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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/56 20230101AFI20250307BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20250307BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
C02F1/56 F
B01D21/01 107A
C02F1/56 C
B01D21/01 B
B01D21/01 D
B01D21/30 A
B01D21/01 101A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021045137
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022144224
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北澤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】豊島 光康
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸二
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-206078(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199330(WO,A1)
【文献】特開2019-037956(JP,A)
【文献】特開昭49-084049(JP,A)
【文献】特開2013-071059(JP,A)
【文献】特開昭51-082952(JP,A)
【文献】特開2015-192960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/00- 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分、有機態窒素、及びSSを含む被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成工程と、
前記フロックが形成された前記被処理水を固液分離し、処理水を得る固液分離工程と、
少なくとも前記フロック形成工程で形成される前記フロックが前記固液分離に必要なフロック強度を備え、前記固液分離で得られる前記処理水が清澄性を備えるように、前記フロック形成工程の前に前記被処理水に対して変性処理を行う変性処理工程と
を有し、
前記変性処理工程は、中性又は酸性の前記被処理水に界面活性剤を50~300mg/L添加する界面活性剤添加工程を有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
油分、有機態窒素、及びSSを含み、窒素換算時の有機態窒素とSSとの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上3以下である被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成工程と、
前記フロックが形成された前記被処理水を機械固液分離手段により固液分離し、処理水を得る固液分離工程と、
少なくとも前記フロック形成工程で形成される前記フロックが前記固液分離に必要なフロック強度を備え、前記固液分離で得られる前記処理水が清澄性を備えるように、前記フロック形成工程の前に前記被処理水に対して変性処理を行う変性処理工程と、
を有し、
前記変性処理工程は、
前記被処理水のpHが2~3となるように前記被処理水に酸を添加する酸処理工程と、
酸処理工程後の前記被処理水にアルカリ剤を添加して、前記被処理水のpHが6~7となるように中和処理する中和処理工程と
を有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項3】
油分、有機態窒素、及びSSを含み、窒素換算時の有機態窒素とSSとの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上3以下である被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成工程と、
前記フロックが形成された前記被処理水を機械固液分離手段により固液分離し、処理水を得る固液分離工程と、
少なくとも前記フロック形成工程で形成される前記フロックが前記固液分離に必要なフロック強度を備え、前記固液分離で得られる前記処理水が清澄性を備えるように、前記フロック形成工程の前に前記被処理水に対して変性処理を行う変性処理工程と
を有し、
前記変性処理工程は、前記被処理水にアルカリ剤を添加し、前記被処理水をpH10以上のアルカリ性にするアルカリ処理工程を有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項4】
前記変性処理工程において、前記被処理水に界面活性剤を添加することを特徴とする請求項2又は3に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記被処理水は、窒素換算時の有機態窒素とSSとの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上3以下であることを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項6】
前記カチオン性有機高分子凝集剤の分子量が500万以上であり、カチオン度が50mol%以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項7】
前記変性処理工程は、前記被処理水の水温を50℃以上に加熱処理する加熱処理工程を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項8】
油分、有機態窒素、及びSSを含む被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成槽を備えるフロック形成手段と、
前記フロックが形成された前記被処理水を固液分離し、処理水を得る固液分離手段と、
少なくとも前記フロック形成槽で形成される前記フロックが前記固液分離に必要なフロック強度を備え、前記固液分離手段で得られる前記処理水が清澄性を備えるように、前記フロック形成手段に流入する前の前記被処理水に対して変性処理を行う変性処理手段と
前記被処理水の前記変性処理を行うための界面活性剤を50~300mg/Lで前記被処理水に添加する界面活性剤添加手段と
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項9】
前記フロック形成槽内の前記被処理水の水質情報又は画像情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記水質情報又は前記画像情報に基づいて、前記フロック形成槽内の前記被処理水の水質を予測する予測手段と、
前記予測手段の予測結果に基づいて、前記カチオン性有機高分子凝集剤の注入量を制御する制御手段と
を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法及び排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油分、有機態窒素、SS(浮遊物質)等を含む排水は、業種を問わず、工場や事業所などから排出されている。特に、屠畜場、食肉処理施設、食肉加工工場などから排出される排水は、動物の血液などを多く含む。このような排水中の成分は、有機態窒素が多く、油分やSSなどを同時に含む。
【0003】
有機態窒素濃度の高い排水の一般的な処理方法として、前処理(一次処理)、生物処理(二次処理)、及び高度処理(三次処理)の利用が知られている。前処理は、排水中の夾雑物を除去する工程であり、物理化学的処理方法(スクリーン、加圧浮上処理、凝集沈殿処理、自然な固液分離など)がある。前処理後の排水は生物処理され、栄養塩類や生物処理で除去出来なかった成分が多く残留する場合には更に高度処理が用いられる。処理水は系外へ排出されるが、各工程で生じたし渣、油分含有汚泥(浮上分離スカム)、余剰汚泥などは、別途処理が必要となる。し渣は水を除去した後に、廃棄処分または堆肥化される。油分含有汚泥や余剰汚泥は、汚泥処理工程(濃縮、脱水、乾燥、焼却など)を経て、最終処分もしくは再利用される。
【0004】
特開2019-37955号公報(特許文献1)には、油分を含む排水の水処理方法及び水処理装置において、油分含有排水に対し、カチオン性有機高分子凝集剤を添加、混合しフロックを形成させるフロック形成工程と、生成したフロックと分離液とを分離する固液分離工程を有する水処理方法および水処理装置の例が記載されている。また、特許文献1には、フロック形成工程において、カチオン性有機高分子凝集剤の添加前に、天然高分子系油除去剤もしくは合成高分子系油除去剤を添加することが記載されている。
【0005】
特開2002-346306号公報(特許文献2)には、血液廃水処理方法及び血液廃水処理システムにおいて、血液廃水に対し、塩酸及び塩化第二鉄水溶液を添加し、血液中の有機物を凝固する凝固工程と、アルカリによる中和によって沈殿物を析出および沈殿させる工程と、廃水と沈殿物を分離し、沈殿物は除去する除去工程を有し、除去工程において凝集剤を添加可能な水処理方法が記載されている。沈殿物は脱水機によって脱水後にスラッジ廃棄物として廃棄することが記載されている。
【0006】
特開2014-147859号公報(特許文献3)には、血液排水処理システムにおいて、血水排水に対し凝集剤を添加し血液成分を含む沈澱部分と上部排水に分離させる沈澱槽と、上部排水をマイクロバブルによって泡沫分離し分離水とさせるマイクロバブル処理槽と、分離水を酸化処理し殺菌水とするオゾン酸化処理槽と、殺菌水を活性炭で処理して再生水とするろ過槽とを有し、マイクロバブル処理槽およびオゾン酸化槽に処理水を循環させるための循環ポンプを有する水処理方法及びシステムが記載されている。
【0007】
特開平3-127944号公報(特許文献4)には、魚類より流出した高濃度の血液を主成分とする良質の蛋白質を低コストで回収し添加再利用する装置について、高濃度の魚類血液汁を50~55℃で加熱処理し、無色ゲル状物を生成させる工程と、ゲル状物を塩水にて希釈し希釈液とする工程と、希釈液をpH調整してフロックを生成させる工程と、希釈液とフロックに高分子凝集剤を添加し、フロック肥大化させる工程と、肥大化フロックを電気浮上分離する工程と、浮上分離したスラッジを脱水し、良質な蛋白質を回収する工程と、回収された蛋白質を当該工場の原料として添加再利用する装置が記載されている。また、処理装置によって、排水中のSS及びBODが減少し、排水処理が容易となることについての記載がある。
【0008】
特開平4-27492号公報(特許文献5)には、水処理方法について、動物性蛋白質を含む水に、動物性蛋白質中の全有機炭素に対して5~200w%の無機性凝集剤(1種または2種以上を混合したもの)を添加する工程と、凝集剤添加後の排水をpH3以上に調整する工程と、pH調整後の排水を60℃以上に加熱処理する工程と、加熱処理後にろ過する処理方法が記載されている。
【0009】
特開平3-93689号公報(特許文献6)には、回収製品の処理方法及びその装置について、蛋白質含有または無含有の食品の返戻品(凝固状)を加温しながら保持し、水切り分離する工程と、水切り分離後の凝固物を発酵分解処理し肥料などの再生品とする処理方法、及び蛋白質含有または無含有の食品の返戻品(液状)に対し凝集剤を添加する工程と、pH調整する工程と、加温しながら保持し水切り分離する工程と、水切り分離後の凝固物を発酵分解処理し、飼料成分や肥料成分を含む再生品とする処理方法が記載されている。
【0010】
特開2002-143862号公報(特許文献7)には、タンパク質含有廃水の処理方法について、タンパク質含有廃水(主に乳タンパク質)に対してタンパク質凝固酵素を添加し、タンパク質を凝固させる工程と、処理後の凝固タンパク質と液状物を分離させる工程と、液状物を生物処理する工程とを有する処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-37955号公報
【文献】特開2002-346306号公報
【文献】特開2014-147859号公報
【文献】特開平3-127944号公報
【文献】特開平4-27492号公報
【文献】特開平3-93689号公報
【文献】特開2002-143862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1では、油分及びSS以外に有機態窒素を多く含む排水に対する有効な処理方法が記載されていない。有機態窒素を多く含む排水を固液分離する場合は、フロックの粘着性が低減できないという問題があり、カチオン性有機高分子凝集剤の薬注量も多くなってしまう。特許文献2も同様に、固液分離時のフロックの粘着性の問題が考慮されていない。また、特許文献2では、沈殿物は別途脱水機による脱水を要する点、廃水中の油分は別途浮上処理を要しBODやSSなどの成分との同時除去が困難である点、処理工程の時間が長い点等から効率面で未だ検討の余地がある。
【0013】
特許文献3では、血液成分およびタンパク質の除去が別々の槽でなされていることから装置サイズ及び効率面で有効であるとはいえない。また、特許文献3で使用される凝集剤は無機性であり、固液分離時のフロックの粘着性も考慮されていない。更に、特許文献3は、ランニングコスト(マイクロバブル処理、オゾン酸化処理、活性炭処理など)の高い処理方法を多く有している点及び除去された固形物の具体的な処理方法を想定していないという問題がある。特許文献4では、加熱処理と酸性条件へのpH調整の併用が必要な点、高分子凝集剤がカチオン性ではない点、固液分離方法が高コストの電気浮上分離であり、脱水が別途必要である点、排水処理ではSS、BOD以外に油分を同時に除去することを想定していない。
【0014】
特許文献5では、凝集剤の添加、酸性条件へのpH調整、加熱処理の併用が必要な点、凝集剤は主に無機性である点、溶解性有機成分以外にSSや油分などの同時処理を想定していない点、固液分離方法(ろ過や遠心分離)後の濃縮汚泥の処理方法や処分方法を考慮していない点で検討の余地がある。特許文献6では、油分、SS、有機物の同時除去など水処理方法がほとんど想定されていない点、凝固剤として酸を用いており、カチオン性有機高分子凝集剤を想定していない点、加熱後の保温(静置)時間及び水切り分離時間が非常に長い点、凝集物の固液分離方法において検討の余地がある。
【0015】
特許文献7では、酵素によって凝固する乳タンパク質や大豆由来のタンパク質を含有する排水に対象が絞られている点、凝固剤として酵素やその補助成分(金属塩類)を用いており、カチオン性有機高分子凝集剤を想定していない点、窒素やりんの除去は想定しているが、油分、SS、有機成分(溶解性を含む)を想定していない。このように従来の方法では、油分、有機態窒素及びSSを同時に含む排水の処理に対する諸問題を総合的に解決することが困難であった。
【0016】
よって、本発明は、油分、有機態窒素及びSSを含む排水を、より簡易な設備で効率良く処理可能な排水処理方法及び排水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、油分、有機態窒素、及びSSを含む被処理水に対して被処理水中の有機態窒素を変性させるための変性処理を行うことが有効であるとの知見を得た。
【0018】
以上の知見を基礎として完成した本発明の実施の形態は一側面において、油分、有機態窒素、及びSSを含む被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成工程と、フロックが形成された被処理水を固液分離し、処理水を得る固液分離工程と、少なくともフロック形成工程で形成されるフロックが固液分離に必要なフロック強度を備え、固液分離で得られる処理水が清澄性を備えるように、フロック形成工程の前に被処理水に対して変性処理を行う変性処理工程とを有する排水処理方法である。
【0019】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は一実施態様において、被処理水は、窒素換算時の有機態窒素とSSとの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上である。
【0020】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は別の一実施態様において、カチオン性有機高分子凝集剤の分子量が500万以上であり、カチオン度が50mol%以上である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は別の一実施態様において、変性処理工程は、被処理水に酸を添加して、酸性にする酸処理工程と、酸処理工程後の被処理水にアルカリ剤を添加して、中和処理する中和処理工程とを有する。
【0022】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は別の一実施態様において、変性処理工程は、中性又は酸性の被処理水に界面活性剤を添加する界面活性剤添加工程を有する。
【0023】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は別の一実施態様において、変性処理工程は、被処理水の水温を50℃以上に加熱処理する加熱処理工程を有する。
【0024】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は別の一実施態様において、被処理水にアルカリ剤を添加し、pH10以上のアルカリ性にするアルカリ処理工程を有する。
【0025】
本発明の実施の形態は他の一側面において、油分、有機態窒素、及びSSを含む被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えてフロックを形成させるフロック形成槽を備えるフロック形成手段と、フロックが形成された被処理水を固液分離し、処理水を得る固液分離手段と、少なくともフロック形成槽で形成されるフロックが固液分離に必要なフロック強度を備え、固液分離手段で得られる処理水が清澄性を備えるように、フロック形成手段に流入する前の被処理水に対して変性処理を行う変性処理手段とを備える排水処理装置である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る排水処理装置は一実施態様において、フロック形成槽内の被処理水の水質情報又は画像情報を取得する取得手段と、取得手段により取得された水質情報又は画像情報に基づいて、フロック形成槽内の被処理水の水質を予測する予測手段と、予測手段の予測結果に基づいて、カチオン性有機高分子凝集剤の注入量を制御する制御手段とを更に備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、本発明は、油分、有機態窒素及びSSを含む排水を、より簡易な設備で効率良く処理可能な排水処理方法及び排水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係る排水処理方法の一例を表すフロー図である。
図2】本発明の第1変形例に係る排水処理方法の一例を表すフロー図である。
図3】本発明の第2変形例に係る排水処理方法の一例を表すフロー図である。
図4】本発明の第3変形例に係る排水処理方法の一例を表すフロー図である。
図5】本発明の第4変形例に係る排水処理方法の一例を表すフロー図である。
図6】本発明の実施の形態に係る排水処理装置の一例を示す概略図である。
図7】本発明の第1変形例に係る排水処理装置の一例を表す概略図である。
図8】本発明の第2変形例に係る排水処理装置の一例を表す概略図である。
図9】本発明の第3変形例に係る排水処理装置の一例を表す概略図である。
図10】本発明の第4変形例に係る排水処理装置の一例を表す概略図である。
図11】本発明の実施の形態に係る機械固液分離手段の一例を表す断面図である。
図12】本発明の実施の形態に係る排水処理装置の運転条件支援システムの一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0030】
(排水処理方法)
本発明の実施の形態に係る排水処理方法は、図1に示すように、被処理水中の有機態窒素を変性させる変性処理工程と、変性処理された被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えて混合し、フロックを形成させるフロック形成工程と、フロックが形成された被処理水を、フロックと分離液(処理水)とに固液分離する固液分離工程とを有する。
【0031】
<被処理水>
処理対象となる被処理水は、油分、有機態窒素、SSを含む排水であれば特に限定されない。例えば、屠畜場、食肉処理施設、食肉加工工場、食品加工工場、食品製造工場、肥料製造工場、機械工場、自動車工場など各種工場で発生する排水を挙げることができる。また、ショッピングセンタ、レストラン、スーパーマーケット、ホテル、病院などの各種施設で発生する排水(例:厨房排水)を挙げることができる。また、被処理水は、油分、有機態窒素、有機態窒素以外の有機物や無機物を含んでもよい。SSは有機物でも無機物でもよい。
【0032】
油分とは、常温で液体の油のみならず、常温で固体の脂肪、即ち、油脂類全般を示す。例えば、油分としては、植物油、動物油、鉱物油などがあり、これら油分は1種又は2種以上含有される。また、排水中での油分の状態は、水と乳化している、又は水と油が分離している、又は上記の状態が混在した状態である。一般的に、排水中の油分濃度は、ヘキサン抽出物質として測定される(JIS K0102:2019)。
【0033】
有機態窒素とは、有機物中に含まれる窒素成分のことであり、例えば、タンパク質、アミノ酸、核酸、尿素などのアミド化合物、又はアゾ化合物等を含む。全窒素とは、有機態窒素と無機態窒素を合わせた項目である。無機態窒素は、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素に分けられる。
【0034】
被処理水に含まれる有機態窒素としては、特に制限はなく、上述のタンパク質、アミノ酸、核酸、尿素などのアミド化合物、又はアゾ化合物の中から選択されるいずれか1種又は2種以上を含むことができる。被処理水には更に無機態窒素を同時に含んでもよい。有機態窒素は、動物性、植物性、人工的に合成された物質のいずれでもよい。一般的に、排水中の有機態窒素濃度は、ケルダール性窒素からアンモニア態窒素を引いた値として測定される。
【0035】
被処理水には有機物を含んでいてもよい。有機物は、上記の油分または有機態窒素と、上記の油分または有機態窒素以外の有機物を全て含む場合と、上記油分または有機態窒素に加え、上記油分または有機態窒素以外の有機物も含む場合がある。有機物としては、炭水化物、タンパク質、脂質、核酸、植物油、動物油、鉱物油、アルコール類、脂肪酸、界面活性剤、塗料など1種類以上の有機物を挙げることができる。有機物は、動植物油由来の物質でも化学的に合成された物質でもよい。上記物質から製造された物質でも上記物質の分解物でも良い。本実施形態に係る被処理水に含有される有機物は、特に限定されないが、無機物を更に含む場合もある。
【0036】
SS(Suspened Solids)とは、排水中に浮遊する固形状の懸濁物質のことであり、孔径1μmのろ紙でろ過した際に、ろ紙上に残留する物質のことである。SSは無機性及び有機性の物質を含む。無機性のSSは、土壌由来の成分や粘土成分などを含む。有機性のSSは、動植物及び微生物の細胞由来や工場由来の成分を含む。本実施形態の被処理水に含まれるSSは特に限定しないが、動物の肉片や油分、血液成分由来のSSが多く含まれる。
【0037】
被処理水の水温は特に限定されないが、例えば5℃以上55℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下とすることができる。後述する変性処理工程において加熱処理を用いる場合は、50℃以上70℃以下、更には55℃以上70℃以下とすることが好ましい。被処理水の水温が低いと、含まれる油分の融点より低い場合に油分が固形状となり、処理が不十分になりうる。また、水温が極端に高い場合、有機態窒素を含む成分が過度に変性を起こし、変性処理として酸処理、界面活性剤処理、アルカリ処理を選択する場合に処理が不十分になりうる。変性処理として加熱処理を選択する場合も、逆に適切な被処理水の加熱を行い、有機態窒素を含む成分を変性させることが必要になる。そのため、水温を適切な範囲にすることが必要になる。
【0038】
油分、有機態窒素及びSSを含む被処理水中の有機態窒素及びSSの存在比が大きくなると、フロック形成工程においてカチオン性有機高分子凝集剤を添加して凝集処理を行ったとしてもフロックの粘着性が低下せず、凝集不良及び分離不良が起きる場合がある。本実施形態では、特に、被処理水に含まれる有機態窒素(窒素換算)とSSの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上となる被処理水に対して、フロックの固液分離に必要なフロック強度を付与するための変性処理を行うことにより、フロックの粘着性を弱め、且つフロック強度を向上させることができるため、その後のフロック形成工程における凝集不良及び固液分離工程における分離不良を抑制して効率良く処理を行い、清澄性を有する処理水を得ることができる。変性処理を行わない場合には、フロックの粘着性が非常に強くなり、薬注量が増加し、フロックの形成不良が発生し、固液分離が十分に行えない場合や、処理水の清澄性が損なわれる場合がある。
【0039】
一実施態様では、有機態窒素(窒素換算)とSSの重量比(有機態窒素/SS)が0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.18以上が更に好ましい。有機態窒素(窒素換算)とSSの重量比(有機態窒素/SS)が高くなるほど、フロック形成工程においてフロックの粘着性を高くできることから、その上限については特に制限はないが、有機態窒素(窒素換算)とSSの重量比(有機態窒素/SS)が5以下とすることができ、更には3以下、更には1.5以下、より更には0.5以下とすることができる。
【0040】
なお、被処理水に含まれる有機態窒素(窒素換算)とCODMnの比(有機態窒素/CODMn)は、0.1以上であることが好ましい。上限については特に制限はないが、有機態窒素(窒素換算)とCODMnの比(有機態窒素/CODMn)は3以下、更には1.5以下、更には0.5以下が好ましい。
【0041】
また、被処理水に含まれる有機態窒素(窒素換算)と油分の濃度(n-Hex)の比(有機態窒素/n-Hex)は、0.5以上であることが好ましい。上限については特に制限はないが、有機態窒素(窒素換算)と油分の濃度(n-Hex)の比(有機態窒素/n-Hex)は5以下、更には3以下、更には2以下が好ましい。被処理水に含まれるn-Hexの範囲は、典型的には150mg/L以上7,000mg/L以下が好ましく、更に典型的には170mg/L以上6,500mg/L以下、より更には1,000mg/L以上6,500mg/L以下である。本実施形態に好適な被処理水はSS、CODMn、n-Hexに対する有機態窒素の比率が比較的高い。このような被処理水に対して本実施形態に係る変性処理工程を行うことによって、フロックの凝集効果及び分離性を高め、清澄性を有する処理水を得ることができるため、油分、有機態窒素及びSSを含む排水を、より簡易な設備で効率良く処理することが可能となる。
【0042】
<カチオン性有機高分子凝集剤>
-種類-
カチオン性有機高分子凝集剤としては、カチオン性モノマーの単独重合体又は共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとの共重合体などから1種以上を選択して用いることができる。本実施形態では、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄などの無機凝集剤と明確に区別するため、有機高分子と記載するが、一般的には単に高分子凝集剤と称される。
【0043】
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート又はこれらの中和塩、3級塩若しくは4級塩などから1種以上を選択して用いることができる。例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート又はこれらの中和塩、3級塩若しくは4級塩などが挙げられる。これらの中でもジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級塩が好ましく、より好ましくはアンモニウム塩である。
【0044】
ノニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどから1種以上を選択して用いることができる。アニオン性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-(メタ)アクリルアミド-メチルプロパンスルホン酸、及びこれらの金属塩又はアンモニウム塩などから1種以上を選択して用いることができる。
【0045】
なお、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの両方を含む概念であり、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸の両方を含む概念であり、更に、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミドとメタクリルアミドの両方を含む概念である。
【0046】
また、カチオン性有機高分子凝集剤としては、非アミジン系高分子凝集剤に加え、アミジン単位を有するアミジン系高分子凝集剤を使用することが可能であり、アミジン系高分子凝集剤と非アミジン系高分子凝集剤を混合した高分子凝集剤も使用することができる。
【0047】
カチオン性有機高分子凝集剤の態様は特に限定されず、例えば、粉末状、液状(ディスパージョン、エマルジョン)などが挙げられる。
【0048】
-カチオン度-
原料モノマーの種類や有機高分子の態様は限定されるものではないが、本実施形態は、全モノマー単位(ユニット)中にカチオン性モノマーが50mol%以上含有された有機高分子、すなわち、カチオン度が50mol%以上のカチオン性有機高分子凝集剤を用いる。すなわち、本実施形態に用いられるカチオン性有機高分子凝集剤は、カチオン性モノマーを50mol%以上含む原料モノマーを重合して製造され、より好ましいカチオン性モノマーの量は60mol%以上であり、さらに好ましくは70mol%以上、特に80mol%以上である。
【0049】
更に、実質カチオン性モノマーからなる(100mol%)カチオン性有機高分子凝集剤を使用することもできる。なお、カチオン度は、有機高分子の原料モノマーに含まれるカチオン性モノマーの割合(mol%)として定義することができる。
【0050】
一般的に、排水中に含まれる油分などは、界面活性剤やアルカリ成分によって、排水中に細かく分散し、油分の粒子の表面は負に帯電している。一般的な汚濁物質のゼータ電位に比べて、油分粒子のゼータ電位は著しく低く、通常のカチオン性有機高分子凝集剤を加えても、フロックは形成されないか、フロックが形成されても機械的な固液分離に耐えられる強いフロックは形成されない。
【0051】
一方、カチオン度が50mol%以上のカチオン性有機高分子凝集剤を加えて混合すると、大きく正に帯電した(正の電荷密度が高い)分子鎖が排水中に細かく分散した油分を捕捉し、機械的な固液分離に耐えられる強いフロックを形成することができる。
【0052】
-分子量-
カチオン性有機高分子凝集剤の分子量は特に限定されないが、分子量が500万以上であることが好ましく、より好ましくは600万以上、特に700万以上、その中でも800万以上であることが好ましい。なお、この分子量は、固有粘度法で測定、算出された値であり、その測定、算出法の詳細は「ポリマー凝集剤・使用の手引き」の112~116頁(東京都下水道サービス株式会社、平成14年3月発行)に記載されている。
【0053】
排水中の油分は排水中に細かく分散しているため、通常のカチオン性有機高分子凝集剤を加えても、フロックは形成され難いか、フロックが形成されても機械的な固液分離に耐えられる強いフロックは形成されない。一方、カチオン度が50mol%以上であることに加え、分子量が500万以上のカチオン性有機高分子凝集剤を用いると、長い分子鎖が排水中に細かく分散した油分を捕捉し、機械的な固液分離に耐えられるより強いフロックを形成することができる。
【0054】
-粘度-
分子量と同じ観点から、カチオン性有機高分子凝集剤の特性を溶液粘度で定義することもできる。具体的には、カチオン性有機高分子凝集剤を純水に1g/Lで溶解したときの水溶液の粘度は、100mPa・s以上が好ましく、より好ましくは120mPa・s以上、特に好ましくは150mPa・s以上である。
【0055】
また、カチオン性有機高分子凝集剤を純水に2g/Lで溶解した場合、その水溶液の粘度は、200mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは220mPa・s以上、特に好ましくは250mPa・s以上である。
【0056】
なお、上記粘度は、濃度が1g/Lと2g/Lのいずれの場合も、B形粘度計、JIS K7117-1:1999の附属書1(参考)に記載されているスピンドルSB2号を使用し、25℃、60min-1の回転速度で測定した値である。スピンドルはロータとも呼ばれる。
【0057】
-溶媒-
カチオン性有機高分子凝集剤は、好ましくは溶媒に溶解又は分散させた凝集剤溶液として使用する。この溶媒は特に限定されないが、例えば、純水(蒸留水も含む)、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水、海水などから1種以上を選択して用いることができる。カチオン性有機高分子凝集剤の凝集力を最大限発揮させる観点からは、純水、水道水を使用することが好ましい。一方、経済性の観点からは、工場用水、地下水、各種排水処理の処理水を使用することが好ましい。但し、以上は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0058】
-注入濃度-
カチオン性有機高分子凝集剤を希釈する場合も希釈しない場合も、カチオン性有機高分子凝集剤(有効成分)の注入量を、1mg/L以上500mg/L以下で注入することが好ましく、5mg/L以上400mg/L以下で注入することがより好ましく、10mg/L以上300mg/L以下で注入することが特に好ましい。
【0059】
<酸>
酸は、変性処理工程において、被処理水のpHを酸性条件とし、有機態窒素、SS、油分を含む被処理水を変性させるために用いられる。
【0060】
酸の種類は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、りん酸、ホウ酸などの無機酸が一般的に用いられる。特に、反応槽の維持管理上の問題から、硫酸の使用が好ましい。pH調整剤添加前、又は同時に無機凝集剤を添加してもよい。無機凝集剤の種類は硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、硫酸第2鉄、塩化第2鉄あるいはこれらの混合物が使用可能である。無機凝集剤の使用により、カチオン性有機高分子凝集剤の使用量を削減可能な場合がある。
【0061】
変性処理工程において、被処理水に対し酸を添加し、酸性条件とすることで、被処理水中のタンパク質などの有機態窒素などを含む成分を変性させ、凝固させることが好ましい。有機態窒素などが変性および凝固することによって、その後のフロック形成が容易となる。また、有機態窒素比率の高い被処理水は、後段のフロック形成工程時にフロックの粘着性が強く、ハンドリング性が著しく低下することを防止させる効果を発揮する。
【0062】
<界面活性剤>
界面活性剤は変性処理工程において、被処理水は有機態窒素、SS、油分を含む被処理水を変性させるために用いられる。界面活性剤の種類は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤に大別される。さらに、イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤に分けられる。
【0063】
界面活性剤の種類に特に制限はないが、アニオン性界面活性剤が好ましい。具体的には、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。使用する界面活性剤に特に制限はないが、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)が好ましい。
【0064】
変性処理工程において、被処理水に対し界面活性剤を添加することで、被処理水中のタンパク質などの有機態窒素などを含む成分がフロック形成及び固液分離に好ましい形態に変性する。有機態窒素などが変性することによって、その後のカチオン性有機高分子凝集剤のフロック形成が容易となる。また、有機態窒素比率の高い被処理水は、後段のフロック形成工程時にフロックの粘着性が強く、ハンドリング性が著しく低下することを防止させる効果を発揮する。
【0065】
界面活性剤の性状は固体状、液状など特に制限はないが、溶媒によって希釈または溶解し、注入することが可能である。また、粉末状もしくは原液のまま注入することも可能である。
【0066】
<アルカリ剤>
アルカリ剤は、変性処理工程において、被処理水は有機態窒素、SS、油分を含む被処理水を変性させるため、または、中和処理工程における中和に用いられる。
【0067】
アルカリ剤の種類は、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウムまたはこれらの水和物などが挙げられる。使用するアルカリ剤に特に制限はないが、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0068】
変性処理工程において、被処理水に対しアルカリ剤を添加することで、被処理水中のタンパク質などの有機態窒素などを含む成分が変性する。有機態窒素などが変性することによって、その後のフロック形成が容易となる。また、有機態窒素比率の高い被処理水は、後段のフロック形成工程時にフロックの粘着性が強く、ハンドリング性が著しく低下することを防止させる効果を発揮する。
【0069】
<その他の薬剤>
本実施形態は、上述の薬剤とカチオン性有機高分子凝集剤以外の薬剤の使用を何ら制限するものではない。具体的には、カチオン性有機高分子凝集剤を添加する前に、公知の無機凝集剤や有機高分子凝結剤(カチオン性有機高分子凝集剤よりも低分子量の凝集剤)などの1種以上の薬剤を添加することもできる。
【0070】
無機凝集剤としては硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄(ポリ鉄)、硫酸第2鉄、塩化第2鉄あるいはこれらの混合物が使用可能である。有機高分子凝結剤としては縮合系ポリアミン、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダリン、ポリビニルピリジン、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・二酸化硫黄共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・アクリルアミド共重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩・ジアリルアミン塩酸塩誘導体共重合体、アリルアミン塩重合体などが挙げられる。
【0071】
縮合系ポリアミンの具体例としては、アルキレンジクロライドとアルキレンポリアミンとの縮合物、アニリンとホルマリンの縮合物、アルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物、アンモニアとエピクロルヒドリンとの縮合物などが挙げられる。エピクロルヒドリンと縮合するアルキレンジアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどが挙げられる。
【0072】
(変性処理工程)
図1の変性処理工程では、流入した油分、有機態窒素、SSを含む被処理水に含まれる有機態窒素成分を変性させる。本工程の目的は、後段のフロック形成工程において、短時間で良好なフロックを形成させ、分離液の水質を良好にするための前処理である。
【0073】
従来のカチオン性有機高分子凝集剤の添加のみによるフロック形成では、油分およびSSの処理は可能な場合もあったが、油分およびSSに加えて有機態窒素の含有量が被処理水中に多くなってくると、フロック粘着性の発生や薬注量の増加の問題が顕在化する。本実施形態によれば、フロック形成工程前に、変性処理工程を実施することによって、フロック粘着性の発生抑制や薬注量の低減が可能となる。
【0074】
変性処理工程としては、図2に示すように、被処理水に酸を添加して、被処理水を酸性にする酸処理工程と、酸処理工程後の被処理水にアルカリ剤を添加して、中和処理する中和処理工程を含むことができる。或いは、図3に示すように、被処理水に界面活性剤を添加する界面活性剤添加工程を有することができる。或いは、図4に示すように、被処理水の水温を50℃以上に加熱処理する加熱処理工程を有することができる。或いは、図5に示すように、被処理水にアルカリ剤を添加し、pH10以上のアルカリ性にするアルカリ処理工程を有することができる。
【0075】
図2に示す酸処理工程および中和処理工程は、被処理水に対し、酸を注入することで、被処理水を酸性条件とし、有機態窒素成分の変性処理を行い、その後、アルカリ剤の注入によって中和処理を行う。酸性条件のpHは5以下、さらには4以下、更には3.5以下の範囲が好ましく、pH1以上が好ましく、更にはpH2以上3以下がより好ましい。また、中和処理時のpHは6以上7.5以下が好ましく、6以上7以下が更に好ましく、更に6.5以上7以下がより好ましい。
【0076】
図3に示す界面活性剤添加工程は、上述の被処理水に対し、界面活性剤を注入することで変性処理を行う。界面活性剤の注入濃度(純度に対する)は、50mg/L以上300mg/L以下が好ましく、100mg/L以上250mg/L以下がより好ましく、150mg/L以上200mg/L以下が特に好ましい。界面活性剤添加工程では、中性条件下、好ましくは酸性条件下、更に好ましくは調整pHを5~7、更には5~6の弱酸性条件とした後に、界面活性剤を添加することが好適である。
【0077】
図4に示す加熱処理工程は、被処理水を加熱することで変性処理を行う。加熱処理後の水温は、50℃以上80℃以下が好ましく、55℃以上70℃以下がより好ましい。また、加熱処理以外の方法における水温は、5℃以上55℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下がより好ましい。
【0078】
図5に示すアルカリ処理工程は、被処理水に対し、アルカリ剤を注入し、アルカリ性条件とすることによって変性を行う。アルカリ性条件のpHは10以上とする。また、上述のいずれの変性処理工程においても、薬剤注入後に特に制限はないが、混和工程を設けることが好ましい。
【0079】
変性処理工程において、撹拌装置などによって撹拌混合する際、その撹拌速度に特に制限はないが、20min-1以上300min-1以下(回/分)が好ましく、30min-1以上200min-1以下がより好ましく、40min-1以上150min-1以下が特に好ましい。
【0080】
被処理水が変性処理工程に供される時間、すなわち、変性処理工程に関わる装置に留まる滞留時間は比較的短時間で処理することで処理に要する時間を短縮することが好ましい。変性処理工程における被処理水の滞留時間は、1分以上30分以下が好ましく、3分以上20分以下がより好ましく、5分以上15分以下が特に好ましい。
【0081】
被処理水のpHを確認するため、pH調整前およびpH調整後の被処理水に対して、pH測定手段を設置することが好ましい。pH調整手段としては、例えば、連続的にpH測定するpH計測装置などが挙げられる。特に、結果を別の記録装置に転送し、記録可能なpH計が好ましい。
【0082】
(フロック形成工程)
フロック形成工程では、変性処理工程によって処理された被処理水に対し、カチオン性有機高分子凝集剤を注入、混和し、フロックを形成させる。具体的には、上述の変性処理工程を通過した被処理水に対し、カチオン性有機高分子凝集剤が注入され、混和される。上記工程によって、被処理水中の油分、有機態窒素、SS、有機物などの成分がカチオン性有機高分子凝集剤と反応し、フロックを形成する。また、フロックの形成によって、フロックに取り込まれた成分以上が、分離液として分かれる。
【0083】
フロック形成工程において撹拌羽根などによって撹拌混合する際、その撹拌速度に特に制限はないが、20min-1以上300min-1以下(回/分)が好ましく、30min-1以上200min-1以下がより好ましく、40min-1以上150min-1以下が特に好ましい。
【0084】
このフロック形成工程は、高速撹拌工程と低速撹拌工程との2工程又はそれ以上の工程に分けられることが好ましい。高速撹拌とは、撹拌羽根の撹拌速度が200min-1(回/分)以上のことを意味し、低速撹拌とは、撹拌速度が200min-1(回/分)よりも遅いことを意味する。高速撹拌工程では、高速撹拌によりカチオン性有機高分子凝集剤を均一に分散させて混和させる。低速撹拌工程では、低速撹拌によりフロックを成長させる。
【0085】
被処理水中でフロックを十分に成長させるために必要な滞留時間は装置の種類や条件によって異なるが、本実施形態では、例えば、フロックの成長に関わる装置での滞留時間を1分以上30分以下とすることが好ましく、3分以上20分以下とすることがより好ましく、5分以上15分以下とすることが特に好ましい。
【0086】
フロック形成工程時の水温は特に制限はないが、加熱処理以外は5℃以上55℃以下が好ましく、20℃以上50℃以下がより好ましい。また、加熱処理を用いる場合、55℃以上70℃以下が好ましい。
【0087】
フロック形成工程では、被処理水に対し、カチオン性有機高分子凝集剤を2回以上に分割し注入することも可能である。また、被処理水に対し、1種以上の無機凝集剤を単独または上記カチオン性有機高分子凝集剤と併せて注入し、注入後の被処理水に対し、さらにカチオン性有機高分子凝集剤を注入することも可能である。無機凝集剤を注入する場合、その注入位置はカチオン性有機高分子凝集剤注入位置よりも上流側であることが好ましい。
【0088】
フロック形成によって、被処理水中から特に油分やSSがフロックとして除去され、有機態窒素や有機物などが同時に除去される。さらに、粘着性が低く、フロック強度が強いフロックが形成されることで、後段のハンドリング性が大幅に向上する。
【0089】
(固液分離工程)
固液分離工程では、フロック形成工程によって形成したフロックと分離液とを、機械を用いた手段によって固液分離する(機械固液分離工程)。具体的には、機械固液分離手段を有する。フロック形成工程で形成されたフロックを含む被処理水が機械固液分離手段へ供給されて固液分離されることにより、フロックと分離液とに分離される。分離される際、フロックの濃縮および脱水が同時に行われ、その際に生じた水も分離液として分離される。
【0090】
固液分離工程において機械固液分離手段を用いることにより、固液分離後のフロックは別途脱水機による脱水が不要になり、固液分離時間も短縮可能となる。機械固液分離後のフロックの処分方法は、特に限定されないが、産業廃棄処分、メタン発酵の原料、燃料として改質し燃焼や焼却用の燃料とすること、焼却の際の助燃剤、油分フロックから特定の油分を分離・抽出し使用すること、肥料として利用すること、などが挙げられる。分離液は、別途物理化学的処理、もしくは生物処理されることもあるが、被処理水中の規制対象成分が満足できる濃度まで処理されていれば、消毒後に処理水として放流することも可能である。
【0091】
本発明の実施の形態に係る排水処理方法によれば、フロック形成工程の前に、被処理水中の有機態窒素成分を変性させるための変性処理工程を実施することにより、フロック形成工程におけるフロック粘着性の増大を低減でき、凝集槽、凝集槽の撹拌機、配管等の設備にフロックが付着するトラブルを抑制しながら、従来に比べて効率良く安定的に処理を行うことができる。変性処理工程は、最大でも30分程度の比較的短時間の処理でその効果を発揮させることができるため、処理時間の短縮化も図れる。
【0092】
(排水処理装置)
本発明の実施の形態に係る排水処理装置は、図6に示すように、油分、有機態窒素、SSを含む被処理水の有機態窒素を変性処理する変性処理手段1と、変性処理された被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤を加えて混合し、フロック形成槽21内でフロックを形成させるフロック形成手段2と、フロックが形成された被処理水を、フロックと分離液とに固液分離する固液分離手段3とを備える。
【0093】
(変性処理手段1)
変性処理手段1は、被処理水の有機態窒素を変性処理槽11中において、以下のいずれかに記載の方法によって変性させる処理を行う。具体的には、変性処理手段1は、その変性処理の態様に応じてその装置形態を変更することが可能である。変性処理手段1として用いられる処理槽の数は特に限定されない。また、変性処理手段1で行われる変性処理としては、以下に示す変性処理の1つまたは2つ以上を組み合わせてもよい。変性処理のために変性処理手段1に薬剤を注入する場合、被処理水と薬剤を十分に混和させるため、撹拌装置を設けることができる。撹拌装置は特に限定されないが、撹拌羽根などが挙げられる。また、撹拌装置の形態、大きさ、数などは特に限定されない。
【0094】
一実施態様に係る変性処理手段1としては、図7に示すように、酸処理手段1aと、中和処理手段1bとを備えることができる。酸処理手段1aは、酸処理槽12と、酸処理槽12を撹拌する撹拌装置12aと、酸貯留槽13と、酸貯留槽13から酸処理槽12へ酸を注入する酸注入装置(図示省略)とを備える。酸処理手段1aでは、被処理水に酸貯留槽13から酸を添加して、酸処理槽12内の被処理水を酸性にする酸処理工程が行われる。
【0095】
中和処理手段1bは、中和槽14と、中和槽14を撹拌する撹拌装置14aと、アルカリ剤貯留槽15と、アルカリ剤貯留槽15から中和槽14へアルカリを注入するアルカリ剤注入装置(図示省略)とを備える。中和処理手段1bでは、酸処理手段1aによる酸処理工程後の被処理水に対し、アルカリ剤貯留槽15からアルカリ剤を添加して、中和処理が行われる。
【0096】
別の一実施態様に係る変性処理手段1としては、図8に示すように、被処理水に界面活性剤を添加する界面活性剤処理手段1cを備えることができる。界面活性剤処理手段1cは、界面活性剤処理槽16、界面活性剤貯留槽17、界面活性剤注入装置(不図示)、及び撹拌装置16aを備える。被処理水は、界面活性剤処理槽16に流入し、界面活性剤貯留槽17から界面活性剤注入装置によって界面活性剤が注入され、撹拌装置16aによって混和され、界面活性剤によって変性される。界面活性剤は、界面活性剤処理槽16へ注入する他に、フロック形成槽21へ注入することもできる。また、界面活性剤処理槽16とフロック形成槽21との間の配管に注入点を設け、注入点から注入するようにしてもよい。
【0097】
更に別の一実施態様に係る変性処理手段1としては、図9に示すように、被処理水の水温を加熱処理する加熱処理手段1dを備えることができる。加熱処理手段1dは、加熱処理槽18、加熱処理装置19、撹拌装置18aを備える。被処理水は、加熱処理槽18に流入し、加熱処理装置19によって加熱され、撹拌装置18aによって混和され、加熱によって変性される。加熱処理装置19は特に制限されないが、電気ヒータ、蒸気、ヒートポンプ、などが挙げられる。
【0098】
更に別の一実施態様に係る変性処理手段1としては、図10に示すように、被処理水にアルカリ剤を添加するアルカリ処理手段1eを備えることができる。アルカリ処理手段1eは、アルカリ処理槽111、アルカリ剤貯留槽112、アルカリ剤注入装置(不図示)、撹拌装置111aを備える。被処理水は、アルカリ処理槽111に流入し、アルカリ剤貯留槽112からアルカリ剤注入装置によってアルカリ剤が注入され、撹拌装置111aによって混和され、アルカリ剤によって変性される。アルカリ剤を注入する場所は特に限定されず、アルカリ処理槽111、アルカリ処理槽111と後段のフロック形成槽21の間、後段のフロック形成槽21など、カチオン性有機高分子凝集剤を注入する前であれば、いずれを選択してもよい。
【0099】
(フロック形成手段2)
フロック形成手段2は、変性処理手段1を通過した被処理水に対し、カチオン性有機高分子凝集剤を注入し、混和する。具体的には、フロック形成槽21、溶解槽22、カチオン性有機高分子凝集剤注入装置(不図示)、撹拌装置21aを備える。これら装置の具体的構成は特に限定されず、フロック形成槽21内の被処理水にカチオン性有機高分子凝集剤が注入され、混和されればよい。
【0100】
フロック形成槽21は2つ以上設置することも可能である。フロック形成槽21が図6に示すように1槽の場合、撹拌装置21aは高速撹拌および低速撹拌の機能を有することが好ましい。または、それぞれが高速撹拌または低速撹拌の機能を有する撹拌装置を2つ以上設置することも可能である。フロック形成槽21が2槽以上の場合、高速撹拌または低速撹拌の機能を有する撹拌装置21aをそれぞれのフロック形成槽21に設置することも可能である。これらフロック形成槽21と撹拌装置21aの数や配置は特に制限されない。また、カチオン性有機高分子凝集剤以外の薬剤を使用する場合、その薬剤ごとに薬剤注入装置を設置することが好ましい。
【0101】
変性処理後の被処理水はフロック形成槽21に流入し、溶解槽22から供給されるカチオン性有機高分子凝集剤が注入装置によって、フロック形成槽21に注入される。被処理水とカチオン性有機高分子凝集剤が撹拌装置21aによって混和される。溶解槽22は特に限定されず、カチオン性有機高分子凝集剤を溶媒によって希釈または溶解し、貯留することが出来ればよい。また、溶解槽22内に希釈または溶解のための撹拌装置(不図示)を設けても良い。
【0102】
(固液分離手段3)
固液分離手段3としては、フロック形成槽21から流入したフロックを含む被処理水からフロックと分離液とを固液分離するための固液分離装置31であれば種々の装置を利用することができ、重力式沈殿処理設備や加圧浮上装置、機械固液分離装置等が利用できる。その中でも特に、被処理水を加圧、遠心力、減圧(真空排気)又はこれらの組み合わせで機械的に固液分離する機械固液分離装置を用いることで、排水処理を効率化することができる。
【0103】
機械固液分離装置としては、例えば、従来から汚泥濃縮に用いる濃縮機や汚泥処理などに使用する脱水機を用いることが可能である。濃縮機は特に限定されないが、例えば、スクリュー濃縮機、ベルト濃縮機、遠心濃縮機、楕円板型濃縮機などを単独又は組み合わせて使用することができる。脱水機は特に限定されないが、後述する固液分離後の更なる脱水に用いるものと同じ種類の装置を用いることができる。
【0104】
図11は固液分離装置31として機械固液分離装置を採用した場合の機械固液分離装置の部分断面図の一例である。機械固液分離装置は、フロックを連続処理するフロック移動手段35を有している。フロック移動手段35は、例えば、回転ロールのようなベルト駆動手段32と、ベルト駆動手段32に架け渡されたベルト36とを有しており、フロック形成槽21から供給されるフロックを含む分離液は、装置上部の投入口33を介してベルト36上に供給される。
【0105】
ベルト36の一部又は全部はろ布で構成されており、フロック9は移動の間に水分が固液分離され、分離液はベルト下方の捕捉手段34に捕捉され、分離したフロック(汚泥)は排出口39から排出される。フロック排出後のベルト36は投入口33側へ戻り、フロックが再度供給されるが、投入口側に戻る前に、ベルト洗浄手段37からの洗浄水を散布し、ベルト36を洗浄してもよい。
【0106】
図11の機械固液分離装置は、フロックを含む分離液の連続処理に適しているが、より好ましくは加圧手段41を設置する。加圧手段41はフロック9を加圧(圧搾)する装置であって、例えば、排出口39の手前に配置された1枚以上の加圧板42を有している。
【0107】
加圧板42は鉛直面から投入口33側へ傾斜し、その下端とベルト36との間には隙間があり、その隙間を通過する際に、フロック9が加圧板42でベルト36に押し付けられて加圧(圧搾)される。このときの加圧圧力は、隙間の大きさ、加圧板42の傾斜角度及び枚数、フロックの移動速度及び供給量等を加圧条件とし、1以上の加圧条件を変更することで、調整することができる。
【0108】
なお、加圧手段41は加圧板42に限定されず、加圧ロールのような他の形状の加圧部材を用いてもよい。いずれの場合も、加圧手段41により、フロックの含水率を効率良く低下させることができる。フロック9に加える圧力は装置や固液分離条件により適宜変更可能であるが、200kPa以下が好ましく、特に1kPa以上150kPa以下が好ましく、その中でも1kPa以上100kPa以下が好ましく、より好ましくは10kPa以上であり、更に好ましくは15kPa以上であり、特に好ましくは20kPa以上である。圧力は、加圧板42の加圧条件で調整することができるし、スクリュープレス脱水機の場合は、スクリューの回転数や出口の開度を調整して内部圧力を調整することができる。
【0109】
なお、本実施形態では、フロック形成槽21と固液分離装置31とを別装置としたが、遠心脱水機のように、フロック形成工程と固液分離工程を同時に行う装置を採用することもできる。更に、被処理水から固液分離した後のフロックを、汚泥処理などに使用する脱水機で更に脱水処理することも可能である。この脱水に用いる脱水機は特に限定されず、従来から汚泥脱水に使用される脱水機を用いることができる。具体的には、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、多重円板型脱水機、多重板型スクリュープレス脱水機、回転加圧脱水機、真空脱水機、楕円板型脱水機などを用いることができる。
【0110】
本発明の実施の形態に係る排水処理装置によれば、変性処理手段1を備えることにより、被処理水の有機態窒素成分をフロック形成手段2での処理に適した形態に変性させることができる。変性処理手段1は特に複雑な構成を要するものでなく、比較的小型な装置で短時間の処理で十分である。よって、本発明の実施の形態に係る排水処理装置によれば、油分、有機態窒素及びSSを含む排水を、より簡易な設備で効率良く処理可能な排水処理装置が提供できる。
【0111】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。即ち、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【0112】
例えば、図6図11に示す排水処理装置を利用して、各設備の運転条件を最適化する運転条件支援システムの例を図12に示す。本運転条件支援システムは、変性処理手段1と、フロック形成手段2と、固液分離手段3と、フロック形成槽21内の被処理水の水質情報又は画像情報を取得する取得手段4と、取得手段4により取得された水質情報又は画像情報に基づいて、フロック形成槽21内の被処理水の水質を予測する予測手段7と、予測手段7の予測結果に基づいて、カチオン性有機高分子凝集剤の注入量を制御する制御手段5とを備える。
【0113】
取得手段4としては、フロック形成槽21内の被処理水の状態を取得可能な種々の装置が利用可能である。例えば、被処理水の処理水質を測定するためのpH計、BOD計、COD計、MLSS計、色度計、濁度計、透視度計、吸光光度計等の水質測定装置、フロック形成槽21内の被処理水中の粒子数を計測する粒子カウンタ、フロック形成槽21内の粒子の浮遊状態の画像を取得するためのセンサ又はカメラ等が利用可能である。そして、取得手段4が取得した水質情報又は画像情報は、制御手段5から例えばネットワーク6を介して予測手段7へ出力される。
【0114】
予測手段7には、過去特定期間(例えば数年間)にわたって得られた、原水情報、フロック形成槽21内の被処理水の水質情報または画像情報と、水質情報または画像情報に関連する処理水の水質情報と、排水処理装置の運転条件情報を受信し、水質解析又は画像診断により将来のフロック形成槽21内の状態を予測する。原水情報としては、pH、ヘキサン抽出物質濃度、SS、CODMn、BOD、有機態窒素濃度、有機態窒素濃度/SS比、有機態窒素濃度/CODMn比、有機態窒素濃度/n-Hex比等が挙げられる。運転条件情報としては、カチオン性有機高分子凝集剤の種類及び注入量、変性処理の条件、変性処理で用いられる薬剤の種類及び添加量等が挙げられる。処理水の水質情報としては、フロック形成槽21内の被処理水の水質情報、固液分離処理後の処理水の清澄性の評価結果を表す清澄性評価情報、ヘキサン抽出物質濃度、SS(SS除去率)、CODMn(CODMn除去率)BOD(BOS除去率)、有機態窒素濃度、脱水汚泥の含水率等が挙げられる。予測手段7は、原水情報、フロック形成槽21内の被処理水の水質情報又は画像情報、処理水の水質情報及び排水処理装置の運転条件情報を一の組み合わせとした教師データとして記憶し、実績値としての当該組み合わせについて、十分なデータ量を記憶手段(不図示)に蓄積しておく。
【0115】
予測手段7は、取得手段4が取得したリアルタイムの水質情報又は画像情報と、記憶手段に蓄積された教師データに基づいて、特定の期間経過後の将来のフロック形成槽21内の被処理水及び固液分離処理後の処理水の水質を予測する。例えば、予測された固液分離後の処理水の水質又はフロック形成槽21内の被処理水の水質が所定の基準を満たさない場合には、処理水の水質が基準を満たすように例えば高分子凝集剤の注入量を調整する等の運転条件を最適化した運転変更条件の予測モデルを作製する。予測モデルの作製は、以下に限定されるものではないが、例えば、ニューラルネットワーク等の公知の機械学習アルゴリズムを利用した教師あり学習などが採用でき、ニューラルネットワークのニューロン間の重みづけ関数を最適化することにより行うことができる。
【0116】
制御手段5は、予測手段7からの運転変更条件の情報を受信し、溶解槽22からカチオン性有機高分子凝集剤を注入する注入装置(不図示)、酸貯留槽13から酸処理槽12へ酸を注入する酸注入装置、或いはアルカリ剤貯留槽15から中和槽14へアルカリ剤を注入するアルカリ剤注入装置の少なくともいずれかを制御し、カチオン性有機高分子凝集剤、酸、アルカリ剤の少なくともいずれかの注入量を調整することができる。同様に、制御手段5は、pH調整剤の薬注量、無機凝集剤の薬注量、被処理水の水量、撹拌機の回転数や回転の有無などを自動制御することもできる。
【0117】
図12に示す運転条件支援システムによれば、取得手段4、制御手段5及び予測手段7を備えることにより、油分、有機態窒素及びSSを含む排水を、より効率良く、処理トラブルも少なく、長期間安定して処理することが可能となる。
【実施例
【0118】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0119】
本実施例では、油分、有機態窒素、SSを含む被処理水を変性処理し、カチオン性有機高分子凝集剤を注入することでフロックを形成し、固液分離後のフロック形状を外観観察および分離液(処理水)の水質を分析し、本発明の実施の形態に係る排水処理方法の処理性能を検討した。
【0120】
<試験方法>
試験には、油分、有機態窒素、SSを含む排水として食肉加工工場の排水を得た。排水は採水時期を変えて4種類(排水A、排水B、排水C、排水D)の排水を取得した。比較のため、一般的な油分含有排水5種類(排水E、排水F、排水G、排水H、排水I)も取得した。なお、表1及び表2に示す排水は、以下の記載において、本実施例による効果を示していない排水も含まれているが、これらの排水は、いずれも本実施例に係る処理に効果を発揮する排水を例示するものである。
【0121】
油分、有機態窒素、SSを含む有機態窒素/SS比率の高い、本実施例に利用可能な水の例を表1に示す。排水A、排水B、排水C、排水DのpHは、それぞれ6.6、6.7、6.6、6.6、有機態窒素はそれぞれ242mg/L、265mg/L、233mg/L、222mg/L、ヘキサン抽出物質(以下、n-Hex)はそれぞれ266mg/L、174mg/L、290mg/L、362mg/L、懸濁物質(以下、SS)はそれぞれ、1,170mg/L、900mg/L、980mg/L、1,230mg/Lであった。CODMnはそれぞれ838mg/L、737mg/L、810mg/L、833mg/L、BODはそれぞれ2,620mg/L、1,920mg/L、2,360mg/L、2,230mg/Lであった。また排水A、B、C、Dの有機態窒素/SS比率は0.18~0.29の範囲内であり、いずれも0.1以上であった。有機態窒素/n-Hex比率はいずれも0.5以上であった。
【0122】
【表1】
【0123】
一般的な含油排水の詳細を表2に示す。これらは食品加工工場や乳製品製造工場の通常得られる排水の水質例であり、排出先の業種及び原料成分がそれぞれ異なる排水の例を示している。有機態窒素/SS比率は0.1未満である。また、有機態窒素/CODMn比率および有機態窒素/n-Hex比率は、いずれも本実施例の対象排水よりも低く、有機態窒素の含有量も低い例を示している。
【0124】
【表2】
【0125】
水質項目のpH、n-Hex、SS、CODMn、BODの測定方法は、下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準拠した。また、有機態窒素は、ケルダール性窒素の測定値からアンモニア態窒素の測定値を差し引くことで算出した。ケルダール性窒素およびアンモニア態窒素の測定方法は、下水試験法に準拠した。
【0126】
試験に供したカチオン性有機高分子凝集剤の物性を表3に示す。カチオン性有機高分子凝集剤としては、油分離剤aを用いた。油分離剤a(ポリアクリル酸エステル系、分子量900万、回転粘度372mPa・s、カチオン度85mol%)を純水で溶解し、溶解濃度20g/Lとして使用した。
【0127】
【表3】
【0128】
<試験手順>
-基本手順-
(1)ビーカー内に排水を入れ、硫酸水溶液または水酸化ナトリウム水溶液でpHを調整した。
(2)pH調整後の排水にカチオン性有機高分子凝集剤(以下、油分離剤a)を少量ずつ添加し、スパチュラで撹拌してフロックを生成させた。
(3)反応フロックの状態と下層水(以下、処理水)の外観を目視で確認し、適正な薬注量及びpHを決定した。
(4)適正薬注量にて、処理水の水質を測定した。濃縮した反応フロック(濃縮汚泥)はふるい上の反応フロックを加圧板で加圧して脱水した。
(5)脱水したフロック(=濃縮汚泥)は乾燥(105℃、一晩)させ、含水率を測定した。
【0129】
-酸変性による変性処理工程を用いる場合の手順-
酸変性処理では、(1)の手順として、塩酸または硫酸を用いて排水を酸性側(pH2~4)に調整して変性処理し、マグネチックスターラーで水面が軽く波打つ程度で約10分間撹拌した。次に、アルカリ剤を加えて中性付近(pH6~7)に戻す中和処理を行った後、上記(2)~(4)の手順によって試験を実施した。
【0130】
-界面活性剤による変性処理工程を用いる場合の手順-
界面活性剤注入量の検討では、排水に対して0mg/L、100mg/L、150mg/L、200mg/Lのドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDS)を添加し、(1)の手順としてpH5に調整した後、上記(2)~(4)の手順によって試験を実施した。また、界面活性剤による変性処理工程と被処理水のpHの影響を検討するために、上記(1)のpH調整手順において、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムを用いてpHを5、5.5、6、7、8の範囲で排水のpHを調整し、SDSを150mg/L加えた後、上記(2)~(4)の手順によって試験を実施した。
【0131】
-加熱処理による変性処理工程を用いる場合の手順-
ビーカー内に排水(250mLまたは500mL)を入れ、加熱温度:20~25℃(加熱なし)、50℃、55℃、60℃の各恒温槽にて30分~1時間浸漬した。そして、排水を常温に戻してから、上記(2)~(4)の手順によって試験を実施した。
【0132】
-アルカリ処理による変性処理工程を用いる場合の手順-
アルカリ処理によるpH調整の検討では、(1)の手順において、排水のpHを5、6.3、7、8、9、10の各条件に調製した後、上記(2)~(4)の手順によって試験を実施した。
【0133】
-有機態窒素含有量及び含有比率の検討試験のための手順-
有機態窒素の濃度が120mg/L未満、有機態窒素/SS比率が0.1未満となる排水EおよびGに対し、(1)の手順において水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7に調整し、上記(2)~(4)の手順に従って試験を実施した。
【0134】
<反応フロックの判定方法>
フロックの大きさは、定規によって計測した。フロックの強度は、スパチュラで押した時、フロックが崩れないか、もしくはフロックが崩れて分散するかを判定した。フロックを押した時にフロック強度がある程度あり、フロックが崩れにくい場合を「フロック強度:あり」とした。また、フロックを押した時にフロック強度が弱く、フロックが崩れ、分散しやすかった場合を「フロック強度:弱い」とした。
【0135】
フロックの粘着性は、スパチュラで押した際に、スパチュラやビーカー壁面への接着の有無を目視で確認し、以下のように判定した。
A:粘着性がない状態
B:粘着性が弱く、スパチュラによる軽い力で剥がせる状態
C:BとDの判定が難しい状態
D:粘着性が強く、スパチュラによってすぐに剥がせない状態
【0136】
また、機械固液分離の可否判断については、フロックの大きさ:1mm以上、フロック強度:強い、フロック粘着性:A~Cの範囲内の3つの基準満たすことで、固液分離の可否を判断した。
【0137】
<処理水の清澄性の判定方法>
処理水の清澄性は目視で確認し、以下のように判定した。また、以下の判定基準のいずれか一方の判断が難しい時は、「○-◎」のように判定した。本実施例では、◎および○を本実施例の適用可能と判定した。
◎:透明であり、濁度が低く、透視度が高い状態
○:わずかに濁りがあるがほぼ透明であり、わずかな濁度があるが、透視度がある程度高い状態
△:原水の状態と比較し徐々に濁りが除去されてきた様子が確認できるが、濁度が高く、透視度も低い状態
×:濁度が高く、透視度も低い状態(原水に近い状態)
【0138】
処理水の色度、ヘキサン抽出物質除去率、SS除去率、CODMn除去率、BOD除去率は、変性処理前の被処理水の水質と処理水の水質をそれぞれ下水試験法(日本下水道協会発行、下水試験方法)に準拠した測定方法で測定することにより評価した。
【0139】
<試験結果>
<実施例1:酸変性処理後に中和処理する場合の変性処理の検討>
処理試験結果を表4に示す。実施例1-1~1-3に示すように、変性処理後のpHを2または3とすると、油分離剤aの注入量を少量とすることができ、反応フロックの状態も良好であった。処理水質は実施例1-1~1-3では、ヘキサン抽出物質除去率96~98%超、SS除去率:93~96%、BOD除去率:73~79%といずれも除去率が高く、油分、SS、有機物の同時除去が可能であった。中和後pHは6または7のどちらにおいても、薬注量、フロックの状態、処理水質の大きな違いは確認されなかった。実施例1-2および1-3の汚泥含水率は、それぞれ86.7%、85.1%であった。
【0140】
変性処理後のpHを4とする実施例1-4では、油分離剤aの薬注量はやや多くなり、CODMn除去率も実施例1-1~1-3に比べてやや低くなり、色度はやや高かったが、反応フロックの状態及び処理水の清澄性は良好であった。実施例1によれば、変性処理によって、酸性条件、より具体的にはpH5以下、更にはpH4未満、更にはpH2~3となるように、酸を加え、その後、pH6~7の中性条件へ中和処理することで、フロックの粘着性を低下でき、フロックの大きさや強度も良好となることが分かった。これにより、処理水質も向上させることができ、機械固液分離も可能となった。
【0141】
【表4】
【0142】
<実施例2:界面活性剤による変性処理工程を用いる場合>
(1)界面活性剤注入量の検討
処理試験結果を表5に示す。変性処理を行わない比較例2-1では、油分離剤aの注入量は少なく、反応フロックの状態は比較的良好であったが、処理水の清澄性はほとんど変化を示さず、良好な結果は得られなかった。実施例2-1~2-3に示すように、SDS注入量の増加に伴い、油分離剤aの注入量が増加した。しかしながら、SDS注入量の増加によって、フロックの状態は改善した。SDS注入量の増加に伴って、処理水の清澄性は改善されたが、注入量の増加によって各除去率の極端な変化は確認されなかった。実施例2によれば、pHを酸性側へ調整した後に、SDSを100~200mg/L程度、更には120~170mg/L程度添加することで、固液分離が可能なフロックの状態としつつ、処理水質が向上することが分かる。
【0143】
【表5】
【0144】
(2)pH調整による影響
処理試験結果を表6に示す。調整pH値が上がるにつれて、油分離剤aの注入量が増加した。実施例2-4、2-5、2-6において、調整pH値5~6の条件では、フロックの状態はいずれも変わらず、処理水質の大きな変化も確認されなかった。実施例2-7において、調整pH7とした場合、フロックの状態及びSS除去率、CODMn除去率及びBOD除去率は実施例2-4~2-6と変わらなかったが、色度が増加した。調整pH値8とした比較例2-2においては、フロックがうまく生成されず、処理水の清澄性も悪化した。以上の結果から、界面活性剤添加による変性処理においては、調整pHを5~7、更には5~6の弱酸性条件とした後に、SDSを添加することが好適であることが確認された。
【0145】
【表6】
【0146】
<実施例3:加熱処理による変性処理工程を用いる場合>
処理試験結果を表7に示す。加熱温度の上昇に伴って、処理水の色度は減少し、CODMn除去率が向上した。加熱による変性処理を行わない比較例3-1、3-2では、反応フロックの大きさが十分でないか、或いは強度が劣り、機械固液分離による効率的処理が困難であり、清澄性も実施例3-1~3-3に比べて劣っていた。実施例3-1と実施例3-2を比較すると、油分離剤a注入量、フロックの状態、処理水の清澄性は同等程度であった。しかしながら、実施例3-2の方が、処理水の色度が大きく改善した。また、実施例3-3は油分離剤a注入量が微増したものの、実施例3-2よりもフロックの粘着性が改善し、処理水の色度の減少やCODMn除去率の向上が確認された。以上の結果から、加熱温度50℃以上、より好ましくは55℃以上の条件による熱変性処理によって、固液分離が可能なフロックの状態としつつ、処理水質が向上することが確認された。
【0147】
【表7】
【0148】
<実施例4:アルカリ処理による変性処理工程を用いる場合>
比較例4-1~4-5において、pHが高くなるにつれて、処理水の清澄性は改善されたが、油分離剤a注入量が増加し、反応フロックの粘着性が増す傾向が確認された。特に、pH8、9とした場合は、フロック形成工程で得られるフロックに固液分離に必要なフロック強度を付与するための変性処理が適切に行われているとはいえず、粘着性の非常に強い糸状の生成物が生成され、固液分離が不可となった。一方、実施例4-1では、油分離剤a注入量は多いが、フロックの粘着性が低減し、処理水の清澄性は良好となった。本実施例4によれば、pH調整のみによって、フロックの状態および処理水の清澄性がすべて良好となる条件はpH10の条件のみであった。したがって、アルカリ剤の添加によって、被処理水のpHを10に調製し、油分離剤aを添加することで、反応フロックを良好に形成でき、機械固液分離による効率的処理も可能で、処理水質も良好な結果が得られることが確認された。
【0149】
【表8】
【0150】
<実施例5:従来の含油排水の排水処理への影響>
処理試験結果を表9に示す。実施例5-1、5-2における反応フロックは、中性付近の条件下においてはフロックの形状が良く、フロック粘着性が少なかった。また、処理水の清澄性は良好であり、ヘキサン抽出物質除去率は98%以上と高かった。以上の結果から、有機態窒素/SS比率が0.1未満の通常の含油排水では、本実施形態に係る油分離剤aを用いることにより、良好な処理が可能となることが確認された。処理水の水質要求度に応じて、本実施形態に係る有機態窒素の変性処理を更に実施することにより、更に水質の良好な処理水が得られるものと考えられる。
【0151】
【表9】
【符号の説明】
【0152】
1:変性処理手段
1a:酸処理手段
1b:中和処理手段
1c:界面活性剤処理手段
1d:加熱処理手段
1e:アルカリ処理手段
2:フロック形成手段
3:固液分離手段
4:取得手段
5:制御手段
6:ネットワーク
7:予測手段
11:フロック形成槽
11a、12a、14a、16a、18a、21a:撹拌装置
12:酸処理槽
13:酸貯留槽
14:中和槽
15:アルカリ剤貯留槽
16:界面活性剤処理槽
17:界面活性剤貯留槽
18:加熱処理槽
19:加熱処理装置
21:フロック形成槽
22:溶解槽
31:固液分離装置
32:ベルト駆動手段
33:投入口
34:捕捉手段
35:フロック移動手段
36:ベルト
37:ベルト洗浄手段
39:排出口
41:加圧手段
42:加圧板
111:アルカリ処理槽
111a:撹拌装置
112:アルカリ剤貯留槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12