(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250307BHJP
H01C 7/18 20060101ALI20250307BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20250307BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01C7/18
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
H01F27/29 123
H01F17/00 D
(21)【出願番号】P 2024558232
(86)(22)【出願日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2024023863
【審査請求日】2024-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2023120612
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】直川 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 竜也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸史郎
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-034503(JP,A)
【文献】特開2007-073883(JP,A)
【文献】特開2012-142478(JP,A)
【文献】特開2015-023120(JP,A)
【文献】特開平05-335175(JP,A)
【文献】国際公開第2010/137379(WO,A1)
【文献】特開2006-147901(JP,A)
【文献】特開2006-237078(JP,A)
【文献】特開2010-003891(JP,A)
【文献】特開2021-013016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/228- 4/252
H01C 1/14 - 1/148
H01C 7/18
H01F 27/29
H01F 17/00 -17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交互に積層されている誘電体層及び内部電極を有する有効部と、
前記有効部に対して前記誘電体層及び前記内部電極の積層方向において重なっているカバーと、
前記有効部及び前記カバーの前記積層方向に沿う側面を覆って、前記内部電極の外縁のうちの一部である部分縁部に接続されている外部電極と、
を有しており、
前記外部電極のうち前記部分縁部の長さを幅として前記積層方向に広がっている部分において、前記有効部の側面を覆っている部分を第1部分と称し、前記カバーの側面を覆っている部分を第2部分と称するとき、前記第1部分における酸化物相の体積割合が、前記第2部分における酸化物相の体積割合よりも小さ
く、
前記外部電極は、
前記有効部の側面及び前記カバーの側面に密着している第1金属層と、
前記第1金属層の上から前記有効部の側面及び前記カバーの側面に重なっている第2金属層と、を有しており、
前記第1部分において、
前記第1金属層は不連続に広がっており、これにより、前記第1金属層の非配置領域が構成されており、
前記第2金属層は、前記非配置領域にて前記有効部の側面に密着しており、
前記カバーは、当該カバーの前記有効部とは反対側の第1面のうちの前記第2部分の側の一部領域及び前記カバーの側面のうちの前記第1面の側の一部領域を構成し、前記内部電極よりも厚く、前記第1金属層が密着している、第1ダミー電極を有している
積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1金属層及び前記第2金属層それぞれは多結晶体によって構成されており、
前記第1金属層における結晶粒の平均粒径は、前記第2金属層における結晶粒の平均粒径よりも小さい
請求項
1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記有効部の側面のうち前記第1部分によって覆われている第1領域の面積に対する前記第1領域を覆っている前記第1金属層の面積の割合は、50%以上95%以下である
請求項
1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1部分をその法線方向に見たときに、前記第1金属層は、前記積層方向の互いに異なる位置にて、前記積層方向に交差する方向に延びている複数の延在部を有している
請求項
1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記複数の延在部の少なくとも1つは、前記交差する方向における中途に途切れを有している
請求項
4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記複数の延在部は、複数の前記内部電極の前記部分縁部を覆うようにして前記部分縁部に沿って延びている
請求項
4に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記複数の内部電極の少なくとも1つにおいて、前記部分縁部は、前記交差する方向における中途に前記有効部の側面から露出していない非露出部を有しており、
前記非露出部を有している部分縁部を覆っている延在部は、前記非露出部に重なる位置に途切れを有している
請求項
6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記部分縁部の厚みが、前記内部電極の、前記部分縁部よりも内側の部分に対して厚くなっている
請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記有効部は、前記積層方向に見て矩形状を呈しており、
前記カバーは、
前記積層方向に透視して前記有効部の4隅に位置している4つの
第2ダミー電極と、
前記有効部とは反対側から前記4つの
第2ダミー電極を覆っている絶縁層と、を有しており、
4つの前記外部電極が前記4つの
第2ダミー電極に固着されている
請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品として、例えば、積層セラミックコンデンサが知られている(例えば下記特許文献1)。積層セラミックコンデンサは、例えば、コンデンサとしての機能を直接的に担う本体部と、コンデンサを回路基板等に実装するための外部電極とを有している。本体部は、交互に積層された誘電体層と平板状の内部電極とを有している。内部電極の縁部は、本体部の側面(積層方向に沿う面)から露出している。外部電極は、例えば、本体部の側面を覆う金属層によって構成されている。特許文献1では、外部電極の本体部(セラミックス)に対する固着力を向上させるために、外部電極に酸化物を形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るコンデンサは、有効部と、カバーと、外部電極と、を有している。前記有効部は、交互に積層されている誘電体層及び内部電極を有する。前記カバーは、前記有効部に対して前記誘電体層及び前記内部電極の積層方向において重なっている。前記外部電極は、前記有効部及び前記カバーの前記積層方向に沿う側面を覆って、前記内部電極の外縁のうちの一部である部分縁部に接続されている。前記外部電極のうち前記部分縁部の長さを幅として前記積層方向に広がっている部分において、前記有効部の側面を覆っている部分を第1部分と称し、前記カバーの側面を覆っている部分を第2部分と称する。このとき、前記第1部分における酸化物相の体積割合が、前記第2部分における酸化物相の体積割合よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態に係るコンデンサを示す斜視図。
【
図5】コンデンサのうち
図4に示した部分の一部を+D1側から見た図。
【
図10】第2実施形態に係るコンデンサを示す斜視図。
【
図11】実施例及び比較例に係るコンデンサの特性を示す図表。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものである。従って、例えば、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、寸法比率等が図面同士で一致しないこともある。特定の形状及び/又は寸法等が誇張されたり、細部が省略されたりすることがある。ただし、上記は、実際の形状及び/又は寸法が図面の通りとされたり、図面から形状及び/又は寸法の特徴が抽出されたりしてもよいことを否定するものではない。
【0007】
相対的に後に説明される態様については、基本的に、相対的に先に説明される態様との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明される態様と同様とされたり、先に説明される態様から類推されたりしてよい。異なる態様同士で互いに対応する構成要素については、便宜上、相違点があっても、同一の符号を用いることがある。
【0008】
以下の説明において、「矩形」(又は矩形状)、「正方形」(又は正方形状)及び「長方形」(又は長方形状)というとき、その角部は、上記の形状の概念が成立する範囲で、曲面等によって面取りがなされていても構わない。例えば、2辺が成す角部は、2辺のうち短い方の長さの1/5以下、1/10以下又は1/20以下の長さで面取りがなされていても構わない。なお、微視的に見たときに、製造の精度(誤差)に起因して角部が丸くなっていてもよいことは当然である。他の多角形等についても同様である。
【0009】
(実施形態の概要)
図1は、第1実施形態に係るコンデンサ1(積層型電子部品の一例)を示す斜視図である。
図1及び後述する他の図には、便宜上、直交座標系D1D2D3が付されている。コンデンサ1は、いずれが上方又は下方とされて用いられてもよい。ただし、実施形態の説明では、便宜上、+D3側を上方として、上面及び下面等の語を用いることがある。
【0010】
コンデンサ1は、例えば、積層セラミックコンデンサである。コンデンサ1は、概略直方体状の本体部3と、平面視において(D3方向に見て)本体部3の4隅に位置している4つの外部電極5とを有している。外部電極5は、コンデンサ1と他の電子部品(例えば不図示の回路基板)との電気的接続に寄与する。
【0011】
図3は、
図1のIII-III線における断面図である。本体部3は、例えば、有効部13と、有効部13の上面及び下面にそれぞれ重なる2つのカバー15とを有している。有効部13は、交互に重なっている複数の誘電体層7と複数の内部電極9とを有している。すなわち、有効部13は、コンデンサとしての機能を直接的に担う。カバー15は、例えば、本体部3の強度向上に寄与する。
【0012】
本体部3の外面のうち、複数の誘電体層7と複数の内部電極9の積層方向(D3方向)に沿う面を側面と称するものとする。複数の内部電極9は、その縁部の一部(部分縁部9cと称することがある。)が本体部3の側面から露出している。外部電極5は、本体部3の側面を覆っており、部分縁部9cと固着されている。これにより、内部電極9と外部電極5とは電気的に接続されている。誘電体層7を介して互いに対向している内部電極9は、互いに異なる外部電極5に接続されている。
【0013】
外部電極5の、本体部3の側面を覆っている部分のうち、有効部13の側面を覆っている部分を第1部分5aと称し、カバー15の側面を覆っている部分を第2部分5bと称するものとする。このとき、第1部分5aの酸化物相の体積割合は、第2部分5bの酸化物相の体積割合よりも小さい。これにより、例えば、電気的特性を向上させることができる。
【0014】
より詳細には、例えば、酸化物相は、一般に、酸化されていない相に比較して、電気抵抗率が高い。従って、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を低減することによって、コンデンサ1の外部と内部電極9との間の抵抗値を低減することができる。その結果、例えば、等価直列抵抗(ESR)の低減、Q値の向上、発熱量の低減、及び高周波性能の向上が期待される。
【0015】
また、例えば、後に詳述するように、
図4~
図6に示す例では、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を低減する方法に起因して、第1部分5aにおける酸化物相の低減は、ESRの低減を生じるとは限らない。ただし、上記方法に伴って、外部電極5の本体部3に対する固着強度が向上する。その結果、例えば、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を多くして固着強度を向上させる態様に比較して、固着強度向上とESRの増加抑制との両立を図りやすい。
【0016】
また、例えば、外部電極5の主成分が銅である場合においては、酸化物相は整流作用を示し、ひいては、コンデンサ1の特性を不安定にする可能性がある。しかし、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合が少ないことによって、そのような不都合が生じる蓋然性を低減できる。
【0017】
上記の体積割合の比較は、本体部3の外周に沿う方向(誘電体層7の外縁に沿う方向)に関して、内部電極9の部分縁部9cの長さ範囲においてなされてよい。具体的には、以下のとおりである。
【0018】
図1では、本体部3の-D2側の側面にて、-D1側かつ-D2側の外部電極5と接合される1つの部分縁部9cが例示されている。図示の例では、部分縁部9cの長さ(D1方向)と、外部電極5の、部分縁部9cに沿う方向(D1方向)における長さとは概ね同等である。しかし、外部電極5は、2点鎖線で示すように、部分縁部9cの長さよりも更に+D1側へ広げることもできる。このような場合において、外部電極5のD1方向の長さ全体に亘って、有効部13の側面を覆っている部分と、カバー15の側面を覆っている部分とを比較することは、上記の効果に照らして必ずしも合理的とは言えない。
【0019】
そこで、外部電極5のうち、部分縁部9cの長さを幅としてD3方向(誘電体層7の積層方向)に広がっている部分(以下、「対象部分5c」と称することがある。)を対象として、酸化物相の体積割合が比較されてよい。すなわち、既述の第1部分5aは、対象部分5cのうちの有効部13の側面を覆う部分とされてよい。第2部分5bは、対象部分5cのうちのカバー15の側面を覆う部分とされてよい。通常、複数の内部電極9において部分縁部9cの長さは互いに同じであるが、互いに異なる場合においては、全ての部分縁部9cを包含する最小範囲の長さを部分縁部9cの長さ(対象部分5cの幅)として用いてよい。
【0020】
以上が実施形態の概要である。上記から理解されるように、コンデンサ(1)は、有効部13と、カバー15と、これらの側面を覆っている外部電極5とを有している限り、種々の構成とされてよい。すなわち、
図1に示されたコンデンサ1(第1実施形態)の全体構成は、一例に過ぎない。ただし、便宜上、以下では、コンデンサ1の全体構成を説明し、次に、コンデンサ1の構成を前提として、外部電極5の酸化物相等について説明する。その後、他のコンデンサ(第2実施形態等)の全体構成についても述べる。
【0021】
具体的には、概略、下記の順で実施形態の説明を行う。
1.第1実施形態に係るコンデンサの構成(
図1~
図3)
1.1.全体構成
1.2.有効部
1.3.カバー
1.3.1.カバー全般
1.3.2.絶縁層
1.3.3.ダミー電極
1.4.外部電極の概略構成
2.外部電極の具体的構成(
図4~
図9)
2.1.酸化物相
2.2.第1金属層のパターン
2.3.第1金属層及び第2金属層の材料及び寸法
2.4.電極の具体的構成の他の例
2.4.1.内部電極の部分縁部の他の例(
図8)
2.4.2.外部電極の積層構造の他の例(
図8)
2.4.3.第1金属層のパターンの他の例(
図9)
3.コンデンサの製造方法
3.1.コンデンサ全体の製造手順
3.2.第1金属層のパターンの形成方法
3.3.内部電極の特定形状の形成方法
3.4.酸化物相の体積割合の低減方法
4.他の実施形態に係るコンデンサの構成(
図10)
5.実施例(
図11)
6.実施形態のまとめ
【0022】
(1.第1実施形態に係るコンデンサの構成)
(1.1.全体構成)
図1に示す第1実施形態に係るコンデンサ1は、例えば、表面実装されるチップ型部品として構成されている。具体的には、例えば、コンデンサ1は、不図示の回路基板に対して-D3側又は+D3側の面を対向させて配置される。そして、回路基板の4つのパッドと4つの外部電極5とがそれぞれ不図示の導電性の接合材(例えばはんだ)によって接合されることによって、回路基板に実装される。
【0023】
コンデンサ1の構成(内部構造及び外形)は、例えば、概略、D1D2平面に平行でコンデンサ1の厚さ方向の中心を通る対称面(不図示)に対して面対称である。また、コンデンサ1の構成は、例えば、D3方向に見て180°回転対称である。もちろん、コンデンサ1は、このような対称性を有していなくてもよい。
【0024】
本体部3の形状は、例えば、概略、薄型の直方体状である。この直方体は、平面視において、正方形であってもいし(図示の例)、長方形(正方形を除くものとする。以下、同様。)であってもよい。なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断りなく、正方形を前提とした説明をすることがある。
【0025】
本体部3(又はコンデンサ1)の具体的な寸法は任意である。コンデンサ1が比較的小型なものである場合における寸法の例を挙げると、本体部3(又はコンデンサ1)において、D1方向及びD2方向の長さそれぞれは、300μm以上1000μm以下であり、D3方向の厚さは、30μm以上100μm以下である。
【0026】
なお、同一種類の複数の構成要素(例えば5、7、9、15、17、19又は21等)は、例えば、特に断りが無い限り、また、矛盾等が生じない限り、互いに同じ(又は対応する)形状、大きさ、材料及び位置等で設けられていてよい。例えば、複数の誘電体層7は、互いに同じ形状、大きさ及び材料で構成されてよく、平面透視において互いに過不足なく重なっていてよい。従って、特に断りが無い限り、また、矛盾等が生じない限り、一の構成要素の説明は、同一種類の複数の構成要素に共通していると捉えられてよい。また、平面透視において同一種類の複数の構成要素が過不足無く重なってよいことについて、個別の言及を省略することがある。
【0027】
1つの層状(膜状)の構成要素(例えば5、7、9、17又は21等)は、その全体が一種の材料によって構成されていてよい。ただし、互いに異なる材料からなる層が重ねられて構成されていても構わない。
【0028】
(1.2.有効部)
図3に示す有効部13の形状は、例えば、概略、薄型の直方体状である。その平面形状は、本体部3の平面形状と同じである。有効部13の具体的な厚さは任意である。例えば、有効部13の厚さは、本体部3の厚さの0.2以上0.9以下とされてよい(いずれの厚さも絶縁性部分の表面を基準とする。)。
【0029】
誘電体層7は、基本的に(少なくとも内部電極9間において)一定の厚さを有している層状である。誘電体層7の厚さは、コンデンサ1に要求される特性等に応じて適宜に設定されてよい。比較的薄い厚さの例を挙げると、内部電極9間の厚さは、3μm以下又は1μm以下である。誘電体層7の平面視における形状及び寸法は、有効部13の平面視における形状及び寸法と同じである。誘電体層の材料は、例えば、セラミックスであり、その具体的な種類も任意である。誘電体層7(内部電極9)の積層数は任意である。一例を挙げると、10層以上30層以下である。
【0030】
内部電極9は、一定の厚さを有している層状である。内部電極9の厚さは任意であり、例えば、誘電体層7のうちの内部電極9間の領域の厚さに対して、薄くてもよいし、同程度でもよいし、厚くてもよい。内部電極9の材料は、例えば、金属である。金属の具体的な種類は任意であり、例えば、卑金属(例えばNi及びCu)である。
【0031】
図2は、コンデンサ1の分解斜視図である。
図2は、内部電極9等の形状及び相対位置を把握するための模式的なものである。従って、
図2では、種々の層が
図3に比較して少ない数で示されている。
【0032】
内部電極9は、例えば、平面視において、矩形状(図示の例では正方形状)の電極本体9aと、電極本体9aの互いに対向する1対の角部から延び出ている1対の引出電極9bとを有している。内部電極9は、誘電体層7の外縁よりも内側に位置しており、有効部13の側面から露出していない。1対の引出電極9bは、誘電体層7の外縁に至っており、本体部3の互いに対向する1対の角部に位置している1対の外部電極5に接続されている。
【0033】
誘電体層7を挟んで互いに対向している(誘電体層7を挟んで互いに隣り合っている)2つの内部電極9において、一方の内部電極9の1対の引出電極9bと、他方の内部電極9の1対の引出電極9bとは、平面透視において互いに異なる対角線上に位置している。そして、両者は、互いに異なる1対の外部電極5に接続されている。
【0034】
電極本体9a及び引出電極9bの各種の寸法は任意である。例えば、引出電極9bの誘電体層7の1辺上の長さ(すなわち部分縁部9cの長さ)は、外部電極5の上記1辺に沿う長さと概ね同じである。
【0035】
(1.3.カバー)
(1.3.1.カバー全般)
図3に示すカバー15は、例えば、有効部13の上面及び下面の双方に設けられている。図示の例とは異なり、カバー15は、有効部13の上面及び下面の一方のみに設けられていても構わない。カバー15は、例えば、平面透視において有効部13と過不足無く重なる形状及び寸法を有する層状である。カバー15の厚さは、概略、一定である。カバー15の厚さが本体部3の厚さに占める割合は、有効部13の厚さが本体部3の厚さに占める割合(既述)の裏返しであることから、その具体的な割合の例示については省略する。
【0036】
各カバー15は、例えば、少なくとも1つ(図示の例では複数)の絶縁層17と、絶縁層17に重なっている少なくとも1つ(図示の例では複数)のダミー層21と、を有している。各ダミー層21は、例えば、
図2に示すように、4つのダミー電極19を有している。ダミー電極19は、例えば、カバー15の補強、及び/又は本体部3と外部電極5との接続強度の向上に寄与する。図示の例とは異なり、カバー15は、1つ以上の絶縁層17のみを有していてもよい(ダミー層21を有していなくてもよい。)。
【0037】
なお、ダミー層21が設けられていると、例えば、無電解めっき又は電解めっきによってダミー層21の表面上に金属を析出させて外部電極5を作製することができる。また、ダミー層21の有無によらず、ディップ法及び印刷法によって外部電極5を形成することができる。
【0038】
絶縁層17とダミー層21とは1つずつ交互に重なっている。換言すれば、全ての絶縁層17の境界にダミー層21が設けられている。図示の例とは異なり、ダミー層21は、複数の境界のうち一部にのみ設けられていてもよい。例えば、相対的に有効部13に近い1つ以上の境界にはダミー層21が設けられず、相対的に有効部13から遠い1つ以上の境界のみにダミー層21が設けられていてもよい。ただし、このような場合、ダミー層21を介在させずに互いに密着している2以上の絶縁層17は、1つの絶縁層17として捉えられても構わない。
【0039】
ダミー層21は、1つのみであってもよい。
図12に
図3の例とは異なる例を示す。この例では、本体部3の上下面それぞれにおいて、ダミー層21は1層とされている。より詳細には、このダミー層21は、本体部3の上面又は下面から露出しており、1層の絶縁層17又は1層の誘電体層7によって内部電極9と絶縁されている。
図12の例では、ダミー層21は、
図3の例よりも厚くされており、例えば、カバー15の厚さの1/2以上又は2/3以上の厚さを有している(もちろん、そのような厚さを有していなくてもよい。)。なお、便宜上、実施形態の説明では、特に断りなく、
図12の態様を前提とすることがある。
【0040】
(1.3.2.絶縁層)
絶縁層17は、導体層(9及び19)との重なりの有無の相違に起因する厚みの変化を除いて、概略、一定の厚さを有している層状である。絶縁層17の平面形状は、例えば、誘電体層7の平面形状と同じである。絶縁層17の材料は任意である。例えば、絶縁層17の材料は、誘電体層7の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、絶縁層17の材料は、例えば、セラミックスであってもよいし、セラミックス以外の材料であってもよい。
【0041】
絶縁層17の厚さは任意である。例えば、絶縁層17の厚さは、誘電体層7の厚さに対して(いずれも導体層間の厚さ、又はいずれも導体層に重なっていない領域の厚さとする。本段落において、以下、同様。)、厚くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、薄くてもよい。例えば、絶縁層17の厚さは、誘電体層7の厚さの2倍以上、5倍以上又は10倍以上とされてよく、また、5μm以上20μm以下とされてよい。
【0042】
図3の例では、有効部13の最上層は、内部電極9を含む導体層とされている。そして、最上層の内部電極9は、上部のカバー15が有する最下層の絶縁層17によって覆われている。ただし、最上層の内部電極9と、上部のカバー15が有するダミー電極19とが絶縁される限り、上記の境界における構成は、図示の例とは異なっていてもよい。
【0043】
例えば、有効部13の最上層は、誘電体層7とされてよい。そして、最上層の誘電体層7と上部のカバー15の最下層の絶縁層17とが重なっていたり、最上層の誘電体層7と最下層のダミー電極19とが重なっていたりしてもよい。また、全ての誘電体層7と全ての絶縁層17とは、その材料及び厚さ等から区別ができなくても構わない。別の観点では、有効部13とカバー15との境界は曖昧であっても構わない。
【0044】
ただし、いずれの態様においても、内部電極9間の材料は容量の増大に係る誘電体として機能する。また、複数の内部電極9のうち最上層のものと上部のカバー15が有する複数のダミー電極19のうち最下層のものとの間の材料は両者を絶縁する絶縁層として機能する。このような観点からは、複数の内部電極9のうち最上層のものと複数のダミー電極19のうち最下層のものとの間の絶縁性の層は、内部電極9間の誘電体層7若しくはダミー層21間の絶縁層17と構成が同じであるか否か、又は前2つの層の組み合わせであるか否か等に関わらず、カバー15の絶縁層17として捉えられてよい。
【0045】
上部のカバー15を例に取ったが、下部のカバー15についても同様である。ただし、最上層及び最下層の語は相互に置換される。
【0046】
(1.3.3.ダミー電極)
ダミー電極19(換言すればダミー層21)は、例えば、一定の厚さを有している層状である。ダミー電極19の材料は、例えば、金属である。金属の具体的な種類は任意であり、例えば、卑金属(例えばNi及びCu)である。ダミー電極19の材料は、内部電極9の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
平面視において、ダミー電極19の位置、形状及び寸法は任意である。
図2の例では、ダミー電極19は、平面透視において誘電体層7の4隅に位置している。別の観点では、ダミー電極19の位置は、外部電極5の位置に対応している。また、ダミー電極19の平面形状は、矩形状(より詳細には正方形状)とされている。ダミー電極19の平面視における大きさは、概略、外部電極5の平面視における大きさと同等とされている。
【0048】
ダミー電極19は、平面透視において、電極本体9aに重なっていてもよいし(図示の例では内部電極9の角部に重なっている)、重なっていなくてもよい。後者の場合、ダミー電極19は、例えば、誘電体層7の角部(互いに交差する2辺)に沿うL字状に形成されていてもよい。ダミー電極19が内部電極9に重なっている場合においては、例えば、ダミー電極19の面積が広く確保されるから、ダミー電極19による強度向上の効果が向上する。ダミー電極19が内部電極9に重なっていない場合においては、例えば、ダミー電極19が内部電極9に及ぼす電気的な影響が低減される。
【0049】
ダミー電極19は、例えば、本体部3の側面にて露出している。この露出部分は、外部電極5と固着される。これにより、ダミー電極19は、本体部3と外部電極5との接合強度の向上に寄与する。図示の例とは異なり、ダミー電極19は、外部電極5に接続されていなくてもよい。例えば、ダミー電極19は、本体部3の側面から露出しないように設けられ、本体部3の強度向上に寄与しつつ、外部電極5との接続強度の向上に寄与しなくてもよい。
【0050】
ダミー電極19の厚さは任意である。例えば、ダミー電極19の厚さは、内部電極9の厚さに対して、厚くてもよいし(図示の例)、同程度でもよいし、薄くてもよい。例えば、ダミー電極19の厚さは、内部電極9の厚さの2倍以上、5倍以上又は10倍以上とされてよい。また、ダミー電極19の厚さは、絶縁層17の厚さに対して、薄くてもよいし(図示の例)、同等でもよいし、厚くてもよい。
【0051】
図3の例では、上部のカバー15の最上層にダミー層21が設けられている。そして、4つのダミー電極19は、外部電極5に覆われている。図示の例とは異なり、上部のカバー15の最上層にダミー層21は設けられなくてもよい。なお、既述のとおり、ダミー層21は、外部電極5の形成方法に影響を及ぼすから、当該影響を考慮して最上層のダミー層21の有無が決定されてもよい。
【0052】
なお、既述のとおり、層状(膜状)の構成要素は、2以上の層から構成されていてよい。外部電極5も、2層以上で構成されていてよい。この場合の外部電極5の下層と、最上層のダミー電極19とは、厚み及び/又は材料の観点から区別可能であってもよいし、区別不可能であってもよい。従って、ダミー電極19の有無は、絶縁層17によって有効部13(誘電体層7)とは反対側から覆われているダミー電極19の有無によって把握されてもよい。
【0053】
図示の例では、平面透視において4つのダミー電極19は内部電極9に重なっており、また、4つのダミー電極19は、互いに異なる電位の外部電極5に接続されている。従って、ダミー層21と内部電極9とは、誘電体層7及び/又は絶縁層17によって隔てられる必要がある。ただし、平面透視で4つのダミー電極19の一部又は全部が内部電極9に重なっていなかったり、4つのダミー電極19の一部又は全部が外部電極5に接続されていなかったりする場合においては、この限りではない。
【0054】
(1.4.外部電極の概略構成)
図1に示す外部電極5は、例えば、概略、本体部3の平面視における角部にて、本体部3の4つの面(上面、下面及び2つの側面)を覆っている層状である。これにより、1つの外部電極5と1つの引出電極9bとの接続が本体部3の2つの側面においてなされ、また、コンデンサ1の上面及び下面のいずれによって表面実装することも可能となっている。なお、実用性の低下を無視すれば、例えば、外部電極5は、2つの面(上面又は下面と、1つの側面との組み合わせ)のみを覆っていてもよい。
【0055】
外部電極5の各面における部分の形状、寸法及び材料は任意である。外部電極5のうち、本体部3の上面又は下面に位置する部分の平面形状は、例えば、矩形状(図示の例では正方形状)である。また、外部電極5のうち本体部3の側面に位置する部分の平面形状及び寸法は、例えば、上面又は下面に位置する部分と横方向の長さが同じ矩形状である。外部電極5(膜)の厚さは、例えば、内部電極9及びダミー電極19の厚さよりも厚くされてよい。
【0056】
(2.外部電極の具体的構成)
酸化物相の体積割合等に関する外部電極5の具体的構成について説明する。既述のとおり、第1実施形態に係るコンデンサ1では、1つの外部電極5は、本体部3の2つの側面に重なっている。ただし、以下の説明では、便宜上、1つの外部電極5の1つの側面に重なる部分にのみ着目する。その前提で、各部の数等に言及することがある。また、1つの外部電極5についての酸化物相の体積割合等に関する要件は、1つの側面について成立すればよい。ただし、2つの側面全体において成立しても構わない。
【0057】
実施形態の概要の説明において
図1を参照して説明したように、酸化物相の体積割合等に関する要件は、本体部3の外周に沿う方向(D1方向又はD2方向)において、部分縁部9cの長さの範囲(外部電極5のうちの対象部分5c)で成立すればよい。ただし、第1実施形態では、上記方向において、外部電極5の長さと、部分縁部9cの長さとは、概ね同等である。すなわち、外部電極5のうち1つの側面に位置する部分の全体は、対象部分5cとして捉えられてよい。従って、対象部分5cに関する言及を省略することがある。
【0058】
(2.1.酸化物相)
図4は、
図3の領域R4の拡大図である。この図に示すように、外部電極5は、第1金属層23及び第2金属層25からなる積層構造を有している。第1金属層23は、本体部3の外面(例えば側面)に密着している(別の観点では直接に重なっている)。第2金属層25は、第1金属層23の上から本体部3の側面に重なっている。別の観点では、第2金属層25は、第1金属層23の外面に密着している。
【0059】
図5は、
図4に示した部分の一部を+D1側から見た図である。換言すれば、
図5は、+D1側かつ+D2側に位置する外部電極5及びその周囲を
図1の矢印a1で示す方向に見た図である。
図5では、第2金属層25の図示は省略されている。また、外部電極5に覆われて見えない内部電極9(より詳細には引出電極9bの部分縁部9c)及びダミー電極19等が点線で示されている。なお、
図4は、
図5のIV-IV線における断面図となっている。
【0060】
図4及び
図5に示すように、第1金属層23は、外部電極5が配置される領域に対して連続して(換言すれば隙間なく)広がるのではなく、不連続に広がっている。換言すれば、本体部3の側面には、第1金属層23の非配置領域A1が構成されている。非配置領域A1は、主として有効部13の側面に位置している。第2金属層25は、非配置領域A1においては、第1金属層23ではなく、本体部3の側面に密着している。
【0061】
図6は、
図4の領域R6の拡大図である。この図に示すように、第1金属層23の外面(本体部3とは反対側の面)は酸化されている。別の観点では、第1金属層23は、第1材料層23aと、第1材料層23aを覆う第1酸化物層23bとを有している。第1酸化物層23bの材料は、第1材料層23aを構成する材料の酸化物となっている。
【0062】
第1金属層23と同様に、第2金属層25の外面は酸化されている。別の観点では、第2金属層25は、第2材料層25aと、第2材料層25aを覆う第2酸化物層25bとを有している。第2酸化物層25bの材料は、第2材料層25aを構成する材料の酸化物となっている。
【0063】
既述のとおり、第1金属層23の非配置領域A1は、主として、本体部3の側面のうち有効部13の側面に位置している。従って、有効部13の側面における第1酸化物層23bの面積割合は、カバー15の側面における第1酸化物層23bの面積割合よりも小さくなっている。その結果、外部電極5において、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合は、第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さくなっている。
【0064】
ここで、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合とは、第1部分5aに存在する外部電極5の体積に対する、第1部分5aに存在する酸化物相の体積の割合であり、第2部分5bにおける酸化物相の体積割合とは、第2部分5bに存在する外部電極5の体積に対する、第2部分5bに存在する酸化物相の体積の割合である。また、有効部13の側面における第1酸化物層23bの面積割合とは、第1部分5aの面積に対する、第1部分5aに存在する第1酸化物層23bの面積の割合であり、カバー15の側面における第1酸化物層23bの面積割合とは、第2部分5bの面積に対する、第2部分5bに存在する第1酸化物層23bの面積の割合である。
【0065】
なお、説明を簡単にするために、第1材料層23a及び第1酸化物層23bを明確に区別したが、両者の境界は明確でなくても構わない。別の観点では、第1材料層23aは、酸化物相を含んでいても構わないし、逆に、第1酸化物層23bは、酸化物相でない相を含んでいても構わない。第2材料層25a及び第2酸化物層25bについても同様である。
【0066】
上記のとおり、実施形態に係るコンデンサ1では、有効部13の側面において第1金属層23を不連続状にすることによって第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を低減している。この場合、例えば、外部電極5を積層構造にしつつ、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を簡便に低減することができる。外部電極5を積層構造にすることによって、例えば、外部電極5に要求される機能に関する内面側と外面側との相違に対応することができる。例えば、第1金属層23は、内部電極9及び/又は誘電体層7に対する固着強度が高いものとされてよい。第2金属層25は、時間的及び/又はコスト的に厚みを確保することが容易なものとされてよい。第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を低減することによる効果の例については既に述べた。
【0067】
有効部13及び/又はカバー15において第1金属層23を不連続状にすることによって、上記とは異なる観点の効果も奏される。例えば、第1金属層23を不連続状にすると、第1金属層23の体積に対して第1金属層23の表面積が相対的に大きくなる。従って、例えば、第1金属層23の体積を低減しつつ、第1金属層23と第2金属層25との親和性を向上させることができる。また、例えば、第1金属層23が不連続状であることによって生じる凹凸はアンカー効果を奏する。これらの理由から、例えば、外部電極5の厚みを相対的に安価な第2金属層25によって確保しつつ、外部電極5の本体部3に対する固着強度を向上させることができる。
【0068】
第1部分5aにおける酸化物相の体積割合が第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さいという要件が満たされるか否かは、適宜な方法によって判定されてよい。例えば、第1酸化物層23bの厚さ及び第2酸化物層25bの厚さそれぞれが概ね一定であると実質的に捉えることができる態様においては、第1酸化物層23bの面積(すなわち第1金属層23の表面積)によって体積割合が規定される。従って、第1金属層23の面積割合を第1部分5aと第2部分5bとで比較することによって、上記要件が満たされるか否か判定されてよい。
【0069】
ここで、第1部分5aにおける第1金属層23の面積割合とは、第1部分5aの面積に対する、第1部分5aに存在する第1金属層23の面積の割合であり、第2部分5bにおける第1金属層23bの面積割合とは、第2部分5bの面積に対する、第2部分5bに存在する第1金属層23の面積の割合である。
【0070】
上記の場合において、第1部分5aにおける第1金属層23の面積割合が第2部分5bにおける第1金属層23の面積割合よりも多少なりとも小さければ、上記要件が満たされると判定されてよい。ただし、計測誤差等を考慮して、前者の面積割合が後者の面積割合に対して、0.95以下又は0.90以下又は0.80以下のときに、上記要件が満たされると判定されてもよい。面積割合は、製造過程に基づいて特定されてもよいし、製造後に外部電極5を分析することによって特定されてもよい。後者においては、例えば、外部電極5の表面又は断面を研磨した鏡面を撮像して分析することによって面積割合が特定されてよい。
【0071】
第1酸化物層23bの面積割合によって酸化物相の体積割合の大小関係が特定されない場合においても、製造過程に基づいて大小関係が判定されたり、製造後に外部電極5を分析することによって大小関係が判定されたりしてよい。後者の場合においては、例えば、材料の定性分析及び定量分析を行う適宜な分析装置が用いられてよい。分析装置による測定は、物理的方法及び化学的方法のいずれでもよく、また、破壊式及び非破壊式のいずれであってもよい。また、各部分(5a及び5b)の全量に対して行われてもよいし、各部分における複数の抽出部分に対して行われてもよい。
【0072】
なお、第1部分5aと第2部分5bとの境界が曖昧な場合においては、その曖昧な部分を必要最小限度の大きさで除外して、両者の酸化物相の体積割合が比較されてよい。
【0073】
(2.2.第1金属層のパターン)
第1金属層23を不連続にする具体的なパターンは任意である。
図5に示す例では、第1金属層23は、有効部13において、D2方向(誘電体層7及び内部電極9の積層方向に交差する方向)に沿って延びる複数の延在部23eを有している。複数の延在部23eは、D3方向(誘電体層7及び内部電極9の積層方向)の位置が互いに異なる。換言すれば、複数の延在部23eは、D3方向に互いに離れている。これにより、第1金属層23は、D3方向において不連続状となっている。
【0074】
複数の延在部23eの少なくとも1つ(
図5の例では全て)は、D2方向の中途に途切れA3を有している。別の観点では、延在部23eは、D2方向に互いに離れている複数の分離部23fを有している。換言すれば、第1金属層23は、D2方向及びD3方向に互いに離れて分布している複数の分離部23fを有している。これにより、第1金属層23は、D3方向において不連続状となっていることに加えて、D2方向においても不連続状になっている。
【0075】
第1金属層23の一纏まりになっている部分(図示の例では分離部23f)は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。前者の場合について換言すれば、分離部23fは、結晶が島状に成長したものであってよい。特に図示しないが、島状の結晶は、図示の例の分離部23fよりもさらに小さくてもよく、延在部23eを長さ方向において分割した部分という概念に当て嵌まらなくてもよい。例えば、島状の結晶(換言すれば結晶粒)の粒径は、内部電極9の厚みよりも小さくてもよい。なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断りなく、分離部23fは、多結晶体であることを前提とすることがある。
【0076】
複数の延在部23e及び複数の分離部23fの具体的な位置、形状及び寸法は任意である。
図5の例では、延在部23eは、内部電極9の部分縁部9c(有効部13から露出する縁部)を覆いつつ、部分縁部9cに沿って延びている。また、
図4及び
図5に示すように、部分縁部9cは、有効部13の側面から露出しない非露出部9d(符号は
図4)を有している。延在部23eの途切れA3は、D1方向(第1部分5aの法線方向)に透視したときに非露出部9dに重なっている。
【0077】
また、
図5の例では、延在部23eの形状及び分離部23fの形状は、概ね一定の幅(D3方向の長さ)で延びる長尺状に形成されている。図示の例とは異なり、分離部23f(又は延在部23e)の形状は、D2方向を長手方向とする楕円状であってもよい。さらに、分離部23fの形状は、長手方向を概念できない形状(例えば円形状)、又はD3方向を長手方向とする形状であってもよい。
【0078】
なお、延在部23e(又は分離部23f)がD2方向に延びるというとき、例えば、D2方向の最大長さがD3方向の最大長さよりも多少なりとも長ければよい。ただし、前者は、後者に対して2倍以上又は5倍以上とされてもよい。
【0079】
また、第1金属層23がD3方向の互いに異なる位置に複数の延在部23eを有しているというとき(又は複数の延在部23eがD3方向に互いに離れているというとき)、複数の延在部23eは、互いに完全に離れていなくてもよい。例えば、上記のように延在部23e(又は分離部23f)が楕円状である場合において、互いに隣り合う延在部23e同士(分離部23f同士)で、幅が広い部分が互いにつながっていてもよい。
【0080】
1つの延在部23eにおける途切れA3の数は任意であり、1つでもよいし(図示の例)、2つ以上であってもよい。途切れA3のD2方向の長さも任意である。例えば、1つの延在部23eにおいて、1つ以上の途切れA3の長さの合計は、延在部23eの途切れていない部分の長さの合計よりも短くされてよい。
【0081】
既述のとおり、第1実施形態では、1つの外部電極5は、有効部13の2つの側面に重なっており、2つの側面にて内部電極9の部分縁部9cに固着されている。同一の内部電極9に接続され、かつ2つの側面に位置する2つの延在部23eは、互いにつながっていてもよいし(
図5の上から1番目、3番目及び5番目の延在部23eを参照)、互いにつながっていなくてもよい(
図5の他の延在部23eを参照)。
【0082】
延在部23eの数及び幅、並びに途切れA3の数及び長さのさらに具体的な設定は、例えば、後述する実施例で述べる第1金属層23のカバレッジの値の例が実現されるように設定されてよい。具体的には、有効部13の側面のうち第1部分5aに覆われている領域(第1領域)の面積に対する第1金属層23が第1領域を覆っている面積の割合は、例えば、50%以上95%以下とされてよい。そして、この面積割合が実現されるように、延在部23eの数及び幅、並びに途切れA3の数及び長さが設定されてよい。
【0083】
(2.3.第1金属層及び第2金属層の材料及び寸法)
第1金属層23及び第2金属層25の厚さは任意である。例を挙げる。第1金属層23の厚さ(例えば最大厚さ。本段落において、以下、同様。)は、0.2μm以上3μm以下であってよい。第2金属層25の厚さ(例えば第1金属層23上の最小厚さ。本段落において、以下、同様。)は、2μm以上10μm以下であってよい。第2金属層25は、第1金属層23よりも厚くされてよい。例えば、第2金属層25の厚さは、第1金属層23の厚さの1.5倍以上又は10倍以上とされてよい。
【0084】
第1金属層23及び第2金属層25の材料は任意である。例えば、第1材料層23a及び第2材料層25aの材料又はその主成分は、卑金属であってよい。卑金属は、例えば、Cu、Ni、又はCu及びNiの少なくとも一方を含む合金(例えばCu-Ni合金)であってよい。主成分は、例えば、材料の60質量%以上又は80質量%以上を占める成分であってよい(第1金属層23及び第2金属層25以外についても同様。)。材料がCu、Ni又はCu-Ni合金であるというとき、意図されていない不純物が存在していても構わない。不純物は、例えば、材料の1質量%未満であってよい。第1酸化物層23b及び第2酸化物層25bの材料又はその主成分は、上記に例示した材料の酸化物であってよい。例えば、酸化物は、Cu2O、CuO、NiO又はNi2O3であってよい。
【0085】
第1金属層23及び第2金属層25の材料又はその主成分は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。材料の異同は、例えば、元素の成分比のみに着目したものであってもよいし、元素の成分比に加えて、結晶粒の粒径等にも着目したものであってもよい(第1金属層23及び第2金属層25以外についても同様。)。なお、第1金属層23及び第2金属層25の元素及び粒径等が互いに同じであっても、
図6に例示した構成においては、第1酸化物層23bによって第1金属層23と第2金属層25とが存在することを確認できる。第1金属層23及び第2金属層25の少なくとも一方の材料又はその主成分は、内部電極9の材料又はその主成分と同じであってもよいし。異なっていてもよい。
【0086】
図7は、
図6の領域R7の拡大図である。この図では、第1金属層23及び第2金属層25について、第1金属層23及び第2金属層25については結晶粒が表現されている。ただし、酸化物相であるか否かの図示は省略されている。また、第1金属層23及び第2金属層25以外の部位については結晶粒の表現は省略されている。
【0087】
この図に示すように、第1金属層23及び第2金属層25は、例えば、多結晶体によって構成されている。すなわち、第1金属層23は、複数の第1結晶粒23pを有しており、第2金属層25は、複数の第2結晶粒25pを有している。両者の粒径は、一方が他方よりも大きくてもよいし(図示の例)、互いに同じであってもよい。図示の例では、第1結晶粒23pの粒径は、第2結晶粒25pの粒径よりも小さい。
【0088】
ここでいう粒径は、例えば、金属層(23及び25)の断面(別の観点では2次元画像)における円相当径であってよい。また、第1金属層23及び第2金属層25において互いに比較される粒径は、特に断りが無い限り、平均粒径であってよい。平均粒径は、例えば、上記の2次元画像において、粒径が小さいものから順に面積を積算していったときに、50%の面積割合になるときの粒径とされてよい。すなわち、平均粒径は、面積基準の平均値とされてよい。第1金属層23及び第2金属層25の粒径は、酸化物相か否かを区別しないものとされてよい。
【0089】
第1結晶粒23pの粒径及び第2結晶粒25pの粒径の具体的な値及び両者の差は任意である。例えば、第1結晶粒23pの平均粒径は、1μm未満とされてよく、より詳細には、0.1μm以上1μm未満とされてよい。また、第2結晶粒25pの平均粒径は、1μm以上とされてよく、より詳細には1μm以上10μm未満とされてよい。第2結晶粒25pの平均粒径は、第1結晶粒23pの平均粒径の2倍以上又は5倍以上とされてよい。
【0090】
粒径は、例えば、金属層(23及び25)の表面又は断面を鏡面加工し、結晶粒界を明瞭にするため適宜化学エッチングを行い、その鏡面を電子顕微鏡で撮像することによって測定されてよい。より詳細には、例えば、第1結晶粒23pが30個以上50個以下で含まれる縮尺で第1金属層23を撮像する。また、第2結晶粒25pが30個以上50個以下で含まれる縮尺で第2金属層25を撮像する。なお、両者の縮尺は互いに異なっていてよい。そして、それぞれの金属層の画像に対して公知の画像処理を行って円相当径を算出する。撮像位置によるばらつきが収束するまで、複数の画像を撮像し、平均粒径の平均値を求めてもよい。
【0091】
なお、上記とは異なり、結晶粒の大きさが互いに異なる領域が存在することを特定することによって、第1金属層23及び第2金属層25の存在を確認したい場合がある。このような場合において、例えば、
図7のように第1結晶粒23p及び第2結晶粒25pの粒径の差が大きい態様では、画像の目視によって粒径の差の存在を特定し、ひいては、第1金属層23及び第2金属層25の存在を確認できる。それ以外の態様では、例えば、結晶粒が30個以上50個以下で含まれるように縮尺を適宜に変えながら、連続する複数の領域の撮像を行うとともに各結晶粒の粒径(円相当径)を測定する。そして、複数の領域に跨る所定の直線上に位置する結晶粒の粒径の変化を分析して、第1金属層23及び第2金属層25の存在を確認してよい。例えば、直線に沿って連続する結晶粒について5個又は10個の粒径の移動平均を求めたときに、山(第2金属層25)における粒径が谷(第1金属層23)における粒径の2倍以上又は5倍以上となるときに第1金属層23及び第2金属層25の存在を確認できる。
【0092】
(2.4.電極の具体的構成の他の例)
以下では、内部電極9及び外部電極5の具体的構成の他の例を示す。なお、既に述べた例と、これから述べる他の例とは、適宜に組み合わされてよい。
【0093】
(2.4.1.内部電極の部分縁部の他の例)
図8は、内部電極9及び外部電極5の他の例を示す図であり、
図4に対応している。
【0094】
内部電極9において、部分縁部9c(有効部13の側面から露出する部分)の厚みは、部分縁部9cよりも内側の部分に対して厚くなっていてよい。別の観点では、部分縁部9cの外部への露出面積は大きくされてよい。第1金属層23は、部分縁部9cの厚み全体を覆っていてよい。すなわち、部分縁部9cと第1金属層23との固着面積は、
図4の態様に比較して、内部電極9の厚み方向(D3方向)に拡張されていてよい。なお、以下では、上記のように厚くされている部分縁部9cを拡張縁部9eと称することがある。
【0095】
図示の例では、部分縁部9cを構成する縁部として、拡張縁部9eと、既述の非露出部9dとの2種のみが示されている。ただし、これらの縁部と、内部電極9の内側の部分の厚さと同じ厚さの縁部(
図4参照。以下、「通常縁部9f」と称する。)との3種の縁部は、適宜に設けられてよい。例えば、
図4及び
図9に示された態様以外の態様としては、上記の3種の縁部が設けられている態様、通常縁部9f及び拡張縁部9eが設けられている態様、通常縁部9fのみが設けられている態様、及び拡張縁部9eのみが設けられる態様が挙げられる。通常縁部9f及び拡張縁部9eの双方が設けられる態様において、両者は、互いに異なる部分縁部9cに設けられていてもよいし、同一の部分縁部9cに設けられていてもよい。
【0096】
拡張縁部9eの具体的な形状及び寸法は任意である。図示の例では、拡張縁部9eは、外側(外部電極5側)に向かうにつれて、上下方向両側に同等の量で徐々に厚くなる形状とされている。他の形状の例としては、例えば、上方又は下方にのみ厚くなる形状、上下方向両側に厚くなるが、一方へ厚くなる量が他方へ厚くなる量よりも大きい形状、徐々に厚くなるのではなく、段差が生じるように、及び/又は内部電極9の縁部が折れ曲がるようにして厚くなっている形状が挙げられる。拡張縁部9eの厚さ(例えば最大厚さ)は、内部電極9の内部側の部分の厚さに対して、例えば、1.2倍以上、1.5倍以上又は2倍以上とされてよい。
【0097】
(2.4.2.外部電極の積層構造の他の例)
図8に示す外部電極5Aは、
図4に示した外部電極5に対して、第3金属層27及び第4金属層29を付加したものとなっている。第3金属層27及び第4金属層29は、例えば、第2金属層25のはんだ食われを低減したり、第2金属層25の酸化を低減したり、及び/又は接合材(例えばはんだ)に対する接合強度を向上させたりすることに寄与する。第3金属層27及び第4金属層29のうち一方のみが設けられたり、更に他の金属層が設けられたりしてもよい。第3金属層27及び第4金属層29の材料及び厚さは、これらの層の目的に応じて適宜に設定されてよい。例えば、上述のように、第1金属層23及び第2金属層25がCuである態様において、第3金属層27はNiとされてよく、第4金属層29はSnとされてよい。
【0098】
なお、
図8では、外部電極5Aは、拡張縁部9e及び非露出部9dを有する内部電極9と組み合わされている。ただし、外部電極5Aが拡張縁部9e及び/又は非露出部9dを有さない内部電極9と組み合わされてもよいことは明らかである。
【0099】
(2.4.3.第1金属層のパターンの他の例)
図9は、第1金属層23のパターンの他の例を示す図であり、
図5に対応している。
【0100】
図9の例では、延在部23eは、途切れA3を有していない。換言すれば、第1金属層23は、D3方向(積層方向)において不連続となっているが、D2方向(積層方向に交差する方向)においては連続している。また、内部電極9の部分縁部9cは、非露出部9dを有していない。
【0101】
なお、
図9に示す部分縁部9cが、通常縁部9f(
図4)若しくは拡張縁部9e(
図8)又はこれらの組み合わせであってよいことは明らかである。また、第1金属層23のパターンの形成方法(後述)にもよるが、
図9に示すパターンの第1金属層23は、非露出部9dと組み合わされても構わない。
【0102】
(3.コンデンサの製造方法)
(3.1.コンデンサ全体の製造手順)
コンデンサ1の製造方法は、種々の方法とされてよい。例えば、その概略の手順は、公知の手順と同様とされても構わない。以下に例を示す。
【0103】
まず、誘電体層7及び絶縁層17となるセラミックグリーンシートを作製する。次に、セラミックグリーンシートに内部電極9又はダミー電極19となる導電ペーストを塗布する(例えば印刷する)。次に、セラミックグリーンシートを積層して本体部3となる積層体を作製する。なお、有効部13となる積層体の積層と、当該積層体に対するカバー15となる部分の積層とは、共に行われてもよいし、別個に行われてもよい。
【0104】
上記の積層体の作製までは、例えば、複数の本体部3が多数個取りされる母基板の大きさで行われる。積層体の作製の後、当該積層体を含む母基板は、概ね本体部3の大きさに対応する大きさに個片化される(例えば切断される。)。次に、本体部3の大きさを有する積層体が焼成される。その後、本体部3に金属膜が成膜されて、外部電極5が形成される。
【0105】
焼成前においては脱脂が行われてもよい。焼成は、例えば、還元雰囲気で行われてよい。焼成後に再酸化熱処理が行われてもよい。焼成前及び/又は焼成後において、本体部3の研磨(例えばバレル研磨)が行われてもよい。研磨では、例えば、本体部3の稜線部が面取りされたり、本体部3の側面が研磨されたりしてよい。研磨によって、内部電極9の部分縁部9c及びダミー電極19の縁部が本体部3の側面から露出してもよい。
【0106】
(3.2.第1金属層のパターンの形成方法)
第1金属層23を不連続状にする方法は任意である。以下に例を示す。
【0107】
内部電極9及びダミー電極19のうち本体部3の外部に露出している表面(以下、「露出面」ということがある。)に対して、無電解めっき又は電解めっきによって金属を析出させ、これにより第1金属層23を形成してよい。この場合、第1金属層23のパターンは、内部電極9及びダミー電極19の露出面のパターンに依拠した形状となる。従って、内部電極9及びダミー電極19の露出面のパターンを適宜な形状とするとともに、上記露出面に析出した金属が、露出面の非配置領域を介してつながらないようにすることによって、第1金属層23を任意のパターンにすることができる。
【0108】
例えば、
図4及び
図5に例示するように、D3方向において、複数のダミー電極19の露出面同士の隙間を複数の内部電極9の露出面同士の隙間よりも小さくする。そして、析出した金属が、複数のダミー電極19の露出面同士においてはつながり、複数の内部電極9の露出面同士においてはつながらないように、めっきの条件(例えば析出させる時間)を調整する。これにより、複数の延在部23eを有する第1金属層23が形成される。
【0109】
また、例えば、内部電極9の部分縁部9cに既述の非露出部9dを設ける。すなわち、内部電極9の露出面を中途で途切れさせる。そして、内部電極9の露出面に析出した金属が、露出面の途切れを超えてつながらないように、めっきの条件(例えば析出させる時間)を調整する。これにより、途切れA3を有する延在部23eが形成される。隣り合う延在部23e同士がつながりやすい位置に非露出部9dが設けられる場合においては、非露出部9dによって、複数の延在部23e同士もつながりにくくなる。
【0110】
第1金属層23を不連続状にする方法は、上記以外にも種々可能である。例えば、マスクを介して第1金属層23を成膜したり、第1金属層23の成膜後にマスクを介してエッチングが行われたりしてよい。エッチングは、例えば、レーザによる処理又はブラスト処理によってなされてよい。なお、このことから理解されるように、第1金属層23は、必ずしも内部電極9の露出面(部分縁部9c)を覆っていなくてもよいし、内部電極9の露出面のパターンに対応したパターンを有していなくてもよい。また、第1金属層23は、無電解めっき及び電解めっき以外の方法(例えばスパッタリング)によって形成されてもよい。
【0111】
第1金属層23が無電解めっき又は電解めっきによって形成される場合において、いずれが用いられてもよい。例えば、第1金属層23は、無電解めっきによって形成されてよい。また、第2金属層25は、電解めっきによって形成されてよい。このようにすることによって、例えば、内部電極9と第1金属層23との固着強度を向上させつつ、短時間で及び/又は安価に第2金属層25の厚みを確保できる。
【0112】
(3.3.内部電極の特定形状の形成方法)
内部電極9(部分縁部9c)の非露出部9dの形成方法は任意である。
【0113】
例えば、内部電極9となる導電ペーストをセラミックグリーンシートに印刷するときのパターンによって非露出部9dが形成されてよい。すなわち、内部電極9の平面視において、部分縁部9cの形状を誘電体層7の縁部に平行な直線状にするのではなく、誘電体層7の縁部から離れる部分を有する形状にすることによって、非露出部9dが形成されてよい。
【0114】
及び/又は、例えば、焼成後(又は焼成前)に有効部13(誘電体層7(又は絶縁層17))の側面を部分的に除去することによって、部分縁部9cを部分的に露出させてよい。すなわち、部分縁部9cの、有効部13の側面のうち除去が行われなかった領域に位置する部分が非露出部9dとされてよい。除去は、例えば、ブラスト処理又はレーザによる処理によってなされてよく、また、マスクが用いられてもよい。
【0115】
なお、既述のように、焼成前及び/又は焼成後においては、バレル研磨が行われてよい。バレル研磨では、バレル内にチップ(本体部3)が収容されて、バレルが回転等されることによって研磨が行われる。従って、本体部3の稜線部が面取りされやすく、ひいては、ダミー電極19は、内部電極9よりも本体部3の外面に露出しやすい。その結果、内部電極9及びダミー電極19の露出面に金属を析出させて第1金属層23を形成した場合、第1金属層23は、内部電極9よりもダミー電極19において連続して広がりやすい。
【0116】
内部電極9の拡張縁部9e(
図8)の形成方法も任意である。例えば、拡張縁部9eは、焼成後(又は焼成前)にブラスト処理によって内部電極9を延伸変形させることによって形成されてよい。ブラスト処理は、上述の有効部13の側面を部分的に除去する処理を兼ねていてよい。また、拡張縁部9eは、内部電極9となる導電ペーストを塗布するときに、拡張縁部9eとなる部分だけ厚くされることによって形成されてもよい。
【0117】
有効部13の側面の部分的除去及び/又は拡張縁部9eの形成のためにブラスト処理が行われる場合において、投射される粉体の材料、及び粉体の投射方向等は任意である。例えば、投射方向は、有効部13の側面の法線に対してD3方向へ傾けられてよい。この場合、例えば、内部電極9の縁部をD3方向へ延伸変形させることが容易化される。傾斜角の具体的な大きさは任意である。
【0118】
(3.4.酸化物相の体積割合の低減方法)
外部電極5において、第1部分5a(有効部13を覆う部分)の酸化物相の体積割合を第2部分5b(カバー15を覆う部分)の酸化物相の体積割合よりも小さくする方法は、これまでの説明から理解されるように、第1部分5aにおける第1金属層23の面積割合を第2部分5bにおける第1金属層23の面積割合よりも小さくすることによって実現されてよい。第1部分5aにおける第1金属層23の面積割合を小さくする方法は、既述のとおり、第1金属層23を適宜なパターンにすることによって実現される。
【0119】
第1酸化物層23bは、例えば、第1材料層23aの材料によって第1金属層23を形成した後であって第2金属層25を形成する前において、第1金属層23を酸化雰囲気下に晒すことによって形成される。このとき、酸化雰囲気下に晒す時間等を調整して、第1酸化物層23bの厚み(別の観点では第1金属層23における酸化物相の体積割合)が調整されてもよい。また、酸化剤又は還元剤が用いられて酸化物相の体積割合が調整されてもよい。
【0120】
同様に、第2酸化物層25bは、第2材料層25aの材料によって第2金属層25を形成した後に、第2金属層25を酸化雰囲気下に晒すことによって形成される。第3金属層27が設けられる場合においては、第2金属層25を酸化雰囲気下に晒す時間等を調整して、第2酸化物層25bの厚み(別の観点では第2金属層25における酸化物相の体積割合)が調整されてもよい。また、酸化剤又は還元剤が用いられて酸化物相の体積割合が調整されてもよい。
【0121】
第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さくする方法は、第1金属層23の面積割合の調整によるものに限定されない。別の観点では、第1金属層23は、不連続状に広がっていなくてもよく、隙間なく広がっていてもよい。
【0122】
例えば、本体部3の側面のうち外部電極5によって覆われるべき領域の全面に亘って隙間なく第1金属層23を成膜してよい。そして、第1酸化物層23bが形成された後、第2金属層25を形成する前において、上記領域のうち有効部13の側面の一部又は全部に対して還元剤を用いて第1酸化物層23bを除去してよい。
【0123】
また、例えば、第2部分5bを形成した後に第1部分5aを形成するようにしてよい。そして、第2部分5bを形成した後であって第1部分5aを形成する前において、熱処理を行うことによって第2部分5bの本体部3側の領域において酸化物相を形成してよい。この場合、例えば、第2部分5bの酸化物相によって第2部分5bの本体部3に対する固着強度が向上する。
【0124】
(4.他の実施形態に係るコンデンサの構成)
図10は、第2実施形態に係るコンデンサ201の斜視図である。以下の説明では、第1実施形態に係る
図3を
図10のIIIB-IIIB線における断面図として参照してよい。ただし、
図3の符号1及び3は符号201及び203に置換する。また、各部の具体的な寸法等について、
図3は
図10と必ずしも一致しないことに留意する。
【0125】
コンデンサ201は、概して言えば、2端子タイプである点が4端子タイプであるコンデンサ1と相違する。換言すれば、コンデンサ201において、コンデンサとして機能するための基本的な構成はコンデンサ1と同様であるし、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合が第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さい点もコンデンサ1と同様である。具体的には、以下のとおりである。
【0126】
本体部203(又はコンデンサ201)の形状は、例えば、概略直方体状である。この直方体は、例えば、高さ(D3方向の長さ)が、幅(D2方向の長さ)に対して同等であってもよいし(図示の例)、小さくてもよい。直方体の長さ(D1方向)の長さは、例えば、幅よりも大きい。本体部203の寸法は任意である。比較的小さい寸法の例を挙げると、長さは0.4mm以上3.2mm以下であり、幅及び高さは0.2mm以上2.5mm以下である。外部電極5は、概略、本体部203の長手方向の端部を直方体の5面に亘って覆っている層状である。
【0127】
本体部203は、第1実施形態と同様に(
図3参照)、有効部13とカバー15とを有している。有効部13は、誘電体層7と内部電極9とが交互に積層されて構成されている。カバー15は、少なくとも1つの絶縁層17と、少なくとも1つのダミー層21とを有している。ダミー層21は、複数のダミー電極19を含んでいる。
【0128】
ただし、内部電極9の平面視における位置及び形状は第1実施形態と異なる。具体的には、例えば、平面視において、内部電極9の形状は、概略、本体部203(誘電体層7)の長方形の4辺と平行な4辺を有する長方形である。内部電極9の4辺のうち、2つの長辺及び1つの短辺は、本体部203の側面よりも内側に位置している(露出していない。)。残りの1つの短辺は、本体部203の+D1側又は-D1側の側面から露出して+D1側又は-D1側の外部電極5に接続されている。互いに異なる外部電極5に接続される内部電極9は交互に積層されている。内部電極9のうち平面透視において他の内部電極9と重複する領域は電極本体9aである。電極本体9aから外部電極5に延びている部分は引出電極9bである。
【0129】
ダミー電極19の平面における位置及び形状は第1実施形態と異なっていてよい。具体的には、例えば、平面視において、各ダミー層21は、本体部203の長手方向の両端に2つのダミー電極19を有している。ダミー電極19は、本体部203の幅(D2方向の長さ)全体に亘る矩形状であり、例えば、本体部203の+D1側又は-D1側の側面から露出しているとともに、+D2側の側面及び-D2側の側面から露出している。
【0130】
実施形態の概要の説明において
図1を参照して説明したように、酸化物相の体積割合等に関する要件は、内部電極9の部分縁部9cの長さの範囲(外部電極5の対象部分5c)において成立すればよい。従って、上記の要件に関して、外部電極5のうち、本体部203の上下面、+D2側の面及び-D1側の面を覆う部分は無視されてよい。また、外部電極5のうち+D1側(又は-D1側)の側面を覆う部分に着目したとき、いわゆるサイドマージン部を+D1側(又は-D1側)から覆う部分も無視されてよい。サイドマージン部は、本体部203のうち、内部電極9の+D2側(又は-D2側)の縁部から本体部203の+D2側(又は-D2側)の側面までの部分である。
【0131】
特に図示しないが、コンデンサの構成について更に他の例を挙げる。
【0132】
コンデンサは、
図1又は
図10に例示された構造の全体を覆う外装樹脂と、外部電極5に接続されているとともに外装樹脂から延び出るリード線とを有していてもよい。別の観点では、コンデンサは、表面実装型のものではなく、スルーホール実装型のものであってもよい。このような態様において、1つの外部電極5は、1つの側面を覆うだけであってもよい。
【0133】
互いに異なる外部電極5に接続される2種の内部電極9は、1枚ずつ交互に積層されるのではなく、2枚ずつ交互に積層されてもよい。この場合、例えば、同一の外部電極5に接続され、互いに対向する内部電極9間の誘電体層7の厚さは、互いに異なる外部電極5に接続され、互いに対向する内部電極9間の誘電体層7の厚さよりも薄くされてよい。このことから理解されるように、複数の誘電体層7は、互いに同じ形状及び大きさを有していなくてもよい。
【0134】
また、互いに異なる外部電極5に接続される2種の内部電極9は、互いに対向していなくてもよい。例えば、互いに異なる外部電極5に接続される2種の内部電極9が同一の層に設けられ、上記2種の内部電極9に対向する内部電極9が設けられることによって、2つの平行平板コンデンサが直列に接続された回路が構成されてもよい。また、3つ以上の平行平板コンデンサが直列に接続された回路が構成されてもよい。
【0135】
第2実施形態において、サイドマージン部について触れた。サイドマージン部は、例えば、誘電体層7のうち内部電極9よりも+D2側又は-D2側に広がる部分によって構成される。ただし、誘電体層7によって構成された積層体の+D2側又は-D2側の側面に他の誘電体層を重ねることによってサイドマージン部が構成されてもよい。別の観点では、本体部203は、その全体が積層構造である必要はない。
【0136】
(5.実施例)
図11は、実施形態に係るコンデンサ(より詳細には第2実施形態に係るコンデンサ201)を試作して、その特性を調べた結果を示す図表である。この図では、例えば、第1金属層23を不連続にして第1部分5aにおける酸化物相の体積割合を減じることによって、固着強度の向上とESRの低減とを両立できることが示されている。具体的には、以下のとおりである。
【0137】
この図において、「No.」は、実施例及び比較例に割り振られた識別番号である。後述する説明から理解されるように、No.1~No.6は実施例であり、No.7は比較例である。
【0138】
「第1金属層 カバレッジ」は、No.8を除いて、有効部13の側面のうち外部電極5の対象部分5cが重なるべき領域(すなわち第1部分5aが形成されるべき領域)における第1金属層23の面積割合(%)を示している。「第2金属層 カバレッジ」は、上記領域における第2金属層25の面積割合を示している。なお、以下では、便宜上、上記面積割合が、対象部分5cが重なるべき領域におけるものであることの言及を省略して、単に有効部13の側面における面積割合等ということがある。
【0139】
「電極剥離(個数)」は、100個のサンプルに対する実験において、外部電極5が剥離した個数を分数で示している。「ESR(mΩ)」は、ESRの測定値を示している。
【0140】
図11には示されていないが、いずれの例(No.1~No.8)においても、カバー15の側面のうち外部電極5の対象部分5cが重なるべき領域の全面に第1金属層23及び第2金属層25それぞれが形成された。すなわち、第2部分5bにおいて、それぞれの層の面積割合は100%であり、別の観点では、2つの層の面積割合は互いに同じである。
【0141】
図11に示されているように、実施例(No.1~No.6)では、有効部13の側面における第1金属層23の面積割合は100%未満(具体的には40%以上95%以下)とされている。また、有効部13の側面における第2金属層25の面積割合は80%以上100%以下とされている。別の観点では、第1部分5aにおいて、第1金属層23の面積割合は、第2金属層25の面積割合よりも小さくされている。
【0142】
第2部分5bにおいては、第1金属層23及び第2金属層25の面積割合は同じであるから、第1部分5aにおいて第1金属層23の面積割合が第2金属層25の面積割合よりも小さい実施例(No.1~No.6)では、第1部分5aの酸化物相の体積割合は、第2部分5bの酸化物相の体積割合よりも小さい。
【0143】
No.7(比較例)では、有効部13の側面における第1金属層23及び第2金属層25それぞれの面積割合は100%である。別の観点では、第1部分5aにおいては、第2部分5bと同様に、2つの層の面積割合は互いに同じである。従って、第1部分5aの酸化物相の体積割合は、第2部分5bの酸化物相の体積割合と同じである。
【0144】
No.8では、有効部13の側面の比較的広い面積に第1金属層23を形成することを意図しつつ、第1金属層23に対して酸化処理(No.1~No.7では行われていない処理)を行って酸化物相の体積割合を増加させている。これにより、No.8では、他の例(No.1~No.7)に比較して、第1部分5a及び第2部分5bの酸化物相の体積割合が大きくなっている。
【0145】
第1金属層23は、無電解めっきによって形成され、第2金属層25は、無電解めっきによって形成されている。No.1~No.8において、第2金属層25は、互いに同じ厚さとされることが意図されている。No.1及びNo.2では、第1金属層23の面積割合が小さいことに起因して、第2金属層25の面積割合が100%に達していない。
【0146】
電極剥離が生じるか否かの実験は、回路基板に実装されたコンデンサ201に対してD2方向(回路基板の表面に沿う方向)に5Nの力を加え、外部電極5が剥離するか否かを調べた。ESRは、1MHzにおけるインピーダンス測定に基づいて特定した。
【0147】
実験に用いたコンデンサ201の諸元を以下に示す。
・D1方向の長さ:1.0mm
・D2方向及びD3方向の長さ:0.5mm
・カバー15の厚み(D3方向):30μm
・サイドマージン部の幅(D2方向):30μm
・誘電体層7の厚み:1.0μm
・内部電極9の積層数:20層
【0148】
電極剥離が生じた個数は、第1金属層23のカバレッジが40%以上80%以下(No.1~No.5)では0/100であり、また、95%(No.6)では1/100である。これに対して、第1金属層23のカバレッジが100%になると、電極剥離が生じた個数は急増する(10/100)。従って、第1金属層23のカバレッジが40%以上95%以下(又は40%以上80%以下)であると、電極剥離を低減する効果が奏されやすいといえる。
【0149】
実施例では、第1実施形態の説明で述べたように、内部電極9の部分縁部9cに本体部203の側面から露出しない非露出部9dを設けて第1金属層23が析出しないようにして第1金属層23の面積割合を低減し、ひいては、酸化物相(第1酸化物層23b)の体積割合を低減している。従って、第1金属層23のカバレッジが小さくなると、電気抵抗率が高い酸化物相の体積割合は低減されるが、内部電極9と外部電極5との接続部の断面積が減じられる。その結果、第1金属層23のカバレッジが小さいほど、ESRは増加している。
【0150】
しかし、No.8との比較から理解されるように、酸化処理を行った場合に比較すれば、ESRは低減されている。一方、No.8では、酸化処理によって外部電極5の本体部203に対する固着強度は向上しており、外部電極5の剥離が生じた個数は0/100となっている。従って、有効部13における第1金属層23の面積割合を低減すると、酸化処理を行わなくても固着強度を向上させることができることによって、固着強度の向上とESRの低減とを両立できるといえる。
【0151】
第1金属層23のカバレッジの範囲の例としては、実施例における範囲である40%以上95%以下が挙げられる。また、剥離が全く生じない範囲の観点から、40%以上80%以下が挙げられる。ESRは、第1金属層23のカバレッジが50%から40%になると概ね倍増することから、当該観点から、50%以上95%以下が挙げられる。前2つの観点の重複部分として、50%以上80%以下が挙げられる。
【0152】
なお、
図11は、第2実施形態に係るコンデンサ201に基づいており、また、特定の諸元を有するコンデンサ201のサンプルに基づいている。しかし、上記のような範囲であれば、ベストの効果でないにしろ、ベターな効果が得られることは明らかである。
【0153】
(6.実施形態のまとめ)
以上のとおり、コンデンサ1(又は201)は、有効部13と、カバー15と、外部電極5と、を有している。有効部13は、交互に積層されている誘電体層7及び内部電極9を有している。カバー15は、有効部13に対して誘電体層7及び内部電極9の積層方向(D3方向)において重なっている。外部電極5は、有効部13及びカバー15のD3方向に沿う側面を覆って、内部電極9の外縁のうちの一部である部分縁部9cに接続されている。外部電極5のうち部分縁部9cの長さを幅としてD3方向に広がっている部分(対象部分5c)において、有効部13の側面を覆っている部分を第1部分5aと称し、カバー15の側面を覆っている部分を第2部分5bと称するものとする。このとき、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合は、第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さい。
【0154】
この場合、例えば、実施形態の概要で述べたように、ESRを低減したり、外部電極5の固着強度の向上とESRの低減とを両立させたり、及び/又は電気特性を安定化させたりすることができる。
【0155】
外部電極5は、第1金属層23と、第2金属層25と、を有していてよい。第1金属層23は、有効部13の側面及びカバー15の側面に密着していてよい。第2金属層25は、第1金属層23の上から有効部13の側面及びカバー15の側面に重なっていてよい。第1部分5aにおいて、第1金属層23は、不連続に広がっていてよい。これにより、第1金属層23の非配置領域A1が構成されていてよい。第2金属層25は、非配置領域A1にて有効部13の側面に密着していてよい。
【0156】
この場合、例えば、通常の金属膜の形成プロセスによれば、第1金属層23の表面に第1酸化物層23bが形成されている蓋然性が高いから、第1金属層23を有効部13の側面において不連続にすることによって、第1部分5aの酸化物相の体積割合を低減することができる。これにより、上記のESRの低減の効果等が得られる。また、例えば、第1金属層23が不連続状であることによって、既に述べたように、第1金属層23と第2金属層25との固着強度を向上させることができる。実施例を参照して示したように、ESRの低減と固着強度の向上とを両立させることが容易化される。
【0157】
第1金属層23及び第2金属層25それぞれは多結晶体によって構成されていてよい。第1金属層23における第1結晶粒23pの平均粒径は、第2金属層25における第2結晶粒25pの平均粒径よりも小さくてよい。
【0158】
この場合、例えば、第1結晶粒23pの平均粒径が相対的に大きい態様(そのような態様も本開示に係る技術に含まれる。)に比較して、第1金属層23の表面積が大きくなりやすい。その結果、第1金属層23と第2金属層25との親和性が向上し、両者の固着強度が向上しやすい。一方で、第2結晶粒25pの平均粒径が相対的に大きいことによって、粒界の数を少なくすることができる。その結果、例えば、外部からの水分が浸入する蓋然性を低減できる。
【0159】
有効部13の側面のうち第1部分5aに覆われている第1領域の面積に対する第1金属層23が第1領域を覆っている面積の割合は、50%以上95%以下であってよい。
【0160】
この場合、例えば、
図11を参照して説明したように、ESRの低減と固着強度の向上とを両立させることが容易化される。
【0161】
第1部分5aをその法線方向に見たときに、第1金属層23は、積層方向(D3方向)の互いに異なる位置にて、D3方向に交差する方向(
図5ではD2方向)に延びている複数の延在部23eを有していてよい。なお、分離部23fも、その形状によっては、延在部の一種として捉えられてよい。
【0162】
この場合、例えば、積層方向において第1金属層23と第2金属層25とが係合することになるから、D3方向における両者の固着強度を向上させることが容易化される。通常、コンデンサ1(201)は、当該コンデンサ1が実装される回路基板に対してD3方向において対向することが多く、ひいては、D3方向において回路基板から引き剥がされる蓋然性が高い。従って、D3方向における固着強度を向上させることによって、外部電極5の強度を効率的に向上させることが容易化される。
【0163】
複数の延在部23eの少なくとも1つは、上記の交差する方向(
図5ではD2方向)における中途に途切れA3を有していてよい。
【0164】
この場合、例えば、第1金属層23と第2金属層25とはD3方向とD3方向に交差する方向との2方向において係合することになる。その結果、種々の方向において固着強度を向上させることが容易化される。
【0165】
複数の延在部23eは、複数の内部電極9の部分縁部9cを覆うようにして部分縁部9cに沿って延びていてよい。
【0166】
この場合、例えば、第1金属層23を不連続状にしつつ、第1金属層23と部分縁部9cとの固着面積を確保することが容易化される。その結果、例えば、上述した第1金属層23の平均粒径を小さくして内部電極9と第2金属層25との固着強度を向上させる効果が奏されやすくなる。また、例えば、第1金属層23を無電解めっき又は電解めっきによって部分縁部9c上に形成することによって、延在部23eを形成することができる。すなわち、簡便に、第1金属層23を不連続状にすることができる。
【0167】
複数の内部電極9の少なくとも1つにおいて、部分縁部9cは、上記の交差する方向(
図5ではD2方向)における中途に有効部13の側面から露出していない非露出部9d(
図4)を有していてよい。非露出部9dを有している部分縁部9cを覆っている延在部23eは、非露出部9dに重なる位置に途切れA3を有していてよい。
【0168】
この場合、例えば、延在部23eをその延在方向において不連続状にしつつ、延在部23eと部分縁部9cとの固着面積を確保することが容易化される。また、例えば、無電解めっき又は電解めっきによって部分縁部9c上に第1金属層23を成膜することによって、途切れA3を有する延在部23eを形成することができる。すなわち、簡便に、延在部23eをその延在方向において不連続状にすることができる。
【0169】
部分縁部9cの厚みは、内部電極9の、部分縁部9cよりも内側の部分に対して厚くなっていてよい。
【0170】
この場合、例えば、外部電極5(例えば第1金属層23)と部分縁部9cとの固着面積が大きくなるから、両者の固着強度を向上させることができる。また、例えば、ブラスト処理によって誘電体層7の側面を除去して部分縁部9cを本体部3の側面から露出させる場合においては、当該露出させるための工程を行いつつ、内部電極9を延伸変形させて部分縁部9cを厚くできるから、プロセスが増加する蓋然性を低減できる。
【0171】
有効部13は、積層方向(D3方向)に見て矩形状を呈していてよい。カバー15は、4つのダミー電極19と、絶縁層17と、を有していてよい。4つのダミー電極19は、D3方向に透視して有効部13の4隅に位置していてよい。絶縁層17は、有効部13とは反対側から4つのダミー電極19を覆っていてよい。4つの外部電極5が4つのダミー電極19に固着されていてよい。
【0172】
この場合、例えば、外部電極5の本体部3に対する固着強度を向上させることができる。また、例えば、無電解めっき又は電解めっきによって第1金属層23を形成する場合において、ダミー電極19上に金属を析出させることによって、カバー15の側面に第1金属層23を隙間なく形成することが容易化される。ダミー電極19は、矩形状の本体部3において長さを確保しやすい対角線上に位置するから、ダミー電極19を電極本体9aから遠ざけやすい。ひいては、ダミー電極19が有効部13の特性に及ぼす影響を低減しやすい。
【0173】
本開示に係る技術は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0174】
例えば、積層型電子部品は、コンデンサに限定されない。例えば、積層型電子部品において、内部電極の一部はコンデンサを構成するものとされ、内部電極の他部はインダクタ又は抵抗体を構成するものとされてよい。そして、積層型電子部品は、全体として、適宜な回路(例えば共振回路)を構成してもよい。また、積層型電子部品は、少なくとも一部が、誘電体層と内部電極とが積層されて構成されていればよく、必ずしも全部又は大部分が積層体によって構成されていなくてもよい。
【0175】
本開示からは、第1部分5aにおける酸化物相の体積割合が第2部分5bにおける酸化物相の体積割合よりも小さいことを要件としない概念が抽出されてよい。例えば、第1金属層23が不連続状に広がっていることを特徴とした概念が抽出されてもよいし、内部電極9の部分縁部9cが内部電極9の内側の部分よりも厚くされていることを特徴とした概念が抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…コンデンサ、5…外部電極、5a…第1部分、5b…第2部分、7…誘電体層、9…内部電極、9c…部分縁部。
【要約】
積層型電子部品は、有効部と、カバーと、外部電極とを有している。有効部は、交互に積層されている誘電体層及び内部電極を有している。カバーは、有効部に対して誘電体層及び内部電極の積層方向において重なっている。外部電極は、有効部及びカバーの積層方向に沿う側面を覆って、内部電極の外縁のうちの一部である部分縁部に接続されている。外部電極のうち部分縁部の長さを幅として積層方向に広がっている部分において、有効部の側面を覆っている部分を第1部分と称し、カバーの側面を覆っている部分を第2部分と称する。このとき、第1部分における酸化物相の体積割合が、第2部分における酸化物相の体積割合よりも小さい。