IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-圧縮機 図1
  • 特許-圧縮機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20250307BHJP
   F04C 18/02 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
F04C29/12 D
F04C18/02 311B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021072516
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167023
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】貴志 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 尚夫
(72)【発明者】
【氏名】木全 央幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】堀田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0972281(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0060344(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0096338(US,A1)
【文献】特開2009-062876(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217385(WO,A1)
【文献】特開2009-281304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延び、側面に開口を有する筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に冷媒を吸入する吸入管と、
前記ハウジング内のスクロール圧縮部で圧縮された前記冷媒を前記ハウジング外に吐出する吐出管と、を備え、
前記吐出管は、
前記開口を貫通し、前記ハウジング内から前記ハウジング外に向かって前記ハウジングの径方向に延びる直管状の吐出管本体と、
前記吐出管は、端部が前記開口に固定されて前記ハウジングの径方向外側に延び、前記吐出管本体が内側に挿入された外管と、を備え、
前記開口の内周面と、前記吐出管本体の外周面のうち前記内周面に対向する開口対向部と、が離れていて、
前記外管の内径よりも前記吐出管本体の外径が小さく、
前記外管の内周面と前記吐出管本体の外周面との間にろう材が介在していて、
前記ろう材は、少なくとも、前記吐出管本体の先端部から前記吐出管本体の外周面と前記開口の内周面とが対向する開口対向部まで設けられている、
圧縮機。
【請求項2】
前記開口の内周面の内径よりも前記外周面の外径が小さい
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記吐出管本体の先端部は、前記外管の先端に対し、前記ハウジングの径方向で同じ位置、または前記ハウジングの径方向内側に配置されている
請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記吐出管本体の基端部は、前記ハウジング内に設けられた前記スクロール圧縮部を覆うディスチャージカバーに形成された貫通孔に固定され、
前記吐出管本体の中間部は、前記ハウジングと前記ディスチャージカバーとの間の空間に露出している
請求項1からの何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記吐出管本体の先端部の内側に、外部の配管が接続される接続管部材が接続され、
前記接続管部材は、前記吐出管本体よりも肉厚が大きい
請求項1からの何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
一端に前記スクロール圧縮部の旋回スクロールが設けられ、前記ハウジング内で前記軸方向に延びる回転軸と、
前記回転軸の他端に設けられたピストンロータを有するロータリー圧縮部と、をさらに備え、
前記吸入管から前記ハウジング内に吸入された前記冷媒は、前記ロータリー圧縮部と前記スクロール圧縮部とで二段階に圧縮される
請求項1からのいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記冷媒が二酸化炭素である
請求項1からのいずれか一項に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、筒状のハウジング内に固定された固定スクロールと、ハウジング内で固定スクロールに対して公転旋回する旋回スクロールと、固定スクロールと旋回スクロールとの間に形成された圧縮室で圧縮された冷媒をハウジング外に吐出する吐出管と、を備えた圧縮機が開示されている。この圧縮機において、ハウジング内には、圧縮機を覆うようにドーム状のディスチャージカバーが設けられている。吐出管は、ハウジングの軸線に直交する方向に延び、ハウジングのトップカバーとディスチャージカバーとを貫通して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5285455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧縮機では、組立の際、吐出管を、ハウジングのトップカバーに形成された孔と、ディスチャージカバーに設けられた筒状部分とに貫通させなければならない。このため、トップカバーを取り付けた状態で、トップカバーの孔と、ディスチャージカバーの筒状部分とが同軸上に高い位置精度で位置していなければ、吐出管を挿入(圧入)するのが困難となる場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、組立性を向上させることができる圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る圧縮機は、軸方向に延び、側面に開口を有する筒状のハウジングと、前記ハウジング内に冷媒を吸入する吸入管と、前記ハウジング内のスクロール圧縮部で圧縮された前記冷媒を前記ハウジング外に吐出する吐出管と、を備え、前記吐出管は、前記開口を貫通し、前記ハウジング内から前記ハウジング外に向かって前記ハウジングの径方向に延びる直管状の吐出管本体を備え、前記開口の内周面と、前記吐出管本体の外周面のうち前記内周面に対向する開口対向部と、が離れている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の圧縮機によれば、組立性を向上させることができる。また、高温高圧にさらされる吐出管に、曲げ等加工に付随する残留応力が無く、耐圧上有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る圧縮機の断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る圧縮機の吐出管の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
(圧縮機の構成)
以下、本開示の実施形態に係る圧縮機について、図1図2を参照して説明する。
図1に示すように、圧縮機10は、吸入管18からハウジング11内に吸入した冷媒を圧縮し、吐出管50からハウジング11外に吐出する。
圧縮機10は、ハウジング11内にスクロール圧縮部30を有している。
圧縮機10は、ハウジング11内に、スクロール圧縮部30と、ロータリー圧縮部20と、を備えていてもよい。
本実施形態において、圧縮機10は、スクロール圧縮部30と、ロータリー圧縮部20と、を備えた密閉型二段圧縮機である。
圧縮機10は、冷媒として、例えば二酸化炭素(CO)を圧縮する。
圧縮機10は、二酸化炭素以外の冷媒を圧縮してもよい。
【0010】
圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸15と、ロータリー圧縮部20と、スクロール圧縮部30と、電動モータ40と、吸入管18と、吐出管50と、を備えている。
【0011】
(ハウジングの構成)
ハウジング11は、圧縮機10の外殻を形成する。
ハウジング11は、軸方向Daに延びている。
ハウジング11は、軸方向Daを上下方向に沿わせて設けられていてもよい。
ハウジング11は、全体として円筒状に形成されていてもよい。
ハウジング11は、ハウジング本体12と、トップカバー13と、ボトムカバー14と、を備えている。
ハウジング11は、軸方向Daに延びる内部空間11Sを画成している。
【0012】
ハウジング本体12は、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。
ハウジング本体12の下部には、吸入管接続開口12hが形成されている。吸入管接続開口12hには、吸入管18が接続される。
吸入管18は、ハウジング11内に冷媒を吸入する。
吸入管18は、ハウジング11の外部から冷媒を吸入する。
吸入管18からハウジング11内に吸入された冷媒は、ロータリー圧縮部20とスクロール圧縮部30とで二段階に圧縮される。
【0013】
トップカバー13は、ハウジング本体12の上部に設けられる。
トップカバー13は、ハウジング本体12の軸方向Daの一方側の開口を閉塞する。
例えば、トップカバー13は、筒状部13aと、湾曲部13bと、を一体に有している。
筒状部13aは、軸方向Daに延びる円筒状に形成されている。
筒状部13aの下端は、ハウジング本体12の上端に接合されている。
湾曲部13bは、筒状部13aの上端に連続して設けられている。
湾曲部13bは、上方に凸となるように湾曲して形成されている。
湾曲部13bは、筒状部13aの上方を閉塞している。
【0014】
トップカバー13は、開口19を有している。
開口19は、例えば、筒状部13aに形成されている。
開口19は、筒状部13aを、径方向Drに貫通している。つまり、ハウジング11は、側面に開口19を有している。
【0015】
ボトムカバー14は、ハウジング本体12の下部に設けられる。
ボトムカバー14は、ハウジング本体12の軸方向Daの他方側の開口を閉塞する。
ボトムカバー14の下側には、ベース部材16が設けられている。
ベース部材16は、ハウジング11において軸方向Daに交差する径方向Drの外側に延びている。
圧縮機10が所定の取付対象に設置される際に、ベース部材16は、所定の取付対象に固定される。
【0016】
(回転軸の構成)
回転軸15は、ハウジング11内に収容されている。
回転軸15は、ハウジング11内で軸方向Daに延びている。
回転軸15は、軸受17Aと軸受17Bとにより、軸方向Daに沿った軸線周りに回転自在に支持されている。
軸受17Aと軸受17Bとは、軸方向Daに互いに間隔をあけて設けられている。
軸受17Aは、回転軸15の軸方向Da一方側(上側)に設けられている。
軸受17Aは、ハウジング本体12の内面に固定されている。
軸受17Bは、回転軸15の軸方向Da他方側(下側)に設けられている。
軸受17Bは、ロータリー圧縮部20を構成するシリンダ23にボルト締結されている。
【0017】
(ロータリー圧縮部の構成)
ロータリー圧縮部20は、ハウジング11内の底部に設けられている。
ロータリー圧縮部20は、電動モータ40の下方に配置されている。
ロータリー圧縮部20は、ピストンロータ22と、シリンダ23と、を有する。
【0018】
ピストンロータ22は、回転軸15の軸方向Da他方側の他端に設けられている。
ピストンロータ22は、回転軸15の中心軸に対して径方向Drに偏心して設けられている。
ピストンロータ22は、回転軸15の回転に伴って回転軸15の中心軸に対して偏心して回転する。
シリンダ23は、その内部にピストンロータ22を収容している。
ピストンロータ22は、シリンダ23内で偏心して回転する。
【0019】
ロータリー圧縮部20は、後述の吸入管18から吸入される冷媒を、シリンダ23内に導入する。
ロータリー圧縮部20は、シリンダ23内でピストンロータ22を旋回させることで、冷媒を圧縮する。
ロータリー圧縮部20は、圧縮した冷媒を、吐出孔(図示せず)を通して、ハウジング11の中間圧とされた内部空間11Sに吐出する。
【0020】
(スクロール圧縮部の構成)
スクロール圧縮部30は、ハウジング11内の上部に設けられている。
スクロール圧縮部30は、電動モータ40の上部に配置されている。
スクロール圧縮部30は、固定スクロール31と、旋回スクロール32と、を有する。
【0021】
固定スクロール31は、軸受17Aの上面に固定されている。
固定スクロール31は、下方に向けて突出する渦巻き状の固定ラップ31rを有している。
【0022】
旋回スクロール32は、固定スクロール31の下方で固定スクロール31に対向して配置されている。
旋回スクロール32は、回転軸15の軸方向Da一方側の端部(上端)に、径方向Drに偏心して設けられている。これにより、旋回スクロール32は、回転軸15の回転にともなって偏心して回転する。
旋回スクロール32は、固定スクロール31に対して公転する。
【0023】
旋回スクロール32は、上方に向けて突出する旋回ラップ32rを有している。
旋回スクロール32の旋回ラップ32rは、固定スクロール31の固定ラップ31rと噛み合っている。
旋回スクロール32の旋回ラップ32rと、固定スクロール31の固定ラップ31rとの間には、圧縮室34が形成される。
【0024】
スクロール圧縮部30は、吸入孔(図示無し)を通して、内部空間11Sから圧縮室34内に冷媒を吸い込む。圧縮室34内に吸い込まれた冷媒は、固定スクロール31に対して公転旋回する旋回スクロール32によって圧縮される。圧縮された冷媒は、固定スクロール31に形成された吐出孔35を通して、固定スクロール31の上側に吐出される。
【0025】
固定スクロール31の上側には、ディスチャージカバー39が設けられている。
ディスチャージカバー39は、ハウジング11内の上部に収容されている。
ディスチャージカバー39は、トップカバー13とスクロール圧縮部30との間に配置されている。
ディスチャージカバー39は、固定スクロール31にボルト等で固定されている。
【0026】
ディスチャージカバー39と固定スクロール31との間には、吐出空間39Sが形成されている。
吐出空間39Sは、内部空間11Sとは分離された空間であり、内部空間11Sには連通していない。
吐出空間39Sは、スクロール圧縮部30で圧縮された高圧の冷媒が、吐出孔35から吐出される。つまり吐出空間39Sは、高圧領域Hを形成している。
【0027】
(電動モータの構成)
電動モータ40は、ハウジング11内の上下方向の中間部に配置されている。
電動モータ40は、ロータ41と、ステータ42と、を有する。
ロータ41は、回転軸15の外面に固定されている。
ロータ41は、軸方向Daにおいて、軸受17Aと軸受17Bとの間に配置されている。
【0028】
ステータ42は、ロータ41の外面を囲むようにロータ41の径方向Drの外側に配置されている。
ステータ42は、ハウジング11のハウジング本体12の内面に固定されている。
ステータ42は、配線(図示せず)を介して、電源に接続されている。
電動モータ40は、電源からの電力によって回転軸15を回転させる。
【0029】
(吐出管の構成)
吐出管50は、ハウジング11内のスクロール圧縮部30で圧縮された冷媒を、ハウジング11外に吐出する。
本実施形態において、吐出管50は、ロータリー圧縮部20、およびスクロール圧縮部30で二段階に圧縮された高圧の冷媒を、ハウジング11外に吐出する。
吐出管50は、ハウジング11の上部に配置されている。
吐出管50は、トップカバー13及びディスチャージカバー39を貫通している。
吐出管50の一端は、吐出空間39Sに連通している。
吐出管50の他端は、ハウジング11外に向けて開口している。
【0030】
図2に示すように、吐出管50は、吐出管本体51と、外管52と、を備えている。
吐出管本体51は、開口19を貫通し、ハウジング11内からハウジング11外に向かってハウジング11の径方向Drに延びる直管状である。
吐出管本体51の基端部51bは、ディスチャージカバー39に形成された貫通孔39hに固定されている。
例えば、吐出管本体51の基端部51bは、貫通孔39hに、例えば圧入されていてもよい。
例えば、吐出管本体51の基端部51bは、貫通孔39hに、ろう付け、または溶接により接合されていてもよい。
吐出管本体51の先端部51sは、ハウジング11の外面から径方向Dr外側に突出している。
【0031】
吐出管本体51の外周面51gの外径は、開口19の内径よりも所定寸法小さい。
吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dと、開口19の内周面19fと、が離れている。
吐出管本体51の開口対向部51dと、開口19の内周面19fとは、吐出管本体51の管径方向に所定寸法離れている。
【0032】
外管52は、一端部52aが開口19に固定されている。
例えば、外管52の一端部52aは、開口19に、圧入されていてもよい。
例えば、外管52の一端部52aは、開口19に、ろう付け、溶接等によって接合されていてもよい。
外管52は、ハウジング11から径方向Dr外側に延びる直管状である。
外管52の内径よりも吐出管本体51の外径が小さい。
外管52の内側には、吐出管本体51が挿入されている。
吐出管本体51の先端部51sは、外管52の先端52sに対し、ハウジング11の径方向Drで同じ位置、または先端52sよりもハウジング11の径方向Dr内側に配置されている。つまり、吐出管本体51の先端部51sは、外管52の先端52sに対してハウジング11の径方向Dr外側に突出していない。
【0033】
外管52と吐出管本体51とは、例えばろう付けによって接合されていてもよい。
これにより、外管52の内面と吐出管本体51の外周面51gとの間には、ろう材Wが介在している。
ろう材Wは、少なくとも、吐出管本体51の先端部51sから開口対向部51dまで、連続して設けられている。
【0034】
このようにして、吐出管本体51は、基端部51bがディスチャージカバー39の貫通孔39hに固定され、先端部51s側が、外管52を介して開口19に固定されている。
吐出管本体51の中間部は、ハウジング11とディスチャージカバー39との間の空間11mに露出している。
【0035】
例えば、吐出管本体51の先端部51sの内側に、接続管部材53が接続されていてもよい。
例えば、接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sの内側に挿入されていてもよい。
例えば、接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sに、圧入されていてもよい。
例えば、接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sに、ろう付け、または溶接により接合されていてもよい。
接続管部材53は、圧縮機10へ外部の配管が接続される。
接続管部材53の一部は、吐出管本体51の先端部51sよりもハウジング11の径方向Dr外側に突出している。
接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sよりもハウジング11の径方向Dr外側に突出する部分に拡径部53dを有している。
拡径部53dには、外部の配管が接続可能とされている。
接続管部材53は、吐出管本体51よりも肉厚が大きい。
【0036】
上記のような吐出管50は、圧縮機10の組立の際、例えば、まず、作業者は、吐出管本体51を、開口19を通してディスチャージカバー39の貫通孔39hに取り付ける。このとき、外管52は、開口19に装着しない。開口19の内径は、吐出管本体51の外径よりも大きい。このため、開口19の内周面19fと吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとが、吐出管本体51の管径方向に離れている。このため、作業者は、吐出管本体51を、開口19を通してディスチャージカバー39の貫通孔39hに容易に取り付けることができる。
この後、作業者は、外管52を開口19に装着する。
さらに、作業者は、外管52と吐出管本体51とを、ろう付けにより接合する。
例えば、作業者は、その後、吐出管本体51の先端部51sに接続管部材53を接続してもよい。
【0037】
(作用及び効果)
本実施形態の圧縮機10によれば、吐出管50が、ハウジング11の側面に設けられた開口19を貫通している。開口19の内周面19fと、吐出管本体51の開口対向部51dとが離れている。このような構成において、開口19に吐出管50を貫通させた後、吐出管50を開口19に固定するようにすれば、吐出管50を開口19に容易に挿入することができる。したがって、圧縮機10の組立性を向上させることができる。また、ハウジング11の上面から軸方向に吐出管を挿入してから径方向へと屈曲させた構造と比較しても、高温高圧にさらされる吐出管に、曲げ等の加工に付随する残留応力も発生せず、耐圧上有利となる。
【0038】
また本実施形態の一例によれば、内周面19fの内径よりも外周面51gの外径が小さい。これにより、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとを離し、開口19と吐出管本体51との間に隙間を形成することができる。
【0039】
また本実施形態の一例によれば、吐出管50は、一端部が開口19に固定されてハウジング11の径方向Dr外側に延びる外管52をさらに備える。
このような構成によれば、外管52の内側に吐出管本体51が挿入される。ハウジング11の外周面51gよりも径方向Dr外側においては、吐出管50は、吐出管本体51の外側に外管52が設けられた二重構造となる。これにより、吐出管本体51と外管52とを合わせた吐出管50の肉厚を大きくすることができ、ハウジング11の径方向Dr外側における吐出管50の耐圧性を高めることができる。
また、外管52の一端部が固定され、その内側に吐出管本体51が位置することになる。これにより、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとの間の隙間の一部を、剛体からなる外管52で形成する(埋める)ことができる。これにより、例えばシール材等で開口19の内周面19fと、吐出管本体51の開口対向部51dとの隙間を埋める構造に比較すると、吐出管本体51を、開口19に対してより強固に固定することができる。これにより、吐出管本体51に応力が集中することを抑えることができる。
また、外管52を設けることで、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の開口対向部51dとの隙間を、より大きくすることができる。これにより、開口19の内径を、吐出管本体51の外径に対して、より大きくすることができる。したがって、作業者は、圧縮機10の組立時に、吐出管本体51を開口19に対して、より一層挿入しやすくなる。
また、外管52の内側に吐出管本体51が挿入されている部分で、外管52と吐出管本体51とを接合することで、外管52と吐出管本体51との接合領域を、吐出管本体51の延伸方向に長く確保することができる。したがって、吐出管本体51が、外管52を介してハウジング11により強固に接合される。
【0040】
また本実施形態の一例によれば、圧縮機10は、外管52と吐出管本体51との間にろう材Wが介在している。
これにより、外管52と吐出管本体51とを、強固に接合することができる。
また、外管52と吐出管本体51との隙間を、ろう材Wによって塞ぐことで、シール材等で塞ぐ構成に比較し、外管52と吐出管本体51との隙間のシール性、耐圧性を高めることができる。
【0041】
また本実施形態の一例によれば、ろう材Wは、少なくとも、吐出管本体51の先端部51sから吐出管本体51の開口対向部51dまで設けられている。
これにより、外管52と吐出管本体51とをろう付けにより接合する接合領域を、吐出管本体51の延伸方向に沿って長く確保できる。したがって、吐出管本体51が、強固に固定される。
【0042】
また本実施形態の一例によれば、吐出管本体51の先端部51sは、外管52の先端52sに対し、ハウジング11の径方向Drで同じ位置、またはハウジング11の径方向Dr内側に配置されている。
これにより、吐出管本体51の先端部51sが、外管52の先端52sからハウジング11の径方向Dr外側に突出しないことになる。これによって、吐出管本体51は、ハウジング11の外面よりも径方向Dr外側の部分で、吐出管本体51の外側に外管52が設けられた二重構造となり、高い耐圧性を確保することができる。
【0043】
また本実施形態の一例によれば、吐出管本体51の中間部は、ハウジング11とディスチャージカバー39との間の空間11mに露出している。
ハウジング11内において、ディスチャージカバー39の内側でスクロール圧縮部30に臨む吐出空間39Sは、ハウジング11外の大気に比較して圧力が高い、高圧領域Hとなる。また、ハウジング11内において、ハウジング11とディスチャージカバー39との間の空間11mは、ハウジング11外の大気よりも圧力が高く、かつディスチャージカバー39の内側の吐出空間39Sよりも圧力が低い中間圧領域Mとなる。つまり、吐出管本体51の中間部は、ハウジング11の内面とディスチャージカバー39の外周面との間の中間圧領域Mに露出することになる。このため、吐出管本体51を高圧領域Hに露出させる必要が無く、その肉厚を薄くすることができる。
【0044】
また本実施形態の一例によれば、圧縮機10は、吐出管本体51の先端部51s側に、吐出管本体51よりも肉厚が大きい接続管部材53が接続されている。
このように、吐出管本体51の先端部51sに接続した接続管部材53に、外部の配管を接続することができる。接続管部材53内には、ハウジング11内から吐出される高圧の冷媒が流れる。このため、接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sよりもハウジング11の径方向Dr外側に突出する部分で、高圧の冷媒が流れる接続管部材53内と、大気に曝される接続管部材53外との差圧が大きくなる。接続管部材53の肉厚を、吐出管本体51よりも大きくすることで、接続管部材53の耐圧性を確保することができる。
【0045】
また本実施形態の一例によれば、圧縮機10は、冷媒をロータリー圧縮部20とスクロール圧縮部30とで二段階に圧縮する。
これにより、圧縮機10は、二段階圧縮機を構成する。このような構成の圧縮機10から吐出される冷媒の圧力は高い。このため、上記したような構成によって、組立性を向上させつつ、高い耐圧性を有した吐出管50を備えることで、圧縮機10の有効性が高まる。
【0046】
また本実施形態の一例によれば、冷媒が二酸化炭素である。
このように、圧縮する冷媒が二酸化炭素である場合、圧縮機10には高い耐圧性が要求される。これに対し、上記したような構成を備えた圧縮機10は、特に適したものとなる。
【0047】
<付記>
実施形態に記載の圧縮機10は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)第1の態様に係る圧縮機10は、軸方向Daに延び、側面に開口19を有する筒状のハウジング11と、前記ハウジング11内に冷媒を吸入する吸入管18と、前記ハウジング11内のスクロール圧縮部30で圧縮された前記冷媒を前記ハウジング11外に吐出する吐出管50と、を備え、前記吐出管50は、前記開口19を貫通し、前記ハウジング11内から前記ハウジング11外に向かって前記ハウジング11の径方向Drに延びる直管状の吐出管本体51を備え、前記開口19の内周面19fと、前記吐出管本体51の外周面51gのうち前記内周面19fに対向する開口対向部51dと、が離れている。
【0049】
この圧縮機10において、吐出管50が、ハウジング11の側面に設けられた開口19を貫通している。開口19の内周面19fと吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとが離れている。このような構成において、開口19に吐出管50を貫通させた後、吐出管50を開口19に固定するようにすれば、吐出管50を開口19に容易に挿入することができる。したがって、圧縮機10の組立性を向上させることができる。
【0050】
(2)第2の態様に係る圧縮機10は、(1)の圧縮機10であって、前記内周面19fの内径よりも前記外周面51gの外径が小さい。
【0051】
このように、開口19の内周面19fの内径よりも吐出管本体51の外周面51gの外径を小さくすることで、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとを離すことができる。
【0052】
(3)第3の態様に係る圧縮機10は、(1)又は(2)の圧縮機10であって、前記吐出管50は、
一端部が前記開口19に固定されて前記ハウジング11の径方向Dr外側に延び、前記吐出管本体51が内側に挿入された外管52、をさらに備える。
【0053】
このような構成によれば、外管52の内側に吐出管本体51が挿入される。ハウジング11の外周面51gよりも径方向Dr外側においては、吐出管本体51の外側に外管52が設けられた二重構造となる。これにより、吐出管本体51と外管52とを合わせた吐出管50の肉厚を大きくすることができ、ハウジング11の径方向Dr外側における吐出管50の耐圧性を高めることができる。
また、外管52の一端部が固定され、その内側に吐出管本体51が位置することになり、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとの間の隙間の一部を、剛体からなる外管52で形成する(埋める)ことができる。これにより、例えばシール材等で開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとの隙間を埋める構造に比較すると、吐出管本体51を、開口19に対してより強固に固定することができる。これにより、吐出管本体51に応力が集中することを抑えることができる。
また、外管52を設けることで、開口19の内周面19fと、吐出管本体51の外周面51gのうち開口19の内周面19fに対向する開口対向部51dとの隙間を、より大きくすることができる。これにより、開口19の内径を、吐出管本体51の外径に対して、より大きくすることができる。したがって、圧縮機10の組立時に、吐出管本体51を開口19に対して、より一層挿入しやすくなる。
また、外管52の内側に吐出管本体51が挿入されている部分で、外管52と吐出管本体51とを接合することで、外管52と吐出管本体51との接合領域を、吐出管本体51の延伸方向に長く確保することができる。したがって、吐出管本体51が、外管52を介してハウジング11により強固に接合される。
【0054】
(4)第4の態様に係る圧縮機10は、(3)の圧縮機10であって、前記外管52の内径よりも前記吐出管本体51の外径が小さく、前記外管52の内周面19fと前記吐出管本体51の外周面51gとの間にろう材Wが介在している。
【0055】
このように、外管52の内周面と吐出管本体51の外周面51gとの間に、ろう材Wを介在させることで、外管52と吐出管本体51とを、強固に接合することができる。
また、外管52と吐出管本体51との隙間を、ろう材Wによって塞ぐことで、シール材等で塞ぐ構成に比較し、外管52と吐出管本体51との隙間のシール性、耐圧性を高めることができる。
【0056】
(5)第5の態様に係る圧縮機10は、(4)の圧縮機10であって、前記ろう材Wは、少なくとも、前記吐出管本体51の先端部51sから前記吐出管本体51の外周面51gと前記開口19の内周面19fとが対向する開口対向部51dまで設けられている。
【0057】
これにより、外管52と吐出管本体51とをろう付けにより接合する接合領域を、吐出管本体51の延伸方向に沿って長く確保できる。したがって、吐出管本体51が、強固に固定される。
【0058】
(6)第6の態様に係る圧縮機10は、(3)から(5)の何れか一つの圧縮機10であって、前記吐出管本体51の先端部51sは、前記外管52の先端52sに対し、前記ハウジング11の径方向Drで同じ位置、または前記ハウジング11の径方向Dr内側に配置されている。
【0059】
これにより、吐出管本体51の先端部51sが、外管52の先端52sからハウジング11の径方向Dr外側に突出しないことになる。これによって、吐出管本体51は、ハウジング11の外面よりも径方向Dr外側の部分で、吐出管本体51の外側に外管52が設けられた二重構造となり、高い耐圧性を確保することができる。
【0060】
(7)第7の態様に係る圧縮機10は、(1)から(6)の何れか一つの圧縮機10であって、前記吐出管本体51の基端部51bは、前記ハウジング11内に設けられた前記スクロール圧縮部30を覆うディスチャージカバー39に形成された貫通孔39hに固定され、前記吐出管本体51の中間部は、前記ハウジング11と前記ディスチャージカバー39との間の空間11mに露出している。
【0061】
これにより、ハウジング11内において、ディスチャージカバー39の内側でスクロール圧縮部30に臨む部分は、ハウジング11外の大気に比較し、高圧領域Hとなる。また、ハウジング11内において、ハウジング11とディスチャージカバー39との間の空間11mは、ハウジング11外の大気よりも圧力が高く、かつディスチャージカバー39の内側よりも圧力が低い中間圧領域Mとなる。つまり、吐出管本体51の中間部は、ハウジング11の内面とディスチャージカバー39の外周面との間の中間圧領域Mに露出することになる。このため、吐出管本体51を高圧領域Hに露出させる必要が無く、その肉厚を薄くすることができる。
【0062】
(8)第8の態様に係る圧縮機10は、(1)から(7)の何れか一つの圧縮機10であって、前記吐出管本体51の先端部51sの内側に、外部の配管が接続される接続管部材53が接続され、
前記接続管部材53は、前記吐出管本体51よりも肉厚が大きい。
【0063】
このように、吐出管本体51の先端部51sに接続した接続管部材53に、外部の配管を接続することができる。接続管部材53内には、ハウジング11内から吐出される高圧の冷媒が流れる。このため、接続管部材53は、吐出管本体51の先端部51sよりもハウジング11の径方向Dr外側に突出する部分で、高圧の冷媒が流れる接続管部材53内と、大気に曝される接続管部材53外との差圧が大きくなる。接続管部材53の肉厚を、吐出管本体51よりも大きくすることで、接続管部材53の耐圧性を確保することができる。
【0064】
(9)第9の態様に係る圧縮機10は、(1)から(8)の何れか一つの圧縮機10であって、一端に前記スクロール圧縮部30の旋回スクロール32が設けられ、前記ハウジング11内で前記軸方向Daに延びる回転軸15と、前記回転軸15の他端に設けられたピストンロータ22を有するロータリー圧縮部20と、をさらに備え、前記吸入管18から前記ハウジング11内に吸入された前記冷媒は、前記ロータリー圧縮部20と前記スクロール圧縮部30とで二段階に圧縮される。
【0065】
これにより、圧縮機10は、ロータリー圧縮部20とスクロール圧縮部30とで冷媒を二段階に圧縮する二段階圧縮機を構成する。このような構成の圧縮機10から吐出される冷媒の圧力は高い。このため、上記したような構成によって、組立性を向上させつつ、高い耐圧性を有した吐出管50を備えることで、圧縮機10の有効性が高まる。
【0066】
(10)第10の態様に係る圧縮機10は、(1)から(9)の何れか一つの圧縮機10であって、前記冷媒が二酸化炭素である。
【0067】
このように、圧縮する冷媒が二酸化炭素である場合、圧縮機10には高い耐圧性が要求される。これに対し、上記したような構成を備えた圧縮機10は、特に適したものとなる。
【符号の説明】
【0068】
10…圧縮機
11…ハウジング
11S…内部空間
11m…空間
12…ハウジング本体
12h…吸入管接続開口
13…トップカバー
13a…筒状部
13b…湾曲部
14…ボトムカバー
15…回転軸
16…ベース部材
17A、17B…軸受
18…吸入管
19…開口
19f…内周面
20…ロータリー圧縮部
22…ピストンロータ
23…シリンダ
30…スクロール圧縮部
31…固定スクロール
32…旋回スクロール
34…圧縮室
35…吐出孔
39…ディスチャージカバー
39S…吐出空間
39h…貫通孔
40…電動モータ
41…ロータ
42…ステータ
50…吐出管
51…吐出管本体
51b…基端部
51d…開口対向部
51g…外周面
51s…先端部
52…外管
52a…一端部
52s…先端
53…接続管部材
53d…拡径部
Da…軸方向
Dr…径方向
H…高圧領域
M…中間圧領域
W…ろう材
図1
図2