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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20250307BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20250307BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
G03G15/20 525
G03G21/14
G03G21/00 510
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021126878
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021791
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2024-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 武
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009643(JP,A)
【文献】特開2002-189373(JP,A)
【文献】特開2015-169856(JP,A)
【文献】特開2000-137404(JP,A)
【文献】特開平10-149048(JP,A)
【文献】特開2006-220888(JP,A)
【文献】特開2019-101190(JP,A)
【文献】特開2014-021205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0247351(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/20
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
記録材に転写されたトナー像を当該記録材に定着させる定着部材と、
前記定着部材に付着したトナーを回収する回収ローラと、
前記回収ローラのクリーニングを行うクリーニングウェブと、前記クリーニングウェブが予め巻かれた第1ローラと、前記第1ローラから供給される前記クリーニングウェブを巻き取る第2ローラと、前記回収ローラに対向して配置され、前記第2ローラの回転に従って前記第2ローラに向けて前記第1ローラから送り出された前記クリーニングウェブを、前記回収ローラのクリーニングのために前記回収ローラに対して押し付ける第3ローラと、を有するクリーニング手段と、
前記第2ローラを駆動するモータと、
前記モータの巻線に流れる駆動電流を検出する検出手段を有し、前記検出手段により検出される駆動電流に基づいて前記モータの負荷トルクに応じて変化するパラメータ値を決定し、前記パラメータ値に基づいて前記巻線に供給する駆動電流を制御することにより前記モータを駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記モータの駆動中に前記パラメータ値が所定値を上回ると、前記駆動手段に前記モータの駆動を停止させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記回収ローラは、前記クリーニングウェブに接触した接触状態と、前記クリーニングウェブから離間した非接触状態とを切り替え可能であり、
前記制御手段は、前記モータの駆動の停止後に、前記回収ローラを前記接触状態から前記非接触状態に切り替え、更に前記非接触状態から前記接触状態に切り替える着脱動作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記回収ローラが前記非接触状態である間に、前記駆動手段によって前記モータを所定時間、駆動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記モータの駆動の停止後に、前記着脱動作を第1の所定回数、実行する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の所定回数の前記着脱動作の実行後に、前記駆動手段によって前記モータを所定時間、駆動し、前記モータの駆動中に前記パラメータ値が前記所定値を下回るまで前記着脱動作を繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記着脱動作の繰り返し回数が第2の所定回数に達すると、前記クリーニングウェブに異常が生じていると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着部材は、回転駆動される定着ローラであり、
前記定着ローラに接触した接触状態と、前記定着ローラから離間した非接触状態とを切り替え可能であり、前記接触状態で前記定着ローラに対するリフレッシュ動作に用いられるリフレッシュローラを更に備え、
前記回収ローラは、前記クリーニングウェブに接触した前記接触状態と、前記クリーニングウェブから離間した前記非接触状態とを切り替え可能であり、
前記制御手段は、前記モータの駆動の停止後に、前記回収ローラを前記接触状態から前記非接触状態に切り替え、前記リフレッシュローラを前記非接触状態から前記接触状態に切り替えて前記リフレッシュ動作を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記リフレッシュ動作の完了後に、前記回収ローラを前記非接触状態から前記接触状態に切り替え、前記駆動手段によって前記モータを所定時間、駆動し、前記モータの駆動中に前記パラメータ値が前記所定値を下回るまで、前記リフレッシュ動作を繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記リフレッシュ動作の繰り返し回数が第2の所定回数に達すると、前記クリーニングウェブに異常が生じていると判定する
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記駆動手段は、前記モータの回転子の回転位相を基準とした回転座標系における、前記回転子にトルクを発生させるトルク電流成分と前記モータの巻線を貫く磁束の強度に影響する励磁電流成分とに基づいて、前記巻線に供給する駆動電流を制御し、
前記パラメータ値は前記トルク電流成分の電流値である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、記録材に形成されたトナー像を記録材に定着させる定着器を有する。定着器においてジャムが発生した場合、定着器の定着部材(定着ローラ)に未定着トナーが付着する可能性がある。そのため、ジャムの原因となった記録材が定着器から取り除かれた後に、定着ローラのクリーニングが行われうる。
【0003】
例えば、不織布で形成されたクリーニングウェブ(清掃部材)を定着ローラに接触させた状態で定着ローラを回転させ、定着ローラに付着したトナーをクリーニングウェブで拭き取ることで、このようなクリーニングが行われる。特許文献1には、ワンウェイクラッチを介してウェブ送りソレノイドのON/OFFによってウェブ巻き取り軸(ローラ)を回転させることで、ウェブ供給軸(ローラ)からのクリーニングウェブの供給を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-282029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような画像形成装置において、定着ローラと、定着ローラとクリーニングウェブとの間に介在し、定着ローラからトナーを回収する回収ローラとに多量のトナーが付着することがある。例えば、ジャムの解消後に、又は、誤った記録材設定に起因して定着処理に必要な熱量が不足した場合に、多量のトナーが定着ローラ及び回収ローラに付着することがある。これは、回収ローラと、当該回収ローラのクリーニングを行うクリーニングウェブとの間の摩擦力の増加につながる。その結果、回収ローラとクリーニングウェブとの引っ張り合いが生じ、クリーニングウェブの破断が起こりうる。クリーニングウェブの破断が起こると、定着ローラに付着したトナーを除去できなくなることで画像不良が発生する。また、クリーニングウェブの交換が必要になる。
【0006】
そこで、本発明は、回収ローラに付着するトナー量が増えてもクリーニングウェブの破断を防止できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、記録材に転写されたトナー像を当該記録材に定着させる定着部材と、前記定着部材に付着したトナーを回収する回収ローラと、前記回収ローラのクリーニングを行うクリーニングウェブと、前記クリーニングウェブが予め巻かれた第1ローラと、前記第1ローラから供給される前記クリーニングウェブを巻き取る第2ローラと、前記回収ローラに対向して配置され、前記第2ローラの回転に従って前記第2ローラに向けて前記第1ローラから送り出された前記クリーニングウェブを、前記回収ローラのクリーニングのために前記回収ローラに対して押し付ける第3ローラと、を有するクリーニング手段と、前記第2ローラを駆動するモータと、前記モータの巻線に流れる駆動電流を検出する検出手段を有し、前記検出手段により検出される駆動電流に基づいて前記モータの負荷トルクに応じて変化するパラメータ値を決定し、前記パラメータ値に基づいて前記巻線に供給する駆動電流を制御することにより前記モータを駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記モータの駆動中に前記パラメータ値が所定値を上回ると、前記駆動手段に前記モータの駆動を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回収ローラに付着するトナー量が増えてもクリーニングウェブの破断を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の構成例を示す断面図
図2-1】定着器の構成例を示す図
図2-2】定着器の構成例を示す図
図3】定着器の制御に関連する制御構成例を示すブロック図
図4-1】負荷駆動回路の構成例を示すブロック図
図4-2】モータと回転座標系との関係を示す図
図5】画像形成装置における印刷ジョブの実行手順を示すフローチャート
図6】リカバリ処理(S510)の手順を示すフローチャート(第1実施形態)
図7】リカバリ処理(S510)の手順を示すフローチャート(第2実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一又は同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
[第1実施形態]
<画像形成装置>
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す断面図である。画像形成装置100は、収納部103に収納された記録材Pを画像形成部110へ搬送し、画像形成部110によって記録材P上にトナー像を形成する。その後、画像形成装置100は、トナー像が形成された記録材Pを、画像形成部110から定着器200へ搬送する。定着器200は、記録材P上のトナー像を記録材Pに定着させる。記録材Pは、例えば、紙又はOHP等のシートである。
【0012】
画像形成装置100は、記録材Pに画像を形成(印刷)する画像形成部110を備える。画像形成部110は、それぞれ異なるトナー色に対応する4つのステーション120a,120b,120c,120dを有する。画像形成部110は更に、中間転写ベルト115及び転写ローラ116を備える。ステーション120a,120b,120c,120dは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成し、形成したトナー像を中間転写ベルト115に転写する。以下では主にステーション120aの構成について説明するが、ステーション120b,120c,120dもステーション120aと同様の構成を有する。
【0013】
ステーション120aは、感光ドラム111、一次帯電器112、レーザユニット113、及び現像器114を備える。感光ドラム111は、像担持体の一例であり、図1において反時計回り(矢印の方向)に回転する。一次帯電器112は、感光ドラム111の表面を一様に帯電させる。レーザユニット113は、レーザ光を出力する光源を有しており、帯電した感光ドラム111の表面をレーザ光で露光することで、感光ドラム111上に静電潜像を形成する。現像器114は、感光ドラム111上に形成された静電潜像を、トナー(現像剤)を用いて現像することで、感光ドラム111上にトナー像を形成する。ステーション120b,120c,120dの感光ドラム上にも同様にトナー像が形成される。
【0014】
ステーション120a,120b,120c,120dにおいて各感光ドラムに形成されたトナー像は、中間転写ベルト115上に転写される。中間転写ベルト115上のトナー像は、中間転写ベルト115の周面が移動に従って、転写ローラ116によって記録材Pへのトナー像の転写が行われる転写位置まで移動する。転写ローラ116は、中間転写ベルト115上のトナー像を、収納部103から搬送される記録材Pに転写する。トナー像が転写された記録材Pは、画像形成部110から定着器200へ搬送される。
【0015】
定着器200は、定着ローラ201(定着部材)、加圧ローラ202(加圧部材)、及びクリーニング部210を有する。定着器200は、記録材Pに熱及び圧力を加えることで、記録材Pに転写されたトナー像を記録材Pに定着させる。後述するように、クリーニング部210は、定着ローラ201に付着した未定着トナーを除去することで定着ローラ201のクリーニングを行うように構成される。
【0016】
片面印刷の場合、画像形成装置100は、画像形成部110及び定着器200による処理が完了した記録材Pを、フラッパ132によって排出経路139へ導くことで、装置の外部へ排出する。フラッパ132は、定着器200を通過した記録材Pを搬送経路134又は排出経路139へ選択的に導くように動作する。
【0017】
一方、両面印刷の場合、画像形成装置100は、第1面への画像形成が完了した記録材Pに対して、その第2面への画像形成が行われるよう、画像形成部110へ再び搬送する。具体的には、画像形成装置100は、定着器200を通過した記録材Pを、フラッパ132によって搬送経路134へと導いて、反転部136へ搬送する。画像形成装置100は、反転センサ135によって記録材Pの後端が検出されると、反転部136によって記録材Pの搬送方向を反転させ、フラッパ135によって記録材Pを搬送経路137へ導く。画像形成装置100は更に、記録材Pを、搬送経路137を通じて画像形成部110(転写ローラ116による転写位置)まで搬送し、第2面にトナー像が転写された記録材Pを更に定着器200へ搬送する。定着器200による定着処理が行われることで、記録材Pの両面(第1面及び第2面)への画像形成が完了する。画像形成装置100は、定着器200を通過した記録材Pを、フラッパ132によって排出経路139へ導くことで、装置の外部へ排出する。
【0018】
画像形成装置100は、制御基板150及び操作部180を更に備える。操作部180は、各種画面を表示可能な表示部と、ユーザが操作可能な操作キーを含む操作入力部とを有する。表示部は、画像形成装置100の状態の表示、及び操作画面の表示等に使用される。操作入力部は、ユーザからの指示を受け付けるために使用される。なお、操作入力部は、表示部上に配置されたタッチパネルを含んでもよい。
【0019】
制御基板150は、CPU151及びメモリ152を備える。CPU151は、画像形成装置100内の各デバイスを制御することで画像形成装置100全体の動作を制御する制御部として機能する。CPU151は、画像形成装置100内の各センサから出力される信号、及びメモリ152に格納される情報(データ)に基づいて、画像形成装置100内の各デバイスを制御する。メモリ152には、各デバイスの制御に必要となるデータが格納され、当該データはCPU151によって使用されうる。
【0020】
<定着器200の構成>
図2-1及び図2-2は、本実施形態における定着器200の構成例を示す図である。図2-1(A)は、クリーニング部210による定着ローラ201のクリーニングが行われるクリーニング状態における定着器200の状態の例を示している。図2-1(B)は、スタンバイ状態における定着器200の状態の例を示している。図2-2は、リフレッシュローラ220による定着ローラ201に対するリフレッシュ動作が行われるリフレッシュ状態における定着器200の状態の例を示している。
【0021】
また、図3は、定着器200の制御に関連する制御構成例を示すブロック図である。制御基板150は、CPU151、メモリ152、及び負荷駆動回路153を備える。CPU151は、負荷駆動回路153を制御し、定着器200内の各電気部品(各種モータ、各種センサ、ハロゲンヒータ205、サーミスタ206等)の動作を制御する。
【0022】
負荷駆動回路153は、CPU151による制御下で、ウェブモータ240、着脱モータ241、ハロゲンヒータ205、定着モータ244、及び着脱モータ245を駆動するように構成される。また、負荷駆動回路153は、ウェブモータ240のトルクの検出を行うトルク検出部154を有する。着脱モータ241は、クリーニング部210、回収ローラ204、及び定着ローラ201の着脱を行う着脱機構(図示せず)を駆動する。回収ローラ204は、この着脱機構により、ウェブ212に接触した接触状態と、ウェブ212から離間した非接触状態とを切り替え可能である。着脱モータ245は、定着ローラ201に対するリフレッシュローラ220の着脱を行う着脱機構(図示せず)を駆動する。リフレッシュローラ220は、この着脱機構により、定着ローラ201に接触した接触状態と、定着ローラ201から離間した非接触状態とを切り替え可能である。本実施形態において、負荷駆動回路153は、モータのトルクを検出する検出手段(トルク検出部154)を有し、モータを駆動する駆動手段の一例であり、CPU151は、駆動手段(負荷駆動回路153)を制御する制御手段の一例である。
【0023】
図2-1及び図2-2に示されるように、定着器200は、定着ローラ201(定着部材)、加圧ローラ202(加圧部材)、回収ローラ204、サーミスタ206、クリーニング部210、リフレッシュローラ220、及びウェブモータ240を有する。定着ローラ201(定着部材)と加圧ローラ202(加圧部材)との間に形成されるニップ部おいて、記録材P上のトナー像の定着処理が行われる。
【0024】
定着ローラ201は、中空ローラで構成され、当該中空ローラの内部に加熱源としてハロゲンヒータ205を備える。サーミスタ206は、定着ローラ201の温度を測定するためのセンサである。CPU151は、サーミスタ206によって測定された温度に基づいてハロゲンヒータ205のオン/オフを制御することで、定着ローラ201の温度を所定の温度に維持又は調整する。
【0025】
定着ローラ201は、定着モータ244によって駆動(回転駆動)されることで回転するように構成され、加圧ローラ202は、定着ローラ201に従動して回転するように構成される。定着ローラ201及び加圧ローラ202は、それらの間のニップ部において記録材Pに熱及び圧力を加えながら、記録材Pを搬送方向の下流へ(図2において矢印の方向へ)記録材Pを搬送する。
【0026】
回収ローラ204は、定着ローラ201に接触した状態(図2-1(A))で当該定着ローラに従動し、定着ローラ201(定着部材)に付着したトナー(未定着トナー)を回収するように構成される。回収ローラ204は、例えばSUS(ステンレス)製のローラで構成される。クリーニング部210は、定着ローラ201に付着した付着物を、回収ローラ204を介して除去することで、定着ローラ201のクリーニング(清掃)を行うように構成される。
【0027】
クリーニング部210は、供給ローラ211、クリーニングウェブ212(以下、単に「ウェブ」と称する。)、押圧ローラ213、及び巻取りローラ214を有する。巻取りローラ214は、ウェブモータ240によって駆動されることで回転し、供給ローラ211は、巻取りローラ214に従動して回転する。このように、ウェブモータ240は、第2ローラ(巻取りローラ214)を駆動するモータの一例である。
【0028】
ウェブ212は、不織布等によって形成されたシート状(帯状)の清掃部材であり、回収ローラ204のクリーニングを行う。ウェブ212は、未使用の状態において供給ローラ211に予め巻かれている。ウェブ212は、供給ローラ211の回転に従って未使用部分が送り出され(供給され)、回収ローラ204に対向して配置された押圧ローラ213を経由して、巻取りローラ214によって巻き取られるように配置されている。
【0029】
押圧ローラ213は、回転方向に対して直交する幅方向における所定幅の領域においてウェブ212を回収ローラ204に対して押し付けるように構成される。ウェブ212が回収ローラ204に対して押し付けられた状態(図2-1(A))で、供給ローラ211から供給されるウェブ212を断続的に巻き取るように巻取りローラ214が駆動されることで、回収ローラ204に対してウェブ212が擦り付けられる。これにより、その結果、ウェブ212の未使用部分(供給ローラ211から供給された部分)によって、回収ローラ204上のトナーが拭き取られる。
【0030】
このように、本実施形態において、供給ローラ211は、クリーニングウェブが予め巻かれた第1ローラの一例であり、巻取りローラ214は、第1ローラ(供給ローラ211)から供給されるクリーニングウェブを巻き取る第2ローラの一例である。また、押圧ローラ213は、回収ローラ204に対向して配置され、第2ローラ(巻取りローラ214)の回転に従って第2ローラに向けて第1ローラ(供給ローラ211)から送り出されたクリーニングウェブを、回収ローラ204のクリーニングのために回収ローラ204に対して押し付ける第3ローラの一例である。
【0031】
リフレッシュローラ220は、表面が荒い研磨ローラで構成される。リフレッシュローラ220は、例えば大量の記録材Pに対して連続して画像形成を行う印刷ジョブの実行時に、定着ローラ201に生じうる傷又は付着物を除去するためのリフレッシュ動作に使用される。リフレッシュローラ220は、リフレッシュ動作時に、定着ローラ201に接触(加圧)した状態(図2-2)となり、定着ローラ201に従動して回転する。
【0032】
<定着器200の動作状態>
本実施形態において、定着器200の動作状態は、クリーニング状態(図2-1(A))と、スタンバイ状態(図2-1(B))と、リフレッシュ状態(図2-2)との間で遷移する。
【0033】
クリーニング状態(図2-1(A))において、クリーニング部210と回収ローラ204、及び回収ローラ204と定着ローラ201が、それぞれ接触した接触状態(互いに加圧した加圧状態)となる。スタンバイ状態(図2-1(B))において、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201は、互いに離れた非接触状態(互いに加圧しない非加圧状態)となる。クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201についての接触状態と非接触状態との切り替え(着脱)は、着脱モータ241及び着脱センサ242を用いて行われる。着脱センサ242は、回収ローラ204が定着ローラ201に接触している場合にON信号を出力し、回収ローラ204が定着ローラ201に接触していない場合にOFF信号を出力するように構成される。
【0034】
クリーニング状態及びスタンバイ状態において、リフレッシュローラ220は、定着ローラ201から離れた非接触状態となる。リフレッシュ状態(図2-2)において、リフレッシュローラ220は、定着ローラ201に接触した接触状態となる。リフレッシュローラ220についての接触状態と非接触状態との切り替え(着脱)は、着脱モータ245及びリフレッシュセンサ243を用いて行われる。リフレッシュセンサ243は、リフレッシュローラ220が定着ローラ201に接触している場合にON信号を出力し、リフレッシュローラ220が定着ローラ201に接触していない場合にOFF信号を出力するように構成される。
【0035】
CPU151は、クリーニング部210によるクリーニング動作を行う際には、着脱センサ242の出力がOFF信号からON信号に切り替わるまで、着脱モータ241を動作させる。これにより、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201を接触状態(加圧状態)にする。
【0036】
CPU151は、定着器200の動作状態をクリーニング状態からスタンバイ状態へ移行させる際には、着脱センサ242の出力がON信号からOFF信号に切り替わるまで着脱モータ241を動作させる。これにより、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201を非接触状態(非加圧状態)にする。CPU151は、印刷ジョブ(画像形成)を実行する際には、この非加圧状態で定着モータ244を動作させて定着ローラ201を回転させる。更に、CPU151は、サーミスタ206によって測定される、定着ローラ201の温度に基づいて、定着ローラ201の温度が所定範囲内で維持されるようにハロゲンヒータ205を制御する。
【0037】
また、CPU151は、リフレッシュローラ220を用いたリフレッシュ動作を行う際には、リフレッシュセンサ243の出力がOFF信号からON信号に切り替わるまで、着脱モータ245を動作させる。これにより、リフレッシュローラ220を、定着ローラ201に対して接触した接触状態(加圧状態)にする。CPU151は、この加圧状態で定着モータ244を動作させて定着ローラ201を回転させることで、定着ローラ201の表面に存在する傷又は付着物をリフレッシュローラ220によって除去する。
【0038】
<負荷駆動回路153の構成>
本実施形態では、クリーニング動作の実行中に、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)を、負荷駆動回路153に設けられたトルク検出部154によって検出し、その検出結果に基づいてウェブモータ240の動作を停止させる。例えば、ウェブモータ240のトルク検出値が所定の閾値を上回ると、ウェブモータ240の動作を停止させる。これにより、ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力の増加に起因して、ウェブ212と回収ローラ204との間で引っ張り合いが生じ、ウェブ212の破断が生じることを防止する。
【0039】
図4-1及び図4-2を参照して、負荷駆動回路153の構成例について説明する。以下では、ウェブモータ240に対する駆動構成について説明するが、他のモータ(着脱モータ241,245及び定着モータ244)についても同様の駆動構成が用いられてもよい。本実施形態では、ウェブモータ240として、A相(第1相)及びB相(第2相)の2相から成るステッピングモータを用い、当該モータの駆動制御にベクトル制御を用いる構成を採用する。以下で説明するように、この構成において得られる、回転座標系の電流値(q軸電流の電流値)を、トルク検出部154によるウェブモータ240のトルクの検出に利用する。
【0040】
図4-1は、負荷駆動回路153の構成例を示すブロック図である。ウェブモータ240には、当該モータの回転子(ロータ)401の回転位相θを検出するための位相検出部512が設けられている。位相検出部512は、例えばロータリエンコーダで構成されうる。回転位相θは、回転子401の回転によってウェブモータ240のA相及びB相の巻線に誘起される誘起電圧(逆起電圧)Eα及びEβの値を推定し、その推定値に基づいて推定されてもよい。即ち、ウェブモータ240の駆動制御にセンサレス制御が適用されてもよい。また、以下の説明においては、電気角としての回転位相θ、指令位相θ_ref等に基づいてモータの制御が行われるが、例えば、電気角が機械角に変換され、当該機械角に基づいてモータの制御が行われてもよい。
【0041】
図4-2は、モータと、d軸及びq軸によって表される回転座標系との関係を示す図である。図4-2では、静止座標系において、A相の巻線に対応した軸であるα軸と、B相の巻線に対応した軸であるβ軸とが定義されている。また、回転子401に用いられている永久磁石の磁極によって作られる磁束の方向に沿ってd軸が定義され、d軸から反時計回りに90度進んだ方向(d軸に直交する方向)に沿ってq軸が定義されている。α軸とd軸との成す角度はθと定義され、回転子401の回転位相は角度θによって表される。
【0042】
ベクトル制御では、回転子401の回転位相θを基準とした回転座標系が用いられる。具体的には、モータ(ウェブモータ240)の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルの、回転座標系における電流成分の値が用いられる。回転座標系における電流ベクトルは、回転子401にトルクを発生させるq軸成分(トルク電流成分)と、巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸成分(励磁電流成分)とを含む。この電流ベクトルのd軸成分の値とq軸成分の値とがベクトル制御に用いられる。
【0043】
ベクトル制御とは、回転子401の目標位相を表す指令位相と実際の回転位相との偏差が小さくなるように、トルク電流成分iqの値と励磁電流成分idの値とを制御する位相フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御方法である。また、回転子401の目標速度を表す指令速度と実際の回転速度との偏差が小さくなるように、トルク電流成分iqの値と励磁電流成分idの値とを制御する速度フィードバック制御を行うことによってモータを制御する制御手法もある。
【0044】
図4-1に示されるように、負荷駆動回路153は、モータ制御部157、PWMインバータ506、電流検出器507,508、A/D変換器510、及びトルク検出部154を備える。モータ制御部157は、上位のコントローラに相当するCPU151から、ウェブモータ240の回転子401の目標位相を表す指令位相θ_refを示す制御信号の入力を受ける。モータ制御部157は、少なくとも1つのASICで構成されており、以下に説明する各機能を実行する。
【0045】
PWMインバータ506は、モータ制御部157から出力される駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM信号に従って、ウェブモータ240の巻線へ駆動電流を供給することによって、ウェブモータ240を駆動する。モータ制御部157は、ウェブモータ240へ供給する駆動電流を、ウェブモータ240の回転子401の回転位相θを基準とした回転座標系の電流値によって制御する、上述のベクトル制御を行う。
【0046】
ベクトル制御では、ウェブモータ240のA相及びB相の巻線に流れる駆動電流に対応する電流ベクトルが、α軸及びβ軸で表される静止座標系から、d軸及びq軸で表される回転座標系に変換される。このような変換の結果、ウェブモータ240に供給される駆動電流は、回転座標系において、直流のd軸成分(d軸電流)及びq軸成分(q軸電流)によって表される。この場合、q軸電流は、ウェブモータ240にトルクを発生させるトルク電流成分に相当し、回転子401の回転に寄与する電流である。d軸電流は、ウェブモータ240の回転子401の磁束の強度に影響する励磁電流成分に相当する。
【0047】
モータ制御部157は、電流ベクトルのq軸成分(q軸電流)及びd軸成分(d軸電流)をそれぞれ独立に制御することができる。これにより、回転子401が回転するために必要なトルクを効率的に発生させることができる。
【0048】
モータ制御部157は、位相検出部512によって検出された回転位相θに基づいてベクトル制御を行う。位相制御器502を含む外側の制御ループでは、ウェブモータ240の回転子401の回転位相θの決定結果に基づいて、ウェブモータ240の位相制御が行われる。
【0049】
CPU151は、ウェブモータ240の回転子401の目標位相を表す指令位相θ_refを生成し、所定の時間周期で指令位相θ_refをモータ制御部157へ出力する。指令位相θ_refは、例えば、パルス状の矩形波信号であり、1パルスがウェブモータ240(ステッピングモータ)の回転角度の最小変化量に対応する。減算器551は、ウェブモータ240の回転子401の回転位相θと指令位相θ_refとの偏差を演算し、当該偏差を位相制御器502に出力する。
【0050】
位相制御器502は、例えばPID制御(比例制御(P)、積分制御(I)及び微分制御(D))に基づいて、減算器551から出力された偏差が小さくなるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。具体的には、位相制御器502は、PID制御に基づいて減算器551から出力された偏差が0になるように、q軸電流指令値iq_ref及びd軸電流指令値id_refを生成して出力する。なお、位相制御器502において、PID制御に代えて、例えばPI制御が用いられてもよい。また、回転子401に永久磁石が用いられる場合、通常は巻線を貫く磁束の強度に影響するd軸電流指令値id_refは0に設定されるが、この限りではない。
【0051】
電流制御器503,504を含む制御ループでは、ウェブモータ240の各相の巻線に流れる駆動電流の検出値に基づいて、ウェブモータ240の各相の巻線に流れる駆動電流が制御される。ここで、ウェブモータ240のA相及びB相の巻線にそれぞれ流れる駆動電流(交流電流)は、電流検出器507,508によって検出され、その後、A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換される。A/D変換器510によってアナログ値からデジタル値へと変換された駆動電流の電流値は、静止座標系における電流値iα及びiβとして、次式のように表される。なお、Iは電流の振幅の大きさを示す。
iα=I*cosθ
iβ=I*sinθ (1)
これらの電流値iα及びiβは、座標変換器511に入力される。
【0052】
座標変換器511は、次式によって、静止座標系における電流値iα及びiβを回転座標系におけるq軸電流の電流値iq及びd軸電流の電流値idに変換する。
id= cosθ*iα+sinθ*iβ
iq=-sinθ*iα+cosθ*iβ (2)
【0053】
減算器552には、位相制御器502から出力されたq軸電流指令値iq_refと座標変換器511から出力された電流値iqとが入力される。減算器552は、q軸電流指令値iq_refと電流値iqとの偏差を演算し、当該偏差を電流制御器503に出力する。また、減算器553には、位相制御器502から出力されたd軸電流指令値id_refと座標変換器511から出力された電流値idとが入力される。減算器553は、d軸電流指令値id_refと電流値idとの偏差を演算し、当該偏差を電流制御器504に出力する。
【0054】
電流制御器503は、PID制御に基づいて、入力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vqを生成する。具体的には、電流制御器503は、入力される偏差が0になるように駆動電圧Vqを生成して座標変換器505に出力する。また、電流制御器504は、PID制御に基づいて、入力される偏差が小さくなるように駆動電圧Vdを生成する。具体的には、電流制御器504は、入力される偏差が0になるように駆動電圧Vdを生成して座標変換器505に出力する。なお、電流制御器503において、PID制御に代えて、例えばPI制御が用いられてもよい。
【0055】
座標変換器505は、電流制御器503,504から出力された回転座標系における駆動電圧Vq及びVdを、次式によって、静止座標系における駆動電圧Vα及びVβに逆変換する。
Vα=cosθ*Vd-sinθ*Vq
Vβ=sinθ*Vd+cosθ*Vq (3)
【0056】
座標変換器505は、変換された駆動電圧Vα及びVβを、PWMインバータ506へ出力する。PWMインバータ506に含まれるフルブリッジ回路は、座標変換器505から入力された駆動電圧Vα及びVβに基づくPWM(パルス幅変調)信号によって駆動される。その結果、PWMインバータ506は、駆動電圧Vα及びVβに応じた駆動電流iα及びiβを生成し、駆動電流iα及びiβをウェブモータ240の各相の巻線に供給することによって、ウェブモータ240を駆動する。なお、PWMインバータ506は、ハーフブリッジ回路等を含んでいてもよい。
【0057】
本実施形態では、座標変換器511から出力されたq軸電流の電流値iqは、減算器552だけでなくトルク検出部154にも入力される。q軸電流の電流値iqは、ウェブモータ240に発生するトルクに応じて変化し、このトルクは負荷トルクに比例する。即ち、電流値iqは、ウェブモータ240の負荷トルクに応じて変化する。このため、電流値iqを検出することでウェブモータ240の負荷トルクを検出可能である。トルク検出部154は、入力されるq軸電流の電流値iqに基づいて、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)を検出し、トルク検出値を出力する。なお、トルク検出部154から出力されるトルク検出値は、q軸電流の電流値iqそのものであってもよい。
【0058】
このように、q軸電流の電流値iqは、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)に応じて変化し、この負荷トルクは、ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力に応じて変化する。そこで、本実施形態では、CPU151は、q軸電流の電流値iqに基づいてウェブモータ240のトルク検出値を取得し、当該トルク検出値を用いて、ウェブ212と回収ローラ204との間の引っ張り合いの発生を検出する。具体的には、CPU151は、トルク検出値が所定値(閾値)を上回ると、ウェブ212と回収ローラ204との間で摩擦力が増加して引っ張り合いが発生した判定する。この場合、CPU151は、ウェブ212の破断が生じることを防ぐために、ウェブモータ240の動作(駆動)を停止させる。
【0059】
<処理手順>
図5は、本実施形態に係る画像形成装置100における印刷ジョブの実行手順を示すフローチャートである。図5の各ステップの処理は、メモリ152に格納された制御プログラムをCPU151が読み出して実行することにより、画像形成装置100において実現されてもよい。
【0060】
本手順による処理を開始すると、S501で、CPU151は、画像形成装置100をスタンバイ状態に移行させる。スタンバイ状態の定着器200において、図2-1(B)に示されるように、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201は非接触状態となる。スタンバイ状態への移行後、S502で、CPU151は、印刷ジョブを受け付けるまで待機し、印刷ジョブを受け付けると処理をS503へ進める。S503で、CPU151は、画像形成装置100内の各デバイスの動作を制御して、印刷ジョブの実行を開始する。CPU151は、印刷ジョブの実行を開始する際、定着器200を、図2-1(A)に示されるクリーニング状態にする。
【0061】
次にS504で、CPU151は、クリーニング状態にある定着器200において、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を駆動させる。ウェブモータ240の駆動開始後、S505で、CPU151は、(負荷駆動回路153の)トルク検出部154から出力される、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)を示すトルク検出値が閾値を下回っているか否かを判定する。CPU151は、トルク検出値が閾値を下回っている場合にはS506へ処理を進め、トルク検出値が閾値以上である場合にはS508へ処理を進める。
【0062】
S506で、CPU151は、ウェブモータ240の動作時間が、ウェブ212の必要な巻き取り量に相当する時間(必要時間)に達した否かを判定する。CPU151は、ウェブモータ240の動作時間が必要時間に達していない場合にはS504へ処理を戻し、ウェブモータ240の駆動を継続する。一方、CPU151は、ウェブモータ240の動作時間が必要時間に達した場合にはS507へ処理を進め、ウェブモータ240の駆動を停止させる。これにより、ウェブモータ240によって駆動される巻取りローラ214によるウェブ212の巻き取り動作が正常に終了する。
【0063】
ウェブモータ240のトルク検出値が閾値以上である場合、ウェブ212と回収ローラ204との引っ張り合いが始まり、ウェブ212の破断に至る可能性がある。この場合、CPU151は、S508においてウェブモータ240の駆動を停止させ、S509において印刷ジョブの実行を中断する。その後S510で、CPU151は、後述する図6の手順に従ってリカバリ処理を行う。リカバリ処理は、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除するとともに、回収ローラ204及び定着ローラ201に付着したトナーを除去するための処理である。
【0064】
S510におけるリカバリ処理が完了し、ウェブモータ240のトルクが高い状態が解除されると、S511で、CPU151は、印刷ジョブの実行を再開する。その後S512で、CPU151は、印刷ジョブの実行を終了するか否かを判定する。CPU151は、印刷ジョブの実行を終了しない場合には処理をS504へ戻し、印刷ジョブの実行を終了するまで上述の処理(S504~S511)を繰り返す。CPU151は、印刷ジョブの実行を終了する場合には、S513で、画像形成装置100をスタンバイ状態に移行させ、処理を終了する。
【0065】
<リカバリ処理>
図6は、S510におけるリカバリ処理の手順を示すフローチャートである。まずS601で、CPU151は、負荷駆動回路153により、回収ローラ204がウェブ212から離間する方向に着脱モータ241を駆動する。CPU151は、着脱センサ242の出力のON信号からOFF信号に切り替わるまで着脱モータ241を駆動することで、回収ローラ204を接触状態(加圧状態)から非接触状態(非加圧状態)にする。CPU151は、着脱センサ242の出力がOFF信号に切り替わると、着脱モータ241の駆動を停止する。
【0066】
次にS602で、CPU151は、メモリ152に保持されている着脱カウンタの値が「0」であるか否かを判定する。着脱カウンタは、図6の手順によるリカバリ処理における、着脱モータ241による、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201の着脱動作(S601~S604)の実行回数を管理するために用いられる。着脱カウンタ値が「0」であることは、S601~S604における今回の着脱動作が1回目であることを示す。CPU151は、着脱カウンタ値が「0」である場合にはS603へ処理を進め、着脱カウンタ値が「0」ではない場合にはS604へ処理を進める。
【0067】
S603で、CPU151は、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を所定時間、駆動させる。このようにして、ウェブモータ240によって駆動される巻取りローラ214によるウェブ212の巻き取り動作が行われることで、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態が解除されうる。その後、CPU151は処理をS604へ進める。
【0068】
S604で、CPU151は、負荷駆動回路153により、回収ローラ204がウェブ212に接触する方向に着脱モータ241を駆動する。CPU151は、着脱センサ242の出力がOFF信号からON信号に切り替わるまで着脱モータ241を駆動することで、回収ローラ204を非接触状態(非加圧状態)から接触状態(加圧状態)にする。CPU151は、着脱センサ242の出力がON信号に切り替わると、着脱モータ241の駆動を停止する。
【0069】
このようにして、着脱モータ241による、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201の着脱動作(S601~S604)が完了すると、S605で、CPU151は、着脱カウンタをカウントアップする。更にS606で、CPU151は、着脱カウンタの値が目標値に達したか否かを判定する。CPU151は、着脱カウンタの値が目標値に達していない場合には処理をS601へ戻す。これにより、着脱カウンタの値が目標値に達するまで(即ち、クリーニング部210、回収ローラ204及び定着ローラ201の着脱動作が所定回数、実行されるまで)、S601~S604の処理を繰り返す。CPU151は、着脱カウンタの値が目標値に達すると、処理をS607へ進める。
【0070】
S607で、CPU151は、着脱カウンタをクリア(「0」に初期化)し、S608へ進める。S608で、CPU151は、回収ローラ204がウェブ212に対して接触状態にある間に、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を所定時間、駆動させる。これにより、回収ローラ204に付着したトナーをウェブ212によって除去する。
【0071】
その後S609で、CPU151は、ウェブモータ240の駆動中にトルク検出部154から出力される、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)を示すトルク検出値が閾値を下回っているか否かを判定する。これにより、CPU151は、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除されたかを確認する。CPU151は、トルク検出値が閾値を下回っている場合には、図6の手順による処理を終了して、S511へ処理を進め、トルク検出値が閾値以上である場合には、S610へ処理を進める。
【0072】
S610で、CPU151は、S601~S608の処理の実行回数(繰り返し回数)が、所定の上限に達したか否かを判定する。本実施形態では、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除されるまで、S601~S608の処理が繰り返し実行される。ただし、S601~S608の処理を繰り返してもウェブモータ240のトルクが高い状態が解除されず、当該処理の繰り返し回数が上限に達した場合、CPU151は、ウェブ212に何らかの異常が生じていると判定する。この場合、CPU151は、S611で、ウェブ212の交換を促す交換メッセージを操作部180に表示し、図5及び図6の手順による処理を終了する。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置100は、定着ローラ201(定着部材)と、回収ローラ204と、ウェブ212、供給ローラ211、巻取りローラ214及び押圧ローラ213を有するクリーニング部210と、を備える。ウェブモータ240は、巻取りローラ214を駆動するように構成される。負荷駆動回路153は、ウェブモータ240のトルクを検出するトルク検出部154を有し、ウェブモータ240を駆動するように構成される。CPU151は、ウェブモータ240の駆動中にトルク検出部154から出力されるトルク検出値が閾値を上回ると、負荷駆動回路153にウェブモータ240の駆動を停止させる。
【0074】
このように、CPU151は、ウェブ212による回収ローラ204のクリーニングが行われている間に、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を検出すると、ウェブモータ240の駆動を停止させる。即ち、回収ローラ204に付着するトナー量が増えてウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力が大きくなっても、ウェブモータ240の駆動を停止させることでウェブ212(クリーニングウェブ)の破断を防止できる。即ち、本実施形態によれば、回収ローラ204に付着するトナー量が増えてもウェブ212(クリーニングウェブ)の破断を防止できる。
【0075】
また、本実施形態で例示されるように、CPU151は、ウェブモータ240の駆動の停止後に、回収ローラ204を接触状態から非接触状態に切り替え、更に非接触状態から接触状態に切り替える着脱動作を実行してもよい(S601及びS604)。更に、CPU151は、回収ローラ204がウェブ212に対して非接触状態である間に、負荷駆動回路153によってウェブ212を所定時間、駆動させてもよい(S603)。このような制御により、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除することが可能になる。
【0076】
更に、CPU151は、上述の回収ローラ204の着脱動作を所定回数、実行してもよい(S606)。また、CPU151は、所定回数の着脱動作の実行後に、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を所定時間、駆動し(S608)、ウェブモータ240の駆動中にトルク検出部154から出力されるトルク検出値が閾値を下回るまで(S609で「YES」)、所定回数の着脱動作を繰り返し実行してもよい。これにより、ウェブ212(クリーニングウェブ)の破断をより確実に防止することが可能になる。また、比較的簡易な構成で(安価な構成で)ウェブ212(クリーニングウェブ)の破断を防止することが可能になる。
【0077】
[第2実施形態]
第2実施形態では、ウェブモータ240の駆動の停止後に、回収ローラ204を接触状態から非接触状態に切り替え、定着ローラ201に対してリフレッシュローラ220を非接触状態から接触状態に切り替えてリフレッシュ動作を行う例について説明する。以下では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と共通する部分については説明を省略する。
【0078】
本実施形態の画像形成装置100における印刷ジョブの実行手順は、第1実施形態(図5)と同様である。ただし、ウェブモータ240のトルク検出値が閾値以上である場合(S504で「NO」)に実行されるリカバリ処理(S510)は、図7の手順に従って実行される。
【0079】
リカバリ処理(S510)では、図7に示されるように、まずS701で、CPU151は、負荷駆動回路153により、回収ローラ204がウェブ212から離間する方向に着脱モータ241を駆動する。CPU151は、着脱センサ242の出力のON信号からOFF信号に切り替わるまで着脱モータ241を駆動することで、回収ローラ204を接触状態(加圧状態)から非接触状態(非加圧状態)にする。CPU151は、着脱センサ242の出力がOFF信号に切り替わると、着脱モータ241の駆動を停止する。
【0080】
次にS702で、CPU151は、回収ローラ204がウェブ212に対して非接触状態にある間に、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を所定時間、駆動させる。このようにして、ウェブモータ240によって駆動される巻取りローラ214によるウェブ212の巻き取り動作が行われることで、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態が解除されうる。
【0081】
更に、CPU151は、リフレッシュローラ220を用いたリフレッシュ動作を行う。具体的には、S703で、CPU151は、負荷駆動回路153により、リフレッシュローラ220が定着ローラ201に接触する方向に着脱モータ245を駆動する。CPU151は、リフレッシュセンサ243の出力がOFF信号からON信号に切り替わるまで着脱モータ245を駆動することで、リフレッシュローラ220を非接触状態(非加圧状態)から接触状態(加圧状態)にする。CPU151は、リフレッシュセンサ243の出力がON信号に切り替わると、着脱モータ245の駆動を停止する。
【0082】
その後S704で、CPU151は、リフレッシュローラ220が定着ローラ201に対して接触状態にある間に、負荷駆動回路153によって定着モータ244を所定時間、駆動させる。このようなリフレッシュ動作により、定着ローラ201に付着したトナーがリフレッシュローラ220によって除去される。このように、定着ローラ201に付着したトナーを除去することで、回収ローラ204によって定着ローラ201から回収トナーの量を減らし、ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力の増加を抑えることが可能になる。
【0083】
上述のリフレッシュ動作の完了後、S705で、CPU151は、負荷駆動回路153により、回収ローラ204がウェブ212に接触する方向に着脱モータ241を駆動する。CPU151は、着脱センサ242の出力がOFF信号からON信号に切り替わるまで着脱モータ241を駆動することで、回収ローラ204を非接触状態(非加圧状態)から接触状態(加圧状態)にする。CPU151は、着脱センサ242の出力がON信号に切り替わると、着脱モータ241の駆動を停止する。
【0084】
更にS706で、CPU151は、回収ローラ204がウェブ212に対して接触状態にある間に、負荷駆動回路153によってウェブモータ240を所定時間、駆動させる。これにより、回収ローラ204に付着したトナーをウェブ212によって除去する。
【0085】
その後S707で、CPU151は、トルク検出部154から出力される、ウェブモータ240のトルク(負荷トルク)を示すトルク検出値が閾値を下回っているか否かを判定する。これにより、CPU151は、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除されたかを確認する。CPU151は、トルク検出値が閾値を下回っている場合には、図7の手順による処理を終了して、S511へ処理を進め、トルク検出値が閾値以上である場合には、S708へ処理を進める。
【0086】
S708で、CPU151は、S701~S706の処理の実行回数(繰り返し回数)が、所定の上限に達したか否かを判定する。本実施形態では、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除されるまで、S701~S706の処理が繰り返し実行される。ただし、S701~S706の処理を繰り返してもウェブモータ240のトルクが高い状態が解除されず、当該処理の繰り返し回数が上限に達した場合、CPU151は、ウェブ212に何らかの異常が生じていると判定する。この場合、CPU151は、S709で、ウェブ212の交換を促す交換メッセージを操作部180に表示し、図5及び図7の手順による処理を終了する。
【0087】
図6の手順による処理(S510)が完了すると、CPU151は、S511以降において第1実施形態と同様の処理を行う。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置100において、CPU151は、ウェブモータ240の駆動中にトルク検出部154から出力されるトルク検出値が閾値を上回ると、負荷駆動回路153にウェブモータ240の駆動を停止させる。ウェブモータ240の駆動の停止後に、CPU151は、ウェブ212に対して回収ローラ204を接触状態から非接触状態に切り替える(S701)。CPU151は更に、定着ローラ201に対してリフレッシュローラ220を非接触状態から接触状態に切り替えて(S703)、回収ローラ204のリフレッシュ動作を行う(S704)。
【0089】
このように、ウェブモータ240の駆動停止中に回収ローラ204のリフレッシュ動作を行うことにより、ウェブモータ240のトルク(ウェブ212と回収ローラ204との間の摩擦力)が高い状態を解除することが可能になる。したがって、回収ローラ204に付着するトナー量が増えてもウェブ212(クリーニングウェブ)の破断を防止できる。また、比較的簡易な構成で(安価な構成で)ウェブ212(クリーニングウェブ)の破断を防止することが可能になる。
【0090】
<変形例>
上述の実施形態では、定着器200が定着ローラ201及び加圧ローラ202を備える構成が用いられているが、これに限定されず、例えば、定着ローラに代えて定着ベルトが用いられてもよい。また、加圧ローラに代えて加圧ベルトが用いられてもよい。
【0091】
また、負荷駆動回路153におけるベクトル制御に用いられるq軸電流の電流値iqに基づいて、ウェブモータ240のトルクの検出が行われているが、これとは異なる構成でウェブモータ240のトルクの検出が行われてもよい。例えば、ウェブ212の巻取りにソレノイドが使用される場合には、ソレノイドの着磁時間の差分の検出に基づいて、ウェブモータ240のトルクの検出が行われてもよい。あるいは、ステッピングモータの相電流の検出結果に基づいて、ウェブモータ240のトルクの検出が行われてもよい。
【0092】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0093】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0094】
100:画像形成装置、110:画像形成部、150:制御基板、151:CPU、153:負荷駆動回路、154:トルク検出部、200:定着器、210:クリーニング部、240:ウェブモータ
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7