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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】通信制御装置、および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/084 20230101AFI20250307BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20250307BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20250307BHJP
【FI】
H04W28/084
H04W24/06
H04W16/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024224670
(22)【出願日】2024-12-20
【審査請求日】2024-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113347255(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0320896(US,A1)
【文献】特開2000-330909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザ端末の各々が在圏している複数の基地局の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記複数のユーザ端末が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との通信の遅延を抑制する接続先のデータ処理装置に関するネットワーク設定情報を出力するように構成された演算部と、
前記演算部によって出力された前記ネットワーク設定情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間のデータ通信パスの設定をコアネットワークに指示するように構成された通信制御部と
を備える通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御装置において、
さらに、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の組み合わせと、前記複数のユーザ端末が接続可能な前記複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との前記通信の遅延を抑制する、前記接続先のデータ処理装置に関する前記ネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、
前記学習部によって構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶するように構成された記憶部と
を備え、
前記演算部は、前記記憶部に記憶された前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、演算を行う
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信制御装置において、
さらに、前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信する位置登録要求信号に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の情報を取得するように構成された取得部を備え、
前記演算部は、前記取得部によって取得された前記複数の基地局の情報を前記未知の入力として用いる
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信制御装置において、
前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信した前記位置登録要求信号が前記コアネットワークを経由して前記通信制御装置に送信される際に、前記コアネットワークによって、前記位置登録要求信号含まれる加入者識別番号に、前記複数のユーザ端末が属するグループのグループ識別子が関連付けられ、
前記取得部は、前記位置登録要求信号に含まれる前記加入者識別番号に関連付けられた前記グループ識別子と、前記複数の基地局の情報とを関連付けて取得し、
前記記憶部は、前記学習済みの機械学習モデルに前記グループ識別子を関連付けて記憶し、
前記通信制御部は、前記グループ識別子を有する前記複数のユーザ端末を指定して、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間の前記データ通信パスの設定を前記コアネットワークに指示する
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信制御装置において、
前記ネットワーク設定情報は、前記複数のユーザ端末の各々が、前記複数のデータ処理装置のうち前記複数の基地局からの物理的な距離がより短い位置に配置されている前記接続先のデータ処理装置の情報を含み、
前記接続先のデータ処理装置の情報により、前記複数のユーザ端末の各々のデータ通信に対する共通のユーザプレーン機能が設定可能である
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項6】
複数のユーザ端末の各々が在圏している複数の基地局の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記複数のユーザ端末が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との通信の遅延を抑制する接続先のデータ処理装置に関するネットワーク設定情報を出力する演算ステップと、
前記演算ステップで出力された前記ネットワーク設定情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間のデータ通信パスの設定をコアネットワークに指示する通信制御ステップと
を備える通信制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の通信制御方法において、
さらに、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の組み合わせと、前記複数のユーザ端末が接続可能な前記複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との前記通信の遅延を抑制する、前記接続先のデータ処理装置に関する前記ネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、
前記学習ステップで構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶部に記憶する記憶ステップと
を備え、
前記演算ステップは、前記記憶部に記憶された前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、演算を行う
ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の通信制御方法において、
さらに、前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信する位置登録要求信号に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の情報を取得する取得ステップを備え、
前記演算ステップは、前記取得ステップで取得された前記複数の基地局の情報を前記未知の入力として用いる
ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の通信制御方法において、
前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信した前記位置登録要求信号が前記コアネットワークを経由して前記通信制御方法を実行する通信制御装置に送信される際に、前記コアネットワークによって、前記位置登録要求信号含まれる加入者識別番号に、前記複数のユーザ端末が属するグループのグループ識別子が関連付けられ、
前記取得ステップは、前記位置登録要求信号に含まれる前記加入者識別番号に関連付けられた前記グループ識別子と、前記複数の基地局の情報とを関連付けて取得し、
前記記憶ステップは、前記学習済みの機械学習モデルに前記グループ識別子を関連付けて前記記憶部に記憶し、
前記通信制御ステップは、前記グループ識別子を有する前記複数のユーザ端末を指定して、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間の前記データ通信パスの設定を前記コアネットワークに指示する
ことを特徴とする通信制御方法。
【請求項10】
請求項6に記載の通信制御方法において、
前記ネットワーク設定情報は、前記複数のユーザ端末の各々が、前記複数のデータ処理装置のうち前記複数の基地局からの物理的な距離がより短い位置に配置されている前記接続先のデータ処理装置の情報を含み、
前記接続先のデータ処理装置の情報により、前記複数のユーザ端末の各々のデータ通信に対する共通のユーザプレーン機能が設定可能である
ことを特徴とする通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モバイル通信網において、ユーザ端末から物理的に距離の近い場所でクラウドコンピューティングの機能を提供する手法であるMEC(Multi-access Edge Computing)が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている技術では、ユーザ端末ごとに、データ通信の遅延を抑制するためのコアネットワークのユーザプレーン機能(UPF)が設定されている。そのため、複数のユーザ端末が同じウェブサイトを提供するクラウドに接続する場合や、複数のユーザ端末間でデータ通信を行う場合等であっても、複数のユーザ端末の全体の伝送時間の遅延を考慮したエッジコンピューティングは行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-160813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、より簡易な構成により複数のユーザ端末の通信の遅延を抑制することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、より簡易な構成により複数のユーザ端末の通信の遅延を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信制御装置は、複数のユーザ端末の各々が在圏している複数の基地局の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記複数のユーザ端末が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との通信の遅延を抑制する接続先のデータ処理装置に関するネットワーク設定情報を出力するように構成された演算部と、前記演算部によって出力された前記ネットワーク設定情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間のデータ通信パスの設定をコアネットワークに指示するように構成された通信制御部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る通信制御装置において、さらに、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の組み合わせと、前記複数のユーザ端末が接続可能な前記複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との前記通信の遅延を抑制する、前記接続先のデータ処理装置に関する前記ネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習するように構成された学習部と、前記学習部によって構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶するように構成された記憶部とを備え、前記演算部は、前記記憶部に記憶された前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、演算を行ってもよい。
【0009】
また、本発明に係る通信制御装置において、さらに、前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信する位置登録要求信号に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の情報を取得するように構成された取得部を備え、前記演算部は、前記取得部によって取得された前記複数の基地局の情報を前記未知の入力として用いてもよい。
【0010】
また、本発明に係る通信制御装置において、前記位置登録要求信号には、前記複数のユーザ端末が属するグループのグループ識別子が関連付けられており、前記取得部は、前記位置登録要求信号に関連付けられた前記グループ識別子と、前記複数の基地局の情報とを関連付けて取得し、前記記憶部は、前記学習済みの機械学習モデルに前記グループ識別子を関連付けて記憶し、前記通信制御部は、前記グループ識別子を有する前記複数のユーザ端末を指定して、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間の前記データ通信パスの設定を前記コアネットワークに指示してもよい。
【0011】
また、本発明に係る通信制御装置において、前記ネットワーク設定情報は、前記複数のユーザ端末の各々が、前記複数のデータ処理装置のうち前記複数の基地局からの物理的な距離がより短い位置に配置されている前記接続先のデータ処理装置の情報を含み、前記接続先のデータ処理装置の情報により、前記複数のユーザ端末の各々のデータ通信に対する共通のユーザプレーン機能が設定可能であってもよい。
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る通信制御方法は、複数のユーザ端末の各々が在圏している複数の基地局の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、前記学習済みの機械学習モデルの演算を行って、前記複数のユーザ端末が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との通信の遅延を抑制する接続先のデータ処理装置に関するネットワーク設定情報を出力する演算ステップと、前記演算ステップで出力された前記ネットワーク設定情報に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間のデータ通信パスの設定をコアネットワークに指示する通信制御ステップとを備える。
【0013】
また、本発明に係る通信制御方法において、さらに、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の組み合わせと、前記複数のユーザ端末が接続可能な前記複数のデータ処理装置のうち、前記複数のユーザ端末との前記通信の遅延を抑制する、前記接続先のデータ処理装置に関する前記ネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する学習ステップと、前記学習ステップで構築された前記学習済みの機械学習モデルを記憶部に記憶する記憶ステップとを備え、前記演算ステップは、前記記憶部に記憶された前記学習済みの機械学習モデルを読み出して、演算を行ってもよい。
【0014】
また、本発明に係る通信制御方法において、さらに、前記複数のユーザ端末の各々が前記複数の基地局に在圏する際に発信する位置登録要求信号に基づいて、前記複数のユーザ端末の各々が在圏している前記複数の基地局の情報を取得する取得ステップを備え、前記演算ステップは、前記取得ステップで取得された前記複数の基地局の情報を前記未知の入力として用いてもよい。
【0015】
また、本発明に係る通信制御方法において、前記位置登録要求信号には、前記複数のユーザ端末が属するグループのグループ識別子が関連付けられており、前記取得ステップは、前記位置登録要求信号に関連付けられた前記グループ識別子と、前記複数の基地局の情報とを関連付けて取得し、前記記憶ステップは、前記学習済みの機械学習モデルに前記グループ識別子を関連付けて前記記憶部に記憶し、前記通信制御ステップは、前記グループ識別子を有する前記複数のユーザ端末を指定して、前記複数のユーザ端末の各々と前記接続先のデータ処理装置との間の前記データ通信パスの設定を前記コアネットワークに指示してもよい。
【0016】
また、本発明に係る通信制御方法において、前記ネットワーク設定情報は、前記複数のユーザ端末の各々が、前記複数のデータ処理装置のうち前記複数の基地局からの物理的な距離がより短い位置に配置されている前記接続先のデータ処理装置の情報を含み、前記接続先のデータ処理装置の情報により、前記複数のユーザ端末の各々のデータ通信に対する共通のユーザプレーン機能が設定可能であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のユーザ端末の各々が在圏している複数の基地局の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、複数のユーザ端末が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のデータ処理装置のうち、複数のユーザ端末との通信の遅延を抑制する、接続先のデータ処理装置に関するネットワーク設定情報を出力する。そのため、より簡易な構成により複数のユーザ端末の通信の遅延を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る通信制御装置を備える通信制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態に係る通信制御装置の第1記憶部の構成を説明するための図である。
図3図3は、本実施の形態に係る通信制御装置が備える学習部による学習処理を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態に係る通信制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、本実施の形態に係る通信制御装置を備える通信制御システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
図6図6は、本実施の形態に係る通信制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、本実施の形態に係る通信制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図7を参照して詳細に説明する。
【0020】
[通信制御システムの構成]
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る通信制御装置1を備える通信制御システムの概要について説明する。
【0021】
本実施の形態に係る通信制御システムは、通信制御装置1、ユーザ端末2、基地局3、コアネットワーク4、およびクラウド(データ処理装置)5を備える。通信制御システムは、5Gモバイル通信ネットワークに設けられる。通信制御システムは、複数のユーザ端末2のそれぞれが在圏する基地局3を介して接続可能な複数のクラウド5のうち、通信の遅延をより抑制する特定のクラウド5を予測する。さらに、特定のクラウド5と接続するための最適なUPF44を、複数のユーザ端末2の各々に対して設定する。通信制御装置1は、コアネットワーク4とネットワークNWを介して接続されている。
【0022】
ユーザ端末2は、スマートフォンなどの携帯通信端末、タブレット型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータなどとして実現される。ユーザ端末2は、SIMを備え、SIMの契約プロファイルには、ユーザの加入者識別情報が格納され、携帯電話の回線契約に割り当てられる加入者識別番号(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)、加入者であるユーザの電話番号(MSISDN:Mobile Subscriber International Subscriber Directory Number)、SIMカード番号(ICCID:Integrated Circuit Card Identifier)などの識別子情報が含まれる。ユーザ端末2は、IMSIによって一意に識別される。
【0023】
ユーザ端末2には、また、端末を一意に識別する端末IPアドレスが割り当てられる。IPアドレスは、セッション確立後にSMF42を通じてユーザ端末2に割り当てられる。本実施の形態では、ユーザ端末2は、N台(Nは2以上の正の整数)存在する。ユーザ端末2-1,2-2,・・・,2-Nは、それぞれ異なる基地局3の通信エリアに在圏する。ユーザ端末2は、それぞれが在圏する基地局3を介して、指定されたUPF44から、特定のクラウド5にアクセスする。本実施の形態では、複数のユーザ端末2は、所定の属性に基づいて事前にグループ化され、グループID(グループ識別子)が割り当てられる。所定の属性は、例えば、同じ組織により管理される複数のユーザ端末2や、QoSの要求などの任意の基準により定めることができる。
【0024】
ユーザ端末2は、通信エリアの移動時、周期的な位置更新として、および電源投入時等に位置登録要求信号を、基地局3を介してコアネットワーク4に送信する。ユーザ端末2が発信する位置登録要求信号には、IMSIが含まれる。
【0025】
基地局3は、5G方式に対応した無線基地局で構成され、通信エリアに在圏するユーザ端末2とコアネットワーク4との間の通信を中継する。基地局3は、バックホールリンクなどのネットワークを介してコアネットワーク4と接続する。基地局3は、N台(Nは、2以上の整数)設けられている。以下、基地局3-1,3-2,・・・,3-Nを互いに区別しない場合には、「基地局3」と総称する。基地局3は、基地局IDによって一意に識別される。また、基地局IDによって、基地局3の地理的な位置についても把握することができる。すなわち、基地局IDと、基地局3の配置された位置の緯度、経度、高度からなる位置情報とが関連付けられて後述の通信制御装置1の補助記憶装置105に格納されている。
【0026】
コアネットワーク4は、通信制御装置1とLANやWAN、インターネットなどのネットワークNWを介して接続されている。コアネットワーク4は、C-plane内のノードであるAMF(Access and Mobility Management Function)40、UDM(Unified Data Management)/UDR(Unified Data Repository)41、SMF(Session Management Function)42、およびPCF(Policy Control Function)43を備える。また、コアネットワーク4は、U-plane内の複数のUPF(User Plane Function)44を備える。コアネットワーク4が備える、上記以外のU-planeやC-plane内の機能ノードについては図示を省略している。
【0027】
AMF40は、アクセスおよび移動管理装置であり、各通信エリアに移動したユーザ端末2の登録や無線接続を管理する。
【0028】
UDM/UDR41は、加入者プロファイルの管理、認証、モビリティ管理を行う。本実施の形態では、UDM/UDR41は、加入者プロファイルにIMSIごとに割り当てられたグループIDを格納する。UDM/UDR41は、通信制御装置1との通信を行うための通信インターフェース41aを備える。
【0029】
また、UDM/UDR41は、通信制御装置1の指示に応じて、図2に示すように、複数のユーザ端末2のIMSI、グループID、基地局ID、ユーザ端末2のデータ通信において設定されたUPF44の通信パス、および接続先のクラウド5を互いに関連付けた設定情報テーブルT1を作成し記憶する。通信制御装置1からの指示には、事前に指定されている制御対象の複数のIMSIとグループIDとが関連付けられたグループ化情報が含まれる。なお、設定情報テーブルT1のUPF44のIPアドレスの値は、後述のSMF42およびPCF43により通信パスが設定された後に登録される。クラウド5のIPアドレスに関しては、後述の通信制御装置1の演算部13により予測値が得られた際に登録される。
【0030】
UDM/UDR41は、加入者プロファイルにグループIDのフィールドを追加することで設定情報テーブルT1を構成することができる。UDM/UDR41によって管理される設定情報テーブルT1は、通信制御装置1でも同期され、同一の内容が記憶される(第2記憶部15)。なお、本実施の形態では、UDM/UDR41は、UDMとUDRとが一つの装置として構成される場合を例示するが、UDM/UDR41は、UDMとUDRとが分離して配置された装置であってもよい。
【0031】
SMF42は、セッション管理機能であり、ユーザ端末2からインターネット等のデータネットワーク間のPDU(Packet Data Unit)セッションの確立、変更、リリース等を行う。SMF42は、PCF43からのPCC(Policy and Charging Control)ポリシーに基づいて、ユーザ端末2とUPF44との間のデータ通信に対して適切な通信パスを設定する。
【0032】
PCF43は、QoSやポリシーを決定しSMF42に提供する。PCF43は、3GPP(登録商標)の仕様によるPCCルールを適用し、通信制御装置1からの指示に応じて、ユーザ端末2が通信するUPF44の通信パスの設定についてのPCCポリシーを作成する。
【0033】
UPF44は、ユーザプレーン機能であり、基地局3と、インターネットなどのデータネットワークとの間のパケットを処理する。UPF44は、コアネットワーク4と外部のデータネットワークとの間のゲートウェイとして機能する。UPF44は、コアネットワーク4に複数設けられる。また、図1に示すように、UPF_1~UPF_Nの各々は、基地局3-1,3-2,・・・,3-Nの各々と直接接続する、いわゆるフルメッシュ接続とされる。本実施の形態では、各UPF44は、ユーザ端末2からのパケットを、インターネットなどのデータネットワークを介してクラウド5に送信する。また、各UPF44は、クラウド5から送信されたパケットを、ユーザ端末2に転送する。各UPF44は、図1に示すように、1つのクラウド5を接続先とする。本実施の形態では、同じグループIDに属する複数のユーザ端末2は、接続先の特定の拠点に係るクラウド5に応じて指定された、UPF_1~UPF_Nのうちのいずれかの最適なUPF44と通信する。UPF44は、IPアドレスを有し、これによりUPF44を一意に識別することができる。
【0034】
クラウド5は、所定のウェブサイトやウェブアプリケーションなどを提供する。クラウド5は、ウェブサイトなどを構成する物理的な機器が配置された地理的な位置あるいは領域であるクラウド拠点である。クラウド5は、サーバ、データセンタ、MECサーバなどのエッジサーバとすることができる。本実施の形態では、同じグループIDを有する複数のユーザ端末2は、同じウェブサイト等を提供するデータ最終処理ノードである複数のクラウド5に接続可能である。
【0035】
複数のクラウド5は、地理的に互いに離れた位置に分散配置されている。また、それぞれの基地局3から、複数のクラウド5の各々までの距離は、クラウド5ごとに異なる。例えば、基地局3-1から物理的な距離が最も近いクラウド5は、「クラウド1-1」であり、最も遠いクラウド5は、「クラウド1-N」である。複数のユーザ端末2は、それぞれの在圏する基地局3から、指定された同じUPF44を介して、同じクラウド5にアクセスする。クラウド5はIPアドレスにより一意に識別することができ、IPアドレスに位置情報が関連付けられて後述の通信制御装置1の補助記憶装置105に格納されている。
【0036】
[通信制御装置の機能ブロック]
図1に示すように、通信制御装置1は、取得部10、学習部11、第1記憶部12(記憶部)、演算部13、通信制御部14、および第2記憶部15を備える。通信制御装置1は、複数のユーザ端末2が在圏する複数の基地局3の組み合わせと、複数のユーザ端末2とのデータ通信の遅延を抑制する、接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報との関係を学習する。
【0037】
取得部10は、複数のユーザ端末2の各々が複数の基地局3に在圏する際に発信する位置登録要求信号に基づいて、複数のユーザ端末2の各々が在圏している複数の基地局3の情報を取得する。また、取得部10は、複数のユーザ端末2が発信した位置登録要求信号に関連付けられたグループIDと、複数の基地局3の情報とを関連付けて取得する。基地局3の情報として基地局IDが用いられる。基地局IDは、ユーザ端末2の発信した位置登録要求信号がコアネットワーク4を経由する際にコアネットワーク4で位置登録要求信号に付加される。位置登録要求信号は、前述したように、ユーザ端末2が各基地局3の通信エリアを跨いだ際や一定周期で発信される。
【0038】
取得部10が取得する基地局IDは、同じグループIDの複数のユーザ端末2がそれぞれ同時間帯に在圏する基地局3の情報を示す。取得部10によって取得されたユーザ端末2ごとの基地局IDは、後述の演算部13が学習済みの機械学習モデルの演算を行う際の未知の入力として用いられる。また、取得部10によって取得された基地局IDは、学習部11が機械学習モデルを学習する際の教師データの一部として用いることができる。
【0039】
学習部11は、複数のユーザ端末2の各々が在圏している複数の基地局3の組み合わせと、複数のユーザ端末2が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のクラウド5のうち、複数のユーザ端末2との通信の遅延を抑制する接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する。学習部11は、教師あり学習により機械学習モデルの学習を行うことができる。
【0040】
通信の遅延としては、特に、複数のユーザ端末2のデータ通信における複数のユーザ端末2全体の伝送遅延を対象とする。つまり、グループID単位でのデータ通信の伝送遅延が抑制の対象となる。伝送遅延は、複数のユーザ端末2が在圏する複数の基地局3から見た場合のエンドポイントが物理的に遠いことに起因する遅延を含む。具体的には、複数の基地局3からクラウド5までのユーザプレーンのデータ転送における伝送遅延を抑制の対象とすることができる。この場合、複数のユーザ端末2が在圏している基地局3のそれぞれからの物理的な距離が全体として最も短いあるいは最適な距離にあるクラウド5を接続先とすることで、グループ全体としてのデータ通信の伝送遅延は抑制されることになる。
【0041】
ネットワーク設定情報は、複数のユーザ端末2の各々が、地理的に異なる位置に配置されている複数のクラウド5のうち、複数の基地局3からの物理的な距離がより短い位置に配置されているクラウド5の情報を含む。すなわち、ネットワーク設定情報により、接続先のクラウド5が特定され、特定されたクラウド5の情報により、複数のユーザ端末2の各々のデータ通信に対する最適なUPF44が設定可能となる。例えば、クラウド1~Nのうち、クラウド1が接続先として特定されることで、クラウド1に接続するための最適なUPF_1が特定される。
【0042】
具体的には、ネットワーク設定情報として、接続先のクラウド5の情報およびルーティング先のUPF44の情報が識別可能なDNN(Data Network Name)の識別子を採用することができる。なお、複数の基地局3から特定のクラウド5までの物理的な距離を最適とする場合に、ある1台のユーザ端末2からの距離は、必ずしも最短距離となるとは限らない。複数の基地局3からより短い、つまり最適な距離のクラウド5がネットワーク設定情報により特定される。
【0043】
図3は、学習部11が用いる機械学習モデルの一例として採用する、ニューラルネットワークモデルの構造を示す。ニューラルネットワークモデルは、入力層x、隠れ層h、および出力層yを備える。学習部11は、同じグループIDを有する複数のユーザ端末2(IMSI)がそれぞれ在圏する基地局3の基地局IDをニューラルネットワークモデルの入力層に与え、入力の重み付け総和に活性化関数を適用し、しきい値処理により決定された出力を出力層に渡す。出力層の出力ノードは、複数のユーザ端末2が在圏する基地局3の基地局IDの組み合わせに対する、複数のユーザ端末2の接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報のモデルの予測出力を出力する。
【0044】
学習部11は、目的関数を導入することで、複数のユーザ端末2の在圏する基地局3の組み合わせに対するニューラルネットワークモデルからのネットワーク設定情報の予測値が正解ラベルのネットワーク設定情報の値となるように、ニューラルネットワークモデルのパラメータを学習する。学習部11は、目的関数が最小、つまり0となるように、機械学習モデルに係るニューラルネットワークの重みパラメータを調整する。学習部11は、誤差逆伝播法などを用いて、目的関数を最適化することができる。
【0045】
具体的には、学習部11は、クラス分類として接続先のクラウド5を予測し、最適なクラウド5を正解として、正解ラベルのクラウド5を高確率で出力するようにニューラルネットワークを学習することができる。この場合には、目的関数として交差エントロピー損失を用いる。あるいは、学習部11は、回帰問題として複数の基地局IDと対応するクラウド5の距離誤差である二乗誤差を最小化する目的関数を導入することができる。回帰問題として扱う場合には、複数の基地局3の位置とクラウド5の位置との間の実際の距離を正解ラベルとして、モデルが出力した距離の予測値との二乗誤差を最小とするよう学習が行われる。
【0046】
第1記憶部12は、学習部11によって構築された学習済みの機械学習モデルを記憶する。第1記憶部12は、学習済みの機械学習モデルにグループIDを関連付けて記憶する。
【0047】
演算部13は、複数のユーザ端末2の各々が在圏している複数の基地局3の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、複数のユーザ端末2が接続可能なデータ最終処理ノードの複数のクラウド5のうち、複数のユーザ端末2との通信の遅延を抑制する接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報を出力する。
【0048】
演算部13は、取得部10が取得した、複数のユーザ端末2が発信した位置登録要求信号に付加されている複数の基地局3の基地局IDを、未知の入力として用いる。すなわち、同じグループIDのIMSIごとの基地局IDが未知の入力として、第1記憶部12に記憶されている当該グループIDに対応する学習済み機械学習モデルに与えられる。演算部13は、ネットワーク設定情報として、DNNの識別子を出力することができる。演算部13により出力されたネットワーク設定情報が示す接続先のクラウド5のIPアドレスは、設定情報テーブルT1に登録される。
【0049】
通信制御部14は、演算部13によって出力されたネットワーク設定情報に基づいて、複数のユーザ端末2の各々と接続先のクラウド5との間のデータ通信パスの設定をコアネットワーク4に指示する。より具体的には、通信制御部14は、同じグループIDを有する複数のユーザ端末2のIMSIを指定して、複数のユーザ端末2の各々に共通のUPF44の設定をコアネットワーク4に指示する。演算部13は、ネットワーク設定情報として、DNNの識別子を出力した場合には、出力されたDNNの識別子に関連付けられている、接続先のクラウド5の識別情報を、補助記憶装置105に格納された情報を参照して取得することができる。
【0050】
通信制御部14は、同じグループIDの各ユーザ端末2のIMSIに対して、DNNの識別子により特定される接続先のクラウド5を指定し、各ユーザ端末2のUPF44の設定を指示する。詳細には、通信制御部14は、ユーザ端末2からの位置登録要求信号を、コアネットワーク4を介して受信したことに応じて、図2に示すテーブルT1を参照する。なお、位置登録要求信号には、前述したようにユーザ端末2のIMSIが含まれる。
【0051】
通信制御部14は、コアネットワーク4のPCF43に対して、グループID、IMSI、通信制御装置1のIPアドレス、および接続先のクラウド5を指定して、PCCポリシーの作成要求を行う。作成要求に応じて、コアネットワーク4のPCF43、SMF42、およびUDM/UDR41は連携して、ユーザ端末2のデータ通信に対するUPF44の適切な通信パスを設定する。ユーザ端末2のデータ通信に対してUPF44の通信パスが設定されると、図2で説明したように、第2記憶部15のテーブルT1において、通信パスの設定に係るUPF44のIPアドレスがIMSIごとに格納される。
【0052】
第2記憶部15は、複数のユーザ端末2のIMSI、グループID、基地局ID、ユーザ端末2のデータ通信において設定されたUPF44の通信パス、および接続先のクラウド5を互いに関連付けた設定情報テーブルT1を記憶する。設定情報テーブルT1のうち、接続先のクラウド5の識別情報(「クラウドIPアドレス」)は、演算部13から出力されたDNNの識別子により特定され、記憶される情報である。また、UPF44の識別情報(「UPF IPアドレス」)は、通信制御部14のコアネットワーク4の指示に応じてUPF44が設定されることに応じて記憶される情報である。
【0053】
[通信制御装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する通信制御装置1を実現するハードウェア構成の一例について、図4を用いて説明する。
【0054】
図4に示すように、通信制御装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。さらに、通信制御装置1は、バス101を介して接続される表示装置107を備えることができる。
【0055】
プロセッサ102は、CPU、GPU、FPGA、ASICなどによって実現される。
【0056】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、図1に示した取得部10、学習部11、演算部13、通信制御部14など通信制御装置1の各機能が実現される。
【0057】
通信インターフェース104は、通信制御装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0058】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0059】
補助記憶装置105は、通信制御装置1が実行する通信制御プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、通信制御装置1が実行する機械学習プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。さらに、補助記憶装置105は、DNN識別子と、クラウド5の識別情報およびUPF44の識別情報とが関連付けられた情報を格納する領域を有する。また、補助記憶装置105は、複数のユーザ端末2のIMSIとグループIDとを関連付けたグループ化情報を格納する領域を有する。さらに、補助記憶装置105は、基地局ID、UPF44の識別情報、およびクラウド5の識別情報にそれぞれの位置情報を関連付けて格納する領域を有する。補助記憶装置105によって、図1で説明した第1記憶部12、第2記憶部15が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0060】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0061】
表示装置107は、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどによって構成される。表示装置107は、グループIDごとの接続先のクラウド5やUPF44の設定情報などを表示させることができる。
【0062】
[通信制御システムの動作]
次に、上述した構成を有する通信制御装置1を備える通信制御システムの動作を、図5のシーケンスを参照して説明する。図5は、通信制御装置1の学習部11により学習済みの機械学習モデルが構築された後の推論に係る通信制御システムの処理を示す。
【0063】
まず、通信制御装置1は、UDM/UDR41に、グループIDおよびIMSIが対応付けられたグループ化情報を送信する(ステップS100)。グループ化情報は、事前に通信制御装置1に記憶されている。次に、UDM/UDR41は、受信したグループ化情報に基づいて、設定情報テーブルT1(図2)を作成する(ステップS101)。ステップS101では、設定情報テーブルT1の「グループID」および「IMSI」の値が登録され、その他の項目の各値は未だエントリーがない状態である。設定情報テーブルT1は、通信制御装置1の第2記憶部15においても記憶される。
【0064】
その後、グループID「1」の複数のユーザ端末2は、位置登録要求信号を、各々が在圏する基地局3を介してコアネットワーク4に送信する(ステップS102)。位置登録要求信号には、ユーザ端末2のIMSIおよび在圏する基地局3の基地局IDが含まれる。AMF40を経由し、さらにUDM/UDR41が位置登録要求信号を受信すると、UDM/UDR41は、ステップS101で作成された設定情報テーブルT1(図2)のグループ化情報を参照し、受信した位置登録要求信号に含まれる基地局ID、IMSIに対してグループIDを関連付けて、位置登録要求信号をさらに通信制御装置1へ転送する(ステップS103)。なお、ステップS103において、設定情報テーブルT1の基地局IDの値が設定される。
【0065】
次に、通信制御装置1の演算部13は、ステップS103で受信したグループIDが関連付けられた学習済みの機械学習モデルを第1記憶部12から読み出して、演算処理を行う(ステップS104)。ステップS104では、ステップS103で通信制御装置1の取得部10が取得した、同じグループIDのIMSIの基地局IDを未知の入力として、学習済みの機械学習モデルの演算を行う。ステップS104の演算処理により、最適なネットワーク設定情報、すなわちDNNの識別子が出力される。DNNの識別子により特定される接続先のクラウド5のIPアドレスは、設定情報テーブルT1(図2)に登録される。
【0066】
その後、通信制御装置1の通信制御部14は、ステップS104で出力されたDNNの識別子に関連付けられたクラウド5のIPアドレス、さらには、グループID、IMSI、通信制御装置1のIPアドレスを指定して、PCF43に対してPCCポリシーの作成を要求する(ステップS105)。図5の例では、クラウド_2が指定されている。続いて、PCF43は、指定された要件に基づいてPCCポリシーを作成する(ステップS106)。PCF43は、ユーザ端末2のデータ通信がどのUPF44を経由するかについての情報を含むPCCポリシーを作成する。PCCポリシーは、同じグループIDのユーザ端末2からクラウド_2へのデータ通信の通信パスとして最適なUPF44を指定する。
【0067】
続いて、PCF43は、作成したPCCポリシーをSMF42に送信する(ステップS107)。その後、SMF42は、PCCポリシーによって指定されるUPF44に対して、PCCポリシーで規定される通信パスの設定などのユーザプレーン機能に関連するデータ通信パスの設定情報が送信される(ステップS108)。図5の例では、UPF_2が設定されている。次に、UPF44(UPF_2)は、受信したデータ通信パスの設定情報をメモリに登録する(ステップS109)。
【0068】
続いて、UPF44(UPF_2)は、SMF42にACKを送信し、UPF_2のIPアドレスを通知する(ステップS110)。さらに、SMF42は、通信制御装置1にACKを送信して、UPF_2のIPアドレスを通知する(ステップS111)。その後、通信制御装置1は、UDM/UDR41にUPF_2のIPアドレスを通知し、かつ、ユーザ端末2に対してACKを送信する(ステップS112)。その際、ユーザ端末2と通信するUPF_2のIPアドレスは、設定情報テーブルT1(図2)に設定される。また、UDM/UDR41で更新された設定情報テーブルT1は、通信制御装置1の第2記憶部15においても記憶される。さらにその後、ユーザ端末2とUPF44(UPF_2)とクラウド5(クラウド_2)との間のデータ通信の通信パスが確立される(ステップS113)。同じグループID「1」の他のユーザ端末2に対してもステップS102からステップS113までの処理が行われる。
【0069】
以上の処理によって、同じグループIDの複数のユーザ端末2は、全体としてデータ通信の遅延が最も抑制される転送ルートにより、同じクラウド_2に接続し、データ通信を行うことができる。
【0070】
次に、図6および図7のフローチャートを参照して、上述した構成を有する通信制御装置1の動作を説明する。図6は、通信制御装置1による学習処理を示すフローチャートである。図7は、通信制御装置1による演算処理を示すフローチャートである。
【0071】
図6に示すように、まず、学習部11は、教師データを用意する(ステップS1)。具体的には、取得部10によって取得される、同じグループIDの複数のユーザ端末2の各々が在圏する基地局3の基地局IDを教師データとして用いることができる。IMSIごとの基地局IDの組み合わせのセットには、正解ラベルとしてDNNの識別子が事前に与えられる。あるいは、クラウド5の識別情報が正解ラベルとして与えられていてもよい。
【0072】
次に、学習部11は、ステップS1で用意された教師データを用いて、機械学習モデルの学習を行う(ステップS2)。より詳細には、学習部11は、複数のユーザ端末2の各々が在圏している複数の基地局3の基地局IDの組み合わせと、複数のユーザ端末2とのデータ通信の遅延を抑制する接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報との関係を、機械学習モデルを用いて学習する。
【0073】
その後、第1記憶部12は、ステップS2で構築された学習済みの機械学習モデルにグループIDを関連付けて記憶する(ステップS3)。
【0074】
次に、図7に示すように、取得部10は、グループIDが共通の複数のユーザ端末2が在圏している基地局3の基地局IDを取得する(ステップS10)。ステップS10は、図5で説明したステップS103に対応する。つまり、ステップS10では、同じグループIDの複数のユーザ端末2が発信する位置登録要求信号を契機として、各ユーザ端末2が在圏する基地局3の基地局IDが取得される。
【0075】
次に、演算部13は、第1記憶部12からステップS10で取得された、グループIDに対応する学習済みの機械学習モデルを読み出して、ステップS10で取得された基地局IDの組み合わせを未知の入力として学習済みの機械学習モデルの演算を行い、グループ全体のデータ通信の伝送遅延を抑制する接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報を出力する(ステップS11)。ステップS11では、複数の基地局3からの物理的な距離がより短いクラウド5を示すDNNの識別子が出力される。ステップS11は、図5で説明したステップS104に対応する。
【0076】
その後、通信制御部14は、ステップS11で出力されたネットワーク設定情報に基づいて、同じグループIDを有する複数のユーザ端末2の各々を指定して、複数のユーザ端末2に対するUPF44の設定をコアネットワーク4に指示する(ステップS12)。ステップS12は、図5で説明したステップS105に対応する。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態に係る通信制御装置1によれば、複数のユーザ端末2がそれぞれ在圏する基地局3の組み合わせと、複数のユーザ端末2とのデータ通信の伝送遅延を抑制することができる接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報とを機械学習モデルにより学習し、学習済みのネットワーク設定情報を事前にデータベース化する。そのため、より簡易な構成により複数のユーザ端末2の通信の遅延を抑制することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係る通信制御装置1によれば、複数のユーザ端末2をグループ化し、グループ単位で最適な接続先のクラウド5を選択する。そのため、複数のユーザ端末2のグループ単位で、物理的な距離が近いクラウド5を接続先とすることで、より簡易な構成により、より効率的にグループ全体のデータ通信の伝送遅延を抑制することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る通信制御装置1によれば、複数のユーザ端末2が在圏する基地局3で発信する位置登録要求信号を契機として、基地局IDの取得、および学習済みの機械学習モデルの演算、さらには、PCCポリシーの作成要求を行う。そのため、より簡易な構成で、複数のユーザ端末2の通信の遅延を抑制することができる。
【0080】
なお、説明した実施の形態では、学習部11が用いる機械学習モデルは、多層ニューラルネットワークを用いる場合を例示した。しかし、機械学習モデルは、多層パーセプトロン、ランダムフォレストなどの決定木ベースのモデル、勾配ブースティングベースの決定木としてXGBoostやLightGBM、k近傍法、サポートベクターマシン、線形回帰などを用いることができる。
【0081】
また、説明した実施の形態では、学習部11が用いる多層ニューラルネットワークの入力層には、同じグループIDの複数のユーザ端末2が在圏している基地局3の基地局IDが入力される場合について説明した。しかし、複数のユーザ端末2全体でのデータ通信の伝送遅延を抑制するための接続先のクラウド5の情報を出力するモデルを構築することができれば、入力層に入力される特徴量は、IMSIごとの基地局IDだけでなく、論理的な距離を考慮した経路のホップ数、中継ノード数やスイッチング処理時間などのネットワーク遅延、帯域や信頼性等のQoS要件などの値を採用することができる。
【0082】
以上、本発明の通信制御装置、および通信制御方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…通信制御装置、10…取得部、11…学習部、12…第1記憶部、13…演算部、14…通信制御部、15…第2記憶部、2…ユーザ端末、3…基地局、4…コアネットワーク、40…AMF、41…UDM/UDR、42…SMF、43…PCF、44…UPF、5…クラウド、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、41a、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、107…表示装置、NW…ネットワーク。
【要約】
【課題】より簡易な構成により複数のユーザ端末の通信の遅延を抑制することを目的とする。
【解決手段】
通信制御装置1は、複数のユーザ端末2の各々が在圏している複数の基地局3の情報を未知の入力として学習済みの機械学習モデルに与え、学習済みの機械学習モデルの演算を行って、複数のユーザ端末2が接続可能なデータ最終処理ノードである複数のクラウド5のうち、複数のユーザ端末2との通信の遅延を抑制する接続先のクラウド5に関するネットワーク設定情報を出力する演算部13と、演算部13によって出力されたネットワーク設定情報に基づいて、複数のユーザ端末2の各々と接続先のクラウド5との間のデータ通信パスの設定をコアネットワーク4に指示する通信制御部14とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7