IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイカ株式会社の特許一覧

特許76462305つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド
<>
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図1
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図2
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図3
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図4
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図5
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図6
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図7
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図8
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図9
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図10
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図11
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図12
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図13
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図14
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図15
  • 特許-5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】5つの芳香環を有するジアミノ又はジニトロベンゼン化合物、およびその製造方法、並びにポリイミド
(51)【国際特許分類】
   C07C 205/38 20060101AFI20250310BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20250310BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20250310BHJP
   C07C 217/90 20060101ALI20250310BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
C07C205/38
C07C201/12 CSP
C07C213/02
C07C217/90
C08G73/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023095707
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2019065257の分割
【原出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2023126781
(43)【公開日】2023-09-12
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515087514
【氏名又は名称】セイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】寺本 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 元則
(72)【発明者】
【氏名】西山 和秀
(72)【発明者】
【氏名】井本 充隆
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-106097(JP,A)
【文献】特開平06-179816(JP,A)
【文献】特開平04-178358(JP,A)
【文献】特開平05-310649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される化合物
【化1】
(上記式中、R、R、R17、及びR19は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、且つ、R及びRのうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、及び、R17及びR19のうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、R21、R22、R23、及びR24は互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基である)。
【請求項2】
上記式において、R21 22、R23及びR24がメチル基である、請求項記載の化合物。
【請求項3】
下記式で表される化合物の製造方法であって、
【化2】
(上記式中、R 、R 、R 17 、及びR 19 は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、且つ、R 及びR のうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、及び、R 17 及びR 19 のうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、R 21 、R 22 、R 23 、及びR 24 は互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基である)
下記式(1-b)、式(1-c)又は式(1-d)で表される化合物のニトロ基を還元して上記化合物を得る工程を含む、前記製造方法
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R、R、R17、及びR19は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、且つ、R及びRのうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、及び、R17及びR19のうち少なくとも一つは炭素原子数1~6の置換されていないアルキル基であり、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R18及びR20は水素原子であり、Xが-CR2122-及び-CR2324-で表され、R21、R22、R23、及びR24は互いに独立に、炭素数1~3のアルキル基である)。
【請求項4】
下記式(2-a)で表される化合物及び下記式(2-b)で表される化合物の1以上と
【化6】
【化7】
(式中、R、R、R、R、R17、R18、R19及びR20は上記の通りであり、Yはハロゲン原子である)、
下記式(3-a)で表される化合物の1以上とを
【化8】
(式中、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びXは、上記の通りであり、Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である)
反応させて上記式(1-b)で表される化合物を得る工程をさらに含む、請求項記載の製造方法。
【請求項5】
下記式(4-a)で表される化合物及び下記式(4-b)で表される化合物の1以上と
【化9】
【化10】
(式中、R、R、R、R、R17、R18、R19及びR20は上記の通りであり、Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である)、
下記式(3-b)で表される化合物の1以上とを
【化11】
(式中、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びXは、上記の通りであり、Yはハロゲン原子である)
反応させて上記式(1-b)で表される化合物を得る工程をさらに含む、請求項記載の製造方法。
【請求項6】
A及びBが共にアミノ基である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項7】
請求項記載の化合物と酸無水物との反応物である、ポリイミド化合物。
【請求項8】
前記酸無水物が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1である、請求項記載のポリイミド化合物。
【請求項9】
数平均分子量2,000~200,000を有する、請求項または記載のポリイミド化合物。
【請求項10】
請求項記載の化合物と、酸無水物と、請求項記載の化合物以外の任意のジアミン化合物との反応物であるポリイミド化合物であって、請求項記載の化合物に由来する単位と前記請求項記載の化合物以外のジアミン化合物に由来する単位の合計モルに対する請求項記載の化合物に由来する単位の割合が、10モル%~100モル%である、請求項のいずれか1項記載のポリイミド化合物。
【請求項11】
請求項のいずれか1項記載のポリイミド化合物からなる成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドをはじめとした高機能性高分子および種々の有機化合物のための原料として有用な、5つの芳香環を有するジアミノベンゼン及びその誘導体、及びその製造方法に関する。さらに本発明は、該ジアミン化合物の前駆体である(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)化合物、ビス(ニトロフェノキシ)化合物、及びこれらの誘導体、並びにこれら化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信分野において使用されるプリント配線基板等では高速・大容量通信が求められており、そのため従来よりも高周波数帯使用が期待されている。しかし、高周波数化することで伝送損失が増大するという問題がある。伝送損失は抵抗損失と誘電損失の寄与に分けられる。そのうち、抵抗損失は周波数に比例して熱に変わる特徴があり、誘電損失は周波数、誘電正接、比誘電率に比例する特徴がある。
【0003】
高周波数帯での使用に耐えうる材料には、耐熱性に加え、優れた電気特性、特に低誘電率、低誘電正接であることが求められている。優れた高耐熱性材料として,例えばポリイミド樹脂(PI)やポリアミド樹脂が知られている(非特許文献1、2)。しかし、これらの樹脂は分子内に極性の高いイミド基、あるいはアミド基構造を有しており、これらの寄与のため、多くのPIの誘電率(k)は3.0を越えるのが通常である。また、優れた電気特性を有する材料として、例えばポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)が知られている(特許文献1,非特許文献1,2)。しかし、熱可塑性であり、溶融時の流動性が悪い、溶剤溶解性が乏しいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-82793号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pathrick R.A.et,al「Journal of Applied Polymer Science」、vol.132、p.41684-41692、2015年.
【文献】Akhter Z.et,al「Polymer Bulletin」vol.74、p.3889-3906、2017年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
優れた高耐熱性と電気特性を有する材料として、PIの低誘電率化が提案されている。PIはそのモノマーであるジアミンの設計の多様性から、低誘電率化の分子設計には魅力的な材料である。PIの低誘電率化の基本的な考えは、高誘電率に寄与するイミド基濃度をどのように希釈(低減)していくかにある。PI中のイミド基濃度を下げるには,芳香族ジアミンとして代表的なオキシジアニリンのような二核体に代え、三核以上の芳香環を有するジアミンを採用するのが有効である。しかし、イミド基濃度を下げる分、PIの耐熱性を損なうことになる。イミド基濃度を下げ、なおかつ耐熱性を損なわないようにするには、芳香環に嵩高い炭化水素を導入し、芳香族アミン部位のエーテル結合や、イミド環と芳香環との単結合の自由回転を規制し、ポリイミド主鎖の一次運動を阻害するのが有効である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、ポリイミド樹脂などの樹脂原料、また、電子材料やこれらの中間体や原料として有用な、五核体構造を有する、芳香族ジアミン化合物及びその誘導体、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような芳香族ジアミンの問題点を鋭意検討した結果、アミノフェノキシ又はニトロフェノキシを有し五核体である、ビス(アミノ又はニトロフェノキシ)化合物であって、5つの芳香環の内、いずれか1つの芳香環が少なくとも1のアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を有する新規の化合物を製造し、本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1)で表される化合物、及びその製造方法を提供する。
【化1】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17,R18、R19及びR20は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、且つ、そのうち少なくとも一つが前記アルキル基又はアルコキシ基であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基であり、Xは、互いに独立に、酸素原子、単結合、又は、炭素数1~13の、置換されていてもよい二価炭化水素基である)
但し、下記式(a)~(d)で表される化合物を除く。
【化2】
【発明の効果】
【0010】
本発明のビス(アミノ又はニトロフェノキシ)化合物は、5核体を成す5つの芳香環の内、いずれか1つの芳香環が少なくとも1つの置換基を有することから、誘電率、及び誘電正接が低いポリイミド樹脂を提供し、ポリイミド原料として好適に使用できる。また、本発明のビス(ニトロフェノキシ)ベンゼン化合物は、ニトロ基を還元することにより前記ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物を容易に提供することができ、ポリイミド原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は実施例1で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図2図2は実施例1で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図3図3は実施例2で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図4図4は実施例2で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図5図5は実施例3で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図6図6は実施例3で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図7図7は実施例4で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図8図8は実施例4で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図9図9は実施例5で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図10図10は実施例5で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図11図11は実施例6で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図12図12は実施例6で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図13図13は実施例7で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図14図14は実施例7で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
図15図15は実施例8で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートである。
図16図16は実施例8で製造した化合物の13C-NMRスペクトルのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のビス(アミノ又はニトロフェノキシ)化合物は、下記式(1)で表される。以下、詳細に説明する。
【化3】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる基であり、且つ、そのうち少なくとも一つが、互いに独立に、前記アルキル基又はアルコキシ基であり、A及びBは、互いに独立に、ニトロ基又はアミノ基であり、Xは、互いに独立に、酸素原子、単結合、又は、炭素数1~13の、置換されていてもよい二価炭化水素基である)。
【0013】
上記式(1)において、A及びBは互いに独立にアミノ基又はニトロ基である。A及びBが共にアミノ基であるジアミン化合物(下記(1-a))は、後述する方法により、上記式(1)で表されA及びBの少なくとも1がニトロ基である化合物(下記(1-b)又は(1-c)又は(1-d))のニトロ基を還元することにより、容易に得ることができる。
【化4】
【0014】
上記式(1)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1~6の、置換されていてもよいアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基である。R~R20のうち少なくとも一つは前記置換基(即ち、アルキル基又はアルコキシ基)であり、結合箇所は特に制限されるものでない。Xは、酸素原子、単結合、又は、炭素数1~6の、置換されていてもよい二価炭化水素基である。
【0015】
上記Xにおいて、炭素数1~13の置換されていてよい二価炭化水素基は、飽和又は不飽和結合を有してよい、置換または非置換の、二価の脂肪族炭化水素基であるのがよい。二価の脂肪族炭化水素基は、好ましくはアルキリデン基及びアルキレン基が挙げられ、より好ましくはアルキリデン基であり、これらの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1が、本発明の効果を妨げない範囲において、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等に置換されていてよい。より好ましくは、Xは、-CR2122-及び-CR2324-で表される二価炭化水素基であり、R21、R22、R23、及びR24は、互いに独立に、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基である。炭素原子数1~6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、及びイソブチル基等である。R21、R22、R23、及びR24は、より好ましくは、炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0016】
本発明の化合物は、好ましくは、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20の少なくとも一つが、互いに独立に、置換されていてよい炭素原子数1~6のアルキル基、及び炭素原子数1~3のアルコキシ基から選ばれる置換基であるのがよい。
【0017】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20の少なくとも一つとは、各々異なる置換基であってよいし、2以上が同じ置換基であってもよい。
【0018】
上記置換されていてよい炭素原子数1~6のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、及びイソブチル基等、又は、これらの炭素原子に結合する水素原子の少なくとも1が、本発明の効果を妨げない範囲において、ハロゲン原子、アルコキシ基等に置換されている基である。好ましくは、置換されていない炭素原子数1~6のアルキル基である。炭素原子数1~3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、及びプロポキシ基が挙げられる。より好ましくは、置換されていない、炭素原子数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素原子数1~4のアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0019】
上記式(1)で表される化合物は、好ましくは、下記式(e)、(f)又は(g)で表される。
【化5】
【化6】
【化7】
上記各式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17,R18、R19、R20、A及びBは上記の通りである。R21、R22、R23、及びR24は互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0020】
より好ましくは、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【化9】
【化10】
上記各式中、A及びBは上記の通りであり、R、R、R、R、R、R11、R13、R15、R17、及びR19は上記の通りであり、好ましくは水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、但し、そのうち少なくとも1つはアルキル基である。R21、R22、R23、及びR24は、上記の通りであり、特に好ましくはメチル基である。
【0021】
本発明の上記式(1)で表される化合物、特には上記式(f)で表される化合物は、下記式(a)~(d)で表される化合物のいずれとも同一であってはならない。
【化11】
【0022】
本発明の上記式(1)で表される化合物としてさらに好ましくは、下記式で表される化合物である。
【化12】
上記各式中、A、B、R、R、R17、R19、R21、R22、R23、及びR24は上記の通りであり、但し、R及びRのうち少なくとも一つはアルキル基であり、及び、R17及びR19のうち少なくとも一つはアルキル基である。アルキル基は、好ましくはメチル基である。特に好ましくは、R及びRのいずれかがアルキル基、好ましくはメチル基であり、且つ、R17及びR19のいずれかがアルキル基、好ましくはメチル基である。
【0023】
上記式(f’)で表される化合物として、特に好ましくは、下記式で表される化合物である。
【化13】
(上記各式中、A、B、R、R、R17、R19、R21、R22、R23、及びR24は上記の通りであり、R及びRのいずれかがアルキル基、好ましくはメチル基であり、且つ、R17及びR19のいずれかがアルキル基、好ましくはメチル基である)
【化14】
(上記各式中、A、B、R21、R22、R23、及びR24は上記の通りであり、R、R、R17、R19は、炭素原子数1~6のアルキル基、好ましくはメチル基である)
【0024】
上記式(1)で表され、A及びBが共にアミノ基であるジアミン化合物としてより好ましくは、例えば、1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン、1,3-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン等が挙げられる。上記式(1)で表され、A及びBが共にニトロ基であるジニトロ化合物としては、例えば、1,4-ビス{2-[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成、1,3-ビス{2-[4-(3-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン、1,4-ビス{2-[4-(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン、1,4-ビス[4-(2-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0025】
[製造方法]
(1)下記式(1-a)で表されるジアミン化合物の製造方法
【化15】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17,R18、R19、R20及びXは、上記の通りである)
該ジアミン化合物の製造方法は何ら制限されるものではなく、いかなる方法で製造してもよい。例えば、下記一般式(1-b)又は(1-c)又は(1-d)で表される化合物のニトロ基を還元することにより得ることが出来る。
【化16】
【化17】
【化18】
(上記式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17,R18、R19、R20及びXは、上記の通りである)
【0026】
上記ニトロ基の還元反応は、特に限定されるものではなく、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法を用いることが出来る。例えば、芳香族ジニトロ化合物の還元方法としては、接触還元、ベシャン還元、亜鉛末還元、塩化スズ還元、及びヒドラジン還元等が挙げられる。
【0027】
還元反応に用いられる溶剤は例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-メトキシエタノール、及び2-エトキシエタノールなどのアルコール系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド系溶剤、及び、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤が挙げられるが、芳香族ジニトロ化合物が溶解する溶媒であれば、これらに限定されることはない。溶剤の量は適宜調整されればよい。
【0028】
還元反応に使用される触媒は上記各還元反応の触媒として公知の触媒を使用すればよい。例えば、接触還元またはヒドラジン還元に用いられる触媒としては、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、アルミナなどに担持させたパラジウム、白金、ロジウムなどの貴金属触媒、ラネーニッケル触媒、及びスポンジニッケル触媒が挙げられる。触媒の量は特に制限されるものでないが、通常0.1~10wt%である。
【0029】
還元反応の反応温度及び時間は適宜選択されればよい。例えば、50~150℃の範囲にある温度、好ましくは60~130℃の範囲にある温度で、1~35時間、好ましくは3~10時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、触媒を除去し、冷却した後、生成した固体を濾過、水洗、乾燥することにより、上記一般式(1-a)で示される化合物を得ることができる。また、更に必要に応じて、再度、晶析濾過、カラム分離等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることが出来る。
【0030】
(2)上記一般式(1-b)又は(1-c)又は(1-d)で表される(ジ)ニトロ化合物の製造方法
上記一般式(1-b)又は(1-c)又は(1-d)で表される(ジ)ニトロ化合物の製造方法は、何ら制限されるものではなく、いかなる方法で製造してもよい。好ましくは、下記一般式(2-a)で示される化合物の一以上と下記一般式(2-b)で示される化合物の一以上と下記一般式(3-a)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表されるジニトロ化合物が得られる。下記一般式(2-a)で示される化合物と下記一般式(2-b)で示される化合物とは、同一であっても、異なっていてもよい。また、下記一般式(2-a)で示される化合物と下記一般式(2-b)で示される化合物のいずれか一方を、ニトロ基でなくアミノ基を有する化合物に替えて反応させることにより、式(1-c)及び(1-d)で表されるアミノ基及びニトロ基を有する化合物を得ることができる。
【化19】
式中、R、R、R及びRは上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、例えば塩素原子又はフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【化20】
式中、R17、R18、R19及びR20は上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、例えば塩素原子又はフッ素原子であり、好ましくはフッ素原子である。
【化21】
式中、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びXは、上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【0031】
一般式(2-a)と(2-b)で示される化合物の合計と一般式(3-a)で示される化合物の原料モル比は、通常、一般式(3-a)で示される化合物1モルに対して一般式(2-a)と(2-b)で示される化合物の合計を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(3-a)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0032】
製造方法の別の態様としては、下記一般式(4-a)で示される化合物の一以上と下記一般式(4-b)で示される化合物の一以上と下記一般式(3-b)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表されるジニトロ化合物が得られる。下記一般式(4-a)で示される化合物と下記一般式(4-b)で示される化合物とは、同一であっても、異なっていてもよい。上記と同様に、本製造方法においても、下記一般式(4-a)で示される化合物と下記一般式(4-b)で示される化合物のいずれか一方を、ニトロ基でなくアミノ基を有する化合物に替えて反応させることにより、式(1-c)及び(1-d)で表されるアミノ基及びニトロ基を有する化合物を得ることができる。
【化22】
式中、R、R、R及びRは上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【化23】
(式中、R17、R18、R19及びR20は上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【化24】
(式中、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びXは、上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、好ましくは臭素である。
【0033】
一般式(4-a)と(4-b)で示される化合物の合計と一般式(3-b)で示される化合物の原料モル比としては、通常、一般式(3-b)で示される化合物1モルに対して一般式(4-a)と(4-b)で示される化合物の合計を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(3-b)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0034】
製造方法の別の態様としては、下記一般式(5-a)で示される化合物の一以上と下記一般式(5-b)で示される化合物の一以上と下記一般式(6-a)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表され、Xが酸素原子であるジニトロ化合物(h)が得られる。下記一般式(5-a)で示される化合物と下記一般式(5-b)で示される化合物とは、同一であっても、異なっていてもよい。上記と同様に、本製造方法においても、下記一般式(5-a)で示される化合物と下記一般式(5-b)で示される化合物のいずれか一方を、ニトロ基でなくアミノ基を有する化合物に替えて反応させることにより、式(1-c)及び(1-d)で表されるアミノ基及びニトロ基を有する化合物を得ることができる。
【化25】
式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、好ましくは臭素である。
【化26】
(式中、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、好ましくは臭素である。
【化27】
(式中、R、R10、R11、及びR12は、上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである)
【0035】
一般式(5-a)と(5-b)で示される化合物の合計と一般式(6-a)で示される化合物の原料モル比としては、通常、一般式(6-a)で示される化合物1モルに対して一般式(5-a)と(5-b)で示される化合物の合計を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(6-a)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0036】
製造方法の別の態様としては、下記一般式(7-a)で示される化合物の一以上と下記一般式(7-b)で示される化合物の一以上と下記一般式(8-a)で示される化合物の一以上とを、有機溶媒中、好ましくは塩基の存在下にて、加温下で脱水縮合反応させることにより、上記一般式(1-b)で表され、Xが酸素原子であるジニトロ化合物(h)が得られる。下記一般式(7-a)で示される化合物と下記一般式(7-b)で示される化合物とは、同一であっても、異なっていてもよい。上記と同様に、本製造方法においても、下記一般式(7-a)で示される化合物と下記一般式(7-b)で示される化合物のいずれか一方を、ニトロ基でなくアミノ基を有する化合物に替えて反応させることにより、式(1-c)及び(1-d)で表されるアミノ基及びニトロ基を有する化合物を得ることができる。
【化28】
式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【化29】
(式中、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19及びR20は上記の通りである。Zは水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、例えばナトリウム又はカリウムであり、好ましくはカリウムである。
【化30】
(式中、R、R10、R11及びR12は、上記の通りである。Yはハロゲン原子であり、好ましくは臭素である。
【0037】
一般式(7-a)と(7-b)で示される化合物の合計と一般式(8-a)で示される化合物の原料モル比としては、通常、一般式(8-a)で示される化合物1モルに対して一般式(7-a)と(7-b)で示される化合物の合計を2~5モルの範囲、好ましくは2~3モルの範囲である。反応溶媒は用いるほうが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミドやN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒が挙げられる。溶媒の使用量は通常、一般式(8-a)で示される化合物1重量部に対して1~20重量部の範囲であるが、適宜調整されればよい。反応温度、反応時間は適宜調整されればよい。例えば、100~200℃の範囲にある温度、好ましくは130~160℃の範囲にある温度で0.5~12時間、好ましくは2~7時間反応させればよい。反応生成物の処理方法は特に制限されるものではない。例えば、反応終了後、反応液を冷却するか、もしくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、水洗、乾燥して目的物を得ることが出来る。
【0038】
例えば、上記一般式(2-a)と(2-b)で示される化合物として5-フルオロ―2-ニトロトルエンと、一般式(3-a)で示される化合物としてビスフェノールPとを反応させる場合、下記反応式で表される。
【化31】
【0039】
上記式(1-a)で表されるビス(アミノフェノキシ)化合物はポリイミドの原料として有用である。また、上記式(1-b)で表されるビス(ニトロフェノキシ)化合物及び式(1-c)と(1-d)で表される(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)化合物は、上述した通りビス(アミノフェノキシ)ベンゼン化合物の前駆体として有用である。上記式(1-a)で表されるビス(アミノフェノキシ)化合物は、例えば、酸無水物と反応させることにより、ポリイミド化合物を提供する。
【0040】
酸無水物はポリイミドの原料として用いられている従来公知のものであればよい。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物およびオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物からなる群から選択される少なくとも1以上である。
【0041】
上記ジアミン化合物と酸無水物の反応条件や反応比率は特に制限されるものでなく、従来公知の方法に従い、適宜選択されればよい。例えば、反応条件は25~30℃の範囲にある温度で0.5~24時間反応させればよい。反応比率は1.00とすればよい。得られるポリイミド化合物は、好ましくは数平均分子量2,000~200,000、好ましくは10,000~50,000を有するのがよい。該数平均分子量は例えばGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、THF)により、測定される値である。
【0042】
上記ポリイミド化合物としては、本発明のジアミン化合物以外の任意のジアミン化合物をさらに反応させてもよい。全ジアミン化合物に由来する単位の合計モルに対する本発明のジアミン化合物に由来する単位の割合は10モル%~100モル%であるのが好ましい。本発明のジアミン化合物以外の任意のジアミン化合物としては、例えば、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,2-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレンからなる群から選択される1以上である。
【0043】
本発明のポリイミド化合物からなる成形物としては、例えば高速・大容量通信用材料が挙げられる。
【実施例
【0044】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものでない。
下記実施例において用いた測定方法及び装置は以下の通りである。
HPLC測定にはSHIMADZU製SPD-10Aを使用し、融点測定にはYAMATO製MP-21を使用した。
H核磁気共鳴スペクトル分析には、JEOL製JNM-ECA600型を用い、共鳴周波数600MHzで測定した。測定溶媒は重クロロホルムを用いた。
13C核磁気共鳴スペクトル分析には、JEOL製JNM-ECA600型を用い、共鳴周波数150MHzで測定した。測定溶媒は重クロロホルムを用いた。
質量分析には、エーエムアールのDART/SVPを装着したSHIMADZU製のLCMS-2020を使用した。
【0045】
[実施例1]
1,4-ビス{2-[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化32】
100mL三口フラスコにビスフェノールP3.0g(8.7mmol)と5-フルオロ―2-ニトロトルエン2.7g(17.5mmol)と炭酸カリウム1.6g(11.3mmol)とDMF20mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度120℃を保ちながら6時間反応を行った。反応終了後、蒸留水100mLを加え、析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して1,4-ビス{2-[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの粗生成物を得た。これをメチルセロソルブに溶解させ加熱し、活性炭を加え脱色し、濾過、加水晶析を行った。析出した固体を濾過し、洗浄および乾燥して精製された1,4-ビス{2-[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン4.8gを得た。HPLCで測定した純度は99.4%であり、mp.は178-180℃であった。
該実施例1で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図1に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図2に示す。DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=617(M+H),634(M+NH
【0046】
[実施例2]
1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化33】
300mLオートクレーブに、実施例1で得た1,4-ビス{2-[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン3.5gと2-メトキシエタノール50g、5%Pd/C 0.04gを仕込み、0.8MPaで90℃を保ちながら接触水素化還元を行った。反応終了後、触媒を除去した後に濃縮、冷却した。析出した固体を濾過、洗浄及び乾燥して1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの粗生成物を得た。これを酢酸エチルに溶解させた後、塩酸を加えて酸析させ、析出した固体を濾別した。この固体を酢酸エチルに加え、さらにアルカリ水溶液を加え、水層を除去した。得られた油層に活性体を加え脱色し、濾過し、濾液を濃縮し、減圧乾燥して精製された1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン1.8gを得た。HPLCで測定した純度は98.6%であり、mp.は164~167℃であった。
該実施例2で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図3に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図4に示す。
DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=557(M+H)
【0047】
比較例3]
1,3-ビス{2-[4-(3-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化34】
200mL三つ口フラスコにビスフェノールM3.6g(10.5mmol)と5-フルオロ―2-ニトロトルエン3.3g(21.5mmol)と炭酸カリウム2.0g(14.1mmol)とDMF25mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度120℃を保ちながら9時間反応を行った。反応終了後、蒸留水200mLを加え、析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して1,3-ビス{2-[4-(3-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン6.0gを得た。HPLCで測定した純度は96.2%であった。
比較例3で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図5に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図6に示す。DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=617(M+H),634(M+NH
【0048】
比較例4]
1,3-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化35】
300mLオートクレーブに、実施例3で得た2,2-ビス[4-(3-メチル-4-ニトロフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン5.2gと2-メトキシエタノール60g、5%Pd/C 0.05gを仕込み、0.8MPaで90℃を保ちながら接触水素化還元を行った。反応終了後、触媒を除去した後に加水、冷却、濃縮、乾燥して1,3-ビス{2-[4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン4.0gを得た。HPLCで測定した純度は96.5%であった。
比較例4で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図7に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図8に示す。
DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=557(M+H)
【0049】
[実施例5]
1,4-ビス{2-[4-(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化36】
100mL三つ口フラスコにビスフェノールP3.6g(10.3mmol)と2-フルオロ―5-ニトロトルエン3.2g(20.1mmol)と炭酸カリウム1.9g(13.0mmol)とDMF20mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度120℃を保ちながら6時間反応を行った。反応終了後、蒸留水100mLを加え冷却し、析出した固体を濾過し、洗浄及び乾燥して1,4-ビス{2-[4-(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン6.0gを得た。HPLCで測定した純度は94.7%であり、mp.は189-190℃であった。
該実施例5で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図9に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図10に示す。DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=617(M+H),634(M+NH
【0050】
[実施例6]
1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼンの合成
【化37】
300mLオートクレーブに、実施例5で得た1,4-ビス{2-[4-(2-メチル-4-ニトロフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン4.0gと2-メトキシエタノール60g、5%Pd/C 0.04gを仕込み、0.8MPaで90℃を保ちながら接触水素化還元を行った。反応終了後、触媒を除去した後に濃縮、冷却、減圧乾燥して1,4-ビス{2-[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェニル]-2-プロピル}ベンゼン3.5gを得た。HPLCで測定した純度は98.8%であった。
該実施例6で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図11に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図12に示す。
DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=557(M+H)
【0051】
参考例7]
1,4-ビス[4-(2-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンの合成
【化38】
100mL三口フラスコに1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン0.8g(3.0mmol)と2-フルオロ―5-ニトロトルエン0.9g(6.0mmol)と炭酸カリウム0.6g(3.9mmol)とDMF10mLと撹拌用マグネットを仕込んだ後加熱し、反応温度120℃を保ちながら5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、蒸留水100mLを加えた。析出した固体を濾過し、洗浄及び減圧乾燥して1,4-ビス[4-(2-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン1.6gを得た。HPLCで測定した純度は99.1%であり、mp.は177-178℃であった。
参考例7で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図13に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図14に示す。DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=565(M+H)
【0052】
参考例8]
1,4-ビス[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンの合成
【化39】
300mLオートクレーブに、実施例7で得た1,4-ビス[4-(2-メチル―4-ニトロフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン1.5gと2-メトキシエタノール50g、5%Pd/C 0.02gを仕込み、0.8MPaで90℃を保ちながら接触水素化還元を行った。反応終了後、触媒を除去した後に濃縮、減圧乾燥して1,4-ビス[4-(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン1.3gを得た。HPLCで測定した純度は99.0%でありmp.は155~156℃であった。
参考例8で製造した化合物のH-NMRスペクトルのチャートを図15に示し、13C-NMRスペクトルのチャートを図16に示す。
DART-MSの結果は以下の通り。
DART-MS:m/z=505(M+H)
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のビス(アミノフェノキシ)化合物は、新規なジアミン化合物として好適に使用することができ、該化合物から誘導されるポリイミド分野の可能性を大きく広げ、優れた高耐熱性と電気特性を有する材料としての可能性が期待できる。また、ビス(ニトロフェノキシ)化合物及び(アミノフェノキシ)(ニトロフェノキシ)化合物は、上記ビス(アミノフェノキシ)化合物の前駆体となり、ジアミン化合物と同様にポリイミド分野の可能性を大きく広げることが期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16