(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
A62C35/20
(21)【出願番号】P 2021019036
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 大志
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214559(JP,A)
【文献】特開2018-086178(JP,A)
【文献】特開2018-175438(JP,A)
【文献】特開2018-158037(JP,A)
【文献】米国特許第04380269(US,A)
【文献】特開2017-056020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火栓装置であって、
先端側に消火用ノズルが設けられた消火用ホースと、
該消火用ノズルが収容され
、筐体部を有するノズル収容部と、
該消火用ホースが収容されるホース収容部と、を備え、
該ノズル収容部と、該ホース収容部とは、別体として
且つ離間して設けられ
、
該消火用ノズルは、該消火栓装置を操作する際に、該筐体部の底板側より該ノズル収容部から取り出し可能に設けられていることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
先端側に消火用ノズルが設けられた消火用ホースと、
該消火用ノズルが収容されるノズル収容部と、
該消火用ホースが収容されるホース収容部と、を備え、
該ノズル収容部と、該ホース収容部とは、別体として且つ離間して設けられ、
該ノズル収容部の底面には、常時開放された開口部が設けられており、
該消火用ノズルは、該開口部より該ノズル収容部から取り出し可能に設けられ、
該開口部には、塵芥除け部が設けられていることを特徴とす
る消火栓装置。
【請求項3】
前記筐体部の底板には、常時開放された開口部が設けられており、
前記消火用ノズルは、
前記消火栓装置を操作する際に、該開口部より
前記ノズル収容部から取り出し可能に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルに設置される消火栓装置がある。この様な消火栓装置は、トンネルの壁面を箱抜きして作成されたスペースに埋め込む形で設置されていたが、近年、シールド工法によってトンネルの掘削が行われる様になっており、この場合、掘削と同時に該トンネルの内壁がセグメントによって構築されるため、トンネルの壁面を箱抜きして消火栓装置の設置スペースを確保することが困難となる。
【0003】
そのため、シールド工法によって掘削されたトンネルにおいては、消火栓装置は、トンネルの壁面に埋め込まず、トンネル内の空いているスペース、例えば、監査路上に設置されることとなる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネルの監査路は、元々、比較的狭い通路である上に、該監査路上に消火栓装置等の設備が設置されることで、益々、監査路が狭くなってしまうため、該監査路上に設置される消火栓装置等の設備は、できるだけ薄型化することが望まれている。
【0006】
その一方、従来の消火栓装置においては、監査路上に設置される筐体を有するものである。該筐体には、消火用ホースが収納されるため、該筐体内に消火用ホースを収容可能な容積を確保せざるを得ないため、消火栓装置の薄型化には、自ずと限界があるものであった。
【0007】
そこで、本発明は、少なくとも監査路上に設置される設備を、従来の消火栓装置よりも薄型化可能なものとし、従来の消火栓装置と比較して、該監査路をより広く確保可能な消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、消火栓装置であって、先端側に消火用ノズルが設けられた消火用ホースと、該消火用ノズルが収容され、筐体部を有するノズル収容部と、該消火用ホースが収容されるホース収容部と、を備え、該ノズル収容部と、該ホース収容部とは、別体として且つ離間して設けられ、該消火用ノズルは、該消火栓装置を操作する際に、該筐体部の底板側より該ノズル収容部から取り出し可能に設けられていることを特徴とする消火栓装置である。
【0009】
又、本発明は、先端側に消火用ノズルが設けられた消火用ホースと、該消火用ノズルが収容されるノズル収容部と、該消火用ホースが収容されるホース収容部と、を備え、該ノズル収容部と、該ホース収容部とは、別体として且つ離間して設けられ、該ノズル収容部の底面には、常時開放された開口部が設けられており、該消火用ノズルは、該開口部より該ノズル収容部から取り出し可能に設けられ、該開口部には、塵芥除け部が設けられていることを特徴とする消火栓装置である。
【0010】
更に、本発明は、前記筐体部の底板に、常時開放された開口部が設け、前記消火用ノズルを、前記消火栓装置を操作する際に、該開口部より前記ノズル収容部から取り出し可能に設けることも可能である。
【0011】
尚、本発明において、消火栓装置の上下方向は、消火栓装置が設置された状態で定められるものとする。又、本発明において、「別体」には、ノズル収容部とホース収容部とが、別の部材によって、間隔をあけて連結されているものが含まれるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ノズル収容部とホース収容部とを設け、ノズル収容部とホース収容部とを別体としたため、少なくとも監査路上に設置される設備を、従来の消火栓装置よりも薄型化可能であり、従来の消火栓装置と比較して、該監査路をより広く確保可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】本発明の実施形態におけるノズル収容部の底面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるホース収容部の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態の変形例を示す図であり、
図2のV-V断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を
図1乃至
図4に基づき説明する。消火栓装置1は、例えば、シールド工法によって掘削されたトンネルTの監査路(監視員通路ともいう)T1上に設置される。
【0015】
トンネルTは、略円筒状の壁面T2が設けられており、床版T3によって、壁面T2内が上部空間T4と下部空間T5とに区画されている。上部空間T4には、監査路T1及び道路面T6が設けられており、監査路T1は、道路面T6よりも一段高い位置に設けられている。下部空間T5には、消火栓装置1等に配水するための配水本管(図示せず)等が設けられる。
【0016】
消火栓装置1は、先端側に消火用ノズル20が設けられた消火用ホース2と、ノズル収容部3と、ホース収容部4と、を備えており、ノズル収容部3は、ホース収容部4とは別体に設けられている。本実施形態において、ノズル収容部3とホース収容部4とは離間して設けられており、ノズル収容部3が、監査路T1上、例えば、監査路面T1aの上方、に設けられると共にホース収容部4が、監査路T1に埋め込まれる様に設置されている。
【0017】
又、ノズル収容部3の体積は、ホース収容部4の体積よりも小さくなる様に設けられることが好ましく、より好ましくは、ノズル収容部3の体積が、ホース収容部4の体積の50%以下となる様に設けられる。ノズル収容部3の体積が、ホース収容部4の体積の50%以下となる様に設けることで、消火栓装置1の設置をより容易に行うことが可能となる。本実施形態においては、ノズル収容部3の体積は、ホース収容部4の体積の約34%となっている。
【0018】
ノズル収容部3は、消火用ノズル20を収容可能となっており、例えば、壁面T2側の監査路T1上に位置する様に設けられている。ノズル収容部3は、筐体部30を有している。筐体部30には、表示灯31、発信機32が設けられていると共にその内方に、消火用ノズル20を保持するための保持部33及び後述する消火栓弁を開閉するための開閉手段の一例であるレバー部34が設けられている。
【0019】
又、筐体部30は、ノズル収容部3の底面に相当する筐体部30の底板30aには、開口部30bが設けられており、ノズル収容部3の前面に相当する筐体部30の前板30cの少なくとも一部には、透明又は透光性のある部材で形成された窓部30dが設けられている。
【0020】
窓部30dは、収容された消火用ノズル20がノズル収容部3の外部より視認可能とするために設けられている。本実施形態においては、窓部30dは、レバー部34についても、ノズル収容部3の外部より視認可能となる様に設けられている。この様にすることで、消火栓装置1の使用者が、消火用ノズル20やレバー部34をより認識し易い様になっている。
【0021】
開口部30bは、消火用ノズル20をノズル収容部3外へと取り出し可能とするために設けられており、常時開放されている。即ち、消火用ノズル20は、ノズル収容部3の底面側よりノズル収容部3から取り出し可能となっていることとなり、火災時等に消火用ノズル20は、ノズル収容部3より下方に向かって引き出されることになる。本実施形態において、開口部30bには、外部より塵芥がノズル収容部3内に入り込むのを防止するための塵芥除け部の一例であるゴムスリット30eが更に設けられている。
【0022】
ホース収容部4は、消火用ホース2を収容可能に設けられている。ホース収容部4は、略箱状に設けられており、本体部40と、天板41と、を有している。本体部40は、消火用ホース2を巻いた状態で収容可能に設けられており、消火用ホース2の基端とトンネルTの前記配水本管から延びる一次側配管5とを接続するための貫通孔40aが側板40bに設けられている。尚、一次側配管5には、自動排水弁50並びにその前後に併設されたメンテナンス弁(図示せず)、調圧弁(図示せず)及び消火栓弁(図示せず)等の各種弁が併設されており、本実施形態においては、該各種弁は、何れも下部空間T5に配設されている。
【0023】
天板41には、ホース収容部4の天井部分を構成しており、扉部41aが設けられている。扉部41aは、例えば、消火活動後に、ホース収容部4から引き出された消防用ホース9を、再度、ホース収容部4に収納するために設けられている。扉部41aには、消火用ホース2をホース収容部4外に引き出すためのホース引出口41bが設けられており、消火用ホース2があっても扉部41aを開閉可能となっている。本実施形態において、扉部41aは、本体部40とは逆側に回動可能になっている。
【0024】
このため、本実施形態において、消火用ホース2は、常時は、ホース引出口41bから本体部40外に出て、開口部30bに向かって延び、開口部30bから筐体部30内に入って、消火用ノズル20まで延在する様になっていることとなる。
【0025】
又、ノズル収容部3の下方には、ホースガイド部6及び保護カバー7が設けられている。本実施形態においては、ホースガイド部6及び保護カバー7は、ノズル収容部3の下方であって、ホース収容部4の上方、即ち、ノズル収容部3とホース収容部4との間に設けられている。
【0026】
ホースガイド部6は、消火用ホース2に消火用水が供給された際に、消火用ホース2を円滑に引き出し可能とするために及び/又はその水圧等によって、消火用ホース2が暴れてしまうことを防ぐために設けられている。本実施形態において、ホースガイド部6は、ノズル収容部3を固定するための固定具を兼ねており、ガイド体60及びノズル収容部3の底板30a及びホース収容部4の天板41に固定された柱体61を有している。柱体61は、前面側が略クランク形状に、背面側が略棒状に形成されており、ガイド体60は、前面側に位置する柱体61を橋絡する様に設けられている。
【0027】
保護カバー7は、消火用ホース2の外部に露出している部分を、火災の炎等から保護するために設けられており、それ自体が耐熱性を有している。本実施形態において、保護カバー7は、ホースガイド部6と天板41との間に設けられており、ホースガイド部6の柱体61を取り囲む様に立設されている。
【0028】
消火栓装置1の操作する際には、(1)消火用ノズル20を、保持部33より取り外し、(2)消火用ノズル20を、開口部30bよりノズル収容部3外へと取り出し、(3)消火用ノズル20を持って、消火用ホース2を、ホースガイド部6の上方を通して、道路面T6方向へと消火用ホース2を引き出し。(4)その後、レバー部34を操作することで前記消火栓弁が開弁して、消火用ノズル20より放水すればよい。
【0029】
本実施形態の消火栓装置1においては、ノズル収容部3とホース収容部4とを分離したことにより、ホース収容部4を監査路T1に埋め込むことが可能となり、又、監査路T1上に設置されるノズル収容部3は、従来の消火栓装置と比較して、より薄型化が可能であるため、監査路T1をより広く確保することが可能となる。
【0030】
又、本実施形態に様にノズル収容部3とホース収容部4とを分離且つ離間した副次的な効果として、以下の様な効果が挙げられる。消火栓装置1を使用者は、主に、消防士等の消火活動に熟達した者ではない一般人であるため、消火栓装置は、可能な限り操作が簡便あることが望ましい。
【0031】
従来の消火栓装置においては、先ず、消火栓扉を開扉しなければ、消火用ホースを消火栓装置から引き出すことができないものであったが、本実施形態の消火栓装置1においては、ノズル収容部3とホース収容部4とを分離且つ離間したことで、開口部30bを設けることが可能となり、事前に何ら操作をすることなく、消火用ホース2を引き出すことが可能な状態となっているため、消火栓装置1を直感的に操作することが可能であり、従来の消火栓装置と比較して操作がより簡便なものとなっている。
【0032】
又、本実施形態においては、ノズル収容部3に窓部30dが設けられているので、消火用ノズル20及びレバー部34の位置を把握し易くなっているため更に従来の消火栓装置と比較して操作がより簡便なものとなっている。
【0033】
本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
(A)上記実施形態においては、ホースガイド部6により、ノズル収容部3を監査路T1上に固定したが、ノズル収容部3の固定箇所及び固定手段は、適宜選択可能であり、例えば、ノズル収容部3を壁面T2に固定することも可能であり、その際に、壁面T2に設けられたインサートアンカ(図示せず)等を利用して固定するものとしてもよい。この場合、ホースガイド6は固定具を兼ねる必要がなく、ノズル収容部3の下方のみ、もしくはホース収容部4の上方のみに形成される様にすることも可能である。
【0035】
(B)上記実施形態においては、ホース収容部4を監査路T1に埋め込むように設置したが、ホース収容部4の設置場所は、監査路T1の通行の妨げになれなければ適宜選択可能であり、例えば、下部空間T5に設置してもよく、又、壁面T2に取り付けてもよい。この場合、ホース収容部4とノズル収容部3との両方を壁面T2に分離して取り付けることも可能であり、又、ホース収容部4を壁面T2に、ノズル収容部3を監査路面T1a上に設けることも可能である。
【0036】
(C)上記実施形態においては、自動排水弁50をホース収容部4外に設けたが、自動排水弁50をホース収容部4内に設けることも可能である。この場合、例えば、自動排水弁50を貫通孔40aの近傍に設けることが可能である(
図5を参照)。
【0037】
(D)上記実施形態においては、保護カバー7は、固定式であり、消火用ホース2を引き出すための開口部、例えば、ホースガイド部6のガイド体60上方の開口は覆っていないものとなっているが、保護カバー部7を、該開口部も覆う様に設け、消火栓装置1を操作する際に、該開口部を開放可能とするための扉部(図示せず)を保護カバー7に設けてもよい。
【0038】
(E)ノズル収容部3の高さ位置調整手段(図示せず)を設けてもよい。該高さ位置調整手段としては、柱体61を伸縮可能とし、柱体61そのものを該高さ位置調整手段としてもよく、又、壁面T2にノズル収容部3の固定具を取り付け、該固定具をスライド式にする等して、該固定具を該高さ位置調整手段としてもよい。
【0039】
(F)上記実施形態においては、ノズル収容部3を壁面T2側に設けたが、道路面T6側に設けることも可能である。又、ホース引出口41bについても道路面T6側に設けることも可能であり、同様に、保護カバー7についても道路面T6側に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 消火栓装置 2 消火用ホース 20 消火用ノズル
3 ノズル収容部 30 筐体部 30a 底板
30b 開口部 30c 前板 30d 窓部
30e ゴムスリット 31 表示灯 32 発信機
33 保持部 34 レバー部 4 ホース収容部
40 本体部 40a 貫通孔 40b 側板
41 天板 41a 扉部 41b ホース引出口
5 一次側配管 50 自動排水弁 6 ホースガイド部
60 ガイド体 61 柱体 7 保護カバー
T トンネル T1 監査路 T1a 監査路面
T2 壁面 T3 床版 T4 上部空間
T5 下部空間 T6 道路面