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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20250307BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250307BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20250307BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20250307BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20250307BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20250307BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/06
A61K8/29
A61K8/81
A61Q17/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021019991
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122633
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 紗希
(72)【発明者】
【氏名】永井 翼
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-120682(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221606(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105040(WO,A1)
【文献】特開2007-246454(JP,A)
【文献】国際公開第2020/032246(WO,A1)
【文献】特開2020-063228(JP,A)
【文献】特開2017-095361(JP,A)
【文献】特表2012-519166(JP,A)
【文献】Balancing Oshiroi Milk C SPF 50+ PA++++,ID 7661951,Mintel GNPD[online],2020年05月,[検索日2022.03.17]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)~(d)を含み:
(a)平均粒子径が500~1500nmであり、かつ表面疎水処理された金属酸化物粒子、
(b)疎水変性アルキルセルロース、
(c)水相増粘剤、及び
(d)油分、
前記金属酸化物粒子が、前記油分中に分散されており、かつ
HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量が、1.0質量%未満である、
水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(e)ポリヒドロキシステアリン酸を更に含む、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子の含有量が、1.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記疎水変性アルキルセルロースの含有量が、0.05質量%以上1.0質量%以下であり、
前記水相増粘剤の含有量が、0.05質量%以上3.0質量%以下であり、かつ
前記油分の含有量が、5.0質量%以上40.0質量%以下である、
請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記金属酸化物粒子が、酸化チタンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記疎水変性アルキルセルロースが、疎水変性ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記水相増粘剤が、ビニル系高分子又はアクリル系高分子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記油分の55質量%以上が極性油である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
(f)イオン界面活性剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
(g)水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項10】
赤外線防御用化粧料である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料、特に赤外線防御用水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光に対する皮膚防御の観点から、紫外線防御化粧料が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤を含み、高い紫外線防御能(SPF)を持ちながら、独特のみずみずしい使用感触を有する水中油型乳化化粧料として、(A)0.05~1質量%の疎水変性アルキルセルロース;(B)5~40質量%の油分;(C)2.5~30質量%の疎水性表面を有する紫外線散乱剤;及び(D)耐塩性の低い水相増粘剤を含有し、(C)紫外線散乱剤が油相中に分散していることを特徴とする水中油型乳化化粧料が開示されている。
【0004】
一方で、近年では、健康意識が高まり、紫外線(波長:約290~約400nm)のみならず、赤外線(波長:約750nm~約1mm)もカットすることで太陽光の熱さを軽減し、皮膚の光老化を防げる化粧料が求められている。
【0005】
例えば、特許文献2では、紫外線遮断効果を持ちながら赤外線の遮熱効果を向上させた遮熱化粧料として、平均粒径5~100nmの酸化チタン(A)と平均粒径300~3000nmの酸化チタン(B)とが、(A):(B)=1:9~9:1(重量比)の割合で配合されていることを特徴とする、遮熱化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-120682号公報
【文献】特開2013-194041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献2に開示されている遮熱化粧料は、ノニオン界面活性剤の配合量が多いため、みずみずしい使用感触を得ることが難しい問題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、赤外線防御効果に優れて、かつ独特のみずみずしい使用感触を有する化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
【0010】
〈態様1〉
下記成分(a)~(d)を含み:
(a)平均粒子径が500~1500nmであり、かつ表面疎水処理された金属酸化物粒子、
(b)疎水変性アルキルセルロース、
(c)水相増粘剤、及び
(d)油分、
前記金属酸化物粒子が、前記油分中に分散されており、かつ
HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量が、1.0質量%未満である、
水中油型乳化化粧料。
〈態様2〉
(e)ポリヒドロキシステアリン酸を更に含む、態様1に記載の化粧料。
〈態様3〉
前記金属酸化物粒子の含有量が、1.0質量%以上30.0質量%以下であり、
前記疎水変性アルキルセルロースの含有量が、0.05質量%以上1.0質量%以下であり、
前記水相増粘剤の含有量が、0.05質量%以上3.0質量%以下であり、かつ
前記油分の含有量が、5.0質量%以上40.0質量%以下である、
態様1又は2に記載の化粧料。
〈態様4〉
前記金属酸化物粒子が、酸化チタンである、態様1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様5〉
前記疎水変性アルキルセルロースが、疎水変性ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、態様1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様6〉
前記水相増粘剤が、ビニル系高分子又はアクリル系高分子を含む、態様1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様7〉
前記油分の55質量%以上が極性油である、態様1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様8〉
(f)イオン界面活性剤を更に含む、態様1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様9〉
(g)水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスを更に含む、態様1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
〈態様10〉
赤外線防御用化粧料である、態様1~9のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、赤外線防御効果に優れて、かつ独特のみずみずしい使用感触を有する化粧料を提供することができる。
【0012】
なお、本発明において、「独特のみずみずしい使用感触」とは、化粧料を手指等で皮膚に適用した際に、急激に粘度低下して崩れるような触感があり、それと同時に皮膚に対して広がる非常にみずみずしい感触を与えることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《水中油型乳化化粧料》
本発明の水中油型乳化化粧料(以下、単に「本発明の化粧料」とも称する)は、
下記成分(a)~(d)を含み:
(a)平均粒子径が500~1500nmであり、かつ表面疎水処理された金属酸化物粒子、
(b)疎水変性アルキルセルロース、
(c)水相増粘剤、及び
(d)油分、
金属酸化物粒子が、油分中に分散されており、かつ
HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量が、1.0質量%未満である。
【0015】
本発明の化粧料は、特有の構成成分を含むこと、及びHLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量を1.0質量%未満に抑えることによって、本発明の効果を発揮すること、すなわち、赤外線防御効果に優れて、かつ独特のみずみずしい使用感触を有することができる。
【0016】
上述した特許文献1の化粧料は、主に紫外線をカットすることを目的としており、平均粒子径が比較的に小さい紫外線散乱剤を使用している。このため、特許文献1では、乳化作用の強いノニオン界面活性剤を使用せずに、比較的に乳化作用が弱い疎水変性アルキルセルロースを使用し、平均粒子径が比較的に小さい紫外線散乱剤を含有する油分を乳化することによって、内油相に疎水性粉末が分散している水中油型乳化化粧料を得ることが開示されている。
【0017】
これに対して、平均粒子径が比較的に大きい金属酸化物粒子を含有する油分を乳化することは難しく、一般的には、比較的に乳化作用が強い界面活性剤を多量に配合することが知られている。例えば特許文献2では、含有量1質量%以上の多量のノニオン界面活性剤を、乳化剤として用いて、内油相に疎水性粉末が分散している水中油型乳化化粧料を得ることが開示されている。
【0018】
一方で、本発明者らは、上述した従来の固定観念に捉われず、その鋭意研究によって、乳化が難しいとされていた「平均粒子径が比較的に大きい金属酸化物粒子を含有する油分」の系に対しても、適度な乳化力を有する疎水変性アルキルセルロースを用いて、内油相に疎水性粉末が分散している水中油型乳化化粧料を得ることに成功し、本発明に至った。
【0019】
理論に限定されるものではないが、これは、乳化作用の強い界面活性剤(すなわち、HLB値が10以上のノニオン界面活性剤)を用いる場合には、安定な界面膜を形成可能な一方で、乳化粒子のサイズは比較的小さくなる。したがって、平均粒子径が比較的に大きい金属酸化物粒子は、この乳化粒子のサイズと比較的に近くなり、乳化粒子(油滴)から脱離しやすくなることが考えられる。これに対して、本発明では、疎水変性アルキルセルロースのような比較的に乳化作用が弱い界面活性剤を用いることによって、乳化粒子が比較的大きくなる。したがって、この場合には、平均粒子径が比較的に大きい金属酸化物粒子は、乳化粒子から脱離しにくくなることによると考えられる。
【0020】
このように、本発明は、HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量を1.0質量%未満に抑えることによって、乳化粒子径のサイズを所望以上に小さくすることなく、安定な内油相に疎水性粉末が分散している水中油型乳化化粧料を得ることだけではなく、多量のノニオン界面活性剤に由来するべたつきの使用感触も抑えることができ、独特のみずみずしい使用感触を得ることができた。
【0021】
なお、本発明の化粧料において、HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量は、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、又は0質量%であってよい。
【0022】
〈(a)金属酸化物粒子〉
本発明の化粧料に含まれる金属酸化物粒子(以下、単に「本発明の金属酸化物粒子」とも称する)は、平均粒子径が500~1500nmであり、かつ表面疎水処理された金属酸化物粒子である。
【0023】
本発明の金属酸化物粒子は、平均粒子径が500~1500nmであるため、赤外線、特に近赤外線を防御する機能を有する。
【0024】
なお、本発明において、「平均粒子径」とは、一次粒子の平均粒子径を指す。
【0025】
また、本発明において、平均粒子径は、SEM又はTEMによって観察される一次粒子の投影面積円相当径として算出することができる。
【0026】
本発明の金属酸化物粒子は、表面疎水処理されている。ここで、疎水化処理は、疎水化される公知の表面処理剤を用いて行えばよいが、例えば、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、油剤処理、N-アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、イソスタアリン酸処理、金属石鹸処理、アミノ酸処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理、シラン化合物処理、シラザン化合物処理等が挙げられる。これら処理の中では、分散安定性等の観点から、シリコーン又はシリコーン樹脂による処理、シラン化合物又はシラザン化合物による処理、イソステアリン酸処理が好ましい。
【0027】
本発明の金属酸化物粒子は、表面疎水処理された酸化チタン、表面疎水処理された酸化亜鉛、表面疎水処理された酸化セリウム、又はこれらの混合物等であってもよいが、赤外線領域の遮蔽効果を向上させる観点からは、表面疎水処理された酸化チタンであることが好ましい。
【0028】
本発明の金属酸化物粒子の形状は、特に限定されず、例えば球状、板状、棒状、紡錘状、針状、不定形状等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明の金属酸化物粒子としては、市販されたものを用いてよい。
【0030】
また、本発明の金属酸化物粒子としては、金属酸化物粒子がポリヒドロキシステアリン酸等の分散剤で分散された状態の市販品を用いてもよい。
【0031】
本発明の化粧料において、金属酸化物粒子の含有量は、特に限定されず、例えば1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、5.0質量%以上、5.5質量%以上、6.0質量%以上、6.5質量%以上、7.0質量%以上、7.5質量%以上、8.0質量%以上、8.5質量%以上、9.0質量%以上、9.5質量%以上、又は10.0質量%以上であってもよく、また、30.0質量%以下、20.0質量%以下、又は10.0質量%以下であってもよい。なお、金属酸化物粒子がポリヒドロキシステアリン酸等の分散剤に分散された状態である場合には、ここでいう金属酸化物粒子の含有量は、その固形分の本発明の化粧料における含有量を指す。
【0032】
〈(b)疎水変性アルキルセルロース〉
本発明の化粧料に含まれる疎水変性アルキルセルロースは、「HLB値が10以上のノニオン界面活性剤」に属さないものとし、通常、「高分子界面活性剤」に分類される。
【0033】
本発明において、疎水変性アルキルセルロースは、炭素数14~22のアルキル基により疎水変性されたアルキルセルロースを指す。この疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に疎水性基である長鎖アルキル基を導入した化合物であり、下記一般式(I)で表される。
【0034】
【化1】
[式中、Rは、同一でも異なってもよく、水素原子、炭素原子数が1~4のアルキル基、基-[CHCH(CH)O]-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である)、基-CHCHOH、及び、基-CHCH(OH)CHOR’(式中、R’は、炭素原子数が14~22のアルキル基である)から選ばれる1種以上の基であるが、基-CHCH(OH)CHOR’を必ず含むものとする。また、Aは、基-(CH-(qは、1~3の整数であり、好適には1である)であり、nは、100~10000、好適には500~5000の整数である。]
【0035】
式(I)のの疎水変性アルキルセルロースの製造方法は、概ね、基となる水溶性セルロースエーテル誘導体、具体的には、メチルセルロース(Rが水素原子又はメチル基)、エチルセルロース(Rが水素原子又はエチル基)、プロピルセルロース(Rが水素原子又はプロピル基)、ブチルセルロース(Rが水素原子又はブチル基)、ヒドロキシプロピルセルロース[Rが水素原子又はヒドロキシプロピル基(基-[CHCH(CH)O]-H(式中、mは、1~5、好適には1~3の整数である))]、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Rが水素原子、メチル基、又はヒドロキシプロピル基(同上))等に対して、炭素数14~22の長鎖アルキル基導入用化合物、具体的には、下記式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルを、アルカリ触媒の存在下で接触させて得ることができる。
【0036】
【化2】
[式中、R’は、炭素原子数が14~22のアルキル基である。]
【0037】
本発明の疎水変性アルキルセルロースに導入される基-CHCH(OH)CHOR’含有量は、疎水変性アルキルセルロース全体に対して0.1~5.0質量%程度であるのが好ましい。このような含有率とするためには、上記水溶性セルロースエステル誘導体と長鎖アルキルグリシジルエーテルの反応の際のモル比や、反応時間、アルカリ触媒の種類等を適宜選択して製造すればよい。上記反応後、反応物の中和・濾過・洗浄・乾燥・篩分等の精製工程を行ってもよい。
【0038】
なお、上記の水溶性セルロースエーテル誘導体のうち、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択することが好適である(これにより、式(I)におけるRは、水素原子、メチル基、基-[CHCH(CH)O]H、及び、基-CHCH(OH)CHOR’の4種のいずれかの基となり、基Aのqが1となり、当該Aはメチレン基となる)。
【0039】
更に、式(II)の長鎖アルキルグリシジルエーテルにおけるR’は、炭素数14~22のアルキル基、好ましくは炭素数14~20のアルキル基、更に好ましくは炭素数18のステアリル基(-C1837)である。アルキル基R’の炭素数が14未満又は23以上では、得られた疎水変性アルキルセルロースによる乳化安定性が十分でなくなる。
【0040】
疎水変性アルキルセルロースの重量平均分子量は、100,000~1000,000が好ましく、より好ましくは300,000~800,000、更に好ましくは550,000~750,000である。
【0041】
本発明において、疎水変性アルキルセルロースとして、疎水変性ヒドロキシプロピルメチルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、より具体的には、ステアロキシヒドロキシプロピルセルロースを用いるのが好ましい。また、疎水変性アルキルセルロースとして、市販品を使用することもでき、例えば、サンジェロース90L(表示名:疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース;大同化成工業(株)製)、Natrosol Plus 330cs(Ashland社製)、Polysurf 67cs(Ashland社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の化粧料において、疎水変性アルキルセルロースの含有量は、特に限定されず、例えば0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、0.40質量%以上、0.45質量%以上、又は0.50質量%以上であってもよく、また1.0質量%以下、0.80質量%以下、0.50質量%以下、又は0.30質量%以下であってもよい。
【0043】
〈(c)水相増粘剤〉
本発明の化粧料に含まれる水相増粘剤は、水相を増粘する機能を有する増粘剤であって、特に、化粧料に一般に配合される範囲の濃度の電解質の存在によって粘度低下を生ずるものであってよい。また、本発明において、このような電解質濃度の上昇により粘度低下が生じる水相増粘剤を「耐塩性の低い水相増粘剤」とも称する。このような耐塩性の低い増粘剤は、従来から化粧料等において水相の粘度調整をする目的で配合されている水溶性増粘剤から選択される。
【0044】
具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテート共重合物、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリル酸アルカノールアミン、アルキルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレート共重合物、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウム、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー等のアクリル系高子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
ただし、耐塩性の低い増粘剤の中でも、ポリマー鎖の絡み合いによって増粘するタイプの増粘剤に比較して、水相中で水膨潤性のミクロゲルを形成して、膨潤したミクロゲル粒子同士の摩擦により増粘するタイプの増粘剤を用いると、化粧料を肌になじませた際のぬるつきを更に抑制できるので好ましい。これは、乳化剤として配合している疎水変性アルキルセルロースがポリマー鎖の絡み合いによる増粘作用も有するため、同じ機構で増粘するタイプの増粘剤を更に配合すると、当該増粘作用が助長されてぬるつきの原因となりうるからである。
【0046】
本発明の化粧料において、水相増粘剤の含有量は、特に限定されず、例えば0.05質量%以上、0.07質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.17質量%以上、0.20質量%以上、0.25質量%以上、0.27質量%以上、0.275質量%以上、0.30質量%以上、0.35質量%以上、0.37質量%以上、0.40質量%以上、0.45質量%以上、0.47質量%以上、又は0.50質量%以上であってもよく、また3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下であってもよい。
【0047】
〈(d)油分〉
本発明の化粧料に含まれる油分は、化粧料等で通常用いられている油性成分から選択される1種又は2種以上とすることができる。
【0048】
本発明の化粧料において、油分の含有量は、特に限定されず、例えば5.0質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、8.0質量%以上、9.0質量%以上、10.0質量%以上、11.0質量%以上、12.0質量%以上、13.0質量%以上、14.0質量%以上、15.0質量%以上、又は16.0質量%以上であってもよく、また40.0質量%以下、30.0質量%以下、又は20.0質量%以下であってもよい。
【0049】
本発明において、油分は、特に、極性油を含むことが好ましい。例えば、本発明の化粧料において、油分の55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80重量%以上が極性油である場合には、乳化安定性を更に向上させることができる。また、油分に占める極性油の割合の上限値は特に限定されず、例えば、極性油が90%以上を占めてもよく、油分の100%が極性油であってもよい。
【0050】
なお、本発明において、「極性油」は、化粧料に一般に使用される油分の中で極性が高いものであれば特に限定されないが、例えば、比誘電率が約5以上、好ましくは約10以上の油が好ましく用いられる。
【0051】
極性油の代表例としては、エステル油及び紫外線吸収剤が挙げられる。また、従来の化粧料より多量の極性油を含んでいることにより、例えば高極性の香料等も安定に配合することができる。
【0052】
(エステル油)
本発明において、極性油として使用されうるエステル油の具体例には、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリエチルヘキサノイン(トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン)、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、及びクエン酸トリエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
(紫外線吸収剤)
本発明において、極性油として使用されうる紫外線吸収剤の具体例には、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリラート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。また、以下にこれらのいくつかの具体例及び商品名等を例示的に説明する。
【0054】
安息香酸誘導体としては、例えばパラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA(例えば「エスカロール507」;ISP社製)、グリセリルPABA、PEG-25-PABA(例えば「ユビナールP25」;BASF社製)、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル(例えば「ユビナールAプラス」)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート(「ユーソレックス(Eusolex)HMS」;ロナ/EMインダストリーズ社製)、エチルヘキシルサリチレート(例えば「ネオ・ヘリオパン(NeoHeliopan)OS」;ハーマン・アンド・レイマー社製)、ジプロピレングリコールサリチレート(例えば「ディピサル(Dipsal)」;スケル社製)、及びTEAサリチラート(例えば「ネオ・ヘリオパンTS」;ハーマン・アンド・レイマー社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
ケイ皮酸誘導体としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(例えば「パルソールMCX」;ホフマン-ラ・ロシュ社製)、メトキシケイ皮酸イソプロピル、メトキシケイ皮酸イソアミル(例えば「ネオ・ヘリオパンE1000」; ハーマン・アンド・レイマー社製)、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイ皮酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、及びジ-(2-エチルヘキシル)-4'-メトキシベンザルマロネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン(例えば「パルソール1789」)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレン(例えば「ユビナールN539」;BASF社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1(例えば「ユビナール400」;BASF社製)、ベンゾフェノン-2(例えば「ユビナールD50」;BASF社製)、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン(例えば「ユビナールM40」;BASF社製)、ベンゾフェノン-4(例えば「ユビナールMS40」;BASF社製)、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6(例えば「ヘリソーブ(Helisorb)11」;ノルクアイ社)、ベンゾフェノン-8(例えば「スペクトラ-ソーブ(Spectra-Sorb)UV-24」;アメリカン・シアナミド社製)、ベンゾフェノン-9(例えば「ユビナールDS-49」;BASF社製)、及びベンゾフェノン-12等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリル(Mexoryl)SD」;シメックス社製)、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSL」;シメックス社製)、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム(例えば「メギゾリルSO」;シメックス社製)、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸(例えば「メギゾリルSX」;シメックス社製)、及びポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ(例えば「メギゾリルSW」;シメックス社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(例えば「ユーソレックス232」;メルク社製)、及びフェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム(例えば「ネオ・ヘリオパンAP」;ハーマン・アンド・レイマー社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
トリアジン誘導体としては、アニソトリアジン(例えば「チノソーブ(Tinosorb)S」;チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エチルヘキシルトリアゾン(例えば「ユビナールT150」;BASF社製)、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン(例えば「ユバソーブ(Uvasorb)HEB」;シグマ3V社製)、及び2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン(例えば「シラトリゾール(Silatrizole)」;ローディア・シミー社製)、及びメチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)(例えば「チノソーブM」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製))等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチル(例えば「ネオ・ヘリオパンMA」;ハーマン・アンド・レイマー社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン(例えば、ポリシリコーン-15;「パルソールSLX」;DSMニュートリション ジャパン社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
〈その他の成分〉
本発明の化粧料は、上述した必須成分(a)~(d)に加え、本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を更に含んでよい。以下では、その他の成分について、例示的に説明する。
【0069】
((e)ポリヒドロキシステアリン酸)
本発明の化粧料は、ポリヒドロキシステアリン酸を更に含んでよい。ポリヒドロキシステアリン酸は、本発明の金属酸化物粒子を油分中に均一に分散させる効果を有する観点から、好ましい。
【0070】
ポリヒドロキシステアリン酸は、ヒドロキシステアリン酸がエステル結合を形成することで、オリゴマー化した化合物であり、市販のものとしては、例えばHSオリゴマー600(豊国製油株式会社製)、及びサラコスHS-6C(日清オイリオ社製)等が販売されており、これらを使用することができる。また、ポリヒドロキシステアリン酸は、重合度を特に限定されず、例えば4~8であってよい。
【0071】
本発明の化粧料において、ポリヒドロキシステアリン酸を含む場合のポリヒドロキシステアリン酸の含有量は、例えば0.01~3.0質量%、0.05~2.0質量%、又は0.10~1.0質量%であってよい。
【0072】
((f)イオン界面活性剤)
本発明の化粧料は、イオン界面活性剤を更に含んでよい。イオン界面活性剤は、静電反発が働き、乳化粒子同士が合一することを防ぐ観点から、好ましい。
【0073】
イオン界面活性剤は、水に溶解した場合にイオンに解離する界面活性剤であり、具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤等に分類している。
【0074】
イオン界面活性剤としては、例えばN-ステアロイル-N-メチルタウリン、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウムN-ステアロイル-L-グルタミン酸二ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸トリエタノールアミン、ラウリン酸タウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等のアニオン界面活性剤;ステアリルジメチルアミンオキサイド、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明の化粧料において、イオン界面活性剤を含む場合のイオン界面活性剤の含有量は、例えば0.01~2.0質量%、0.05~1.0質量%、又は0.10~0.50質量%であってよい。
【0076】
(その他の界面活性剤)
本発明の化粧料は、ノニオン界面活性剤(「非イオン界面活性剤」)に関しては、HLB値が10以上のノニオン界面活性剤の含有量が1.0質量%未満であるという条件を満たせば、HLB値が10未満のノニオン界面活性剤を含んでもよい。
【0077】
HLB値が10未満のノニオン界面活性剤としては、例えば、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3(HLB値:0.5)、PEG-10ジメチコン(HLB値:2.0)、又はPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(HLB値:4.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の化粧料において、HLB値が10未満のノニオン界面活性剤を更に含む場合のその含有量は、例えば0.01~2.0質量%、又は0.05~1.0質量%であってよい。
【0079】
また、上述した界面活性剤以外に、例えば高分子界面活性剤、又は天然界面活性剤等も本発明の効果を損なわない限り、本発明の化粧料に更に配合してもよい。
【0080】
((g)水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックス)
本発明の化粧料は、水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスを更に含んでよい。水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスは、本発明の化粧料をべたつきがなく、乳化安定性を更によくし、かつさっぱりとした乳化物にする効果がある観点から、好ましい。
【0081】
水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスとしては、例えばビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン、ビスPEG-15メチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、及びPEG-17ジメチコン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
また、水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスは市販品から入手することができ、例えばCosmeticWax2501(東レ・ダウコーニング株式会社製、ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン、融点36~42℃)、DMC 6038(ワッカー社製、ビスPEG-15メチルエーテルジメチコン、融点約30℃)、KF-6004(信越化学工業株式会社製、PEG-32メチルエーテルジメチコン、融点45℃)、及びSilsoft(登録商標)895(MOMENTIVE社製、PEG-17ジメチコン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明の化粧料において、水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスを含む場合の水溶性ポリエーテル変性シリコーンワックスの含有量は、例えば0.1~20.0質量%、0.5~15.0質量%、又は1.0~10.0質量%であってよい。
【0084】
((h)清涼化剤)
本発明の化粧料は、清涼化剤を更に含んでよい。清涼化剤は、清涼感を高める観点から、好ましい。
【0085】
清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、l-メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、カンファー、イソプレゴール、ボルネオロール、シネオールメントン、スペアミント、ペパーミント、マロン酸メンチル、グリコシル-モノ-メンチル-O-アセテート、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール、及び1-メンチル-3-ヒドロキシブチレートからなる群から選択される1以上を用いてよい。
【0086】
本発明の化粧料において、清涼化剤を含む場合の水清涼化剤の含有量は、例えば0.1~10.0質量%、0.5~10.0質量%、又は1.0~5.0質量%であってよい。
【0087】
上述した「その他の成分」以外には、本発明の化粧料は、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、トレハロース等の糖類;クロロフィル、β-カロチン等の天然色素;アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、ジェランガム、カラギーナン等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;その他の増粘剤;アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、ビタミンB6塩酸塩、パントテニルエチルエーテル等のビタミン類;殺菌剤、消炎剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸等の薬剤;エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;フェノキシエタノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール;又はシリカ等の化粧料に通常配合されている各種成分も更に含んでよい。
【0088】
本発明の化粧料は、水中油型乳化化粧料に通常用いられている方法に従って調製することができる。即ち、水相成分及び油相成分を別々に混合し、水相成分を攪拌しながら油相成分を添加して乳化することによって調製できる。
【0089】
本発明の化粧料は、特に限定されるものではないが、平均7.5μm、最大で約20μmの乳化粒子径を有してよい。なお、乳化粒子径は、例えば、顕微鏡を用いて、乳化粒子の大きさ(マイクロメーターによる測定)及びその分布状況(検鏡視野の粒子の均一度)を肉眼で総合的に判定することによって、求めることができる。
【0090】
本発明の化粧料は、上述した本発明の効果を発揮できるため、赤外防御化粧料であってよい。
【実施例
【0091】
以下に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、含有量は質量%で示す。
【0092】
下記の表1に示す処方で、実施例及び比較例の化粧料を調製し、得られた各化粧料について、安定性、赤外線カット率、使用感、及び乳化粒子径を、以下の基準に従って評価して、それらの結果を表2示す。
【0093】
〈安定性〉
実施例及び比較例で得られた各化粧料を、2本のスクリュー管(50ml)に充填し、0℃又は50℃の恒温槽に2週間静置した。静置の前後に回転式粘度計(ビスメトロン回転式粘度計)を用いて粘度変化を測定するとともに、乳化粒子、外観の観測を行った:
「評価基準」
「A」:0℃、50℃のいずれの温度水準においても粘度低下が見られず、乳化粒子、外観に問題がなかった。
「B」:いずれかの温度水準にて、若干の粘度低下または乳化粒子の増大、外観の変化が観察された。
「C」:いずれかの温度水準にて、金属酸化物粒子の飛び出しが観察された。
【0094】
〈赤外線カット率〉
実施例及び比較例で得られた各化粧料を、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)基板(HelioScreen社製HD6)に塗布し、15分間乾燥させ、測定用の試料とした。また、何も塗布していないPMMA基板を対照用の試料とした。測定用試料、対照用試料それぞれについて分光光度計(島津製作所社製UV-3600、積分球モード)にて1500nmの透過率を測定した。測定の際には、積分球の開口部の外縁にPMMA基板の塗工面を、両面テープを用いて密着させた。測定用試料の透過率を対照用試料の透過率で除した値を透過率とし、(100%-透過率)を赤外線カット率(%)とした。
【0095】
〈使用感触〉
実施例及び比較例で得られた各化粧料を、専門パネル3名で使用感触について、下記の基準に基づいて、総合評価した:
「A」:みずみずしさに非常に優れる。
「B」:みずみずしさに優れる。
「C」:みずみずしさに劣る。
【0096】
〈乳化粒子径〉
顕微鏡を用いて、乳化粒子の大きさ(マイクロメーターによる測定)及びその分布状況(検鏡視野の粒子の均一度)を肉眼で総合的に判定することによって、実施例及び比較例で得られた各化粧料のそれぞれの乳化粒子径を求めた。なお、表2において、「1~10(20)」という表現は、大部分の乳化粒子の径が約1~10μmの範囲であり、約20μmまでの少数の乳化粒子も存在したことを意味している。他の表現も同様である。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1から明らかであるように、実施例1~9の化粧料は、赤外線防御効果に優れており、かつ独特のみずみずしい使用感触を有することが分かった。
【0100】
また、実施例1~6の化粧料は、実施例7~9の化粧料に比べて、安定性がより優れているのは、ポリヒドロキシステアリン酸を更に含んでいるからと考えられる。なお、実施例7~9の化粧料は、ポリヒドロキシステアリン酸の代わりに、それぞれセスキイソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸、及びビスブチルジメチコンポリグリセリル-3のような界面活性剤を更に含んでいる。これらの界面活性剤は、粉末分散剤としての機能を有しているが、特に大粒径の金属酸化物粒子に対する分散性は、ポリヒドロキシステアリン酸に比べてやや劣っているではないかと分析される。