(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】ヘッドライト制御装置、ヘッドライト制御方法及びヘッドライト制御システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
B60Q1/00
(21)【出願番号】P 2024562423
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2022044803
(87)【国際公開番号】W WO2024121916
(87)【国際公開日】2024-06-13
【審査請求日】2024-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 なるみ
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特許第6929481(JP,B1)
【文献】特開2005-59839(JP,A)
【文献】特開2008-110686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内撮影装置から、車両の運転者が映っている画像である運転者画像を取得し、前記運転者画像に基づいて、前記運転者が向いている方向を検出する方向検出部と、
センサから、前記車両の位置を示す自車位置情報を取得し、前記自車位置情報に基づいて、前記車両が存在している道路の種別を特定する道路種別特定部と、
前記道路種別特定部により特定された道路の種別に基づいて、前記車両の進行方向に対する、前記車両のヘッドライトの光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定する角度範囲決定部と、
前記角度範囲決定部により決定された角度範囲内で、前記方向検出部により検出された方向に応じて前記ヘッドライトの光軸の角度を制御する光軸角度制御部と
を備えたヘッドライト制御装置。
【請求項2】
前記道路種別特定部は、
前記自車位置情報が示す車両の位置と地図データとを照合することで、前記車両が存在している道路の種別を特定することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項3】
前記方向検出部は、
前記運転者が向いている方向として、前記運転者の顔向き方向を検出することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項4】
前記方向検出部は、
前記運転者が向いている方向として、前記運転者の視線方向を検出することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項5】
フロントカメラから、前記車両の前方が映っている画像である前方画像を取得し、前記前方画像に基づいて、前記車両の前方の道路状況を判定する道路状況判定部を備え、
前記角度範囲決定部は、
前記道路種別特定部により特定された道路の種別と前記道路状況判定部により判定された道路状況とに基づいて、前記角度範囲を決定することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項6】
前記道路状況判定部は、
前記前方画像のほかに、前記自車位置情報と地図データとに基づいて、前記車両の前方の道路状況を判定することを特徴とする請求項5記載のヘッドライト制御装置。
【請求項7】
前記光軸角度制御部は、
前記ヘッドライトの光軸の角度を制御しているときに、前記角度の切替速度を変更することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項8】
前記光軸角度制御部は、
前記ヘッドライトの光軸の角度が、前記角度範囲決定部により決定された角度範囲の境界に近い角度であるほど、前記光軸の角度の切替速度を遅くすることを特徴とする請求項7記載のヘッドライト制御装置。
【請求項9】
前記光軸角度制御部は、
前記角度範囲決定部により決定された角度範囲の広さに応じて、前記ヘッドライトの光軸の角度の切替速度を変更することを特徴とする請求項1記載のヘッドライト制御装置。
【請求項10】
前記光軸角度制御部は、
前記角度範囲決定部により決定された角度範囲が狭いほど、前記光軸の角度の切替速度を遅くすることを特徴とする請求項9記載のヘッドライト制御装置。
【請求項11】
方向検出部が、車内撮影装置から、車両の運転者が映っている画像である運転者画像を取得し、前記運転者画像に基づいて、前記運転者が向いている方向を検出し、
道路種別特定部が、センサから、前記車両の位置を示す自車位置情報を取得し、前記自車位置情報に基づいて、前記車両が存在している道路の種別を特定し、
角度範囲決定部が、前記道路種別特定部により特定された道路の種別に基づいて、前記車両の進行方向に対する、前記車両のヘッドライトの光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定し、
光軸角度制御部が、前記角度範囲決定部により決定された角度範囲内で、前記方向検出部により検出された方向に応じて前記ヘッドライトの光軸の角度を制御する
ヘッドライト制御方法。
【請求項12】
車両の運転者を撮影する車内撮影装置と、
前記車内撮影装置から、前記運転者が映っている画像である運転者画像を取得し、前記運転者画像に基づいて、前記運転者が向いている方向を検出する方向検出部と、
センサから、前記車両の位置を示す自車位置情報を取得し、前記自車位置情報に基づいて、前記車両が存在している道路の種別を特定する道路種別特定部と、
前記道路種別特定部により特定された道路の種別に基づいて、前記車両の進行方向に対する、前記車両のヘッドライトの光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定する角度範囲決定部と、
前記角度範囲決定部により決定された角度範囲内で、前記方向検出部により検出された方向に応じて前記ヘッドライトの光軸の角度を制御する光軸角度制御部と
を備えたヘッドライト制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドライト制御装置、ヘッドライト制御方法及びヘッドライト制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に実装されている前照灯であるヘッドライトの照射方向として、ヘッドライトの光軸の角度を制御するヘッドライト制御装置がある。
このようなヘッドライト制御装置として、特許文献1には、車両の運転者が向いている方向として、運転者の顔向き方向を検出し、顔向き方向に応じてヘッドライトの照射方向を制御するランプ制御手段を備える制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている制御システムでは、運転者の顔向き方向が、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲から逸脱していても、ランプ制御手段が、顔向き方向に応じてヘッドライトの照明方向を制御してしまうという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、運転者が向いている方向に応じてヘッドライトの光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができるヘッドライト制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るヘッドライト制御装置は、車内撮影装置から、車両の運転者が映っている画像である運転者画像を取得し、運転者画像に基づいて、運転者が向いている方向を検出する方向検出部と、センサから、車両の位置を示す自車位置情報を取得し、自車位置情報に基づいて、車両が存在している道路の種別を特定する道路種別特定部とを備えている。また、ヘッドライト制御装置は、道路種別特定部により特定された道路の種別に基づいて、車両の進行方向に対する、車両のヘッドライトの光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定する角度範囲決定部と、角度範囲決定部により決定された角度範囲内で、方向検出部により検出された方向に応じてヘッドライトの光軸の角度を制御する光軸角度制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、運転者が向いている方向に応じてヘッドライトの光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
【
図2】実施の形態1に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【
図3】ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
【
図4】道路の種別と変更許容角度範囲との関係を示す説明図である。
【
図5】ヘッドライト制御装置4の処理手順であるヘッドライト制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】運転者が向いている方向の一例を示す説明図である。
【
図7】ヘッドライト5の変更許容角度範囲φの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8Aは、φ
2の変更許容角度範囲内で、光軸の方向が進行方向左側になるように制御されている例を示す説明図、
図8Bは、φ
3の変更許容角度範囲内で、光軸の方向が進行方向右側になるように制御されている例を示す説明図である。
【
図9】実施の形態2に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
【
図10】実施の形態2に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【
図11】実施の形態2に係る他のヘッドライト制御システムを示す構成図である。
【
図12】実施の形態3に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
【
図13】実施の形態3に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【
図14】光軸の角度αの切替速度Vの一例を示す説明図である。
【
図15】
図15Aは、道路種別が、道路種別(1)又は道路種別(2)であり、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるときに、光軸の角度αの切替速度Vが変更されている例を示す説明図、
図15Bは、道路種別が、道路種別(3)又は道路種別(4)であり、光軸の角度αの切替速度Vが変更されない例を示す説明図である。
【
図16】実施の形態4に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
【
図17】実施の形態4に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
図1に示すヘッドライト制御システムは、車内撮影装置1、センサ2、地図データ記憶部3、ヘッドライト制御装置4及びヘッドライト5を備えている。
図1に示すヘッドライト制御システムでは、車内撮影装置1、センサ2及び地図データ記憶部3のそれぞれが、ヘッドライト制御装置4の外部に設けられている。しかし、これは一例に過ぎず、車内撮影装置1、センサ2及び地図データ記憶部3のそれぞれは、ヘッドライト制御装置4に内蔵されているものであってもよい。
【0011】
車内撮影装置1は、車両の室内を撮影するためのカメラを備えている。室内を撮影するためのカメラとしては、例えば、赤外線カメラ、可視光カメラ、又は、紫外線カメラがある。
車内撮影装置1は、車両の運転者を撮影し、運転者が映っている画像である運転者画像を示す運転者画像データをヘッドライト制御装置4に出力する。
車両は、四輪の自動車に限るものではなく、例えば、バイク、自転車、ゴーカート、電動車いすのほか、水陸両用車、空飛ぶ車、又は、ドローンであってもよい。
図1に示すヘッドライト制御システムでは、車両が例えば空飛ぶ車であって、空飛ぶ車が、或る道路の上空を飛んでいれば、或る道路を走行しているものとする。
【0012】
センサ2は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いた自車位置取得センサ、又は、ジャイロセンサによって実現される。
センサ2は、車両の位置を検出し、車両の位置を示す自車位置情報をヘッドライト制御装置4に出力する。
【0013】
地図データ記憶部3は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、あるいは、Blu-ray Disc(登録商標)によって実現される。
地図データ記憶部3は、道路地図及び道路の種類を示す情報のそれぞれを含む地図データを記憶している。
ここでの道路の種類としては、例えば、道路法で定められている道路の種類が用いられる。
具体的な道路の種類としては、例えば、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道がある。また、一般国道及び都道府県道のそれぞれには、道路の種類として、例えば、専用自動車道、一般自動車道が含まれることがある。
例えば、農道、林道、公園道、自然研究路、園路、里道及び私道のそれぞれは、道路法が適用されない道路であるものの、地図データ記憶部3に記憶されている地図データには、農道等の種類を示す情報も含まれている。
図1に示すヘッドライト制御システムでは、地図データ記憶部3が、RAM等によって実現されている。しかし、これは一例に過ぎず、地図データ記憶部3が、例えば、ネットワーク上のサーバによって実現されているものであってもよい。
【0014】
ヘッドライト制御装置4は、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部17を備えている。
ヘッドライト制御装置4は、ヘッドライト5の光軸の角度を制御する装置である。ヘッドライト5の光軸の角度は、車両の進行方向に対する角度である。
図2は、実施の形態1に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【0015】
ヘッドライト5は、車両の前方を照らすために、車両に実装されている前照灯である。前照灯としては、例えば、ハロゲンランプ、HID(High Intensity Discharged)ランプ、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic Light Emitting Diode)、LCD(Liquid Crystal Display)、レーザー、ブレードスキャン、又は、DLP(Digital Light Processing)がある。
ヘッドライト5は、ロービーム用の前照灯であってもよいし、ハイビーム用の前照灯であってもよい。また、ヘッドライト5は、ロービーム用の前照灯及びハイビーム用の前照灯のそれぞれと別個に実装されている前照灯であってもよい。
ヘッドライト5の光軸は、ヘッドライト5から出射される光の束である光束の代表となる仮想的な光線を指すものである。なお、ヘッドライト5が複数のライトによって構成されている場合、複数のライトのそれぞれから出射される光の総和が光束である。したがって、ヘッドライト5が複数のライトによって構成されている場合、ヘッドライト5の光軸は、当該光束の代表となる仮想的な光線を指すものである。
ヘッドライト5は、例えば、図示せぬ光軸調整器に実装されている。ヘッドライト制御装置4の光軸角度制御部17によって光軸調整器が制御されることで、車両の進行方向に対するヘッドライト5の光軸の角度が制御される。
光軸角度制御部17によって光軸調整器が制御されることで、ヘッドライト5の光軸の角度が制御されることは一例にすぎず、例えば、ヘッドライト5が複数のLEDによって実現されている場合、光軸角度制御部17は、複数のLEDのうち、発光させるLEDを切り替えることで、光軸の角度を制御するものであってもよい。
例えば、ヘッドライト5から出射された光の方向を切り替えるミラーが設けられている場合には、光軸角度制御部17は、ミラーの角度を切り替えることで、光軸の角度を制御するものであってもよい。
【0016】
運転者画像データ取得部11は、例えば、
図2に示す運転者画像データ取得回路21によって実現される。
運転者画像データ取得部11は、車内撮影装置1から運転者画像データを取得し、運転者画像データを方向検出部14に出力する。
【0017】
自車位置情報取得部12は、例えば、
図2に示す自車位置情報取得回路22によって実現される。
自車位置情報取得部12は、センサ2から自車位置情報を取得し、自車位置情報を道路種別特定部15に出力する。
【0018】
地図データ取得部13は、例えば、
図2に示す地図データ取得回路23によって実現される。
地図データ取得部13は、地図データ記憶部3から地図データを取得し、地図データを道路種別特定部15に出力する。
【0019】
方向検出部14は、例えば、
図2に示す方向検出回路24によって実現される。
方向検出部14は、運転者画像データ取得部11から運転者画像データを取得する。
方向検出部14は、運転者画像データが示す運転者画像に基づいて、運転者が向いている方向を検出する。
運転者が向いている方向としては、例えば、運転者の顔向き方向、又は、運転者の視線方向がある。
運転者の顔向き方向は、運転者の頭部が向いている方向である。例えば、運転者の胴体部分が車両の進行方向と正対しているとき、車両の進行方向に対して、運転者の頭部が、例えば、θの角度だけ傾いていれば、運転者が向いている方向である顔向き方向は、車両の進行方向からθの角度だけずれている方向である。
運転者の視線方向は、運転者が見ている方向である。例えば、運転者の胴体部分が車両の進行方向と正対しているとき、車両の進行方向に対して、運転者の視線が、例えば、θの角度だけ傾いていれば、運転者が向いている方向である視線方向は、車両の進行方向からθの角度だけずれている方向である。
方向検出部14は、運転者が向いている方向を示す方向データを光軸角度制御部17に出力する。
【0020】
道路種別特定部15は、例えば、
図2に示す道路種別特定回路25によって実現される。
道路種別特定部15は、自車位置情報取得部12から自車位置情報を取得し、地図データ取得部13から地図データを取得する。
道路種別特定部15は、自車位置情報と地図データとに基づいて、車両が存在している道路の種別を特定する。
道路種別特定部15は、道路の種別を示す道路種別データを角度範囲決定部16に出力する。
【0021】
角度範囲決定部16は、例えば、
図2に示す角度範囲決定回路26によって実現される。
角度範囲決定部16は、道路種別特定部15から道路種別データを取得する。
角度範囲決定部16は、道路種別データが示す道路の種別に基づいて、車両の進行方向に対する、車両のヘッドライト5の光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定する。
角度範囲決定部16は、光軸角度の変更を許容する角度範囲を示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力する。
【0022】
光軸角度制御部17は、例えば、
図2に示す光軸角度制御回路27によって実現される。
光軸角度制御部17は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部17は、角度範囲データが示す角度範囲内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御する。
【0023】
図1では、ヘッドライト制御装置4の構成要素である運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部17のそれぞれが、
図2に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、ヘッドライト制御装置4が、運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路27によって実現されるものを想定している。
運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路27のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0024】
ヘッドライト制御装置4の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0025】
図3は、ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部17におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0026】
また、
図2では、ヘッドライト制御装置4の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、
図3では、ヘッドライト制御装置4がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、ヘッドライト制御装置4における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0027】
図1に示すヘッドライト制御装置4は、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部17のほかに、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12及び地図データ取得部13を備えている。しかし、これは一例に過ぎず、方向検出部14が運転者画像データ取得部11を備え、道路種別特定部15が、自車位置情報取得部12及び地図データ取得部13を備えていてもよい。
【0028】
例えば、自動車だけが走行する自動車専用道路と、自動車のほかに、歩行者又は二輪車等も走行する市街地等の道路(以下「一般道路」という)とでは、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲が異なる。具体的には、一般道路では、例えば、歩行者の飛び出し、又は、障害物の存在を検出するために、車両の運転者は、広い範囲を視認する必要がある。障害物は、道路上に存在する物体であって、車両の走行に支障をきたす可能性がある物体である。
自動車専用道路では、一般道路を走行する場合よりも、歩行者の飛び出し等を検出する必要性が少ない代わりに、高速で走行する可能性が高いため、車両の運転者は、わき見運転をできる限り避ける必要がある。
したがって、一般的には、自動車専用道路での視認の必要な範囲は、一般道路での視認の必要な範囲よりも狭い。
【0029】
図4は、道路の種別と変更許容角度範囲との関係を示す説明図である。変更許容角度範囲は、車両の進行方向に対して、ヘッドライト5の光軸角度の変更を許容する角度範囲を意味する。
図4では、道路の種別が4種類に分類されている例を示している。
道路種別(1)に属する道路の種類としては、例えば、平地部における高速自動車国道、又は、平地部における一般自動車道がある。
道路種別(2)に属する道路の種類としては、例えば、山地部における高速自動車国道、又は、山地部における一般自動車道がある。
道路種別(3)に属する道路の種類は、道路法が適用される道路の種類のうち、道路種別(1)(2)のいずれにも属していない道路の種類である。具体的には、道路種別(3)に属する道路の種類としては、例えば、一般国道、都道府県道、又は、市町村道がある。一般国道及び都道府県道のそれぞれには、道路の種類として、一般自動車道が含まれることがある。
図4の例では、一般国道等に含まれている一般自動車道を道路種別(3)に属する道路の種類に含めずに、道路種別(1)及び道路種別(2)のそれぞれに含めている。
また、道路種別(3)に属する道路の種類には、道路法が適用されない道路の種類も含まれる。具体的には、道路種別(3)に属する道路の種類には、例えば、農道、林道、公園道、自然研究路、園路、里道、又は、私道が含まれる。
道路種別(4)に属する道路の種類は、道路種別(1)(2)(3)のいずれにも属していない種類である。具体的には、道路種別(4)に属する道路の種類としては、例えば、駐車場の通路、又は、商業施設内の道路がある。
【0030】
道路種別(3)、又は、道路種別(4)に属する道路は、自動車の通行だけでなく、例えば、人間、動物、自転車、又は、バイクについても通行が可能である。
道路種別(3)、又は、道路種別(4)に属する道路には、例えば、交差点のほか、急なカーブも存在している。当該道路は、街灯が少なく暗がりの道路であることもある。
ヘッドライト制御装置4を実装している車両の運転者は、当該車両が道路種別(3)、又は、道路種別(4)に属する道路を走行する際、当該道路への人間、動物、自転車、又は、バイクの飛び出しを十分に確認する必要がある。また、車両の運転者は、交差点、又は、急なカーブにおいて、他の車両等の存在を十分に確認する必要がある。
したがって、ヘッドライト制御装置4を実装している車両の運転者は、当該車両が、道路種別(3)、又は、道路種別(4)に属する道路を走行する際には、広い範囲の確認が必要である。
【0031】
道路種別(2)に属する道路は、山地部に施されている道路であるため、当該道路へ動物が飛び出す可能性があるものの、当該道路への動物の飛び出し確率は、道路種別(3)に属する道路への人間等の飛び出し確率よりも小さい。
また、道路種別(2)に属する道路には、カーブが存在しているものの、当該カーブの曲率半径は、一般的に、道路種別(3)に属する道路に存在しているカーブの曲率半径よりも大きい。また、道路種別(2)に属する道路の通行は、自動車に限られる。
したがって、ヘッドライト制御装置4を実装している車両の運転者は、当該車両が、道路種別(2)に属する道路を走行する際には、道路種別(3)に属する道路を走行する際よりも、確認の範囲が狭くてもよい。
一方、道路種別(2)に属する道路を走行する際の車両の走行速度は、一般的に、道路種別(3)に属する道路を走行する際の車両の走行速度よりも速い。高速走行時における運転者のわき見運転は、他の車両等との接触を回避する上で、低速走行時における運転者のわき見運転よりも避ける必要がある。わき見運転は、運転者の視線が車両の前方方向から大きくずれた状態での運転を意味する。
したがって、ヘッドライト制御装置4を実装している車両の運転者は、当該車両が、道路種別(2)に属する道路を走行する際には、道路種別(3)に属する道路を走行するときよりも、狭い範囲を注意深く意識した運転が必要である。
【0032】
道路種別(1)に属する道路は、平地部に施されている道路であるため、道路種別(2)に属する道路よりも、動物の飛び出し確率が小さい。また、道路種別(1)に属する道路は、平地部に施されている道路であるため、道路種別(2)に属する道路よりも、カーブが少ない。
したがって、ヘッドライト制御装置4を実装している車両の運転者は、当該車両が、道路種別(1)に属する道路を走行する際には、道路種別(2)に属する道路を走行するときよりも、確認の範囲が狭くてもよい。
【0033】
道路の種別が、例えば、
図4に示すように、4種類に分類されている場合、道路種別(1)~(4)の中で、道路種別(3)及び道路種別(4)のそれぞれに属する道路を走行するときの変更許容角度範囲が最も大きい。
図4では、道路種別(3)及び道路種別(4)のそれぞれに属する道路に対応する変更許容角度範囲が“大”と表記されている。
道路種別(3)の次に、道路種別(2)に属する道路を走行するときの変更許容角度範囲が大きい。
図4では、道路種別(2)に属する道路に対応する変更許容角度範囲が“中”と表記されている。
道路種別(1)~(4)の中で、道路種別(1)に属する道路を走行するときの変更許容角度範囲が最も小さい。
図4では、道路種別(1)に属する道路に対応する変更許容角度範囲が“小”と表記されている。
【0034】
次に、
図1に示すヘッドライト制御システムの動作について説明する。
図5は、ヘッドライト制御装置4の処理手順であるヘッドライト制御方法を示すフローチャートである。
【0035】
車内撮影装置1は、車両の運転者を撮影し、運転者が映っている画像である運転者画像を示す運転者画像データをヘッドライト制御装置4に出力する。
ヘッドライト制御装置4の運転者画像データ取得部11は、車内撮影装置1から運転者画像データを取得する(
図5のステップST1)。
運転者画像データ取得部11は、運転者画像データを方向検出部14に出力する。
【0036】
センサ2は、車両の位置を検出し、車両の位置を示す自車位置情報をヘッドライト制御装置4に出力する。
ヘッドライト制御装置4の自車位置情報取得部12は、センサ2から自車位置情報を取得する(
図5のステップST2)。
自車位置情報取得部12は、自車位置情報を道路種別特定部15に出力する。
【0037】
地図データ取得部13は、地図データ記憶部3から地図データを取得する(
図5のステップST3)。
地図データ取得部13は、地図データを道路種別特定部15に出力する。地図データの中には、道路地図のほか、道路の種類を示す情報が含まれている。
【0038】
方向検出部14は、運転者画像データ取得部11から運転者画像データを取得する。
方向検出部14は、運転者画像データが示す運転者画像に基づいて、運転者が向いている方向を検出する(
図5のステップST4)。
運転者が向いている方向としては、例えば、運転者の顔向き方向、又は、運転者の視線方向がある。
運転者の顔向き方向は、運転者の頭部が向いている方向である。例えば、運転者の胴体部分が車両の進行方向と正対しているとき、車両の進行方向に対して、運転者の頭部が、例えば、θの角度だけ傾いていれば、
図6に示すように、運転者が向いている方向である顔向き方向は、車両の進行方向からθの角度だけずれている方向である。
運転者の視線方向は、運転者が見ている方向である。例えば、運転者の胴体部分が車両の進行方向と正対しているとき、車両の進行方向に対して、運転者の視線が、例えば、θの角度だけ傾いていれば、
図6に示すように、運転者が向いている方向である視線方向は、車両の進行方向からθの角度だけずれている方向である。
図6は、運転者が向いている方向の一例を示す説明図である。
運転者画像から運転者の顔向き方向を検出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。また、運転者画像から運転者の視線方向を検出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
方向検出部14は、運転者が向いている方向を示す方向データを光軸角度制御部17に出力する。
【0039】
道路種別特定部15は、自車位置情報取得部12から自車位置情報を取得し、地図データ取得部13から地図データを取得する。
道路種別特定部15は、自車位置情報と地図データとに基づいて、車両が存在している道路の種別RT(Road Type)を特定する(
図5のステップST5)。
具体的には、道路種別特定部15は、地図データが示す道路地図と、自車位置情報が示す車両の位置とを照合して、当該車両が存在している道路を特定する。
そして、道路種別特定部15は、地図データに含まれている道路の種類を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認する。
道路種別特定部15は、道路の種別RTを示す道路種別データを角度範囲決定部16に出力する。
【0040】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、道路種別特定部15により特定される道路の種別RTが、道路種別(1)~(4)のいずれかである。しかし、これは一例に過ぎず、道路種別特定部15により特定される道路の種別RTは、適切な運転を行うために視認する必要のある範囲に関連する種別RTであればよい。よって、道路種別特定部15により特定される道路の種別RTは、例えば、道路の制限速度によって分類される種別、道路の道幅によって分類される種別、道路の車線数によって分類される種別、又は、道路の路面の濡れ具合によって分類される種別であってもよい。
【0041】
道路種別特定部15により特定される道路の種別RTが、例えば、道路の制限速度によって分類される種別であれば、道路種別特定部15は、例えば、地図データに含まれている道路の制限速度を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。また、道路種別特定部15は、車両の前方を撮影する車載カメラ(図示せず)の撮影画像を取得し、撮影画像に映っている道路標識が示す道路の制限速度を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。
道路種別特定部15により特定される道路の種別RTが、例えば、道路の道幅によって分類される種別であれば、道路種別特定部15は、例えば、地図データに含まれている道路の道幅を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。
道路種別特定部15により特定される道路の種別RTが、例えば、道路の車線数によって分類される種別であれば、道路種別特定部15は、例えば、地図データに含まれている道路の車線数を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。
道路種別特定部15により特定される道路の種別RTが、例えば、道路の路面の濡れ具合によって分類される種別であれば、道路種別特定部15は、例えば、車両が存在している道路を含む地域の天候情報を取得して、道路の路面が、ウェット路面であるのか、ドライ路面であるのかを確認することで、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。また、道路種別特定部15は、車両の前方を撮影する車載カメラ(図示せず)の撮影画像を取得し、撮影画像に映っている路面が、ウェット路面であるのか、ドライ路面であるのかを確認することで、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。また、道路種別特定部15は、雨センサ(図示せず)のセンシング結果に基づいて、道路の路面が、ウェット路面であるのか、ドライ路面であるのかを確認することで、車両が存在している道路の種別RTを確認すればよい。
【0042】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、道路種別特定部15が、地図データに含まれている道路の種類を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認している。しかし、これは一例に過ぎず、道路種別特定部15は、例えば、FM(Frequency Modulation)放送、又は、電波ビーコンによって、車両が存在している道路の種別RTを示す道路種別データを取得し、道路種別データを角度範囲決定部16に出力するようにしてもよい。
【0043】
角度範囲決定部16は、道路種別特定部15から道路種別データを取得する。
角度範囲決定部16は、道路種別データが示す道路の種別RTに基づいて、ヘッドライト5の光軸の変更許容角度範囲φを決定する(
図5のステップST6)。
角度範囲決定部16は、変更許容角度範囲φを示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力する。
【0044】
以下、角度範囲決定部16による変更許容角度範囲φの決定処理を具体的に説明する。
角度範囲決定部16は、道路の種別RTと変更許容角度範囲φとの関係を示すテーブルとして、例えば、
図4に示すような表を記憶している。
角度範囲決定部16は、テーブルを参照して、道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを特定する。
角度範囲決定部16は、道路の種別RTが例えば道路種別(1)であれば、変更許容角度範囲φを“小”に決定する。
角度範囲決定部16は、道路の種別RTが例えば道路種別(2)であれば、変更許容角度範囲φを“中”に決定する。
角度範囲決定部16は、道路の種別RTが例えば道路種別(3)(4)であれば、変更許容角度範囲φを“大”に決定する。
変更許容角度範囲φである“小”、“中”、“大”のそれぞれは、デフォルトの値であってもよいし、外部からの設定情報によって、変更できるものであってもよい。
ここでは、変更許容角度範囲φとして、“小”、“中”、“大”の3つの変更許容角度範囲が設定されている。しかし、これは一例に過ぎず、変更許容角度範囲φとして、例えば、4つ以上の変更許容角度範囲が設定されているものであってもよい。
【0045】
図7は、ヘッドライト5の変更許容角度範囲φの一例を示す説明図である。
図7において、φ
1は、道路の種別RTが道路種別(1)であるときの変更許容角度範囲であり、φ
2は、道路の種別RTが道路種別(2)であるときの変更許容角度範囲である。
また、φ
3は、道路の種別RTが道路種別(3)であるときの変更許容角度範囲であり、φ
4は、道路の種別RTが道路種別(4)であるときの変更許容角度範囲である。
【0046】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、角度範囲決定部16が、テーブルを参照して、道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを決定している。しかし、これは一例に過ぎず、角度範囲決定部16は、例えば、道路種別データ、又は、自車位置情報を外部サーバ等に送信し、外部サーバ等から、道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを示すデータを取得するようにしてもよい。
【0047】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、角度範囲決定部16が、道路種別データが示す道路の種別RTに基づいて、ヘッドライト5の光軸の変更許容角度範囲φを決定している。しかし、これは一例に過ぎず、道路種別特定部15が、例えば、地図データに含まれている道路の制限速度を示す情報を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認している場合、角度範囲決定部16は、例えば、道路の制限速度が速いほど、変更許容角度範囲φを狭めるようにしてもよい。
道路種別特定部15が、例えば、地図データに含まれている道路の車線数を参照して、車両が存在している道路の種別RTを確認している場合、角度範囲決定部16は、例えば、道路の車線数が多いほど、変更許容角度範囲φを広げるようにしてもよい。
【0048】
光軸角度制御部17は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部17は、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する(
図5のステップST7)。
具体的には、光軸角度制御部17は、例えば、ヘッドライト5を実装している光軸調整器を制御することで、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
【0049】
以下、光軸角度制御部17により制御される光軸の角度αを具体的に説明する。
光軸角度制御部17は、運転者が向いている方向が、車両の進行方向からθの角度だけずれている方向であるとき、角度θの絶対値|θ|と変更許容角度範囲φの2分の1であるφ/2とを比較する。
光軸角度制御部17は、角度θの絶対値|θ|がφ/2以下(|θ|≦φ/2)であれば、運転者が向いている方向が変更許容角度範囲φの内側であるため、以下の式(1)に示すように、角度θをヘッドライト5の光軸の角度αに決定する。
α=θ (1)
光軸角度制御部17は、角度θの絶対値|θ|がφ/2よりも大きい場合(|θ|>φ/2)、運転者が向いている方向が変更許容角度範囲φを逸脱しているため、角度θがプラスの値であれば、以下の式(2)に示すように、φ/2を光軸の角度αに決定する。ここでは、説明の便宜上、運転者が向いている方向が、車両の進行方向右側であれば、角度θがプラスの値であるとする。
α=φ/2 (2)
光軸角度制御部17は、角度θの絶対値|θ|がφ/2よりも大きい場合(|θ|>φ/2)、運転者が向いている方向が変更許容角度範囲φを逸脱しているため、角度θがマイナスの値であれば、以下の式(3)に示すように、-φ/2を光軸の角度αに決定する。ここでは、説明の便宜上、運転者が向いている方向が、車両の進行方向左側であれば、角度θがマイナスの値であるとする。
α=-φ/2 (3)
【0050】
したがって、運転者が向いている方向が、車両の進行方向左側であれば、
図8Aに示すように、光軸の方向は、車両の進行方向左側になる。このとき、光軸の方向は、運転者が向いている方向にかかわらず、変更許容角度範囲φの内側になる。
一方、運転者が向いている方向が、車両の進行方向右側であれば、
図8Bに示すように、光軸の方向は、車両の進行方向右側になる。このとき、光軸の方向は、運転者が向いている方向にかかわらず、変更許容角度範囲φの内側になる。
図8Aは、φ
2の変更許容角度範囲内で、光軸の方向が進行方向左側になるように制御されている例を示す説明図である。
図8Bは、φ
3の変更許容角度範囲内で、光軸の方向が進行方向右側になるように制御されている例を示す説明図である。
【0051】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、角度θの絶対値|θ|がφ/2よりも大きい場合(|θ|>φ/2)、光軸角度制御部17が、φ/2の角度、又は、-φ/2の角度に決定している。しかし、これは一例に過ぎず、光軸角度制御部17は、例えば、以下の式(4)に示すように、道路の種別RTに対応する係数k
mを用いて、ヘッドライト5の光軸の角度αを決定するようにしてもよい。m=1,2,3,4である。k
mは、0よりも大きく、1よりも小さい係数であり、かつ、光軸の角度αが変更許容角度範囲φ内になるような係数である。
α=θ×k
m (4)
0<k
1<k
2<k
3<k
4<1 (5)
【0052】
以上の実施の形態1では、車内撮影装置1から、車両の運転者が映っている画像である運転者画像を取得し、運転者画像に基づいて、運転者が向いている方向を検出する方向検出部14と、センサ2から、車両の位置を示す自車位置情報を取得し、自車位置情報に基づいて、車両が存在している道路の種別を特定する道路種別特定部15とを備えるように、ヘッドライト制御装置4を構成した。また、ヘッドライト制御装置4は、道路種別特定部15により特定された道路の種別に基づいて、車両の進行方向に対する、車両のヘッドライト5の光軸の角度である光軸角度の変更を許容する角度範囲を決定する角度範囲決定部16と、角度範囲決定部16により決定された角度範囲内で、方向検出部14により検出された方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御する光軸角度制御部17とを備えている。したがって、ヘッドライト制御装置4は、運転者が向いている方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができる。
【0053】
図1に示すヘッドライト制御装置4では、角度範囲決定部16が、道路種別特定部15から道路種別データを取得する毎に、道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを特定し、変更許容角度範囲φを光軸角度制御部17に出力している。しかし、これは一例に過ぎず、角度範囲決定部16は、道路種別特定部15から道路種別データを取得する毎に、道路種別データが示す道路の種別RTを上書き保存する。そして、角度範囲決定部16は、道路種別特定部15から取得した最新の道路種別データが示す道路の種別RTが、上書き保存する前に保存していた道路の種別RTと異なる場合に限り、最新の道路種別データが示す道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを特定するようにしてもよい。このとき、角度範囲決定部16は、変更許容角度範囲φを示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力する。
角度範囲決定部16は、道路種別特定部15から取得した最新の道路種別データが示す道路の種別RTが、上書き保存する前に保存していた道路の種別RTと同じであれば、最新の道路種別データが示す道路の種別RTに対応する変更許容角度範囲φを特定しない。したがって、角度範囲決定部16は、変更許容角度範囲φを示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力しない。
光軸角度制御部17は、角度範囲決定部16から角度範囲データを受けたとき、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
【0054】
実施の形態2.
実施の形態2では、車両の前方が映っている画像である前方画像に基づいて、車両の前方の道路状況を判定する道路状況判定部42を備えるヘッドライト制御装置4について説明する。
【0055】
図9は、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
図9において、
図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図9に示すヘッドライト制御システムは、車内撮影装置1、センサ2、地図データ記憶部3、ヘッドライト制御装置4、ヘッドライト5及びフロントカメラ6を備えている。
フロントカメラ6は、車両の前方を撮影するためのカメラであり、フロントカメラ6としては、例えば、赤外線カメラ、可視光カメラ、又は、紫外線カメラがある。
フロントカメラ6は、車両の前方を撮影し、車両の前方が映っている画像である前方画像を示す前方画像データをヘッドライト制御装置4に出力する。
【0056】
図9に示すヘッドライト制御装置4は、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、前方画像データ取得部41、道路状況判定部42、角度範囲決定部43及び光軸角度制御部17を備えている。
図10は、実施の形態2に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図10において、
図2と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
【0057】
前方画像データ取得部41は、例えば、
図10に示す前方画像データ取得回路51によって実現される。
前方画像データ取得部41は、フロントカメラ6から前方画像データを取得し、前方画像データを道路状況判定部42に出力する。
【0058】
道路状況判定部42は、例えば、
図10に示す道路状況判回路52によって実現される。
道路状況判定部42は、前方画像データ取得部41から前方画像データを取得する。
道路状況判定部42は、前方画像データが示す前方画像に基づいて、車両の前方の道路状況を判定する。
また、道路状況判定部42は、自車位置情報取得部12から自車位置情報を取得し、地図データ取得部13から地図データを取得する。
道路状況判定部42は、自車位置情報と地図データとに基づいて、車両の前方の道路状況を判定する。
道路状況判定部42は、道路状況の判定結果を角度範囲決定部43に出力する。
【0059】
角度範囲決定部43は、例えば、
図10に示す角度範囲決定回路53によって実現される。
角度範囲決定部43は、道路種別特定部15から道路種別データを取得し、道路状況判定部42から道路状況の判定結果を取得する。
角度範囲決定部43は、道路種別データが示す道路の種別と道路状況の判定結果とに基づいて、ヘッドライト5の変更許容角度範囲φを決定する。
角度範囲決定部43は、変更許容角度範囲φを示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力する。
【0060】
図9では、ヘッドライト制御装置4の構成要素である運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、前方画像データ取得部41、道路状況判定部42、角度範囲決定部43及び光軸角度制御部17のそれぞれが、
図10に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、ヘッドライト制御装置4が、運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、前方画像データ取得回路51、道路状況判回路52、角度範囲決定回路53及び光軸角度制御回路27によって実現されるものを想定している。
運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、前方画像データ取得回路51、道路状況判回路52、角度範囲決定回路53及び光軸角度制御回路27のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0061】
図9に示すヘッドライト制御装置4の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、前方画像データ取得部41、道路状況判定部42、角度範囲決定部43及び光軸角度制御部17におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが
図3に示すメモリ31に格納される。そして、
図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0062】
また、
図10では、ヘッドライト制御装置4の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、
図3では、ヘッドライト制御装置4がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、ヘッドライト制御装置4における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0063】
図9に示すヘッドライト制御装置4は、方向検出部14、道路種別特定部15、道路状況判定部42、角度範囲決定部43及び光軸角度制御部17のほかに、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13及び前方画像データ取得部41を備えている。しかし、これは一例に過ぎず、方向検出部14が運転者画像データ取得部11を備え、道路種別特定部15が、自車位置情報取得部12及び地図データ取得部13を備え、道路状況判定部42が前方画像データ取得部41を備えていてもよい。
【0064】
次に、
図9に示すヘッドライト制御装置4の動作について説明する。前方画像データ取得部41、道路状況判定部42及び角度範囲決定部43以外は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様である。このため、ここでは、主に、前方画像データ取得部41、道路状況判定部42及び角度範囲決定部43の動作について説明する。
【0065】
フロントカメラ6は、車両の前方を撮影する。
フロントカメラ6は、車両の前方が映っている画像である前方画像を示す前方画像データを前方画像データ取得部41に出力する。
前方画像データ取得部41は、フロントカメラ6から前方画像データを取得する。
前方画像データ取得部41は、前方画像データを道路状況判定部42に出力する。
【0066】
道路状況判定部42は、前方画像データ取得部41から前方画像データを取得する。
道路状況判定部42は、前方画像データが示す前方画像に基づいて、車両の前方の道路状況を判定する。
また、道路状況判定部42は、自車位置情報取得部12から自車位置情報を取得し、地図データ取得部13から地図データを取得する。
道路状況判定部42は、自車位置情報と地図データとに基づいて、車両の前方の道路状況を判定する。
道路状況判定部42は、道路状況の判定結果を角度範囲決定部43に出力する。
【0067】
前方画像に基づく前方の道路状況としては、例えば、前方の道路の側面が外壁で覆われているか否かの状況、前方の道路に障害物が存在しているか否かの状況、前方の道路に歩行者が存在しているか否かの状況、又は、前方の道路に歩道が存在しているか否かの状況がある。前方画像に基づく道路状況の判定は、例えば、公知の画像認識処理を実施することで行われる。このため、前方画像に基づく道路状況の判定処理の詳細については省略する。
図9に示すヘッドライト制御装置4では、道路状況判定部42が、前方画像に基づいて、車両の前方の道路状況を判定している。しかし、これは一例に過ぎず、道路状況判定部42は、
図11に示すように、フロントカメラ6による前方画像の代わりに、レーダ7により受信された反射波を用いて、車両の前方の道路状況を判定するようにしてもよい。
図11は、実施の形態2に係る他のヘッドライト制御システムを示す構成図である。
図11において、
図9と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
レーダ7は、例えば、電波を車両の前方に放射し、前方の道路に存在している障害物等による当該電波の反射波を受信し、反射波の受信信号をヘッドライト制御装置4に出力する。
このとき、前方画像データ取得部41は、前方画像データの代わりに、レーダ7から反射波の受信信号を取得し、反射波の受信信号を道路状況判定部42に出力する。
道路状況判定部42は、レーダ7により受信された反射波を用いて、車両の前方の道路状況を判定する。反射波を用いて、車両の前方の道路状況を判定する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0068】
自車位置情報と地図データとに基づく前方の道路状況としては、例えば、前方の道路の曲率半径がある。また、地図データ等に基づく前方の道路状況としては、例えば、前方の道路において、合流地点、分岐点、又は、交差点が存在するか否かの状況がある。
道路状況判定部42は、地図データが示す道路地図と、自車位置情報が示す車両の位置とを照合することで、車両の位置から、設定距離データが示す距離だけ先の位置に、合流地点、分岐点、又は、交差点が存在しているかを確認することができる。設定距離データは、例えば、道路状況判定部42の内部メモリに格納されていてもよいし、道路状況判定部42の外部から与えられるものであってもよい。
【0069】
角度範囲決定部43は、道路種別特定部15から道路種別データを取得し、道路状況判定部42から道路状況の判定結果を取得する。
角度範囲決定部43は、道路種別データが示す道路の種別RTと道路状況の判定結果とに基づいて、ヘッドライト5の変更許容角度範囲φを決定する。
角度範囲決定部43は、変更許容角度範囲φを示す角度範囲データを光軸角度制御部17に出力する。
【0070】
以下、角度範囲決定部43による変更許容角度範囲φの決定処理を具体的に説明する。
まず、角度範囲決定部43は、
図1に示す角度範囲決定部16と同様に、道路種別データが示す道路の種別RTに基づいて、ヘッドライト5の変更許容角度範囲φを決定する。
次に、角度範囲決定部43は、道路状況の判定結果に基づいて、決定した変更許容角度範囲φを補正する。
【0071】
具体的には、前方の道路の側面が外壁で覆われている状況下では、ヘッドライト5から出射される光が外壁によって遮られる。ヘッドライト5が、外壁によって遮られる位置に光を出射しても、車両の運転者が見える範囲は、ほとんど変わらない。このため、角度範囲決定部43は、外壁で覆われている側面への光の照射範囲が減るように、決定した変更許容角度範囲φを狭める補正を行う。
前方の道路の側面が外壁で覆われていなければ、角度範囲決定部43は、決定した変更許容角度範囲φの補正を行わない。
【0072】
前方の道路に障害物が存在している状況、前方の道路に歩行者が存在している状況、又は、前方の道路に歩道が存在している状況下では、車両の運転者は、障害物、又は、歩行者の存在を注視する必要がある。このため、角度範囲決定部43は、決定した変更許容角度範囲φを広げるように補正する。
なお、障害物、歩行者、又は、歩道が存在している位置が、例えば、車両の前方左側であれば、角度範囲決定部43は、前方右側の変更許容角度範囲を広げずに、前方左側の変更許容角度範囲のみを広げるように補正してもよい。
また、障害物、歩行者、又は、歩道が存在している位置が、例えば、車両の前方右側であれば、角度範囲決定部43は、前方左側の変更許容角度範囲を広げずに、前方右側の変更許容角度範囲のみを広げるように補正してもよい。
【0073】
前方の道路がカーブしている場合、車両の運転者は、道路が曲がっている方向を確認する必要がある。前方の道路の曲率半径が小さいほど、道路が曲がっている方向を確認する必要性が高い。このため、角度範囲決定部43は、前方の道路の曲率半径が閾値よりも小さければ、決定した変更許容角度範囲φのうち、道路が曲がっている側の変更許容角度範囲を広げるように補正する。このとき、角度範囲決定部43は、決定した変更許容角度範囲φのうち、道路が曲がっていない側の変更許容角度範囲については狭めるように補正してもよい。
【0074】
前方の道路において、合流地点、分岐点、又は、交差点が存在している状況下では、車両の運転者は、合流地点等における他の車両等の存在を注視する必要がある。このため、角度範囲決定部43は、決定した変更許容角度範囲φを広げるように補正する。
前方の道路において、合流地点、分岐点及び交差点のいずれも存在していない状況下では、角度範囲決定部43は、決定した変更許容角度範囲φの補正を行わない。
【0075】
以上の実施の形態2では、フロントカメラ6から、車両の前方が映っている画像である前方画像を取得し、前方画像に基づいて、車両の前方の道路状況を判定する道路状況判定部42を備えるように、
図9に示すヘッドライト制御装置4を構成した。また、ヘッドライト制御装置4の角度範囲決定部43は、道路種別特定部15により特定された道路の種別と道路状況判定部42により判定された道路状況とに基づいて、角度範囲を決定している。したがって、
図9に示すヘッドライト制御装置4は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様に、運転者が向いている方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができるほか、前方の道路状況に応じて、ヘッドライトの光軸の角度を制御することができる。
【0076】
実施の形態3.
実施の形態3では、光軸角度制御部44が、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御しているときに、角度αの切替速度Vを変更するヘッドライト制御装置4について説明する。
【0077】
図12は、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
図12において、
図1、
図9及び
図11と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図12に示すヘッドライト制御システムは、車内撮影装置1、センサ2、地図データ記憶部3、ヘッドライト制御装置4及びヘッドライト5を備えている。
図12に示すヘッドライト制御装置4は、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部44を備えている。
図13は、実施の形態3に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図13において、
図2及び
図10と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
【0078】
光軸角度制御部44は、例えば、
図13に示す光軸角度制御回路54によって実現される。
光軸角度制御部44は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部44は、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
光軸角度制御部44は、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御しているときに、角度αの切替速度Vを変更する。
具体的には、光軸角度制御部44は、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるほど、光軸の角度αの切替速度Vを遅くする。
【0079】
図12に示すヘッドライト制御装置4は、光軸角度制御部44が
図1に示すヘッドライト制御装置4に適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、光軸角度制御部44が、
図9に示すヘッドライト制御装置4、又は、
図11に示すヘッドライト制御装置4に適用されたものであってもよい。
【0080】
図12では、ヘッドライト制御装置4の構成要素である運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部44のそれぞれが、
図13に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、ヘッドライト制御装置4が、運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路54によって実現されるものを想定している。
運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路54のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0081】
ヘッドライト制御装置4の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部44におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが
図3に示すメモリ31に格納される。そして、
図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0082】
また、
図13では、ヘッドライト制御装置4の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、
図3では、ヘッドライト制御装置4がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、ヘッドライト制御装置4における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0083】
次に、
図12に示すヘッドライト制御装置4の動作について説明する。光軸角度制御部44以外は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様である。このため、ここでは、光軸角度制御部44の動作のみを説明する。
【0084】
光軸角度制御部44は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部44は、
図1に示す光軸角度制御部17と同様に、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
光軸角度制御部44は、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御しているときに、角度αの切替速度Vを変更する。
具体的には、光軸角度制御部44は、
図14に示すように、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるほど、光軸の角度αの切替速度Vを遅くする。
【0085】
図14は、光軸の角度αの切替速度Vの一例を示す説明図である。
図14において、横軸は、ヘッドライト5の光軸の角度αであり、縦軸は、光軸の角度αの切替速度Vである。
図14では、前方左側の変更許容角度範囲の広さと前方右側の変更許容角度範囲の広さとが同じである例を示している。このため、前方左側の変更許容角度範囲は、光軸の角度αが-φ/2から0までの範囲であり、前方右側の変更許容角度範囲は、光軸の角度αが0からφ/2までの範囲である。なお、光軸の角度αが0のときは、前方左側の変更許容角度範囲、又は、前方右側の変更許容角度範囲のいずれかに属している。
図14の例では、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの中心付近に存在しているときのヘッドライト5の切替速度Vは、最大速度V
maxになっている。ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの中心付近に存在しているときとは、光軸角度制御部44が現在制御中の光軸の角度αが、車両の進行方向からのずれ角が小さい角度であることを意味している。つまり、光軸角度制御部44が現在制御中の光軸の角度αが、0付近であることを意味している。
図14の例では、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるほど、光軸の角度αの切替速度Vが遅くなっている。
具体的には、光軸角度制御部44が現在制御中の光軸の角度αの絶対値が、φ/2に近づくほど、光軸の角度αの切替速度Vが遅くなっている。
【0086】
図14の例では、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの中心付近に存在しているときのヘッドライト5の切替速度Vは、最大速度V
maxになっている。しかし、これは一例に過ぎず、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの中心付近に存在しているときでも、光軸の角度αが変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるほど、光軸の角度αの切替速度Vが遅くなっていてもよい。
【0087】
光軸角度制御部44は、切替速度Vで、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。切替速度Vが速ければ、ヘッドライト5の光軸の角度αの切替テンポが速くなる。
一方、切替速度Vが遅ければ、ヘッドライト5の光軸の角度αの切替テンポが遅くなる。
図14の例では、ヘッドライト5の光軸の角度αが変更許容角度範囲φの中心付近に存在しているときのヘッドライト5の切替速度Vは、最大速度V
maxになっている。このため、運転者が向いている方向が、例えば、変更許容角度範囲φの境界付近であるときは、運転者が向いている方向の近くまでは、ヘッドライト5の光軸の角度αが素早く切り替わるようになる。
一方、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるほど、光軸の角度αの切替速度Vが遅くなっている。このため、運転者が向いている方向の近くでは、ヘッドライト5の光軸の角度αがゆっくり切り替わるようになる。この結果として、運転者が向いている方向の近くでは、ヘッドライト5の光軸の角度αが素早く切り替わることによるヘッドライト5のちらつきが防止される。また、運転者が向いている方向の近くでは、ヘッドライト5の光軸の角度αの切替速度Vが遅くなるため、運転者に対して、車両の進行方向からのずれ角が大きい方向を見ていること、つまり、わき見運転をしていることに気づかせる効果がある。
【0088】
以上の実施の形態3では、光軸角度制御部44が、ヘッドライト5の光軸の角度を制御しているときに、角度の切替速度を変更するように、
図12に示すヘッドライト制御装置4を構成した。したがって、
図12に示すヘッドライト制御装置4は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様に、運転者が向いている方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができるほか、わき見運転の防止効果を高めることができる。
【0089】
図12に示すヘッドライト制御装置4では、道路種別特定部15により特定された道路の種別RTにかかわらず、光軸角度制御部44が、光軸の角度αの切替速度Vを変更している。しかし、これは一例に過ぎず、道路種別特定部15により特定された道路の種別RTが、例えば、道路種別(1)(2)であれば、
図15Aに示すように、光軸角度制御部44が、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御しているときに、角度αの切替速度Vを変更する。一方、種別RTが、例えば、道路種別(3)(4)であれば、
図15Bに示すように、光軸角度制御部44が、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御しているときに、角度αの切替速度Vを変更しないようにしてもよい。
光軸角度制御部44が光軸の角度αの切替速度Vを変更する対象の道路の種別RTは、例えば、外部からの設定データによって変更できるものとする。
図15Aは、道路種別が、道路種別(1)又は道路種別(2)であり、ヘッドライト5の光軸の角度αが、変更許容角度範囲φの境界に近い角度であるときに、光軸の角度αの切替速度Vが変更されている例を示す説明図である。
図15Bは、道路種別が、道路種別(3)又は道路種別(4)であり、光軸の角度αの切替速度Vが変更されない例を示す説明図である。
【0090】
実施の形態4.
実施の形態4では、光軸角度制御部45が、角度範囲決定部16により決定された変更許容角度範囲φの広さに応じて、光軸の角度αの切替速度Vを変更するヘッドライト制御装置4について説明する。
【0091】
図16は、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置4を含むヘッドライト制御システムを示す構成図である。
図16において、
図1、
図9及び
図11と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
図16に示すヘッドライト制御システムは、車内撮影装置1、センサ2、地図データ記憶部3、ヘッドライト制御装置4及びヘッドライト5を備えている。
図16に示すヘッドライト制御装置4は、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部45を備えている。
図17は、実施の形態4に係るヘッドライト制御装置4のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図17において、
図2及び
図10と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
【0092】
光軸角度制御部45は、例えば、
図17に示す光軸角度制御回路55によって実現される。
光軸角度制御部45は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部45は、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
光軸角度制御部45は、変更許容角度範囲φの広さに応じて、光軸の角度αの切替速度Vを変更する。
具体的には、光軸角度制御部45は、変更許容角度範囲φが狭いほど、光軸の角度αの切替速度Vを遅くする。
【0093】
図16に示すヘッドライト制御装置4は、光軸角度制御部45が
図1に示すヘッドライト制御装置4に適用されたものである。しかし、これは一例に過ぎず、光軸角度制御部45が、
図9に示すヘッドライト制御装置4、又は、
図11に示すヘッドライト制御装置4に適用されたものであってもよい。
【0094】
図16では、ヘッドライト制御装置4の構成要素である運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部45のそれぞれが、
図17に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、ヘッドライト制御装置4が、運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路55によって実現されるものを想定している。
運転者画像データ取得回路21、自車位置情報取得回路22、地図データ取得回路23、方向検出回路24、道路種別特定回路25、角度範囲決定回路26及び光軸角度制御回路55のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0095】
ヘッドライト制御装置4の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ヘッドライト制御装置4が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、運転者画像データ取得部11、自車位置情報取得部12、地図データ取得部13、方向検出部14、道路種別特定部15、角度範囲決定部16及び光軸角度制御部45におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが
図3に示すメモリ31に格納される。そして、
図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0096】
また、
図17では、ヘッドライト制御装置4の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、
図3では、ヘッドライト制御装置4がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、ヘッドライト制御装置4における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0097】
次に、
図16に示すヘッドライト制御装置4の動作について説明する。光軸角度制御部45以外は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様である。このため、ここでは、光軸角度制御部45の動作のみを説明する。
【0098】
光軸角度制御部45は、方向検出部14から方向データを取得し、角度範囲決定部16から角度範囲データを取得する。
光軸角度制御部45は、
図1に示す光軸角度制御部17と同様に、角度範囲データが示す変更許容角度範囲φ内で、方向データが示す方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
光軸角度制御部45は、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御するとき、変更許容角度範囲φの広さに応じて、光軸の角度αの切替速度Vを変更する。
具体的には、光軸角度制御部45は、変更許容角度範囲φが狭いほど、光軸の角度αの切替速度Vを遅くする。
【0099】
例えば、道路の種別RTが例えば道路種別(1)であって、角度範囲決定部16により決定された変更許容角度範囲φが“小”であれば、光軸角度制御部45は、光軸の角度αの切替速度VをV1に決定する。
道路の種別RTが例えば道路種別(2)であって、角度範囲決定部16により決定された変更許容角度範囲φが“中”であれば、光軸角度制御部45は、光軸の角度αの切替速度Vを、V1よりも速いV2に決定する。V1<V2である。
道路の種別RTが例えば道路種別(3)(4)であって、角度範囲決定部16により決定された変更許容角度範囲φが“大”であれば、光軸角度制御部45は、光軸の角度αの切替速度Vを、V2よりも速いV3に決定する。V2<V3である。
【0100】
光軸角度制御部45は、決定した切替速度Vで、ヘッドライト5の光軸の角度αを制御する。
決定した切替速度Vが速ければ、光軸の角度αの切替テンポが速くなる。一方、決定した切替速度Vが遅ければ、光軸の角度αの切替テンポが遅くなる。
光軸の角度αの切替テンポが速ければ、ヘッドライト5の光軸の角度αが素早く切り替わるようになる。
一方、光軸の角度αの切替テンポが遅ければ、ヘッドライト5のちらつきが防止される。
【0101】
以上の実施の形態4では、光軸角度制御部45が、角度範囲決定部16により決定された角度範囲の広さに応じて、ヘッドライト5の光軸の角度の切替速度を変更するように、
図16に示すヘッドライト制御装置4を構成した。したがって、
図16に示すヘッドライト制御装置4は、
図1に示すヘッドライト制御装置4と同様に、運転者が向いている方向に応じてヘッドライト5の光軸の角度を制御しつつ、周辺状況に応じた適切な運転を行うために視認する必要のある範囲の照射を維持することができるほか、変更許容角度範囲φに応じて、素早い光軸角度の切り替えができ、又は、ヘッドライト5のちらつきを防止できる。
【0102】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示は、ヘッドライト制御装置、ヘッドライト制御方法及びヘッドライト制御システムに適している。
【符号の説明】
【0104】
1 車内撮影装置、2 センサ、3 地図データ記憶部、4 ヘッドライト制御装置、5 ヘッドライト、6 フロントカメラ、7 レーダ、11 運転者画像データ取得部、12 自車位置情報取得部、13 地図データ取得部、14 方向検出部、15 道路種別特定部、16 角度範囲決定部、17 光軸角度制御部、21 運転者画像データ取得回路、22 自車位置情報取得回路、23 地図データ取得回路、24 方向検出回路、25 道路種別特定回路、26 角度範囲決定回路、27 光軸角度制御回路、31 メモリ、32 プロセッサ、41 前方画像データ取得部、42 道路状況判定部、43 角度範囲決定部、44 光軸角度制御部、45 光軸角度制御部、51 前方画像データ取得回路、52 道路状況判定回路、53 角度範囲決定回路、54 光軸角度制御回路、55 光軸角度制御回路。