(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】吸引装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A24F 40/57 20200101AFI20250307BHJP
A24F 40/42 20200101ALI20250307BHJP
【FI】
A24F40/57
A24F40/42
(21)【出願番号】P 2022557223
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038421
(87)【国際公開番号】W WO2022079750
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100198845
【氏名又は名称】井上 善喬
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮治
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】井上 康信
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108618207(CN,A)
【文献】国際公開第2019/186666(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/171017(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/068821(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/074600(WO,A1)
【文献】特表平08-511176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0046033(US,A1)
【文献】国際公開第2020/174624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/57
A24F 40/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材が挿入される開口と、前記基材を保持する保持部とを含み、前記基材を受け入れるチャンバと、
前記保持部に含まれ、前記基材の一部を押圧する押圧部と、
前記押圧部の外面に配置され、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部と、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、
前記押圧部による押圧の強さに応じて調整された給電量にて前記加熱部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
吸引装置。
【請求項2】
前記第2の昇温区間は、前記第1の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さい、
請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記第1の昇温区間の時間長及び前記第1の昇温区間に設定される前記目標温度、並びに前記第2の昇温区間の時間長及び前記第2の昇温区間に設定される前記目標温度は、前記第2の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅が、前記第1の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅と比較して小さくなるように設定される、
請求項2に記載の吸引装置。
【請求項4】
前記第2の昇温区間の時間長は、前記第1の昇温区間の時間長よりも長い、
請求項2又は3に記載の吸引装置。
【請求項5】
前記初期昇温区間は、温度維持区間を最後に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項6】
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、
前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、
前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項7】
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、温度維持区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり
前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、
前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記途中降温区間においては、前記加熱部に給電しないよう制御する、
請求項6又は7に記載の吸引装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記途中降温区間の次の前記時間区間の始期において、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度未満である場合に第1のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度以上である場合に第2のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、
前記第1のデューティ比は前記第2のデューティ比よりも大きい、
請求項6~8のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定する、
請求項6~9のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との差に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定する、
請求項6~9のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項12】
前記再昇温区間は、温度維持区間と昇温区間とを交互に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり、
前記昇温区間に設定された前記目標温度は、前記昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
請求項6~11のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項13】
前記制御部は、ユーザが前記エアロゾルを吸引する動作を行ったことが検出された場合に、次の前記昇温区間を開始させる、
請求項12に記載の吸引装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記温度維持区間における経過時間に応じて、当該温度維持区間を終了させ、次の前記昇温区間を開始させる、
請求項12又は13に記載の吸引装置。
【請求項15】
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、前記再昇温区間が最も小さく、前記途中降温区間が次に小さく、前記初期昇温区間が最も大きく、
前記初期昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度と初期値との差の絶対値を前記初期昇温区間の時間長で割った値であり、
前記途中降温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記途中降温区間の時間長で割った値であり、
前記再昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記再昇温区間に設定された前記目標温度と前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記再昇温区間の時間長で割った値である、
請求項6~14のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項16】
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、前記途中降温区間が最も短く、前記初期昇温区間が次に短く、前記再昇温区間が最も長い、
請求項6~15のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項17】
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する時間区間であるスロットを複数含み、
前記スロットには、複数の切り替え条件が設定され、
前記制御部は、前記スロットに設定された前記複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされた場合に前記スロットを切り替え、切り替え後の前記スロットに基づいて前記加熱部の動作を制御する、
請求項1~
16のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記加熱プロファイルに基づく前記加熱部の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との乖離に基づいて、前記加熱部の動作を制御する、
請求項1~
17のいずれか一項に記載の吸引装置。
【請求項19】
基材が挿入される開口と前記基材を保持する保持部とを含み、前記基材を受け入れるチャンバと、前記保持部に含まれ、前記基材の一部を押圧する押圧部と、前記押圧部の外面に配置され、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部とを有する吸引装置を制御するための制御方法であって、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、
前記押圧部による押圧の強さに応じて調整された給電量にて前記加熱部の動作を制御すること、
を含み、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
制御方法。
【請求項20】
基材が挿入される開口と前記基材を保持する保持部とを含み、前記基材を受け入れるチャンバと、前記保持部に含まれ、前記基材の一部を押圧する押圧部と、前記押圧部の外面に配置され、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部とを有する吸引装置を制御するコンピュータに、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、
前記押圧部による押圧の強さに応じて調整された給電量にて前記加熱部の動作を制御すること、
を実行させ、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子タバコ及びネブライザ等の、ユーザに吸引される物質を生成する吸引装置が広く普及している。例えば、吸引装置は、エアロゾルを生成するためのエアロゾル源、及び生成されたエアロゾルに香味成分を付与するための香味源等を含む基材を用いて、香味成分が付与されたエアロゾルを生成する。ユーザは、吸引装置により生成された、香味成分が付与されたエアロゾルを吸引することで、香味を味わうことができる。
【0003】
吸引装置は、加熱動作を規定した加熱プロファイルに従って基材を加熱することで、エアロゾルを生成する。加熱プロファイルは、吸引装置を用いた体験の質に大きな影響を与える。そのため、様々な加熱プロファイルが検討されている。例えば、下記特許文献1では、加熱開始後まず最高温に達し、その後徐々に降温する加熱プロファイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸引装置を用いた体験の質はさらに向上されることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、吸引装置を用いた体験の質をより向上させることが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部と、前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御する制御部と、を備え、前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、吸引装置が提供される。
【0008】
前記第2の昇温区間は、前記第1の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さくてもよい。
【0009】
前記第1の昇温区間の時間長及び前記第1の昇温区間に設定される前記目標温度、並びに前記第2の昇温区間の時間長及び前記第2の昇温区間に設定される前記目標温度は、前記第2の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅が、前記第1の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅と比較して小さくなるように設定されてもよい。
【0010】
前記第2の昇温区間の時間長は、前記第1の昇温区間の時間長よりも長くてもよい。
【0011】
前記初期昇温区間は、温度維持区間を最後に含み、前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であってもよい。
【0012】
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高くてもよい。
【0013】
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、温度維持区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高くてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記途中降温区間においては、前記加熱部に給電しないよう制御してもよい。
【0015】
前記制御部は、前記途中降温区間の次の前記時間区間の始期において、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度未満である場合に第1のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度以上である場合に第2のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、前記第1のデューティ比は前記第2のデューティ比よりも大きくてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との差に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定してもよい。
【0018】
前記再昇温区間は、温度維持区間と昇温区間とを交互に含み、前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり、前記昇温区間に設定された前記目標温度は、前記昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高くてもよい。
【0019】
前記制御部は、ユーザが前記エアロゾルを吸引する動作を行ったことが検出された場合に、次の前記昇温区間を開始させてもよい。
【0020】
前記制御部は、前記温度維持区間における経過時間に応じて、当該温度維持区間を終了させ、次の前記昇温区間を開始させてもよい。
【0021】
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、前記再昇温区間が最も小さく、前記途中降温区間が次に小さく、前記初期昇温区間が最も大きく、前記初期昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度と初期値との差の絶対値を前記初期昇温区間の時間長で割った値であり、前記途中降温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記途中降温区間の時間長で割った値であり、前記再昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記再昇温区間に設定された前記目標温度と前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記再昇温区間の時間長で割った値であってもよい。
【0022】
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、前記途中降温区間が最も短く、前記初期昇温区間が次に短く、前記再昇温区間が最も長くてもよい。
【0023】
前記吸引装置は、前記基材を受け入れるチャンバをさらに備え、前記チャンバは、前記基材が挿入される開口と、前記基材を保持する保持部とを含み、前記保持部は、前記基材の一部を押圧する押圧部と、非押圧部とを含んでもよい。
【0024】
前記加熱部は、前記押圧部の外面に配置されてもよい。
【0025】
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する時間区間であるスロットを複数含み、前記スロットには、複数の切り替え条件が設定され、前記制御部は、前記スロットに設定された前記複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされた場合に前記スロットを切り替え、切り替え後の前記スロットに基づいて前記加熱部の動作を制御してもよい。
【0026】
前記制御部は、前記加熱プロファイルに基づく前記加熱部の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との乖離に基づいて、前記加熱部の動作を制御してもよい。
【0027】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部を有する吸引装置を制御するための制御方法であって、前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御すること、を含み、前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、制御方法が提供される。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部を有する吸引装置を制御するコンピュータに、前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御すること、を実行させ、前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、プログラムが提供される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明によれば、吸引装置を用いた体験の質をより向上させることが可能な仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】吸引装置の構成例を模式的に示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る吸引装置の物理構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図2に示したヒータアッセンブリの斜視図である。
【
図5】
図4に示す矢視4-4におけるチャンバの断面図である。
【
図6】
図5に示す矢視5-5におけるチャンバの断面図である。
【
図7】スティック型基材が保持部に保持された状態の、非押圧部を含むチャンバの縦断面図である。
【
図8】スティック型基材が保持部に保持された状態の、押圧部を含むチャンバの縦断面図である。
【
図9】
図8に示す矢視7-7におけるチャンバの断面図である。
【
図10】表1に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図11】本実施形態に係る吸引装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】表2に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図13】表3に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図14】表4に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図15】表5に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図16】表6に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図17】表6に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【
図18】表6に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
<<1.吸引装置の構成例>>
吸引装置は、ユーザにより吸引される物質を生成する装置である。以下では、吸引装置により生成される物質が、エアロゾルであるものとして説明する。他に、吸引装置により生成される物質は、気体であってもよい。
【0033】
図1は、吸引装置の構成例を模式的に示す模式図である。
図1に示すように、本構成例に係る吸引装置100は、電源部111、センサ部112、通知部113、記憶部114、通信部115、制御部116、加熱部40、保持部60、及び断熱部70を含む。
【0034】
電源部111は、電力を蓄積する。そして、電源部111は、制御部116による制御に基づいて、吸引装置100の各構成要素に電力を供給する。電源部111は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充電式バッテリにより構成され得る。
【0035】
センサ部112は、吸引装置100に関する各種情報を取得する。一例として、センサ部112は、マイクロホンコンデンサ等の圧力センサ、流量センサ又は温度センサ等により構成され、ユーザによる吸引に伴う値を取得する。他の一例として、センサ部112は、ボタン又はスイッチ等の、ユーザからの情報の入力を受け付ける入力装置により構成される。
【0036】
通知部113は、情報をユーザに通知する。通知部113は、例えば、発光する発光装置、画像を表示する表示装置、音を出力する音出力装置、又は振動する振動装置等により構成される。
【0037】
記憶部114は、吸引装置100の動作のための各種情報を記憶する。記憶部114は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体により構成される。
【0038】
通信部115は、有線又は無線の任意の通信規格に準拠した通信を行うことが可能な通信インタフェースである。かかる通信規格としては、例えば、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等が採用され得る。
【0039】
制御部116は、演算処理装置及び制御装置として機能し、各種プログラムに従って吸引装置100内の動作全般を制御する。制御部116は、例えばCPU(Central Processing Unit)、及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって実現される。
【0040】
保持部60は、スティック型基材150を保持する。保持部60は、吸引装置100に形成された内部空間80を外部空間に連通する開口52から内部空間80に挿入されたスティック型基材150を保持する。
【0041】
スティック型基材150は、基材部151、及び吸口部152を含む。基材部151は、エアロゾル源を含む。エアロゾル源が霧化されることで、エアロゾルが生成される。エアロゾル源は、例えば、グリセリン及びプロピレングリコール等の多価アルコール、並びに水等の液体である。エアロゾル源は、たばこ由来又は非たばこ由来の香味成分を含んでいてもよい。吸引装置100がネブライザ等の医療用吸入器である場合、エアロゾル源は、薬剤を含んでもよい。なお、エアロゾル源は液体に限られるものではなく、固体であってもよい。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、基材部151の少なくとも一部は内部空間80に収容され、吸口部152の少なくとも一部は開口52から突出する。そして、開口52から突出した吸口部152をユーザが咥えて吸引すると、基材部151から発生するエアロゾルがユーザの口内に到達する。
【0042】
加熱部40は、エアロゾル源を加熱することで、エアロゾル源を霧化してエアロゾルを生成する。一例として、加熱部40は、フィルム状に構成され、保持部60の外周を覆うように配置される。そして、加熱部40が発熱すると、スティック型基材150の基材部151が外周から加熱され、エアロゾルが生成される。加熱部40は、電源部111から給電されると発熱する。
【0043】
断熱部70は、加熱部40から他の構成要素への伝熱を防止する。例えば、断熱部70は、真空断熱材、又はエアロゲル断熱材等により構成される。
【0044】
以下では、吸引装置により生成されたエアロゾルをユーザが吸引することを、単に「吸引」又は「パフ」とも称する。また、ユーザが吸引する動作を、以下ではパフ動作とも称する。
【0045】
<<2.技術的特徴>>
(1)基材を押圧しながら加熱する構成
本実施形態に係る吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しながら加熱する構成を有する。以下、かかる構成について詳しく説明する。
【0046】
図2は、本実施形態に係る吸引装置100の物理構成を模式的に示す図である。
図2に示すように、吸引装置100は、加熱部40及び保持部60を含む、ヒータアッセンブリ30を有する。
図2に示すように、スティック型基材150がヒータアッセンブリ30(より詳しくは、保持部60)に保持された状態において、ヒータアッセンブリ30とスティック型基材150との間に空隙が存在する。ユーザがスティック型基材150を咥えて吸引すると、開口52から流入した空気が、当該空隙を経由して基材部151の端部からスティック型基材150の内部に流入し、吸口部152の端部からユーザの口内に流出する。即ち、ユーザが吸い込む空気は、空気流190A、空気流190B、空気流190Cの順で流れ、スティック型基材150から発生したエアロゾルと混合された状態で、ユーザの口腔内に導かれる。
【0047】
図3は、
図2に示したヒータアッセンブリ30の斜視図を示す。
図3に示すように、ヒータアッセンブリ30は、トップキャップ32と、加熱部40と、チャンバ50と、を有する。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れるように構成される。加熱部40は、チャンバ50に受け入れられたスティック型基材150を加熱するように構成される。トップキャップ32は、チャンバ50にスティック型基材150を挿入する際のガイドの機能を有するとともに、チャンバ50を吸引装置100に対して固定するように構成されてもよい。
【0048】
図4は、チャンバ50の斜視図を示す。
図5は、
図4に示す矢視4-4におけるチャンバ50の断面図を示す。
図6は、
図5に示す矢視5-5におけるチャンバ50の断面図を示す。
図4及び
図5に示すように、チャンバ50は、スティック型基材150が挿入される開口52と、スティック型基材150を保持する保持部60と、を含む。チャンバ50は、スティック型基材150を受け入れる内部空間80を囲む、中空部材として形成される。中空部材は、有底の筒状部材であり得る。なお、中空部材は底のない筒状体であってもよい。チャンバ50は、熱伝導率の高い金属で構成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等で形成され得る。これにより、チャンバ50からスティック型基材150へ効果的な加熱が可能になる。
【0049】
図5及び
図6に示すように、保持部60は、スティック型基材150の一部を押圧する押圧部62と、非押圧部66と、を含む。押圧部62は、内面62aと、外面62bとを有する。非押圧部66は、内面66aと、外面66bとを有する。
図3に示すように、加熱部40は、押圧部62の外面62bに配置される。加熱部40は、押圧部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
【0050】
チャンバ50の開口52は、スティック型基材150を押圧せずに受け入れ可能であることが好ましい。チャンバ50の長手方向、言い換えればスティック型基材150がチャンバ50に挿入される方向又はチャンバ50の側面全体として伸びる方向、に直交する面におけるチャンバ50の開口52の形状は多角形又は楕円形であってもよいが、円形であることが好ましい。
【0051】
図4、
図5、及び
図6に示すように、本実施形態では、チャンバ50は、押圧部62をチャンバ50の周方向に2以上有する。
図5及び
図6に示すように、保持部60の2つの押圧部62は、互いに対向する。2つの押圧部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入されるスティック型基材150の押圧部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。図示のように、押圧部62の内面62aは平面である。
【0052】
図6に示すように、押圧部62の内面62aは、向かい合う一対の平面状の平面押圧面を有し、非押圧部66の内面66aは、一対の平面押圧面の両端を接続し、向かい合う一対の曲面状の曲面非押圧面を有する。図示のように、曲面非押圧面は、チャンバ50の長手方向に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。
図6に示すように、保持部60は均一な厚みを有する金属筒状体によって構成される。
【0053】
図7は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、非押圧部66を含むチャンバ50の縦断面図である。
図8は、スティック型基材150が保持部60に保持された状態の、押圧部62を含むチャンバ50の縦断面図である。
図9は、
図8に示す矢視7-7におけるチャンバ50の断面図である。なお、
図9においては、押圧部62においてスティック型基材150が押圧されることがわかりやすいように、押圧される前の状態のスティック型基材150の断面が示されている。
【0054】
図9に示された、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67は、スティック型基材150が保持部60に保持され、スティック型基材150が押圧部62により押圧されて変形しても、実質的に維持される。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられたスティック型基材150の端面(
図7及び
図8中下側の端面、即ち基材部151の端面)と連通し得る。この空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられチャンバ50の開口52から遠い方に位置づけられたスティック型基材150の端面(
図7及び
図8中下側の端面、即ち基材部151の端面)とに連通するということもできる。そして、チャンバ50の開口52からチャンバ50外に位置づけられたスティック型基材150の端面(
図7及び
図8中上側の端面、即ち吸口部152の端面)にかけて、空隙67及びスティック型基材150の内部を経由する、空気の流路が形成される。これにより、スティック型基材150に供給される空気を導入するための流路を吸引装置100に別途設ける必要がないので、吸引装置100の構造を簡素化することができる。また、非押圧部66の、空隙67の一部を形成する箇所が露出するので、流路の清掃を容易に行うことができる。さらには、空隙67を空気が通過する過程で空気が加熱されるので、加熱部40による放熱を有効利用して加熱効率を高めると共に、パフに伴い流入した空気によるスティック型基材150の過度な降温を防止することができる。その結果、加熱部40の消費電力を抑制することができる上に、パフに伴うスティック型基材150の降温に起因する香味低減を防ぐことができる。通気抵抗の観点等から、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150との間の空隙67の高さは、0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であることがさらに好ましく、0.3mm以上0.5mm以下であることが最も好ましい。
【0055】
図9に示すように、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、押圧部62の内面62aとスティック型基材150の中心との距離L
Aは、非押圧部66の内面66aとスティック型基材150の中心との距離L
Bよりも短い。かかる構成により、押圧部62の外面62bに配置された加熱部40とスティック型基材150の中心との距離を、押圧部62が設けられない場合と比較して短くすることができる。よって、スティック型基材150の加熱効率を高めることができる。
【0056】
図4から
図8に示すように、チャンバ50は、底部56を有する。底部56は、
図8に示すように、スティック型基材150の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入されたスティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持する。また、底部56は、露出したスティック型基材150の端面が空隙67と連通するように、スティック型基材150の一部を、底壁56aにより支持し得る。
【0057】
図5、
図7及び
図8に示すように、チャンバ50の底部56は、底壁56aを有し、これに加えて側壁56bを有してもよい。側壁56bによって画定される底部56の幅は、底壁56aに向かって小さくなってもよい。
図6及び
図9に示すように、保持部60の非押圧部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向に直交する面において湾曲している。
【0058】
非押圧部66の内面66aのチャンバ50の長手方向に直交する面における形状は、チャンバ50の長手方向に直交する面における開口52の形状と、チャンバ50の長手方向の任意の位置において同一であることが好ましい。言い換えれば、非押圧部66の内面66aは、開口52を形成するチャンバ50の内面を長手方向に延長して形成されることが好ましい。
【0059】
図3から
図5に示すように、チャンバ50は、開口52と保持部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、非保持部54とスティック型基材150との間に隙間が形成され得る。
【0060】
図5から
図9に示すように、保持部60の外周面は、保持部60の長手方向全長に亘って同一の形状及び大きさ(保持部60の長手方向に直交する面における保持部60の外周長さ)を有することが好ましい。
【0061】
また、
図4、及び
図5に示すように、チャンバ50は、開口52を形成するチャンバ50の内面と押圧部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
【0062】
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。例えば
図6に示すように、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとは、角度を有して互いに接続され、押圧部62の外面62bと非押圧部66の外面66bとの間に境界71が形成され得る。ヒーティングトラックは、好ましくは境界71の延びる方向(チャンバ
50の長手方向)と交わる方向に延び、好ましくは境界71の延びる方向と直角方向に延びる。
【0063】
図3に示すように、加熱部40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。本実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱要素
42の両面を覆う様に配置される。また、電気絶縁部材44は、保持部60の外面の領域内に配置されることが好ましい。言いかえれば、電気絶縁部材44は、チャンバ50の長手方向の第1ガイド部58側において保持部60の外面からはみ出さないように配置されることが好ましい。上述したように、開口52と押圧部62との間に第1ガイド部58が設けられるので、チャンバ50の長手方向において、チャンバ50の外面の形状及びチャンバ
50の長手方向に直交する面におけるチャンバの外周長さが変わり得る。このため、電気絶縁部材44が保持部60の外面上に配置されることで、たるみが生じることを抑制することができる。
【0064】
加熱部40は、開口52と第1ガイド部58との間のチャンバ50の外面、即ち非保持部54の外面、第1ガイド部58の外面、及び非押圧部66の外面から選ばれる少なくとも一つには配置されないことが好ましい。加熱部40は、押圧部62の外面62bの全体に亘って配置されることが好ましい。
【0065】
本実施形態では、
図3に示すように、吸引装置100は、加熱部40から延びる帯状の電極48を有する。帯状の電極48は、押圧部62の外面62bに加熱部40が配置された状態において、平面である押圧部62の外面62bから押圧部62の外面62bの外部に延びることが好ましい。
【0066】
また、
図3、
図7及び
図8に示すように、加熱部40は、開口52と反対側に位置する第1部分40aと、開口52側に位置する第2部分40bと、を有する。第2部分40bのヒータ電力密度は、第1部分40aのヒータ電力密度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの昇温速度は、第1部分40aの昇温速度よりも高いことが好ましい。或いは、第2部分40bの加熱温度は任意の同時間において、第1部分40aの加熱温度よりも高いことが好ましい。第2部分40bは、スティック型基材150が保持部60に保持された状態において、スティック型基材150に含まれる喫煙可能物の長手方向において喫煙可能物の1/2以上に対応する保持部60の外面を覆うことが好ましい。
【0067】
以上で説明した実施形態では、チャンバ50は互いに対向する一対の押圧部62を有しているが、チャンバ50の形状はこれに限らない。例えば、チャンバ50は、1つの押圧部62を有していてもよいし、3つ以上の押圧部62を有していてもよい。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る吸引装置100は、押圧部62によりスティック型基材150を押圧しながら保持し、加熱する。かかる構成により、以下に説明する種々の効果が奏される。
【0069】
まず、加熱部40からスティック型基材150への熱伝導率が向上する。即ち、スティック型基材150の加熱効率を向上させることができる。スティック型基材150の加熱効率が向上するため、スティック型基材150の温度を目標温度に早く到達させることができるので、後述する予備加熱にかかる時間を短縮することができる。さらに、スティック型基材150の加熱効率が向上するため、加熱部40の温度変化に対するスティック型基材150の温度の追随性を向上させることができる。その結果、第1に、エアロゾルの生成量の制御をより容易にすることができる。第2に、ユーザによるパフに伴いスティック型基材150の温度が低下したとしても、直ぐに元の温度に戻すことができる。第3に、外気温等の外部環境の影響を低減することができる。第4に、後述する加熱プロファイルにおける温度変化と同様の温度変化をスティック型基材150において実現することが容易になる。第5に、加熱プロファイルにおける後述する再昇温区間の効果である香味向上の効果を迅速に生じさせることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る吸引装置100は、スティック型基材150を押圧しつつ、外周から加熱する。かかる構成により、スティック型基材150内のエアロゾル源の形状によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。さらに、かかる構成により、スティック型基材150の製造工程で発生するバラつきに起因する、スティック型基材150の形状又は大きさの誤差によらず、上述したスティック型基材150の加熱効率の向上、及びスティック型基材150の温度の追随性の向上を、実現することができる。これに対し、スティック型基材150にブレード状の加熱部を挿入し、スティック型基材150を内部から加熱する構成をとる比較例では、これらの効果を奏することが困難である。なぜならば、当該比較例において、仮にスティック型基材150を外周から押圧したとしても、ブレード状の加熱部とスティック型基材150内のエアロゾル源とをうまく接触させることが困難なためである。
【0071】
また、本実施形態に係る吸引装置100では、断熱部70は、加熱部40を外周から囲むように配置される。その場合、押圧部62の外面62bが非押圧部66の外面66bと比較して内部空間80の中心寄りに位置している分、押圧部62の外面62bと断熱部70の内面との間で形成される空気層の厚みを厚くすることができる。若しくは、押圧部62に重畳される断熱部70の厚みを厚くすることができる。従って、断熱部70による断熱効果を向上させることができる。
【0072】
(2)加熱プロファイル
吸引装置100は、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作を制御する。加熱プロファイルとは、加熱部40の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された情報である。吸引装置100は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度の時系列推移が実現されるように加熱部40の動作を制御する。これにより、加熱プロファイルにより計画された通りにエアロゾルが生成される。加熱プロファイルは、典型的には、スティック型基材150から生成されるエアロゾルをユーザが吸引した際にユーザが味わう香味が最適になるように設計される。よって、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作を制御することにより、ユーザが味わう香味を最適にすることができる。
【0073】
制御部116は、加熱プロファイルにおいて規定された目標温度と加熱部40の実際の温度(以下、実温度とも称する)との乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する目標温度と、実温度と、の乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。制御部116は、加熱部40の実温度の時系列推移が、加熱プロファイルにおいて定義された加熱部40の目標温度の時系列推移と同様になるように、加熱部40の温度を制御する。加熱部40の温度制御は、例えば公知のフィードバック制御によって実現できる。具体的には、制御部116は、電源部111からの電力を、パルス幅変調(PWM)又はパルス周波数変調(PFM)によるパルスの形態で、加熱部40に供給させる。その場合、制御部116は、電力パルスのデューティ比を調整することによって、加熱部40の温度制御を行うことができる。
【0074】
フィードバック制御では、制御部116は、実温度と目標温度との差分等に基づいて、加熱部40へ供給する電力、例えば上述したデューティ比を制御すればよい。フィードバック制御は、例えばPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)であってよい。若しくは、制御部116は、単純なON-OFF制御を行ってもよい。例えば、制御部116は、実温度が目標温度に達するまで加熱部40による加熱を実行し、実温度が目標温度に達した場合に加熱部40による加熱を停止し、実温度が目標温度より低くなると加熱部40による加熱を再度実行してもよい。
【0075】
加熱部40の温度は、例えば、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値を測定又は推定することによって定量できる。これは、発熱抵抗体の電気抵抗値が、温度に応じて変化するためである。発熱抵抗体の電気抵抗値は、例えば、発熱抵抗体での電圧降下量を測定することによって推定できる。発熱抵抗体での電圧降下量は、発熱抵抗体に印加される電位差を測定する電圧センサによって測定できる。他の例では、加熱部40の温度は、加熱部40付近に設置された温度センサによって測定されることができる。
【0076】
加熱プロファイルに基づく加熱は、加熱開始を指示する操作が行われたことが検出されたタイミングから開始される。加熱開始を指示する操作の一例は、吸引装置100に設けられたボタンの押下である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、パフ動作である。加熱開始を指示する操作の他の一例は、スマートフォン等の他の装置からの信号の受信である。
【0077】
加熱開始後、時間経過と共に基材に含まれるエアロゾル源は徐々に減少していく。典型的には、エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングで、加熱部40による加熱が停止される。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してから所定時間が経過したタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、所定回数のパフが検出されたタイミングである。エアロゾル源が枯渇すると想定されるタイミングの一例は、吸引装置100に設けられたボタンが押下されたタイミングである。かかるボタンは、例えば、ユーザが十分な香味を感じることができなくなった際に押下される。
【0078】
なお、十分な量のエアロゾルが発生すると想定される期間は、パフ可能期間とも称される。他方、加熱が開始されてからパフ可能期間が開始されるまでの期間は、予備加熱期間とも称される。予備加熱期間において行われる加熱は、予備加熱とも称される。パフ可能期間が開始するタイミング及び終了するタイミングが、ユーザに通知されてもよい。その場合、ユーザは、かかる通知を参考に、パフ可能期間においてパフを行うことができる。
【0079】
制御部116は、保持部60によるスティック型基材150の保持状態に基づいて加熱部40の動作を制御する。詳しくは、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で加熱プロファイルに基づきスティック型基材150が加熱されるように、加熱部40の動作を制御する。即ち、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62によって押圧された状態で、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する目標温度に応じて加熱部40への給電量を調整し、加熱部40によるスティック型基材150の加熱を制御する。その際、制御部116は、押圧部62による押圧の強さに応じて給電量をさらに調整してもよい。また、制御部116は、スティック型基材150の一部が保持部60の押圧部62により押圧されていない状態では、加熱プロファイルに基づくスティック型基材150の加熱を行わないように、加熱部40の動作を制御してもよい(例えば、加熱部40への給電を行わない)。押圧することでスティック型基材150の加熱効率が向上することを考慮すれば、かかる構成により、スティック型基材150の加熱効率の向上の程度に応じて、加熱部40の動作を制御することが可能となる。したがって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
【0080】
加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含む。複数の時間区間の各々には、時間区間の終期における目標温度が設定される。そして、制御部116は、複数の時間区間のうち、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する時間区間に設定された目標温度と、実温度と、の乖離に基づいて、加熱部40の動作を制御する。具体的には、制御部116は、加熱プロファイルに含まれる複数の時間区間の各々の終期までに、設定された目標温度に達するよう、加熱部40の動作を制御する。加熱プロファイルの一例を、下記の表1に示す。
【0081】
【0082】
表1に示す加熱プロファイルは、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間から成り、これらを順に含む。表1に示した例では、初期昇温区間は、加熱プロファイルの開始から35秒後までの区間である。途中降温区間は、初期昇温区間の終期から10秒後までの区間である。再昇温区間は、途中降温区間の終期から310秒後までの区間である。加熱プロファイルが、これらの時間区間を含むことにより、以下に説明するように、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。すなわち、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。
【0083】
初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に含まれる時間区間である。初期昇温区間に設定された目標温度は、初期値よりも高い。初期値とは、加熱開始前の加熱部40の温度として想定される温度である。初期値の一例は、0℃等の任意の温度である。初期値の他の一例は、気温に対応する温度である。
【0084】
途中降温区間は、加熱プロファイルの途中に含まれる時間区間である。途中降温区間に設定された目標温度は、途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも低い。表1に示した例では、途中降温区間に設定された目標温度230℃は、ひとつ前の時間区間である初期昇温区間に設定された目標温度295℃よりも低い。
【0085】
再昇温区間は、加熱プロファイルの最後に含まれる時間区間である。再昇温区間に設定された目標温度は、再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも高い。表1に示した例では、再昇温区間に設定された目標温度260℃は、ひとつ前の時間区間である途中降温区間に設定された目標温度230℃よりも高い。
【0086】
制御部116が表1に示した加熱プロファイルに従って加熱部40の動作を制御した場合の、加熱部40の実温度の時系列推移について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、表1に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
【0087】
図10に示すように、加熱部40の実温度は、初期昇温区間において上昇し、初期昇温区間の終期において目標温度である295℃に達している。加熱部40の実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達した場合、スティック型基材150の温度が十分な量のエアロゾルが発生する温度に達することが想定される。初期昇温区間は、加熱プロファイルの最初に設定される。そのため、加熱部40は、初期昇温区間において、初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度である295℃まで一気に昇温される。なお、初期温度とは、加熱プロファイルに基づく加熱開始時の加熱部40の実温度である。かかる構成により、予備加熱を早期に終えることが可能となる。
【0088】
制御部116は、初期昇温区間において実温度が初期昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、初期温度から295℃に向けて加熱部40の温度を制御する。加熱開始から35秒が経過する前に実温度が295℃に達した場合、制御部116は、295℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
【0089】
図10に示すように、加熱部40の実温度は、途中降温区間において降下し、途中降温区間の終期において目標温度である230℃に達している。途中降温区間は、初期昇温区間の次に設定される。そのため、加熱部40は、途中降温区間において、初期昇温区間の設定温度から途中降温区間の設定温度まで一旦降温することとなる。加熱部40を初期昇温区間の目標温度のような高い温度のまま維持すると、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源が急速に消費され、ユーザが味わう香味が強すぎてしまう等の不都合が生じる。その点、本実施形態では、途中降温区間を設けることで、そのような不都合を回避して、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能である。
【0090】
制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40に給電しないよう制御する。つまり、制御部116は、途中降温区間においては、加熱部40への給電を停止し、加熱部40による加熱が行われないように制御する。かかる構成によれば、加熱部40の実温度を最も早く降下させることが可能となる。また、途中降温区間においても加熱部40への給電を行う場合と比較して、吸引装置100の消費電力を低減することも可能である。
【0091】
図10に示すように、加熱部40の実温度は、再昇温区間において上昇し、再昇温区間の終期において目標温度である260℃に達している。再昇温区間は、途中降温区間の次であって、加熱プロファイルの最後に設定される。そのため、加熱部40は、再昇温区間において、途中降温区間の設定温度から再昇温区間の設定温度まで再度昇温されて、その後加熱を停止する。初期昇温区間の後に加熱部40を降温させ続けると、スティック型基材150も降温するので、エアロゾルの生成量が低下し、ユーザが味わう香味が劣化してしまい得る。その点、本実施形態では、途中降温区間の後に再昇温区間を設けることで、加熱プロファイルの後半においてもユーザが味わう香味の劣化を防止することが可能となる。
【0092】
制御部116は、再昇温区間において実温度が再昇温区間に設定された目標温度に達するように加熱部40の温度制御を行う。即ち、制御部116は、260℃に向けて加熱部40の温度を制御する。再昇温区間の開始から310秒が経過する前に実温度が260℃に達した場合、制御部116は、260℃を維持するよう加熱部40の温度を制御する。
【0093】
初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きくてもよい。初期昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、初期昇温区間に設定された目標温度と初期値との差の絶対値を初期昇温区間の時間長で割った値である。途中降温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、途中降温区間に設定された目標温度と途中降温区間のひとつ前の時間区間(例えば、初期昇温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を途中降温区間の時間長で割った値である。再昇温区間の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、再昇温区間に設定された目標温度と再昇温区間のひとつ前の時間区間(例えば、途中降温区間)に設定された目標温度との差の絶対値を再昇温区間の時間長で割った値である。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長い。かかる構成により、
図10に示すように、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
【0094】
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、加熱部40の実温度に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、初期昇温区間から途中降温区間への切り替え、及び再昇温区間の終了を、各々の時間区間に設定された目標温度と加熱部40の実温度との乖離が所定の閾値以内になったことに基づいて判定してもよい。
【0095】
制御部116は、加熱プロファイルにおける複数の時間区間の切り替えの少なくとも一部を、経過時間に基づいて判定してもよい。例えば、制御部116は、途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、途中降温区間の終期を判定してもよい。例えば、
図10に示した加熱プロファイルでは、途中降温区間は10秒間として設定されている。そのため、制御部116は、途中降温区間を開始してから10秒経過した場合に、再昇温区間への切り替えを判定し、加熱部40による加熱を再開させる。かかる構成によれば、加熱部40の温度を測定せずに途中降温区間から再昇温区間への切り替えを判定することができるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。さらに、加熱部40を構成する発熱抵抗体の電気抵抗値に基づいて加熱部40の温度を測定する構成をとる場合であっても、途中降温区間において加熱部40への給電を停止しつつ、再昇温区間への切り替えを判定することが可能となる。
【0096】
ただし、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温等の外部環境に依存して変動し得る。例えば、
図10に示した加熱プロファイルに基づいて動作する場合、途中降温区間の終期における加熱部40の実温度は、外気温が低い場合には220℃となり、外気温が高い場合には240℃になり得る。
【0097】
そこで、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間(即ち、再昇温区間)の始期において、加熱部40の実温度と途中降温区間に設定された目標温度とに基づいて、加熱部40の動作を制御する。より詳しくは、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度未満である場合に、第1のデューティ比で加熱部40への給電を行う。他方、制御部116は、途中降温区間の次の時間区間の始期において、加熱部40の実温度が途中降温区間に設定された目標温度以上である場合に、第2のデューティ比で加熱部40への給電を行う。ここで、第1のデューティ比は、第2のデューティ比よりも大きい。ここでのデューティ比とは、所定期間に占める加熱部40への給電が継続される期間の比である。かかる構成によれば、外部環境の影響によって加熱部40の目標温度と実温度との間に乖離が生じる場合であっても、当該乖離を迅速に小さくすることができるので、ユーザが味わう香味の劣化を抑制することが可能となる。
【0098】
(3)処理の流れ
図11は、本実施形態に係る吸引装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0099】
図11に示すように、まず、吸引装置100は、初期昇温区間において初期温度から初期昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS102)。
【0100】
次いで、吸引装置100は、途中降温区間において加熱部40への給電を停止し、途中降温区間に設定された目標温度まで加熱部40を降温させる(ステップS104)。
【0101】
次に、吸引装置100は、再昇温区間において再昇温区間に設定された目標温度まで加熱部40を昇温させる(ステップS106)。
【0102】
そして、吸引装置100は、再昇温区間が終了すると共に、加熱部40への給電を停止する(ステップS108)。
【0103】
<<3.変形例>>
<3.1.第1の変形例>
初期昇温区間では、予備加熱期間を短縮するために、エアロゾルが十分に発生する温度までスティック型基材150が急激に昇温される。その結果、スティック型基材150が過度に昇温してしまう、オーバーシュートと称される現象が発生しやすくなってしまう。オーバーシュートが発生すると、スティック型基材150の寿命(詳しくは、パフ可能期間の長さ)を縮めてしまったり、ユーザに粗悪な香味を送達してしまったりする、というおそれがあった。
【0104】
そこで、第1の変形例では、初期昇温区間において単位時間当たりの昇温幅が逓減する加熱プロファイルが提供される。かかる構成により、初期昇温区間におけるオーバーシュートを回避して、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。本変形例における加熱プロファイルの一例を、表2に示す。
【0105】
【0106】
図12は、表2に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
【0107】
表2に示すように、初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含む。第1の昇温区間、及び第2の昇温区間の各々には、異なる目標温度が設定される。そのため、
図12に示すように、制御部116は、第1の昇温区間において目標温度である290℃に達するように加熱部40の動作を制御し、次いで第2の昇温区間において目標温度である295℃に達するように加熱部40の動作を制御する。このように、初期昇温区間の途中にマイルストーンとして機能する目標温度を設けて温度制御することにより、初期昇温区間において実温度を初期昇温区間の目標温度に到達させる確度を高めることが可能となる。
【0108】
第1の昇温区間及び第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なる。第1の昇温区間の単位時間当たりの昇温幅は、第1の昇温区間に設定された目標温度と初期値との差を第1の昇温区間の時間長で割った値である。初期値を0℃とすると、表2に示した例における第1の昇温区間の単位時間当たりの昇温幅は、(290-0)/17≒17である。第2の昇温区間の単位時間当たりの昇温幅は、第2の昇温区間に設定された目標温度と第1の昇温区間に設定された目標温度との差を第2の昇温区間の時間長で割った値である。表2に示した例における第2の昇温区間の単位時間当たりの昇温幅は、(295-290)/18≒0.3である。
【0109】
初期昇温区間に含まれる複数の昇温区間において、後の昇温区間は、先の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さい。即ち、第2の昇温区間は、第1の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さい。そのため、
図12に示すように、初期昇温区間の後半に進むにつれてゆっくり昇温することとなるので、初期昇温区間の後半に進むほど実温度の推移を細やかに制御することができる。その結果、オーバーシュートを防止することが可能となる。
【0110】
第1の昇温区間の時間長及び第1の昇温区間に設定される目標温度、並びに第2の昇温区間の時間長及び第2の昇温区間に設定される目標温度は、第2の昇温区間における単位時間当たりの昇温幅が、第1の昇温区間における単位時間当たりの昇温幅と比較して小さくなるように設定される。一例として、第2の昇温区間の長さは、第1の昇温区間の長さよりも長くてもよい。表2に示した例では、第2の昇温区間の長さは18秒であり、第1の昇温区間の長さである17秒よりも長い。他の一例として、第2の昇温区間における昇温幅は、第1の昇温区間における昇温幅よりも小さくてもよい。表2に示した例では、第2の昇温区間における昇温幅は295℃-290℃=5℃であり、初期値を一例として0℃としたときの第1の昇温区間における昇温幅である290℃-0℃=290℃よりも小さい。かかる構成によれば、第2の昇温区間として、昇温幅に対し十分な時間長の時間区間を確保することができるので、オーバーシュートをより確実に防止することが可能となる。
【0111】
初期昇温区間は、温度維持区間をさらに含んでいてもよい。その場合の加熱プロファイルの一例を、表3に示す。
【0112】
【0113】
図13は、表3に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
【0114】
表3に示すように、初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び第2の昇温区間に加え、温度維持区間を最後に含む。温度維持区間に設定された目標温度は、温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度と同一である。そのため、
図13に示すように、制御部116は、17秒間の第1昇温区間において290℃まで昇温し、後続する18秒間の第2昇温区間において295℃まで昇温し、さらに後続する10秒間の温度維持区間において295℃を維持するように、加熱部40の動作を制御する。かかる構成によれば、温度維持区間においてスティック型基材150を内部まで十分に昇温させることができる。従って、スティック型基材150が内部まで十分に昇温されていないが故に、後続する途中降温区間及び再昇温区間においてユーザに粗悪な喫味を送達してしまうような事態が発生することを、防止することが可能になる。
【0115】
なお、初期昇温区間に含まれる昇温区間の数は2つに限定されない。初期昇温区間は、3つ以上の昇温区間を有していてもよい。その場合、初期昇温区間に含まれる複数の昇温区間において、後の昇温区間ほど、先の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さくなる。
【0116】
本変形例においても、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きいことが望ましい。とりわけ、単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値は、再昇温区間が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、第1の昇温区間が最も大きいことが望ましい。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長いことが望ましい。とりわけ、時間区間の時間長は、途中降温区間が最も短く、第1の昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長いことが望ましい。かかる構成により、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
【0117】
なお、上記では、初期昇温区間に温度維持区間が含まれるものと説明したが、初期昇温区間と途中降温区間との間に、温度維持区間が含まれると捉えられてもよい。即ち、加熱プロファイルは、初期昇温区間、温度維持区間、途中降温区間、及び再昇温区間から成り、これらを順に含んでいてもよい。その場合であっても、上記説明した効果が同様に奏される。もちろん、初期昇温区間の最後に温度維持区間が設けられ、初期昇温区間と途中降温区間との間にも温度維持区間が設けられてもよい。
【0118】
<3.2.第2の変形例>
スティック型基材150が急激に昇温すると、スティック型基材150に含まれるエアロゾル源が急速に消費されるので、ユーザが味わう香味が強すぎたり、エアロゾル源が早々に枯渇してしまったりする、という不都合を引き起こし得る。
【0119】
そこで、第2の変形例では、目標温度が段階的に上昇する時間区間である段階的昇温区間を含む加熱プロファイルが提供される。かかる構成により、スティック型基材150の急激な昇温を防止して上述した不都合を防止し、ユーザのパフ体験の質を向上させることが可能となる。本変形例における加熱プロファイルの一例を、表4に示す。
【0120】
【0121】
図14は、表4に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
【0122】
表4に示すように、加熱プロファイルは、段階的昇温区間としての再昇温区間を含む。段階的昇温区間は、複数の時間区間から成り、段階的昇温区間に含まれる複数の時間区間の各々に設定された目標温度は、ひとつ前の時間区間に設定された目標温度以上(即ち、同一又はより大きい)である。表4に示した例では、再昇温区間に含まれる1つ目の温度維持区間の目標温度は、途中降温区間の目標温度と同じ230℃である。再昇温区間に含まれる昇温区間の目標温度は、1つ目の温度維持区間の目標温度より大きい260℃である。再昇温区間に含まれる2つ目の温度維持区間の目標温度は、再昇温区間の目標温度と同じ260℃である。そのため、
図14に示すように、制御部116は、再昇温区間において、1つ目の温度維持区間において230℃を維持し、昇温区間において260℃まで昇温し、2つ目の温度維持区間において260℃を維持するように、加熱部40の動作を制御する。かかる構成により、再昇温区間においてエアロゾルがゆっくりと生成されることとなるので、スティック型基材150の寿命を延ばすことが可能となる。また、それに伴い、再昇温区間の最後まで、十分な香味をスティック型基材150から引き出すことが可能となる。
【0123】
段階的昇温区間は、温度維持区間と昇温区間とを交互に含んでいてもよい。温度維持区間に設定された目標温度は、温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度と同一である。昇温区間に設定された目標温度は、昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された目標温度よりも高い。表4に示した例では、再昇温区間の最初に135秒間の温度維持区間が設けられ、次に80秒間の昇温区間が設けられ、最後に95秒間の温度維持区間が設けられている。温度維持区間に設定される目標温度は、ひとつ前の時間区間に設定される目標温度と同一であるから、仮にひとつ前の時間区間において実温度が目標温度に達しなかった場合であっても、温度維持区間において実温度を目標温度に近付けることが可能である。そのため、段階的昇温区間の全体を通して、目標温度に対する実温度の追随性を高めることが可能である。
【0124】
段階的昇温区間に含まれる昇温区間の数は、ひとつに限定されず、複数であってもよい。その場合の加熱プロファイルの一例を、表5に示す。
【0125】
【0126】
図15は、表5に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
図15では、再昇温区間における温度維持区間に「M」が付され、再昇温区間における昇温区間に「U」が付されている。
【0127】
図15に示した加熱プロファイルは、段階的昇温区間として、温度維持区間Mと昇温区間Uとを交互且つ複数含む再昇温区間を含む。そのため、
図15に示すように、制御部116は、再昇温区間において、複数段階に分けて徐々に加熱部40を昇温させる。制御部116は、昇温区間Uにおける所定の昇温幅の昇温が終了した場合に、次の温度維持区間Mを開始させる。1つの昇温区間Uにおける所定の昇温幅は数℃~十数℃程度に抑えられることが望ましい。また、昇温区間Uに設定される目標温度は、再昇温区間の目標温度である260℃を超えない範囲で、昇温されることが望ましい。かかる構成により、スティック型基材150の寿命を徒に縮めてしまうことを防止することができる。なお、昇温区間Uにおける昇温幅は、再昇温区間全体にわたって同一であってもよいし、例えば後半に進むほど昇温幅が小さくなる等、異なっていてもよい。
【0128】
制御部116は、ユーザがエアロゾルを吸引する動作を行ったことが検出された場合に、次の昇温区間Uを開始させてもよい。つまり、再昇温区間においては、ユーザがパフを行うたびに昇温されてもよく、パフとパフとの間、温度が維持されてもよい。かかる構成によれば、ユーザがパフを行ったタイミングで、昇温され、香味の抽出量が増加することとなる。よって、加熱プロファイルの後半においてもユーザが味わう香味を維持することができるので、ユーザのパフ動作に対する満足感を向上させることができる。
【0129】
若しくは、制御部116は、温度維持区間Mにおける経過時間に応じて、当該温度維持区間Mを終了させ、次の昇温区間Uを開始させてもよい。例えば、再昇温区間においては、温度が所定時間維持された後に昇温されてもよい。かかる構成によれば、ユーザのパフ動作を検出せずとも昇温が可能になるので、制御部116の処理負荷を軽減することができる。ここで、上記所定時間は、ユーザが過去に行ったパフとパフとの間隔と同等の長さに設定されることが望ましい。その場合、上述した、ユーザがパフを行うたびに昇温する場合と同様の効果が奏される。
【0130】
本変形例においても、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間(より詳しくは、再昇温区間における平均値)が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きいことが望ましい。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長いことが望ましい。かかる構成により、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
【0131】
<3.3.第3の変形例>
ユーザによる行われるパフの間隔には、個人差がある。そのため、画一的な加熱プロファイルでは、ユーザによっては十分な香味を味わえなくなるおそれがあった。例えば、上記実施形態において、ユーザのパフの間隔が短い場合、再昇温区間における昇温が十分に行われる前にスティック型基材150の寿命が尽きてしまい、再昇温による香味向上の効果をユーザが実感できない可能性があった。
【0132】
そこで、第3の変形例では、ユーザからの入力に応じて可変な加熱プロファイルが提供される。かかる構成により、ユーザに適した加熱プロファイルに従ってエアロゾルを生成することができる。そのため、どの様なユーザに対しても、十分なパフ体験を提供することができる。
【0133】
本変形例において、加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する時間区間であるスロットを複数含む。そして、制御部116は、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応するスロット(以下、現在のスロットとも称する)に基づいて、加熱部40の動作を制御する。
【0134】
スロットには、スロットの終期における目標温度が設定される。スロットに基づいて加熱部40の動作を制御することは、スロットの終期において、実温度がスロットに設定された目標温度に達するよう、加熱部40への給電を制御することを差す。制御部116は、スロットを切り替えた場合、切り替え後のスロットに設定された目標温度に基づいて加熱部40の動作を制御する。
【0135】
スロットには、複数の切り替え条件が設定される。そして、制御部116は、スロットに設定された複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされた場合にスロットを切り替え、切り替え後のスロットに基づいて加熱部40の動作を制御する。制御部116は、現在のスロットに設定された複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされた場合に、現在のスロットの次のスロットに切り替える。かかる構成によれば、複数の切り替え条件に基づく柔軟な制御が可能となる。
【0136】
スロットに設定される複数の切り替え条件は、スロットの時間長の分だけ時間が経過したことを含む。即ち、制御部116は、現在のスロットに切り替えられた後、現在のスロットの時間長の分だけ時間が経過した場合、現在のスロットから次のスロットに切り替える。
【0137】
スロットに設定される複数の切り替え条件は、ユーザがエアロゾルを吸引する動作が検出されたことを含む。即ち、制御部116は、ユーザがエアロゾルを吸引する動作が検出された場合に、次のスロットに切り替える。この場合、現在のスロットに基づく制御が中断され、次のスロットに切り替えられることとなる。よって、制御部116は、ユーザがエアロゾルを吸引する動作が検出された場合、加熱プロファイルの時間長を短縮する。加熱プロファイルの時間長とは、加熱プロファイルに基づいて加熱部40の動作の制御を実行する期間の長さである。その際、制御部116は、ユーザがエアロゾルを吸引する動作が検出されたタイミングから当該タイミングに対応するスロットの終期までの残りの時間長の分だけ加熱プロファイルの時間長を短縮する。例えば、現在のスロットの時間長が20秒であり、現在のスロットに切り替え後5秒が経過したタイミングでパフ動作が検出された場合、制御部116は、20-5=15秒分、加熱プロファイルの時間長を短縮する。かかる構成によれば、パフ動作の間隔が短いほど、加熱プロファイルの時間長が短縮される。よって、パフ動作が多数回行われてエアロゾル源が早期に枯渇した場合であっても、加熱プロファイルに基づく加熱が継続されてユーザに粗雑な香味を送達してしまうような事態を、防止することが可能となる。
【0138】
加熱プロファイルのうち、連続する4つのスロットを含む部分を抜粋した例を、表6に示す。
【0139】
【0140】
図16~
図18は、表6に示した加熱プロファイルに基づき動作した加熱部40の実温度の時系列推移の一例を示すグラフである。本グラフの横軸は、時間(秒)である。本グラフの縦軸は、加熱部40の温度である。本グラフにおける線21は、加熱部40の実温度の時系列変化を示している。
【0141】
とりわけ、
図16では、スロットS1~S4の各々において、ユーザによるパフ動作が検出されなかった場合の、加熱部40の実温度の時系列推移が示されている。ユーザによるパフ動作が検出されなかった場合、スロットS1~S4の各々は、スロットの時間長の分だけ時間が経過した場合に次のスロットに切り替えられる。スロットS1の前には、目標温度を230℃とする他のスロットが連続しているものとする。そのため、
図16に示すように、スロットS1において、230℃から235℃に昇温される。同様に、スロットS2において240℃に昇温され、スロットS3において240℃に維持され、スロットS4において245℃に昇温される。
【0142】
ここで、スロットS1に含まれる時刻t
1において、所定の入力が検出されたものとする。
図17では、スロットS1に含まれる時刻t
1において、ユーザによるパフ動作が検出され場合の、加熱部40の実温度の時系列推移が示されている。スロットS1に含まれる時刻t
1において、ユーザによるパフ動作が検出され
た場合、制御部116は、時刻t
1においてスロットS1を終了させてスロットS2に切り替える。そのため、
図17に示すように、制御部116は、切り替え後のスロットS2の終期に加熱部40の実温度が目標温度240℃に達するよう、加熱部40の動作を制御する。また、
図17に示すように、スロットS1が途中で中断されるので、その分だけ加熱プロファイルの時間長が短縮される。
【0143】
さらに、スロットS3に含まれる時刻t
2において、所定の入力が検出されたものとする。
図18では、スロットS1に含まれる時刻t
1及びスロットS3に含まれる時刻t
2において、ユーザによるパフ動作が検出され場合の、加熱部40の実温度の時系列推移が示されている。スロットS3に含まれる時刻t
2において、ユーザによるパフ動作が検出され場合、制御部116は、時刻t
2においてスロットS3を終了させてスロットS4に切り替える。そのため、
図18に示すように、制御部116は、切り替え後のスロットS4の終期に加熱部40の実温度が目標温度240℃に達するよう、加熱部40の動作を制御する。また、
図18に示すように、スロットS3が途中で中断されるので、その分だけ加熱プロファイルの時間長が短縮される。
【0144】
以上説明したように、本変形例では、スロットに設定された複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされたことに応じてスロットを切り替えながら、加熱部40の温度制御を行うことが可能となる。とりわけ、本変形例では、ユーザによるパフ動作が検出されたことに応じてスロットを切り替えながら、加熱部40の温度制御を行うことが可能となる。かかる構成によれば、ユーザによるパフ間隔に応じて、細やかな温度制御を行うことが可能となる。
【0145】
加熱プロファイルに含まれる複数のスロットの少なくとも一部において、連続する2つのスロットの間で目標温度が異なっていてもよい。例えば、表6に示した例では、スロットS1の目標温度は235℃であり、スロットS2の目標温度は235℃とは異なる240℃である。かかる構成によれば、ユーザがパフを行うたびに加熱部40を昇温させ続けることができるので、ユーザが味わう香味を向上させることが可能となる。
【0146】
加熱プロファイルに含まれる複数のスロットの少なくとも一部において、連続する2つのスロットの間で目標温度が同一であってもよい。例えば、表6に示した例では、スロットS2の目標温度は240℃であり、スロットS3の目標温度は同じく240℃である。かかる構成によれば、ユーザがパフを行っても加熱部40の温度を維持することができるので、スティック型基材150の寿命を延ばすことが可能となる。
【0147】
スロットに設定された目標温度は、当該スロットの前に連続する他のスロットに設定されたスロットの目標温度以上であることが望ましい。つまり、前のスロットに設定されている目標温度に比較して、後のスロットに設定されている目標温度は、小さい値に設定されず、同値又は大きい値が設定される。かかる構成により、ユーザがパフを行うたびに温度維持又は昇温させて、ユーザが味わう香味を維持又は向上させることが可能となる。
【0148】
スロットの数は2個以上であることが望ましい。スロットの数が少なすぎると、細やかな温度制御が困難になるので、ユーザが味わう香味が劣化してしまい得る。その点、かかる構成によれば、スロットの数が少なすぎないようにすることができるので、ユーザが味わう香味の劣化を防止することが可能となる。
【0149】
スロットの数は15個以下であることが望ましい。スロットの数が多すぎると、その分スロットの切り替えが頻繁に発生してしまい、制御部116にかかる処理負荷が増大する。その点、かかる構成によれば、スロットの数が多すぎないようにすることができるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0150】
スロットの時間長は10秒以上であることが望ましい。スロットの時間長が短すぎると、その分スロットの切り替えが頻繁に発生してしまい、制御部116にかかる処理負荷が増大する。その点、かかる構成によれば、スロットの時間長が短すぎないようにすることができるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0151】
スロットの時間長は25秒未満であることが望ましい。スロットの時間長が長すぎると、細やかな温度制御が困難になるので、ユーザが味わう香味が劣化してしまい得る。その点、かかる構成によれば、スロットの時間長が長すぎないようにすることができるので、ユーザが味わう香味の劣化を防止することが可能となる。
【0152】
加熱プロファイルに含まれる複数のスロットの少なくとも2つのスロットの時間長は、互いに異なっていてもよい。かかる構成によれば、細やかな温度制御が可能となる。
【0153】
加熱プロファイルに含まれる複数のスロットの少なくとも2つのスロットの時間長は、同一であってもよい。かかる構成によれば、スロットの切り替えが簡易になるので、制御部116の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0154】
典型的には、スロットは、再昇温区間に設定される。その場合、パフが行われる度に、再昇温区間が圧縮されて、パフが行われない場合と比較して昇温のタイミングが早まることとなる。よって、ユーザのパフの間隔が短い場合であっても、再昇温区間において十分に昇温させることができるので、再昇温による香味向上の効果をユーザに実感させることが可能となる。このように、本変形例によれば、どのようなパフスタイルのユーザに対しても、十分なパフ体験を提供することが可能となる。
【0155】
本変形例においても、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の単位時間当たりの目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、再昇温区間(より詳しくは、再昇温区間における平均値)が最も小さく、途中降温区間が次に小さく、初期昇温区間が最も大きいことが望ましい。また、初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、途中降温区間が最も短く、初期昇温区間が次に短く、再昇温区間が最も長いことが望ましい。かかる構成により、加熱部40は、初期昇温区間において急速に昇温し、途中降温区間において高温な状態から早期に脱し、再昇温区間においてゆっくりと昇温することとなる。したがって、予備加熱を早期に終えることが可能となると共に、加熱プロファイルの最初から最後にわたって、ユーザに十二分な質のパフ体験を提供することが可能となる。
【0156】
<<4.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0157】
上記実施形態では、途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、途中降温区間の終期が判定される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。制御部116は、途中降温区間に設定された目標温度と加熱部40の実際の温度との差に基づいて、途中降温区間の終期を判定してもよい。例えば、制御部116は、加熱部40付近に設置された温度センサによる測定を所定周期で実行しながら、加熱部40の実温度を監視する。そして、制御部116は、測定された実温度が途中降温区間の目標温度に達した場合に、途中降温区間から再昇温区間への切り替えを判定する。かかる構成によれば、外気温等の外部環境によらず、適切なタイミングで途中降温区間から再昇温区間への切り替えを行うことが可能となる。
【0158】
上記実施形態では、制御部116は、目標温度と実温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御するものと説明した。一例として、制御部116は、現在の実温度と現在の時間区間(即ち、加熱プロファイルに基づく加熱部40の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する時間区間)に設定された目標温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御してもよい。即ち、表1及び
図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、制御部116は、100℃と295℃との乖離である195℃に基づいて、加熱部40の動作を制御してもよい。他の一例として、制御部116は、現在の実温度と現在の目標温度との乖離に応じて加熱部40の動作を制御してもよい。即ち、表1及び
図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、現在の目標温度は概算で295÷35×10=84℃となる。そのため、制御部116は、100℃と84℃との乖離である-16℃に基づいて、加熱部40の動作を制御してもよい。
【0159】
現在の時間区間に設定された目標温度よりも現在の実温度の方が低い場合に行われる、昇温のための加熱部40の動作は、多様に実現され得る。一例として、かかる昇温のための加熱部40の動作は、時間区間の終期までの残り時間と、実温度と目標温度との乖離と、に基づいて制御されてもよい。即ち、表1及び
図10に示した例において、加熱開始から10秒後の加熱部40の実温度が100℃であった場合、制御部116は、25秒後に、あと195℃昇温するように、加熱部40へ給電される電力パルスのデューティ比を調整してもよい。他の一例として、かかる昇温のための加熱部40の動作は、固定されていてもよい。即ち、制御部116は、昇温の際には、加熱部40へ給電される電力パルスのデューティ比を、例えば常に最大にしてもよい。
【0160】
パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、任意のタイミングで実施され得る。一例として、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、初期昇温区間の終期において行われてもよい。他の一例として、初期昇温区間の最後に温度維持区間が含まれる場合、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、初期昇温区間に含まれる温度維持区間の始期において行われてもよい。他の一例として、初期昇温区間と途中降温区間との間に温度維持区間が含まれる場合、パフ可能期間が開始するタイミングの通知は、かかる温度維持区間の終期において行われてもよい。
【0161】
例えば、上記実施形態では、ヒータアッセンブリ30とスティック型基材150との間に形成される空隙が、スティック型基材150に空気を導入する流路として機能する例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ヒータアッセンブリ30の底壁に、外気と連通する開口が設けられていてもよい。そして、ユーザによりパフが行われた際には、かかる開口からスティック型基材150へ空気が導入されてもよい。
【0162】
例えば、上記説明した変形例は、適宜組み合わされてもよい。即ち、第1の変形例、第2の変形例、及び第3の変形例のうち、少なくとも2つが組み合わされてもよい。一例として、第1の変形例及び第2の変形例が組み合わされてもよい。即ち、加熱プロファイルは、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なる複数の昇温区間を含む初期昇温区間、途中降温区間、及び目標温度が段階的に上昇する再昇温区間を含んでもよい。他の一例として、第1の変形例及び第3の変形例が組み合わされてもよい。その場合、加熱プロファイルは、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なる複数の昇温区間を含む初期昇温区間、途中降温区間、及び複数のスロットを含む再昇温区間を含んでもよい。
【0163】
また、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0164】
また、本明細書においてフローチャート及びシーケンス図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0165】
なお、以下のような構成も本発明の技術的範囲に属する。
(1)
基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部と、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
吸引装置。
(2)
前記第2の昇温区間は、前記第1の昇温区間と比較して、単位時間当たりの昇温幅が小さい、
前記(1)に記載の吸引装置。
(3)
前記第1の昇温区間の時間長及び前記第1の昇温区間に設定される前記目標温度、並びに前記第2の昇温区間の時間長及び前記第2の昇温区間に設定される前記目標温度は、前記第2の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅が、前記第1の昇温区間における前記単位時間当たりの昇温幅と比較して小さくなるように設定される、
前記(2)に記載の吸引装置。
(4)
前記第2の昇温区間の時間長は、前記第1の昇温区間の時間長よりも長い、
前記(2)又は(3)に記載の吸引装置。
(5)
前記初期昇温区間は、温度維持区間を最後に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一である、
前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(6)
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、
前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、
前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(7)
前記加熱プロファイルは、前記初期昇温区間、温度維持区間、途中降温区間、及び再昇温区間を順に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり
前記途中降温区間に設定された前記目標温度は、前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも低く、
前記再昇温区間に設定された前記目標温度は、前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(8)
前記制御部は、前記途中降温区間においては、前記加熱部に給電しないよう制御する、
前記(6)又は(7)に記載の吸引装置。
(9)
前記制御部は、前記途中降温区間の次の前記時間区間の始期において、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度未満である場合に第1のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、前記加熱部の実際の温度が前記途中降温区間に設定された前記目標温度以上である場合に第2のデューティ比で前記加熱部への給電を行い、
前記第1のデューティ比は前記第2のデューティ比よりも大きい、
前記(6)~(8)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(10)
前記制御部は、前記途中降温区間の始期からの経過時間に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定する、
前記(6)~(9)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(11)
前記制御部は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との差に基づいて、前記途中降温区間の終期を判定する、
前記(6)~(9)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(12)
前記再昇温区間は、温度維持区間と昇温区間とを交互に含み、
前記温度維持区間に設定された前記目標温度は、前記温度維持区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度と同一であり、
前記昇温区間に設定された前記目標温度は、前記昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度よりも高い、
前記(6)~(11)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(13)
前記制御部は、ユーザが前記エアロゾルを吸引する動作を行ったことが検出された場合に、次の前記昇温区間を開始させる、
前記(12)に記載の吸引装置。
(14)
前記制御部は、前記温度維持区間における経過時間に応じて、当該温度維持区間を終了させ、次の前記昇温区間を開始させる、
前記(12)又は(13)に記載の吸引装置。
(15)
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値を比較した場合、前記再昇温区間が最も小さく、前記途中降温区間が次に小さく、前記初期昇温区間が最も大きく、
前記初期昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記初期昇温区間に設定された前記目標温度と初期値との差の絶対値を前記初期昇温区間の時間長で割った値であり、
前記途中降温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記途中降温区間に設定された前記目標温度と前記途中降温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記途中降温区間の時間長で割った値であり、
前記再昇温区間の前記単位時間当たりの前記目標温度の変化量の絶対値は、前記再昇温区間に設定された前記目標温度と前記再昇温区間のひとつ前の時間区間に設定された前記目標温度との差の絶対値を前記再昇温区間の時間長で割った値である、
前記(6)~(14)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(16)
前記初期昇温区間、前記途中降温区間、及び前記再昇温区間の各々の時間区間の時間長を比較した場合、前記途中降温区間が最も短く、前記初期昇温区間が次に短く、前記再昇温区間が最も長い、
前記(6)~(15)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(17)
前記吸引装置は、前記基材を受け入れるチャンバをさらに備え、
前記チャンバは、前記基材が挿入される開口と、前記基材を保持する保持部とを含み、
前記保持部は、前記基材の一部を押圧する押圧部と、非押圧部とを含む、
前記(1)~(16)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(18)
前記加熱部は、前記押圧部の外面に配置される、
前記(17)に記載の吸引装置。
(19)
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する時間区間であるスロットを複数含み、
前記スロットには、複数の切り替え条件が設定され、
前記制御部は、前記スロットに設定された前記複数の切り替え条件のうちいずれかひとつが満たされた場合に前記スロットを切り替え、切り替え後の前記スロットに基づいて前記加熱部の動作を制御する、
前記(1)~(18)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(20)
前記制御部は、前記加熱プロファイルに基づく前記加熱部の動作の制御を開始してからの経過時間に対応する前記目標温度と前記加熱部の実際の温度との乖離に基づいて、前記加熱部の動作を制御する、
前記(1)~(19)のいずれか一項に記載の吸引装置。
(21)
基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部を有する吸引装置を制御するための制御方法であって、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御すること、
を含み、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
制御方法。
(22)
基材を加熱してエアロゾルを生成する加熱部を有する吸引装置を制御するコンピュータに、
前記加熱部の温度の目標値である目標温度の時系列推移が規定された加熱プロファイルに基づいて、前記加熱部の動作を制御すること、
を実行させ、
前記加熱プロファイルは、時間軸に沿って連続する複数の時間区間を含み、
前記複数の時間区間の各々には、前記時間区間の終期における前記目標温度が設定され、
前記加熱プロファイルは、最初に初期昇温区間を含み、
前記初期昇温区間に設定された前記目標温度は、初期値よりも高く、
前記初期昇温区間は、第1の昇温区間、及び前記第1の昇温区間の次の第2の昇温区間を含み、
前記第1の昇温区間及び前記第2の昇温区間は、互いに単位時間当たりの昇温幅が異なり、
前記第1の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度と前記初期値との差を前記第1の昇温区間の時間長で割った値であり、
前記第2の昇温区間の前記単位時間当たりの昇温幅は、前記第2の昇温区間に設定された前記目標温度と前記第1の昇温区間に設定された前記目標温度との差を前記第2の昇温区間の時間長で割った値である、
プログラム。
【符号の説明】
【0166】
100 吸引装置
111 電源部
112 センサ部
113 通知部
114 記憶部
115 通信部
116 制御部
150 スティック型基材
151 基材部
152 吸口部
30 ヒータアッセンブリ
32 トップキャップ
40 加熱部
40a 第1部分
40b 第2部分
42 加熱要素
44 電気絶縁部材
48 電極
50 チャンバ
52 開口
54 非保持部
56 底部
56a 底壁
56b 側壁
58 第1ガイド部
58a テーパ面
60 保持部
62 押圧部
62a 内面
62b 外面
66 非押圧部
66a 内面
66b 外面
67 空隙
70 断熱部
80 内部空間