(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】工作機械の精度分析システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20250307BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20250307BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
G05B19/4063
G05B19/18 W
B23Q17/22 D
B23Q17/22 A
(21)【出願番号】P 2021144183
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】神戸 礼士
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027360(JP,A)
【文献】特開2021-009437(JP,A)
【文献】特開2021-096502(JP,A)
【文献】特開2020-192610(JP,A)
【文献】特開2018-036781(JP,A)
【文献】特表2016-536672(JP,A)
【文献】特表2004-525467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0364677(US,A1)
【文献】国際公開第2016/067874(WO,A1)
【文献】国際公開第2000/039646(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109753018(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0243333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
B23Q 17/00-23/00
B23Q 15/00-15/28
B23Q 5/00-5/58
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の精度を分析するシステムであって、
前記工作機械に設けられ、予め取得した前記工作機械の機械精度に係る精度データと、前記精度データに基づく誤差を補正するための補正データと、前記工作機械に係る情報である機械情報とを保存する制御部と、
前記制御部の前記精度データから機械精度を算出する機械精度計算部と、
前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを保存するデータサーバと、
前記工作機械に設けられ、前記制御部内の前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを前記データサーバに送信するデータ通信部と、
前記データサーバ内の前記精度データと前記補正データとを用いて、前記補正データの修正値である補正データ修正値と、前記補正データ修正値を適用した場合の予想精度データとを求めるデータ分析部と、
前記予想精度データから修正後機械精度を算出する修正機械精度計算部と、
前記修正機械精度計算部にて算出した前記修正後機械精度を表示するデータ表示部と、
を含んでな
り、
前記データ通信部は、前記機械精度計算部にて算出した前記機械精度を表示する第2のデータ表示部と、前記データサーバへの送信実行の有無を選択する通信実行選択手段とをさらに備え、
前記データサーバは、複数の前記工作機械の前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを保存し、
前記データ分析部は、前記データサーバ内の複数の前記工作機械の各前記機械情報を比較する機械情報比較部を備え、
前記機械情報比較部は、所定の前記工作機械の前記補正データ修正値と前記予想精度データとを求めるに当たり、前記所定の工作機械の前記機械情報と相関があると判定した前記機械情報を有する他の前記工作機械の前記補正データと前記精度データとを用いて、前記所定の工作機械の前記補正データ修正値と前記予想精度データとを求めることを特徴とする工作機械の精度分析システム。
【請求項2】
前記データ表示部には、前記修正機械精度計算部で算出した前記修正後機械精度を示すグラフ、前記修正後機械精度の良否判定結果、前記補正データ修正値の有効性、機械精度調整作業の必要性、のうちの少なくとも1つを表示することを特徴とする請求項
1に記載の工作機械の精度分析システム。
【請求項3】
前記第2のデータ表示部には、前記機械精度計算部で算出した前記機械精度を示すグラフ、前記機械精度の良否判定結果、機械精度修正の必要性、のうちの少なくとも1つを表示することを特徴とする請求項
1又は2に記載の工作機械の精度分析システム。
【請求項4】
前記データ分析部から前記補正データ修正値と前記予想精度データとを前記制御部に送信する第2のデータ通信部をさらに備え、
前記第2のデータ通信部は、前記データ分析部から前記制御部への通信実行の有無を選択する第2の通信実行選択手段を備えることを特徴とする請求項1乃至
3の何れかに記載の工作機械の精度分析システム。
【請求項5】
前記制御部の前記精度データは、予め設定した機械動作での測定位置、指令位置および前記工作機械の所定部位の温度であることを特徴とする請求項1乃至
4の何れかに記載の工作機械の精度分析システム。
【請求項6】
前記測定位置は、位置計測センサにより取得した対象物の位置、もしくは工具センサを用いて取得した工具の先端の位置であることを特徴とする請求項
5に記載の工作機械の精度分析システム。
【請求項7】
精度調整作業を依頼可能な精度調整作業依頼部と、
前記精度調整作業依頼部による精度調整作業の依頼に基づいて調整作業可能日を決定し、前記精度調整作業依頼部に提示する精度調整受付部と、をさらに含み、
前記精度調整作業依頼部は、前記調整作業可能日から調整作業日を選択して予約可能な予約手段を備えることを特徴とする請求項1乃至
6の何れかに記載の工作機械の精度分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械の機械精度を分析するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、高い精度を得るため、位置決め精度、真直度、直角度といった機械精度や熱変位などを補正する機能が備わっている場合が多い。また、機械精度は、工場の温度環境や、機械要素の摩耗、床の変形などさまざまな要因で低下する。
機械精度が低下した場合は、機械精度を測定し、各補正機能の補正データを調整したり、機械レベルなどの機械精度の調整作業を行う必要がある。各補正機能の補正データの修正や機械精度の調整作業を、工作機械のユーザが行うことは難しく、メーカなどに依頼し、工作機械に詳しいサービスマンや技術者がユーザ先に出向して、機械精度を測定して実施する場合が一般的である。
工作機械のサービスマン等がユーザ先に出向せずに調整する方法として、特許文献1には、工作機械に取り付けた測定器による測定データやメンテナンス情報を用い、機械精度を算出して補正データを調整する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが機械精度の調整を要望するのは、工作物の精度低下の懸念がある場合である。しかし、工作物の精度は、機械精度以外にも加工条件や工具などの要因が含まれ、工作物の精度が低下した場合に機械精度が低下しているかわからないことが多い。このため、工作機械のサービスマン等は最初に機械精度を測定して分析を行ってから機械精度の調整を実施するか判断することとなる。測定・分析を行った結果、機械精度が低下していない場合や補正データを修正しても機械精度が改善しないと判断した場合は、機械精度の測定や分析に用いた時間や費用が無駄になる。
特許文献1では、機械精度の確認手段は開示されていない。このため、補正データの修正を行った場合の機械精度の改善を確認できないという課題がある。
一方、補正データを修正するためには、機械精度を測定する必要がある。しかし、機械精度の測定は機械の加工を止めた上で行うため、測定できるデータは少ない場合が多い。このため、測定データが少ないために十分な分析ができず、補正データの修正値の信頼性が低くなるという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、ユーザが機械精度の低下度合いと補正データの修正後の機械精度とを確認して、補正データの修正を実施したり、機械精度の調整作業を依頼したりすることができる工作機械の精度分析システムを提供することを目的としたものである。
また、本開示は、複数の工作機械の精度データから、機械精度の分析を行う工作機械の機械情報と相関が高い機械情報の精度データも含めて分析を実施することで、補正データの修正値の信頼性を高くすることができる工作機械の精度分析システムを提供することを別の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、工作機械の精度を分析するシステムであって、
前記工作機械に設けられ、予め取得した前記工作機械の機械精度に係る精度データと、前記精度データに基づく誤差を補正するための補正データと、前記工作機械に係る情報である機械情報とを保存する制御部と、
前記制御部の前記精度データから機械精度を算出する機械精度計算部と、
前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを保存するデータサーバと、
前記工作機械に設けられ、前記制御部内の前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを前記データサーバに送信するデータ通信部と、
前記データサーバ内の前記精度データと前記補正データとを用いて、前記補正データの修正値である補正データ修正値と、前記補正データ修正値を適用した場合の予想精度データとを求めるデータ分析部と、
前記予想精度データから修正後機械精度を算出する修正機械精度計算部と、
前記修正機械精度計算部にて算出した前記修正後機械精度を表示するデータ表示部と、
を含んでなり、
前記データ通信部は、前記機械精度計算部にて算出した前記機械精度を表示する第2のデータ表示部と、前記データサーバへの送信実行の有無を選択する通信実行選択手段とをさらに備え、
前記データサーバは、複数の前記工作機械の前記精度データと前記補正データと前記機械情報とを保存し、
前記データ分析部は、前記データサーバ内の複数の前記工作機械の各前記機械情報を比較する機械情報比較部を備え、
前記機械情報比較部は、所定の前記工作機械の前記補正データ修正値と前記予想精度データとを求めるに当たり、前記所定の工作機械の前記機械情報と相関があると判定した前記機械情報を有する他の前記工作機械の前記補正データと前記精度データとを用いて、前記所定の工作機械の前記補正データ修正値と前記予想精度データとを求めることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記データ表示部には、前記修正機械精度計算部で算出した前記修正後機械精度を示すグラフ、前記修正後機械精度の良否判定結果、前記補正データ修正値の有効性、機械精度調整作業の必要性、のうちの少なくとも1つを表示することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記第2のデータ表示部には、前記機械精度計算部で算出した前記機械精度を示すグラフ、前記機械精度の良否判定結果、機械精度修正の必要性、のうちの少なくとも1つを表示することを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記データ分析部から前記補正データ修正値と前記予想精度データとを前記制御部に送信する第2のデータ通信部をさらに備え、
前記第2のデータ通信部は、前記データ分析部から前記制御部への通信実行の有無を選択する第2の通信実行選択手段を備えることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記制御部の前記精度データは、予め設定した機械動作での測定位置、指令位置および前記工作機械の所定部位の温度であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記測定位置は、位置計測センサにより取得した対象物の位置、もしくは工具センサを用いて取得した工具の先端の位置であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、精度調整作業を依頼可能な精度調整作業依頼部と、
前記精度調整作業依頼部による精度調整作業の依頼に基づいて調整作業可能日を決定し、前記精度調整作業依頼部に提示する精度調整受付部と、をさらに含み、
前記精度調整作業依頼部は、前記調整作業可能日から調整作業日を選択して予約可能な予約手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザが現状の機械精度および補正データの調整後の機械精度を確認することができ、必要ない機械精度の調整にかかる時間と費用の無駄がなくなる。
特に、機械情報比較部を備えた別の態様によれば、上記効果に加えて、機械精度の分析を行う工作機械の機械情報と相関がある機械情報のデータも含めて分析を実施するので、対象とする工作機械のデータが少ない場合でも、補正データ修正値の信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】門形マシニングセンタの精度分析システムの概略図である。
【
図3】修正後の機械精度確認・修正依頼画面の例である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、工作機械の一例である門形マシニングセンタMの精度分析システムSの概略図である。
まず、門形マシニングセンタMは、ベッド1の両側面(紙面に直交する方向)にコラム2が固設され、コラム2の間に図示しないクロスレールが固設されて、クロスレールにサドル3が、紙面に直交するY軸方向へ移動可能に架設されている。サドル3には、主軸頭4が、上下方向であるZ軸方向へ移動可能に架設され、主軸頭4に主軸5が回転可能に固定されている。ベッド1上部には、テーブル6が、紙面に平行な水平方向であるX軸方向へ移動可能に載置されている。テーブル6のX軸方向位置は、ベッド1に設置されているスケール(図示略)と、テーブル6に固定されているスケール検出器(図示略)とによって決定される。また、機械各部には図示しない温度センサが設置されている。
サドル3及び主軸頭4、テーブル6は、NC装置10に格納された加工プログラムに基づいて各軸方向へ送り制御され、テーブル6上のワークに対して主軸5を相対移動させて加工が行われる。
【0010】
精度分析システムSは、制御部11、機械精度計算部15、第1データ通信部17(データ通信部)、第2データ通信部21(第2のデータ通信部)、データ分析システム30、精度調整受付部40を含んでいる。制御部11、機械精度計算部15、第1データ通信部17、第2データ通信部21は、門形マシニングセンタMのNC装置10に設けられている。データ分析システム30、精度調整受付部40は、工作機械メーカや精度調整作業者の事務所などに設置されている。
但し、NC装置10の制御部11を除く、機械精度計算部15、第1データ通信部17、第2データ通信部21は、NC装置10から独立した外部装置として工場内に設置しても良い。
また、データ分析システム30は、門形マシニングセンタMに取り付けても良い。
【0011】
精度分析システムSによる機械精度の分析について、機械精度としてX軸方向のテーブル6の位置決め精度を例にして説明する。
まず、X軸方向の位置決め精度の測定方法を
図5に示す。マスターゲージ101は、複数のブロック102の距離が既知となっているゲージであり、テーブル6の上面に設置される。主軸5に位置計測センサであるタッチプローブ103を装着し、タッチプローブ103がマスターゲージ101のブロック102に接近するようX軸を移動させ、タッチプローブ103のスタイラスが接触してトリガー信号を発信した時点もしくは信号遅れを考慮した時点でのX軸座標を取得する。これらの測定は予め測定用プログラムを準備し、マスターゲージ101を設置してプログラムを実行することで可能となる。
この測定結果及び門形マシニングセンタMに設置した温度センサの温度情報は、NC装置10の制御部11の記憶部に、精度データ12として記録される。また、同時に記憶部には、この時のピッチ補正や熱変位補正などの誤差の補正に係る各補正データ13と、門形マシニングセンタMの機種名、製造番号、精度データの取得日時、工場の温度情報といった機械情報14と、が記録される。
【0012】
機械精度計算部15では、制御部11に記録されたデータより機械精度16を算出する。ユーザは、算出された機械精度16を、第1データ通信部17に設けたデータ表示部18(第2のデータ表示部)にて確認することができる。
図2は、機械精度16であるX軸の位置決め精度を表示した機械精度確認・分析依頼画面111の1例である。グラフ113の横軸は、ブロック102の各距離より求めたX軸指令座標値である。グラフ113の縦軸は、X軸指令座標値に対してタッチプローブ103がブロック102に接触した時のX軸計測座標値とX軸指令座標値との差である位置決め精度を示す。
ユーザは、グラフ113に示した位置決め精度を確認し、精度分析を依頼したい場合は、第1通信実行選択手段19(通信実行選択手段)である精度分析依頼112の欄の実行ボタン114を押す。取り消す場合はキャンセルボタン115を押す。
【0013】
実行ボタン114の押し操作によって、制御部11の精度データ12、補正データ13、機械情報14は、第1データ通信部17を通して、外部のデータ分析システム30に設置されたデータサーバ31に送信される。なお、グラフ113の代わりに、或いはグラフ113と共に、機械精度16の良否を示すメッセージと、機械精度分析の必要性を示すメッセージとの少なくとも一方を表示しても良い。また、機械精度16から、第1データ通信部17に設けた第1判断部20(判断部)が精度分析の要否を自動的に判断し、必要と判断した場合にデータサーバ31へデータを送信して分析依頼を実施するようにしても良い。このような第1判断部20を設ければ、機械側で精度分析の要否判断を実施でき、自動化にも対応が可能となる。
【0014】
データサーバ31には、同様の方法で送信された複数の門形マシニングセンタの精度データ、補正データ、機械情報が保管されている。データ分析システム30には、データ分析部32と、修正機械精度計算部33とが設けられている。
データ分析部32では、データサーバ31内のデータを用いて、位置決め精度を補正する補正データの修正値を分析する。分析方法にはAIなどを用いた機械計算や技術者による分析がある。また、分析に使用するデータは、門形マシニングセンタMの精度データ12、補正データ13、機械情報14の他に、機械情報比較部34にて、データサーバ31に保管されている他の門形マシニングセンタの機械情報と、門形マシニングセンタMの機械情報14とを比較し、機械情報14と相関が高い機械情報を有する他の門形マシニングセンタがあれば、当該門形マシニングセンタの精度データ、補正データを用いる。
データ分析部32は、補正データ修正値35を用いて予想精度データ36を作成する。
修正機械精度計算部33では、予想精度データ36から修正後機械精度37(この場合は補正データ修正値35を用いた場合の修正位置決め精度)を作成する。この修正後機械精度37は、第2データ通信部21へ送信され、第2データ通信部21のデータ表示部22で確認することができる。
【0015】
図3は、修正後機械精度37であるX軸の修正位置決め精度を表示した修正後の機械精度確認・修正依頼画面116の1例である。グラフ119の横軸は、X軸指令座標値で、縦軸は、補正データ修正値を適用した場合の位置決め精度の計算値を示す。ユーザは、
図2のグラフ113に示した修正前の位置決め精度と、
図3のグラフ119に示された修正後の位置決め精度とを比較し、補正データ修正値35を適用したい場合は、第2通信実行選択手段23(第2の通信実行選択手段)である補正データ修正依頼117の欄の実行ボタン120を押す。取り消す場合はキャンセルボタン121を押す。
実行ボタン120の押し操作によって、データ分析部32の補正データ修正値35は、第2データ通信部21を通して制御部11に送信され、制御部11で補正データ13が変更される。
【0016】
なお、グラフ119の代わりに、或いはグラフ119と併せて、修正後機械精度37の良否を示すメッセージと、機械精度修正の有効性、機械精度作業の必要性を示すメッセージとの少なくとも一方を表示しても良い。また、修正後機械精度37から、第2通信実行選択手段23に設けた第2判断部24(第2の判断部)が補正データ修正値35の適用の要否を自動的に判断し、必要と判断した場合に制御部11へ修正後機械精度37を送信して補正データ修正依頼を実施しても良い。このような第2判断部24を設ければ、機械側で補正データ修正の要否判断を実施でき、自動化にも対応が可能となる。
データ分析部32には、データ不足、不具合通知手段38が設けられている。このデータ不足、不具合通知手段38は、精度データ12や補正データ13に不足や不具合があって、精度分析ができなかった場合は、データ表示部22に通知して、再計測が必要なことを知らせる。
【0017】
図3のグラフ119に示された修正後機械精度37があまり改善されていない場合は、第2データ通信部21に設けられた精度調整作業依頼部25である精度調整作業依頼118の欄の実行ボタン122を押す。すると、精度調整作業依頼を受け付けたメーカ等では、精度調整受付部40で調整作業可能日41を選定し、
図4に示した精度調整作業依頼画面123のカレンダー126に予約可能日(丸印)を表示する。精度調整作業依頼画面123には、精度調整依頼日124も表示される。
ユーザは、予約可能日の中から希望する精度調整作業日125を入力し、予約手段26である予約ボタン127を押す。すると、精度調整作業日125が精度調整受付部40に連絡され、受付が完了する。
このように精度調整作業依頼部25を設ければ、補正データの修正で効果がないような場合などに機械精度の修正作業をすぐに依頼することができる。
【0018】
このように、上記形態の門形マシニングセンタMの精度分析システムSは、予め取得した門形マシニングセンタMの機械精度に係る精度データ12と、精度データ12に基づく誤差を補正するための補正データ13と、門形マシニングセンタMに係る情報である機械情報14とを保存する制御部11と、精度データ12と補正データ13と機械情報14とを保存するデータサーバ31と、制御部11内の精度データ12と補正データ13と機械情報14とをデータサーバ31に送信する第1データ通信部17(データ通信部)と、データサーバ31内の精度データ12と補正データ13とを用いて、補正データ13の修正値である補正データ修正値35と、補正データ修正値35を適用した場合の予想精度データ36とを求めるデータ分析部32と、予想精度データ36から修正後機械精度37を算出する修正機械精度計算部33と、修正機械精度計算部33にて算出した修正後機械精度37を表示するデータ表示部22と、を含んでなる。
この構成によれば、ユーザが機械精度の低下度合いと補正データの修正後の機械精度とを確認して補正データの修正を実施したり、機械精度の調整作業を依頼したりすることができる。よって、必要ない機械精度の調整にかかる時間と費用との無駄がなくなる。
【0019】
特に、データサーバ31は、複数の門形マシニングセンタの精度データと補正データと機械情報とを保存し、データ分析部32は、データサーバ31内の複数の門形マシニングセンタの各機械情報を比較する機械情報比較部34を備え、機械情報比較部34は、門形マシニングセンタMの補正データ修正値35と予想精度データ36とを求めるに当たり、門形マシニングセンタMの機械情報14と相関が高いと判定した機械情報を有する他の門形マシニングセンタの補正データと精度データとを用いて、門形マシニングセンタMの補正データ修正値35と予想精度データ36とを求める。
このように複数の門形マシニングセンタのデータから、機械精度の分析を行う門形マシニングセンタMの機械情報と相関が高い機械情報のデータも含めて分析を実施することで、対象とする門形マシニングセンタMのデータが少ない場合でも、補正データ修正値35及び予想精度データ36の信頼性を高くすることができる。
【0020】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、機械精度は上記の位置決め精度以外の真直度や直角度や機械の熱変位などを対象に、精度データの測定方法を変更して取得することができる。例えば
図6の工具センサ105を用いた手法では、主軸5に工具104を装着し、定期的に工具センサ105で工具先端位置を測定することで、機械のZ方向の熱変位を測定することが可能となる。
また、上記形態では、データ通信部を2つ設けているが、1つのみとして各機能をまとめてもよい。この場合、データ表示部も1つとして
図2,3の画面を同時に分割表示可能としたり、個別に切替表示可能としたりしてもよい。
データ分析部では、機械情報比較部を省略して、1つの工作機械についてのみ補正データ修正値及び予想精度データを求めて表示するようにしてもよい。
その他、工作機械としてはマシニングセンタに限らず、複合加工機や他の専用加工機であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1・・ベッド、2・・コラム、3・・サドル、4・・主軸頭、5・・主軸、6・・テーブル、10・・NC装置、11・・制御部、12・・精度データ、13・・補正データ、14・・機械情報、15・・機械精度計算部、16・・機械精度、17・・第1データ通信部、18,22・・データ表示部、19・・第1通信実行選択手段、20・・第1判断部、21・・第2データ通信部、23・・第2通信実行選択手段、24・・第2判断部、25・・精度調整作業依頼部、26・・予約手段、30・・データ分析システム、31・・データサーバ、32・・データ分析部、33・・修正機械精度計算部、34・・機械情報比較部、35・・補正データ修正値、36・・予想精度データ、37・・修正後機械精度、40・・精度調整受付部、41・・調整作業可能日、101・・マスターゲージ、103・・タッチプローブ、105・・工具センサ、111・・機械精度確認・分析依頼画面、113,119・・グラフ、114,120,122・・実行ボタン、116・・修正後の機械精度確認・修正依頼画面、123・・精度調整作業依頼画面、127・・予約ボタン、M・・門形マシニングセンタ、S・・精度分析システム。