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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】乗客コンベアの運行制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 27/00 20060101AFI20250307BHJP
   B66B 29/00 20060101ALI20250307BHJP
   B66B 31/00 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
B66B27/00 B
B66B29/00 K
B66B31/00 B
B66B31/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024552525
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2022039481
(87)【国際公開番号】W WO2024089733
(87)【国際公開日】2024-05-02
【審査請求日】2024-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貴光
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-6487(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113743211(CN,A)
【文献】特開2007-254052(JP,A)
【文献】国際公開第2013/92373(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 - 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの運行制御システムであって、
前記乗客コンベアの利用者を検知する検知部と、
前記乗客コンベアの利用者に向けて音声を出力するスピーカと、
前記乗客コンベアの運転を制御すると共に、前記スピーカの音声出力を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
所定の方向に運行しているときに、前記検知部からの情報に基づいて前記乗客コンベアの降場における利用者の滞留を判定し、滞留していると判定した場合には、前記乗客コンベアの運行を停止させ、前記スピーカから利用者に向けて前記乗客コンベアの乗場側を向くように促す音声を出力させ、
前記検知部からの情報に基づいて前記乗場と前記降場との間の昇降路における利用者の体の向きを判定し、利用者が前記乗場側を向いていると判定した場合には、前記乗客コンベアを逆方向に運行させる、運行制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検知部からの情報に基づいて前記乗場における利用者の有無を判定し、前記乗場に利用者がいないと判定した場合には、前記乗客コンベアを逆方向に運行させる、請求項1に記載の運行制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検知部からの情報に基づいて前記降場における利用者の滞留を判定し、滞留していると判定した場合には、前記スピーカから利用者に向けて前記乗場から離れるように促す音声を出力させる、請求項1に記載の運行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの運行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアにおいては、運行中の乗客コンベアから利用者が降りる際に、降場付近で人の滞留が生じている場合、利用者が誤って衝突・転倒してしまうことが懸念される。そこで、このような事故を未然に防止するために、特許文献1には、降場付近で滞留が生じた場合に、乗客コンベアの運行を停止させる安全装置を備えた乗客コンベアが開示されている。また、特許文献2には、降場付近で滞留が生じた場合に、利用者の乗客コンベアへの進入を防止する進入防止装置を備えた乗客コンベアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-109282号公報
【文献】特開2019-043710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、乗客コンベアの降場付近で人の滞留が生じた場合、利用者の衝突および転倒事故を防止することは重要な課題である。特許文献1および2に開示される方法では、すでに乗客コンベアに乗車した利用者は、降場の滞留が解消するまで乗客コンベアから降りることができない。また、すでに乗車した利用者が乗客コンベアから降りようと、乗客コンベアの進行方向と逆向きに歩行すると、利用者同士の衝突および転倒の危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る乗客コンベアの運行制御システムは、乗客コンベアの利用者を検知する検知部と、乗客コンベアの利用者に向けて音声を出力するスピーカと、乗客コンベアの運転を制御すると共に、前記スピーカの音声出力を制御する制御装置とを備え、制御装置は、所定の方向に運行しているときに、検知部からの情報に基づいて乗客コンベアの降場における利用者の滞留を判定し、滞留していると判定した場合には、乗客コンベアの運行を停止させ、スピーカから利用者に向けて乗客コンベアの乗場側を向くように促す音声を出力させ、乗客コンベアを逆方向に運行させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る乗客コンベアの運行制御システムによれば、降場付近で滞留が生じた際、降場での利用者同士の衝突および転倒を防止しつつ、すでに乗車した利用者が、安全に乗客コンベアから降りることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の一例である運行制御システムを示す模式図である。
図2】実施形態の一例である制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施形態の一例である運行制御の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態として、乗客コンベアの一形態であるエスカレータの運行制御システムについて説明する。なお、本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータを想定しているが、これに限定されない。乗客コンベアは、例えば、動く歩道であってもよい。また、本実施形態のエスカレータは、デパートまたはショッピングモールのような商業施設に設置されることを想定しているが、これに限定されない。エスカレータは、例えば、駅またはオフィスビルに設置されてもよい。
【0009】
本実施形態の運行制御システム1は、図1に示すように、エスカレータ10と、エスカレータ10の利用者を検知する検知部20と、エスカレータ10の利用者に向けて音声を出力するスピーカ30とを備える。更に、運行制御システム1は制御装置40を備える。制御装置40は、エスカレータ10の運行速度および運行方向の制御、並びにスピーカ30の音声出力の制御を行う。また、制御装置40は、検知部20からの情報に基づき、降場で滞留が発生しているか否か等の判定を行う。
【0010】
運行制御システム1は、降場で滞留が生じた際に、エスカレータ10の運行を停止させ、エスカレータ10の利用者の安全等を確保した後、エスカレータ10を逆方向に運行させるシステムである。これにより、降場で利用者の滞留が生じた際、降場での利用者同士の衝突および転倒を防止しつつ、すでに乗車した利用者が、安全にエスカレータ10から降りることができる。降場での滞留が生じているか否かの判定、およびエスカレータ10の利用者の安全が確保されているか否かの判定は、制御装置40が検知部20からの情報に基づいて行う。
【0011】
エスカレータ10は、利用者を搬送するための走行を行うものであり、建物の上部階または下部階に移動する階段状の昇降路11を含む。昇降路11は、無端状に連結され、循環移動して利用者を載置する複数のステップ(図示なし)と、これら複数のステップの両端側に立設された欄干12を含む。昇降路11の両端部には、乗降口13が設けられる。
【0012】
乗降口13は、下部階に設けられる下部乗降口13Aと、上部階に設けられる上部乗降口13Bとを含む。なお、エスカレータ10が下部階から上部階へ運行している場合は、下部乗降口13Aが乗場となり、上部乗降口13Bが降場となる。また、エスカレータ10が上部階から下部階へ運行している場合は、上部乗降口13Bが乗場となり、下部乗降口13Aが降場となる。
【0013】
エスカレータ10は、エスカレータ10を駆動させる駆動装置14を有する。駆動装置14は、電動機、減速機および電磁ブレーキ等で構成され、例えば、上部乗降口13Bの下に設置される。
【0014】
検知部20は、エスカレータ10の利用者を検知するものである。検知部20には、例えば、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、またはミリ波レーダを用いることができる。検知部20は1つの機器のみを用いてもよいし、複数の機器を用いてもよい。例えば、カメラとLiDARを併用してもよい。複数の機器を併用することで、利用者の検知の精度を高めることができる。また、検知部20は複数の場所に設置してもよい。例えば、エスカレータ10の昇降路11、下部乗降口13A、および上部乗降口13Bの上部にそれぞれ設置してもよい。複数の場所に検知部20を設置することで、利用者の検知の精度を高めることができる。なお、昇降路11にいる利用者の体の向きを正確に判定する観点から、昇降路11の利用者を検知する検知部20は、カメラを含むことが好ましい。
【0015】
本実施形態では、検知部20として、1台のカメラ20を用いている。カメラ20は小型の監視用カメラであり、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ等の撮像素子を有する。カメラ20は昇降路11の中央付近の上部に設置され、エスカレータ10の昇降路11、下部乗降口13A、および上部乗降口13Bを撮影している。カメラ20はエスカレータ10の利用者を常時撮影し、その画像を制御装置40にリアルタイムで送信する。
【0016】
スピーカ30は、エスカレータ10の利用者に向けて音声を出力する装置である。スピーカ30は、制御装置40から送信される信号を音声メッセージに変換する機能を有する。また、スピーカ30には電気信号を増幅させるアンプが設けられていてもよい。
【0017】
本実施形態では、スピーカ30として、下部スピーカ30Aが下部乗降口13Aの下部に設置され、上部スピーカ30Bが上部乗降口13Bの下部に設置されている。また、昇降路スピーカ30C、30D、および30Eが左右の欄干12の一方に設置されている。以下、単にスピーカ30と記載した場合には、下部スピーカ30A、上部スピーカ30B、および昇降路スピーカ30C,30D,30Eのすべてを含む。
【0018】
制御装置40は、エスカレータ10の運行速度および運行方向の制御、並びにスピーカ30の音声出力の制御を行う。具体的には、制御装置40はエスカレータ10が所定の方向に運行しているときに、降場で滞留が発生するとエスカレータ10の運行を停止させる。そして、制御装置40はスピーカ30から利用者に向けてエスカレータ10の乗場側を向くように促す音声を出力させた後に、エスカレータ10を逆方向に運行させる。制御装置40には、システムの制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)と、情報の送受信を行う通信装置とが搭載される。本実施形態では、制御装置40は、上部乗降口13Bの下部に設置されているが、設置場所はこれに限定されない。制御装置40は、例えば、エスカレータ10が設置する建物内または遠隔地の監視センタ内に設置されていてもよい。
【0019】
図2を用いて、制御装置40の機能構成について説明する。図2は、制御装置40の機能構成を示すブロック図である。
【0020】
制御装置40は、検知部としてのカメラ20、スピーカ30、および駆動装置14に接続されている。制御装置40は、カメラ20で撮影された画像を取得、解析し、滞留等の判定を行う判定部41と、エスカレータ10の運行速度や運行方向の制御を行う運行制御部45と、スピーカ30の音声出力の制御を行うスピーカ制御部46とを含む。
【0021】
判定部41は、カメラ20によって撮影された画像の解析を行う。判定部41は、降場での利用者の滞留を判定する降場判定部42と、昇降路11での利用者の有無および体の向きを判定する昇降路判定部43と、乗場での利用者の有無を判定する乗場判定部44とを含む。
【0022】
降場判定部42は、カメラ20によって撮影された降場の画像をリアルタイムで解析し、降場での利用者の滞留の有無を判定する。降場判定部42が降場で滞留が発生していると判定すると、運行制御部45はエスカレータ10を停止させる。これにより、降場付近での利用者同士の衝突を回避することができる。
【0023】
降場判定部42が降場での滞留を判定する方法として、例えば、撮影した画像から動体を検出して、この動体を利用者と認識し、認識した人数が所定の数を超えた場合、または同一人物が所定の時間を超えて滞在している場合に、滞留が発生していると判定する方法がある。また、機械学習によって利用者の人数を算出し、降場での滞留の有無を判定してもよい。本実施形態では、カメラ20によって撮影された画像を用いて降場の滞留の有無を判定したが、その他の手法を用いて滞留を判定してもよい。例えば、LiDARまたはミリ波レーダを用いて、降場に滞在している人数を算出し、降場での滞留の有無を判定してもよい。
【0024】
昇降路判定部43は、カメラ20によって撮影された昇降路11にいる利用者の画像を解析し、昇降路11の利用者の有無および利用者の体の向きを判定する。降場での滞留発生に伴いエスカレータ10の運行が停止した際に、昇降路判定部43が、昇降路11にいる利用者が乗場側を向いたことを判定すると、運行制御部45はエスカレータ10を逆走させる。これにより、利用者はエスカレータ10の逆走時にバランスを崩すことなく、安全にエスカレータ10から降りることができる。また、エスカレータ10が逆走している際に、昇降路判定部43が昇降路11に利用者がいない、つまり、全ての利用者がエスカレータ10から降りたことを判定すると、運行制御部45はエスカレータ10の逆走を停止させる。これにより、逆走中のエスカレータ10に誤って利用者が進入し、転倒することを防止できる。
【0025】
昇降路判定部43が昇降路11の利用者の有無を判定する方法として、例えば、昇降路11全体をカメラ20で撮影し、画像から動体を検出し、この動体を利用者と認識することで、昇降路11の利用者の有無を判定する方法がある。また、昇降路11の利用者の有無を判定する方法として、例えば、乗場(エスカレータ10逆走時の降場)をカメラ20で撮影し、所定の時間の間、画像から利用者が検出されない場合に昇降路11に利用者がいないと判定する方法がある。
【0026】
昇降路判定部43が昇降路11にいる利用者の体の向きを判定する方法として、例えば、機械学習によって利用者の顔を認識し、顔の向きから体の向きを判定する方法がある。また、例えば、機械学習によって利用者の姿勢を認識し、利用者の姿勢から体の向きを判定する方法がある。本実施形態では、カメラ20によって撮影された画像を用いて昇降路11にいる利用者の体の向きを判定したが、その他の手法を用いて体の向きを判定してもよい。
【0027】
乗場判定部44は、カメラ20によって撮影された乗場の画像を解析し、乗場での利用者の有無を判定する。降場での滞留発生に伴いエスカレータ10の運行が停止した際に、乗場判定部44が、乗場に利用者がいないことを判定すると、運行制御部45はエスカレータ10を逆走させる。これにより、すでにエスカレータ10に乗車している利用者と乗場付近の利用者との衝突を回避することができる。
【0028】
乗場判定部44が乗場の利用者の有無を判定する方法として、例えば、撮影した画像から動体を検出して、この動体を人と認識し、利用者の有無を判定する方法がある。なお、本実施形態では、カメラ20の画像を用いて降場の滞留の有無を判定したが、その他の手法を用いて滞留を判定してもよい。例えば、LiDARまたはミリ波レーダを用いて、乗場での利用者の有無を判定してもよい。
【0029】
本実施形態においては、制御装置40は判定部41の機能を含んでいるが、制御装置40から判定部41は独立して設けてもよい。例えば、検知部20に判定部41の機能を設け、判定部41の判定結果を制御装置40へ送信してもよい。
【0030】
判定部41は、判定結果をエスカレータ10が設置する建物内または遠隔地の監視センタへ送信してもよい。そして、監視センタに常駐する監視員が、カメラ20が撮影する画像をもとに判定部41の判定結果の正確性を確認してもよい。また、判定部41は一部の判定結果のみを監視センタに送信してもよい。例えば、降場判定部42の判定結果のみを監視センタに送信してもよい。
【0031】
運行制御部45は、駆動装置14に指令を伝えることで、エスカレータ10の運行速度の調整、運行の停止および運行方向の制御を行う。運行制御部45は、エスカレータ10の運行を停止させる際、エスカレータ10の運行速度を段階的に減速させた後に、エスカレータ10を停止させることが好ましい。エスカレータ10の運行速度を段階的に減速させることで、エスカレータ10に乗車中の利用者の転倒・衝突を回避することができる。また、運行制御部45は、判定部41およびスピーカ制御部46に現在のエスカレータ10の運行方向および運行速度を送信する機能を備えていてもよい。
【0032】
スピーカ制御部46は、スピーカ30の音声出力の制御を行う。スピーカ制御部46は、あらかじめスピーカ制御部46に記憶されたアナウンス内容を出力させてもよいし、エスカレータ10が設置する建物内または遠隔地の監視センタ内の音声を出力させてもよい。スピーカ制御部46は、全てのスピーカ30から音声を出力させてもよいし、一部のスピーカ30からのみ音声を出力させてもよい。
【0033】
スピーカ制御部46は、例えば、昇降路11にいる利用者に乗場側を向くよう誘導する場合、欄干12に設けられている昇降路スピーカ30C,30D,30Eを選択する。そして、スピーカ制御部46は、「エスカレータが逆走します。乗場側を向いてください」というメッセージを昇降路スピーカ30C,30D,30Eから出力させる。これにより、エスカレータ10に乗車中の利用者は、エスカレータ10の逆走時にバランスを崩すことなく安全にエスカレータ10から降りることができる。
【0034】
スピーカ制御部46は、例えば、エスカレータ10を逆方向に運行させる際に、乗場判定部44が乗場に人がいると判定した場合、乗場に設けられている下部スピーカ30Aまたは上部スピーカ30Bを選択する。そして、スピーカ制御部46は、「エスカレータが逆走します。乗場から離れてください」というメッセージを下部スピーカ30Aまたは上部スピーカ30Bから出力させる。これにより、エスカレータ10に乗車中の利用者と乗場付近の利用者との衝突を防止することができる。
【0035】
本実施形態では、エスカレータ10の利用者に向けて、スピーカ30を用いて誘導を行っているが、その他の誘導機器を用いて誘導を行ってもよい。例えば、利用者に向けて体の向きを変えるよう促すメッセージ、または乗場への進入禁止を示すメッセージを表示する表示装置を設けてもよい。また、例えば、降場で滞留が発生していることを示すパトライト(登録商標)を設けてもよい。
【0036】
図3を用いて、本実施形態における運行制御システム1の動作について説明する。図3は、降場における滞留の発生から、エスカレータ10の逆方向への運行を停止させるまでの運行制御システム1の動作を示すフローチャートであり、制御装置40の処理動作が示されている。
【0037】
エスカレータ10が上部階から下部階に向かって下降中である場合を想定する。この場合、上部乗降口13Bが乗場、下部乗降口13Aが降場となる。エスカレータ10の運行中、カメラ20は降場を連続的に撮影し、リアルタイムで制御装置40に撮影した画像を送信する。降場判定部42はカメラ20の画像を受信すると(ステップS11)、当該画像を解析し、降場での滞留が発生しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0038】
ここで、降場判定部42が降場で滞留が発生していると判定すると(ステップS12:Yes)、運行制御部45はエスカレータ10の運行速度を段階的に減速させる(ステップS13)。そして、エスカレータ10の運行速度が十分減速した後に、運行制御部45はエスカレータ10の運行を停止させる(ステップS14)。また、降場判定部42が降場で滞留が発生していないと判定すると(ステップS12:No)、降場判定部42は降場の監視を継続する。
【0039】
エスカレータ10の運行停止後、スピーカ制御部46は乗場に設けられている上部スピーカ30Bを選択し、乗場周辺の利用者に対し、乗場から離れるよう誘導する音声を出力させる(ステップS15)。そして、乗場判定部44が、カメラ20の画像を受信し(ステップS16)、乗場に利用者がいるか否かを判定する(ステップS17)。
【0040】
ここで、乗場判定部44が乗場に利用者がいないと判定すると(ステップS17:Yes)、スピーカ制御部46は、欄干12に設けられている昇降路スピーカ30C,30D,30Eを選択し、昇降路11にいる利用者に向けて乗場側を向くよう誘導する音声を出力させる(ステップS18)。また、乗場判定部44が乗場に利用者がいると判定すると(ステップS17:No)、ステップS15に戻り、スピーカ制御部46は再度乗場付近の利用者に向けて乗場から離れるよう誘導する音声を出力させる。
【0041】
昇降路11にいる利用者に向けて乗場側を向くよう誘導する音声を出力させると(ステップS18)、昇降路判定部43が、カメラ20の画像を受信し(ステップS19)、昇降路11にいる利用者の体の向きが、乗場側を向いているか否かを判定する(ステップS20)。
【0042】
ここで、昇降路判定部43が昇降路11にいる利用者が乗場側を向いていると判定すると(ステップS20:Yes)、運行制御部45はエスカレータ10を当初の進行方向とは逆向き、つまり、下部階から上部階に向かってエスカレータ10を逆走させる(ステップS21)。また、昇降路判定部43が、利用者が乗場側を向いていないと判定すると(ステップS20:No)、ステップS18に戻り、再度昇降路11にいる利用者に向けて乗場側を向くよう誘導する音声を出力させる。
【0043】
このようにしてエスカレータ10が下部階から上部階に向かって逆走されると、昇降路判定部43は、カメラ20の画像を受信し(ステップS22)、昇降路11に利用者がいるか否かの判定する(ステップS23)。
【0044】
ここで、昇降路判定部43が昇降路11に利用者がいないと判定すると(ステップS23:Yes)、運行制御部45はエスカレータ10の逆走を停止させる(ステップS24)。また、昇降路判定部43が昇降路11に利用者がいると判定すると(ステップS23:No)、ステップS22に戻り、運行制御部45は、エスカレータ10の逆走を継続させる。
【0045】
本実施形態においては、降場判定部42が降場で滞留が発生していると判定すると、運行制御部45によりエスカレータ10の運行速度を段階的に減速させているが、降場判定部42の判定結果をエスカレータ10が設置する建物内または遠隔地の監視センタへ送信してもよい。そして、監視センタに常駐する監視員がカメラ20の撮影画像を確認し、降場で滞留していると判断した場合に、運行制御部45はエスカレータ10の運行速度を段階的に減速させてもよい。これにより、降場判定部42の誤検知により、エスカレータ10の運行が停止することを防止できる。
【0046】
また、本実施形態においては、降場判定部42による降場で滞留が発生しているか否かの判定は、エスカレータ10の運行速度を減速する前にのみ行っているが、エスカレータ10の運行速度を減速している途中、またはエスカレータ10の運行停止後に、降場判定部42により降場での滞留の有無を判定してもよい。そして、降場判定部42が降場での滞留が解消していると判定した場合には、運行制御部45はエスカレータ10をもとの運行速度に戻してもよい。これにより、降場での滞留が解消された場合に、スムーズにエスカレータ10の運行を再開できる。
【0047】
また、本実施形態においては、エスカレータ10の逆走中、判定部41により判定を行っていないが、エスカレータ10の逆走中に判定部41により判定を行ってもよい。例えば、エスカレータ10の逆走中に、乗場判定部44によりエスカレータ10への利用者の進入の有無を判定してもよい。利用者の進入があった場合、運行制御部45は、エスカレータ10の運行速度を減速させる、またはエスカレータ10の運行を停止させてもよい。また、例えば、エスカレータ10の逆走中に、昇降路判定部43により昇降路11にいる利用者の体の向きを判定してもよい。昇降路11にいる利用者が降場側(エスカレータ10逆走時の乗場側)を向いている場合、スピーカ制御部46は、昇降路11にいる利用者に向けて乗場側(エスカレータ10逆走時の降場側)を向くよう誘導する音声を出力させてもよい。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態およびその他の変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 運行制御システム、10 エスカレータ、11 昇降路、12 欄干、13 乗降口、13A 下部乗降口、13B 上部乗降口、14 駆動装置、20 検知部(カメラ)、30 スピーカ、40 制御装置、41 判定部、42 降場判定部、43 昇降路判定部、44 乗場判定部、45 運行制御部、46 スピーカ制御部
図1
図2
図3