番号】P 2020167989
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】川畑 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 直
(72)【発明者】
【氏名】山岡 京介
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-136015(JP,A)
【文献】特開2018-045710(JP,A)
【文献】特開2018-117563(JP,A)
【文献】特開2020-147205(JP,A)
【文献】特開2019-097534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
走行装置を有する機体の走行を制御する走行制御部と、
を備える農作業機であって、
前記走行制御部の制御モードを、基準方位を用いた自動操舵走行の実行および前記基準方位の算出のための手動操舵走行の実行が可能な第1モードと、前記自動操舵走行を行わないモードであって前記走行装置が停止した状態となる第2モードと、の間で切り替えるモード切替部と、
前記走行制御部の制御モードが前記第1モードであるときの前記基準方位に関する情報である方位関連情報を記憶する記憶部と、
人為操作を受付可能なA点登録ボタン及びB点登録ボタンと、
前記A点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置をA点座標として前記記憶部に記憶させ、前記B点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置をB点座標として前記記憶部に記憶させ、前記A点座標と前記B点座標とに基づいて前記基準方位を算出して前記記憶部に記憶させる基準方位算出部と、を備え、
前記モード切替部が、前記A点座標の記憶の後に前記B点登録ボタンへの人為操作を待機している時に前記エンジンが停止されたことに応じて前記走行制御部の制御モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えて、更に
前記農作業機を起動またはシャットダウンする起動キーがONされたことに応じて前記第2モードから前記第1モードに切り替えて、
前記基準方位算出部が、再び、前記B点登録ボタンへの人為操作を待機し、前記B点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置を前記B点座標として前記記憶部に記憶させ、前記A点座標と前記B点座標とに基づいて前記基準方位を算出して前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部が前記記憶部に記憶された前記基準方位を用いて自動操舵走行を実行可能である農作業機。
【請求項2】
前記モード切替部が、前記走行制御部が前記自動操舵走行を実行している時に、前記エンジンが停止されたことに応じて前記走行制御部の制御モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えて、更に前記起動キーがONされたことに応じて前記第2モードから前記第1モードに切り替えて、
前記走行制御部が、前記起動キーのONに応じて前記第1モードに切り替えられた際に、前記エンジンが停止される前に用いていた前記基準方位を用いて、前記自動操舵走行を実行する請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
自動操舵制御部と、
人為操作を受付可能な自動操舵ボタンと、を更に備え、
前記自動操舵制御部は、前記自動操舵ボタンへの人為操作を前記自動操舵ボタンから受け付けたことに応じて、その時の前記機体の基準点を通ると共に前記基準方位に沿う方向の走行ラインを自動操舵目標ラインとして決定し、
前記走行制御部は、前記第1モードにあるときに、前記自動操舵目標ラインに沿うように前記機体を走行させる請求項1または2に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動直進モードでの走行が可能な田植機が記載されている。自走直進モードでの走行は次のようにして行われる。まず、オペレータが操向ハンドルを操作して田植機を直進走行させて、その途中の2点でオペレータが登録スイッチを操作する。その2点での衛星測位データに基づいて、ティーチング方向が算出される。算出されたティーチング方向と平行な直線状の目標ラインが生成される。その目標ラインに沿って機体が移動するように、操向ユニットが制御されて、自動直進モードでの走行(自動操舵走行)が行われる。
【0003】
自動操舵走行の実行中に測位データに関する異常が検知されると、オペレータへの報知、自動操舵の停止(自動直進モードから手動モードへの移行)、走行の停止等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場での作業走行においては、圃場の一端から他端までの直進走行が繰り返し行われる。特許文献1の田植機によれば、直進走行を自動操舵走行により行うことができるので、オペレータの手動操舵が不要となり作業負担が削減される。直進走行の途中で異常により自動操舵走行が中断した場合、同じティーチング方向又は目標ラインに沿って自動操舵走行を開始できると、更に作業負担を軽減でき好ましい。特許文献1の田植機では、自動操舵走行の中断後の再開について考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、自動操舵走行に係る作業負担を軽減可能な農作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明の農作業機はエンジンと、走行装置を有する機体の走行を制御する走行制御部と、を備える農作業機であって、前記走行制御部の制御モードを、基準方位を用いた自動操舵走行の実行および前記基準方位の算出のための手動操舵走行の実行が可能な第1モードと、前記自動操舵走行を行わないモードであって前記走行装置が停止した状態となる第2モードと、の間で切り替えるモード切替部と、前記走行制御部の制御モードが前記第1モードであるときの前記基準方位に関する情報である方位関連情報を記憶する記憶部と、人為操作を受付可能なA点登録ボタン及びB点登録ボタンと、前記A点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置をA点座標として前記記憶部に記憶させ、前記B点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置をB点座標として前記記憶部に記憶させ、前記A点座標と前記B点座標とに基づいて前記基準方位を算出して前記記憶部に記憶させる基準方位算出部と、を備え、前記モード切替部が、前記A点座標の記憶の後に前記B点登録ボタンへの人為操作を待機している時に前記エンジンが停止されたことに応じて前記走行制御部の制御モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えて、更に前記農作業機を起動またはシャットダウンする起動キーがONされたことに応じて前記第2モードから前記第1モードに切り替えて、前記基準方位算出部が、再び、前記B点登録ボタンへの人為操作を待機し、前記B点登録ボタンへの人為操作を受け付けた時の前記機体の位置を前記B点座標として前記記憶部に記憶させ、前記A点座標と前記B点座標とに基づいて前記基準方位を算出して前記記憶部に記憶させ、前記走行制御部が前記記憶部に記憶された前記基準方位を用いて自動操舵走行を実行可能であることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、走行制御部の制御モードが第1モードであるときの基準方位に関する情報である方位関連情報が記憶部に記憶され、走行制御部の制御モードが再び第1モードになった時に当該方位関連情報を利用して自動操舵走行を実行可能であるから、基準方位の再生成等の作業が不要となり、自動操舵走行を再開する際の作業負担を軽減することが可能となる。
【0009】
本発明において、前記モード切替部が、前記走行制御部が前記自動操舵走行を実行している時に、前記エンジンが停止されたことに応じて前記走行制御部の制御モードを前記第1モードから前記第2モードに切り替えて、更に前記起動キーがONされたことに応じて前記第2モードから前記第1モードに切り替えて、前記走行制御部が、前記起動キーのONに応じて前記第1モードに切り替えられた際に、前記エンジンが停止される前に用いていた前記基準方位を用いて、前記自動操舵走行を実行すると好適である。
【0010】
【0011】
本発明において、自動操舵制御部と、人為操作を受付可能な自動操舵ボタンと、を更に備え、前記自動操舵制御部は、前記自動操舵ボタンへの人為操作を前記自動操舵ボタンから受け付けたことに応じて、その時の前記機体の基準点を通ると共に前記基準方位に沿う方向の走行ラインを自動操舵目標ラインとして決定し、
前記走行制御部は、前記第1モードにあるときに、前記自動操舵目標ラインに沿うように前記機体を走行させると好適である。
【0012】
【0013】
【0014】
本構成によれば、自動操舵走行を実行していない時(例えば自動操舵走行の終了後)にモードが切り替わった後、再び自動操舵走行を行う旨の人為操作を行えば、記憶部に記憶された方位関連情報を利用して自動操舵走行を行うことができるので、農作業機の利便性を更に高めることができる。
【0015】
【0016】
本構成によれば、所定の切替条件が満たされると自動操舵走行を行わない第2モードに切り替わる農作業機において、自動操舵走行を再開する際の作業負担を軽減することが可能となり好ましい。
【0017】
【0018】
本構成によれば、エンジンが停止すると自動操舵走行を行わない第2モードに切り替わる農作業機において、自動操舵走行を再開する際の作業負担を軽減することが可能となり好ましい。
【0019】
【0020】
本構成によれば、作業装置が停止すると自動操舵走行を行わない第2モードに切り替わる農作業機において、自動操舵走行を再開する際の作業負担を軽減することが可能となり好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図5】基準方位取得ルーチンのフローチャートである。
【
図6】自動操舵開始ルーチンのフローチャートである。
【
図7】自動操舵終了ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る農作業機の実施の形態である普通型コンバインについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0023】
尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」、矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0024】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「農作業機」に相当)は、機体10、刈取部H(作業装置の一例)、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。また、機体10は、クローラ式の走行装置11、運転部12、エンジンEGを有している。
【0025】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジンEGからの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって自走可能である。
【0026】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に備えられている。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータが搭乗可能である。
【0027】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0028】
刈取部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、刈取部Hの後側に設けられている。また、刈取部Hは、刈刃15及びリール17を含んでいる。
【0029】
刈刃15は、圃場の植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0030】
この構成により、刈取部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0031】
刈取部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0032】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0033】
即ち、コンバイン1は、刈取部Hによって収穫された穀物を貯留する穀粒タンク14を備えている。
【0034】
また、
図1に示すように、運転部12には、表示入力装置4(入力装置の一例)が配置されている。表示入力装置4は、種々の情報を表示可能、且つ人為操作を受付可能に構成されている。表示入力装置4は、例えば、タッチパネル式液晶表示装置である。本実施形態において、表示入力装置4は、運転部12に固定されている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、表示入力装置4は、運転部12に対して着脱可能に構成されていても良いし、表示入力装置4は、コンバイン1の機外に位置していても良い。
【0035】
ここで、コンバイン1は、手動操舵走行及び自動操舵走行を行うことができるように構成されている。手動操舵走行とは、オペレータの手動操舵によって走行を行うことを意味する。また、自動操舵走行とは、前進走行を自動で行うことを意味する。特に、本実施形態において、自動操舵走行とは、αターンやUターン等の大きな方向転換のない前進走行を自動で行うことを意味する。
【0036】
また、運転部12には、主変速レバー19が設けられている。コンバイン1が手動操舵走行または自動操舵走行を行っているとき、オペレータが主変速レバー19を操作すると、コンバイン1の車速が変化する。即ち、コンバイン1が手動操舵走行または自動操舵走行を行っているとき、オペレータは、主変速レバー19を操作することにより、コンバイン1の車速を変更することができる。
【0037】
また、運転部12には、操舵操作具41が設けられている。コンバイン1が手動操舵走行を行っているとき、オペレータが操舵操作具41を操作すると、走行装置11における左右のクローラの間に速度差が生じるように構成されている。これにより、コンバイン1が旋回する。即ち、コンバイン1が手動操舵走行を行っているとき、オペレータは、操舵操作具41を操作することにより、コンバイン1の操舵を行うことができる。
【0038】
即ち、コンバイン1は、操舵のための操舵操作具41を備えている。
【0039】
尚、コンバイン1は、操舵操作具41への操作力が走行装置11へ伝達されないように構成されている。即ち、操舵操作具41は、走行装置11に機械的に連動するものではない。オペレータが操舵操作具41を操作すると、操舵操作具41の動きが電気的に検知され、この検知に基づいて、走行装置11における左右のクローラが制御される。これにより、左右のクローラの間に速度差が生じると、コンバイン1は旋回する。また、左右のクローラの間に速度差がない状態では、コンバイン1は直進する。
【0040】
〔動力伝達に関する構成〕
図2に示すように、コンバイン1は、脱穀クラッチC1及び刈取クラッチC2を備えている。エンジンEGから出力された動力は、走行装置11及び脱穀クラッチC1に分配される。
【0041】
走行装置11は、主変速装置11a及び副変速装置11bを有している。本実施形態において、主変速装置11aは、静油圧式無段変速装置により構成されている。また、副変速装置11bは、ギヤ切替式の変速装置により構成されており、高速状態と低速状態との間で切替可能に構成されている。尚、高速状態は移動用(非作業用)の変速状態であり、低速状態は作業用の変速状態である。
【0042】
エンジンEGから走行装置11に入力された動力は、主変速装置11a及び副変速装置11bにより変速される。そして、変速された動力によって、走行装置11のクローラが駆動することにより、コンバイン1が走行する。
【0043】
主変速レバー19は、前後方向に揺動操作可能に構成されている。主変速レバー19の可動域は、前進用操作位置、中立位置、後退用操作位置の3つに区画されている。そして、主変速レバー19が操作されることにより、主変速装置11aの変速状態が変化する。
【0044】
主変速レバー19が前進用操作位置に位置しているとき、主変速装置11aは、前進用の変速状態である。このとき、主変速レバー19を前側に倒すほど、主変速装置11aから出力される動力は高速となる。
【0045】
主変速レバー19が中立位置に位置しているとき、主変速装置11aは、中立状態である。このとき、主変速装置11aは、動力を出力しない。
【0046】
主変速レバー19が後退用操作位置に位置しているとき、主変速装置11aは、後進用の変速状態である。このとき、主変速レバー19を後側に倒すほど、主変速装置11aから出力される動力は高速となる。
【0047】
また、主変速レバー19に、副変速スイッチ42(
図2)が設けられている。副変速スイッチ42が押し操作されるたびに、副変速装置11bの変速状態は、高速状態と低速状態との間で切り替わる。
【0048】
図2に示す脱穀クラッチC1は、動力を伝達する入状態と、動力を伝達しない切状態と、の間で状態変更可能に構成されている。
【0049】
脱穀クラッチC1が入状態であるとき、エンジンEGからの動力は、脱穀装置13及び刈取クラッチC2へ伝達される。これにより、脱穀装置13は駆動する。
【0050】
また、脱穀クラッチC1が切状態であるとき、エンジンEGからの動力は、脱穀装置13及び刈取クラッチC2の何れにも伝達されない。このとき、脱穀装置13は駆動しない。
【0051】
また、刈取クラッチC2は、動力を伝達する入状態と、動力を伝達しない切状態と、の間で状態変更可能に構成されている。
【0052】
脱穀クラッチC1と刈取クラッチC2との両方が入状態であるとき、エンジンEGからの動力は、刈取部Hへ伝達される。これにより、刈取部Hは駆動する。
【0053】
また、刈取クラッチC2が切状態であるとき、エンジンEGからの動力は、刈取部Hへ伝達されない。このとき、刈取部Hは駆動しない。
【0054】
また、脱穀クラッチC1が切状態であるときも、エンジンEGからの動力は、刈取部Hへ伝達されない。このとき、刈取部Hは駆動しない。
【0055】
図2に示すように、コンバイン1は、刈取脱穀レバー43を備えている。刈取脱穀レバー43は、運転部12に設けられている。刈取脱穀レバー43は、前後方向に揺動操作可能に構成されている。そして、刈取脱穀レバー43は、第1操作位置、第2操作位置、第3操作位置の間で、操作位置を択一的に切り替えることができるように構成されている。
刈取脱穀レバー43が操作されることにより、脱穀クラッチC1及び刈取クラッチC2の入切状態が変化する。
【0056】
刈取脱穀レバー43の操作位置が第1操作位置であるとき、脱穀クラッチC1及び刈取クラッチC2は、何れも入状態である。
【0057】
刈取脱穀レバー43の操作位置が第2操作位置であるとき、脱穀クラッチC1は入状態であり、刈取クラッチC2は切状態である。
【0058】
刈取脱穀レバー43の操作位置が第3操作位置であるとき、脱穀クラッチC1及び刈取クラッチC2は、何れも切状態である。
【0059】
図2に示すように、コンバイン1は、操舵操作具41を備えている。操舵操作具41は、左右方向に揺動操作可能に構成されている。
【0060】
以下、
図2のブロック図を参照しながら、コンバイン1の制御に関する構成について説明する。コンバイン1の制御装置CUは、制御部CS、及び記憶装置MEを備えている。
【0061】
詳しくは制御装置CUは、所謂ECUであって、機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。
【0062】
制御部CSは、自車位置算出部21、走行制御部24、自車方位算出部25、モード切替部26、基準方位算出部27、自動操舵制御部28、及び走行経路算出部29を備えている。
【0063】
記憶装置MEは、状態フラグ記憶部51、及び方位関連情報記憶部52(記憶部の一例)を備えている。状態フラグ記憶部51及び方位関連情報記憶部52は、記憶装置MEにおける制御装置CUの電源を遮断しても記憶を保持する素子ないし領域(例えば、不揮発性RAM)に設けられる。
【0064】
状態フラグ記憶部51は、自動操舵中フラグ及びB点待機中フラグを記憶する。自動操舵中フラグ及びB点待機中フラグは、ON及びOFFの2つの値をとる。
【0065】
方位関連情報記憶部52は、走行制御部24の制御モードが第1モードであるときの基準方位に関する情報である方位関連情報を記憶する。
【0066】
ここで、本実施形態においては、RTK-GPS(Real Time Kinematic GPS)が採用されている。
図1に示す衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GSからのGPS信号と、既知位置に設置された基準局(図示せず)から送信された測位データと、を受信する。そして、
図2に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づく測位データと、基準局から受け取った測位データと、を自車位置算出部21へ送る。
【0067】
自車位置算出部21は、衛星測位モジュール80から受け取った測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、走行制御部24へ送られる。
【0068】
一般に、RTK-GPS測位においては、GPS衛星とGPS受信機との距離をN×λ+φ×λ+c×dT+c×dtとして、整数値バイアスと呼ばれるNを求める。これにより、高精度な測位が可能となる。尚、λは搬送波の波長である。また、φはGPS衛星とGPS受信機との間の波数の小数部である。また、cは電波伝搬速度、dTはGPS衛星の時計誤差、dtはGPS受信機の時計誤差である。
【0069】
そして、このNが整数解として定まった状態は、FIXと呼ばれる。また、このときの測位結果は、FIX解と呼ばれる。
【0070】
また、Nが整数解として定まっていない状態は、FLOATと呼ばれる。このときの測位結果は、FLOAT解と呼ばれる。FIX解はセンチメータ精度であるのに対して、FLOAT解は数十センチから数メータの精度となる。
【0071】
以下、衛星測位モジュール80及び自車位置算出部21によるRTK-GPS測位において、FIX解が得られている状態を「高精度状態」と記載する場合がある。
【0072】
尚、衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0073】
また、
図2に示すように、コンバイン1は、慣性計測装置81を備えている。また、制御部CSは、自車方位算出部25を有している。
【0074】
慣性計測装置81は、機体10のヨー角度の角速度、及び、互いに直交する3軸方向の加速度を経時的に検知する。慣性計測装置81による検知結果は、自車方位算出部25へ送られる。
【0075】
自車方位算出部25は、自車位置算出部21から、コンバイン1の位置座標を受け取る。そして、自車方位算出部25は、慣性計測装置81による検知結果と、コンバイン1の位置座標と、に基づいて、コンバイン1の姿勢方位を算出する。
【0076】
より具体的には、まず、コンバイン1の走行中に、現在のコンバイン1の位置座標、及び、直前に走行していた地点におけるコンバイン1の位置座標に基づいて、自車方位算出部25は、初期姿勢方位を算出する。次に、初期姿勢方位が算出されてからコンバイン1が一定時間走行すると、自車方位算出部25は、その一定時間の走行の間に慣性計測装置81により検知された角速度を積分処理することにより、姿勢方位の変化量を算出する。
【0077】
そして、このように算出された姿勢方位の変化量を初期姿勢方位に足し合わせることによって、自車方位算出部25は、姿勢方位の算出結果を更新する。その後、一定時間毎に、姿勢方位の変化量が同様に算出されると共に、順次、姿勢方位の算出結果が更新されていく。
【0078】
ところで、慣性計測装置81により検知される角速度には、計測誤差(ドリフト)が含まれている。この計測誤差は時間経過と共に増大していくため、姿勢方位の変化量を算出する度に、算出された姿勢方位の変化量に含まれる誤差が大きくなっていく。
【0079】
そこで、自車方位算出部25は、慣性計測装置81による検知結果に基づいて算出された姿勢方位を、コンバイン1の位置座標の変化に基づき算出される方位情報によって補正するように構成されている。尚、コンバイン1の位置座標の変化に基づき算出される方位情報は、衛星測位モジュール80及び自車位置算出部21によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られており、且つ、コンバイン1が数メートル以上に亘って直進した場合に、高精度となる。そのため、自車方位算出部25は、コンバイン1の位置座標の変化に基づき算出される方位情報による補正を、衛星測位モジュール80及び自車位置算出部21によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られており、且つ、コンバイン1が数メートル以上に亘って直進した場合にのみ行う。
【0080】
尚、本明細書において、衛星測位モジュール80及び自車位置算出部21によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られており、且つ、コンバイン1が数メートル以上に亘って直進した状態、及び、コンバイン1の位置座標の変化に基づいて高精度な方位情報が算出される状態を、高精度方位算出状態と記載する場合がある。
【0081】
以上で説明した構成により、自車方位算出部25は、コンバイン1の姿勢方位を高精度に算出することができる。自車方位算出部25により算出されたコンバイン1の姿勢方位は、走行制御部24へ送られる。
【0082】
走行制御部24は、走行装置11を制御可能に構成されている。走行制御部24は、走行装置11を制御することにより、機体10の走行を制御する。
【0083】
即ち、コンバイン1は、走行装置11を有する機体10の走行を制御する走行制御部24を備えている。
【0084】
〔刈取部の昇降操作に関する構成〕
図1に示すように、コンバイン1は、刈取シリンダ15Aを備えている。また、
図2に示すように、コンバイン1は、刈取昇降操作具44を備えている。
【0085】
刈取昇降操作具44は、運転部12に設けられている。制御部CSは、オペレータによる刈取昇降操作具44の操作に応じて、刈取シリンダ15Aの伸縮を制御するように構成されている。
【0086】
刈取シリンダ15Aが伸びると、搬送部16及び刈取部Hは、一体的に、刈取部Hが上昇する方向に揺動する。これにより、刈取部Hは、機体10に対して上昇する。
【0087】
また、刈取シリンダ15Aが縮むと、搬送部16及び刈取部Hは、一体的に、刈取部Hが下降する方向に揺動する。これにより、刈取部Hは、機体10に対して下降する。
【0088】
この構成により、オペレータは、刈取昇降操作具44を操作することによって、刈取部Hの昇降操作を行うことができる。
【0089】
〔自動操舵走行に関する構成〕
モード切替部26は、走行制御部24の制御モードを、基準方位を用いて自動操舵走行を実行可能な自動操舵モード(第1モードの一例)と、自動操舵走行を行わない非自動操舵モード(第2モード)と、の間で切り替える。自動操舵モードでは、基準方位を設定するための手動操舵走行、自動操舵走行の開始前の予備的な手動操舵走行、オペレータの操作に基づく自動操舵走行の開始及び終了、自動的な自動操舵走行の開始及び終了、自動操舵走行と自動操舵走行との間の手動操舵によるターン走行、などが行われる。
【0090】
以下、自動操舵走行について詳述する。自動操舵走行は、設定された基準方位に基づいて自動操舵目標ラインを生成・決定し、決定された自動操舵目標ラインに沿って機体10が自動操舵される走行である。自動操舵に先立って、基準方位の設定が行われる。
【0091】
基準方位を設定する際(後述する基準方位取得ルーチン)、表示入力装置4の画面に「A点登録」と記されたボタン(以下「A点登録ボタン」と称する。)が表示される。A点登録ボタンがオペレータによりタッチ操作されると、所定の信号が基準方位算出部27へ送られる。基準方位算出部27は、当該信号を受信したことに応じて、自車位置算出部21から受け取るコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、A点登録ボタンがタッチ操作された時点でのコンバイン1の位置座標を算出する。以下、当該位置座標を「A点座標」と称し、A点座標に対応する位置を単に「A点」と称する。このとき算出された位置座標(A点座標)は、方位関連情報として、方位関連情報記憶部52に記憶される。
【0092】
コンバイン1が手動操舵されて移動し、A点から所定の距離離れると、表示入力装置4の画面に「B点登録」と記されたボタン(以下「B点登録ボタン」と称する。)B点登録ボタンがオペレータによりタッチ操作されると、所定の信号が基準方位算出部27へ送られる。基準方位算出部27は、当該信号を受信したことに応じて、自車位置算出部21から受け取るコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、B点登録ボタンがタッチ操作された時点でのコンバイン1の位置座標を算出する。以下、当該位置座標を「B点座標」と称し、B点座標に対応する位置を単に「B点」と称する。このとき算出された位置座標(B点座標)は、方位関連情報として、方位関連情報記憶部52に記憶される。
【0093】
そして、基準方位算出部27は、A点座標とB点座標とに基づいて、自動操舵のための基準方位を決定する。より具体的には、基準方位算出部27は、A点からB点へ向かう直線の方向を算出し、この方向を基準方位として決定する。決定された基準方位は、方位関連情報として、方位関連情報記憶部52に記憶される。
【0094】
基準方位の形式は、特に限定されないが、例えば、東西南北を基準とした形式(例えば、「北」や「北27度東」等)であっても良いし、座標系における単位ベクトルであっても良い。
【0095】
また、基準方位は、一方から他方への向きを有するものでなくても良い。例えば、基準方位は、座標系における直線の傾き(例えば、A点とB点とを通る直線の傾き)を示すものであっても良いし、座標系における直線そのもの(例えば、A点とB点とを通る直線そのもの)を示すものであっても良いし、東西南北を基準として方向を示すもの(例えば、「南北方向」や「東西方向」等)であっても良い。
【0096】
基準方位算出部27が基準方位を算出した後、走行経路算出部29は、刈取部Hの刈幅中心を通ると共に基準方位に沿う方向の走行ラインを常時算出する。即ち、この走行ラインは、基準方位に基づいて算出される。
【0097】
そして、自動操舵を開始する条件(後述)が満たされると、自動操舵ボタンが操作可能状態になる。自動操舵ボタンがオペレータにより操作されると、所定の信号が自動操舵制御部28へ送られる。自動操舵制御部28は、当該信号を受信したことに応じて、その時点で算出されていた走行ラインを固定する。固定された走行ラインは、自動操舵目標ラインとなり、自動操舵制御部28から走行制御部24へ送られる。
【0098】
走行制御部24は、自車位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標と、自車方位算出部25から受け取ったコンバイン1の姿勢方位と、自動操舵制御部28から受け取った自動操舵目標ラインと、に基づいて、コンバイン1の走行を制御する。より具体的には、走行制御部24は、自動操舵目標ラインに沿った自動操舵走行によって刈取走行が行われるように、機体10の走行を制御する。
【0099】
なお、走行制御部24が、自動操舵目標ラインに代えて、基準方位に基づいて機体10の走行を制御するように構成されてもよい。この場合、走行制御部24は、コンバイン1の姿勢方位が基準方位に合うように、または、基準方位に対して平行となるように、機体10の走行を制御するように構成されてもよい。
【0100】
〔制御ルーチン〕
コンバイン1では、制御装置CUの制御部CSにより、起動ルーチン(
図3)、メインルーチン(
図4)、基準方位取得ルーチン(
図5)、自動操舵開始ルーチン(
図6)、及び自動操舵終了ルーチン(
図7)が実行される。以下、
図4-7のフローチャートを参照しながら順に説明する。
【0101】
〔起動ルーチン〕
制御部CSが、コンバイン1の起動キー(図示せず)の操作を継続的に監視する(S101:No)。
【0102】
起動キーがONされた場合(S101:Yes)、制御部CSは、状態フラグ記憶部51に記憶されている自動操舵中フラグの値を取得する(S102)。
【0103】
自動操舵中フラグがONの場合(S102:Yes)、制御部CSは、表示入力装置4の画面に「中断中の自動操舵を継続しますか?」の文字列、Yesボタン、及びNoボタンを表示させる(S103)。
【0104】
そして制御部CSは、自動操舵中フラグの値をOFFに変更して、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S104)。
【0105】
制御部CSは、表示入力装置4への操作入力を監視する(S105)。Yesボタンがタッチされる、すなわち、自動操舵の継続の操作入力が行われると(S105:Yes)、モード切替部26が走行制御部24を非自動操舵モードから自動操舵モードへ切り替える(S106)。
【0106】
自動操舵制御部28は、前回の自動操舵走行に用いられた基準方位を方位関連情報記憶部52から読み出して、次回の自動操舵走行に用いる基準方位として設定する(S107)。そして、制御部CSは、自動操舵開始ルーチン(
図6)のS408を開始する。
【0107】
自動操舵中フラグがOFFの場合(S102:OFF)、制御部CSは、状態フラグ記憶部51に記憶されているB点待機中フラグの値を取得する(S108)。
【0108】
B点待機中フラグの値がONの場合(S108:ON)、制御部CSは、表示入力装置4の画面に「中断中のB点登録を継続しますか?」の文字列、Yesボタン、及びNoボタンを表示させる(S109)。
【0109】
そして制御部CSは、B点待機中フラグの値をOFFに変更して、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S110)。
【0110】
制御部CSは、表示入力装置4への操作入力を監視する(S111)。Yesボタンがタッチされる、すなわち、B点登録の継続の操作入力が行われると(S111:Yes)、モード切替部26が走行制御部24を非自動操舵モードから自動操舵モードへ切り替える(S112)。
【0111】
自動操舵制御部28は、中断された基準方位取得ルーチンで登録されたA点座標を方位関連情報記憶部52から読み出す(S113)。そして制御部CSは、基準方位取得ルーチン(
図5)のS304を開始する。
【0112】
S105においてNoボタンがタッチされる、すなわち、自動操舵の非継続の操作入力が行われた場合(S105:No)、B点待機中フラグがOFFの場合(S108:OFF)、及びS111においてNoボタンがタッチされる、すなわち、B点登録の非継続の操作入力が行われた場合(S111:No)、制御部CSはメインルーチンを開始する。
【0113】
〔メインルーチン〕
制御部CSは、自動操舵モードへの切り替えの操作入力を待機する(S201:No)。例えば、制御部CSは、表示入力装置4の画面に「直進キープ」の文字が描かれたボタン(以下「直進キープボタン」と称する。)を表示させ、当該ボタンへのタッチ操作を待機する。直進キープボタンがタッチされる、すなわち、自動操舵モードへの切り替えの操作入力が行われると(S201:Yes)、モード切替部26が走行制御部24を非自動操舵モードから自動操舵モードへ切り替える(S202)。
【0114】
自動操舵制御部28は、方位関連情報記憶部52に記憶されている方位関連情報を参照して、前回の自動操舵モードにおける自動操舵走行で用いた方位関連情報(基準方位、A点座標、B点座標)があるか否か(方位関連情報記憶部52に記憶されているか否か)を判断する(S203)。
【0115】
前回の方位関連情報がある場合(S203:Yes)、自動操舵制御部28は、当該方位関連情報の生成時(A点座標及びB座標の取得時、及びそれらを用いた基準方位の生成時)と同じ基地局が、圃場に接地されているか否かを判断する(S204)。
【0116】
同じ基地局がある場合(S204:Yes)、自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面に「前回A/B」と記されたボタン(以下「前回ABボタン」と称する。)を表示させる(S205)。
【0117】
同じ基地局がない場合(S204:No)、自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面に「前回基準」と記されたボタン(以下「前回基準ボタン」と称する。)を表示させる(S206)。
【0118】
S205の終了後、S206の終了後、及び前回の方位関連情報がない場合(S203:Yes)、自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面に「A点登録」と記されたボタン(以下「A点登録ボタン」と称する。)を表示させる(S207)。
【0119】
自動操舵制御部28は、表示入力装置4への操作入力を監視する(S208:No,S209:No,S211:No)。
【0120】
A点登録ボタンがタッチされた場合(S208:Yes)、制御部CSは基準方位取得ルーチン(
図5)を開始する。
【0121】
前回基準ボタンがタッチされた場合(S209:Yes)、自動操舵制御部28は、方位関連情報記憶部52から前回の基準方位(基準方位関連情報)を読み出して、次の自動操舵走行に用いる基準方位として設定する(S210)。
【0122】
前回ABボタンがタッチされた場合(S211:Yes)、基準方位算出部27は、方位関連情報記憶部52から前回のA点座標及びB点座標(基準方位関連情報)を読み出して、読み出したA点座標及びB点座標に基づいて基準方位を算出する(S212)。自動操舵制御部28は、算出された基準方位を次の自動操舵走行に用いる基準方位として設定する。
【0123】
S210の終了後、及びS212の終了後、制御部CSは自動操舵開始ルーチン(
図6)を開始する。
【0124】
〔基準方位取得ルーチン〕
基準方位算出部27は、自車位置算出部21から受け取るコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、A点登録ボタンがタッチ操作された時点(メインルーチンのS208)でのコンバイン1の機体位置を算出する(S301)。
【0125】
基準方位算出部27は、S301で算出した位置座標をA点座標(方位関連情報)として、方位関連情報記憶部52に記憶させる(S302)。
【0126】
基準方位算出部27は、B点待機中フラグをONに変更して、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S303)。
【0127】
自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面にA点の位置を表示させ(S304)、コンバイン1の走行に伴って走行軌跡を表示入力装置4の画面に表示させる(S305)。
【0128】
基準方位算出部27は、B点登録可能状態であるか否かを判断する(S306)。B点登録可能状態とは、コンバイン1がA点から所定距離以上(例えば5m)離れている状態である。B点登録可能状態の条件は、これに限られない。例えば、衛星測位モジュール80及び自車位置算出部21によるRTK-GPS測位においてFIX解が得られていることが条件であってもよい。
【0129】
B点登録可能状態でない場合(S306:No)、ステップS304、S305が再び実行される。
【0130】
B点登録可能状態である場合(S306:Yes)、自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面に「B点登録」と記されたボタン(以下「B点登録ボタン」と称する。)を表示させ(S307)、B点登録ボタンのタッチを待機する(S308:No)。
【0131】
B点登録ボタンがタッチされた場合(S308:Yes)、基準方位算出部27は、自車位置算出部21から受け取るコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、B点登録ボタンがタッチ操作された時点でのコンバイン1の機体位置を算出する(S309)。
【0132】
自動操舵制御部28は、表示入力装置4の画面にA点の位置を表示させる(S310)。
【0133】
基準方位算出部27は、S309で算出した位置座標をB点座標(方位関連情報)として、方位関連情報記憶部52に記憶させる(S311)。
【0134】
基準方位算出部27は、B点待機中フラグをOFFに変更して、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S312)。
【0135】
基準方位算出部27は、S301で算出されたA点座標とS309で算出されたB点座標とに基づいて、基準方位を算出する(S313)。
【0136】
基準方位算出部27は、S313で算出された基準方位を、方位関連情報として方位関連情報記憶部52に記憶させる(S314)。そして、制御部CSは自動操舵開始ルーチンを開始する。
【0137】
〔自動操舵開始ルーチン〕
自動操舵制御部28は、主変速レバー19の操作位置を示す情報を取得し、主変速レバー19が前進用操作位置に位置しているか否かを判断する(S401)。主変速レバー19が前進用操作位置に位置していない場合(S401:Yes)、ステップS401が再び実行される。
【0138】
主変速レバー19が前進用操作位置に位置している場合(S401:Yes)、自動操舵制御部28は、副変速装置11bの状態を示す情報を取得し、副変速装置11bが作業用の変速状態(低速状態)であるか否かを判断する(S402)。副変速装置11bが作業用の変速状態(低速状態)でない場合(S402:No)、ステップS401が再び実行される。
【0139】
副変速装置11bが作業用の変速状態(低速状態)である場合(S402:Yes)、自動操舵制御部28は、自車位置算出部21からFIX解が得られているか否かを示す情報を取得し、FIX解が得られているか否かを判断する(S403)。FIX解が得られていない場合(S403:No)、ステップS401が再び実行される。
【0140】
FIX解が得られている場合(S403:Yes)、自動操舵制御部28は、刈取脱穀レバー43の操作位置を示す情報を取得し、刈取クラッチC2が入状態であるか否かを判断する(S404)。刈取クラッチC2が入状態でない場合(S404:No)、ステップS401が再び実行される。
【0141】
刈取クラッチC2が入状態である場合(S404:Yes)、自動操舵制御部28は、刈取部Hが作業位置に位置しているか否かを示す情報を取得し、刈取部Hが作業位置に位置しているか否かを判断する(S405)。刈取部Hが作業位置に位置していない場合(S405:No)、ステップS401が再び実行される。
【0142】
ここで、
図2に示すように、コンバイン1は、昇降検知部54を備えている。昇降検知部54は、刈取シリンダ15Aの伸縮状態を検知する。昇降検知部54による検知結果は、制御装置CUへ送られる。そして、自動操舵制御部28は、昇降検知部54による検知結果に基づいて、刈取部Hが作業位置に位置しているか否かを判定可能に構成されている。
【0143】
尚、本実施形態においては、刈取部Hの最上昇位置からの下降量が所定値以上であることが、刈取部Hが作業位置に位置していることに相当する。
【0144】
刈取部Hが作業位置に位置している場合(S405:Yes)、自動操舵制御部28は、自動操舵ボタン(図示せず)を操作可能状態に変更する(S406)。自動操舵ボタンは、例えば表示入力装置4に備えられた押しボタンである。この場合、操作可能状態であるときには押しボタンに内蔵された発光素子を発光させ、操作可能状態でないときには発光素子を消光させる。自動操舵ボタンは、例えば表示入力装置4の画面に表示された「自動操舵」と記されたボタンである。この場合、操作可能状態であるときにはボタンに記された文字を濃い色にし、操作可能状態でないときには薄い色にする。
【0145】
すなわち、S401-S405の全てがYesである場合に、S406が実行され、自動操舵走行が開始される。なお、S401-S405のうちの1つ以上が省略されてもよい。
【0146】
自動操舵制御部28は、自動操舵ボタンの操作を待機する(S407:No)。
【0147】
自動操舵ボタンが操作された場合(S407:Yes)、自動操舵制御部28は、その時点で走行経路算出部29により算出されていた走行ラインを自動操舵目標ラインとして決定する(S408)。
【0148】
走行制御部24は、S408で決定された自動操舵目標ラインに基づいて自動操舵走行を開始する(S409)。
【0149】
自動操舵制御部28は、自動操舵中フラグをONに変更し、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S410)。
【0150】
自動操舵制御部28は、現在の基準方位を方位関連情報として方位関連情報記憶部52に記憶させる(S411)。そして制御部CSは、自動操舵終了ルーチンを開始する。
【0151】
〔自動操舵終了ルーチン〕
自動操舵制御部28は、自動操舵ボタンの操作を待機する(S501)。
【0152】
自動操舵ボタンが操作されない場合(S501:No)、自動操舵制御部28は、主変速レバー19の操作位置を示す情報を取得し、主変速レバー19が中立位置又は後退用操作位置に位置しているか否かを判断する(S501)。
【0153】
主変速レバー19が中立位置又は後退用操作位置に位置していない場合(S502:No)、自動操舵制御部28は、副変速装置11bの状態を示す情報を取得し、副変速装置11bが走行用の変速状態(高速状態)であるか否かを判断する(S503)。
【0154】
副変速装置11bが走行用の変速状態(高速状態)でない場合(S503:No)、自動操舵制御部28は、自車位置算出部21からFLOAT解が得られているか否かを示す情報を取得し、FLOAT解が得られているか否かを判断する(S504)。
【0155】
FLOAT解が得られていない場合(S504:No)、自動操舵制御部28は、刈取脱穀レバー43の操作位置を示す情報を取得し、刈取クラッチC2が切状態であるか否かを判断する(S505)。
【0156】
刈取クラッチC2が切状態でない場合(S505:No)、自動操舵制御部28は、刈取部Hが非作業位置に位置しているか否かを示す情報を取得し、刈取部Hが非作業位置に位置しているか否かを判断する(S506)。尚、本実施形態においては、刈取部Hの最上昇位置からの下降量が所定値以下であることが、刈取部Hが非作業位置に位置していることに相当する。
【0157】
刈取部Hが非作業位置に位置していない場合(S506:No)、自動操舵制御部28は、刈取部Hが上昇操作されたか否かを示す情報を取得し、刈取部Hが上昇操作されたか否かを判断する(S507)。
【0158】
刈取部Hが上昇操作されていない場合(S507:No)、自動操舵制御部28は、エンジンEGの動作状態を示す情報を取得し、エンジンEGが停止しているか否かを判断する(S508)。エンジンEGが停止していない場合、ステップS501が再び実行される。
【0159】
エンジンEGが停止している場合(S508:Yes)、走行制御部24は自動操舵走行を終了し、モード切替部26は走行制御部24のモードを自動操舵モードから非自動操舵モードへ切り替える(S509)。
【0160】
制御部CSが、コンバイン1の起動キー(図示せず)の操作を継続的に監視する(S510:No)。
【0161】
起動キーがOFFされた場合(S510:Yes)、制御部CSはコンバイン1(制御装置CU)をシャットダウンする(S511)。そして自動操舵終了ルーチンは終了する。
【0162】
S501で自動操舵ボタンが操作された場合(S501:Yes)、自動操舵制御部28は、自動操舵中フラグをOFFに変更して、状態フラグ記憶部51に記憶させる(S512)。
【0163】
S512の終了後、及び、S502-S507でYesと判断された場合、走行制御部24は自動操舵走行を終了し、モード切替部26は走行制御部24のモードを自動操舵モードから非自動操舵モードへ切り替える(S513)。
【0164】
制御部CSが、コンバイン1の起動キー(図示せず)の操作を監視する(S514)。
【0165】
起動キーがOFFされた場合(S514:Yes)、制御部CSはコンバイン1(制御装置CU)をシャットダウンする(S511)。そして自動操舵終了ルーチンは終了する。
【0166】
起動キーがOFFされない場合(S514:No)、制御部CSはメインルーチンを開始する。
【0167】
〔コンバインの動作〕
本実施形態のコンバイン1では、モード切替部26が走行制御部24の制御モードを自動操舵モード(第1モード)から非自動操舵モード(第2モード)に切り替えて(S509、S513)、更に非自動操舵モード(第2モード)から自動操舵モード(第1モード)に切り替えた時に(S106、S112、S202)、走行制御部24が方位関連情報記憶部52(記憶部)に記憶された方位関連情報に基づく基準方位を用いて自動操舵走行を実行可能なように(S409)、制御装置CUが構成されている。
【0168】
また、走行制御部24が自動操舵走行を実行しているときに(S409)モード切替部26が走行制御部24の制御モードを自動操舵モード(第1モード)から非自動操舵モード(第2モード)に切り替えたことに応じて(S509、S513)、モード切替部26が表示入力装置4(入力装置)からの人為操作を待機し(S105)、自動操舵走行を継続する旨の人為操作を表示入力装置4(入力装置)から受け付けたことに応じて、モード切替部26が走行制御部24の制御モードを非自動操舵モード(第2モード)から自動操舵モード(第1モード)に切り替える(S106)と共に、走行制御部24が方位関連情報記憶部52(記憶部)に記憶された方位関連情報に基づく基準方位を用いて(S107)自動操舵走行を実行する(S409)ように、制御装置CUが構成されている。
【0169】
また、自動操舵走行を継続しない旨の人為操作を表示入力装置4(入力装置)から受け付けたことに応じて(S105:No)、モード切替部26が走行制御部24の制御モードを非自動操舵モード(第2モード)のままに保つと共に、モード切替部26が入力装置からの人為操作を待機し(S201)、再び自動操舵走行を行う旨の人為操作を表示入力装置4(入力装置)から受け付けたことに応じて(S201:Yes)、モード切替部26が走行制御部24の制御モードを非自動操舵モード(第2モード)から自動操舵モード(第1モード)に切り替える(S202)と共に、走行制御部24が方位関連情報記憶部52(記憶部)に記憶された方位関連情報に基づく基準方位を用いて(S210,S212)自動操舵走行を実行可能な状態となる(S409)ように、制御装置CUが構成されている。
【0170】
また、走行制御部24が自動操舵走行を実行していないときに(S501:Yes)モード切替部26が走行制御部24の制御モードを自動操舵モード(第1モード)から非自動操舵モード(第2モード)に切り替えたことに応じて(S513)、モード切替部26が表示入力装置4(入力装置)からの人為操作を待機し(S201)、再び自動操舵走行を行う旨の人為操作を表示入力装置4(入力装置)から受け付けたことに応じて(S201:Yes)、モード切替部26が走行制御部24の制御モードを非自動操舵モード(第2モード)から自動操舵モード(第1モード)に切り替えると共に(S202)、走行制御部24が方位関連情報記憶部52(記憶部)に記憶された方位関連情報に基づく基準方位を用いて(S210、S212)自動操舵走行を実行可能な状態となる(S409)ように、制御装置CUが構成されている。
【0171】
また、モード切替部26は、所定の切替条件が満たされたことに応じて(S502-508:Yes)、走行制御部24の制御モードを自動操舵モード(第1モード)から非自動操舵モード(第2モード)に切り替える(S509)ように、構成されている。切替条件が、エンジンEGが停止したことを含む(S508)。また、切替条件が、機体10に備えられた刈取部H(作業装置)が停止したことを含む(S505)。
【0172】
〔他の実施形態〕
(1)走行装置11は、ホイール式であっても良いし、セミクローラ式であっても良い。
【0173】
(2)制御装置CUの自車位置算出部21、走行制御部24、自車方位算出部25、モード切替部26、基準方位算出部27、自動操舵制御部28、走行経路算出部29、状態フラグ記憶部51、及び方位関連情報記憶部52は、一部又は全てがコンバイン1の外部に備えられてもよい。例えば、これらが、圃場の管理施設のコンピュータや管理サーバ、クラウドサーバ等に設けられてもよい。これら管理施設のコンピュータ、管理サーバ、クラウドサーバ等とコンバイン1とにより、自動操舵走行を実現するシステムが構築されてもよい。
【0174】
(3)コンバイン1が、自動操舵走行に加えて自動走行が可能なように構成されてもよい。
【0175】
(4)方位関連情報記憶部52に記憶される方位関連情報は、基準方位、A点座標、及びA点座標とB点座標の組のうち、1つであってもよいし複数であってもよい。方位関連情報記憶部52に、複数の基準方位が記憶されてもよいし、複数のA点座標が記憶されてもよいし、複数のA点座標とB点座標の組が記憶されてもよい。
【0176】
(5)オペレータからの人為操作を受け付ける装置としては、表示入力装置4の画面に表示されるボタン等であってもよいし、物理的に操作可能なボタン、スイッチ、レバー等であってもよいし、音声入力装置であってもよい。
【0177】
(6)上記の実施形態では、自動操舵を終了する条件として、自動操舵ボタンの操作(S501)、主変速レバー19の操作(S502)、副変速装置11bの状態(S503)、衛星測位の状態(S504)、刈取クラッチC2の状態(S505)、刈取部Hの位置(S506)及び操作の有無(S507)、エンジンEGの停止(S508)が例示された。自動操舵を終了する条件は、これらに限られない。例えば、脱穀装置13(作業装置の一例)が停止したことに応じて自動操舵を終了してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機等、種々の農作業機に利用可能である。
【符号の説明】
【0179】
10 :機体
11 :走行装置
24 :走行制御部
26 :モード切替部
EG :エンジン