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特許7646108繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム、繊維強化プラスチック成形体、及び、繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-06
(45)【発行日】2025-03-14
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム、繊維強化プラスチック成形体、及び、繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/68 20060101AFI20250307BHJP
   B29C 65/62 20060101ALI20250307BHJP
   B29C 70/82 20060101ALI20250307BHJP
   B29C 70/84 20060101ALI20250307BHJP
【FI】
B29C70/68
B29C65/62
B29C70/82
B29C70/84
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024567629
(86)(22)【出願日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2024025813
【審査請求日】2024-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2024077856
(32)【優先日】2024-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高垣 和規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 市弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋平
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0053304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0047455(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0139583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00
B29C 65/62
B29B 11/04
B32B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に配置された連続繊維束と、
前記連続繊維束の少なくとも一部において、前記連続繊維束の延伸方向に沿って配置された光ファイバと、
前記基材に縫い付けられて前記連続繊維束と前記光ファイバを固定する固定糸と
を有し、
前記連続繊維束と前記光ファイバとは、前記基材に接した状態で固定されている繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項2】
前記固定糸は、
前記基材に縫い付けられて前記光ファイバを前記基材に固定する第1固定糸と、
前記基材に縫い付けられて少なくとも前記連続繊維束を前記基材に固定する第2固定糸と
を有する請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項3】
前記連続繊維束の延伸方向と前記光ファイバの延伸方向とが一致する箇所の少なくとも一部において、前記第2固定糸が前記光ファイバと前記連続繊維束の両方を固定する請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項4】
前記第2固定糸が前記連続繊維束のみを前記基材に固定する請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項5】
前記連続繊維束の延伸方向と前記光ファイバの延伸方向とが一致する箇所の少なくとも一部において、繊維配向角が連続的に変化している請求項1から4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項6】
前記第1固定糸が、熱可塑性材料、水溶性材料、又は、可溶性材料で製造されている請求項2から4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項7】
前記光ファイバの断面における前記光ファイバの中心と前記連続繊維束の断面における前記連続繊維束の中心と距離が前記連続繊維束の断面における前記連続繊維束の幅の半分以下である請求項1からのいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項8】
前記光ファイバは、前記連続繊維束と接触する位置に配置されている状態と、前記連続繊維束にらせん状に巻きつけられている状態とのいずれか一つ以上の状態で、前記連続繊維束に配置されている請求項1からのいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【請求項9】
複数の層を有する繊維強化プラスチック成形体において、
請求項1からのいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォームからなる層を少なくとも1層含み、
前記複数の層に母材樹脂が含浸されて硬化されて状態で、前記複数の層が一体化されている繊維強化プラスチック成形体。
【請求項10】
前記繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの前記固定糸の一部又はすべてが、前記繊維強化プラスチック成形体の前記母材樹脂と同一材料である請求項9に記載の繊維強化プラスチック成形体。
【請求項11】
前記繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの前記基材が、前記繊維強化プラスチック成形体の前記母材樹脂と同一材料である請求項9に記載の繊維強化プラスチック成形体。
【請求項12】
連続繊維束に光ファイバを配置した状態で刺繍機の供給口から基材に前記連続繊維束と前記光ファイバとの集合体を供給し、前記連続繊維束と前記光ファイバとが前記基材に接した状態で、前記連続繊維束と前記光ファイバとをミシン針の上下運動で固定糸により前記基材に固定することにより、前記基材に前記集合体を縫着する繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【請求項13】
第1固定糸で光ファイバを基材に縫い付け、
少なくとも前記基材上の一部で前記光ファイバに接触するように、連続繊維束を前記基材に縫い付ける繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【請求項14】
前記光ファイバと前記連続繊維束を縫い付けた後に、第1固定糸を除去する請求項13に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連続繊維束と光ファイバを有する繊維強化プラスチック成形体用プリフォームに関する。また、繊維強化プラスチック成形体、及び、繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば人工衛星等に使用される繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:FRP)について、FRP内部に光ファイバ等のセンサ等を実装することで高機能化する動きがみられる。
他方、近年では、柔軟な連続繊維束を繊維織物等の基材に糸で縫い付けて一体化することで、面ではなく線で所望の方向に強化繊維が配向したプリフォームが考案されている。また、そのプリフォームを使用したFRPを実現する手法(例えばTFP:Tailored Fiber Placement)が考案されている。
特許文献1は、柔軟性のある構造体と、柔軟性のある電気配線と、樹脂との一体成型品の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-79743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する技術では、柔軟性のある構造体として連続繊維束を使用することで、電気配線を含む繊維強化プラスチック成形体を実現することができる。
しかしながら、特許文献1においては、連続繊維束に生じる応力とひずみ状態を安定的に計測することができない。
【0005】
この開示は、連続繊維束に生じる応力とひずみ状態を安定的に計測することが可能な繊維強化プラスチック成形体及びその製造に用いられる繊維強化プラスチック成形体用プリフォームを得ること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームは、
基材と、
基材上に配置された連続繊維束と、
連続繊維束の少なくとも一部において、連続繊維束の延伸方向に沿って配置された光ファイバと、
基材に縫い付けられて連続繊維束と光ファイバを固定する固定糸と
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、少なくとも基材上の一部において、光ファイバが連続繊維束の延伸方向に沿って配置されている。そのため、連続繊維束に生じる応力とひずみが光ファイバに容易に伝達するため、光ファイバによる安定した応力とひずみの計測を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す平面図。
図2】実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す断面図。
図3】実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造工程の一例を示す説明図。
図4】実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す斜視図。
図5】実施の形態2に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す平面図。
図6】実施の形態2に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す断面図。
図7】実施の形態3に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す平面図。
図8】実施の形態3に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの構成例を示す断面図。
図9】実施の形態4に係る繊維強化プラスチック成形体の製造工程の一部を示す説明図。(a)は積層前の図、(b)は積層後の図、(c)は繊維強化プラスチック成形体の図。
図10】実施の形態5に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造工程を示す説明図。(a)は光ファイバ縫着工程の図、(b)は光ファイバ縫着工程後の図、(c)は連続繊維束縫着工程の図、(d)は連続繊維束縫着工程後の図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を用いた繊維強化プラスチック成形体2、及び繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造方法について、図面を用いて説明する。
なお、図面の説明において、同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0010】
実施の形態1.
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す平面図である。
【0011】
繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1は、基材11と、基材11上に配置された連続繊維束12と、光ファイバ13と、固定糸14からなる。光ファイバ13は、連続繊維束12の少なくとも一部において、連続繊維束12の延伸方向Sに沿って配置されている。連続繊維束12は基材11の面上において曲線部を有する。曲線部の全部又は曲線部の少なくとも一部に沿うように光ファイバ13が配置されている。
【0012】
図1においては、連続繊維束12の延伸方向Sに沿って配置された光ファイバ13として、連続繊維束12に内包された位置に形成された光ファイバと、連続繊維束12と接触する位置に形成された光ファイバとが図示されている。光ファイバ13としては、連続繊維束12に内包された位置に形成された光ファイバと、連続繊維束12と接触する位置に形成された光ファイバの両方があってもよいし、片方だけがあってもよい。
【0013】
ここで、「内包」とは、光ファイバ13の周囲に連続繊維が存在していることをいう。「内包」の場合は、連続繊維束12を外側から見た場合、光ファイバ13を目視すること
ができない。また、「接触」とは、連続繊維束12に光ファイバ13の一部が接触していることをいう。「接触」の場合は、連続繊維束12を外側から見た場合、少なくとも光ファイバ13の一部を目視することができる。
【0014】
連続繊維束12と光ファイバ13は、固定糸14により、基材11に縫い付けられ固定されている。
【0015】
以下、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成について、具体例を挙げ詳細に説明する。
図2は、実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す断面図である。
【0016】
基材11の上に、連続繊維束12及び光ファイバ13が配置され、固定糸14によって、それらが基材11に固定されている。図2では、連続繊維束12に内包された光ファイバ13と連続繊維束12及び基材11に接するように配置された光ファイバ13を併記しているが光ファイバの数に制限はない。図1に示すように、基材11上の一部において、光ファイバ13は連続繊維束12の延伸方向が一致するように配置されている。基材11としてはガラスクロス、連続繊維束12としては炭素繊維(T700SC、12K、東レ株式会社製)、固定糸14としてはナイロン繊維を使用することができる。なお、固定糸14は、上糸及び下糸を含むことができる。
【0017】
繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造方法としては、例えばTFP(Tailored Fiber Placement)法を用いることができる。
TFP法は、連続繊維束12を配向するためのテキスタイル技術を応用した繊維プリフォーム生産技術である。TFP法では、連続繊維束12を縫着するための工業用刺繍機(不図示)を用いる。あらかじめ設定したパス(経路)データに基づいて、基材11に連続繊維束12を配置しながら、固定糸14によって縫着させる。これにより、基材11に連続繊維束12が縫着された繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を作製することができる。TFP法では、応力解析等に基づき、適切なパスを設定することで、最適な繊維配向を実現することができる。例えば、連続繊維束12を基材11に縫着する際には、繊維配向角を連続的に変化させることができる。繊維配向角を連続的に変化させた繊維強化プラスチック(複合材料)は、ステアリング複合材料と呼ばれる。図1は繊維配向角が連続的に変化した繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の例を示しており、この繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1に樹脂を含浸して硬化させることでステアリング複合材料を実現できる。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1のTFP法における製造工程の一例を示す説明図である。
縫着する前の連続繊維束12の内部又は側面に光ファイバ13を配置した状態で、連続繊維束12と光ファイバ13の集合体15を刺繍機(図示せず)の供給口21から供給し、ミシン針22の上下運動で固定糸14により基材11に固定する。これにより、連続繊維束12に内包又は接触する位置に光ファイバ13が配置された繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を実現できる。
【0019】
光ファイバ13の応答を基にひずみを求める方法として、レイリー散乱光の周波数シフトにより、光ファイバのひずみを連続的に計測する方法を使用することができる。
【0020】
なお、基材11としてガラスクロス基材を使用する場合について説明したが、固定糸14により連続繊維束12と光ファイバ13を縫着できて、樹脂が含浸できる材料であればよい。具体的には、基材11として、炭素繊維基材、ナイロン繊維基材、ポリエステル繊
維基材、綿繊維基材、不織布等を用いることができる。
また基材11として熱硬化樹脂フィルム又は熱可塑樹脂フィルムを用いることも可能である。基材11として熱硬化樹脂フィルム又は熱可塑樹脂フィルムを用いることで、繊維強化プラスチック成形体2を成形する際に基材11が残留することなく一体化することができる。
特に基材11として繊維強化プラスチック成形体2の母材樹脂と同一の材料を使用することで、基材11の残留を最小限に抑制できる。
【0021】
また、連続繊維束12として炭素繊維を使用する場合について説明したが、炭素繊維の代わりに、ガラス繊維、アラミド繊維(ケブラー(登録商標)繊維)、ポリエチレン繊維(ダイニーマ(登録商標)繊維)、ザイロン(登録商標)繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、亜麻繊維といった繊維を使用することができる。
【0022】
また、固定糸14としてナイロン繊維を使用する場合について説明したが、ガラス繊維、炭素繊維、パラアラミド繊維、及びポリエステル繊維等の有機繊維、並びにこれらの組合せを使用することができる。さらに、固定糸14の材料として、ビニロン等の水溶性材料又は熱可塑材料を用いることができる。また、すべての又は一部の固定糸14の材料として、繊維強化プラスチック成形体2とする際に使用する母材樹脂と同一の材料を用いてもよい。
【0023】
また、光ファイバ13は、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を構成する連続繊維束12の全長にわたって連続繊維束12の延伸方向に沿って配置される必要はない。光ファイバ13は、基材11上の少なくとも一部分において、連続繊維束12と光ファイバ13の延伸方向が同一であればよい。特に応力とひずみが集中する箇所が特定されている場合等、光ファイバ13は、設計に応じて連続繊維束12に沿って部分的に配置されていてもよい。
【0024】
また、光ファイバ13の計測方法としてレイリー散乱光を使用し、光ファイバ13上のひずみを連続的に計測する場合について説明したが、レイリー散乱光の代わりに、ラマン散乱光、ブリルアン散乱光を使用した計測手法を用いることができる。さらに、光ファイバ13のコアの一部において屈折率を周期的に変化させたグレーティング部を有するFBG(Fiber Bragg Grating)センサを使用してもよい。FBGセンサはグレーティング部を複数有してもよい。
【0025】
また、繊維配向角を連続的に変化させる際の曲率半径としては、例えば1mm、5mm、10mm、50mm、100mm、200mm及びこれらの間の値又はそれ以外の値の中から必要な経路に沿って、連続的に適宜に選択することができる。
また、連続繊維束12及び光ファイバ13を基材11上に固定する方法について、TFP法を使用する場合について説明したが、TFP法以外の手法でもよい。例えば、TFP法により連続繊維束12のみを基材11上に固定した後に、連続繊維束12を基材11に固定するのに使用した固定糸14の間に、光ファイバ13を手作業で通し入れ、一体化する方法を用いてもよい。
【0026】
また、光ファイバ13の配置方法として、連続繊維束12と基材11に接触するように配置する場合について説明したが、光ファイバ13は連続繊維束12に接触又は内包されていればよく、基材11に接触する必要はない。
【0027】
図4は、実施の形態1に係る連続繊維束12の斜視図である。
光ファイバ13の配置方法として、図4に示すように、連続繊維束12に対し、光ファイバ13をらせん状に巻きつけてもよい。光ファイバ13をらせん状に巻き付けることで
連続繊維束12と光ファイバ13が分離しにくくなる。TFP法を使用する場合、連続繊維束12にあらかじめ光ファイバ13を巻き付けた集合体15を使用することで繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を実現できる。
【0028】
光ファイバ13は、連続繊維束12の内包する位置に配置されている状態と、記連続繊維束12と接触する位置に配置されている状態と、連続繊維束12にらせん状に巻きつけられている状態とのいずれか一つ以上の状態で、連続繊維束に配置されていればよい。
また、連続繊維束12及び光ファイバ13に加えて、繊維状のデバイス等を基材11に配置して縫着してもよい。繊維状のデバイスとして、例えば、熱電対、ひずみゲージ、電熱線等を加えることができる。
【0029】
***実施の形態1の効果の説明***
本実施の形態によれば、光ファイバ13は連続繊維束12の少なくとも一部において、連続繊維束12の延伸方向に沿って配置されており、連続繊維束12と光ファイバ13は固定糸14により基材11に固定される。そのため、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を用いた繊維強化プラスチック成形体2において、光ファイバ13によって、連続繊維束12に沿った応力とひずみ変化を安定的に計測することができる。
【0030】
本実施の形態によれば、光ファイバ13により連続繊維束12に沿ったひずみ変化を安定的に計測可能な繊維強化プラスチック成形体2を実現するための繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を得ることができる。
【0031】
本実施の形態によれば、連続繊維束12と光ファイバ13とが延伸方向の一部において固定されていればよいので、設計に沿った連続繊維束12の経路を実現できる。
【0032】
また、繊維強化プラスチック成形体2の母材樹脂と同一材料の固定糸14を使用すれば、固定糸14を残留させることなく繊維強化プラスチック成形体2を実現できる。
【0033】
また、繊維強化プラスチック成形体2の母材樹脂と同一材料の基材11を使用すれば、基材11を残留させることなく繊維強化プラスチック成形体2を実現できる。
【0034】
連続繊維束12が配置された繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造後に光ファイバを配置した場合は、光ファイバの積層過程又は配置過程において光ファイバの位置ずれが生じ、所望の応力とひずみを計測できない可能性がある。本実施の形態のように連続繊維束12の延伸方向に沿って光ファイバ13を配置し、かつ固定糸14により光ファイバ13を固定することで、光ファイバ13の位置ずれを防止し、高精度な応力とひずみの計測を実現できる。
【0035】
連続繊維束12と光ファイバ13を別々の基材11に配置して固定糸14で固定した場合、たとえ連続繊維束12と光ファイバ13の延伸方向を同一にした場合でも、連続繊維束12と光ファイバ13が形成された層が異なるため、連続繊維束12の応力とひずみ状態を直接的に計測することはできず、計測精度が低下する。本実施の形態のように、連続繊維束12に内包又は接触する状態で光ファイバ13を保持することで、連続繊維束12の応力とひずみ状態を直接的に計測することができ、高精度な計測を実現できる。
【0036】
連続繊維束12と光ファイバ13を同一の基材に配置した場合でも、別々の固定糸14で連続繊維束12と光ファイバ13を固定すると、光ファイバ13を固定するための固定糸14が拘束となり、連続繊維束12の応力とひずみ状態を安定的に計測することはできない。本実施の形態のように、同一の固定糸14で連続繊維束12と光ファイバ13を固定することで、連続繊維束12と光ファイバ13の応力とひずみ状態が同一となり、高精
度な計測を実現できる。
【0037】
実施の形態2.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
図5は、実施の形態2に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す平面図である。
【0038】
繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1は、基材11と、基材11上に配置された連続繊維束12と、光ファイバ13と、第1固定糸16と、第2固定糸17からなる。光ファイバ13は、連続繊維束12の少なくとも一部において、連続繊維束12の延伸方向に沿って、連続繊維束12と接触する位置に形成されている。第1固定糸16は、光ファイバのみを跨ぐように基材11に縫い付けられており、光ファイバ13を基材11に固定している。一方、第2固定糸17は、連続繊維束12と光ファイバ13の延伸方向が沿う箇所の少なくとも一部において、連続繊維束12と光ファイバ13を跨ぐように基材11に縫い付けられており、連続繊維束12及び光ファイバ13を共に基材11に固定している。
【0039】
以下、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成について、具体例を挙げ詳細に説明する。
図6は、実施の形態2に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す断面図である。
【0040】
基材11の上に、連続繊維束12及び光ファイバ13が配置されている。連続繊維束12の断面における幅(断面において基材11の面と平行な方向における最大幅)をLとする。光ファイバ13は、平面視で光ファイバ13の中心は連続繊維束12の中心からL/2(距離D=L/2)だけずれた位置に配置されている。光ファイバ13は、連続繊維束12及び基材11と接触した状態で配置されており、第1固定糸16により基材11に固定されている。第1固定糸16としては、例えば熱可塑性材料を用いた糸を使用することができる。第2固定糸17は、連続繊維束12と光ファイバ13の延伸方向が沿う箇所の少なくとも一部において、連続繊維束12及び光ファイバ13を覆うように配置されており、連続繊維束12及び光ファイバ13を基材11に固定している。第2固定糸17としてはナイロン繊維を使用することができる。
【0041】
第1固定糸16を使用することで、光ファイバ13を連続繊維束12とは独立に基材11に固定することができる。これにより、前述した実施の形態1で必要となる、基材11への固定前の連続繊維束12と光ファイバ13の一体化作業が不要となり作業性が向上する。さらに、繊維強化プラスチック成形体2の成形に際し、含浸する母材樹脂を第1固定糸16と同一材料とすることで、第1固定糸16は母材樹脂に溶融されて母材樹脂に一体化できる。このため、光ファイバ13は、第1固定糸16に拘束されなくなるため、連続繊維束12に生じるひずみをより安定的に計測できるようになる。
【0042】
なお、第1固定糸16の材料として、熱可塑性材料を使用する場合について説明したが、水溶性材料、又は、可溶性材料を使用してもよい。第1固定糸16の材料として、ナイロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、パラアラミド繊維、及びポリエステル繊維等の有機繊維を使用することができる。さらに、熱可塑材料のように熱又は水分等の外部刺激により溶解又は溶融する材料を使用することで、第1固定糸16を残留させることなく繊維強化プラスチック成形体2を実現することができる。溶解性又は溶融性のある材料としては、熱可塑樹脂の他に、ビニロン等の水溶性材料等を使用してもよい。水溶性材料のように溶解性のある樹脂を使用した場合、第1固定糸16を溶解することで、実施の形態1と同様の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を実現することができる。
【0043】
また、第1固定糸16又は第2固定糸17、並びにその両方の材料を、繊維強化プラスチック成形体2とする際に使用する母材樹脂と同一の材料としてもよい。
【0044】
また、光ファイバ13の中心が連続繊維束12の中心からL/2だけずれた位置に配置されている場合について説明したが、光ファイバ13は連続繊維束12と基材11に接触し、光ファイバ13の応答から連続繊維束12のひずみを測定できる位置に配置されていればよい。具体的には、光ファイバ13の中心と連続繊維束12の中心との距離DがL/2以下であればよい。
【0045】
***実施の形態2の効果の説明***
本実施の形態によれば、光ファイバ13のみを固定する第1固定糸16と、光ファイバ13及び連続繊維束12を固定する第2固定糸17を有する。そのため、光ファイバ13を連続繊維束12とは独立に基材11に固定することができプリフォーム製造の作業性が向上する。
【0046】
さらに第1固定糸16として外部刺激により溶解又は溶融する材料を使用することで、第1固定糸16を残留させることなく繊維強化プラスチック成形体2を実現することができる。これにより、光ファイバ13が第1固定糸16に拘束されなくなるため、連続繊維束12に生じる応力とひずみをより安定的に計測できるようになる。
【0047】
実施の形態3.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
図7は、実施の形態3に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す平面図である。
【0048】
第1固定糸16は、光ファイバのみを跨ぐように基材11に縫い付けられており、光ファイバ13を基材11に固定している。一方、第2固定糸17は、連続繊維束12のみを跨ぐように基材11に縫い付けられており、連続繊維束12及び光ファイバ13を基材11に固定している。
【0049】
以下、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成について、具体例を挙げ詳細に説明する。
図8は、実施の形態3に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の構成例を示す断面図である。
【0050】
基材11の上に、連続繊維束12及び光ファイバ13が配置されている。第1固定糸16としては、熱可塑性材料を用いた糸を使用することができる。第2固定糸17は、連続繊維束12のみを覆うように配置されており、連続繊維束12を基材11に固定している。第2固定糸17としてはナイロン繊維を使用することができる。
【0051】
第1固定糸16を使用することで、光ファイバ13を連続繊維束12とは独立に基材11に固定することができる。これにより、実施の形態2と同様に、基材11への固定前の連続繊維束12と光ファイバ13の一体化作業が不要となり作業性が向上する。
【0052】
さらに、本実施の形態では、第2固定糸17で光ファイバ13を覆う必要がなく、第2固定糸17の縫着に関する設定が容易である。
一方、熱可塑性樹脂からなる第1固定糸16は繊維強化プラスチック成形体2になった際に、拘束となりうる。そのため、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の状態で第1固定糸16を溶融して再度固化し、光ファイバ13を連続繊維束12と一体化する
【0053】
なお、第1固定糸16の処理方法として、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の状態で第1固定糸16を溶融し、光ファイバ13を連続繊維束12と一体化する場合について説明したが、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1に樹脂を含浸し、繊維強化プラスチック成形体2とする際に第1固定糸16と同一の熱可塑樹脂を母材樹脂として使用することで、第1固定糸16と母材樹脂を一体化することもできる。さらに、第1固定糸16よりも成形温度の高い熱硬化樹脂又は溶融温度の高い熱可塑樹脂を母材樹脂として使用することで、第1固定糸16を母材樹脂内に溶融させることもできる。
【0054】
***実施の形態3の効果の説明***
本実施の形態によれば、光ファイバ13のみを固定する第1固定糸16と、連続繊維束12のみを固定する第2固定糸17を有する。そのため、光ファイバ13を連続繊維束12とは独立に基材11に固定することができプリフォーム製造の作業性が向上する。また、第2固定糸17で光ファイバ13を覆う必要がなく、第2固定糸17の縫着を容易に設定できる。
【0055】
本実施の形態によれば、熱可塑性樹脂製の第1固定糸16により光ファイバ13を固定し、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の作製後に第1固定糸16を溶融することで、連続繊維束12と光ファイバ13を一体化することができ、実施の形態1と同様の効果を奏する繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を得ることができる。
【0056】
本実施の形態によれば、光ファイバ13と連続繊維束12の一体物を事前に作製する必要がなく、別々に基材上に配置できるため、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の作製を低コスト化しつつ、光ファイバ13のずれを防止でき、連続繊維束12の応力とひずみ状態を高精度に計測することができる。
【0057】
実施の形態4.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
図9は、実施の形態4に係る繊維強化プラスチック成形体2の製造工程の一部を示す説明図である。
【0058】
図9では前述したいずれかの実施の形態の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1と光ファイバを含まない平織プリフォーム23を使用する例を示している。繊維強化プラスチック成形体2は、少なくとも1層の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1からなる層を有する。繊維強化プラスチック成形体2において、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1には母材樹脂が含浸されており、図9のように繊維強化プラスチック成形体2が複数層から構成される場合、母材樹脂により一体化されている。繊維強化プラスチック成形体2を構成する層のうち、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1からなる層には光ファイバ13が実装されており、この光ファイバ13の応答から、繊維強化プラスチック成形体2に生じる応力とひずみを計測することができる。
【0059】
繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1に樹脂を含浸し、繊維強化プラスチック成形体2を製造するための方法の一例を示す。
まず、図9の(a)に示すように成形型24上に平織プリフォーム23を賦形した後、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を平織プリフォーム23上に賦形する。
次に、その上に別の平織プリフォーム23を賦形し、プリフォーム積層体25を得る(図9の(b))。この状態で、プリフォーム積層体25に樹脂を含浸して硬化させることで、繊維強化プラスチック成形体2を得ることができる。
樹脂を含浸して硬化させる方法としては例えばVaRTM(Vacuum Assis
ted Resin Transfer Molding)を用いることができる。VaRTMを行うために、プリフォーム積層体25上にピールプライ、及びフローメディアを積層し、全体をバギングフィルムで覆い、周囲をシーラントテープで固定する。この際、真空ポンプと繋げる真空チューブ、及び樹脂注入チューブを、バギングフィルムを貫通するように配置する。この状態で真空チューブと真空ポンプを繋げ、真空ポンプを起動することでバギングフィルム内部を真空状態にした上で、樹脂注入チューブから樹脂を流し込む。
プリフォーム積層体25に樹脂が含浸したのち、真空ポンプを停止し、樹脂が硬化するまで静置する。樹脂硬化後、必要に応じてオーブン等で後硬化することで、繊維強化プラスチック成形体2を得ることができる(図9の(c))。
【0060】
なお、プリフォーム積層体25の状態で、含浸前に各プリフォームを仮止めしてもよい。仮止めには、テープ又は接着剤等を使用することができる。また、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1、及び平織プリフォーム23の基材11として、熱可塑性樹脂を使用する場合、一部を溶融することで仮止めすることができる。
【0061】
また、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1以外の層として平織プリフォーム23を使用する場合について説明したが、平織プリフォーム23の代わりに、朱子織プリフォーム、綾織プリフォーム、ノンクリンプファブリック、及び光ファイバを含まないTFP(Tailored Fiber Placement)プリフォーム、並びにそれらの組合せを使用してもよい。
【0062】
また、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1が1層の場合について説明したが、2層以上使用してもよい。2層以上の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を使用する場合、それぞれの繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1において、連続繊維束12及び光ファイバ13の配置が異なっていてもよい。
【0063】
また、VaRTMによる成形について説明したが、プリフォームに樹脂が含浸すればよく、RTM(Resin Transfer Molding)、プレス成形、ハンドレイアップ等の手法を用いてもよい。さらに、プリフォームの基材として、母材樹脂を使用する場合、別途樹脂を含浸する必要がない。
【0064】
***実施の形態4の効果の説明***
本実施の形態によれば、繊維強化プラスチック成形体2は少なくとも1層の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を含む。繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1は光ファイバ13を含むため、光ファイバ13の応答から繊維強化プラスチック成形体2の応力とひずみを計測することができる。
【0065】
実施の形態5.
以下、主に前述した実施の形態と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
図10は、実施の形態5に係る繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造工程を示す説明図である。
【0066】
本実施の形態で開示する繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造工程は、光ファイバ13を基材11に縫い付ける光ファイバ縫着工程と、連続繊維束12を基材11に縫い付ける連続繊維束縫着工程とを有する。
【0067】
以下、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造工程について、具体例を挙げ詳細に説明する。
図10の(a)は、基材11上に光ファイバ13を第1固定糸16により縫い付ける光
ファイバ縫着工程を示す。
図10の(a)では、光ファイバ13を近傍に有さない連続繊維束12が既に基材11上に縫着されている例を示している。光ファイバ13は、刺繍機(図示せず)の供給口21から供給され、ミシン針22の上下運動で第1固定糸16により、基材11に縫着される。刺繍機の供給口21、及びミシン針22は事前に設定された経路データに沿うように移動しつつ、光ファイバ13を基材11上に縫着する。
図10の(b)は、光ファイバ13が所定の経路全体に縫着された状態を示す。
【0068】
図10の(c)は、基材11上に連続繊維束12を第2固定糸17により縫い付ける連続繊維束縫着工程を示す。連続繊維束縫着工程では、刺繍機の供給口21から供給される材料を光ファイバ13から連続繊維束12に変更する。連続繊維束12は、少なくとも基材11上の一部で光ファイバ13に接触し、延伸方向が光ファイバ13と一致するように刺繍機の供給口21から供給され、ミシン針22の上下運動で第2固定糸17により、基材11に縫着される。第2固定糸17は、基材11上の一部で連続繊維束12と光ファイバ13を跨ぐように縫着されている。これにより、実施の形態2に示す繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を得ることができる。
【0069】
なお、連続繊維束縫着工程において刺繍機の供給口21から供給される材料を光ファイバ13から連続繊維束12に変更する場合について説明したが、光ファイバ13と連続繊維束12が別の供給口21を使用してもよい。
【0070】
また、第1固定糸16として可溶性の材料を使用し、光ファイバ縫着工程、及び連続繊維束縫着工程の後に、第1固定糸16を除去する第1固定糸除去工程を追加してもよい。第1固定糸16を除去することで、実施の形態1に示す繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を得られる。第1固定糸16の除去方法は材料に依存するが、例えば加熱、加水、溶媒による除去等を用いることができる。
【0071】
また、第2固定糸17が基材11上の一部で連続繊維束12と光ファイバ13を跨ぐように縫着されている場合について説明したが、少なくとも基材11上の一部で、連続繊維束12が光ファイバ13に接触し、延伸方向が一致するように配置されていればよく、第2固定糸17が連続繊維束12のみを跨ぐように縫着されていてもよい。これにより、実施の形態3に示す繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を得られる。この場合、連続繊維束縫着工程の後に光ファイバ縫着工程が実施されてもよい。
【0072】
***実施の形態5の効果の説明***
本実施の形態によれば、繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1の製造工程は光ファイバ縫着工程と連続繊維束縫着工程を含む。これにより、少なくとも基材11上の一部で、連続繊維束12が光ファイバ13に接触し、延伸方向が一致するように配置された繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム1を製造することができる。
【0073】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
基材と、
前記基材に配置された連続繊維束と、
前記連続繊維束の少なくとも一部において、前記連続繊維束の延伸方向に沿って配置された光ファイバと、
前記基材に縫い付けられて前記連続繊維束と前記光ファイバを固定する固定糸と
を有する繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0074】
(付記2)
前記固定糸は、
前記基材に縫い付けられて前記光ファイバを前記基材に固定する第1固定糸と、
前記基材に縫い付けられて少なくとも前記連続繊維束を前記基材に固定する第2固定糸と
を有する付記1に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0075】
(付記3)
前記連続繊維束の延伸方向と前記光ファイバの延伸方向とが一致する箇所の少なくとも一部において、前記第2固定糸が前記光ファイバと前記連続繊維束の両方を固定する付記2に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0076】
(付記4)
前記第2固定糸が前記連続繊維束のみを前記基材に固定する付記2に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0077】
(付記5)
前記連続繊維束の延伸方向と前記光ファイバの延伸方向とが一致する箇所の少なくとも一部において、繊維配向角が連続的に変化している付記1から4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0078】
(付記6)
前記第1固定糸が熱可塑性材料、水溶性材料、又は、可溶性材料である付記2から4のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0079】
(付記7)
前記光ファイバの断面における前記光ファイバの中心と前記連続繊維束の断面における前記連続繊維束の中心と距離が前記連続繊維束の断面における前記連続繊維束の幅の半分以下である付記1から6のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0080】
(付記8)
前記光ファイバは、前記連続繊維束の内包する位置に配置されている状態と、前記連続繊維束と接触する位置に配置されている状態と、前記連続繊維束にらせん状に巻きつけられている状態とのいずれか一つ以上の状態で、前記連続繊維束に配置されている付記1から5のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム。
【0081】
(付記9)
複数の層を有する繊維強化プラスチック成形体において、
付記1から8のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォームからなる層を少なくとも1層含み、
前記複数の層に母材樹脂が含浸されて硬化されて状態で、前記複数の層が一体化されている繊維強化プラスチック成形体。
【0082】
(付記10)
前記繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの前記固定糸の一部又はすべてが、前記繊維強化プラスチック成形体の前記母材樹脂と同一材料である付記9に記載の繊維強化プラスチック成形体。
【0083】
(付記11)
前記繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの前記基材が、前記繊維強化プラスチ
ック成形体の前記母材樹脂と同一材料である付記9又は10に記載の繊維強化プラスチック成形体。
【0084】
(付記12)
連続繊維束に光ファイバを配置した状態で刺繍機の供給口から基材に前記連続繊維束と前記光ファイバの集合体を供給し、ミシン針の上下運動で固定糸により前記基材に前記集合体を縫着する繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【0085】
(付記13)
第1固定糸でファイバを基材に縫い付け、
連続繊維束を前記基材に縫い付ける繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【0086】
(付記14)
前記光ファイバと前記連続繊維束を縫い付けた後に、第1固定糸を除去する付記13に記載の繊維強化プラスチック成形体用プリフォームの製造方法。
【符号の説明】
【0087】
1 繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム、2 繊維強化プラスチック成形体、11 基材、12 連続繊維束、13 光ファイバ、14 固定糸、15 集合体、16
第1固定糸、17 第2固定糸、21 供給口、22 ミシン針、23 平織プリフォーム、24 成形型、25 プリフォーム積層体。
【要約】
繊維強化プラスチック成形体用プリフォーム(1)は、基材(11)と、基材上に配置された連続繊維束(12)と、連続繊維束(12)の少なくとも一部において、連続繊維束(12)の延伸方向に沿って配置された光ファイバ(13)と、基材(11)に縫い付けられて連続繊維束(12)と光ファイバ(13)を固定する固定糸(14)とを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10