(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20250307BHJP
A61B 3/16 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/16 300
(21)【出願番号】P 2023140562
(22)【出願日】2023-08-30
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 亮夫
【審査官】廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-216329(JP,A)
【文献】特開2018-069727(JP,A)
【文献】特開2008-216761(JP,A)
【文献】特開2009-061653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00- 3/18
B41J 2/47
G02B 26/10-26/12
G11B 7/12- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と側板とを有するベース部と、天板と枠状側板とを有し、前記ベース部を上方から覆うように配置される第1カバー部とを備え、内部に部品を収容するキャビネットであって、
前記ベース部の前記側板は、上面側に切欠部又は凹凸部を有し、
前記第1カバー部の前記枠状側板は、下面側に前記切欠部又は凹凸部と嵌合する溝部を有し
、
前記ベース部は、前記側板とは別に、平面且つ上方から見たとき段形状をなす階段部を有し、
前記第1カバー部は、平面且つ上方から見たとき前記枠状側板の端部をなし前記階段部を係止する係止部を有していることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記切欠部又は凹凸部と前記溝部とが嵌合する部分において、垂直方向に延びる隙間の通路と水平方向に延びる隙間の通路とを合わせた通路の総距離が前記側板の厚み以上の長さを有する、請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記第1カバー部は樹脂製である、請求項1又は2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記第1カバー部の前記天板は開口を有し、
前記開口を上方から塞ぐ板状の第2カバー部をさらに備える、請求項1又は2に記載のキャビネット。
【請求項5】
前記階段部と前記係止部とが隣り合う部分の隙間の通路の総距離が前記側板の厚み以上の長さを有する、請求項
1に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材等を収容するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光学部材、精密機器等を収容するキャビネットにおいて、その内部に埃やゴミ等の異物が侵入しないように、防塵対策が施されているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1のキャビネットは、その上面に細長い矩形の開口が形成されている。開口の周縁部は段部になっており、この段部の部分に透明板(窓)が装着され、液晶表示パネルが窓の内側に配されている。また、当該窓の周縁部であって、内側の部分と液晶表示パネルの枠体との間に防塵部材が配されている。
【0004】
この防塵部材は、液晶表示パネルの表示面と窓との間から埃等が侵入することを防止することで、常に良好な表示を行なえるようにしている。なお、防塵部材は、スポンジシートから構成されている(特許文献1/段落0022,0023、
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のキャビネットは、スポンジが経年劣化すること、異物が侵入し得る通路が比較的短いことから防塵効果が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、異物の内部への侵入を防止する効果が高いキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、底板と側板とを有するベース部と、天板と枠状側板とを有し、前記ベース部を上方から覆うように配置される第1カバー部とを備え、内部に部品を収容するキャビネットであって、
前記ベース部の前記側板は、上面側に切欠部又は凹凸部を有し、前記第1カバー部の前記枠状側板は、下面側に前記切欠部又は凹凸部と嵌合する溝部を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明は、ベース部と第1カバー部とを備えるキャビネットであり、その内部に部品を収容することができる。ベース部の側板は上面側に切欠部又は凹凸部を有し、それを上方から覆う第1カバー部は枠状側板の下面側に溝部を有している。キャビネットを組み立てたとき、切欠部又は凹凸部と溝部とが嵌合するため、埃やゴミ等の異物が内部に侵入し得る通路は、折れ曲がった非直線状の構造となる。これにより、防塵効果が高いキャビネットを実現することができる。
【0010】
本発明のキャビネットにおいて、前記切欠部又は凹凸部と前記溝部とが嵌合する部分において、垂直方向に延びる隙間の通路と水平方向に延びる隙間の通路とを合わせた通路の総距離が前記側板の厚み以上の長さを有することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、切欠部又は凹凸部と溝部とが嵌合する部分の隙間が作る通路の総距離をベース部の側板の厚み以上としているので、異物が侵入し得る当該通路が非直線状かつ一定以上の長さとなる。すなわち、異物が外側から当該通路に侵入したとしても、キャビネット内部に到達し難くなる。なお、ここでの垂直とは略垂直を含み、水平とは略水平を含む。
【0012】
また、本発明のキャビネットにおいて、前記第1カバー部は樹脂製であることが好ましい。
【0013】
樹脂は金属と比較してしなる素材のため、嵌合する部分においてベース部と第1カバー部の隙間を狭くして、防塵効果をさらに高めることができる。また、樹脂は型の形状を転写して作られる部品であるため、形状の自由度が高く、溝部を低コストで容易に作ることができる。
【0014】
また、本発明のキャビネットにおいて、前記第1カバー部の前記天板は、開口を有し、前記開口を上方から塞ぐ板状の第2カバー部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1カバー部の天板が開口を有することで、光学部材の形状に自由度を持たせることができる。また、部品の形状に合わせて第2カバー部を作製し、被せて密閉する。キャビネットの内部を検査するときは、第2カバー部を取り外せばよいため、確認が容易となる。
【0016】
また、本発明のキャビネットにおいて、前記ベース部は、平面且つ上方から見たとき段形状をなす階段部を有し、前記第1カバー部は、前記階段部を係止する係止部を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、ベース部と第1カバー部は、嵌合部以外でそれぞれ階段部と係止部とによって固定される。階段部と係止部とによって生じる隙間の通路についても、折れ曲がった非直線状の構造となるため、防塵効果をさらに高めることができる。
【0018】
また、本発明のキャビネットにおいて、前記階段部と前記係止部とが隣り合う部分の隙間の通路の総距離が前記側板の厚み以上の長さを有することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、異物が内部に侵入し得る通路が非直線状かつ一定以上の長さとなるため、異物が外部から当該通路に入ったとしても、キャビネット内部に到達し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】眼科装置(オートケラトレフラクトトノメータ)の全体図である。
【
図2】眼科装置のオートレフラクトメータの斜視図である。
【
図4】
図2のオートレフラクトメータのA-A線断面図である。
【
図6】
図2のオートレフラクトメータのB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係るキャビネットの実施形態について説明する。本キャビネットは、後述するオートレフラクトメータ用の光学部材の容器である。なお、本明細書において、「垂直」とは略垂直の状態を含み、「水平」とは略水平の状態を含むものとする。
【0022】
図1は、実施形態の眼科装置1の斜視図である。
図1に示すように、眼科装置1は、被検者(患者)の眼球である被検眼の眼圧値、眼屈折力及び角膜曲率等の各種眼特性を1台で測定することができる複合検査装置である。眼科装置1は、主に検者(医師又は看護師)による直接的な入力操作により各種眼特性の測定が可能となっている。
【0023】
眼科装置1は、測定ヘッド部10と、駆動機構20と、顔支持部30と、ベース部40と、表示部50とを備えている。顔支持部30は、ベース部40の検者側に取り付けられている。
【0024】
顔支持部30は、眼科装置1による被検眼の眼圧値等の眼特性の測定時に被検者の顔を測定ヘッド部10の測定領域(検査領域)内に位置決めする。ここで、測定領域内とは、被検眼に対する測定ヘッド部10のアライメントが可能な範囲内(例えば、被検眼の前眼部像が取得可能な範囲内、被検眼に指標光を照射可能な範囲内)である。
【0025】
被検者の顔が顔支持部30に接触して、顔支持部30により支持されることで、被検者の顔が測定領域内に位置決めされる。特に、顔支持部30は、被検者の顎を載置する顎受部30aを備えている。
【0026】
駆動機構20は、モータ等の不図示のアクチュエータにより構成されており、ベース部40に対して測定ヘッド部10を3軸方向(図中のX,Y,Z方向)に移動させる。これにより、被検眼に対して測定ヘッド部10を3軸方向に相対移動させることができる。そして、制御装置(図示省略)の制御の下、駆動機構20を駆動することで、被検眼に対する測定ヘッド部10の3軸方向のアライメント調整を可能としている。
【0027】
測定ヘッド部10には、非接触式眼圧計10A及びオートレフラクトメータ10Bを含む複数種類の眼科用の各種測定装置が設けられている。
【0028】
非接触式眼圧計10Aは、被検眼の眼圧値の測定を行うことができる。具体的には、非接触式眼圧計10Aは、被検眼の角膜に向けてノズルから空気を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出し、非接触で被検眼の眼圧値を測定する。また、オートレフラクトメータ10Bは、各種の光学系を用いて被検眼の眼屈折力及び角膜曲率等を測定することができる。
【0029】
表示部50は、測定ヘッド部10の検者に対向する背面側に取り付けられている。この表示部50は、例えばタッチパネル式のモニタが用いられる。表示部50は、制御装置の制御の下、被検眼の前眼部の観察像、又は被検眼の眼圧値等の測定結果を表示する。さらに、表示部50は、各種操作を行うための操作メニュー画面と、測定ヘッド部10の3軸方向の位置調整(手動アライメント)を行うための位置調整画面とを表示する。
【0030】
図2は、測定ヘッド部10に含まれるオートレフラクトメータ10Bの斜視図である。また、
図3は、オートレフラクトメータ10Bの分解図である。
【0031】
オートレフラクトメータ10Bのキャビネット11は、ベース部12と、第1カバー部13と、第2カバー部14とで構成されている。ベース部12は、底板12aと側板12bとを有している。また、第1カバー部13は、天板13aと枠状側板13bとを有し、ベース部12を上方から覆うように配置される。第2カバー部14は、天板13aを覆う板状部材である。
【0032】
第1カバー部13はベース部12に対してねじで固定され、第2カバー部14は第1カバー部13に対してねじで固定される。キャビネット11内には、オートレフラクトメータ10Bを構成する光学部材が収容されている。なお、第1カバー部13の枠状側板13bに隣接する位置には、基板取付板15が設けられている。
【0033】
図3に示されるように、第1カバー部13の天板13は、上方に突出する光学部材に対応するための開口13cが設けられている。第2カバー部14は、光学部材の形状に対応させた突出部14aを有し、開口13cを上方から塞ぐ。
【0034】
第1カバー部13の天板13は、開口13cがない形状であってもよい。その場合、キャビネット11を構成する部品数を削減することができる。しかしながら、本実施形態では、キャビネット11の内部を検査するとき、第2カバー部14を取り外す形態となっており、内部の検査が容易である。
【0035】
なお、第1カバー部13と第2カバー部14は、何れも樹脂製である。これは、樹脂が型の形状を転写して作られるため形状の自由度が高く、後述する溝部13dの形状も含めて低コストで容易に作ることができるからである。
【0036】
図4は、
図2に示したキャビネット11のA-A線断面図である。このA-A線断面は、ベース部12の肉厚部12d(詳細は後述)を含んでいる。
【0037】
図4の領域R1に示されるように、ベース部12の側板12bは、上面側に側板12bの一部を切削した切欠部12cを有している。また、第1カバー部13の枠状側板13bは、切欠部12cと嵌合する溝部13dを有している。同様の部分がキャビネット11の対向する位置(領域R2)にも設けられている。このような、いわゆるラビリンス構造は、キャビネット11内への埃やゴミ等の異物の侵入防止に役立つ。
【0038】
【0039】
図5に示されるように、第1カバー部13の溝部13dは、ベース部12の側板12b及び切欠部12cに嵌合する凹構造を有している。樹脂製の第1カバー部13は金属等の素材と比較してしなるため、嵌合部分に形成される経路Tにおいて、ベース部12と第1カバー部13の隙間(約0.25mm)を狭く、一定間隔にすることができる。
【0040】
嵌合部分は垂直方向の隙間の通路t1及び通路t3がそれぞれ長さ5mm、水平方向の隙間の通路t2が長さ2mmであるため、異物が侵入し得る通路の合計である経路Tの長さ(いわゆる、ラビリンス長)は、12mmである。そして、キャビネット11を組み立てたとき、経路Tは折れ曲がった非直線状の構造となる。これにより、防塵効果が高いキャビネット11とすることができる。なお、経路Tよりも隙間が広い通路t’は、ラビリンス長に含めていない。
【0041】
経路Tは、垂直方向に延びる通路t1,t3と水平方向に延びる通路t2とを合わせた総距離が側板12bの厚みD(約5mm)以上の長さであることが好ましい。これにより、経路Tは非直線状かつ一定以上の長さとなる。このため、異物が内部に到達し難くなり、キャビネット11の防塵効果をさらに高めることができる。
【0042】
本実施形態では、ベース部12に切欠部12cを設け、第1カバー部13に溝部13dを設けたが、これは一例に過ぎない。例えば、ベース部12に凹凸部を設け、第1カバー部13にそれに嵌合する構造を設けて両者を嵌合させ、嵌合部分に非直線状の経路が形成されるようにしてもよい。このような経路は、経路Tのように直線の通路のみで構成されるものでもよいし、一部に曲線の通路が含まれていてもよい。
【0043】
また、嵌合部分は、ベース部12(側板12b)と第1カバー部13(枠状側板13b)が接触する部分の一部(1箇所又は複数箇所)でもよいし、接触する部分の全周に亘って形成してもよい。
【0044】
嵌合部分が複数箇所形成される場合、全て同じ構造である必要はない。埃等の影響を受け易い光学部材が側板12bの付近に配置されている場合は、経路を長く複雑な形状として防塵効果を高めてもよい。
【0045】
例えば、
図4の領域R2は、側板12bの外側に設けられた肉厚部12dを利用した構造となっている。具体的には、側板12bと肉厚部12dとで凹部が形成され、溝部13dと嵌合する。領域R2においては、上述の経路Tよりも長く、複雑に入り組んだ経路が形成されている。
【0046】
図6は、
図2に示したキャビネット11のB-B線断面図である。このB-B線断面は、第1カバー部13の枠状側板13bを高さ方向の略中央で切断した断面であるが、キャビネット11内部の光学部材については断面を示す斜線を一部省略してある。
【0047】
これまでの説明では、嵌合部分は垂直方向に嵌合する構造であったが、水平方向で嵌合する構造であってもよく、一定の防塵効果を期待することができる。例えば、
図6の領域Sにおいては、ベース部12と第1カバー部13とが隣接する部分が存在する。
【0048】
【0049】
図7に示されるように、ベース部12は、オートレフラクトメータ10Bの後端側に、平面的かつ上方から見たとき段形状の階段部12eを有している。また、第1カバー部13は、枠状側板13bと接続され、階段部12eを係止する係止部13eを有している。
【0050】
ベース部12と第1カバー部13とは、階段部12eと係止部13eとによって、僅かな隙間(約0.25mm)を介して固定される。このように、階段部12eと係止部13eとが隣り合う部分の隙間の経路Uは、折れ曲がった非直線状の構造となる。
【0051】
階段部12eは曲線部分を含む構造ではあるが、水平方向(Z方向)の通路u1が長さ2mm、水平方向(X方向)の通路u2が長さ5.3mm、通路Yと接続された水平方向(Z方向)の通路u3が長さ5.6mmであるため、経路Uの長さ(いわゆる、ラビリンス長)は、12.9mmである。
【0052】
ここでも、経路Uの総距離が側板12bの厚みD(約5mm)以上の長さを有することが好ましい。これにより、異物が内部に侵入し得る経路Uが非直線状かつ一定以上の長さとなるため、仮に異物が経路Uに侵入したとしても、キャビネット11内部に到達し難くなる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0054】
上記実施形態では、ベース部12と第1カバー部13との接触部に嵌合構造があったが、これに限られない。例えば、第1カバー部13と第2カバー部14とは接触するため、この両者の間で本発明に係る嵌合構造が形成されるように切欠部、凹凸部、溝部等を形成することができる。これにより、キャビネット11の上方から異物が内部に侵入することを確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…眼科装置、10…測定ヘッド部、10A…非接触式眼圧計、10B…オートレフラクトメータ、11…キャビネット、12…ベース部、12a…底板、12b…側板、12c…切欠部、12d…肉厚部、12e…階段部、13…第1カバー部、13a…天板、13b…枠状側板、13c…開口、13d…溝部、13e…係止部、14…第2カバー部、14a…突出部、15…基板取付板、20…駆動機構、30…顔支持部、30a…顎受部、40…ベース部、50…表示部。
【要約】
【課題】異物の内部への侵入を防止する効果が高いキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネット11は、底板12aと側板12bとを有するベース部12と、天板13aと枠状側板13bとを有し、ベース部12を上方から覆うように配置される第1カバー部13とを備えている。ベース部12の側板12bは、上面側に切欠部12cを有し、第1カバー部13の枠状側板13bは、下面側に切欠部12cと嵌合する溝部13dを有している。
【選択図】
図4