(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】装置、コンピュータで実施される方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20250307BHJP
【FI】
A61B34/35
(21)【出願番号】P 2023562330
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 GB2022050906
(87)【国際公開番号】W WO2022219315
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-11-22
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522063697
【氏名又は名称】プレシジョン ロボティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】カメドラ マルゴルザタ
(72)【発明者】
【氏名】リン チャン
(72)【発明者】
【氏名】リュー ジンドン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-510489(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125398(WO,A1)
【文献】特開2020-048708(JP,A)
【文献】特開2008-228967(JP,A)
【文献】特開2020-022806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0055195(US,A1)
【文献】特開2015-163413(JP,A)
【文献】特開2001-145638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
少なくとも1つのプロセッサと、
コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリーとを備え、前記少なくとも1つのメモリー及びコンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つのプロセッサで、前記装置に、
ロボット器具を遠隔制御するように構成された受動コントローラから再較正コマンドを受信し、前記受動コントローラ及びロボット器具は、それぞれの制御作業空間及び器具作業空間内で自由に移動することができ、前記制御作業空間は、前記受動コントローラが前記制御作業空間内で移動するときに前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラの位置を追跡できるようにするために、前記器具作業空間にマッピングされ
、そして前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラに対応できないときに前記受動コントローラからの再較正コマンドの発信を許容することと、
前記受動コントローラの現在の位置が前記ロボット器具の現在の位置に対応するように、前記再較正コマンドに応じて前記器具作業空間への前記制御作業空間のマッピングを再較正することを行わせるように構成されている、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記受動コントローラは
、前記ロボット器具と前記受動コントローラとがつながれた状態と、前記ロボット器具と前記受動コントローラとがつながれていない状態とを選択的に取ることができ、前記ロボット器具と前記受動コントローラとがつながれていない状態において、前記器具作業空間内の前記ロボット器具の位置に対応する変化を生じさせることなく、前記制御作業空間内の前記受動コントローラの位置が変化することを可能にするように構成され、前記再較正コマンドは、
前記ロボット器具と前記受動コントローラとがつながれた状態となったときに、又はその後
前記ロボット器具と前記受動コントローラとがつながれていない状態となったときに、前記受動コントローラから受信される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、前記受動コントローラの位置に対する前記ロボット器具の位置の追跡
が開始されると、前記受動コントローラから
前記再較正コマンドを受信
する、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記追跡の中断後に前記受動コントローラの位置に対する前記ロボット器具の位置の
前記追跡
が再開
されると、前記受動コントローラから
前記再較正コマンドを受信
する、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ロボット器具の
姿勢は、前記受動コントローラの
姿勢を追跡し、前記装置は、
前記受動コントローラの位置に対する前記ロボット器具の位置の前記追跡が開始されると、又は、前記追跡の中断後に前記受動コントローラの位置に対する前記ロボット器具の位置の追跡が再開されると、前記ロボット器具の
姿勢が前記受動コントローラの
姿勢に合わせられるように、前記ロボット器具の
姿勢を自動制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記自動制御を可能にするために、前記受動コントローラの現在の
姿勢に基づいて、前記器具作業空間内の前記ロボット器具の移動の軌跡を決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記受動コントローラの現在の
姿勢が変化すると、前記移動の軌跡を再決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ロボット器具は、初期姿勢と1つ又は複数の更なる姿勢との間で再配置するように構成され、前記装置は、前記ロボット器具の配置がリホーミング機構の起動時に前記1つ又は複数の更なる姿勢から前記初期姿勢に戻るように、前記ロボット器具の配置を自動制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記ロボット器具の位置合わせ
または配置中に前記ロボット器具の移動の速度を所定の大きさに制限するように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、
前記自動制御を停止するオーバーライドコマンドを受信すると、又は位置合わせ
または配置が完了すると、前記ロボット器具の
前記自動制御を停止するように構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記受動コントローラは、ユーザの存在又は不在を検出するように構成された近接センサを備え、前記装置は、前記近接センサがユーザの存在を検出した場合にのみ、前記受動コントローラの位置に対する前記ロボット器具の位置の
前記追跡を開始するように構成されている、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記近接センサがユーザの不在を検出したときに、前記ロボット器具が前記受動コントローラの位置を追跡するのを停止するように構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記受動コントローラは、器具作業空間及び制御作業空間の表現を表示するように構成された電子表示画面を備え、前記装置は、前記ロボット器具及び受動コントローラの現在の位置及び/又は
姿勢がそれぞれの器具作業空間及び制御作業空間の表現内で示されるように、電子表示画面を制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記現在の位置及び/又は
姿勢が2次元又は3次元で示されるように、電子表示画面を制御するように構成されている、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記受動コントローラ及びロボット器具の現在の位置及び/又は
姿勢は、それぞれ、前記装置に対する前記受動コントローラ及びロボット器具の
前記現在から遡った期間において直近に知られた位置及び/又は
姿勢である、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記ロボット器具はエンドエフェクタを備え、
前記ロボット器具の現在の位
置は、前記エンドエフェクタの現在の位
置であり、及び/又は、前記ロボット器具の現在の姿勢は、前記エンドエフェクタの現在の姿勢である、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ロボット器具は、手術用ロボット器具である、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、受動コントローラ及び/又はロボット器具を備える、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
コンピュータで実施される方法であって、
ロボット器具を遠隔制御するように構成された受動コントローラから再較正コマンドを受信することであって、前記受動コントローラ及びロボット器具は、それぞれの制御作業空間及び器具作業空間内で自由に移動することができ、前記制御作業空間は、前記受動コントローラが前記制御作業空間内で移動するときに前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラの位置を追跡できるようにするために、前記器具作業空間にマッピングされ
、そして前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラに対応できないときに前記受動コントローラからの再較正コマンドの発信を許容するステップと、
前記受動コントローラの現在の位置が前記ロボット器具の現在の位置に対応するように、前記再較正コマンドに応じて前記器具作業空間への前記制御作業空間のマッピングを再較正するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19の方法を実行するように構成されたコンピュータコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、遠隔制御ロボットシステムに関し、特に、受動コントローラに対するロボット器具の追跡を再較正するための装置、関連方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔制御ロボットシステムは、様々な応用、特に、人間のアクセス、安全性、又はその両方が制限される用途に使用されている。例えば、遠隔制御ロボットシステムは、手術部位へのアクセスが自然の空洞及び/又は小さな切開部に制限される最小侵襲外科手術で使用されている。人間の手は、そのような領域にアクセスするには大き過ぎるため、代わりに外科医によって遠隔制御される小型ロボットが使用される場合がある。遠隔制御ロボットシステムは、安全な距離からロボットを遠隔操作できる爆弾処理などの軍事応用でも使用される。
【0003】
以下、本発明を主に手術用ロボットシステムに関連して説明する。しかしながら、これは、例示のみを目的としており、他の分野における本発明の応用を排除するものではない。
【0004】
既知の遠隔制御される手術用ロボットシステムは、ユーザがコントローラを操縦することによりロボット器具にコマンドを発行できるコントローラとロボット器具を含む。既知のコントローラは、ベースと、ベースに結合され複数のジョイント(例えば、回転可能なジョイント又は直進ジョイント)を備える関節運動可能なアームと、関節運動可能なアームに結合されジョイントの動きによってベースに対して可動であるハンドルとを備える。既知のロボット器具は、ベースと、ベースに結合され複数のジョイントを備える作動可能なアームと、作動可能なアームに結合されジョイントの動きによってベースに対して作動可能なエンドエフェクタとを備える。
【0005】
コントローラとロボット器具、特に、ハンドルとエンドエフェクタはそれぞれ、それぞれの制御作業空間と器具作業空間内で自由に移動することができる。さらに、ハンドルとエンドエフェクタはそれぞれ、3軸に沿った並進運動及び3軸を中心とした回転運動を含む、それぞれの作業空間内の移動の6つの自由度を有することがある。ハンドルとエンドエフェクタは、並進運動に依存するそれぞれの作業空間内の位置と、回転運動に依存するそれぞれの作業空間に対する向きを有すると見なすことができる。さらに、ハンドル又はエンドエフェクタの位置と向きは、組み合わせてハンドル又はエンドエフェクタの姿勢と見なすことができる。
【0006】
ユーザは、コントローラの作業空間内でハンドルの位置及び向き(以下において、「姿勢」を意味することがある)を操作でき、その操作は、関節運動可能なアームにおける各ジョイントの動きの測定により追跡することができる。操作は、コントローラの作業空間内でのハンドルの操作に対応して器具作業空間で運動するように、ロボット器具、特に、作動可能なアームのジョイントが作動するためのコマンドに変換することができる。
【0007】
既知のコントローラは、ロボットシステムが使用されるとき、コントローラの各ジョイントを回転させるのに必要なトルクがユーザからの入力により能動的に変化することを意味する能動コントローラである。例えば、ユーザがコントローラを放した場合、ユーザが最後に操作した位置及び向きにハンドルが保持されるように、ジョイントの各々のトルクが変更されてもよい。言い換えれば、ユーザが更なる入力を提供しない限り、コントローラはフリーズする。ひいては、ロボット器具もフリーズする。
【0008】
さらに、ロボット器具の移動がその利用可能な作業空間によって制限される場合、例えば、特定の点を超えるジョイントの回転を制限することにより、対応する制限をコントローラに強制することができる。これにより、コントローラがロボット器具から位置ずれすることが防止される。
【0009】
しかしながら、コントローラにおける各ジョイントのトルクを能動的に変化させるには、コントローラがサーボモータなどの高価で嵩張るコンポーネントを備える必要がある。したがって、既知の能動コントローラは製造コストが高く、携帯性に欠けている。さらに、コントローラのジョイントにおけるトルクの能動的な変化は、ユーザを望ましくない及び/又は不自然な位置に誘導する可能性があり、ユーザをイライラさせたり、エラーを引き起こしたりする可能性がある。
【0010】
本明細書における以前に出版された文書又は任意の背景のリスト又は議論は、必ずしもその文書又は背景が最先端技術の一部であるか、又は共通の一般知識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。本開示の1つ以上の態様/実施形態は、1つ以上の背景問題に対処する場合もあれば、対処しない場合もある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、装置が提供される。この装置は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリーとを備え、前記少なくとも1つのメモリーとコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのプロセッサで、前記装置に、ロボット器具を遠隔制御するように構成された受動コントローラから再較正コマンドを受信し、前記受動コントローラ及びロボット器具は、それぞれの制御作業空間及び器具作業空間内で自由に移動することができ、前記制御作業空間は、前記受動コントローラが前記制御作業空間内で移動するときに前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラの位置を追跡できるようにするために、前記器具作業空間にマッピングされ、そして前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラに対応できないときに前記受動コントローラからの再較正コマンドの発信を許容することと、前記受動コントローラの現在の位置が前記ロボット器具の現在の位置に対応するように、前記再較正コマンドに応じて前記器具作業空間への前記制御作業空間のマッピングを再較正することを行わせるように構成されている。
【0012】
受動コントローラは、能動コントローラのようにジョイントを回転させるのに必要なトルクを能動的に変化させることなく、自由に移動可能なジョイントを備えるコントローラである。受動コントローラは、サーボモータなどの高価で重く、及び/又は嵩張るコンポーネントを必要としないため、製造コストが安く、小型軽量であるという点で、既知の能動コントローラよりも有利である可能性がある。さらに、ジョイントトルクの能動的な変化がないため、ユーザの移動は次善の又は意図しないコマンドが関連するロボット器具に送信される可能性のある不快又は不自然な姿勢に偏ることがない。
【0013】
しかしながら、受動コントローラのユーザは、作業空間内で人為的な制限なしに自由に受動コントローラを操作するため、受動コントローラは、関連するロボット器具からの位置ずれを引き起こす位置に移動する可能性がある。例えば、制御作業空間と器具作業空間との違いにより、ロボット器具が器具作業空間内で複製できない制御作業空間内の位置に受動コントローラを移動させる可能性がある。また、ロボット器具が作業空間内で移動できる速度は、安全上の理由などにより制限される場合があり、受動コントローラのユーザは、制御作業空間内で受動コントローラを移動させる速度が速すぎて、ロボット器具が器具作業空間内でミラーリングできない可能性がある。
【0014】
受動コントローラの位置がロボット器具の位置とずれると、制御作業空間における受動コントローラの移動が器具作業空間におけるロボット器具によって正確にミラーリングされなくなる可能性があるため、ユーザは、ロボット器具を正確に制御し続けることが困難になる可能性がある。言い換えれば、受動コントローラの位置がロボット器具の位置に対して位置ずれすると、ロボット器具の制御が直感的でなくなる可能性がある。
【0015】
本発明により、受動コントローラの現在の位置がロボット器具の現在の位置に対応するように、器具作業空間に対する制御作業空間のマッピングが再較正されてもよい。従って、受動コントローラの位置はロボット器具の位置と再位置合わせされ、ユーザは、ロボット器具をより容易に正確に制御することができる。
【0016】
本発明の実施形態では、受動コントローラは、器具作業空間内のロボット器具の位置に対応する変化を引き起こすことなく、制御作業空間内の受動コントローラの位置を変化させることを可能にするように構成されたクラッチ機構を備えてもよく、再較正コマンドは、クラッチ機構が係合されたときに、又はその後係合が解除されたときに受動コントローラから受信されてもよい。すなわち、再較正コマンドは、ロボット器具と受動コントローラとがつながれた状態となったときに、又はその後ロボット器具と受動コントローラとがつながれていない状態となったときに、受動コントローラから受信されてよい。
【0017】
本発明のこのような実施形態では、受動コントローラのユーザは、クラッチ機構を係合して、器具作業空間内のロボット器具の対応する並進運動を引き起こす制御作業空間内の受動コントローラの並進運動を停止することができる。言い換えれば、クラッチ機構が係合されている間、ロボット器具は、その間に受動コントローラの位置が変化したとしても、クラッチ機構の係合の前に作動した最後の位置を保持する。
【0018】
これは、受動コントローラのユーザが制御作業空間内のより快適な、又は簡単にアクセスできる位置に制御を移動させたいが、ロボット器具を器具作業空間内の同じ位置に維持したい場合に有利となり得る。クラッチ機構により、ユーザはロボット器具の制御から休憩を取ることもできる。例えば、長い外科手術中に外科医は、非常に精密な動きを実行したり、手術チームの他のメンバーに情報や指示を伝えたりするために使用されている筋肉をリラックスさせるために休憩を取りたい場合がある。
【0019】
受動コントローラが制御作業空間内で可動である一方、ロボット器具は器具作業空間内で静止しているため、受動コントローラは、クラッチ機構の係合中にロボット器具に対して位置ずれする可能性が高い。しかしながら、クラッチ機構が係合され/係合が解除されたときに器具作業空間への制御作業空間のマッピングを再較正することにより、受動コントローラの位置がロボット器具の位置に再位置合わせされる。これは、クラッチ機構が係合されている間にユーザが受動コントローラの位置に加えた変更は、クラッチ機構の係合が解除されるとユーザがロボット器具を制御できる精度や直観性にほとんど影響を及ぼさないことを意味する。
【0020】
本発明の実施形態では、受動コントローラは、受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の追跡を開始するように構成された係合機構を備えてもよく、再較正コマンドは、係合機構の起動時に受動コントローラから受信されてもよい。すなわち、前記装置は、受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の追跡が開始されると、受動コントローラから再較正コマンドを受信してよい。
【0021】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の操作がユーザによって最初に開始される場合、制御作業空間は、受動コントローラの現在の位置がロボット器具の開始位置に対応するように、器具作業空間にマッピングされてもよい。従って、係合機構は、ユーザがロボット器具の制御を開始するときに受動コントローラとロボット器具とが位置合わせされることを確保し、ユーザが受動コントローラを正確かつ直観的に制御できるようにする。
【0022】
本発明の実施形態では、受動コントローラは、追跡の中断後に受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の追跡を再開するように構成されたロック解除機構を備えてもよく、再較正コマンドは、ロック解除機構の起動時に受動コントローラから受信されてもよい。すなわち、前記装置は、前記追跡の中断後に受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の前記追跡が再開されると、受動コントローラから再較正コマンドを受信してよい。
【0023】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の操作が中断され、ユーザが操作を再開する場合、受動コントローラとロボット器具は、係合機構と同様にロック解除機構により位置合わせされてもよい。
【0024】
本発明の実施形態では、ロボット器具の向きは、受動コントローラの向きを追跡してもよく、装置は、係合又はロック解除機構の起動時に受動コントローラの向きに合わせられるように、ロボット器具の向きを自動制御するように構成されてもよい。すなわち、ロボット器具の姿勢は、受動コントローラの姿勢を追跡し、前記装置は、受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の前記追跡が開始されると、又は、前記追跡の中断後に受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の追跡が再開されると、ロボット器具の姿勢が受動コントローラの姿勢に合わせられるように、ロボット器具の姿勢を自動制御するように構成されていてよい。
【0025】
ロボット器具の操作が最初に開始されるか、受動コントローラを追跡するロボット器具における中断後に再開される場合、器具作業空間に対するロボット器具の向きは、制御作業空間に対する受動コントローラの向きとずれている可能性が高い。これを解決するために、係合又はロック解除機構の起動時に、装置は、ロボット器具の向きを自動制御して、ロボット器具の向きを受動コントローラの現在の向きに合わせることができる。
【0026】
受動コントローラの位置がロボット器具の位置に対応するように、器具作業空間への制御作業空間のマッピングの再較正と組み合わせると、受動コントローラ及びロボット器具の位置及び向きの両方を合わせることができる。それにより、ユーザがロボット器具の操作を開始又は再開するときにはいつでも、それらは、ロボット器具の位置及び向きを受動コントローラの位置及び向きに合わせて開始することができる。これにより、ユーザは、ロボット器具を快適且つ直観的に制御できることが保証される。
【0027】
本発明の実施形態では、装置は、前記自動制御を可能にするために、受動コントローラの現在の向きに基づいて器具作業空間ベース内のロボット器具の移動の軌跡を決定するように構成されてもよい。
【0028】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の向きが受動コントローラの向きとできるだけ近くに対応するように、ロボット器具を移動させるために軌跡を決定することができる。移動の軌跡に基づいて、ロボット器具の作動を駆動するモータにコマンドを発行することができ、それにより、ロボット器具が移動の軌跡に追従することになる。
【0029】
本発明の実施形態では、装置は、受動コントローラの現在の向きが変化するにつれて移動の軌跡を再決定するように構成されてもよい。
【0030】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の向きを、受動コントローラの古くて不正確な向きではなく、受動コントローラの現在の向きに合わせるために、移動の軌跡は、受動コントローラの現在の向きに基づいて更新される。従って、ロボット器具が自動的に移動している間に、受動コントローラの移動による向きのずれが発生しない。
【0031】
本発明の実施形態では、ロボット器具は、初期姿勢と1つ又は複数の更なる姿勢との間に再配置されるように構成されてもよく、装置は、リホーミング機構の起動時に1つ又は複数の更なる姿勢から初期姿勢に戻るように、ロボット器具の配置を自動制御するように構成されてもよい。
【0032】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の初期姿勢は、ロボット器具が非能動的であるときに保持されるロボット器具の一部を形成する各ジョイントの回転位置の組み合わせであってもよい。例えば、初期姿勢は、ロボット器具を手術部位に挿入したり手術部位から除去したりするのに有利なジョイントの真っ直ぐな配置に対応し得る。初期姿勢はまた、ロボット器具が器具作業空間内の任意の位置及び向きに容易に移動できるジョイントの中立的な配置に対応することもできる。
【0033】
リホーミング機構は、ロボット器具が使用中に移動させられた可能性のある任意の姿勢から、ロボット器具を自動的に初期姿勢に戻す手段を提供する。これは、例えば、外科医が外科手術を完了し、ロボット器具を手術部位から引き出す準備ができている場合、又は外科手術の一部を完了し、中立的な配置のロボット器具で次の段階の手術を開始したい場合に役立つことがある。
【0034】
本発明の実施形態では、ロボット器具の位置合わせまたは配置中に、装置は、ロボット器具の移動速度を所定の大きさに制限するように構成されてもよい。
【0035】
本発明のこのような実施形態では、ロボット器具の自動移動は、ユーザによる移動の適切な監視を可能にし、かつ安全でない移動が行われるリスクを低減する速度に制限されてもよい。
【0036】
本発明の実施形態では、装置は、前記自動制御を停止するオーバーライドコマンドを受信すると、又は位置合わせまたは配置が完了すると、ロボット器具の前記自動制御を停止するように構成されてもよい。
【0037】
本発明のこのような実施形態では、ユーザは、ロボット器具が所望の向き又は姿勢に達するまで自動制御を監視してもよく、その時点で自動制御は停止し、ユーザは制御を再び始めてもよい。自動制御中にロボット器具が移動している軌跡が安全でない可能性があるとユーザが考える場合、ユーザは、装置によって受信されたオーバーライドコマンドをトリガしてもよい。例えば、装置によって決定されるロボット器具の移動の軌跡は、ロボット器具を患者の軟組織に近づきすぎる可能性がある。オーバーライドコマンドにより自動制御が停止され、ユーザがロボット器具の制御を再び始めることができるようになる。これにより、例えば、ユーザは、ロボット器具を観察された危険から遠ざけるようにナビゲートすることができ、ロボット器具が安全な位置にあるように見えると、中断された位置合わせ又は配置プロセスはユーザにより再開できる。
【0038】
本発明の実施形態では、受動コントローラは、ユーザの存在又は不在を検出するように構成された近接センサを備えてもよく、装置は、近接センサがユーザの存在を検出した場合にのみ、受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の前記追跡を開始するように構成されてもよい。
【0039】
本発明のこのような実施形態では、近接センサは、ユーザの存在又は不在を検出するように適切に構成された任意の適切なタイプの近接センサであってもよい。例えば、受動コントローラは、受動コントローラを操作する際にユーザによって保持されるハンドを備えてもよい。近接センサは、ハンドルの一部を形成してもよく、ハンドルがユーザによって保持されるときを検出するように構成されてもよい。近接センサがユーザの存在を検出した場合にのみ、受動コントローラに対するロボット器具の追跡を開始するように構成された装置は、ロボット器具の潜在的に危険な対応する移動を引き起こす受動コントローラの偶発的な移動のリスクを低減することができる。
【0040】
本発明の実施形態では、装置は、近接センサがユーザの不在を検出したときに、ロボット器具が受動コントローラの位置を追跡するのを停止するように構成されてもよい。
【0041】
本発明のこのような実施形態では、ユーザの不在が検出された後の受動コントローラの移動は、ロボット器具によって追跡されない。これは、例えば、ユーザが誤って受動コントローラを落とした場合に特に役立つ。受動コントローラは能動的ではなく受動的であるため、ユーザにより落とされた場合に、重力によって動く。外科手術中に使用する場合、ロボット器具の対応する動きは患者に有害となる可能性がある。従って、ユーザの不在を検出したときに、受動コントローラに対するロボット器具の追跡を停止するように構成された装置は、ロボット器具の安全性を向上させることができる。
【0042】
本発明の実施形態では、受動コントローラは、器具作業空間と制御作業空間の表現を表示するように構成された電子表示画面を備えてもよく、装置は、ロボット器具及び受動コントローラの現在の位置及び/又は向きがそれぞれの器具作業空間及び制御作業空間の表現内で示されるように、電子表示画面を制御するように構成されてもよい。
【0043】
本発明のこのような実施形態では、ユーザは、それぞれの器具作業空間及び制御作業空間内のロボット器具及び受動コントローラの現在の位置及び/又は向きを監視すること、ならびに制御作業空間が器具作業空間にどうのようにマッピングされるかを監視することができる。これは、ロボット器具が操作可能な、ロック解除機構又はリホーミング機構を開始することが有益なタイミングをユーザに知らせることができる移動の自由度及び制限をユーザが理解するのに役立つ。また、これは、例えば、受動コントローラがロボット器具から位置ずれした場合や、クラッチ機構を係合する必要がある可能性のある場合をユーザが理解するのにも役立つ。
【0044】
本発明の実施形態では、装置は、現在の位置及び/又は向きが2次元又は3次元で示されるように、電子表示画面を制御するように構成されてもよい。
【0045】
本発明のこのような実施形態では、現在の位置及び/又は向きの2次元表現は、ユーザにとって理解しやすい場合があり、ロボット器具が実質的に2次元のみの移動に限定される場合に特に有用である可能性がある。一方、現在の位置及び/又は向きの3次元表現は、特に、ロボット器具が3次元で自由に移動できる場合に、ユーザにとってより有益である可能性がある。
【0046】
ロボット器具の位置(例えば、x-y座標平面上)及び受動コントローラは、それぞれの器具作業空間及び制御作業空間の2次元表現内の点によって示されてもよい。また、向きは、2次元又は3次元の点から放射状に延びる矢印によって示されてもよい。さらに、並進スライダーバーは、x-y座標平面に垂直な並進位置(z)を示すために使用されてもよい。
【0047】
本発明の実施形態では、受動コントローラ及びロボット器具の現在の位置及び/又は向きは、それぞれ、装置に対する受動コントローラ及びロボット器具の最後に(つまり、前記現在から遡った期間において直近に)知られた位置及び/又は向きであってもよい。
【0048】
本発明の実施形態では、ロボット器具はエンドエフェクタを備えてもよく、ロボット器具の現在の位置は、エンドエフェクタの現在の位置であり、及び/又は、前記ロボット器具の現在の姿勢は、前記エンドエフェクタの現在の姿勢であってもよい。
【0049】
本発明の実施形態では、ロボット器具は、手術用ロボット器具であってもよい。
【0050】
本発明の実施形態では、装置は、受動コントローラ及び/又はロボット器具を備えてもよい。
【0051】
本発明の第2の態様によれば、コンピュータで実施される方法が提供される。この方法は、ロボット器具を遠隔制御するように構成された受動コントローラから再較正コマンドを受信することであって、前記受動コントローラ及びロボット器具は、それぞれの制御作業空間及び器具作業空間内で自由に移動することができ、前記制御作業空間は、前記受動コントローラが前記制御作業空間内で移動するときに前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラの位置を追跡できるようにするために、前記器具作業空間にマッピングされ、そして前記ロボット器具の位置が前記受動コントローラに対応できないときに前記受動コントローラからの再較正コマンドの発信を許容するステップと、前記受動コントローラの現在の位置が前記ロボット器具の現在の位置に対応するように、前記再較正コマンドに応じて前記器具作業空間への前記制御作業空間のマッピングを再較正するステップと、を含む。
【0052】
本明細書で開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられない限り、又は当業者により理解されない限り、厳密な開示された順序で実行される必要はない。
【0053】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様による方法を実行するように構成されたコンピュータコードを含むコンピュータプログラム(キャリアに記録されても記録されなくてもよい)が提供される。
【0054】
本開示は、その組み合わせまたは単独で具体的に記載されているか否か(請求されたものを含む)に関わらず、1つ以上の対応する態様、例示的な実施形態又は特徴を単独で又は様々な組み合わせで含む。議論された機能のうちの1つ以上を実行するための対応する手段もまた、本開示の範囲内である。
【0055】
上記の概要は、単なる例示であり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
添付の図面を参照して、例としてのみ本発明の実施形態を説明する。
【
図1】本発明の第1の態様による装置の使用時の模式図である。
【
図2】
図1に示される装置の一部を形成する受動コントローラの模式図である。
【
図3】
図1の一部を形成するロボット器具の模式図である。
【
図4】再較正前の器具作業空間にマッピングされた制御作業空間の模式図である。
【
図5】再較正後の器具作業空間にマッピングされた制御作業空間の模式図である。
【
図6】
図1に示される装置によって実行可能なクラッチ動作の模式図である。
【
図7】
図1に示される装置によって実行可能な係合動作の模式図である。
【
図8】
図1に示される装置によって実行可能なロック解除動作の模式図である。
【
図10】
図9に示される任意関数に対する局所解のグラフ図である。
【
図11】異なる任意関数に対する制約付き解及び制約なし解のグラフ図である。
【
図12】異なる任意関数に対する制約付き解及び制約なし解のグラフ図である。
【
図13】異なる任意関数に対する制約付き解及び制約なし解のグラフ図である。
【
図14】
図1に示される装置によって実行可能なリホーミング動作の模式図である。
【
図15】
図6~8及び14に示される操作の組み合わせの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
まず
図1を参照すると、本発明の第1の態様による装置は、一般に参照番号2で指定されている。装置2は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリーとを備える。装置2は、患者8に外科手術を行うために手術室6でユーザ4によって使用される様子が示されている。従って、ユーザ4は外科医である可能性がある。
【0058】
本発明のこの実施形態では、装置2は、一対の受動コントローラ12(
図2により詳細に示す)、ビューポート14、及びペダル制御16を含む制御ステーション10をさらに備える。受動コントローラ12はそれぞれ、ユーザ4によってそれぞれの制御作業空間内で操作され得る。
【0059】
装置は、モニタ18と、一対のロボット器具22(そのうちの1つを
図3により詳細に示す)、ロボットプラットフォーム24及びロボットモータ26を含む手術用ロボット20とを備える。ロボット器具は、患者8の体内にロボット器具を位置決めするように配置されたロボットプラットフォーム24に取り付けられる。ロボットモータ26もロボットプラットフォーム24に取り付けられ、ロボット器具に動作可能に結合されて、それぞれの器具作業空間内でロボット器具の移動を駆動する。
【0060】
ビューポート14は、器具作業空間と制御作業空間の表現を表示するように構成された電子表示画面を備える。さらに、装置2は、ロボット器具及び受動コントローラ12の現在の位置及び/又は向きがそれぞれの器具作業空間と制御作業空間の表現内に示されるように、電子表示画面を制御するように構成されている。また、装置2は、現在の位置及び/又は向きが2次元又は3次元で示されるように、電子表示画面18を制御するように構成されている。
【0061】
受動コントローラ12及びロボット器具の現在の位置及び/又は向きは、それぞれ、装置に対する受動コントローラ12及びロボット器具の最後に知られた位置及び/又は向きである。
【0062】
内視鏡28もロボットプラットフォーム24に取り付けられ、患者9の体内に挿入される。内視鏡28は、使用中のロボット器具を含む外科手術の部位の画像を記録することができ、記録された画像は、制御ステーション10を介してビューポート14に送信され、電子表示画面上に表示されることができる。記録された画像は、制御作業空間及び器具作業空間の表現と並べて示すことができ、記録された画像に作業空間を重ねて示すことができる。モニタ18は、記録された画像、制御作業空間及び器具作業空間の表現、装置2の状態に関する情報、又はそれらの任意の適切な組み合わせを表示することができる。
【0063】
ここで、
図2を参照すると、各受動コントローラ12は、コントローラベース30と、コントローラベース30に結合され、複数のコントローラジョイント34を備える関節運動可能なアーム32と、関節運動可能なアーム32に結合され、グリッパ38を備えるハンドル36とを備える。コントローラジョイント34のそれぞれは自由に回転可能である。つまり、既知の能動コントローラにあるような、各ジョイントを回転させるのに必要なトルクを能動的に変化させる手段はない。それにより、ハンドル36は、ユーザ4によってそれぞれの制御作業空間内で自由に可動である(
図1に示す)。さらに、各受動コントローラ12、特に、各ハンドル36は、それぞれの制御作業空間内の位置及び制御作業空間に対する向きを有すると考えることができる。
【0064】
以下、単一の受動コントローラ12及び対応するロボット器具に関して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、装置は2つ以上の受動コントローラ及び対応する数のロボット器具を備え得ることを理解されたい。
【0065】
ここで、
図3を参照すると、
図1の患者8の体内に配置されたロボット器具と同等であるロボット器具22は、器具ベース40と、作動可能なアーム42と、エンドエフェクタ46とを備える。
【0066】
本発明のこの実施形態では、器具ベース40は、
図1に示されるロボットプラットフォーム24から延び、患者8に対する作動可能なアーム42及びエンドエフェクタ46の適切な位置決めを容易にすることができるシャフトである。作動可能なアーム42は、器具ベース40に結合され、複数の器具ジョイント44を備える。各器具ジョイント44は回転可能であり、回転は、器具プラットフォーム24から器具ベース40を通って延び、関連する器具ジョイント44に取り付けられるる腱を介して、
図1に示されるロボットモータ26の一部を形成するモータによって駆動され得る。エンドエフェクタ46は、作動可能なアーム42に結合され、1つ以上の器具ジョイント44の回転によって器具作業空間内で可動である。ロボット器具22の現在の位置及び/又は向きは、エンドエフェクタ46の現在の位置及び/又は向きを含む。
【0067】
エンドエフェクタ46はまた、開構成と閉構成との間で可動である一対の顎48を備える(
図3に示す)。顎48の開閉は、
図2に示される対応する受動コントローラ12のグリッパ38を操作することによって、ユーザ4により制御され得る。
【0068】
エンドエフェクタ46が可動な器具作業空間は、典型的には、ハンドル36が可動な制御作業空間とは規模が非常に異なる。さらに、作動可能なアーム42の器具ジョイント44の配置は、典型的には、関節運動可能なアーム32のコントローラジョイント34の配置とは非常に異なっている。これは、器具作業空間の形状が制御作業空間の形状と異なる場合が多いことを意味する。
【0069】
使用中、制御作業空間は器具作業空間にマッピングされ、受動コントローラ12がユーザによって制御作業空間内で移動するときに、ロボット器具22の位置が受動コントローラ12の位置を追跡できるようにする。しかしながら、上述した相違点により、制御作業空間を器具作業空間に常に完全にマッピングできるとは限らない。これは、ユーザ4が、器具作業空間内で移動するエンドエフェクタ46により複製できない制御作業空間内の位置にハンドル36を移動させることが可能であることを意味する。
【0070】
図4は、器具作業空間60に対してマッピングされた制御作業空間50の2次元表現を示す。この例では、制御作業空間50内の受動コントローラの現在の位置52は、器具作業空間60の外側にあり、器具作業空間60内のロボット器具の現在の位置62は、器具作業空間60の制限内にありながら、現在のコントローラ位置52に可能な限り近い。
【0071】
この状況では、ユーザは、矢印53で示すようにコントローラ位置52を現在の器具位置62に向かって右に移動させることができるが、器具は、同じ位置に留まる。従って、ユーザ4には、ロボット器具22がフリーズしたように見える可能性がある。
【0072】
装置2、特に、少なくとも1つのプロセッサ、メモリー及びコンピュータプログラムコードは、受動コントローラ12を介してユーザ4から再較正コマンドを受信し、受動コントローラ12の現在の位置52がロボット器具の現在の位置12に対応するように、再較正コマンドに応答して器具作業空間60への制御作業空間50のマッピングを再較正するように構成されている。
【0073】
図5は、再較正された器具作業空間への制御作業空間50のマッピングを示し、ここで、コントローラ位置52は、現在の器具位置62に対応する。ここで、ユーザ4が受動コントローラ12を矢印54で示すように右に移動させると、ロボット器具22が新たな器具位置に向かって移動し、それによりコントローラ位置を追跡するように、ロボット器具22の新たなコントローラ位置と軌跡に対応する新たな器具位置を計算することができる。
【0074】
図6は、器具作業空間60に対する制御作業空間50の再較正を装置2のクラッチ手順104にどのように組み込むことができるかを示す。通常制御102は、ロボット器具22が受動コントローラ12の位置と向きを追跡しているときの、通常の使用における装置2を表す。クラッチ手順104は、クラッチペダルを押すことによって、ユーザ4により開始することができる。
【0075】
図1に戻って参照すると、ペダル制御16は、クラッチ機構(図示せず)を備える。ユーザ4は、クラッチ機構を係合して、器具作業空間内のロボット器具22(
図3に示す)の位置に対応する変化を引き起こすことなく、制御作業空間内の受動コントローラ12の位置を変更することを可能にする。従って、クラッチ機構の係合により、必ずしも向きではなく、受動コントローラ12の位置を追跡することから、ロボット器具22の係合が解除される。クラッチされた制御の間、ロボット器具22の向きは、依然として受動コントローラ12の向きに応じて変化する可能性がある。
【0076】
本発明のこの実施形態では、クラッチ機構は、ユーザ4によって押されてクラッチ機構が係合され、次に離されてラッチ機構の係合が解除されるクラッチペダルを備える。しかしながら、本発明の他の実施形態では、クラッチ機構は、ボタン、トリガ、レバー、または音声コマンドシステムなど、ユーザによる係合及び係合解除のための任意の適切な手段を備えてもよい。
【0077】
図6では、クラッチペダルが押されると、再較正コマンド106が受信され、
図4と5に示すように、制御作業空間50のマッピングは、器具作業空間60に対して再較正される。これにより、コントローラ位置52は、装置2がクラッチされた制御108の状態にある間、受動コントローラ12が移動する前に、器具位置62と位置合わせされることが保証される。コントローラ位置52と器具位置62との初期位置合わせは、クラッチされた制御108の間の向き追跡の質を改善する。これは、受動コントローラを追跡するためにロボット器具の移動を引き起こすコマンドが、位置と向き追跡エラーの2乗の合計が最小になるように計算されるためである。位置追跡エラーが顕著である場合(即ち、コントローラ位置52と器具位置62との間のギャップ)、向き追跡エラーが全体的な追跡エラーと無関係になる可能性がある。従って、ロボット器具に発行されるコマンドを計算するためのアルゴリズムは、結果として向き追跡エラーが増加したとしても、位置追跡エラーを最小化する/維持することに重点を置く。しかしながら、位置が合わせられるようになったため、再較正により位置追跡エラーは定義上0に減少する。従って、向き追跡エラーは最小化される唯一のものであり、アルゴリズムは、向き追跡エラーの増加を許容するインセンティブを持たない。
【0078】
クラッチされた制御108の間、器具位置62(
図4及び5に示す)は、コントローラ位置52の変化に基づいて更新されなくなり、従って器具位置は静止したままになる。一方、ユーザ4は、受動コントローラ12を自由に移動させることができ、それに応じて制御位置52が変化し、制御位置52が器具位置62から位置ずれする可能性が高い。
【0079】
ユーザ4がクラッチペダルを離してクラッチ機構の係合を解除することによって、クラッチされた制御108が終了すると、
図4及び5に示すように、制御作業空間50のマッピングが器具作業空間60に対して再び再較正されるように、別の再較正コマンド110が受信される。それに応じて、装置2は通常制御102に戻り、ユーザ4は、クラッチ機構の係合解除後にロボット器具22の位置制御、ならびにクラッチ動作104を通じて維持された向き制御を再開することができる。さらに、新たな(クラッチ後の)制御位置52は、クラッチ機構を係合する前に決定された最後に知られた器具位置62に位置合わせされる。これにより、クラッチ手順104の後にユーザ4が位置ずれに悩まされるのを避けることができ、また、クラッチ機構の係合が解除された直後にロボット器具が制御位置52と位置合わせするためにジャークしたりジャンプしたりすることも防止される。
【0080】
クラッチ手順104の係合中、ユーザ4は、受動コントローラ12、特に、ハンドル36の向きを操作することによって、ロボット器具22、特に、エンドエフェクタ46の向きの制御を維持している。しかしながら、少なくとも一時的に、ユーザ4がロボット器具22の向きを完全に制御できない状況も数多くある。例えば、ユーザ4が装置2の使用を開始するとき、ロボット器具22の初期の向きは、ユーザ4によって保持されている受動コントローラ12の向きとは異なる可能性が高い。このような状況では、装置2は、ロボット器具22の向きが受動コントローラ12の向きに合わせるように、ロボット器具22の向きを自動制御するように構成されている。
【0081】
自動制御中、装置2は、ロボット器具22を現在の姿勢から所望の姿勢に移動させるために、器具作業空間内でロボット器具22の移動の軌跡を決定する。しかしながら、自動制御は再較正に従うため、自動制御の主な目的は、ロボット器具22をその現在の向きから所望の向きに移動させることであると考えることができる。生成された軌跡は、必要に応じてロボット器具22を作動させるロボットモータ26(
図1に示す)に送信される。装置2は、現在の姿勢が所望の姿勢に達すると、ロボット器具22の必要な位置合わせが完了するか、又はオーバーライドコマンドを受信すると、ロボット器具22の自動制御を停止するように構成されている。ロボット器具22の現在の軌跡が潜在的に安全でないとユーザ4が考える場合、オーバーライドコマンドは、自動制御中いつでもユーザ4によって開始され得る。
【0082】
装置2は、ロボット器具22の位置合わせのための自動制御中に、ロボット器具22の移動の速度を所定の大きさに制限するように構成されている。例えば、速度は、ユーザ4がロボット器具22の軌跡を監視し、軌跡が潜在的に安全でないものではないことを確認できる速度に制限することができる。
【0083】
自動制御中にロボット器具22が移動する速度が制限されるため、自動制御が瞬時に完了しない可能性がある。従って、ロボット器具22が自動制御下にあるため、ユーザは手動で受動コントローラ12の位置と向きを変更する機会がある。ロボット器具22の位置ずれを回避するのを支援するために、装置は、受動コントローラ12の位置と向きが変化するときに移動の軌跡を再決定するように構成されてもよい。
【0084】
自動制御が必要となる場合の一例として、ユーザ4が最初にロボット器具22を制御する場合がある。
図7では、装置2が起動されると、無制御112の第1の状態に入り、ここでは、受動コントローラ12の位置や向きに対するロボット器具22の位置や向きの追跡はない。本発明のこの実施形態では、ユーザ4がロボット器具22を制御するために、ユーザは、係合手順116を開始する必要がある。
【0085】
受動コントローラ12は、グリッパ38(
図2に示す)を備える係合機構(図示せず)と近接センサ(図示せず)とを備える。係合機構は、ユーザ4による起動時に、受動コントローラの位置及び向きに対するロボット器具の位置及び向きの追跡を開始
させるように構成されている。
【0086】
近接センサは、ユーザの存在又は不在を検出するように構成され、装置2は、近接センサがユーザの存在を検出した場合にのみ、受動コントローラの位置に対するロボット器具の位置の追跡を開始するように構成されている。従って、ユーザが係合機構を作動させるための第1ステップは、近接センサを係合し、それによって装置2を無制御114の第2の状態にすることである。
【0087】
本発明のこの実施形態では、近接センサは、ハンドル36(
図2に示す)の一部を形成し、ハンドル36がユーザ4によって保持されているときを検出するように構成されている。しかしながら、本発明の他の実施形態では、近接センサは、ユーザの存在又は不在を検出するように適切に構成された任意の適切なタイプの近接センサであってもよい。
【0088】
ユーザ4が係合機構を作動させる第2ステップは、グリッパ38をつまみ(即ち、押して離す)、それによって係合手順116を開始することである。この動作は、ユーザ4が受動コントローラ12を完全かつ意図的に制御していることを示している。
【0089】
本発明の他の実施形態では、係合機構は、例えば、ボタン、トリガ、レバー、ペダル、又は音声コマンドシステムなど、ユーザが受動コントローラに対するロボット器具の追跡を開始するための任意の適切な手段を備えてもよい。さらに、係合機構は、例えば、ダブルタップやトリプルタップなど、受動コントローラに対するロボット器具の追跡を開始するための一連の動作を必要とする場合がある。
【0090】
係合手順116の開始時に、受動コントローラ12の位置をロボット器具22の位置と合わせるために、受動コントローラ12から再較正コマンド118が受信される。次に、装置2は、自動制御120の状態に入る。この状態では、装置2は、上述したように、ロボット器具22の向きを受動コントローラの向きと合わせるようにロボット器具22を自動制御する。自動制御120が完了するか、又はユーザ4がオーバーライドコマンドをトリガすると、装置2は、装置2による自動制御120からユーザによる通常(手動)制御102に切り替わる。
【0091】
装置2は、近接センサがユーザ4の不在を検出すると、ロボット器具22が受動コントローラ12の位置と向きを追跡することを停止するように構成されている。従って、無制御114の第2の状態の間又は自動制御120の間のいずれにおいても、ユーザ4が近接センサの係合を解除すると、係合手順116が中断される可能性がある。また、通常制御中、ユーザ4が近接センサの係合を解除すると、装置2は、通常制御102を終了する。近接センサの係合が解除されると、装置2は、近接センサが再係合されて係合手順116を再開始するまで、無制御112の第1の状態に戻る。
【0092】
図8は、追跡の中断後の受動コントローラの位置及び/又は向きに対するロボット器具の位置の位置及び/又は向きの追跡を再開するために使用され得るロック解除手順を示す。ユーザ4は、様々な理由でロック解除手順122を開始することができる。例えば、ユーザ4による受動コントローラ12の移動がロボット器具の制限された速度よりも速いため、ロボット器具22がフリーズした可能性がある。一方、ユーザは、装置2がロボット器具の許容姿勢を制限しているため、所与の構成のロボット器具が制御不能になっていると感じることがある。
【0093】
図1に示されるペダル制御16は、ユーザ4が押す/係合してロック解除手順をトリガし、次に離すか/係合を解除してロック解除手順を終了することができるロック解除機構(例えば、ロック解除ペダル)を備えてもよい。しかしながら、本発明の他の実施形態では、ロック解除機構は、ボタン、トリガ、レバー、または音声コマンドシステムなど、ユーザによる係合及び係合解除のための任意の適切な手段を備えてもよい。
【0094】
図8では、ユーザ4は、装置2が通常制御102にある間に、ロック解除ペダルを押すことによってロック解除手順122を開始することができる。ロック解除ペダルが押されると、前述したように、受動コントローラ12の位置をロボット器具22の位置と合わせるために、受動コントローラ12から再較正コマンド124が受信される。次に、装置2は自動制御126の状態に入る。自動制御126中、装置2は、ロボット器具22の姿勢を受動コントローラ12の姿勢とできる限り近づけて位置合わせする軌跡を生成する。ロボット器具22の位置と受動コントローラ12の位置は、先行する再較正により位置合わせされるが、ロボット器具の全体的な姿勢が受動コントローラの姿勢にできるだけ近くなるように、受動コントローラ12の向きに対するロボット器具22の向きの精度が向上する場合、決定された軌跡は、ロボット器具22の位置を変更することを含んでもよい。
【0095】
本発明の実施形態では、装置2は、逆運動学(IK)アルゴリズムを用いて、ロボット器具に受動コントローラの姿勢を追跡させるコマンドを生成する。
【0096】
数値IKアルゴリズムは、大域的最適化アルゴリズム及び局所的最適化アルゴリズムの2つのサブセットに分割できる。前者は検索空間全体を調べて、可能な限り最良の可能な解(大域解)を提供する。後者は、数学関数の知識を利用して、アルゴリズムの初期条件、つまり、さらなる計算の基礎となる初期状態に近い最適解を探す。
【0097】
大域的アルゴリズムを使用して見つけることができる大域解202の一例は、任意関数200について
図9に示される。これは関数の全体的な最小値である。
【0098】
局所的アルゴリズムは、関数の現在の値をその近傍の値と比較し、解をより小さい値の方に移動させる。さらに、局所的アルゴリズムは、近くのすべての値が現在の解よりも高い場合に終了する。
図10は、2つの異なる初期条件208、210に基づく、同じ関数200に対する2つの可能な局所解204、206を示す。一方の局所解204は、大域解202(
図9に示す)と同等であるが、他方の局所解206は異なる。
【0099】
ロボット器具22が受動コントローラ12を用いてユーザ4によって設定された所望のロボット器具姿勢に対して既に局所的最小値にあるときに、装置2(
図1に示す)が局所的アルゴリズムを使用する場合、局所的アルゴリズムは、よりよい解(例えば、
図10における204)が可能である場合でも、同じ局所解(例えば、
図10における206)を返し続ける。その結果、ロボット器具の動作は実行されず、ロボット器具22はユーザ4に対して無反応に見えることになる。
【0100】
大域的アルゴリズムは客観的な最良の答えを提供するため、局所的アルゴリズムよりも優れているように見えるが、局所的アルゴリズムの方がより速く、有限時間内に終了し、より優れた滑らかさ特性を備えているため、多くの場合好まれる。本開示の目的上、滑らかさ特性は、ロボット器具22がジャンプしたりぎくしゃくと動いたりすることを防止するものと大まかに解釈することができる。
【0101】
本発明の実施形態は、局所的アルゴリズムの初期条件でランダムシューティングアプローチを実装することによって、局所的アルゴリズムの有効性から利益を得ながら、大域解を見つける。局所的アルゴリズムは、ランダムに選択された初期条件で複数回再起動される。最後に、見つかった最良の局所解のみがアルゴリズムから返される。
【0102】
使用中、装置2、特に、ロボット器具22には様々な制限が課される。特に、エンドエフェクタ46の位置は、器具作業空間に制限される。また、エンドエフェクタ46が移動できる速度は、ロボット器具22の物理的制限又は特定の用途に対して安全と考えられる最大速度に基づいて制限される場合がある。これらの制限を考慮して、IKアルゴリズムを実行可能解のセットに制限する制約が最適化問題に追加される。
図11では、現在の状態301に基づいて、任意関数300について解が計算される。実行可能解は、制約302によって、任意関数300の制約付き領域304に制限される。制約なし大域解306は、制約付き領域304の外側に存在し、従って実行不可能である。一方、局所解308は、制約付き領域304内に存在するため、実行可能である。また、制約付き領域304内であるため実行可能であり、制約なし局所解308よりも優れている制約付き大域解310もある。
【0103】
図12では、同じ現在の状態301に基づいて、同じ制約302を適用して、新たな任意関数400について解が計算され、制約付き領域404が提供される。この例では、制約なし大域解406は、
図11に示されるものと同様に、制約付き領域404の外側に存在し、従って実行不可能である。しかしながら、任意関数400については、局所解408が存在し、これは、制約付き領域404内で利用可能な最良の解であり、従って制約付き大域解である。
【0104】
図13では、同じ現在の状態301に基づくが、新たな制約502を適用して、更なる任意関数500について解が計算され、制約付き領域504が提供される。制約なし大域解506は、
図11及び12に示されるものと同様に、制約付き領域504の外側に存在し、従って実行不可能である。この場合、制約なし局所解508も、制約付き領域504の外側に存在する。制約付き局所解510は制約付き領域504内に存在し、これは、制約付き領域504内で利用可能な最良の解であり、従って制約付き大域解及び制約付き局所解である。
【0105】
本発明の実施形態では、IKアルゴリズムは、位置制約を満たすロボット器具22の部分的な制約付き姿勢の計算を可能にするために、予め定義された位置制限を含む。位置制約は、ロボット器具22の長さ、各ジョイント44による達成可能な可能範囲、及びロボット器具22の長さに沿った各ジョイント44の位置など、ロボット器具22(
図3)の物理的な制限に基づく器具作業空間に基づくものであってもよい。IKアルゴリズムによって計算される任意の解が物理的に可能であることを保証するために、装置2の使用中に位置制約を常に適用して、すべての解が部分的に制約されるようにすることができる。
【0106】
IKアルゴリズムは、位置制約と速度制約の両方を満たすロボット器具22の制約付き姿勢の計算を可能にするために、予め定義された速度制限をさらに含んでもよい。予め定義された速度制限は、安全であるとみなされ、且つユーザが移動を監視し、軌跡を測定し、潜在的に安全でない場合に移動をオーバーライドする能力を有するようにするロボット器具22の最大速度に基づくものであってもよい。
【0107】
通常の条件下では、装置2が使用されているとき、ロボット器具22は、位置制約と速度制約の両方を満たす制約付き姿勢に限定される。このような条件下では、IKアルゴリズムを使用して、制約付き大域解、つまり、制約が適用された最良の可能な解を計算する。しかしながら、IKアルゴリズムは、位置制約に関してのみ制限される、部分的な制約付き大域解を同時に計算する場合がある。
【0108】
ロック解除機構の起動により、装置2は、IKアルゴリズムによって計算された制約付き大域解に基づいて、ロボット器具の現在の制約付き姿勢が、同時に計算された部分的な制約付き大域解、つまりロボット器具の位置制限内で最良の利用可能な解に基く部分的な制約付き姿勢と同等であるか否かをチェックすることができる。同等でない場合、装置は、ロボット器具を部分的な制約付き姿勢に移動させる。
【0109】
ロック解除機構が起動されるときのロボット器具22の突然の意外な動きを避けるために、自動制御は、前述のように制限されてもよい。決定された軌跡が完了すると、装置2は、通常制御102に戻る。
【0110】
ユーザが受動コントローラ12を操作しているときに、ロック解除手順122が実行されているため、自動制御126が行われている間に受動コントローラが移動する可能性が高い。受動コントローラ12とロボット器具22の位置及び/又は向きの不一致を回避するために、前述したように、ロック解除手順全体を通じて、決定された軌跡が更新される。さらに、装置2が通常制御102に戻る前のいずれかの時点でロック解除ペダルが離された場合、装置2は、直ちに通常(手動)制御102に戻る。従って、ロック解除ペダルを離すことは、
図7に示すようにオーバーライドコマンドをトリガすることと同等である。
【0111】
本発明の実施形態では、ロボット器具22は、初期姿勢と1つ又は複数の更なる姿勢との間に再配置されるように構成されてもよく、装置2は、リホーミング機構の起動時に1つ又は複数の更なる姿勢から初期姿勢に戻るように、ロボット器具22の配置を自動制御するように構成されてもよい。
【0112】
このような実施形態では、ロボット器具22の初期姿勢は、ロボット器具22が非能動的であるときに保持されるロボット器具22の一部を形成する各ジョイント44の回転位置の組み合わせであってもよい。例えば、初期姿勢は、ロボット器具22を手術部位に挿入したり手術部位から除去したりするのに有利なジョイント44の真っ直ぐな配置(
図3に示す)に対応し得る。初期姿勢はまた、ロボット器具22が器具作業空間内の任意の位置及び向きに容易に可動であるジョイント44の中立的な配置に対応することもできる。
【0113】
リホーミング機構は、ロボット器具22が使用中に移動した可能性のある任意の姿勢から、ロボット器具22を自動的に初期姿勢に戻すための手段を提供する。これは、例えば、外科医が外科手術を完了し、ロボット器具22を手術部位から引き出す準備ができている場合、又は外科手術の一部を完了し、中立的な配置のロボット器具22で次の段階の手術を開始したい場合に役立つことがある。
【0114】
リホーミング機構は、クラッチペダルとロック解除ペダルとを備えてもよく、クラッチペダル及びロック解除ペダルを所定の順序で押すことによって起動することができる。
図14では、ユーザ4は、まずクラッチペダルを押すことによってリホーミング手順130を開始することができる。
図6に示されるクラッチ手順104によれば、クラッチペダルを押すことにより、再較正コマンド106が受信され、
図4及び5に示すように、器具作業空間60に対して制御作業空間50のマッピングが再較正される。次に、装置2は、クラッチされた制御108に入る。クラッチされた制御108が能動的である間、ユーザ4は、3秒以内にロック解除ペダルを押し、離し、再度押して、リホーミング手順130を開始することができる。
【0115】
本発明の他の実施形態では、リホーミング機構は、別個のペダル、ボタン、トリガ、レバー、または音声コマンドなど、ユーザによる起動のための任意の適切な手段を備える。また、ユーザがクラッチペダルやロック解除ペダルなどの他の手段とインタラクトする異なる組み合わせ又は順序を使用して、リホーミング手順130を開始することができ、取られるアクションの組み合わせ又は順序に対して、異なる期間を設けることができる。
【0116】
リホーミング手順130が開始されると、装置2は、ロボット器具22のための移動の軌跡がロボット器具22を初期姿勢に移動させるように決定されることを除いて、
図7と8に示される自動制御120、126と同様の自動制御132を開始する。さらに、装置2は、ロボット器具22を初期姿勢に戻すときに、ロボット器具22の移動の速度を所定の大きさに制限するように構成されてもよい。
【0117】
図7に示される自動制御120とは対照的に、軌跡が終了するか、ユーザ4がクラッチペダル又はロック解除ペダルを離すことによってオーバーライドコマンドをトリガすると、装置2は、
図7に示される無制御114の第2の状態に入る。ユーザ4がロボット器具の制御を取り戻すために、
図7に示す係合手順116を開始するようにグリッパ38をつまむ必要がある。これは、ロボット器具を初期姿勢に向けて配置する際に、ロボット器具22が受動コントローラ12から著しく位置ずれした可能性があるためである。
【0118】
図15は、装置2が
図6~8及び14に示される動作のそれぞれを実行できるようにする1つの可能なプロセスフローを示す。
図7によれば、装置2は、近接センサがユーザ4の不在を検出すると、ロボット器具22が受動コントローラ12の位置と向きを追跡することを停止するように構成されている。従って、無制御114の第2の状態の間又は自動制御120/126の間のいずれにおいても、ユーザ4が近接センサの係合を解除すると、係合手順116/ロック解除手順122が中断される可能性がある。また、通常制御中、ユーザ4が近接センサの係合を解除すると、装置2は、通常制御102を終了する。さらに、リホーミング手順130の間、ユーザが近接センサの係合を解除すると、装置2は自動制御132を終了する。いずれの場合も、近接センサの係合が解除されると、装置2は、近接センサが再係合されて係合手順116を再び開始するまで、無制御112の第1の状態に戻る。
【0119】
出願人は、本明細書に記載される個々の特徴のそれぞれを単独で、及び2つ以上のそのような特徴の任意の組み合わせを、そのような特徴又は特徴の組み合わせが本明細書に開示される問題を解決するか否かに関係なく、かつ特許請求の範囲を限定することなく、当業者の共通の一般知識に照らして、そのような特徴又は組み合わせが全体として本明細書に基づいて実施できる範囲で開示する。出願人は、開示されている態様/実施形態が、任意のこのような特徴又は特徴の組み合わせから構成され得ることを示唆している。前述の説明を考慮すると、本開示の範囲内で様々な修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。