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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】順応性のある防水/含浸・乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/10 20060101AFI20250307BHJP
   D06F 58/00 20200101ALI20250307BHJP
   A43D 95/06 20060101ALN20250307BHJP
【FI】
D06F58/10 Z
D06F58/00 Z
A43D95/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022561642
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 DK2021050099
(87)【国際公開番号】W WO2021204339
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】PA202070217
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202070234
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA202070434
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】522394421
【氏名又は名称】インボックス プロテクション アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】レニ マーガ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンレク グロントビ
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-095448(JP,A)
【文献】ロシア国特許出願公開第02684085(RU,A)
【文献】特表2011-522059(JP,A)
【文献】特表2016-508907(JP,A)
【文献】特開平07-275589(JP,A)
【文献】国際公開第2004/091359(WO,A2)
【文献】国際公開第2014/001873(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第01905548(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19945229(DE,A1)
【文献】米国特許第09107973(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F58/00- 58/52
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品防水/含浸流体又はミストを含浸させ、前記物品を乾燥して前記物品に防水性を与えるための防水/含浸・乾燥装置(1)であって、前記防水/含浸・乾燥装置(1)は、ドアを通してアクセス可能な閉鎖チャンバ(2)と、前記チャンバ(2)内に前記防水/含浸流体又はミストを導入するための1つ又は複数の入口(10)と、前記チャンバ(2)へ空気を供給し且つ前記チャンバ(2)から空気を取り出すための手段(4)と、前記チャンバ(2)内の空気を撹拌するための撹拌装置と、を備え、前記防水/含浸・乾燥装置(1)は1つ又は複数の発熱ユニット(6)を備え
前記手段(4)によって前記チャンバ(2)内に供給される前記空気は、前記入口(10)を介して前記チャンバ内に供給される、防水/含浸・乾燥装置。
【請求項2】
前記1つ又は複数の発熱ユニット(6)は、前記チャンバ(2)内の前記空気及び/又は前記チャンバ(2)内に配置された前記物品の表面を20~200℃まで加熱できる、請求項1に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項3】
前記発熱ユニット(6)が、赤外線発光ユニット、紫外線発光ユニット、マイクロ波ユニット、電気ヒーター、蛍光管、ヒートポンプ、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1又は2に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項4】
前記発熱ユニット(6)と、前記チャンバ(2)に前記空気を供給し且つ前記チャンバ(2)から前記空気を取り出す前記手段(4)と、前記撹拌装置とが、単一のユニットである、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項5】
前記単一のユニットが空調ユニットである、請求項4に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項6】
前記防水/含浸・乾燥装置(1)を制御し、それによって、前記発熱ユニット(6)と、前記チャンバ(2)前記空気を供給し且つ前記チャンバ(2)から前記空気を取り出すための前記手段(4)と、前記撹拌装置とを制御するように構成された電気的手段(17)をさらに備える、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項7】
前記電気的手段(17)は、電話、タブレット、コンピュータ、キャッシュレジスタ等の遠隔装置によって、無線又は有線接続によって、制御可能である、請求項6に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項8】
前記発熱ユニット(6)は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)によって、又は前記電気的手段(17)の遠隔制御によって、個別に制御されるように構成される、請求項6又は7に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項9】
前記チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための前記入口(10)が、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)によって、又は前記電気的手段(17)の遠隔制御によって制御される、請求項8に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)。
【請求項10】
物品を防水/含浸及び乾燥する方法であって、
a.前記物品を請求項1~9のうちいずれか1項に記載の防水/含浸・乾燥装置(1)内に置くテップと;
b.電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、前記1つ又は複数の入口(10)を選択及び制御して、前記チャンバ(2)内への防水/含浸流体の流れを制御するように、前記防水/含浸・乾燥装置(1)を構成するステップと;
c.前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、前記1つ又は複数の発熱ユニット(6)を構成するように、前記防水/含浸・乾燥装置(1)を構成するステップと;
d.前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、前記入口(10)を介して前記チャンバ内に空気を供給し、前記チャンバ内空気を撹拌し、前記チャンバから空気を取り出すための手段(4)を構成するように、前記防水/含浸・乾燥装置(1)を構成するステップと;
e.前記防水/含浸・乾燥装置(1)を制御するように構成された、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を操作することによって、又は、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、指定された固定時間の間、前記物品を防水/含浸及びその後乾燥するステップと、を含む、物品を防水/含浸及び乾燥する方法。
【請求項11】
前記手段(4)を介して前記チャンバ(2)内に導入される前記空気が、80%RH未満相対湿度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバ(2)内の前記空気の温度及び/又は前記チャンバ(2)内に配置された前記物品の表面が、0℃超に昇温される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
防水/含浸及び乾燥のための合計時間が5分未満ある、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記入口が、導管によって含浸液体の供給源に接続されたノズルを含み、前記導管を空にし、前記防水/含浸・乾燥装置(1)の各作動の間に前記ノズルを洗浄するための排出手段が設けられている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤系又は水系の防水/含浸処理を経た物品の防水/含浸・乾燥装置及び乾燥方法に関する。本発明は、また、衣類、靴、バッグ、財布、ブランケット及び衣類等の溶媒系又は水系の防水/含浸プロセスを受けた物品を乾燥するための防水/含浸・乾燥装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
防水/含浸装置は、当該技術分野において周知であり、また、靴及び衣類等の物品を乾燥させるための乾燥装置である。防水/含浸される物品は、通常、1つの装置において防水/含浸プロセスに供され、その後、別の装置において乾燥に供される。このプロセスは、しばしば煩雑であり、異なる装置を必要とし、比較的時間がかかる。
複合装置の一例は、特許文献1に開示されている。この装置では、処理される対象物は、開放型キャビティ内のプラットフォーム上に配置される。過剰な処理剤が開放された処理キャビティから流出するのを避けるために、キャビティの上部にスクリーンが設けられている。特許文献1に示された発明の目的の1つは、スペースを節約し、装置の近傍に使用可能なスペースを提供することであるので、処理キャビティを閉鎖するドアは設けられていない。ドアは貴重なスペースを取ることになり、スクリーンを設けることによって、この特定の装置のための処理パラメータで、実質的にすべての処理剤が処理キャビティの内部に残ることが達成される。
さらなる例として、特許文献2に開示された同じ出願人自身の先行装置がある。この装置では、閉鎖された処理室が提供されているが、室内での処理は完全に満足のいくものでなかった。これは、例えば、処理剤が懸濁した空気が処理室内で攪拌され循環されないというような、複数の細かい問題によるものであった。このため、処理が不十分となり、さらに特定の位置で処理剤が溜まったり凝集したりした。特に、この装置では、専用の乾燥サイクルではなく、空気の部分的な換気を除いて、処理対象物を乾燥させる手段を提供していなかったため、乾燥時間が長くなっていた。
さらなる例は、同じ出願人自身の先行出願の特許文献3で、特許文献2の装置と比較して、特に処理剤をはるかによく分配することによって性能を向上させたものである。しかしながら、まだ乾燥手段は提供されておらず、周囲換気に依存する乾燥サイクルは遅すぎた。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]ロシア国特許出願公開第2684085号明細書
[特許文献2]国際公開第2009/127214号
[特許文献3]国際公開第2014/135166号
【発明の概要】
【0003】
(発明の目的)
したがって、必要な動作時間が非常に短い単純なプロセスを使用して、単一の装置内で物品を防水/含浸し、その後乾燥することができる、より汎用性があり、順応性のある防水/含浸装置が必要とされている。
【0004】
本発明の目的は、衣類、靴、バッグ、財布、ブランケット及び衣類等の物品を防水/含浸及び乾燥する技術水準を改善する必要性を満たし、別個の装置及び別個の処理を有するという従来技術で説明された課題を克服し、順応性の高い防水/含浸及び乾燥する装置を提供することによって公知の防水/含浸する装置及び処理を改善することである。装置は、溶剤系又は水系の防水/含浸流体で物品を防水/含浸することと、1つ又は複数の発熱ユニットを使用して物品を乾燥することとの両方が可能であり、前記発熱ユニットは、1つ又は複数の異なる形態で熱を提供するように構成されるという点で順応性がある。ほとんどの場合、装置は両方の機能性を利用するが、ある場合には一方又は他方の処理のみが利用してもよいことは明らかである。
【0005】
本発明の防水/含浸・乾燥装置は、装置に用いられる防水/含浸流体(waterproofing/impregnation fluid)の選択、防水/含浸及び/又は乾燥される物品に対して防水/含浸流体を適用する方法、防水/含浸後に物品を乾燥させるために使用される発熱ユニットの数及び種類、及び装置を制御する方法に関して、非常に汎用性及び順応性が高い。
【0006】
一実施形態では、処理された物品を乾燥する方法に関する手段として、空気調節装置が提案される。少なくとも本明細書及び特許請求の範囲内では、空気調節は、空気がより冷たい、より温かい、外気よりも高い又は低い相対湿度を有し得るように、空気調節装置が処理/乾燥チャンバに導入されている空気を所定のパラメータに従って処理すると理解されるものとする。また、空気調節装置は、装置内部の十分な/望ましい空気交換を得るために、出てゆく空気に所定の速度を与えることができる。
【0007】
防水/含浸(waterproofing/impregnation)は、例えば、靴が、本発明の装置内及び方法において、露出されるような、物品の処理として理解されるべきであり、この処理は、物品を、完全に防水ではないにしても、少なくともある期間、改善された耐濡れ性を有するようにする。
【0008】
少なくとも本発明の範囲内で、「流体」は、加えられた剪断応力又は外力によって連続的に変形する物質として理解されるべきである。流体は物質の相であり、液体、気体及びプラズマを含む。それらは、せん断弾性率がゼロの物質、又はより簡単に言えば、それらに加えられるいかなるせん断力にも抵抗できない物質である。したがって、「流体」という用語は、液相及び気相の両方を含む。特に本発明に関して、含浸流体は、少量の空気及び含浸剤を含む。含浸剤は、一般的には、乾燥剤、シリコーン成分又は他の含浸剤、及び可能な他の活性成分、並びに溶媒を含む。含浸剤又は防水/含浸流体は、一般的には液体であり、本発明で使用する場合、物体に適用されるとき、液滴が気流中に懸濁される。
【0009】
本発明のさらなる有利な実施形態では、1つ以上の入口は、1つ以上のノズルを備え、前記入口は、導管によって含浸剤の供給源に接続され、装置の各作動の間に含浸剤の導管を空にするための排出手段が設けられる。
【0010】
この実施形態は、1つの含浸液から別の含浸液への変更が容易かつ迅速であるという点、又は硬化剤を含む含浸剤を含む処理において、硬化剤が活性化して含浸システム(導管、ノズル等)を詰まらせる可能性が生じる前に液体が排出されるという点で、特に興味深い。
【0011】
1つの特定の実施形態では、排出手段は、加圧ガス又は洗浄液の供給源への接続を含み、その結果、前記加圧ガス又は洗浄液は、導管に導入され、含浸剤を排出することができる。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様では、物品を防水/含浸及び乾燥するための防水/含浸・乾燥装置であって、前記装置は、チャンバと、チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための1つ又は複数の入口と、チャンバに空気を供給し、チャンバ内の空気を撹拌し、チャンバから空気を取り出すための手段とを備え、装置が1つ又は複数の発熱ユニット(6)を備える、防水/含浸・乾燥装置を提供することが本発明の目的である。
【0013】
第2の態様では、本発明の目的は、
a. 前記物品を装置内に配置するステップと;
b. 電子ディスプレイ及び入力デバイスを介して、又は、電気的手段の遠隔制御によって、1つ又は複数の入口を選択及び制御して、チャンバ内への防水/含浸流体の流れを制御するように、前記装置を構成するステップと;
c. 電子ディスプレイ及び入力デバイスを介して、又は、電気的手段の遠隔制御によって、1つ以上の加熱ユニットを構成するように、前記装置を構成するステップと;
d. 電子ディスプレイ及び入力デバイスを介して、又は、電気的手段の遠隔制御によって、チャンバ内に空気を供給し、チャンバ内部の空気を撹拌し、チャンバから空気を取り出すための手段を構成するステップと;
e. 順応性のある乾燥装置を制御するように構成された、電子ディスプレイ及び入力デバイスを操作することによって、又は電気的手段の遠隔制御によって、指定された固定時間の間、前記物品を防水/含浸し、その後乾燥させるステップと、
を含む、物品を防水/含浸及び乾燥する方法を提供することである。
【0014】
第3の態様では、本発明の目的は、物品を乾燥するための防水/含浸・乾燥装置を利用することであり、前記物品は、溶媒系又は水系の防水/含浸プロセスを受けた衣類、靴、バッグ、財布、ブランケット、衣類等である。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、チャンバ(2)と、チャンバとの間で空気を供給し、攪拌し、及び/又は取り出す手段(4)と、発熱ユニット(6)と、チャンバドア(8)と、防水/含浸流体を供給するための入口(10)と、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)と、順応性のある防水/含浸・乾燥装置(1)を制御するための遠隔制御可能な電気的手段(17)とを含む、本発明の防水/含浸・乾燥装置(1)の正面図を示す。
【0016】
図2図2は、チャンバ(2)と、チャンバとの間で空気を供給し、攪拌し、及び/又は取り出す手段(4)と、発熱ユニット(6)と、防水/含浸流体を供給するための入口(10)と、防水/含浸され、その後乾燥される物品(12)に防水/含浸流体を塗布するための噴霧器(18)と、棚(14)とを含む、本発明の順応性のある防水/含浸・乾燥装置(1)の内部を示す。 本発明のこの実施形態では、棚は、防水/含浸又は乾燥される物品を回転させるように構成された回転可能な棚であり、装置(1)は、物品を防水/含浸するための2つの噴霧器を備える。
【0017】
図3図3は、チャンバ(2)と、チャンバとの間で空気を供給し、攪拌し、及び/又は取り出す手段(4)と、発熱ユニット(6)と、防水/含浸させて乾燥される物品(12)に防水/含浸流体を塗布するための噴霧器(18)と、棚(14)と、を含む、本発明の順応性のある防水/含浸・乾燥装置(1)の内部を示す。 この実施形態では、装置(1)は、2つの棚と、物品を防水/含浸するための回転可能な噴霧器とを備える。
【0018】
図4図4は、チャンバ(2)と、チャンバとの間で空気を供給し、攪拌し、及び/又は取り出す手段(4)と、発熱ユニット(6)と、防水/含浸させて乾燥させる物品(12)に防水/含浸流体を塗布するための噴霧器(18)と、棚(14)と、棚を備えつけるための支持体(20)と、を含む、本発明の順応性のある防水/含浸・乾燥装置(1)の内部を示す。 この実施形態では、装置(1)は、物品を防水/含浸するための1つの棚及び回転可能な噴霧器を備える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、物品を防水/含浸及び乾燥するための順応性のある防水/含浸・乾燥装置1に関し、前記順応性のある装置は、チャンバ2と、チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための1つ又は複数の入口10と、チャンバに空気を供給し、チャンバ内の空気を撹拌し、チャンバから空気を取り出すための手段4と、1つ又は複数の発熱ユニット6とを備える。
【0021】
1つ又は複数の入口10を介してチャンバ内に導入される防水/含浸流体は、溶媒系又は水系であってもよい。本発明の技術的範囲内で、「溶媒系」は、水以外の有機又は無機溶媒の主成分を有する任意の防水/含浸流体を意味する。
【0022】
チャンバ2に導入される空気は、一実施形態では、大気圧(約1気圧)且つ室温(約25℃)の雰囲気であってもよいが、より高い又はより低い圧力及び/又はより高い又はより低い温度で導入される空気であってもよい。チャンバ2内に空気を供給し、チャンバ内部の空気を攪拌し、チャンバから空気を取り出す手段4は、空気ファン、空気ブロワ、換気システム及び空調システム等の当業者に公知の任意の手段であってよい。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、チャンバ2内に導入された空気は、噴霧器18を介して供給される。これは、防水/含浸液を導入するためと、防水/含浸後に空気をチャンバ2内に導入するため、のいずれの場合に、同じ入口を使用できるという利点を有する。これは、入口10及び噴霧器18を空気で洗浄するというさらなる利点を有する。
【0024】
装置の1つ以上の発熱ユニット6は、チャンバ2内の空気及び/又は前記チャンバ2内に配置された物品の表面を、20~200℃、例えば40~180℃、例えば50~150℃、例えば75~100℃に加熱することができる。
【0025】
装置1の1つ又は複数の発熱ユニット6は、赤外線発光ユニット、紫外線発光ユニット、マイクロ波ユニット、電気ヒータ、蛍光管、ヒートポンプ、又はそれらの任意の組合せの熱源等の様々な発熱ユニットの中から選択され得るが、それらに限定されない。装置1は、本発明の装置1の適応性を最大にするために、1つの発熱ユニット6のみを備えてもよいが、複数の発熱ユニット(同種又は任意の組み合わせ)を備えてもよいことは、本発明の範囲内である。
【0026】
2つ以上の発熱ユニット6を備える場合には、本発明の範囲内で、防水/含浸及び乾燥される物品に応じて、熱源の選択、個々の発熱ユニットの温度及び加熱期間の両方の点で、1つ以上の前記ユニット6を組み合わせて適用する。
【0027】
本発明のある実施形態では、発熱ユニット6と、チャンバ2に空気を供給し、チャンバ2内部の空気を攪拌し、チャンバ2から空気を取り出す手段は、空気調和ユニット等の単一ユニットである。
【0028】
本発明の別の実施形態では、チャンバ2内に導入される空気は、装置1の動作中に除湿プロセスに供されてチャンバ2に再導入され、それによって、再利用された除湿された空気が、本発明の乾燥プロセスで使用される。
【0029】
したがって、本発明の装置1はまた、除湿装置を備え、及び/又は除湿装置に連結されてもよい。
【0030】
本発明の装置1は、複数の方法で制御することができる。本装置は、防水/含浸液の導入を制御するための電気的手段17(液体流量、圧力、液体温度等)、1つ以上の発熱ユニット6(熱源、温度、乾燥時間等の選択)を制御するとともに、チャンバ内に空気を供給し、チャンバ内の空気を攪拌し、チャンバ内から空気を取り出すための手段4(空気流量、圧力、温度、継続時間等)を制御する。
【0031】
電気的手段17は、装置1の前面に存在する電子ディスプレイ及び入力デバイス16によって、又は、電話、タブレット、コンピュータ、キャッシュレジスタ等の遠隔装置によって、無線若しくは有線の遠隔制御によって、制御され及び構成される。このようにして、装置1は、動作中に、電子ディスプレイ及び入力デバイス16により装置自体の上で、又は遠隔デバイス、無線若しくは有線によって遠隔で、制御及び監視の両方が可能である。
【0032】
装置1は、回転可能な棚14又は回転不可能な棚14と、並びに回転可能な噴霧器18又は回転不可能な噴霧器18と、を備えることができる。回転可能及び回転しない噴霧器18と回転可能及び回転しない棚14との任意の組み合わせは、本発明による物品の防水/含浸及び乾燥に有用である。
【0033】
本発明の範囲内において、装置1は、1つ以上の噴霧器18、並びに1つ以上の棚14を含むことができ、前記棚は、含浸される物品を支持するのに適するものである。
【0034】
例えば、コート、ジャケット、ブランケット等の物品を防水/含浸及び乾燥する場合、防水/含浸及び乾燥される物品を固定するために、防水/含浸・乾燥装置1は、装置1の上部に取り付けられた1つ又は複数の留め金又は保持装置で取り付けられてもよい。1つ又は複数の留め金又は保持装置は、防水/含浸流体が物品の表面上に等しく散布されることを確実にするように、回転可能であってもよい。
【0035】
防水/含浸及び乾燥される物品に対して、通常、
a. 当該物品を装置1内へ配置すること;
b. 電子ディスプレイ及び入力デバイス16を介して、又は、電気的手段17の遠隔制御によって、1つ又は複数の入口10を選択及び制御して、チャンバ2内への防水/含浸流体の流れを制御するように装置を構成することと;
c. 電子ディスプレイ及び入力デバイス16を介して、又は電気的手段17の遠隔制御によって、1つ又は複数の発熱ユニット6を構成するように装置1を構成することと;
d. 電子ディスプレイ及び入力デバイス16を介して、又は電気的手段17の遠隔制御によって、チャンバ内に空気を供給し、チャンバ内部の空気を撹拌し、チャンバから空気を取り出すための手段4を構成するように装置1を構成すること;
e. 装置1を制御するように構成された、電子ディスプレイ及び入力デバイス16を操作することによって、又は電気的手段17の遠隔制御によって、指定された固定時間の間、前記物品を含浸させ、続いて乾燥させること、
の方法が行われる。
【0036】
本発明の範囲内において、前記方法は、衣類、靴、バッグ、財布、毛布、衣類等の物品を含浸及び乾燥する装置1の使用に従って、制御、変更、変更、及び最適化してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態では、前記方法は、チャンバ2内の湿度条件等、動作中のチャンバ2内の環境に基づいて、制御、変更、変更、及び/又は最適化してもよい。
【0038】
特定の実施形態では、本発明の方法は、湿度条件等、動作中のチャンバ2内の環境に基づいて、リアルタイムで自動的に制御、変更、変更、及び/又は最適化してもよい。
【0039】
物品の防水/含浸及びその後の乾燥の全プロセスに要する時間は非常に短い。防水/含浸及びその後の乾燥のための全プロセスに必要な時間は、30分未満、例えば、25分未満、20分未満、更には15分未満であり、防水/含浸及び乾燥される物品、並びに使用される防水/含浸流体の選択、並びに乾燥プロセスにおいて適用される発熱ユニットの選択に依存する。
【実施例
【0040】
実施例1
1対のシューズを本発明の装置に配置し、水性の防水/含浸流体を用いて、約60秒間、シューズを防水/含浸して、本発明による方法に供した。本装置は、図2に従って、回転棚、2つの噴霧器、及びマイクロ波ユニットと電気ヒータとを含む発熱ユニットを備えて構成された。一対の靴は、本発明の装置の動作の23分後に、十分に防水性であり、十分に乾燥した。
【0041】
実施例2
一対のブーツを、本発明の装置内に配置し、溶媒系の防水/含浸流体を用いて、約90秒間、ブーツを防水/含浸して、本発明による方法に供した。本装置は、1つの棚と、回転可能な噴霧器と、マイクロ波ユニット、電気ヒータ及び紫外線発光ユニットを備える発熱ユニットを有し、図4に従って構成された。一対の靴は、本発明の装置の動作の26分後、十分に防水性であり、乾燥していた。
【0042】
実施例3
コートを本発明の装置内に配置し、水性の防水/含浸流体を用いて、約180秒間、コートを防水/含浸して、本発明による方法に供した。本装置は、図3又は図4に従って、回転可能な留め金を備えるが、棚を備えておらず、回転可能な噴霧器と、マイクロ波ユニット、空調ユニット、及び蛍光管を備える発熱ユニットで構成された。コートは、本発明の装置の動作の19分後に、十分に防水性であり、乾燥していた。
【0043】
実施例4
複数の(可動)ノズル、換気手段、及び加熱源又は空気調節装置が配置された処理チャンバを備える装置であって、一対のシューズを防水及び乾燥するために使用される装置である。チャンバの容積は約65lである。チャンバ内の空気を撹拌するために使用される換気装置は、0%~100%の間の様々な効果(effect)で動作するように制御可能である。この実施例では、ヒーターを作動させて、チャンバ内を30℃と50℃の間の気温(air temperature)とし、換気手段を40%(対気速度約1~1.5m/s)にする。この条件は、20~50秒の間に維持される。その後、換気手段は、5~15%の効果に低減され、ノズルを作動して、シューズに向けて含浸剤のミストを生成する。ノズルは、全て同時に、又は連続的に、すなわち一度に1つ以上が作動される。この方法は、5~30秒間維持され、その間、5ml~100mlの液状の含浸剤が、ノズルを通して送り出され、シューズに向けられた含浸ミストに変えられる。防水剤を噴霧した後、乾燥工程が作動され、ここで、換気手段は40%~75%に設定され、温度は、60秒までの間、30℃と50℃の間に制御される。この時点で、処理チャンバは、シューズが完全な含浸ルーチンを受けたときに開くことができ、含浸剤は、シューズの通常の使用のために十分に乾燥している。含浸剤は、実際の手段に応じて、さらに乾燥、硬化及び/又は熟成(mature)してもよい。
【0044】
本発明の他の態様は、以下を含むことができる:
- 1つ、2つ、又はそれ以上のプラットフォーム(platform)が、チャンバの内側で互いに対して垂直方向に変位して設けられ、処理される物品を配置するように構成され、プラットフォームが、チャンバの内側の垂直軸の周りを回転することを可能にするモータ手段を備えること、及び/又は
- チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための入口(10)は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)によって、又は電気的手段(17)の遠隔制御によって制御されること、及び/又は
- 1つ又は複数の入口が1つ又は複数のノズルを含み、前記入口が導管によって含浸剤の供給源に接続され、装置の各作動の間に含浸剤の導管を空にするための、排出手段が設けられること、及び/又は
-前記排出手段は、加圧ガス又は洗浄液が導管に導入され、含浸剤を排出できるように、加圧ガス又は洗浄液の供給源への接続を含むこと、および/又は
- 前記含浸剤は、含浸剤のリザーバを混合チャンバに接続する導管によって、前記混合チャンバ内に予め投与され、前記混合チャンバは、空気入口及び空気出口をさらに備え、前記空気入口は、空気源に接続され、前記空気は、周囲の気圧よりも高い圧力を有し、前記空気出口は、前記1つ又は複数のノズルに接続され、かつ/又は
- 空気圧縮機が、空気源を提供するために設けられ、空気圧が0.13MP(1.3bar)~0.5MPa(5bar)の間で選択されること;及び/又は
- 装置内の処理毎の含浸剤が3ml~50mlの間で選択されること;及び/又は
- 防水/含浸流体からの空気と空気供給手段によって導入される空気とを合わせた空気量が、物体の処理中に、チャンバの容積の3~25倍に相当する合計の容積量を供給すること、及び/又は、
- 前記物品が、溶媒系又は水性の防水/含浸プロセスを受けた衣類、靴、バッグ、財布、ブランケット、衣類等である、適応性のある防水/含浸・乾燥装置(1)を使用すること。
【0045】
- 発熱ユニット(6)の組み合わせは、乾燥される物品に応じて、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を使用して、又は、電気的手段(17)の遠隔制御によって設定される。
【0046】
- 温度、防水/含浸時間及び乾燥時間は、防水/含浸及び乾燥される物品に応じて、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を使用して、又は、電気的手段(17)の遠隔制御によって構成される。
なお、本発明の実施態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
物品を防水/含浸及び乾燥するための防水/含浸・乾燥装置(1)であって、前記装置は、ドアを通してアクセス可能な閉鎖チャンバ(2)と、前記チャンバ内に防水/含浸流体又はミストを導入するための1つ又は複数の入口(10)と、前記チャンバに/チャンバから空気を供給及び取り出すための手段(4)と、前記チャンバ内の空気を撹拌するための撹拌装置と、を備え、1つ又は複数の発熱ユニット(6)を備える乾燥装置が設けられる、防水/含浸・乾燥装置。
[態様2]
前記1つ又は複数の発熱ユニット(6)は、前記チャンバ(2)内の空気及び/又は前記チャンバ(2)内に配置された前記物品の表面を20~200℃まで加熱できる、態様1に記載の装置(1)。
[態様3]
前記発熱ユニット(6)が、赤外線発光ユニット、紫外線発光ユニット、マイクロ波ユニット、電気ヒーター、蛍光管、ヒートポンプ、又はこれらの任意の組み合わせである、態様1又は2に記載の装置(1)。
[態様4]
前記発熱ユニット(6)と、前記チャンバ(2)に空気を供給し、前記チャンバ(2)内の空気を撹拌し、前記チャンバ(2)から空気を取り出す手段(4)とが、単一のユニットである、態様1~3のうちいずれかの態様に記載の装置(1)。
[態様5]
前記単一のユニットが空調ユニットである、態様4に記載の装置(1)。
[態様6]
前記装置(1)を制御し、それによって、前記発熱ユニット(6)と、前記チャンバに空気を供給し、前記チャンバ(2)内の空気を撹拌し、前記空気を取り出すための前記手段(4)とを制御するように構成された電気的手段(17)をさらに備える、態様1~5のうちいずれかの態様に記載の装置(1)。
[態様7]
前記電気的手段(17)は、電話、タブレット、コンピュータ、キャッシュレジスタ等の遠隔装置によって、無線又は有線接続によって、制御可能である、態様1~6のうちのいずれかの態様に記載の装置(1)。
[態様8]
前記発熱ユニット(6)は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)によって、又は前記電気的手段(17)の遠隔制御によって、個別に制御されるように構成される、態様1~7のうちのいずれかの態様に記載の装置(1)。
[態様9]
前記チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための前記入口(10)が、前記電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)によって、又は前記電気的手段(17)の遠隔制御によって制御される、態様1~8のうちのいずれかの態様に記載の装置(1)。
[態様10]
物品を防水/含浸及び乾燥する方法であって、
a.前記物品を防水/含浸及び乾燥するための防水/含浸・乾燥装置(1)内に置くステップであって、前記順応性のある装置が、チャンバ(2)と、前記チャンバ内に防水/含浸流体を導入するための1つ又は複数の入口(10)と、を備え、前記チャンバに空気を供給し、前記チャンバ内の空気を撹拌し、前記装置(1)の前記チャンバから空気を取り出すための手段(4)が備えられ、乾燥装置が、1つ又は複数の発熱ユニット(6)を備え、さらに、前記装置(1)が態様1~9のうちいずれかの態様に記載の装置である、ステップと;
b.電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、1つ又は複数の入口(10)を選択及び制御して、キャンバー(2)内への防水/含浸流体の流れを制御するように、前記装置(1)を構成するステップと;
c.電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、1つ又は複数の発熱ユニット(6)を構成するように、前記装置(1)を構成するステップと;
d.電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を介して、又は電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、チャンバ内に空気を供給し、チャンバ内部の空気を撹拌し、チャンバから空気を取り出すための手段(4)を構成するように、装置(1)を構成するステップと;
e.前記装置(1)を制御するように構成された、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)を操作することによって、又は、電子ディスプレイ及び入力デバイス(16)の遠隔制御によって、指定された固定時間の間、前記物品を防水/含浸及びその後乾燥するステップと、を含む、物品を防水/含浸及び乾燥する方法。
[態様11]
前記手段(4)を介して前記チャンバ(2)内に導入される前記空気が、80%RH未満、例えば、40%RH未満、好ましくは25%RH未満の相対湿度を有する、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記チャンバ(2)内の空気の温度及び/又は前記チャンバ(2)内に配置された前記物品の表面が、例えば100℃超、好ましくは150℃超、75℃超のように50℃超に昇温される、態様10に記載の方法。
[態様13]
防水/含浸及び乾燥のための合計時間が5分未満、例えば3分未満、さらには2分未満である、態様11又は12に記載の方法。
[態様14]
態様10に記載の方法であって、前記入口が、導管によって含浸液体の供給源に接続されたノズルを含み、前記導管を空にし、前記装置の各作動の間に前記ノズルを洗浄するための排出手段が設けられている、方法。
図1
図2
図3
図4