(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】セラミック部材
(51)【国際特許分類】
C04B 41/87 20060101AFI20250307BHJP
C04B 35/117 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
C04B41/87 R
C04B35/117
(21)【出願番号】P 2023536784
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028256
(87)【国際公開番号】W WO2023003026
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2021119500
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 拓実
(72)【発明者】
【氏名】上野 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】飯田 修一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 諭史
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-082186(JP,A)
【文献】特開2015-067457(JP,A)
【文献】特開平08-169783(JP,A)
【文献】特開昭61-236671(JP,A)
【文献】特開平04-175284(JP,A)
【文献】特開昭53-103193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/87
C04B 35/117
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素を含有するセラミックスからなる基体を有し、
該基体の表面部に、前記基体の内部におけるホウ素含有量よりも、多くのホウ素を含有するホウ素含有層を有
し、
前記基体は、
第1面と、
該第1面と反対の位置に位置する第2面とを有し、
前記第1面は、第1表面部に第1ホウ素含有層を有し、
前記第2面は、第2表面部に第2ホウ素含有層を有し、
前記第1ホウ素含有層のホウ素含有量を第1ホウ素含有量とし、
前記第2ホウ素含有層のホウ素含有量を第2ホウ素含有量とした場合、
前記第1ホウ素含有量と前記第2ホウ素含有量とが異なっており、
前記基体は、壁部を有する容器の形状をしており、
前記第1面は、前記容器の内壁面であり、
前記第2面は、前記容器の外壁面であり、
前記第1ホウ素含有量は、前記第2ホウ素含有量よりも多い、
セラミック部材。
【請求項2】
ホウ素を含有するセラミックスからなる基体を有し、
該基体の表面部に、前記基体の内部におけるホウ素含有量よりも、多くのホウ素を含有するホウ素含有層を有し、
前記基体は、
第1面と、
該第1面と反対の位置に位置する第2面とを有し、
前記第1面は、第1表面部に第1ホウ素含有層を有し、
前記第2面は、第2表面部に第2ホウ素含有層を有し、
前記第1ホウ素含有層のホウ素含有量を第1ホウ素含有量とし、
前記第2ホウ素含有層のホウ素含有量を第2ホウ素含有量とした場合、
前記第1ホウ素含有量と前記第2ホウ素含有量とが異なっており、
前記基体は、壁部を有する容器の形状をしており、
前記第1面は、前記容器の内壁面であり、
前記第2面は、前記容器の外壁面であり、
前記第1ホウ素含有量は、前記第2ホウ素含有量よりも少ない
、セラミック部材。
【請求項3】
前記基体は、
複数の前記壁部を有しており、
該壁部の内壁面において、隣接する前記壁部の間に位置する角部を第1角部とし、
該第1角部の表面部におけるホウ素含有量を第3ホウ素含有量とし、
前記壁部の外壁面において、隣接する前記壁部の間に位置する角部を第2角部とし、
該第2角部の表面部におけるホウ素含有量を第4ホウ素含有量とし、
前記第3ホウ素含有量と、前記第4ホウ素含有量との差を第1内外差とし、
前記第1角部以外の領域における前記第1ホウ素含有量と、
前記第2角部以外の領域における前記第2ホウ素含有量との差を第2内外差とした場合、
前記第1内外差は、前記第2内外差よりも大きい、請求項
1または
2に記載のセラミック部材。
【請求項4】
前記基体は、気孔率が5%以下の多結晶体からなる酸化アルミニウム質セラミックスである、請求項1
または2に記載のセラミック部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミック部材に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック部材は、高い強度や硬度、耐熱性、耐薬品性などの特性を有することから、種々の部品として広く用いられている。また、セラミック部材は、例えば、耐熱部材として用いられている。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によるセラミック部材は、ホウ素を含有するセラミックスからなる基体を有する。セラミック部材は、基体の表面部に、基体の内部におけるホウ素含有量よりも多くのホウ素を含有するホウ素含有層を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態に係るセラミック部材の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るセラミック部材の模式的な縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るセラミック部材の模式的な横断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す位置P1および位置P2間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図2に示す位置P3および位置P4間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図3に示す位置P1および位置P2間におけるホウ素含有量の変化の他の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態に係るセラミック部材の他の一例を示す模式的な縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す位置P5および位置P6間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態に係るセラミック部材の他の一例を示す模式的な縦断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す位置P7および位置P8間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図11】
図11は、別の実施形態に係るセラミック部材の模式的な縦断面図である。
【
図12】
図12は、別の実施形態に係るセラミック部材の模式的な縦断面図である。
【
図13】
図13は、ロットL11~L16に対する耐熱衝撃性の試験結果を示す表である。
【
図14】
図14は、ロットL14の側壁部の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図15】
図15は、ロットL14の底壁の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図16】
図16は、ロットL14の角部の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【
図17】
図17は、予備実験における各試験結果をまとめた表である。
【
図18】
図18は、予備実験における3点曲げ強度の試験結果を示すグラフである。
【
図19】
図19は、予備実験における平均熱膨張係数の試験結果を示すグラフである。
【
図20】
図20は、予備実験における耐熱衝撃性の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に、本開示によるセラミック部材を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示によるセラミック部材が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0007】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、たとえば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0008】
セラミック部材として、より高い強度を有するセラミック部材が望まれている。例えば、高温溶融金属に曝されるセラミック部材、内燃機関の燃焼室壁や燃料噴射ノズルなどに使われる部材のような、耐熱部材として用いられるセラミック部材は、耐熱衝撃性に優れることが望まれる。このような事情から、強度に優れたセラミック部材の提供が期待されている。
【0009】
図1は、実施形態に係るセラミック部材1の模式的な斜視図である。
図2は、実施形態に係るセラミック部材1の模式的な縦断面図である。
図3は、実施形態に係るセラミック部材1の模式的な横断面図である。
【0010】
なお、
図2に示す縦断面図は、
図3に示すII-II線矢視における断面に相当する。すなわち、
図2には、第1壁部11および第2壁部12に直交する断面を示している。また、
図3に示す横断面図は、
図2に示すIII-III線矢視における断面に相当する。すなわち、
図3には、第1壁部11の壁面に直交し、且つ、第2壁部12と平行な断面を示している。
【0011】
図1~
図3に示すように、実施形態に係るセラミック部材1は、容器形状を有していてもよい。なお、後述するが、セラミック部材1の形状は、本例に限定されるものではなく、板状、筒状、枠状、柱状などいずれの形状であってもよい。
【0012】
実施形態に係るセラミック部材1は、セラミックスからなる基体10を有する。基体10を構成するセラミックスとしては、たとえば、酸化アルミニウム質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックスまたは炭化珪素質セラミックス等を用いることができる。
【0013】
基体10が酸化アルミニウム質セラミックスからなる場合、セラミックスの中で、原料価格や作製コストまで含めて比較的安価でありながら、優れた機械的特性を有する。
【0014】
ここで、酸化アルミニウム質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分100質量%のうち、酸化アルミニウムを70質量%以上含有するものである。
【0015】
基体10の材質は、たとえば以下の方法により確認することができる。まず、X線回折装置(XRD)を用いて、対象の基体10を測定し、得られた2θ(2θは、回折角度)の値より、JCPDSカードと照合する。次に、ICP発光分光分析装置(ICP)または蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、アルミニウム(Al)の定量分析を行なう。そして、ICPまたはXRFで測定したAlの含有率から酸化アルミニウム(Al2O3)に換算した値である含有率が70質量%以上であれば、基体10の材質は酸化アルミニウム質セラミックスである。
【0016】
また、基体10は、気孔率が5%以下の多結晶体であってもよい。また、基体10の材質は酸化アルミニウム質セラミックスである場合、基体10のかさ密度は3.2g/cm3以上であってもよい。このように、基体10を構成するセラミックスは、緻密質セラミックスであってもよい。
【0017】
図2に示すように、本明細書では、第1壁部11を厚み方向に3等分したうち、内壁面側に位置する領域を内壁面側部R1とし、外壁面側に位置する領域を外壁面側部R3とする。また、第1壁部11を厚み方向に3等分したうち内壁面側部R1と外壁面側部R3との間の領域を内部R2とする。また、第2壁部12についても同様に、第2壁部12を厚み方向に3等分したうち内壁面側に近い領域から順に、内壁面側部R1、内部R2および外壁面側部R3とする。
【0018】
基体10は、ホウ素(B)を含有している。具体的には、
図2および
図3に示すように、基体10は、表面部にホウ素含有層20を有する。ホウ素含有層20は、基体10の内部R2と比較してホウ素の含有量が多い領域である。ホウ素含有層20は、「ホウ素高含有領域」と言い換えてもよい。基体10は、第1面と、第1面の反対に位置する第2面を有していてもよい。また、基体10は、第1面と第2面との間に位置する第3面を有していてもよい。
図2の例では、第1面11aは、第1壁部11における内壁面11aであってもよい。第2面11bは、第1壁部11における外壁面11bであってもよい。第3面11cは、第1壁部11における上面11cであってもよい。
【0019】
基体10は、ホウ素含有層20として、第1ホウ素含有層21、第2ホウ素含有層22を有していてもよい。第1ホウ素含有層21は、基体10の内壁面側部R1に位置していてもよい(
図2参照)。第2ホウ素含有層22は、基体10の外壁面側部R3に位置していてもよい(
図2参照)。第1ホウ素含有層21のホウ素含有量を第1ホウ素含有量とし、第2ホウ素含有層22のホウ素含有量を第2ホウ素含有量とした場合、第1ホウ素含有量と第2ホウ素含有量は異なっていてもよい。
【0020】
ホウ素含有層のホウ素含有量は、たとえば以下の方法により確認することができる。ホウ素含有層を切り出し、ICP発光分光分析装置(ICP)または蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、ホウ素(B)の定量分析を行なう。
【0021】
図4は、
図3に示す位置P1および位置P2間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。ホウ素含有量とは、具体的には、ホウ素のB
2O
3換算での含有量を意味する。
【0022】
位置P1は、第1壁部11の外壁面上における任意の一点である。また、位置P2は、第1壁部11における内壁面上の点であって、第1壁部11を挟んで位置P1と反対側に位置する。
図4には、基体10の厚み方向における位置(位置P1~位置P2)を横軸にとり、ホウ素含有量を縦軸にとったグラフを示している。
【0023】
図4に示すように、ホウ素含有層20(第1ホウ素含有層21および第2ホウ素含有層22)におけるホウ素含有量は、基体10の内部R2におけるホウ素含有量よりも多い。これにより、強度や耐熱衝撃性に優れたセラミック部材1を得ることができる。セラミック焼結体において、ホウ素の含有量が多い場合には、ホウ素の含有量が少ない場合に比べて、熱膨張係数が小さい傾向にある。そのため、本実施形態のセラミック部材は、表面部と内部とで熱膨張係数が異なっている。そして、表面部において内部よりも多くのホウ素を含有していることから、表面部の熱膨張係数は内部の熱膨張係数よりも小さい。そのため、セラミック部材の製造過程における焼成後のセラミック部材が冷却される過程で、表面部と内部とで収縮率が異なる状態が生じる。熱膨張が小さい表面部では、圧縮応力が発生する。そのことにより、本実施形態のセラミック部材は強度が高い。
【0024】
また、本実施形態のセラミック部材1は、優れた耐熱衝撃性を有する。この点について、セラミック部材1が溶融金属等によって急激に加熱されて温度上昇し始めてから、セラミック部材1の温度が均一になるまでの過程を例に挙げて説明する。
【0025】
基体10の内部は表面側よりも加熱されにくいため、基体10の内部は表面側と比べて温度が低くなる。この過程では、仮に表面と内部の熱膨張係数が同じであれば、温度の高い表面側が内部よりも熱膨張することで、内部に引張応力が発生する。この結果、内部からクラック、割れが生じるおそれがある。
【0026】
これに対し、実施形態に係るセラミック部材1のように、基体10の内部R2のホウ素含有量が表面側(内壁面側部R1および外壁面側部R3)よりも少ない場合、内部R2の熱膨張係数は、表面側よりも大きい。これにより、表面部と内部の熱膨張係数が同じである場合に比べて表面部と内部の熱膨張差は小さいため、セラミック部材1が急激に温度上昇する過程において内部R2にかかる引張応力は減少する。したがって、実施形態に係るセラミック部材1は、溶融金属等によって温度が急激に上昇した場合であっても、基体10の内部R2にクラックや割れが発生しにくい。また、セラミック焼結体において、ホウ素の含有量が多い場合には、ホウ素の含有量が少ない場合に比べて、ヤング率が小さい傾向にある。そのため、本実施形態のセラミック部材は、表面部と内部とでヤング率が異なっている場合がある。そして、そのような場合には、表面部において内部よりも多くのホウ素を含有していることから、表面部のヤング率は内部のヤング率よりも小さい。ヤング率が小さい表面部では、応力が加わった場合に変形しやすいため衝撃に対する耐久力が高い。そのことにより、本実施形態のセラミック部材は耐熱衝撃性に優れる。
【0027】
また、内壁面側の熱膨張係数が内部R2の熱膨張係数よりも小さい場合には、耐熱部材1が内壁面側から急速に加熱されたとしても、内壁面側の熱膨張が低減されるため、内部を起点とするクラックが入りにくい。
【0028】
このように、ホウ素含有層20を有するセラミック部材1は、耐熱衝撃性が高い。
【0029】
基体10は、例えば、
図2に示すように複数(ここでは、4つ)の第1壁部11と、1つの第2壁部12とを有していてもよい。また、基体10は、第2壁部12の反対側(第2壁部12と対向する位置)に開口部13を有していてもよい。実施形態において、第2壁部12は、基体10の底壁を構成する。なお、これに限らず、第2壁部12は、基体10の上壁を構成するものであってもよい。すなわち、セラミック部材1は、
図1と上下が逆の姿勢で用いられるものであってもよい。また、セラミック部材1は、開口部13を横方向に向けて使用されるものであってもよい。このように、セラミック部材1の姿勢は特に限定されない。
【0030】
第2壁部12は、平面視において四角形状を有していてもよい。ここで、四角形状とは、図示のような長方形に限らず、正方形であってもよい。また、4つの第1壁部11は、基体10の側壁を構成し、第2壁部12に連なっていてもよい。
【0031】
第2壁部12の平面視における形状は、四角形状に限定されるものではなく、例えば、四角形状以外の多角形状であってもよいし、円形状や楕円形状であってもよい。
【0032】
また、基体10は、隣接する2つの第1壁部11の間に位置する角部や、第1壁部11と第2壁部12との間に位置する角部とを有していてもよい。角部は、基体10の内壁面側および外壁面側にそれぞれ位置していてもよい。すなわち、基体10は、内壁面側に位置する第1角部である内壁面側角部14と、外壁面側に位置する第2角部である外壁面側角部15とを有していてもよい。
【0033】
また、基体10は、たとえば第1壁部11または第2壁部12に貫通孔、凹部および凸部等を有していてもよい。
【0034】
実施形態に係るセラミック部材1は、高温環境下に曝される場合がある。実施形態に係るセラミック部材1は、耐熱部材として用いてもよい。具体的には、実施形態に係るセラミック部材1には、高温の物質が収容されてもよい。たとえば、セラミック部材1は、溶融金属の容れ物として用いられる場合がある。その他、セラミック部材1は、たとえば溶融金属をすくい上げるラドルとして用いられてもよいし、るつぼとして用いられてもよい。
【0035】
また、実施形態に係る基体10において、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量と、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量とは異なる。たとえば、
図4に示すように、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量は、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量よりも多くてもよい。
【0036】
具体的には、第1ホウ素含有層21は、たとえば内壁面側部R1のうち基体10の内壁面から基体10の厚み方向における3分の2の位置までの領域である。第1ホウ素含有層21を基体10の厚み方向に2等分したうち、基体10の内壁面側の領域を第1ホウ素含有層21の表層部21aとし、他方の領域を第1ホウ素含有層21の内部21bとする。
【0037】
同様に、第2ホウ素含有層22は、たとえば、外壁面側部R3のうち基体10の外壁面から基体10の厚み方向における3分の2の位置までの領域である。また、第2ホウ素含有層22を基体10の厚み方向に2等分したうち、基体10の外壁面側の領域を第2ホウ素含有層22の表層部22aとし、もう一方の領域を第2ホウ素含有層22の内部22bとする。
【0038】
図4に示すように、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の最大値(C5)は、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の最大値(C3)よりも大きくてもよい。また、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の最小値(C4)は、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の最大値(C3)よりも大きくてもよい。また、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の平均値は、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の平均値よりも大きくてもよい。
【0039】
このように、第1ホウ素含有層21におけるホウ素のB2O3換算での含有量は、第2ホウ素含有層22におけるホウ素のB2O3換算での含有量よりも多くてもよい。言い換えると、実施形態に係るセラミック部材1は、位置によってホウ素含有量が異なっていてもよい。前述した通り、ホウ素含有量が多い場合には、その部分のセラミック部材1の強度や耐熱衝撃性が高い。つまり、強度や耐熱衝撃性が求められる部分のホウ素含有量が高いことで、壊れにくいセラミック部材1を提供できる。別の言い方をすると、実施形態に係るセラミック部材1は部分的に優れた強度や耐熱衝撃性を有する。
【0040】
また、
図4に示すように、実施形態に係るセラミック部材1は、基体10の厚み方向の全体に亘ってホウ素を含有していてもよい。係るセラミック部材1は機械的強度が高い。
【0041】
図5は、
図2に示す位置P3および位置P4間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。位置P4は、第1壁部11と第2壁部12との間に位置する第1角部である内壁面側角部14上の任意の一点である。また、位置P3は、上記第1壁部11と上記第2壁部12との間に位置する第2角部である外壁面側角部15上の点であって、縦断面視において位置P1の対角線上に位置している。
図5には、基体10の厚み方向における位置(位置P3~位置P4)を横軸にとり、ホウ素含有量を縦軸にとったグラフを示している。
【0042】
図5に示すように、第1ホウ素含有層21のうち第1角部における第3ホウ素含有量と、第2ホウ素含有層22のうち第2角部における第4ホウ素含有量との差を第1内外差G1とする。また、
図4に示すように、第1角部以外の第1ホウ素含有層21における第1ホウ素含有量と、第2角部以外の第2ホウ素含有層22における第2ホウ素含有量との差を第2内外差G2とする。この場合において、第1内外差G1は、第2内外差G2よりも大きくてもよい。
【0043】
前述したように、セラミック部材1は加熱や冷却により発生する表面部と内部との温度差に起因してクラックが発生することがある。基体10の角部は、特に大きな熱衝撃が集中しやすい。第1内外差G1が第2内外差G2よりも大きいと基体10の角部にクラックや割れが生じることを好適に低減することができる。言い換えると、このような構成を有すると角部における熱膨張差がより小さいため角部にクラックや割れが生じることを好適に低減することができる。
【0044】
なお、
図5では、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の最大値(C10)と、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の最大値(C8)との差を第1内外差G1としたが、これに限らず、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の平均値と、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の平均値との差を第1内外差G1としてもよい。同様に、
図4では、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の最大値(C5)と、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の最大値(C3)との差を第2内外差G2としたが、これに限らず、第1ホウ素含有層21におけるホウ素含有量の平均値と、第2ホウ素含有層22におけるホウ素含有量の平均値との差を第2内外差G2としてもよい。
【0045】
図6は、
図3に示す位置P1および位置P2間におけるホウ素含有量の変化の他の一例を示すグラフである。
【0046】
図4で示した実施形態では、内壁面側のホウ素含有量が外壁面側のホウ素含有量よりも多い場合の例について説明した。これに限らず、たとえば
図6に示すように、基体10は、内壁面側のホウ素含有量が外壁面側のホウ素含有量より少なくてもよい。この場合でも、前述と同様に、実施形態に係るセラミック部材1は、強度や耐熱衝撃性を高めることができる。
【0047】
また、
図6に示すように、第2ホウ素含有層22の内部22bにおけるホウ素含有量は、第2ホウ素含有層22の表層部22aにおけるホウ素含有量よりも多くてもよい。係る構成により、セラミック部材1が外壁面側から急速に冷却された場合であっても、外壁面側の熱収縮が低減されることから、外壁面側を起点としてクラックが入りにくい。
【0048】
図7は、実施形態に係るセラミック部材の他の一例を示す模式的な縦断面図である。また、
図8は、
図7に示す位置P5および位置P6間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【0049】
図7に示すように、基体10は、上述した第1ホウ素含有層21および第2ホウ素含有層22のうち、第1ホウ素含有層21のみを有する構成であってもよい。すなわち、基体10は、第2ホウ素含有層22を有していなくてもよい。
【0050】
この場合、
図8に示すように、基体10のホウ素含有量は、内壁面側部R1が最も多く、次いで内部R2が多く、外壁面側部R3が最も少なくなる。また、この場合、外壁面側部R3のホウ素含有量の最小値(少なくとも外壁面側の最表面におけるホウ素含有量)は0であってもよい。
【0051】
図9は、実施形態に係るセラミック部材1の他の一例を示す模式的な縦断面図である。また、
図10は
図9に示す位置P7および位置P8間におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
【0052】
図9に示すように、基体10は、上述した第1ホウ素含有層21および第2ホウ素含有層22のうち、第2ホウ素含有層22のみを有する構成であってもよい。すなわち、基体10は、第1ホウ素含有層21を有していなくてもよい。
【0053】
この場合、
図10に示すように、基体10のホウ素含有量は、外壁面側部R3が最も多く、次いで内部R2が多く、内壁面側部R1が最も少なくなる。また、この場合、内壁面側部R1のホウ素含有量の最小値(少なくとも外壁面側の最表面におけるホウ素含有量)は0であってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、基体10が容器形状を有する場合の例について説明したが、基体10の形状は、必ずしも容器形状であることを要しない。
図11および
図12は、別の実施形態に係るセラミック部材1の模式的な縦断面図である。
【0055】
たとえば、
図11に示すように、基体10の形状は、板状であってもよい。基体10が板状である場合のセラミック部材1の用途としては、たとえば鋼材の冷却床、鋼材の冷却床に取り付けるブレーキングブレード、溶融金属炉や溶鉱炉の高熱遮断用の仕切壁、溶融金属炉のフタ、焼却炉の火炎用耐火板や仕切壁などが挙げられる。板状の基体10は、たとえば貫通孔、凹部および凸部等を有していてもよい。
【0056】
図11に示すセラミック部材1は、第1面11aの第1ホウ素含有量が、第2面11bの第2ホウ素含有量より多くてもよい。
【0057】
また、
図11に示すセラミック部材1は、基体10の内部におけるホウ素含有量が、第1面11aのホウ素含有量および第2面11bのホウ素含有量よりも少なくてもよい。
【0058】
図11では、セラミック部材1が、基体10の第1面11aおよび第2面11bの両方にホウ素含有層20を有する場合の例を示したが、セラミック部材1は、第1面11aおよび第2面11bのいずれか一方のみにホウ素含有層20を有していてもよい。
【0059】
図12に示すように、基体10の形状は、筒状であってもよい。基体10が筒状である場合のセラミック部材1の用途としては、たとえば、熱電対保護管、キルン炉本体、溶融金属用の湯道、溶融金属用のノズル、溶融金属用のストーク、金属材質が使えない耐食性廃熱管などが挙げられる。
図12に示した例では、両端が開口した筒形状を示しているが、基体10は、一方の端部が塞がった所謂有底筒形状を有していてもよい。また、基体10は、たとえば貫通孔、凹部および凸部等を有していてもよい。
【0060】
図12に示すセラミック部材1は、外壁面である第2ホウ素含有層22のホウ素含有量が、内壁面である第1ホウ素含有層21のホウ素含有量より多くてもよい。
【0061】
たとえば、
図12に示すセラミック部材1が、外壁面側から加熱された場合、すなわち、外壁面側が内壁面側よりも温度が高くなる場合を想定する。
【0062】
外壁面側のホウ素含有量が内壁面側のホウ素含有量よりも多い場合、外壁面側の熱膨張係数が内壁面側の熱膨張係数よりも小さくなる。外壁面側は内壁面側よりも熱膨張しようとするものの、外壁面側の熱膨張係数が相対的に小さいことから、外壁面側と内壁面側との熱膨張の差が小さくなる。これにより、セラミック部材1の耐熱衝撃性が向上し、クラックや割れが生じにくくなる。
【0063】
また、ホウ素含有量が相対的に多い外壁面側は、内壁面側と比べて焼成時に収縮しにくい。一方、ホウ素含有量が相対的に少なく内壁面側は、外壁面側と比べて焼成時に収縮しやすい。これらの収縮差によって、焼成後、セラミック部材1の外壁面側には、圧縮応力が残留している。このように、セラミック部材1は、外壁面側に圧縮応力が残留していることで、耐熱部材1の機械的強度が向上し、耐熱衝撃性が向上する。
【0064】
図12に示すセラミック部材1は、外壁面である第2ホウ素含有層22のホウ素含有量が、内壁面である第1ホウ素含有層21のホウ素含有量より少なくてもよい。
【0065】
たとえば、
図12に示すセラミック部材1が、内壁面側から加熱された場合、すなわち、内壁面側が外壁面側よりも温度が高くなる場合を想定する。
【0066】
内壁面側のホウ素含有量が外壁面側のホウ素含有量よりも多い場合、例えば、内部に高温の物体を入れるような用途に適している。
【0067】
また、
図12に示すセラミック部材1は、基体10の内部におけるホウ素含有量が、基体10の内壁面側および外壁面側のホウ素含有量より少なくてもよい。
【実施例】
【0068】
(製造方法)
次に、容器形状のセラミック部材1の製造方法の一例について説明する。
【0069】
まず、ホウ酸濃度の異なる複数の溶液を準備する。溶液の溶媒としては、たとえば水または有機溶剤(ジメチルスルホキシドなど)が用いられる。なお、溶液の粘度が低い場合には、ポリエチレングリコールなどの増粘作用がある有機化合物を添加してペースト状にしてもよい。
【0070】
また、公知の方法にて、有機バインダを含むアルミナ顆粒を作製する。アルミナ顆粒は、公知の焼結助剤、例えばMgO,SiO2,CaOを含有する。ただし、顆粒中にホウ酸は含まれない。
【0071】
つづいて、ホウ酸を含まないアルミナ顆粒(ただし、焼結助剤は含む)を用いて、金型を用いたプレス成形などの公知の成形方法により、アルミナからなる容器形状の生成形体を作製する。
【0072】
つづいて、生成形体の内壁面側と外壁面側の各々に対し、濃度の異なるホウ酸溶液を塗布する。塗布方法としては、たとえば、スプレーによる噴霧が用いられ得る。なお、内壁面側または外壁面側の一方にのみホウ酸溶液を塗布してもよい。
【0073】
生成形体にホウ酸溶液を塗布することで、ホウ酸溶液が生成形体の表面から生成形体の内部に浸透していく。この結果、ホウ酸を塗布した面側のホウ酸の濃度は、生成形体の内部のホウ酸の濃度よりも高くなる。その後、生成形体を乾燥させる。
【0074】
なお、内壁面側または外壁面側の一方にのみホウ酸溶液を塗布した場合には、内壁面側または外壁面側の一方のホウ素含有量はゼロとなる。
【0075】
その後、生成形体を、脱脂し、1200℃以上1400℃以下の温度で焼成する。これにより、容器形状の緻密質アルミナ焼結体が得られる。
【0076】
得られた緻密質アルミナ焼結体の形状および寸法は、次の通りである。
形状:直方体の一つの面に開口部を設けた形状
側壁面の寸法(外寸):27mm×44mm
底壁面の寸法(外寸):27mm×44mm
側壁面の高さ(底面から開口部まで):44mm
壁の厚み:3mm
【0077】
図13は、ロットL11~L16に対する耐熱衝撃性の試験結果を示す表である。ロットL11は、ホウ酸溶液を塗布しなかったロットであり、比較例に相当する。ロットL12~L16は、ホウ酸溶液を塗布したロットであり、実施例に相当する。
【0078】
ロットL11の製造方法は、上述した容器形状の緻密質アルミナ焼結基体の製造方法のうち、ホウ酸溶液の塗布を省略したものである。
図13に示すように、ロットL11は、内壁側および外壁側ともにホウ酸溶液の塗布回数は0回であり、平均ホウ素含有量は、0質量%である。
【0079】
ロットL12~L16の製造方法は、上述した容器形状の緻密質アルミナ焼結基体の製造方法の通りである。ただし、塗布するホウ酸溶液の濃度およびホウ酸溶液の塗布回数は、ロットL12~L16で異なる。
【0080】
具体的には、ロットL12は、塗布したホウ酸溶液の濃度が内壁側で4g/100mL、外壁面側で1g/100mLであり、塗布回数が内壁側および外壁側ともに4回である。ロットL13は、塗布したホウ酸溶液の濃度が内壁側で8g/100mL、外壁面側で2g/100mLであり、塗布回数が内壁側および外壁側ともに3回である。ロットL14は、塗布したホウ酸溶液の濃度が内壁側で8g/100mL、外壁面側で2g/100mLであり、塗布回数が内壁側および外壁側ともに3回である。ロットL15は、塗布したホウ酸溶液の濃度が内壁側で11g/100mL、外壁面側で3g/100mLであり、塗布回数が内壁側および外壁側ともに3回である。ロットL16は、塗布したホウ酸溶液の濃度が内壁側で11g/100mL、外壁面側で3g/100mLであり、塗布回数が内壁側および外壁側ともに4回である。
【0081】
ロットL12~L16の平均ホウ素含有量は、ロットL12が0.47質量%、ロットL13が0.65質量%、ロットL14が0.79質量%、ロットL15が1.06質量%、ロットL16が1.16質量%であった。また、ロットL12~L16のかさ密度は、いずれも3.2g/cm3以上であった。
【0082】
(耐熱衝撃性試験について)
試料形状は、3mm×4mm×50mmの焼結体とした。焼結体は、未研磨であり、焼成した後の試料をそのまま試験で使用した。
【0083】
試料を加熱し、一定温度(仮にT2(℃)とする。)で10分間保持する。T2(℃)で保持した状態から、試料をT1=25℃の水中に投下する。水中に投下されると、試料に熱衝撃がかかる。水中に投下した試料を回収し、乾燥後、3点曲げ強度を測定する。このとき、3点曲げ強度の測定方法は、試料が3mm×4mm×50mmの焼結体(未研磨であり、焼成した後の試料をそのまま試験で使う。)であること以外は、JIS R1601-2008に準拠した、室温(25℃)での3点曲げ強度と同様である。T2(℃)を上げていき、3点曲げ強度が急激に低下し始める直前の温度差(T2-T1(℃))を、耐熱衝撃性を有する温度とする。
【0084】
図13に示すように、耐熱衝撃性試験の結果(耐熱衝撃温度)は、ロットL11が201℃、ロットL12が208℃、ロットL13が227℃、ロットL14が241℃、ロットL15が260℃、ロットL16が287℃であった。
【0085】
このように、ホウ素を含有するロットL12~L16の耐熱衝撃温度は、ホウ素を含有しないロットL11と比較していずれも高い結果となった。この結果から、ホウ素を含有するセラミック部材は、ホウ素を含有しないセラミック部材よりも耐熱衝撃性が高いことがわかる。また、ロットL12~L16の試験結果から明らかなように、平均ホウ素含有量が多くなるほど、耐熱衝撃性が向上することがわかる。
【0086】
図14は、ロットL14の側壁部の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。また、
図15は、ロットL14の底壁の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。また、
図16は、ロットL14の角部の厚み方向におけるホウ素含有量の変化を示すグラフである。
図14~
図16に示すグラフでは、内壁面側から外壁面側に向かう方向における距離を横軸とし、ホウ素のB
2O
3換算での含有量を縦軸としている。
【0087】
図14~
図16に示すように、側壁(第1壁部)、底壁(第2壁部)および角部のいずれにおいても、内壁面と外壁面とでホウ素含有量に差が生じた。具体的には、比較的高濃度のホウ酸溶液を塗布した内壁面側におけるホウ素含有量が、比較的低濃度のホウ酸溶液を塗布した外壁面側におけるホウ素含有量よりも多くなった。また、内部におけるホウ素含有量は、内壁面側および外壁面側におけるホウ素含有量よりも少なかった。また、角部におけるホウ素含有量の内外差(
図16参照)は、角部以外の領域におけるホウ素含有量の内外差(
図14および
図15参照)よりも大きかった。
【0088】
(予備実験)
予備実験として、生成形体にホウ酸溶液を塗布する手法ではなく、原料粉末にホウ酸粉末を混ぜることによってホウ素を含有する緻密質アルミナ結晶体を製造した。そして、製造した試料について耐熱衝撃試験を行った。
【0089】
予備実験における試料の製造方法は次の通りである。Al2O3粉末と、公知の焼結助剤としてSiO2粉末、MgO粉末およびCaCO3粉末と、B2O3粉末とを混合する。次いで、混合した粉末を粉砕、造粒、容器形状に成形した後、1350℃で2時間焼成する。これにより、緻密質アルミナ結晶体を得た。
【0090】
得られた緻密質アルミナ結晶体の形状および寸法は、次の通りである。
形状:直方体の一つの面に開口部を設けた形状
側壁面の寸法(外寸):27mm×44mm
底壁面の寸法(外寸):27mm×44mm
側壁面の高さ(底面から開口部まで):44mm
壁の厚み:3mm
【0091】
図17は、予備実験における各試験結果をまとめた表である。また、
図18は、予備実験における3点曲げ強度の試験結果を示すグラフである。
図19は、予備実験における平均熱膨張係数の試験結果を示すグラフである。また、
図20は、予備実験における耐熱衝撃性の試験結果を示すグラフである。
【0092】
図17に示すように、予備実験ではロットL21~L24の4つを作成した。ロットL21は、AlのAl
2O
3換算での含有量が74質量%、SiのSiO
2換算での含有量が18.4質量%、MgのMgO換算での含有量が2.5質量%、CaのCaO換算での含有量が5質量%、BのB
2O
3換算での含有量が0.1質量%である。ロットL22は、AlのAl
2O
3換算での含有量が73.6質量%、SiのSiO
2換算での含有量18.4質量%、MgのMgO換算での含有量が、2.5質量%、CaのCaO換算での含有量が5質量%、BのB
2O
3換算での含有量が0.5質量%である。ロットL23は、AlのAl
2O
3換算での含有量が73質量%、SiのSiO
2換算での含有量が18.4質量%、MgのMgO換算での含有量が2.5質量%、CaのCaO換算での含有量が5質量%、BのB
2O
3換算での含有量が1.1質量%である。ロットL24は、AlのAl
2O
3換算での含有量が72.1質量%、SiのSiO
2換算での含有量が18.4質量%、MgのMgO換算での含有量が2.5質量%、CaのCaO換算での含有量が5質量%、BのB
2O
3換算での含有量が2.0質量%である。
【0093】
これらロットL21~L24について、かさ密度、ヤング率、3点曲げ強度、25℃以上400℃以下における平均熱膨張係数、耐熱衝撃温度の測定を行った。結果は、以下の通りである。
【0094】
<ロットL21>
かさ密度:3.3g/cm3
ヤング率:205GPa
3点曲げ強度:219MPa
平均熱膨張係数:6.4×10-6/℃
耐熱衝撃温度:195℃
【0095】
<ロットL22>
かさ密度:3.3g/cm3
ヤング率:207GPa
3点曲げ強度:293MPa
平均熱膨張係数:6.1×10-6/℃
耐熱衝撃温度:241℃
【0096】
<ロットL23>
かさ密度:3.3g/cm3
ヤング率:199GPa
3点曲げ強度:337MPa
平均熱膨張係数:5.8×10-6/℃
耐熱衝撃温度:273℃
【0097】
<ロットL24>
かさ密度:3.3g/cm3
ヤング率:190GPa
3点曲げ強度:360MPa
平均熱膨張係数:5.6×10-6/℃
耐熱衝撃温度:290℃
【0098】
以上の結果から明らかなように、ホウ素のB
2O
3換算含有量が増加するにつれて3点曲げ強度が増加し(
図18参照)、熱膨張係数が小さくなり(
図19参照)、耐熱衝撃温度が上昇した(
図20参照)。また、ロットL21~L24のいずれについても、かさ密度は3.2g/cm
3以上であった。すなわち、ロットL21~L24は、いずれも緻密体であることがわかる。
【0099】
上述したように、実施形態に係るセラミック部材(一例として、セラミック部材1)は、セラミックスからなる基体(一例として、基体10)を有する。基体は、少なくとも第1面11aまたは第2面11b(一例として、外壁面または内壁面)にホウ素含有層一例として、ホウ素含有層20を有する。
【0100】
したがって、実施形態によれば、耐熱衝撃性に優れたセラミック部材を提供することができる。セラミック部材は、特に耐熱部材として好適に用いることができる。
【0101】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 セラミック部材
10 基体
11 第1壁部
11a 第1面、内壁面
11b 第2面、外壁面
11c 第3面、上面
12 第2壁部
13 開口部
14 第1角部、内壁面側角部
15 第2角部、外壁面側角部
20 ホウ素含有層
21 第1ホウ素含有層
21a 表層部
21b 内部
22 第2ホウ素含有層
22a 表層部
22b 内部
R1 内壁面側部
R2 内壁面側部と外壁面側部との間の領域
R3 外壁面側部