IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7646144運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
<>
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図1
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図2
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図3
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図4
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図5
  • -運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250310BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20250310BHJP
   B60K 35/28 20240101ALI20250310BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60K35/23
B60K35/28
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021015016
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118460
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古海 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼砂 晴利
(72)【発明者】
【氏名】西垣 守道
(72)【発明者】
【氏名】上杉 繁
(72)【発明者】
【氏名】勝田 聖也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 小百合
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/208989(WO,A1)
【文献】特開2020-106933(JP,A)
【文献】特開2002-019491(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60K 35/00-37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、
前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、
を備え
前記交通参加者は、歩行者であり、
前記制御部は、前記認識部の認識結果を参照し、前記交通参加者の少なくとも一部が前記道路境界よりも車道側にはみ出したときに、前記第1ガイドオブジェクトを前記像として前記運転者に視認させることを開始するように前記提示装置に指示する運転支援装置。
【請求項2】
前記提示装置は、透過部材に光を反射させることで前記像を前記運転者に視認させる装置、或いは、透過部材に埋め込まれた光透過型の表示装置である、
請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第1ガイドオブジェクトは、前記道路境界における前記第1位置よりも手前側の第3位置と、前記第1位置とを結ぶ部分を含む、
請求項1または2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記第1ガイドオブジェクトは、前記第2位置と、前記道路境界における前記交通参加者よりも奥側の第4位置とを結ぶ部分を含み、
前記第2位置の付近において、前記第1位置から前記第2位置に向けて延伸する部分と、前記第4位置から前記第2位置に向けて延伸する部分とを曲線状に接続する接続部を含む、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、
前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2位置を、前記運転者から見て前記交通参加者に重なるように視認される位置に設定する運転支援装置。
【請求項6】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、
前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第2位置を前記交通参加者のいずれかの側方点に固定し、前記交通参加者が、車道側にはみ出したときに跨いだ道路境界から反対側の道路境界まで移動したときに、前記第1ガイドオブジェクトを前記像として前記運転者に視認させることを終了するように前記提示装置に指示する運転支援装置。
【請求項7】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、
前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、
を備え、
前記制御部は、更に、道路幅方向に前記第1ガイドオブジェクトを反転させた第2ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する運転支援装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記交通参加者が、車道側にはみ出してから道路の中央部を超えて移動する際に、少なくとも、
前記第1位置を、前記交通参加者が道路の中央部を超える前とは反対側の道路境界における前記交通参加者よりも手前側の位置に変更し、
前記第2位置を、前記交通参加者が道路の中央部を超える前とは反対側の前記交通参加者の側方点に変更する、
請求項7記載の運転支援装置。
【請求項9】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、
前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、
を備え、
前記交通参加者は、歩行者と二輪車両を含み、
前記制御部は、前記二輪車両が前記交通参加者として認識された場合、前記歩行者が前記交通参加者として認識された場合に比して、前記第2位置と前記交通参加者との距離を長くする運転支援装置。
【請求項10】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御するコンピュータが、
移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識し、
前記認識の結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者から見て前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示し、
前記第2位置を前記運転者から見て前記交通参加者に重なるように視認される位置に設定する運転支援方法。
【請求項11】
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御するコンピュータに、
移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識させ、
前記認識の結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者から見て前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示させ、
前記第2位置を前記運転者から見て前記交通参加者に重なるように視認される位置に設定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲状況を取得し、取得した周囲状況から運転者に提示する対象を検出する周囲状況検出手段と、周囲状況検出手段により検出された対象についての情報を提示する情報提示手段と、運転者の視線方向を検出する運転者視線検出手段と、運転者視線検出手段より出力される視線位置と前記情報提示手段の提示する表示位置とを照合して表示位置に表示した情報が視認されたかを推定する運転者認知状態推定手段と、情報提示手段により情報が提示された後、運転者認知状態推定手段により運転者が表示を認知したと推定された場合に、情報提示手段の情報の提示方法を変更する情報提示制御手段と、を備える車両用情報提示装置の発明が開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、車両前方を連続的に撮像可能な赤外線撮像手段と、この赤外線撮像手段によって撮像された撮像画像に基いてモニタ画像を生成するモニタ画像生成手段と、モニタ画像を表示可能なモニタとを備えた車両用画像表示装置において、複数の光源を有する左右1対の前照灯と、車両前方に存在する障害物を検出可能な障害物検出手段とを備え、モニタ画像生成手段は、車両前方に障害物が検出されたとき、赤外線撮像手段によって撮像された撮像画像に前照灯の照射領域を合成して合成モニタ画像を生成する車両用画像表示装置の発明が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-135037号公報
【文献】特開2017-60119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、移動体の運転者に負荷をかけないようにしつつ、道路側方にいる交通参加者に配慮した運転をするように促すことができない場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、移動体の運転者に負荷をかけないようにしつつ、道路側方にいる交通参加者に配慮した運転をするように促すことができる運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、前記移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識する認識部と、前記認識部の認識結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する制御部と、を備えるものである。
【0008】
(2):上記(1)の態様において、前記制御部は、前記認識部の認識結果を参照し、前記交通参加者の少なくとも一部が前記道路境界よりも車道側にはみ出したときに、前記第1ガイドオブジェクトを前記像として前記運転者に視認させることを開始するように前記提示装置に指示するものである。
【0009】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記提示装置は、透過部材に光を反射させることで前記像を前記運転者に視認させる装置、或いは、透過部材に埋め込まれた光透過型の表示装置であるものである。
【0010】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記第1ガイドオブジェクトは、前記道路境界における前記第1位置よりも手前側の第3位置と、前記第1位置とを結ぶ部分を含むものである。
【0011】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記第1ガイドオブジェクトは、前記第2位置と、前記道路境界における前記交通参加者よりも奥側の第4位置とを結ぶ部分を含み、前記第2位置の付近において、前記第1位置と前記第2位置を結ぶ部分と、前記第2位置と前記第4位置を結ぶ部分とを曲線状に接続する部分を含むものである。
【0012】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記第2位置を、前記運転者から見て前記交通参加者に重なるように視認される位置に設定するものである。
【0013】
(7):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記制御部は、前記第2位置を前記交通参加者のいずれかの側方点に固定し、前記交通参加者が、車道側にはみ出したときに跨いだ道路境界から反対側の道路境界まで移動したときに、前記第1ガイドオブジェクトを前記像として前記運転者に視認させることを終了するように前記提示装置に指示するものである。
【0014】
(8):上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記制御部は、更に、道路の中央部を連ねた線に関して前記第1ガイドオブジェクトを反転させた第2ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示するものである。
【0015】
(9):上記(8)の態様において、前記制御部は、前記交通参加者が、車道側にはみ出してから道路の中央部を超えて移動する際に、少なくとも、前記第1位置を、前記交通参加者が道路の中央部を超える前とは反対側の道路境界における前記交通参加者よりも手前側の位置に変更し、前記第2位置を、前記交通参加者が道路の中央部を超える前とは反対側の前記交通参加者の側方点に変更するものである。
【0016】
(10):上記(1)から(9)のいずれかの態様において、前記交通参加者は、歩行者と二輪車両を含み、前記制御部は、前記二輪車両が前記交通参加者として認識された場合、前記歩行者が前記交通参加者として認識された場合に比して、前記第2位置と前記交通参加者との距離を長くするものである。
【0017】
(11):本発明の他の態様に係る運転支援方法は、移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御するコンピュータが、移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識し、前記認識の結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示するものである。
【0018】
(12):本発明の他の態様に係るプログラムは、移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御するコンピュータに、移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識させ、前記認識の結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示させるものである。
【発明の効果】
【0019】
上記(1)~(12)の態様によれば、少なくとも道路境界における交通参加者よりも手前側の第1位置と、交通参加者から見て道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、像として運転者に視認させることで、運転者に、第1ガイドオブジェクトを道路境界(例えば白線や黄線で描画された道路区画線)が延長されたものと認識させることができ、大きな注意を要求すること無く、移動体を交通参加者と逆側に移動させるように促すことができる。この結果、移動体の運転者に負荷をかけないようにしつつ、道路側方にいる交通参加者に配慮した運転をするように促すことができる。
【0020】
上記(4)の態様によれば、第1ガイドオブジェクトが、道路境界における第1位置よりも手前側の第3位置と第1位置とを結ぶ部分を含むことにより、運転者に、第1ガイドオブジェクトを道路境界が延長されたものと認識させやすくすることができる。
【0021】
上記(5)の態様によれば、第1ガイドオブジェクトが、第1位置と前記第2位置を結ぶ部分と、第2位置と前記第4位置を結ぶ部分とを曲線状に接続する接続部を含むことで、第1ガイドオブジェクトの屈曲点が頂点として視認される場合に比して、移動体の運転者に与える印象を小さくすることができ、より一層、運転者に負荷をかけないようにすることができる。
【0022】
上記(6)の態様によれば、第2位置を、運転者から見て交通参加者に重なるように視認される位置に設定することで、第1ガイドオブジェクトの道路中央部側の端部が移動体の運転者に与える印象を小さくすることができ、より一層、運転者に負荷をかけないようにすることができる。
【0023】
上記(8)の態様によれば、第1ガイドオブジェクトと第2ガイドオブジェクトの存在によって車線が狭くなったような印象を移動体の運転者に与えることができ、必要に応じて減速、停止するように促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態の運転支援装置100の構成と周辺機器を示す図である。
図2】提示装置20により像が生成された結果、運転者によって視認される車両の前方風景の一例を示す図である。
図3】想定平面上での位置設定部122の処理について説明するための図である。
図4】第1実施形態において、歩行者Wが道路を横断するのに応じた第1ガイドオブジェクトG1の変化の一例を示す図である。
図5】運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態において、歩行者Wが道路を横断するのに応じた第1ガイドオブジェクトG1および第2ガイドオブジェクトG2の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。運転支援装置は、例えば、四輪車両や二輪車両、マイクロモビリティ、ロボット等の移動体に搭載される。以下の説明では、運転支援装置が四輪車両(車両)に搭載されるものとして説明する。
【0026】
<第1実施形態>
[構成]
図1は、実施形態の運転支援装置100の構成と周辺機器を示す図である。運転支援装置100は、外界検知デバイス10から情報を取得し、提示装置20を制御する。
【0027】
外界検知デバイス10は、車両に搭載され、車両の周辺に存在する物標を検出する。物標とは、交通参加者のように移動するもの(一時停止しているものを含む)、静止している障害物、道路面に描画または付設された道路区画線、路肩や歩道の段差などの構造物を含むものである。交通参加者は、少なくとも歩行者を含み、自転車や車いすに搭乗した人を含んでもよい。また、交通参加者は、犬や猫、牛、豚、羊などの家畜を含んでもよい。以下の説明では、交通参加者は歩行者または自転車に搭乗した人であるものとする。
【0028】
外界検知デバイス10は、カメラ、レーダー装置、LIDAR(Light Detection and Ranging)、センサフュージョン処理を行う物体認識部などのうち一部または全部を含む。後述する運転支援装置100の認識部110は、この物体認識部の機能であってもよく、その場合、外界検知デバイス10の一部が特許請求の範囲における「運転支援装置」に含まれてよい。
【0029】
提示装置20は、車両の運転者から見た車両の進行方向の風景(特に路面)に重畳させて、運転者に像を視認させる。提示装置20は、例えば以下のいずれかの構成を有することで、上記機能を実現する。これらの装置の具体的構成等については、既に公知の技術であるため説明を省略する。
(1)フロントウインドシールドの下方から光を照射し、反射光を運転者の目に至らせることで、フロントウインドシールドよりも車外側にあると認識される(結像する)虚像を運転者に視認させるもの。
(2)フロントウインドシールドに埋め込まれ、特に非表示時には多くの光を透過させる光透過型の表示装置。
(3)運転者の頭部に装着されるウェアラブルグラス。
(4)レーザー光などを車外の路面に照射し、運転者に視認させるもの。
以下の説明では、提示装置20は(1)の構成を有するものとする。
【0030】
運転支援装置100は、例えば、認識部110と、制御部120とを備える。認識部110は、例えば、道路境界認識部112と、交通参加者認識部114とを備える。制御部120は、例えば、位置設定部122と、ガイドオブジェクト位置計算部124と、情報変換部126と、出力制御部128とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0031】
認識部110、並びに制御部120のうち位置設定部122およびガイドオブジェクト位置計算部124の処理は、例えば、車両の周辺の空間を上空から見た二次元平面で表した想定平面上で行われる。想定平面は、例えば、車両の代表点(例えば外界検知デバイス10が設置された箇所)を原点とし、車両の前後軸と、それに直交する水平な軸とで表される平面である。或いは、想定平面は、任意の点を原点とし、道路の延在方向と、道路幅方向とを軸として表される平面であってもよい。
【0032】
道路境界認識部112は、車両の少なくとも進行方向(前方)における道路境界を認識する。本発明における道路境界とは、歩道と車道の境界、もしくは車道と車道の境界を表すものであり、例えば、白線や黄線、ボッツドッツ、キャッツアイなどの道路区画線が存在する場合は道路区画線、道路区画線が存在しない場合は歩道と車道の間の段差、というように定義される。道路境界認識部112は、外界検知デバイス10の出力する情報に基づいて車両の前方の道路境界の位置を認識する。
【0033】
交通参加者認識部114は、外界検知デバイス10の出力する情報に基づいて車両の前方の交通参加者を認識する。交通参加者については前述した通りである。
【0034】
制御部120の各部について説明する。まず、各部の機能について簡単に説明し、詳細については後に図面を参照しながら説明する。位置設定部122は、道路境界認識部112および交通参加者認識部114の認識結果を参照し、例えば、少なくとも第1位置および第2位置を認識する。位置設定部122は、更に、第3位置および第4位置を認識してもよい。ガイドオブジェクト位置計算部124は、少なくとも第1位置および第2位置を結び、第3位置や第4位置まで拡張されてよい第1ガイドオブジェクトの位置を計算する。情報変換部126は、ガイドオブジェクト位置計算部124により計算された第1ガイドオブジェクトの位置に基づいて、提示装置20に与える制御情報を生成する(想定平面上の位置を実空間上の位置を示すための情報に変換する)。出力制御部128は、生成された制御情報を提示装置20に出力して像を生成させる。
【0035】
[提示の態様]
図2は、提示装置20により像が生成された結果、運転者によって視認される車両の前方風景の一例を示す図である。図中、WSは車両のフロントウインドシールドである。また、BNはボンネット、SL1、SL2は道路境界、Wは歩行者である。これらはフロントウインドシールドWSを介して運転者が視認する車両の前方の風景(実物)である。図では、外界検知デバイス10の一例であるカメラがフロントウインドシールドWSに取り付けられている様子を示している。図中、G1は、提示装置20が運転者に、車両の前方の風景に重畳するように視認させる虚像である第1ガイドオブジェクトである。第1ガイドオブジェクトG1は、実風景上の基準位置である第3位置P3、第1位置P1、第2位置P2、および第4位置P4を、この順で結ぶように線状の形態で生成されている。また、第1ガイドオブジェクトG1は、第2位置P2の付近において、第1位置P1と第2位置P2を結ぶ部分と、第2位置P2と第4位置P4とを結ぶ部分とを曲線状に接続する接続部CPを備える。線状とは、例えば直線状(接続部CPを除く)であるが、曲線状であってもよい。図では接続部CPを除いて直線状かつ実線状に第1ガイドオブジェクトG1が生成されているが、破線、一点鎖線などの形状で第1ガイドオブジェクトG1が生成されてもよい。
【0036】
図2に示すような第1ガイドオブジェクトG1を視認することで、運転者は道路境界が歩行者Wの付近で車道側に狭まって来ているような印象を持つ。これによって、運転者は自然と歩行者Wの反対側に車両の進路を調整して歩行者Wの側方を通過し、或いは車両を減速して停止させるように促される。この方法は、本来は車両の前方の風景に存在しない強調・警告画面を表示したり、アラームを鳴らしたりする方法と比較すると、運転者に与える刺激が小さいため、運転者に負荷をかけないようにしつつ、道路側方にいる歩行者Wに配慮した運転をするように促すことができる。
【0037】
以下、第1ガイドオブジェクトG1が生成される際の幾何的処理について説明する。図3は、想定平面上での位置設定部122の処理について説明するための図である。図中、XY軸は想定平面における直交軸を表している(意味については前述の通り)。Mは、運転支援装置100が搭載された車両である。便宜上、図2図3で位置に関して同じ符号を付しているが、これらはコンピュータ処理において異なる空間座標で表される位置である。
【0038】
図3に示すように、想定平面における第1位置P1は、歩行者Wが歩道から車道にはみ出した側の道路境界SL1(以下、二つある道路境界のうち、こちらの道路境界を選択することを前提とする)における歩行者Wよりも手前側の位置である。手前側とは、車両Mに近い側を意味し、奥側とは、車両Mから遠い側を意味する。以下同様である。第2位置P2は、歩行者Wの道路境界SL1から遠い側の側方点である。側方点とは、歩行者Wの身体の外縁のうち任意の点から道路幅方向に距離bだけオフセットさせた点である。位置設定部122は、距離bを、ゼロから数十[cm]程度の間で固定的あるいは動的に設定する。第3位置P3は、道路境界SL1における第1位置よりも手前側の位置である。第4位置P4は、道路境界SL1における歩行者Wよりも奥側の位置である。接続部CPは、第1位置P1から第2位置P2に向けて延伸する部分(直線部)と、第4位置P4から第2位置P2に向けて延伸する部分(直線部)とを曲線状に接続する。接続部CPは、例えば、円弧の形状で設定される。これによって、第1ガイドオブジェクトG1の屈曲点が頂点として視認される場合に比して、移動体の運転者に与える印象を小さくすることができ、より一層、運転者に負荷をかけないようにすることができる。
【0039】
第1ガイドオブジェクトG1のうち第1位置P1と第3位置P3とを結ぶ部分は、道路境界SL1と重なって見えることになる。これによって、運転者に、第1ガイドオブジェクトを道路境界が延長されたものと認識させやすくすることができる。
【0040】
歩行者W(の重心などの代表点)と第1位置P1との距離、および歩行者Wと第4位置P4との距離は、例えば等しく距離aに設定される。距離aは、数[m]程度(より具体的には2[m]程度)の距離である。位置設定部122は、歩行者Wの車道へのはみ出し量が大きくなるほど、距離aを大きく設定してもよい。
【0041】
また、位置設定部122は、第2位置P2を、運転者から見て歩行者Wに重なるように視認される位置に設定してよい。このため、位置設定部122は、距離bを十分に短く設定してよい。図2における運転者から見た風景においては、第2位置P2が歩行者Wの足先と重なるように見えている。これによって、第1ガイドオブジェクトG1の道路中央部側の端部が移動体の運転者に与える印象を小さくすることができ、より一層、運転者に負荷をかけないようにすることができる。
【0042】
[歩行者の移動に応じた処理]
歩行者Wが車道にはみ出し、反対側の道路境界まで至る過程で、位置設定部122およびガイドオブジェクト位置計算部124は、第2位置P2を歩行者Wのいずれかの側方点に固定し、歩行者Wが、車道側にはみ出したときに跨いだ道路境界から、道路を跨いで反対側の道路境界まで移動したときに、第1ガイドオブジェクトG1を像として運転者に視認させることを終了するように、提示装置20に指示する。
【0043】
図4は、第1実施形態において、歩行者Wが道路を横断するのに応じた第1ガイドオブジェクトG1の変化の一例を示す図である。図示するように、歩行者Wが道路を横断する際に、第2位置P2は、歩行者Wが最初にはみ出した道路境界SL1とは反対側の側方点に固定される。そして、歩行者Wが反対側の道路境界SL2に近づくにつれて第1ガイドオブジェクトG1の長さは大きくなり、その結果、運転者から見ると車道が狭窄して通過不要となっているように見えるため、自然と運転者に減速・停止を促すことができる。
【0044】
[処理フロー]
以下、運転支援装置100により実行される処理の流れを例示する。図5は、運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、車両システムがオン状態となり運転支援装置100が起動した後、繰り返し実行される。
【0045】
まず、道路境界認識部112が道路境界を認識し(ステップS100)、交通参加者認識部114が交通参加者を認識する(ステップS102)。認識部110は、交通参加者が道路境界を超えて車道にはみ出したか否かを判定する(ステップS104)。交通参加者が道路境界を超えて車道にはみ出していないと判定された場合はステップS100に処理が戻される。
【0046】
交通参加者が道路境界を超えて車道にはみ出したと判定された場合、交通参加者認識部114は、当該交通参加者をロックする(ステップS106)。ロックするとは、繰り返し認識される交通参加者が同定されている限り、処理対象としてその交通参加者を固定することをいう。
【0047】
次に、交通参加者認識部114が、交通参加者は歩行者であるか否かを判定する(ステップS108)。交通参加者が歩行者であると判定された場合、位置設定部122は、距離aを通常の長さ(第1距離)に設定する(ステップS110)。交通参加者が歩行者で無い、すなわち交通参加者が自転車に搭乗した人であると判定された場合、位置設定部122は、距離aを通常の長さよりも長い長さ(第2距離)に設定する(ステップS112)。
【0048】
次に、位置設定部122が第1~第4位置を設定すると共に、ガイドオブジェクト位置計算部124が第1ガイドオブジェクトの位置を計算し(ステップS114)、情報変換部126が第1ガイドオブジェクトの位置から提示装置20に与える制御情報を生成し、出力制御部128が制御情報を提示装置20に制御情報を出力する(ステップS116)。
【0049】
次に、交通参加者認識部114が、交通参加者がいずれかの道路境界の外側に移動したか否かを判定する(ステップS118)。交通参加者がいずれかの道路境界の外側に移動していないと判定された場合はステップS114に処理が戻され、交通参加者がいずれかの道路境界の外側に移動したと判定された場合、出力制御部128が第1ガイドオブジェクトの提示を終了するように提示装置20に指示する(ステップS120)。
【0050】
以上説明した第1実施形態によれば、移動体の運転者に負荷をかけないようにしつつ、道路側方にいる交通参加者に配慮した運転をするように促すことができる。
【0051】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の運転支援装置は、第1ガイドオブジェクトG1に加えて、道路幅方向に第1ガイドオブジェクトG1を反転させた(換言すると、道路の中央線に関して第1ガイドオブジェクトG1と線対称となる)第2ガイドオブジェクトG2を、像として運転者に視認させるように提示装置20に指示する。なお、「反転」および「線対称」は想定平面で成立する話である。
【0052】
第2実施形態の運転支援装置では、位置設定部122が、交通参加者が、車道側にはみ出してから道路の中央部を超えて移動する際に、第1位置P1を、交通参加者が道路の中央部を超える前とは(道路に関して)反対側の道路境界における交通参加者よりも手前側の位置に変更し、第2位置P2を、交通参加者が道路の中央部を超える前とは(道路に関して)反対側の交通参加者の側方点に変更する。つまり、交通参加者が道路の中央部を超えるタイミングで、第1ガイドオブジェクトG1と第2ガイドオブジェクトG2の関係を入れ替える。第3位置P3および第4位置P4に関しても同様であってよい。
【0053】
図6は、第2実施形態において、歩行者Wが道路を横断するのに応じた第1ガイドオブジェクトG1および第2ガイドオブジェクトG2の変化の一例を示す図である。図6の上図に示すように、提示装置20は第1ガイドオブジェクトG1と第2ガイドオブジェクトG2の双方を提示している。図6の中図に示すように、歩行者Wが道路の中央部に移動するのにつれて、第1ガイドオブジェクトG1と第2ガイドオブジェクトG2の双方が道路の中央部にせり出してくる。これによって、第2実施形態の運転支援装置は、車線が狭くなったような印象を移動体の運転者に与えることができ、必要に応じて車両を減速、停止させるように促すことができる。図6の下図に示すように、歩行者Wが道路の中央部を超えて反対側に移動し始めると、第1ガイドオブジェクトG1と第2ガイドオブジェクトG2の関係が入れ替わり、歩行者Wが反対側の道路境界SL2を超えたタイミングで第1ガイドオブジェクトG1と第2ガイドオブジェクトG2の提示が終了する。
【0054】
その他、第2実施形態において、第1ガイドオブジェクトG1の態様を決定する処理に関して、第1実施形態で説明した処理が適宜組み込まれてよい。
【0055】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するのに加えて、車線が狭くなったような印象を移動体の運転者に与えることができ、必要に応じて車両を減速、停止させるように促すことができる。
【0056】
<その他>
白線のかすれ等によって道路境界が認識できない場合、道路境界認識部112は、過去に認識していた道路境界の位置などに基づいて、仮想的に道路境界を設定してもよく、その場合、位置設定部122は仮想的に設定された道路境界を基準として第1位置P1、第3位置P3、および第4位置P4を設定してもよい。
【0057】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
移動体の運転者から見た前記移動体の進行方向の風景に重畳させて、前記運転者に像を視認させる提示装置を制御する運転支援装置であって、
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
移動体の少なくとも進行方向における道路境界と交通参加者とを認識し、
前記認識の結果を参照し、少なくとも前記道路境界における前記交通参加者よりも手前側の第1位置と、前記交通参加者の前記道路境界から遠い側の側方点である第2位置とを結ぶ線状の第1ガイドオブジェクトを、前記像として前記運転者に視認させるように前記提示装置に指示する、
ように構成されている、運転支援装置。
【0058】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 外界検知デバイス
20 提示装置
100 運転支援装置
110 認識部
112 道路境界認識部
114 交通参加者認識部
120 制御部
122 位置設定部
124 ガイドオブジェクト位置計算部
126 情報変換部
128 出力制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6