(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】自立型薄膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/22 20060101AFI20250307BHJP
C04B 35/16 20060101ALI20250307BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
C30B29/22 Z
C04B35/16
C04B35/50
(21)【出願番号】P 2021214186
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 重和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 健児
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018149(WO,A1)
【文献】特開2013-064194(JP,A)
【文献】特開2013-184862(JP,A)
【文献】特開2013-065518(JP,A)
【文献】国際公開第2019/160018(WO,A1)
【文献】特開2021-063751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
C04B 35/16-35/22
C04B 35/50-35/505
C04B 41/87
C23C 14/00-14/58
H01M 8/00-8/2495
H01B 1/06-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アパタイト型複合酸化物にて構成される自立型薄膜(1)であって、
上記アパタイト型複合酸化物の結晶粒子(C)が膜平面方向(X、Y)に粒界(C1)を接して集合している多結晶層(11)を、膜厚方向(Z)に一層又は二層以上有しており、
膜厚tが0.2μm以上5.0μm以下であり、膜面積Sが1.0cm
2以上であり、膜表面粗さRzが20nm以下である、自立型薄膜。
【請求項2】
上記多結晶層のうち少なくとも一層は、上記膜厚方向に対するc軸配向率が、ロットゲーリング法による算出値として、0.25以上であり、かつ、上記膜厚方向に上記粒界の方向が揃っている、配向性層である、請求項1に記載の自立型薄膜。
【請求項3】
上記配向性層が、上記膜厚方向に、複数積層されている、請求項2に記載の自立型薄膜。
【請求項4】
上記多結晶層のうち少なくとも一層は、上記粒界の方向がランダムな方向となっている、粒界ランダム層であり、
上記膜厚方向に、上記配向性層と上記粒界ランダム層とが積層されている、請求項2又は3に記載の自立型薄膜。
【請求項5】
上記配向性層の層厚t1と、上記粒界ランダム層の層厚t2とは、t1>t2の関係にある、請求項4に記載の自立型薄膜。
【請求項6】
上記配向性層は、上記c軸配向率が、ロットゲーリング法による算出値として、0.6以上である、請求項2~5のいずれか1項に記載の自立型薄膜。
【請求項7】
上記配向性層において、層断面に現れる上記結晶粒子の上記粒界の方向と、上記膜厚方向とのなす角度が10°以下である、請求項2~6のいずれか1項に記載の自立型薄膜。
【請求項8】
上記アパタイト型複合酸化物は、下記式で表される、請求項1~7のいずれか1項に記載の自立型薄膜。
式:A
10-xB
6-yM
yO
27-z
ただし、式中、
Aは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、
Bは、Si又はGe又はその両方を含む元素であり、
Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、
x、y及びzは、それぞれ、:-0.5≦x≦2.0、0.0≦y≦3.0、-6.0≦z≦4.2、を満たす数である。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の自立型薄膜の製造方法であって、
基板(200)の表面に、上記アパタイト型複合酸化物の結晶化温度において昇華可能な組成物からなる第1の層(300)を形成する工程と、
上記組成物の層の表面に、上記アパタイト型複合酸化物と同一の構成元素を含む非晶質複合酸化物膜(100)を成膜する工程と、
上記非晶質複合酸化物膜の表面に、上記アパタイト型複合酸化物の構成元素の一部を含む酸化物もしくはその前駆体からなる第2の層(400)を成膜する工程と、
上記非晶質複合酸化物膜の結晶化温度以上に昇温して熱処理することにより、上記アパタイト型複合酸化物からなる上記多結晶層を形成すると共に、上記第1の層を昇華により除去する工程と、を有する、自立型薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アパタイト構造を有する自立型薄膜とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池等に用いられる電気化学セルは、電解質膜を挟んでカソード及びアノードが配置された単セル構造を有する。電解質膜となる酸化物イオン伝導体としては、安定化ジルコニア等のジルコニア系酸化物やペロブスカイト型酸化物等が知られている。また、近年、酸化物イオン伝導性に優れるアパタイト型の化合物が注目されている。アパタイト型の化合物は、六方晶系の結晶構造を有し、例えば、配向性を持たせることにより、酸化物イオンの移動を容易にして、イオン伝導性を高めることが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板上に、配向性アパタイト型複合酸化物を備えた基板・配向性アパタイト型複合酸化物膜複合体と、その製造方法が開示されている。配向性アパタイト型複合酸化物は、ランタンシリケート系の複合酸化物であり、0.5μmより大きく5μm以下の膜厚で、ロットゲーリング法による配向度が0.6以上である膜として、基板上に形成されている。基板は、金属又は合金又はセラミックス又はそれらの複合材料であり、基板上に成膜された非晶質複合酸化物を、所定の酸素分圧以下の雰囲気下で熱処理して、アパタイト構造に結晶化させると共に配向性を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、所望の組成の複合酸化物を予め調製し、例えば、スパッタリングにより、基板上に成膜して熱処理することにより、配向性アパタイト型複合酸化物膜と、基板との複合体としている。この方法では、基板材料は制限されないとされているものの、電極等の機能性材料との接合に制約があり、必ずしも所望のセル構造とならない。例えば、電気化学セルの電解質膜に適用される緻密体を成膜するには、基板も緻密体であることが望ましいことから、電気化学セルのカソード又はアノードとして機能する多孔質体を、基板として用いることは難しい。
【0006】
一方、電気化学セルに用いられる電解質を、基板等に支持されない自立膜として作製した後、両端面に電極を形成したものがある。このような自立膜型の電解質は、例えば、チョクラルスキー法等により形成されるアパタイト型複合酸化物の単結晶からなるものであり、研磨等により薄層化されているが、研磨によるクラック等の発生を回避するために、従来は、50μm程度の厚みが限界とされている。また、より薄い板状結晶を得る方法として、例えば、フラックス法を利用したものがあるが、結晶サイズを大きくすることは、難しい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、アパタイト構造を有する複合酸化物からなり、より大きな面積の自立型の薄膜形状を有する自立型薄膜とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
アパタイト型複合酸化物にて構成される自立型薄膜(1)であって、
上記アパタイト型複合酸化物の結晶粒子(C)が膜平面方向(X、Y)に粒界(C1)を接して集合している多結晶層(11)を、膜厚方向(Z)に一層又は二層以上有しており、
膜厚tが0.2μm以上5.0μm以下であり、膜面積Sが1.0cm2以上であり、膜表面粗さRzが20nm以下である、自立型薄膜にある。
【0009】
本発明の他の態様は、自立型薄膜の製造方法であって、
基板(200)の表面に、上記アパタイト型複合酸化物の結晶化温度において昇華可能な組成物からなる第1の層(300)を形成する工程と、
上記組成物の層の表面に、上記アパタイト型複合酸化物と同一の構成元素を有する非晶質複合酸化物膜(100)を成膜する工程と、
上記非晶質複合酸化物膜の表面に、上記アパタイト型複合酸化物の構成元素の一部を含む酸化物もしくはその前駆体からなる第2の層(400)を成膜する工程と、
上記非晶質複合酸化物膜の結晶化温度以上に昇温して熱処理することにより、上記アパタイト型複合酸化物からなる上記多結晶層を形成すると共に、上記第1の層を昇華により除去する工程と、を有する、自立型薄膜の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の自立型薄膜は、アパタイト構造の複合酸化物からなる結晶粒子が集合した多結晶層にて構成されており、粒子間を区画する多数の結晶粒界が、膜強度を向上させて、薄膜形状の維持に寄与していると考えられる。また、膜表面粗さRzが20nm以下であり、凹凸が小さい平坦な膜表面であることにより、表面の凹凸による応力集中が緩和されて、膜強度が維持されると考えられる。これにより、膜面積Sが1.0cm2以上である薄膜を、基板等に支持されない状態で維持することが可能になるものと推測される。
【0011】
このような自立型薄膜は、上記他の態様に示す方法により製造可能となる。すなわち、予め基板上に、熱処理により昇華可能な組成物からなる第1の層を形成しておき、アパタイトを結晶化する熱処理時に昇華させて除去することにより、基板から分離して自立型薄膜とすることができる。また、非晶質複合酸化物膜上に、アパタイトの構成元素を含む第2の層を形成して熱処理を行うことにより、非晶質複合酸化物膜が結晶化する際にアパタイトの構成元素が拡散して、膜厚方向の配向性を高め、膜表面の凹凸を低減することが可能になると推測される。これにより、結晶成長挙動を制御しながら、膜厚方向に結晶粒界を成長させ、従来に比し大きな面積の自立型薄膜を製造することができる。
【0012】
以上のごとく、上記態様によれば、アパタイト構造を有する複合酸化物からなり、より大きな面積の自立型の薄膜形状を有する自立型薄膜とその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1における、自立型薄膜の構成を模式的に示す全体斜視図。
【
図2】実施形態1における、自立型薄膜を構成するアパタイト型複合酸化物の結晶構造を模式的に示した図。
【
図3】実施形態1における、自立型薄膜の主要部の構造を模式的に示した図で、
図1のA部拡大図。
【
図4】実施形態1における、自立型薄膜の構成を模式的に示す全体斜視図。
【
図5】実施形態1における、自立型薄膜の製造方法を説明するための工程図。
【
図6】実施形態2における、自立型薄膜の構成を模式的に示す全体斜視図。
【
図7】実施形態2における、自立型薄膜の主要部の構造を模式的に示した図で、
図1のB部拡大図。
【
図8】実施形態3における、自立型薄膜の主要部の構造を模式的に示した図。
【
図9】実施例における、膜の強度評価のために用いた装置の全体構成図。
【
図10】比較形態1における、薄膜の主要部の構造を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
自立型薄膜及びその製造方法に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
図1~
図4に示されるように、本形態において、自立型薄膜1は、アパタイト型複合酸化物の結晶粒子Cにて構成される多結晶体10の膜からなる。多結晶体10は、結晶粒子Cが多数集合した一層又は二層以上の多結晶層11を含むことができ、
図1に示す構成例では、多結晶層11が一層の単層構造となっている。複層構造とする場合には、後述するように、自立型薄膜1の膜厚方向Z(すなわち、
図1中に示すZ軸方向)に、複数の多結晶層11が積層される。なお、自立型の膜とは、膜厚方向Zにおいて対向する2つの膜表面21、22のいずれの側も、基板等の支持体によって支持されずに自立して存在可能な膜であることを言う。
【0015】
自立型薄膜1を構成する多結晶層11は、膜厚方向Zと直交する膜平面方向(例えば、
図1中に示すX軸方向又はY軸方向)において、多数の結晶粒子Cが、互いに粒界C1を接して連続して集合する緻密体である。自立型薄膜1が単層膜である場合には、膜厚方向Zにおける結晶粒子Cの2つの粒子表面が露出し、隣接する粒子表面同士が連なって、2つの膜表面21、22を形成している。
【0016】
各結晶粒子Cは、
図2に示すアパタイト型の結晶構造を有する複合酸化物からなる薄板状の粒子であり、六方晶系のアパタイトのc軸が、膜厚方向Zに沿うように、配向していることが望ましい(例えば、
図3参照)。アパタイトのa軸及びb軸は、c軸に対して垂直な平面内にある。このような結晶粒子Cが集合した多結晶層11は、粒界C1が膜厚方向Zに沿うように形成されて、膜平面の全体に均等に配置されていることが望ましく、応力に対する膜強度を向上させる効果を有すると考えられる。また、アパタイト型複合酸化物は、c軸の方向に酸化物イオン(O
2-)が伝導しやすい性質を有することから、自立型薄膜1を酸化物イオン伝導体として用いる場合に有利である。
【0017】
自立型薄膜1は、膜厚tが0.2μm以上5.0μm以下の範囲となるように形成されている。
図4に示すように、膜厚tは、多結晶体10からなる膜の厚さ、すなわち、単層膜である場合は、多結晶層11の厚さであり、所望の膜強度やイオン伝導性が得られるように、適宜設定することができる。膜厚tが0.2μm以上であることにより、自立型の薄膜として維持することが可能であり、膜厚tが5.0μm以下であることにより、酸化物イオンの移動距離を短くしてイオン伝導性を高めることが可能になる。好適には、膜厚tが1.0μm以上であることが好ましい。膜厚tは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による断面観察に基づく平均膜厚として算出することができる。
【0018】
自立型薄膜1の膜面積Sは、1.0cm2ないしそれ以上の大きさであり、膜表面粗さRzが20nm以下となるように形成されている。膜表面粗さRz(JIS B0601)は、基準長さにおける粗さ曲線の最大高さであり、ナノオーダーの微小な凹凸測定が可能な装置、例えば、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて計測することができる。膜表面粗さRzが20nm以下であることにより、膜表面21、22の凹凸が低減して、凹凸に起因する応力が緩和され、応力の集中点の発生を抑制することで、1.0cm2以上の面積を有する5.0μm以下の薄膜形状を維持することが可能になると考えられる。好適には、膜表面粗さRzが15nm程度ないしそれ以下であることが好ましい。
【0019】
自立型薄膜1の膜面積Sの上限は、特に制限されるものではなく、後述する製造方法において用いられる基板面積に応じた膜面積Sが得られる。したがって、用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、製造上の観点からは、500cm2程度ないしそれ以下の範囲とすることが望ましい。好適には、膜面積Sが200cm2程度ないしそれ以下であることが好ましい。膜面積Sは、例えば、レーザー光を用いたレーザー顕微鏡による平面形状の計測結果に基づいて算出することができる。
【0020】
以下、本形態における自立型薄膜1の詳細構造について説明する。
図1において、自立型薄膜1は単層膜であり、膜厚方向Zに対向する多結晶体10(多結晶層11)の2つの表面が、膜表面21、22となる。多結晶層11は、アパタイト構造の結晶粒子Cの少なくとも一部が一方向に配向しており、好適には、結晶粒子Cのc軸方向と膜厚方向Zとがほぼ一致するc軸配向性を有する層であることが望ましい。また、隣り合う結晶粒子Cの間に、膜厚方向Zと略一致する方向に、粒界C1が形成されることが望ましい。具体的には、多結晶層11を構成する結晶粒子Cのうち、c軸配向性を有している結晶粒子Cの比率を、c軸配向率と定義したとき、ロットゲーリング法を用いて算出されるc軸配向率が0.25以上であり、かつ、粒界C1の方向が揃っている多結晶層11を、配向性層とすることができる。
【0021】
c軸配向率が、0.25以上であることにより、多結晶層11の全域において、より多くの結晶粒子Cのc軸が、膜厚方向Zに沿うか、膜厚方向Zからのずれが小さくなる(結晶粒子Cのc軸方向を、
図3中に点線矢印で示す)。このとき、アパタイトのC面が、膜表面21、22として露出しやすくなり、酸化物イオン伝導性及び膜強度を向上させる観点から好ましい。より好適には、c軸配向率が、ロットゲーリング法による算出値として、0.6以上であることが好ましい。c軸配向率は、例えば、X線回折装置によって取得したX線回折パターンにおけるピーク強度から、公知のロットゲーリングの式を用いて算出することができる。
【0022】
このとき、
図3に示すように、多結晶層11の層断面において、c軸配向性を有する結晶粒子Cが集合していると共に、層断面に現れる粒界C1の方向が、膜厚方向Zに略一致していることが望ましい。このように、粒界C1の方向が、膜表面21、22に対して垂直(90°)又はそれに近い方向となることで、粒界C1による膜強度の向上効果が高まると考えられる。そのために、好適には、層断面に現れる粒界C1の方向と、膜表面21、22と平行な方向(膜平面方向X、Y)とのなす角度を粒界角度θとしたとき、粒界角度θが80°以上であること、言い換えれば、粒界C1の方向と膜厚方向Zとのなす角度(ずれ角度)が10°以下であることが望ましい。粒界角度θ(又はずれ角度)は、例えば、TEM断面観察に基づく複数の粒界C1の計測角度の平均値として算出することができる。
【0023】
結晶粒子Cの膜表面21、22において観察される平均粒子径(D50)は、例えば、5μm以上500μm以下であることが望ましい。平均粒子径が5μm未満であると、多結晶層11に形成される粒界C1が多くなり、構造欠陥である粒界C1において酸化物イオン伝導性への影響が懸念される。また、平均粒子径が500μmを超えると、粒界C1が少なくなり、膜強度向上の効果が小さくなる恐れがある。
【0024】
自立型薄膜1は、
図4に示すように、膜厚tに対して膜面積Sが大きい扁平な膜であり、膜表面21、22の間に、略垂直な方向に延びる粒界C1が均等に形成されることが、膜全体の強度の維持に寄与していると考えられる。また、大気に晒される膜表面21、22の面積が、従来よりも大きくなることから、酸素欠損等の構造欠陥を形成しやすくなる。さらに、c軸配向率の向上により、大気に晒される面におけるC面の比率が向上することが、より構造欠陥を形成しやすい方向に作用し、構造欠陥による応力緩和と酸化物イオン伝導性の向上の効果が得られると考えられる。
【0025】
このように、自立型薄膜1は、膜厚tに対して膜面積Sがより大きくなることにより、膜強度の向上や酸化物イオン伝導性の発現に有利になると考えられる。あるいは、
図4に示す自立型薄膜1の形状が、例えば、概略正方形であるとき、その一辺長をLとして、膜厚tに対する比率(すなわち、アスペクト比:L/t)がより大きくなることで、イオン伝導性及び曲げ弾性率の高いフィルム状電解質として機能させることが可能になる。このようなフィルム状電解質は、電気化学セル等の各種用途に好適に使用される。
【0026】
例えば、自立型薄膜1の膜厚tが5.0μmであるとき、膜面積Sが1.0cm2(すなわち、一辺長Lが1cm=10000μm)以上であれば、アスペクト比は2000(L/t=10000μm/5μm)以上となる。なお、自立型薄膜1の形状は、矩形形状に限らず、任意の形状とすることができる。その場合も、膜面積Sと同じ面積の正方形の一辺長Lを用いて、アスペクト比を表すことができる。
【0027】
自立型薄膜1を構成するアパタイト型構造の複合酸化物としては、好適には、下記式で表されるアパタイト型複合酸化物を用いることができる。
式:A10-xB6-yMyO27-z
ただし、式中、
Aは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、
Bは、Si又はGe又はその両方を含む元素であり、
Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素であり、
x、y及びzは、それぞれ、:-0.5≦x≦2.0、0.0≦y≦3.0、-6.0≦z≦4.2、を満たす数である。
【0028】
式中のA元素は、正の電荷を有するイオンとなり、アパタイト型六方晶構造を構成し得るランタノイド又はアルカリ土類金属である。例えば、酸化物イオン伝導度をより高めることができる観点から、La、Ce、Nd、Ca、Sr及びBaからなる群のうちの一種又は二種以上の元素との組み合わせであるのが好ましく、中でも、La又はNdのうちの一種、あるいは、LaとCe、Nd、Ca、Sr及びBaからなる群のうちの一種又は二種以上の元素との組み合わせであるのが好ましい。
また、式中のB元素は、Si又はGe又はその両方を含む元素であればよい。
【0029】
式中のM元素は、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素である。例えば、酸化物イオン伝導度を高める観点から、中でも、Al、Ti、Y、Zr及びB等を用いることが好ましい。
【0030】
式中のxは、配向度及び酸素イオン伝導度を高めることができる観点から、-0.5以上2.0以下であるのが好ましい。
式中のyは、アパタイト型結晶格子におけるB元素位置を埋めるという観点から、0.0以上3.0以下であるのが好ましい。
式中のzは、アパタイト型結晶格子内での電気的中性を保つという観点から、-6.0以上4.2以下であるのが好ましい。
【0031】
上記式で表されるアパタイト型複合酸化物としては、例えば、式中のA元素が希土類元素であり、式中のB元素がSiである、希土類シリケート系の複合酸化物を用いることができる。希土類シリケート系の複合酸化物の例としては、La
9.33Si
6.0O
26、La
9.33Si
5.3B
0.7O
25.65、La
9.33Si
5.3Ti
0.7O
26、La
9.33Si
5.3Al
0.7O
25.65、La
9.33Si
5.3Y
0.7O
25.65、La
9.33Si
5.3Zr
0.7O
26、La
9.00Ce
0.33Si
6.0O
26等が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
なお、上記
図2に示したアパタイト型の結晶構造において、図中に矢印で示すA、B、Oは、式中のA元素、B元素、O元素が占める位置を表す。
【0032】
図5に示すように、このようなアパタイト型複合酸化物を用いて、自立型薄膜1を製造する場合には、基板200上に、アパタイト型複合酸化物又はその前駆体となる非晶質複合酸化物膜100を成膜し、結晶化及び配向させた後に、基板200から分離する方法を採用することができる。基板200の材料としては、Si、Pt等の金属材料や、サファイア(Al
2O
3)、ZrO等の酸化物材料が挙げられ、好適には、酸化物材料からなる基板を用いることができる。具体的には、以下に示すように、
(1)基板200の表面に、アパタイト型複合酸化物の結晶化温度において昇華可能な組成物からなる第1の層300を形成する第1工程と、
(2)第1の層300の表面に、アパタイト型複合酸化物と同一の構成元素を含む非晶質複合酸化物膜100を成膜する第2工程と、
(3)非晶質複合酸化物膜100の表面に、アパタイト型複合酸化物の構成元素の一部を含む酸化物もしくはその前駆体からなる第2の層400を成膜する第3工程と、
(4)非晶質複合酸化物膜100の結晶化温度以上に昇温して熱処理することにより、アパタイト型複合酸化物からなる多結晶層11を形成すると共に、第1の層300を昇華により除去する第4工程と、を有することにより、自立型薄膜1を製造することができる。
【0033】
第1工程は、製造過程において、自立型薄膜1を分離する方法として、予め、基板200の主面200aとなる表面に、第4工程において除去される、組成物の層(以下、第1の層)300を形成する工程である。このような第1の層300を形成する組成物は、非晶質複合酸化物膜100の熱処理中に、昇華により除去可能な蒸気圧の高い組成物であればよく、非晶質複合酸化物膜100をアパタイト構造に結晶化させると共に、熱処理後に、配向したアパタイトを基板200から剥離させることができる。蒸気圧の高い組成物としては、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ボロン、硫黄、リンなどが挙げられる。アパタイトへの熱処理中の元素拡散や内部応力の低減などの観点から、好適には、酸化物の組成物を用いることが望ましい。
【0034】
蒸気圧の高い組成物を形成する方法としては、例えばアトミックレイヤデポジション、イオンプレーティング、パルスレーザデポジション、めっき法、スパッタリング法、蒸着法などを挙げることができる。また、共沈法、ゾルゲル法などの湿式法で作製した非晶質酸化物をスクリーン印刷、スピンコート法等、任意の成膜方法を採用することができる。好適には、膜質及び生産性の観点から、スパッタリング法を選択することが好ましい。
【0035】
スパッタリングによる成膜は、既存のスパッタ装置を用いて実施することができ、第1の層300を形成する組成物からなるターゲットと、基板200とを対向させて、スパッタリングを行い、基板200上に所望の組成物からなる膜を形成することができる。基板200としては、後述する第4工程における熱処理中に、熱膨張率差異によるクラックといった構造不良を抑制するという観点で、酸化物基板が好適である。例えば、C面を主面200aとするサファイア基板等を用いることができ、主面200a上に、第1の層300として、六方晶系の材料(例えば、ZnO)からなるc軸配向膜を形成すると、六方晶系のアパタイトをc軸配向させやすくするという観点から望ましい。また、基板200を予め加熱して、300~800℃の範囲の所定温度に保持しながら、スパッタリングを行うようにしてもよい。
【0036】
第2工程において、第1の層300の表面に、非晶質複合酸化物膜100を成膜する方法としては、同様の方法を採用することができ、好適には、スパッタリング法を用いることができる。具体的には、製造するアパタイトと同一構成元素を有する複合酸化物からなるターゲットを用いて、スパッタリング法により、非晶質複合酸化物膜100を基板200上に成膜することができる。スパッタリングターゲットとして用いる複合酸化物(焼結体)の組成は、成膜する非晶質複合酸化物膜100と同一組成とすることができ、第3工程において用いる酸化物もしくは前駆体の添加量を、目標とするアパタイト型複合酸化物の組成から除いた組成物を用いることができる。
【0037】
次いで、第3工程において、基板200上の非晶質複合酸化物膜100の表面に、アパタイト型複合酸化物の構成元素の一部を含む酸化物もしくはその前駆体からなる第2の層400を成膜する。酸化物もしくはその前駆体は、アパタイトを構成するA元素、B元素及びM元素のうち一種又は二種以上を含む。成膜方法としては、上記工程と同様の方法を採用することができ、好適には、スパッタリング法を用いることができる。
【0038】
第1~第3工程において、スパッタリング法を採用する場合には、好適には、高周波(RF)スパッタリング法が用いられる。これにより、高抵抗体である酸化物ターゲットを用いることができる。具体的には、スパッタリングターゲットと基板200(対向電極)を設置した真空チャンバ内に、置換ガスを導入してチャンバ内を所定圧力に維持し、その状態で高周波電圧を電極間に印加し、プラズマ処理する。真空チャンバの真空度は、例えば、1×10-5以上1×10-2Pa以下の範囲とし、プラズマ処理の圧力は0.5Pa以上30Pa以下の範囲とすることができる。また、置換ガスとしてはAr、He、Ne、Kr、Xe、Rn等の不活性ガスが用いられ、O2、N2等のガスを用いて、反応性スパッタリングを行うこともできる。
【0039】
好適には、成膜密度を向上させる観点から、成膜中のチャンバ内には、O2ガスを導入することが好ましい。O2ガスを導入することで、形成される膜中にボイド等の大きな構造欠陥が生じるのを抑制することができ、例えば、固体酸化物型燃料電池(SOFC)等に使用される高活性セルへ適用される場合に、より好適な膜を形成することができる。雰囲気中のO2ガスの割合は、5%以上20%以下の範囲で選択されることが望ましい。O2ガスが5%未満では、ボイド等の発生を抑制する効果が不十分となる可能性があり、20%より高くなると、基板200上に生成される非晶質複合酸化物膜100の生成速度が遅くなり、製造効率が低下する可能性がある。
【0040】
プラズマ処理時の電力密度は、例えば、1.0以上4.0W/cm2以下の範囲で選択され、異常析出やスパークを防止しながら効率的に成膜することができる。好適には、1.5W/cm2以上3.0W/cm2以下の範囲であることが好ましい。スパッタリングターゲットの製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、特許文献1に記載される方法のように、ターゲットとなる組成物の原料を混合、焼成して焼結体とする方法等を採用することができる。
【0041】
その後、第4工程において、基板200上の非晶質複合酸化物膜100とその表層に形成された第2の層400を、さらに熱処理する。これにより、非晶質複合酸化物膜100と第2の層400を一体化させ、アパタイト構造に結晶化させると共に配向させて、アパタイト型複合酸化物からなる多結晶層11を形成することができる。さらに、形成された多結晶層11を、基板200から分離して、自立型薄膜1とすることができる。
【0042】
熱処理の温度は、非晶質複合酸化物膜100をアパタイト構造に結晶化させる効率の点で、800℃以上に加熱することが好ましく、好適には、850℃以上1200℃以下、より好適には、900℃以上1100℃以下とすることが好ましい。スパッタリング法により成膜した複合酸化物膜は、非晶質として得られ、熱処理によって結晶化するが、800℃未満では結晶化を進行させるために長時間が必要となる。また、熱処理炉がマッフル炉である場合、1200℃を超える温度に設定することは容易ではなく、一般に、1200℃超の温度に設定し得る加熱炉は高価であることから、実用上有利ではない。
【0043】
この熱処理中に、非晶質複合酸化物膜100の表層に形成した第2の層400が、非晶質複合酸化物膜100の内部へ拡散する過程において、膜平面方向に対して垂直方向に延びる多数の粒界C1が形成され、膜強度を向上させると共に、結晶粒子Cのc軸配向率を向上させると考えられる。また、基板200上に形成された第1の層300が昇華により除去されて、自立型薄膜1となる多結晶層11を基板200と分離することができる。
【0044】
熱処理の雰囲気は、大気雰囲気とすることができる。また、基板200からの剥離に際しての熱処理は、非晶質複合酸化物膜100をアパタイト構造に結晶化させる熱処理と同じ温度域で行うことができるが、上述した不活性ガスや水素等の還元ガスを流すことで、より効率的に行うことができる。好適には、アパタイト構造に結晶化させるために十分な時間、大気雰囲気にて熱処理を行った後に、還元ガス雰囲気に置換して熱処理を行うことにより、自立型薄膜1を効率よく製造することができる。
【0045】
第4工程の熱処理により、配向させたアパタイト型複合酸化物膜を自立型薄膜1とする方法は、上記した第1工程及び第4工程のように、蒸気圧の高い組成物を用いて、基板200から分離する方法に限らず、任意の方法を採用することができる。例えば、基板200として、溶解度の高い組成物を用い、第2工程~第4工程のようにして、配向させたアパタイト型複合酸化物膜を作製した後、基板200を水等へ溶解させることにより除去し、多結晶層11からなる自立型薄膜1を得る方法がある。溶解度の高い組成物としては、特に限定されないが、アパタイトへの熱処理中の拡散や内部応力の低減などの観点から、酸化物の組成物を用いることが望ましい。このような溶解度の高い酸化物の組成物としては、例えば、クロム酸ストロンチウムやアルミン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0046】
(実施形態2)
自立型薄膜に係る実施形態2について、図面を参照して説明する。
図6、
図7に示すように、自立型薄膜1は、多結晶体10を構成する多結晶層11が二層以上である複層構造とすることもできる。その場合には、多結晶体10を構成する多結晶層11の少なくとも一層が、c軸配向性を有すると共に粒界C1が揃っている配向性層であることが望ましく、本形態では、2つの配向性層を有する二層構造としている。以下、実施形態1との相違点を中心に説明する。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
図6、
図7において、自立型薄膜1は、対向する2つの膜表面21、22の間に、同じ構造の多結晶層11Aと多結晶層11Bが、膜厚方向Zに積層されて、全体の膜厚t、膜面積S、表面粗さRzが、上述した範囲となるように構成されている。多結晶層11Aの露出する表面及び多結晶層11Bの露出する表面は、それぞれ、膜表面21、22を形成しており、多結晶層11Aと多結晶層11Bとの間には、層界面3が形成される。多結晶層11Aと多結晶層11Bは、いずれも配向性層であり、ここでは、同等の層厚となるように形成しているが、異なる層厚としてもよい。
【0048】
このように、自立型薄膜1となる多結晶体10が、層界面3を有し、膜厚方向Zにおいても2つの多結晶層11A、11Bの結晶粒子Cが粒界を接する構成であることにより、膜平面方向における粒界C1と同様に作用し、膜強度をさらに向上させる効果が得られる。
【0049】
自立型薄膜1は、二層構造に限らず、三層以上の多結晶層11を積層した構成することもできる。その場合には、各多結晶層11間にそれぞれ層界面3が形成され、層界面3が複数となる。積層数は、所定の膜厚の範囲で任意に設定可能であり、層界面3の形成による酸化物イオン伝導性への影響は小さいと考えられるが、製造上の観点から、例えば、五層程度ないしそれ以下とすることが好ましい。
【0050】
(実施形態3)
自立型薄膜に係る実施形態3について、図面を参照して説明する。
図8に示すように、自立型薄膜1を複層構造とする場合に、層厚及びc軸配向率の異なる二層又は三層以上の多結晶層11を含む構造とすることもできる。
図8の上図は、実施形態1における多結晶層11の表層に、粒界ランダム層となる多結晶層11Cを配置して、二層構造としたものである。
図8の下図に示すように、多結晶層11Cを、実施形態2における多結晶層11Aと多結晶層11Bとの間に配置して、三層構造とすることもできる。以下、実施形態1、2との相違点を中心に説明する。
【0051】
図8の上図において、自立型薄膜1となる多結晶体10は、c軸配向性を有すると共に粒界C1が揃っている配向性層である多結晶層11の一方の表面に、粒界ランダム層である多結晶層11Cが膜厚方向Zに積層されて、全体の膜厚t、膜面積S、膜表面21、22の表面粗さRzが、上述した範囲となるように構成されている。多結晶層11Cは、上記
図3に示した粒界角度θが80°未満で、ずれ角度が10°より大きくなっており、粒界C1の方向が、任意の方向(ランダム方向)に向いている層、言い換えれば、粒界C1が揃っていない層と言える。粒界ランダム層のc軸配向性は、特に制限されず、ロットゲーリング法によるc軸配向率が、0.25以上であっても、あるいは、0.25未満であってもよい。好適には、酸化物イオン伝導性の観点から、c軸配向率が0.25以上であることが望ましい。
【0052】
粒界ランダム層における酸化物イオン伝導性や表面凹凸への影響を抑制するために、粒界ランダム層となる多結晶層11Cの層厚t2は、配向性層となる多結晶層11の層厚t1よりも十分薄く形成することが望ましい。表面凹凸による応力集中が顕在化しない範囲であれば、粒界による応力緩和の効果が高く得られるために、膜厚方向Zの層界面3と共に、膜強度の向上に有効に作用すると考えられる。好適には、多結晶層11の層厚t1に対して、1/50程度ないしそれ以下、より好適には、1/100程度ないしそれ以下とすることができ、例えば、層厚t1が約5μmの多結晶層11の表層に、層厚t2が0.05μm(50nm)の多結晶層11Cが形成されることにより。応力集中を抑制しながら、膜強度の向上が可能になる。
【0053】
図8の下図のように、自立型薄膜1を三層構造とする場合には、粒界ランダム層である多結晶層11Cを挟んで、配向性層である多結晶層11Aと多結晶層11Bとが、膜厚方向Zに積層される。全体の膜厚t、膜面積S、膜表面21、22の表面粗さRzは、上述した範囲となるように構成される。自立型薄膜1が、粒界ランダム層である多結晶層11Cを複数有する構成とすることもできる。その場合には、例えば、粒界ランダム層と配向性層とが交互に配置されるように構成することで、膜全体の強度を向上させることができる。このような自立型薄膜1は、加工性に優れており、例えば、曲面状又は円筒状等の平面以外の形状に加工することにより、種々の用途への応用が可能である。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
上述した実施形態1と同様の構成を有する自立型薄膜1を作製し、その評価を行った。配向性アパタイト構造の多結晶体10からなる自立型薄膜1の作製は、上記
図5に示した方法に基づいて行い、高周波スパッタリング法により、基板200上に、第1の層300である配向性のZnO層を成膜し(第1工程)、さらに、アパタイト組成の非晶質複合酸化物膜100と、第2の層400である非晶質のSiO
2層とを成膜した(第2、第3工程)後、熱処理を行った(第4工程)。その具体的な方法を、以下に示す。
【0055】
<自立型薄膜1の作製>
まず、サファイア製の基板200と、ZnOからなるスパッタリングターゲットとを、公知の高周波スパッタリング装置のチャンバ内に対向させて配置し、真空度1×10-4Pa以下となるまで排気した。このチャンバ内にArガスを導入して1.0Paに維持した状態で、高周波電源を作動させ、高周波電力を投入した。基板200は、六方晶のサファイアC面を用いた正方形基板(10mm×10mm×1.0mm)であり、高周波電力は400W、成膜時間は30分間として、基板平面に対し垂直方向にc軸配向したZnOを成膜した。このZnO層の厚みは、300nmであった。
【0056】
次いで、ZnO層が成膜された基板200と、希土類シリケート系のアパタイト組成物(La9.33Si5.8O25.6)からなるスパッタリングターゲットとを、チャンバ内に対向配置し、真空度1×10-4Pa以下まで排気した後、O2が10%混合されたArガスを導入した。チャンバ内を1.0Paに維持した状態で、高周波電力500W(2.73W/cm2)、成膜時間600分間の条件で、ZnO層上に、アパタイト組成の非晶質複合酸化物膜100を成膜した。
【0057】
その後、非晶質複合酸化物膜100及びZnO層が成膜された基板200と、SiO2からなるスパッタリングターゲットとを、チャンバ内に対向配置し、真空度1×10-4Pa以下まで排気した後、Arガスを導入した。チャンバ内を1.0Paに維持した状態で、高周波電力500W(2.73W/cm2)、成膜時間1分間の条件で、非晶質複合酸化物膜100上に、非晶質のSiO2層を成膜した。
【0058】
このようにして得られた膜・基板複合体を、1000℃で熱処理して、非晶質複合酸化物膜100を、アパタイト結晶化させ配向性を付与すると共に、ZnO層を昇華させて除去することにより、基板200から分離した。熱処理は、大気雰囲気中にて1000℃まで5時間かけて昇温し、4時間保持した後、4%H2混合N2ガスを100分間かけて導入して、大気雰囲気から完全に置き換わるようにした。この状態で10時間保持した後、2時間かけて常温まで降温して、配向性アパタイト構造を有する自立型薄膜1を得た。
【0059】
<自立型薄膜1の評価>
得られた自立型薄膜1について、X線回折法によるX線回折パターンの解析とICP発光分析による元素分析を行った。また、各種顕微鏡による膜形状及び試料断面の観察を行った。具体的には、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)による表面粗さ計測を行い、レーザー顕微鏡による平面形状の計測を行うと共に、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による断面方向の構造解析を行った。これらの結果を、実施例1として表1に示す。
【0060】
表1に膜構成(母相)として示すように、得られた自立型薄膜1は、La9.33Si6.0O26の組成を有するアパタイト構造の結晶Cが集合した多結晶体10からなる膜であることが確認された。また、膜厚tが5.0um、膜面積Sが1.0cm2、膜表面粗さRzが15nm、c軸配向率が0.25、粒界角度θが80°である配向性アパタイトの多結晶層11(配向性層)からなる一層の膜であり、膜厚方向Zに層界面3を有しないことが確認された。これらの測定に使用した装置を、以下に示す。
・X線回折装置:株式会社リガク製、SmartLab
・ICP発光分析装置:株式会社島津製作所製、ICPS-7510
・レーザー顕微鏡:オリンパス株式会社製、LEXT OLS4100
・透過型電子顕微鏡:日本電子株式会社製、GRAND-ARM300
【0061】
表1における膜厚tは、断面試料のTEM観察画像に基づく算出値であり、膜平面に沿う長さ10μmの範囲について、任意の40点で計測した膜厚の算術平均値とした。また、c軸配向率は、断面TEM観察における、任意の40個の粒子のX線回折パターンを計測して、ロットゲーリング法により算出した比率であり、粒界角度θは、断面TEM観察における、任意の40個の粒界C1の角度を計測して、その算術平均値を求めた。
【0062】
【0063】
次いで、得られた自立型薄膜1について、膜厚方向Zに対向する2つの膜表面21、22に、それぞれPt膜を蒸着により形成した後、それぞれPtリード線を接合し、複素インピーダンス法に基づく酸化物イオン伝導度[log(S/cm)]の測定を行った。測定に使用した装置と、計測条件を、以下に示す。また、測定結果を、表2に示す。
・使用装置:北斗電工株式会社製、ModuLab XM ECS
・印可電圧:0V
・計測振幅:10mV
・計測周波数:1MHz~0.1Hz
・測定環境:500℃の大気雰囲気(酸素濃度20.9%)
【0064】
さらに、得られた自立型薄膜1について、
図9に示す装置を用いて、膜の強度を計測した。
図9において、台座500上には、治具501と上皿天秤502とが設置されており、セラミック製の治具501の上端部に設けたアーム部503の先端側に、評価用サンプルとなる自立型薄膜1が支持されている。自立型薄膜1は、台座500と平行に延出する一対のアーム503a、503bの間に配置され、上皿天秤502の一方の皿504の上方に位置している。上皿天秤502の他方の皿505には、任意の分銅506が載置可能となっている。
【0065】
図9中に、サンプル評価部の構成を拡大して示すように、下側のアーム503bには、自立型薄膜1の下面側に当接する突出部507が設けられ、分銅506による荷重が印可可能となっている。また、突出部507の上方において、上側のアーム503aには開口部503cが設けられて、レーザー顕微鏡508により、荷重印可時に自立型薄膜1に生じる歪を計測可能となっている。歪計測には、上述した平面形状の計測に用いたレーザー顕微鏡と同様の装置を用いた。この装置を用いて測定した曲げ弾性率(単位:GPa)、曲げ強度(単位:MPa)を、表2に併記する。
【0066】
【0067】
表2に示されるように、得られた自立型薄膜1は、酸化物イオン伝導度が-4.7[log(S/cm)]であり、曲げ弾性率が78GPaであり、曲げ強度が110MPaであり、いずれも良好な結果が得られた。
【0068】
(実施例2~7)
実施例1と同様の製造方法により、アパタイト組成の異なる自立型薄膜1を作製した。具体的には、同様にして、ZnO層が成膜された基板200上に、アパタイト組成の非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、スパッタリングターゲットとして用いるアパタイト組成物を、La9.33Si5.3B0.7O25.65に変更した。それ以外は、同様の方法により、自立型薄膜1を作製し、評価を行った結果を、実施例2として表1、表2に併記する。
【0069】
また、スパッタリングターゲットとして用いる希土類シリケート系のアパタイト組成物を、以下のように変更したものを、実施例3~7とした。同様の方法により、自立型薄膜1を作製し、評価を行った結果を、それぞれ表1に併記する。
実施例3:La9.33Si5.3Ti0.7O26
実施例4:La9.33Si5.3Al0.7O25.65
実施例5:La9.33Si5.3Y0.7O25.65
実施例6:La9.33Si5.3Zr0.7O26
実施例7:La9.00Ce0.33Si6.0O26
【0070】
表1に示されるように、上記式で表されるM元素(Al、Ti、Y、Zr又はB)を含むアパタイト型複合酸化物、又は、二種のA元素(La、Ce)を含むアパタイト型複合酸化物を用いた実施例2~7についても、実施例1と同様の膜構成を有する配向性アパタイトの単層膜であることが確認された。また、表2に示されるように、実施例2~7の自立型薄膜1は、酸化物イオン伝導度が-4.0~-4.6[log(S/cm)]と、実施例1と同等以上となっており、曲げ弾性率が72~79GPa、曲げ強度が107~110MPaと、いずれも良好な膜特性が得られた。
【0071】
(実施例8)
実施例1と同様の製造方法において、成膜条件を変更して、アパタイト組成の自立型薄膜1を作製した。具体的には、ZnO層が成膜された基板200上に、アパタイト組成物(La9.33Si5.8O25.6)をスパッタリングターゲットとして、非晶質複合酸化物膜100を成膜する際の成膜時間を、24分間に変更した。さらに、非晶質のSiO2層を成膜する際の成膜時間を2.4秒間に変更し、それ以外は、同様の方法により、自立型薄膜1を作製した。これを実施例8として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0072】
表1に示されるように、得られた自立型薄膜1は、膜厚tが0.2umと、実施例1よりも薄く、膜面積Sとc軸配向性は、実施例1と同等の膜構成を有する配向性アパタイトの単層膜であることが確認された。また、表2に示されるように、酸化物イオン伝導度が-4.6[log(S/cm)]と、実施例1と同等以上となっており、曲げ弾性率が78GPa、曲げ強度が110MPaと、いずれも良好な膜特性が得られた。
【0073】
(実施例9)
実施例1と同様の製造方法において、基板200上に成膜される層を変更して、アパタイト組成の自立型薄膜1を作製した。具体的には、基板200に接する第1の層300を成膜する際に、ZnOの代わりに、SiO2をスパッタリングターゲットとして用い、それ以外は同様にして、配向性のSiO2層が成膜された基板200を作製した。さらに、非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、スパッタリングターゲットとするアパタイト組成物を、La9.33Si5.6O25.2に変更し、それ以外は、同様にして、自立型薄膜1を作製した。これを実施例9として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0074】
表1に示されるように、得られた自立型薄膜1は、実施例1と膜厚t、膜面積Sが同等の大きさの膜であり、表面粗さRzが8nmに低減すると共に、c軸配向率が0.6、粒界角度θが88°と、c軸配向性が向上した配向性アパタイトの単層膜であることが確認された。また、表2に示されるように、酸化物イオン伝導度が-2.5[log(S/cm)]と、-4.0[log(S/cm)]を上回り、ZnO層を用いた場合に比べて大きく向上した。さらに、曲げ弾性率が68GPaと、70GPa以下に低減すると共に、曲げ強度が116MPaとなり、いずれもZnO層を用いた場合よりも良好な膜特性が得られた。
【0075】
(実施例10)
実施例1と同様の製造方法において、成膜条件を変更して、実施形態2に示す複層構造のアパタイト組成の自立型薄膜1を作製した。具体的には、配向性のZnO層が成膜された基板200上に、アパタイト組成物(La9.33Si5.8O25.6)をスパッタリングターゲットとして、非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、成膜時間を300分間に変更し、その上に、非晶質のSiO2層を成膜する際の成膜時間を0.5分間に変更した。次いで、同様にして熱処理を行い、大気雰囲気中にて1000℃まで5時間かけて昇温し、4時間保持した後、2時間かけて常温まで降温した。
【0076】
このようにして、基板200上に一体化している配向性アパタイトの層を一層形成し、さらに、その表面に、再度同じ手順で、非晶質複合酸化物膜100を300分間成膜し、その上に、非晶質のSiO2層を0.5分間成膜した。次いで、上記したのと同様の熱処理を行い、大気雰囲気中にて1000℃まで5時間かけて昇温し、4時間保持した。その後、実施例1と同様にして、4%H2混合N2ガスを導入して大気雰囲気から置換し、10時間保持した後、2時間かけて常温まで降温して、自立型薄膜1を得た。これを実施例10として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0077】
表1に示されるように、得られた自立型薄膜1は、実施例1と膜厚t、膜面積Sが同等の大きさを有し、表面粗さRzが20nmの膜であり、二層の配向性アパタイトの層が層界面3を挟んで積層された複層膜であることが確認された。また、表2に示されるように、曲げ強度が121MPaと、単層膜である場合よりも高くなっており、曲げ弾性率が78GPa、酸化物イオン伝導度が-4.8[log(S/cm)]と良好な膜特性が得られた。
【0078】
(実施例11)
実施例10と同様の製造方法において、成膜条件を変更して、実施形態3に示す複層構造のアパタイト組成の自立型薄膜1を作製した。具体的には、ZnO層が成膜された基板200上に、アパタイト組成物(La9.33Si5.8O25.6)をスパッタリングターゲットとして、一層目の非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、成膜時間を594分間に変更し、その上に、非晶質のSiO2層を成膜する際の成膜時間を1分間に変更した。また、二層目の非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、スパッタリングターゲットとなるアパタイト組成物を、La9.33Si6.0O26に変更して、6分間の成膜を行い、その後、非晶質のSiO2層を成膜せずに、同様の熱処理を行った。それ以外は、同様の方法により、自立型薄膜1を作製した。これを実施例11として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0079】
表1に示されるように、得られた自立型薄膜1は、実施例1と膜厚t、膜面積Sが同等の大きさを有し、表面粗さRzが14nmの膜であり、層厚t1が4.95μmの配向性層(母相)の表層に、層厚t2が0.05μmの粒界ランダム層が積層形成された複層膜であることが確認された。具体的には、配向性層は、c軸配向率が0.25、粒界角度θが80°であり、粒界ランダム層は、c軸配向率が0.25、粒界角度θが45°であった。
【0080】
また、表2に示されるように、得られた自立型薄膜1は、曲げ強度が125MPaと、実施例10の複層膜よりも高くなっており、酸化物イオン伝導度が-4.9[log(S/cm)]、曲げ弾性率が79GPaと良好な膜特性が得られた。
【0081】
(実施例12)
実施例11と同様の製造方法において、成膜条件を変更して、同様の複層構造の自立型薄膜1を作製した。具体的には、基板200上に成膜される層を、実施例9と同様のSiO2層とし、一層目の非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、スパッタリングターゲットとなるアパタイト組成物を、La9.33Si5.6O25.2に変更した。それ以外は、同様にして、一層目及び二層目の非晶質複合酸化物膜100を成膜し、自立型薄膜1を作製した。これを実施例12として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0082】
表1に示されるように、得られた自立型薄膜1は、実施例11と同様に、層厚t1が4.95μmの配向性層(母相)の表層に、層厚t2が0.05μmの粒界ランダム層が積層形成され、表面粗さRzが9nmの複層膜であることが確認された。具体的には、配向性層は、c軸配向率が0.6、粒界角度θが88°であり、粒界ランダム層は、c軸配向率が0.25、粒界角度θが45°であった。
【0083】
また、表2に示されるように、得られた自立型薄膜1は、酸化物イオン伝導度が-3.1[log(S/cm)]、曲げ弾性率が70GPaと、実施例9と同等程度に向上し、また、曲げ強度が128MPaと、実施例11の複層膜よりも高くなっており、良好な膜特性が得られた。
【0084】
(比較例1)
比較のため、実施例1と同様の製造方法において、成膜条件を変更して、アパタイト組成の薄膜を作製した。具体的には、ZnO層が成膜された基板200上に、非晶質複合酸化物膜100を成膜する際に、スパッタリングターゲットとなるアパタイト組成物を、La9.33Si6.0O26に変更して、600分間の成膜を行った。その後、非晶質のSiO2層の成膜を行わずに、熱処理を行ったこと以外は、同様の方法により、成膜と熱処理を行って薄膜を作製した。これを比較例1として、同様に評価を行った結果を、表1、表2に併記する。
【0085】
表1に示されるように、比較例1の成膜条件で得られた薄膜は、膜厚tが5μmで、膜面積Sが0.25cm2と、基板200の面積(1.0cm2)よりも小さくなっている。また、表面粗さRzが30nmと、実施例1~実施例12の自立型薄膜1よりも大きくなっており、c軸配向率が0.25、粒界角度θが45°と、粒界C1の方向が揃っておらずランダムな方向を向いている膜であることが確認された。また、表2に示されるように、曲げ弾性率は79GPaと、実施例1~実施例12の自立型薄膜1とほぼ同等であるものの、酸化物イオン伝導度が-5.5[log(S/cm)]、曲げ強度が101MPaと、いずれも実施例1~実施例12の自立型薄膜1よりも低い値であった。
【0086】
図10は、比較形態1として、比較例1に示した方法により得られた薄膜の構造を模式的に示したものである。比較例1では、実施例1~12のように、非晶質複合酸化物膜100の表層に第2の層400である非晶質のSiO
2層が形成されないために、結晶粒子Cの配向性を制御することが難しい。そのために、粒界C1の方向が膜厚方向Zからずれて、ランダムな方向を向いて結晶粒子Cが集合した多結晶体10となりやすい。その場合には、基板200と反対側となる膜表面21において、表面凹凸が大きくなり、応力集中により膜強度が低下して、基板200と同等の広い面積の膜形状を維持することが困難になると考えられる。
【0087】
これに対して、実施例1~12のようにして得られた自立型薄膜1は、基板200と同等の比較例1より大きな面積の自立型の薄膜となり、高い酸化物イオン伝導性と膜強度とを有する。したがって、このような自立型薄膜1を電解質とし、その両表面にカソード及びアノードを形成することにより、高性能な電気化学セルが得られ、燃料電池等に利用されて、その性能を向上させることができる。
【0088】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。また、得られた自立型薄膜1は、燃料電池用の電気化学セルに限らず、任意の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 自立型薄膜
10 多結晶体
11、11A、11B、11C 多結晶層
21、22 膜表面
3 層界面
C 結晶粒子
C1 粒界