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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】ドッグクラッチアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16D 11/14 20060101AFI20250307BHJP
   F16D 28/00 20060101ALI20250307BHJP
   H02K 7/06 20060101ALI20250307BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
F16D11/14
F16D28/00 Z
H02K7/06 B
H02K21/16 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021523484
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019080686
(87)【国際公開番号】W WO2020094844
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】1851393-7
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】593118656
【氏名又は名称】ボルグワーナー スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン ピーター
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506730(JP,A)
【文献】実開昭57-118675(JP,U)
【文献】特開平08-251898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/14
F16D 28/00
H02K 7/06
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能なクラッチスリーブ(3)を有するドッグクラッチを接続及び切断するためのアクチュエータであって、
前記アクチュエータ(4)は電動モータ(6)を備え、前記電動モータ(6)のロータ(61)は、回転可能なアクチュエータロッド(7)に接続され、前記アクチュエータロッド(7)の端部には、偏心ピン(5)が設けられ、偏心ピン(5)は、前記クラッチスリーブ(3)の一方の軸方向端部位置に対応する回転位置から前記クラッチスリーブ(3)の他方の軸方向端位置に対応する回転位置への、前記電動モータ(6)による前記アクチュエータロッド(7)の180°以下の回転が前記ドッグクラッチの接続又は切断につながるように、前記クラッチスリーブ(3)と協働するように構成され、
前記アクチュエータの前記電動モータ(6)は、中心位置から離れて回転すると、トルク出力が低下するように構成され、
前記アクチュエータ(4)は、前記アクチュエータロッド(7)がその軸方向端部位置に近づくにつれて、前記クラッチスリーブ(3)の軸方向移動に伴う軸力が増幅される固有の増幅効果を有し、
前記アクチュエータロッド(7)がその軸方向端部位置に近づくにつれて、前記電動モータ(6)から出力される減少トルクと、前記増幅効果とを相殺させることによって、前記アクチュエータロッド(7)の角度範囲全体にわたって、一定の線形軸力を発生させる、ように構成されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータ(6)は、永久磁石の形状をした外側の固定電機子(62)と内側のロータ(61)とを備え、前記固定電機子は、3つのコイル又は巻線(63、64、65)を備え、3つの前記コイル又は前記巻線(63、64、65)は、直列に接続され、前記ロータ(61)の周囲に円周方向に120°離間して等間隔に配置され、前記ロータ(61)は、前記アクチュエータロッド(7)に接続され、前記アクチュエータロッド(7)には前記偏心ピン(5)が取り付けられる、ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記電動モータ(6)は、前記電動モータ(6)に供給される電流方向毎に、前記クラッチスリーブ(3)の2つの前記軸方向端部位置の間にトルク出力の最大値を1つだけ持つように、前記アクチュエータ(4)に対して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記電動モータ(6)のトルク出力は、前記アクチュエータロッド(7)の両回転方向において、前記トルク出力の最大値を中心に対称に減少することを特徴とする請求項又はに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記クラッチスリーブ(3)の第1の軸方向端部位置は、前記アクチュエータロッド(7)の-80°~-65°の位置(α1)に等しく、前記クラッチスリーブ(3)の第2の軸方向端部位置は、前記アクチュエータロッド(7)の65°~80°の位置(α2)に等しい、請求項1~のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記電動モータ(6)のトルク出力の最大値は、前記アクチュエータロッド(7)の-10°~10°の間の位置(α3)に配置されることを特徴とする請求項のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記アクチュエータロッド(7)の0°の位置(α3)は、前記クラッチスリーブ(3)の軸方向位置がその前記軸方向端部位置の間の実質的に中央にあることに等しい、請求項に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記偏心ピン(5)の偏心半径は2.5mmから4mmの間であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のアクチュエータに使用されるように構成された電動モータであって、ロータが2極である2極ブラシレスDCモータであることを特徴とする電動モータ。
【請求項10】
前記電動モータ(6)は、前記アクチュエータロッド(7)に接続された中央の永久磁石ロータ(61)と、外側の固定電機子(62)とを備えることを特徴とする請求項に記載の電動モータ。
【請求項11】
前記電動モータ(6)のコイル(63、64、65)は直列に接続されていることを特徴とする請求項又は10に記載の電動モータ。
【請求項12】
車両の駆動系において2つのシャフト(1、2)を接続及び切断するためのドッグクラッチであって、請求項1~のいずれかに記載のアクチュエータが、請求項11のいずれかに記載の電動モータによって駆動されることを特徴とするドッグクラッチ。
【請求項13】
請求項12に記載のドッグクラッチを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを作動させてクラッチスリーブを軸方向に移動させることにより、ドッグクラッチを接続(連結)・切断するアクチュエータに関する。本発明はまた、ドッグクラッチアクチュエータ用の電動モータ、アクチュエータを備えるドッグクラッチ、及びドッグクラッチを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載されたタイプのドッグクラッチは、多くの用途に使用することができる。典型的な例は、AWD(All Wheel Drive、全輪駆動)車両を含む。その用途を以下に示す。
【0003】
AWD車両の駆動システムは、エンジンと、差動装置(differential)付き前車軸と、中間軸又はカルダンシャフトと、差動装置付き後車軸とを有することができる。駆動(走行、運転、driving)条件に応じて前車軸だけでなく後車軸へのトルクの分布を制御するため、後車軸への駆動系には、差動装置に近い中間軸に多用されるディスクカップリングが配置される。
【0004】
AWDモードで車両を駆動するときのカップリングの機能は、別のところ、例えば、WO2011/043722に記載されている。
【0005】
AWD車両をFWD(Forward Wheel Drive、前輪駆動)モードで駆動したいとき、ディスクカップリングは切断される。すなわち、そのディスクは、トルクが伝達されないように分離される。カップリングは、切断モードにあると言うことができる。この分離効果を高めるために、通常、カップリングのディスクの潤滑及び冷却のためにカップリングに提供されているオイルを、カップリングから取り除くことができる。中間推進軸の回転質量の加速度を低減し、ベアリング及びシーリングにおける引きずり(drag)トルクを排除するために、好ましくは前車軸の差動装置に近い箇所に、中間軸を車両のFWDモードで停止させるためのクラッチを設けてもよい。
【0006】
このクラッチは、接続モード又は切断モードの2つの別個の位置を有するドッグクラッチであることが好ましい。接続又は切断される2本の同軸シャフトには端部スプラインが設けられていてもよい。クラッチの機械的係合のために、軸方向に移動可能なクラッチスリーブを用いることができる。
【0007】
このような軸方向に移動可能なクラッチスリーブの動作は信頼性が高く、好ましくは滑らかであることが重要である。このような特性は、最終的にはアクチュエータと軸方向に移動可能なクラッチスリーブとの間のインターフェース、並びにアクチュエータ自体によって決定される。今日の多くのアクチュエータ制御ドッグクラッチは、軸方向に移動可能なスリーブに加えられるアクチュエータの力の変動に関する問題を有しており、従って、それに関連する信頼性の問題を有している。
【発明の概要】
【0008】
本発明の教示の目的は、従来技術の問題のいくつかを軽減することができるドッグクラッチアクチュエータを提供することである。また、本発明の目的は、従来技術よりも改良されている、ドッグクラッチアクチュエータに使用される電動モータ、前記アクチュエータを備えるドッグクラッチ、及び最終的にドッグクラッチを構成する車両を提供することである。この目的は、特許請求の範囲の独立請求項に記載された特徴を有する概念によって達成される。その好ましい実施形態は関連する従属請求項に定義される。
【0009】
第1の態様によれば、軸方向に移動可能なスリーブを有する、ドッグクラッチを接続及び切断するためのアクチュエータが提供される。アクチュエータは電動モータを備え、モータのロータは回転可能なアクチュエータロッドに接続されている。アクチュエータロッドの端部には偏心ピンが設けられている。偏心ピンは、クラッチスリーブの一方の軸方向端部位置に対応する回転位置からクラッチスリーブの他方の軸方向端部位置に対応する回転位置への、モータによるアクチュエータロッドの180°以下の回転がドッグクラッチの接続又は切断につながる(lead、連係する)(接続又は切断を導く)ように、クラッチスリーブと協働するように構成されている。アクチュエータの電動モータは、アクチュエータロッドの回転中に偏心ピンによってクラッチスリーブに伝達される線形(直線状)軸力(linear axial force)の変動(変化量)を低減するように構成される。線形軸力の変動の低減は、より信頼性の高いドッグクラッチの作動を可能にする。好ましくは、線形軸力の変動は10%未満、又はさらには5%未満である。最大推力が25Nの範囲にある場合、そのような実施形態では、線形軸力は常に25±2.5% N、すなわち25±0.3125 Nの範囲内にある。
【0010】
用途によっては、最大軸力と最小軸力との差によってロータリーアクチュエータの使用が制限される場合がある。すなわち、最小軸力は低すぎるが、モータのトルクが増加すると、最大軸力が高すぎることになる。このような事態は、本発明によって大幅に回避される。
【0011】
一実施形態によると、電動モータのコイルは直列に接続される。電動モータの構成は、回転運動が軸方向の運動に変換されるとき、回転アクチュエータに本質的に存在する軸力の増幅を緩和する。
【0012】
電動モータは、電動モータに提供される各電流方向に対してクラッチスリーブの2つの軸方向端部位置の間に1つのトルク出力の最大値のみ有するように、アクチュエータに対して配置されてもよい。
【0013】
実施形態において、電動モータのトルク出力は、トルク出力の最大値を中心としてアクチュエータロッドの両回転方向において対称的に減少する。したがって、トルク出力プロファイルは軸力の増幅に本質的に一致し、その影響を緩和する。
【0014】
クラッチスリーブの第1の軸方向端部位置は、アクチュエータロッドの-80°~65°の間の位置に等しくてもよい。クラッチスリーブの第2の軸方向端部位置は、アクチュエータロッドの65°~80°の間の位置に等しく(equate)てもよい。アクチュエータの回転範囲が180°未満であると、0°位置からの回転距離の増加/減少につれてモータトルク出力が減少するため、作動の信頼性が向上する。アクチュエータロッドが90°又は-90°に近づくにつれて、トルクは著しく低下し、又は更に完全に消失するため、アクチュエータロッド、より具体的には電動モータのロータのこのような位置は、回避されることが好ましい。
【0015】
電動モータのトルク出力の最大値は、-10°から10°の間、好ましくは約0°のアクチュエータロッド位置に配置することができる。これは、トルク出力の最大値がアクチュエータロッドの回転端部位置の実質的な中央における回転位置に対応するように、電動モータとアクチュエータとが配置されることを意味する。
【0016】
約0°のアクチュエータロッド位置は、その軸方向端部位置の間の実質的な中央に位置するクラッチスリーブの軸方向位置に、等しくすることができる。
【0017】
一実施形態では、偏心ピンの偏心半径は、2.5mmから4mmの間であり、好ましくは約3.15mmである。
【0018】
第2の態様では、第1の態様によるドッグクラッチアクチュエータで使用するように構成された電動モータが提供される。電動モータは2極ブラシレスDCモータである。
【0019】
一実施形態では、電動モータは、アクチュエータロッドに接続された中央に配置された永久磁石ロータと、外側の固定電機子(armature)とを備える。
【0020】
一実施形態では、電動モータのコイルは直列に接続される。
【0021】
第3の態様では、車両の駆動系(drive line)において2つのシャフトを接続(連結)及び切断するためのドッグクラッチが提供される。ドッグクラッチは、第2の態様による電動モータによって駆動される第1の態様によるアクチュエータを備える。
【0022】
第4の態様では、第3の態様によるドッグクラッチを備える車両が提供される。
【0023】
本発明は、添付の図面を参照して以下にさらに詳細に説明される
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施の形態に係るドッグクラッチの概略断面図である。
図2a】実施の形態に係る電動モータの概略断面図である。
図2b】従来技術の電動モータの回路図である。
図2c図2bの従来技術の電動モータのトルク出力を示す図である。
図3a】実施の形態に係る電動モータの回路図である。
図3b】実施の形態に係る電動モータからのトルク出力の図である。
図4】実施の形態に係るアクチュエータのある構成要素の模式図である。
図5】実施の形態に係るアクチュエータの偏心力の増幅を示す図である。
図6】実施の形態に係るアクチュエータの線形力の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
開示された実施形態は、本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に説明される。同じ参照符号は全体を通して同じ要素を指す。
【0026】
AWD(All Wheel Drive)車両の駆動システムは、当該技術分野において周知である。典型的な例は背景技術の項で前述したように、国際公開第2011/043722号に示されている。本発明は、例えばこのようなシステムに使用されるドッグクラッチに関する。
【0027】
図1は、通常のシャフト1と中空のシャフト2とを接続又は切断するための、回転のために軸支されたドッグクラッチ100の全体図である。通常のシャフト1には、外部スプラインが設けられている。外部スプラインには、クラッチスリーブ3の内部スプラインが協働する。また、クラッチスリーブ3には、中空のシャフト2の内歯と協働する外歯が設けられている。図1に示すように、クラッチスリーブ3が左側の位置にあると、ドッグクラッチ100は接続モードになる。一方、クラッチスリーブ3が図1の右側に移動すると、ドッグクラッチが切断される。
【0028】
本発明は、接続位置と切断位置との間でクラッチスリーブ3の軸方向の移動を達成するためのアクチュエータ4に関する。
【0029】
ロータリータイプのクラッチアクチュエータ4、略して、ロータリークラッチアクチュエータは、ドッグクラッチを取り囲むハウジング内に固定され、偏心ピン5によって軸方向に終端されている(terminated)。このピン5は、図示の実施形態では、シフトブッシュ8内に延在し、ハウジングに案内され、クラッチスリーブ3内の周状溝内に配置される。シフトブッシュ8は、偏心ピン5が移動するための長穴(oblong hole)を有する。この偏心ピン5は、アクチュエータハウジング内に軸支された円筒状のアクチュエータロッド7の端部に、偏心して取り付けられている。
【0030】
偏心ピン5の回転運動をクラッチスリーブ3の軸方向の運動に変換するための他の実用的な解決策が実現可能である。偏心ピン5を有するロッド7が、図1の位置(ピン5が左側いっぱい(full left)の位置にあり、ドッグクラッチが完全に接続された状態にある)から180°以下回転すると、ピン5は、ドッグクラッチが完全に切断された状態で右側いっぱい(full right)の位置に到達する。しかし、偏心ピン5の回転は180°よりも小さいことが好ましい。回転位置α1とα2(図4に示す)とのスパンは、好ましくは170°~130°の範囲であり、さらに好ましくは約150°~140°であり、最も好ましくは約144°である。回転角度α1~α2の好ましい範囲は、図3及び図4に関連してより完全に説明される。なお、アクチュエータ4の説明を明確にするために、アクチュエータロッド7の回転位置角度α3が0°であることは、好ましくは、クラッチスリーブ3の軸方向位置がその軸方向端部位置の間のほぼ中央に対応することに留意されたい。
【0031】
図1の最上部には、電動モータ6が示されている。電動モータ6は回転駆動力又はトルクを提供する。この回転駆動力又はトルクは、その後、クラッチスリーブ3の軸方向の運動に変換される。電動モータ6は、ドッグクラッチ100のハウジングに固定的に取り付けられている。電動モータ6は好ましくは2極ブラシレスDCモータであるが、他の電動モータの構成も実現可能であり、本開示の範囲に入ると考えられる。
【0032】
図2aを参照すると、電動モータ6の断面図が示されている。図から分かるように、電動モータ6は、永久磁石の形状をした外側の固定電機子62と内側のロータ61とを備える。なお、モータ6は、外側の永久磁石ロータと内側の固定電機子とを有して対向配置することもできる。以下の説明は図2aに示す構成に基づくが、反対の構成にも同様に適用可能である。
【0033】
図から分かるように、電機子は、3つのコイル又は巻線63、64、65を備える。技術常識であるように、コイル63、64、65の各々は、それらを流れる電流の方向に応じて磁界を発生する。ドッグクラッチのためのロータリーアクチュエータを駆動するために使用される状況における既存の電動モータに関する問題は、図2bに示されるような通常の動作の下で、それらが、図2cに示されるように、ロータ61の全回転中、多かれ少なかれ均一なトルクを提供することである。各相は、モータが回転することにつれて多かれ少なかれ一定になる全トルクに寄与する。
【0034】
通常、そしてほとんどの用途において、これは望ましい。しかしながら、本発明の状況では偏心ピン5の回転運動をクラッチスリーブ3の軸方向の運動に変換させると、電動モータ6から出力される一定のトルクはクラッチスリーブ3の軸方向の変換にわたって不均一な軸力をもたらすことになる。これは、偏心ピン5又はアクチュエータロッド7がその回転端点に近づくとき、すなわち、高い(すなわち、90°に近い)又は低い(すなわち、-90°に近い)角度α1、α2に対して、すなわち、クラッチスリーブ3がその軸方向端部位置のいずれかに近づくとき、軸力の増幅が存在するためである。別の言い方をすれば、偏心ピン5によってクラッチスリーブ3に加えられる軸力は、先行技術の解決策の場合、アクチュエータロッド位置角度α3が0°の場合に最低であり、次いで、角度α1、α2が高くなるか又は低くなると増大する。
【0035】
この課題を解決するために、次に、図3aを参照すると、本発明の電動モータ6内のコイル63、64、65は、代わりに直列に接続されている。コイルは、ロータ61の周囲に円周方向に配置され、本質的にほぼ120°離間して等間隔に配置される。電流は、コイル63、64、65の各々を通って流れ、それによって、合計電流I=I1=-I2=-I3となる。
【0036】
アクチュエータロッド7がその回転端部位置に近づくにつれて、電動モータ6から出力される減少トルクを与えることによって、偏心ピン5の上述した増幅効果を相殺させることが望まれている。一方、これを達成するために高度な制御システム及びセンサ等を使用しなければならないことは好ましくない。
【0037】
本発明において、図3aに示す電動モータ6の配線は図3bに示すように、モータ6が中心位置から離れて回転するとトルク出力が低下するようになっている。角度補正(オフセット)が0°の場合には、最大トルクが得られる。
【0038】
ロータ61は、前述の通り、アクチュエータロッド7に接続され、好ましくは直接的に接続されているが、部品や歯車を介在させてもよい。いずれにせよ、図2aに示すロータ61の位置はアクチュエータロッド7の位置が約0°(すなわち、角度α3が約0°の場合)に対応することが好ましい。ロータ61がアクチュエータロッド7のその最大回転、すなわち、最大トルク位置の両側に対して90°、又は好ましくはそれ以下に達するまで、図示の位置から離れるいずれかの方向に回転することにつれて、トルク出力は減少する。
【0039】
次に図4を参照すると、アクチュエータロッド7及びそれに取り付けられた偏心ピン5の移動が、電動モータ6、より具体的には電動モータ6のコイル63、64、65にどのように関係するかの模式図が示されている。クラッチスリーブ3の軸方向の運動、すなわちストロークSは、矢印で示されている。クラッチスリーブ3の意図される軸方向の運動に対する電動モータ6の向きは重要である。これは、モータ6のトルク出力の最大値がアクチュエータロッド7の0°の回転角度α3に対応し、同様に、クラッチスリーブ3の軸方向位置が基本的に、その軸方向端部位置の間の中央に対応することを保証するためである。しかし、例えば、トルク出力が最大となるアクチュエータロッド7の0°の回転位置α3からオフセットされていたり、及び/又は、クラッチスリーブ3の軸方向位置がその2つの軸方向端部位置の間の中央ではないがアクチュエータロッド7の回転位置α3が0°であることに等しいような、別の構成を使用することが可能である。
【0040】
軸方向に移動可能なクラッチスリーブ3のストロークSは好ましくは2mm~10mmの間であり、より好ましくは4mm~8mmの間であり、さらに好ましくは約6mmである。
【0041】
偏心半径、すなわち、偏心ピン5の中心からアクチュエータロッド7の中心(より具体的には、偏心ピン5の回転軸)までの距離は、好ましくは1mm~5mm、より好ましくは2mm~4mm、さらにより好ましくは約3.15mmである。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態ではアクチュエータロッド7の位置α1~α2の範囲は、ほぼ144°(-72°~72°)であり、偏心半径はほぼ3.15mmである。クラッチスリーブ3のストロークSは、一方の軸方向端部位置から他方へまでで、ほぼ6mmである。
【0043】
図5図6はこの好ましい実施形態のシミュレートされた値に関する全ての図を示し、他の実施形態は異なる値を提供するが、それにもかかわらず、同じ推論が適用され得る。これらの値はいずれの電流方向にも適用可能であるが、当業者によれば、トルク等の方向は反転されることがわかる。図5及び図6図3bに関するものであり、アクチュエータロッド7が-72°~72°に回転するときのアクチュエータトルク出力を示す。図3bに見られるように、トルク出力は、アクチュエータ位置角度α3が0°の付近で最大値を有する。次いで、アクチュエータロッド7がその回転端部位置に近づくにつれて、トルクは、トルク最大値の両側で実質的に対称的に減少する。
【0044】
図5に偏心力の増幅を示す。これは、本発明の電動モータ6、すなわちアクチュエータ4が軽減(緩和、相殺)すること(at mitigating)を目的とする望ましくない挙動である。増幅効果は、角度α1、α2の増加/減少におけるアクチュエータロッド7の回転運動がクラッチスリーブ3の減少する軸方向移動に変換されるときに生じる。
【0045】
図6は、アクチュエータロッド7の一方の回転端点から他方の回転端点にわたって示された、クラッチスリーブ3上で測定された線形軸力である。図から分かるように、モータ6によって供給されるトルクの変動と、電動モータ6とアクチュエータ4との間の適切な関係とは、アクチュエータロッド7の角度範囲全体にわたって、本質的に一定の線形力を発生させる。これは、ロータリーアクチュエータを使用する従来技術のドッグクラッチよりも改良されたドッグクラッチ100に相当し、ロータリーアクチュエータドッグクラッチを使用することができる用途の数を増加させる。
【0046】
本発明の概念は、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの変更が実現可能であることに言及されるべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5
図6