(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 41/10 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
F16K41/10
(21)【出願番号】P 2022552058
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034990
(87)【国際公開番号】W WO2022065410
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020162683
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 大千
(72)【発明者】
【氏名】橋口 明広
(72)【発明者】
【氏名】福留 康平
(72)【発明者】
【氏名】白藤 啓吾
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-304152(JP,A)
【文献】国際公開第2009/025298(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131482(WO,A1)
【文献】特開2013-024135(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 41/00-41/18
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次圧空間と2次圧空間とを有するバルブハウジングと、
前記1次圧空間と前記2次圧空間との間に配設される弁座と、
駆動源により軸方向に駆動され前記弁座に着座または離間する弁体と、
前記1次圧空間及び前記2次圧空間のうち一方の空間に隣接する背面空間と、前記1次圧空間及び前記2次圧空間のうち他方の空間とを連通する連通手段と、を備えた弁であって、
前記バルブハウジングと前記弁体の間には、軸方向に伸縮可能な区画部材が配置されており、前記区画部材により前記一方の空間と前記背面空間とが密封状に区画されて
おり、
前記弁体は、前記弁座に着座する弁要素と、前記駆動源により駆動されるロッド要素とが別体で構成されており、
前記区画部材は、前記ロッド要素の端面に固定される固定板部と、前記固定板部に他端が密封状に固定された蛇腹状の胴部と、を有し、
前記弁要素と前記固定板部とは別体で構成されている弁。
【請求項2】
前記弁体
を閉弁方向に付勢する第1付勢手段と、前記弁体を開弁方向に付勢する第2付勢手段と、が対向して配置されている請求項1に記載の弁。
【請求項3】
前記第1付勢手段はコイルスプリングであり、前記弁体には前記コイルスプリングに軸方向から嵌合する嵌合部が設けられている請求項2に記載の弁。
【請求項4】
前記区画部材は、前記バルブハウジングに固定されるリング部と、前記リング部に一端が密封状に固定された蛇腹状の胴部と、を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の弁。
【請求項5】
前記リング部の外周面が前記バルブハウジングの内周面に固定されている請求項4に記載の弁。
【請求項6】
前記リング部は、内周面が前記弁体の傾斜規制部となっている請求項4または5に記載の弁。
【請求項7】
前記胴部は、前記リング部から前記一方の空間に延びている請求項4ないし6のいずれかに記載の弁。
【請求項8】
前記弁体および前記固定板部の一方は、他方を軸心方向へと案内する案内凹部を有している請求項
1ないし7のいずれかに記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体を制御する弁に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野で作動流体の制御を行うために利用されている弁は、弁座と、弁座に対して離接可能な弁体を備え、弁開度が調節されることで作動流体の圧力や流量が制御可能となっている。
【0003】
このような弁には、弁座である開口に対して平行に弁体であるスプールが移動するスプール弁、弁体が回動軸を有するバタフライ弁、さらには弁体が弁座である開口に対して直交するように移動するリフト弁が代表的な弁形態として挙げられる。これらの弁の中でも流量や圧力制御に最も適した弁がリフト弁である。
【0004】
リフト弁として、例えば、自動車等の空調システムに用いられる容量可変型圧縮機の容量制御弁が挙げられる。容量可変型圧縮機は、エンジンにより回転駆動される回転軸、回転軸に対して傾斜角度を可変に連結された斜板、斜板に連結された圧縮用のピストン等を備え、斜板の傾斜角度を変化させることにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御するものである。この斜板の傾斜角度は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで連続的に変化させ得るようになっている。
【0005】
特許文献1の容量制御弁は、バルブハウジングと、弁座と、弁体と、を備えている。バルブハウジングは、制御圧力Pcの制御流体が通過する1次圧空間と吸入圧力Psの制御流体が通過する2次圧空間とが形成されている。弁座は、1次圧空間と2次圧空間との間に設けられている。弁体は、弁当接部分が1次圧空間にロッド部分がソレノイド側の背面空間に設けられ弁座に接離可能になっている。この特許文献1の容量制御弁は、ソレノイドで発生する電磁力により弁体を移動させることで、制御室の制御圧力Pcの調整を行っている。
【0006】
また、バルブハウジングには2次圧空間と背面空間とを連通する連通路が形成されている。これによれば、連通路により2次圧空間と背面空間とを同圧とすることができ、弁体の軸方向両側で圧力差が生じないようになっている。そのため、ソレノイドへの印加電流に応じた精密なロッドの制御を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2020/110925号(第10頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の容量制御弁にあっては、バルブハウジングにおける1次圧空間と背面空間との間に設けられたガイド孔に弁体のロッド部分が挿入されており、ロッド部分はガイド孔にガイドされて安定的に摺動するようになっている。しかしながら、ロッド部分の外周面とガイド孔の内周面との間は微小な隙間となっているので、ロッド部分の外周面とガイド孔との間から1次圧空間の制御圧力Pcが背面空間に僅かに漏れ出し、1次圧空間の制御圧力Pcを高い精度で制御することができない虞があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体を高い精度で制御できる弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明の弁は、
1次圧空間と2次圧空間とを有するバルブハウジングと、
前記1次圧空間と前記2次圧空間との間に配設される弁座と、
駆動源により軸方向に駆動され前記弁座に着座または離間する弁体と、
前記1次圧空間及び前記2次圧空間のうち一方の空間に隣接する背面空間と、前記1次圧空間及び前記2次圧空間のうち他方の空間とを連通する連通手段と、を備えた弁であって、
前記バルブハウジングと前記弁体の間には、軸方向に伸縮可能な区画部材が配置されており、前記区画部材により前記一方の空間と前記背面空間とが密封状に区画されている。
これによれば、一方の空間と背面空間とは区画部材により密封状に区画されており、バルブハウジングと弁体との隙間を通って一方の空間から背面空間、または背面空間から一方の空間に作動流体が漏れ出すことがない。そのため、1次圧空間または2次圧空間の作動流体の制御を高い精度で行うことができる。また、区画部材は軸方向に伸縮可能であるため、弁体の駆動を阻害しない。
【0011】
前記弁体を前記閉弁方向に付勢する第1付勢手段と、前記弁体を開弁方向に付勢する第2付勢手段と、が対向して配置されていてもよい。
これによれば、区画部材により一方の空間と背面空間との間を密封されていることに加え、弁体が第1付勢手段及び第2付勢手段により軸方向に挟まれた状態で支持されるため、弁体の軸ブレが抑えられ、弁体とバルブハウジングとを摺動しない状態とすることができ、摩擦力による弁体の駆動に影響を与えることを防止できる。さらに、バルブハウジングと弁体との隙間にコンタミが噛み込むことを防止できる。
【0012】
前記第1付勢手段はコイルスプリングであり、前記弁体には前記コイルスプリングに軸方向から嵌合する嵌合部が設けられていてもよい。
これによれば、コイルスプリングと嵌合部との嵌合により弁体の軸ブレが抑えられる。
【0013】
前記区画部材は、前記バルブハウジングに固定されるリング部と、前記リング部に一端が密封状に固定された蛇腹状の胴部と、を有していてもよい。
これによれば、蛇腹状の胴部が軸方向に伸縮するので、弁体の軸ブレが抑えられる。
【0014】
前記リング部の外周面が前記バルブハウジングの内周面に固定されていてもよい。
これによれば、バルブハウジングに対してリング部を簡便に取付けることができる。さらに、リング部が径方向に移動することがなく、胴部の軸ブレを確実に抑制できる。
【0015】
前記リング部は、内周面が前記弁体の傾斜規制部となっていてもよい。
これによれば、弁体の外周面に近接配置されたリング部の内周面が傾斜規制部として機能し弁体の傾斜を規制できる。そのため、弁体の軸ブレを防止して安定して動作させることができる。
【0016】
前記胴部は、前記リング部から前記一方の空間に延びていてもよい。
これによれば、背面空間をコンパクトにできる。
【0017】
前記弁体は、前記弁座に着座する弁要素と、前記駆動源により駆動されるロッド要素とが別体で構成されていてもよい。
これによれば、弁要素とロッド要素が別体であるため、弁を組み立てやすい。
【0018】
前記区画部材は、前記ロッド要素の端面に固定される固定板部と、前記固定板部に他端が密封状に固定された蛇腹状の胴部と、を有し、
前記弁体および前記固定板部の一方は、他方を軸心方向へと案内する案内凹部を有していてもよい。
これによれば、案内凹部によって弁体と区画部材は軸心方向に相対的に案内されるため、弁体と区画部材の軸合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る実施例1における容量制御弁を示す断面図である。
【
図2】容量制御弁が閉弁された様子を示す要部拡大断面図である。
【
図3】容量制御弁が開弁された様子を示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る実施例2における容量制御弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。尚、実施例は容量制御弁を例にして説明するが、その他の用途にも適用可能である。
【実施例1】
【0021】
実施例1に係る容量制御弁につき、
図1から
図3を参照して説明する。以下、
図1の正面側から見て左右側を容量制御弁の左右側として説明する。詳しくは、バルブハウジング10が配置される紙面左側を容量制御弁の左側、ソレノイド80が配置される紙面右側を容量制御弁の右側として説明する。
【0022】
本発明の容量制御弁は、自動車等の空調システムに用いられる図示しない容量可変型圧縮機に組み込まれ、冷媒である作動流体(以下、単に「流体」と表記する。)の圧力を可変制御することにより、容量可変型圧縮機の吐出量を制御し空調システムを目標の冷却能力となるように調整している。
【0023】
先ず、容量可変型圧縮機について説明する。容量可変型圧縮機は、吐出室と、吸入室と、制御室と、複数のシリンダと、を備えるケーシングを有している。尚、容量可変型圧縮機には、吐出室と制御室とを直接連通する連通路が設けられている。この連通路には吐出室と制御室との圧力を平衡調整させるための固定オリフィス9が設けられている(
図1参照)。
【0024】
また、容量可変型圧縮機は、回転軸と、斜板と、複数のピストンと、を備えている。回転軸は、ケーシングの外部に設置される図示しないエンジンにより回転駆動されている。斜板は、制御室内において回転軸に対してヒンジ機構により傾斜可能に連結されている。複数のピストンは、斜板に連結され各々のシリンダ内において往復動自在に嵌合されている。容量可変型圧縮機は、電磁力により開閉駆動される容量制御弁V1を用いて、流体を吸入する吸入室の吸入圧力Ps、ピストンにより加圧された流体を吐出する吐出室の吐出圧力Pd、斜板を収容した制御室の制御圧力Pcを利用しつつ、制御室内の圧力を適宜制御することで斜板の傾斜角度を連続的に変化させている。これにより、ピストンのストローク量を変化させて流体の吐出量を制御している。
【0025】
図1に示されるように、容量可変型圧縮機に組み込まれる本実施例1の容量制御弁V1は、駆動源としてのソレノイド80を構成するコイル86に通電する電流を調整し、容量制御弁V1におけるCS弁50の開閉制御を行っている。これにより、制御室から吸入室に流出する流体が制御され制御室内の制御圧力Pcが可変制御されている。尚、吐出室の吐出圧力Pdの吐出流体が固定オリフィス9を介して制御室に常時供給されており、容量制御弁V1におけるCS弁50を閉塞させることにより制御室内の制御圧力Pcを上昇させられるようになっている。
【0026】
本実施例1の容量制御弁V1において、CS弁50は、弁体56と、弁座としてのCS弁座40aとにより構成されている。CS弁座40aは、バルブハウジング10の連通孔部10bに圧入固定される筒状の弁座部材40に形成されている。CS弁50は、弁体56におけるCS弁体51の軸方向右側に形成されるテーパ状の当接部54がCS弁座40aに軸方向に接離することで、開閉するようになっている。尚、本実施例1の弁体56は、弁要素としてのCS弁体51とロッド要素としてのロッド20とにより構成されている。
【0027】
次いで、容量制御弁V1の構造について説明する。
図1に示されるように、容量制御弁V1は、バルブハウジング10と、弁座部材40と、CS弁体51と、ロッド20と、ソレノイド80と、区画部材としてのベローズ30と、から主に構成されている。バルブハウジング10と弁座部材40とは、金属材料により形成されている。CS弁体51は、バルブハウジング10内に軸方向に往復動自在に配置されている。ロッド20は、CS弁体51の軸方向右側に配置されている。ソレノイド80は、バルブハウジング10に接続されロッド20及びCS弁体51に駆動力を及ぼすようになっている。ベローズ30は、バルブハウジング10とロッド20との間に密封状に配置されている。
【0028】
図1及び
図2に示されるように、CS弁体51には、軸方向左端から順に、先端軸部52、大径部53、当接部54、後端軸部55が形成されている。
【0029】
先端軸部52は、後端軸部55とほぼ同径であり、大径部53は、先端軸部52及び後端軸部55よりも大径である。
【0030】
また当接部54は、大径部53と後端軸部55との間に形成されており、軸方向左側から軸方向右側に向けて縮径するテーパ形状を成している。
【0031】
バルブハウジング10の軸方向左側には、径方向に貫通する入口ポート11を通じて制御室と連通する1次圧空間S1が形成されている。また、バルブハウジング10における1次圧空間S1よりも軸方向右側には、径方向に貫通する出口ポート12を通じて吐出室と連通する2次圧空間S2が形成されている。
【0032】
バルブハウジング10には、軸方向左端から軸方向右方に凹み、軸方向左端が開口した凹部10aが形成されている。
【0033】
また、バルブハウジング10の軸方向左端は蓋部材13により閉塞されており、凹部10aおよび蓋部材13で囲まれた空間が1次圧空間S1となっている。
【0034】
また、蓋部材13とCS弁体51との間には、CS弁体51をCS弁50の閉弁方向である軸方向右方に付勢する第1付勢手段としてのコイルスプリング14が配置されている。
【0035】
このコイルスプリング14は、押しバネであり、その内側にCS弁体51の先端軸部52が挿通されている。すなわち、CS弁体51の先端軸部52は、コイルスプリング14に嵌合する嵌合部として機能している。
【0036】
また、バルブハウジング10には、軸方向右端の内径側が軸方向左方に凹む凹部10cが形成されている。また、凹部10aと凹部10cとの間には軸方向に連通する連通孔部10bが形成されている。この連通孔部10bは、凹部10a,10cよりも小径である。
【0037】
また、連通孔部10bの軸方向右端には、ベローズ30が密封状に固定されている。この連通孔部10bおよびベローズ30で囲まれた空間が2次圧空間S2となっている。
【0038】
ベローズ30は、筒状の胴部31と、固定板部32と、リング部33と、を有し、径方向断面視略U字状を成している。胴部31は、軸方向に伸縮可能な蛇腹を有している。固定板部32は、胴部31の軸方向左端の開口を閉塞している。リング部33は、胴部31の軸方向右端に設けられ連通孔部10bの軸方向右端の小径孔部に圧入固定されるようになっている。
【0039】
胴部31、固定板部32およびリング部33は、金属により構成されている。固定板部32およびリング部33は、胴部31よりも厚く形成されており胴部31よりも剛性を有する。尚、胴部31、固定板部32およびリング部33は別素材で構成されていてもよいが、固定板部32およびリング部33は胴部31よりも剛性を有することが好ましい。また、胴部31、固定板部32およびリング部33は金属以外の素材で構成されていてもよい。
【0040】
固定板部32の左面の中央部には、軸方向右方に凹む案内凹部34が形成されている。この案内凹部34にはCS弁体51の後端軸部55が嵌合するようになっている。
【0041】
弁座部材40は、筒状部41と、環状凸部42と、を備えている。筒状部41は、連通孔部10bに圧入される。環状凸部42は、筒状部41の軸方向左端から外径方向に突出している。尚、筒状部41の内径はCS弁体51の後端軸部55よりも大径に形成されている。
【0042】
この弁座部材40は、凹部10aの底に貫通する連通孔部10bの軸方向左端に軸方向左方から圧入されることによりバルブハウジング10に密封状に固定されている。また、凹部10aの底端面10dに環状凸部42が当接することで弁座部材40の連通孔部10bへの過挿入が防止されているとともに、弁座部材40の軸方向の位置決めがなされている。
【0043】
また、弁座部材40には、軸方向左端の内径側にCS弁座40aが形成されており、CS弁座40aは、軸方向右側に向けて漸次縮径するテーパ形状を成している。
【0044】
バルブハウジング10の凹部10cには、センタポスト82のフランジ部82dが軸方向右方から密封状態で内嵌固定され、さらにその軸方向右方からケーシング81が外嵌固定されることにより一体に接続されている。
【0045】
バルブハウジング10には、連通手段としての貫通孔15が形成されている。貫通孔15は、軸方向両端の凹部10a,10cの底面にそれぞれ開口し軸方向に延びている。貫通孔15は、断面一定に形成されており、1次圧空間S1とソレノイド80内の背面空間S3に連通している。
【0046】
図1に示されるように、ソレノイド80は、ケーシング81と、略円筒形状のセンタポスト82と、ロッド20と、可動鉄心84と、第2付勢手段としてのコイルスプリング85と、励磁用のコイル86と、有底筒状のスリーブ87と、から主に構成されている。ケーシング81は、軸方向左方に開放する開口部81aを有している。センタポスト82は、ケーシング81の開口部81aに対して軸方向左方から挿入されケーシング81の内径側とバルブハウジング10の内径側との間に配置されている。ロッド20は、センタポスト82に挿通され軸方向に往復動自在、かつその軸方向左端部がバルブハウジング10内に配置されている。可動鉄心84は、ロッド20の軸方向右端部が挿嵌・固定されている。コイルスプリング85は、可動鉄心84をCS弁50の開弁方向である軸方向左方に付勢している。コイル86は、センタポスト82の外側にボビンを介して巻き付けられている。スリーブ87は、センタポスト82の一部、可動鉄心84、コイルスプリング85およびロッド20の一部が収納されるようになっている。
【0047】
センタポスト82は、円筒部82bと、環状のフランジ部82dとを備えている。円筒部82bは、鉄やケイ素鋼等の磁性材料である剛体から形成され、軸方向に延びロッド20が挿通される挿通孔82cが形成される。フランジ部82dは、円筒部82bの軸方向左端部の外周面から外径方向に延びている。
【0048】
コイルスプリング85は、押しバネであり、可動鉄心84とスリーブ87との間に配置されている。また、コイルスプリング85の軸方向左端は、可動鉄心84の軸方向右端に形成された凹部84a内に嵌合している。尚、コイルスプリング85はコイルスプリング14よりも付勢力が小さくなっている。
【0049】
ソレノイド80内の背面空間S3は、2次圧空間S2と仕切られたCS弁体51の背面側の主にスリーブ87内の空間である。詳しくは、背面空間S3は、ベローズ30内の空間、凹部10cとセンタポスト82左端との間の空間、センタポスト82内の空間、スリーブ87内の可動鉄心84左右の空間を含んでいる。
【0050】
ロッド20は、センタポスト82の挿通孔82cに挿通されている。ロッド20の軸方向右端部は可動鉄心84に挿嵌・固定され、ロッド20の軸方向左端部はベローズ30の胴部31内に挿入されている。また、ロッド20の軸方向左端面は、固定板部32の右面に当接している。なお、ロッド20の軸方向左端面は、固定板部32の右面に接着材や溶接等で固定されていてもよい。
【0051】
また、ロッド20の外周面とベローズ30におけるリング部33の内周面との隙間L1は、ロッド20の外周面とセンタポスト82の挿通孔82cの内周面との隙間L2よりも小さくなっている(L1<L2)。
【0052】
これによれば、ロッド20が動作時やロッド20に作動流体の圧力がかかった時などにロッド20が僅かに傾いた際には、リング部33の内周面に当接してロッド20の傾斜が規制される。そのため、ロッド20及びCS弁体51の軸ブレを防止して安定して動作させることができる。すなわち、リング部33はロッドの傾斜規制部として機能している。
【0053】
次いで、容量制御弁V1の開閉動作について説明する。
【0054】
先ず、容量制御弁V1の非通電状態について説明する。
図1及び
図2に示されるように、容量制御弁V1は、非通電状態において、CS弁体51がコイルスプリング85の付勢力より大きいコイルスプリング14の付勢力により軸方向右方、すなわち閉弁方向へと押圧されている。これにより、CS弁体51の当接部54がCS弁座40aに着座し、CS弁50は閉塞されている。
【0055】
詳しくは、軸方向左側に向けて拡開するようにテーパ状に形成されるCS弁座40aに対して、同じく軸方向左側に向けて拡開するようにテーパ状に形成されるCS弁体51の当接部54が接触して着座するようになっている。
【0056】
このとき、CS弁体51の有効受圧面積A、ベローズ30の有効受圧面積B、軸方向右向きを正として、CS弁体51には、コイルスプリング14の付勢力(Fsp1)と、1次圧空間S1内の作動流体の圧力P1による力(FP1)=(P1×(A-B))と、2次圧空間S2内の作動流体の圧力P2による力(FP2)=-(P2×(A-B))と、コイルスプリング85の付勢力(-Fsp2)と、ベローズ30の付勢力(-FBW)が作用している(すなわち、右向きを正として、CS弁体51には、力Frod=Fsp1-Fsp2+FP1-FP2-FBWが作用している)。
【0057】
このとき、CS弁体51の軸方向左端面には1次圧空間S1内の作動流体が作用している。尚、1次圧空間S1と背面空間S3とは、バルブハウジング10に設けられた貫通孔15により連通しているので、背面空間S3には1次圧空間S1内の作動流体が流入している。
【0058】
このように、1次圧空間S1と背面空間S3とに流入する作動流体は、入口ポート11から供給される同一の1次圧P1の作動流体である。また、CS弁体51の有効受圧面積Aとベローズ30の有効受圧面積Bとは等しい(A=B)ため、作動流体の圧力P1,P2によりCS弁体51に作用する力(FP1),(FP2)はいずれもほぼゼロとなる。
【0059】
すなわち、右向きを正として、CS弁体51には、実質的に力Frod=Fsp1-Fsp2-FBWが作用しており、コイルスプリング14の付勢力(Fsp1)はコイルスプリング85の付勢力(Fsp2)とベローズ30の付勢力(-FBW)の和よりも大きい(Fsp1>Fsp2+FBW)ので、閉弁方向へと押圧されてCS弁50が閉塞されている。
【0060】
次に、容量制御弁V1の通電状態について説明する。
図3に示されるように、容量制御弁V1は、通電状態(すなわち通常制御時、いわゆるデューティ制御時)において、ソレノイド80に電流が印加されることにより発生する電磁力(F
sol)が力F
rodを上回る(F
sol>F
rod)と、可動鉄心84がセンタポスト82側、すなわち軸方向左側に引き寄せられ、可動鉄心84に固定されたロッド20およびCS弁体51が軸方向左方、すなわち開弁方向へ共に移動する。これにより、CS弁体51の当接部54がCS弁座40aから離間し、CS弁50が開放される。
【0061】
また、ソレノイド80の駆動時には、CS弁体51の先端軸部52が蓋部材13に接触することで、CS弁体51がさらにCS弁座40aから離間することが規制される。
【0062】
このとき、CS弁体51には、軸方向左方に電磁力(Fsol)、軸方向右方に力Frodが作用している(すなわち、右向きを正として、CS弁体51には、力Frod-Fsolが作用している)。
【0063】
このように、容量制御弁V1は、ソレノイド80の電磁力(Fsol)と、コイルスプリング14の付勢力とコイルスプリング85の付勢力及びベローズ30の付勢力(-FBW)との差分(Fsp1-Fsp2-FBW)とのバランスにより調整されるCS弁50の弁開度により、1次圧空間S1内の作動流体の圧力P1を適宜制御することができる。
【0064】
以上説明したように、バルブハウジング10にはロッド20が挿通される連通孔部10bが2次圧空間S2と背面空間S3との間に設けられており、連通孔部10bの内周面とロッド20の外周面との間には、軸方向に伸縮可能なベローズ30が取付けられている。これによれば、ベローズ30により2次圧空間S2と背面空間S3との間が密封状に区画されるため、CS弁50の閉塞時において、連通孔部10bとロッド20との隙間を通って、背面空間S3の作動流体が2次圧空間S2に漏れ出すことがない。そのため、1次圧空間S1内の作動流体の制御を高い精度で行うことができる。
【0065】
また、ベローズ30の胴部31はロッド20の軸方向に伸縮可能であるため、CS弁体51及びロッド20(すなわち弁体56)の軸ブレが抑えられ、CS弁体51及びロッド20の駆動を阻害しない。また、ベローズ30は蛇腹形状をなしているため、ロッド20の動作に応じてベローズ30を安定して伸縮させることができる。
【0066】
また、ベローズ30により2次圧空間S2と背面空間S3との間が密封状に区画されていることに加え、弁体56は、閉弁方向に付勢するコイルスプリング14と、開弁方向に付勢するコイルスプリング85と、により軸方向に対向して挟まれた状態で支持されるため、弁体56の軸ブレが抑えられるとともに、ロッド20とバルブハウジング10とが摺動しない状態とすることができる。これにより、バルブハウジング10とロッド20との隙間を大きくすることができる。言い換えれば、バルブハウジング10とロッド20との間に微小な隙間が形成されないので、摩擦力によりロッド20の駆動に影響を与えることを防止できる。さらに、バルブハウジング10とロッド20との微小な隙間にコンタミが噛み込むことを防止できる。
【0067】
また、CS弁体51の先端軸部52がコイルスプリング14の内側に嵌合されるので、弁体56の軸ブレが抑えられる。
【0068】
また、ベローズ30は、ロッド20の左端面に固定される固定板部32と、バルブハウジング10に固定されるリング部33と、固定板部32とリング部33とを繋ぐ蛇腹状の胴部31と、を有している。これによれば、ロッド20が固定板部32を貫通しないので、ロッド20とベローズ30との隙間から作動流体が漏れ出すことを防止できる。また、蛇腹状の胴部31が軸方向に伸縮するので、固定板部32及びリング部33を厚く形成して強度を高くすることができる。
【0069】
また、リング部33の外周面がバルブハウジング10の内周面に固定されている。具体的には、リング部33がバルブハウジング10の内周面に圧入して固定される構造であるため、固定手段を用意しなくてもバルブハウジング10に対してリング部33を簡便に取付けることができる。さらに、リング部33が径方向に移動することがなく、胴部31の軸ブレを確実に抑制できる。
【0070】
また、胴部31は、リング部33から2次圧空間S2に向かって延びている。すなわち、ベローズ30は、2次圧空間S2内に配置されているので、背面空間S3をコンパクトにできる。言い換えれば、背面空間S3側にベローズ30が配置されないので、ベローズ30がソレノイド80の構造に影響を与えない。
【0071】
また、弁体56を構成するCS弁体51とロッド20とは別部材であり、CS弁体51は固定板部32に固定される構造であるため、CS弁50を組み立てやすい。具体的には、ロッド20にベローズ30の固定板部32を固定し、バルブハウジング10にベローズ30のリング部33を圧入固定してソレノイド80とバルブハウジング10を組み付け、バルブハウジング10に対して弁座部材40を固定し、弁座部材40を貫通させてCS弁体51をベローズ30の固定板部32に接続することでCS弁50を組み立てることができる。すなわち、バルブハウジング10を半割形状等としなくても軸方向左方から弁座部材40やCS弁体51を挿入して簡便に組み立てることができる。
【0072】
また、ベローズ30の固定板部32の左面の中央部には、軸方向右方に凹む案内凹部34が形成されており、この案内凹部34にはCS弁体51の後端軸部55が嵌合するようになっている。これによれば、案内凹部34によりCS弁体51とベローズ30とが軸心方向に相対的に案内される。そのため、CS弁体51とベローズ30との軸合わせを行うことができる。
【実施例2】
【0073】
次に、実施例2に係る容量制御弁につき、
図4を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0074】
図4に示されるように、本実施例2の容量制御弁V2のCS弁体510には軸方向に貫通する貫通孔511が形成されている。また、ベローズ300の固定板部320には軸方向に貫通する貫通孔321が形成されている。また、ロッド200には、軸方向に貫通する貫通孔201が形成されている。
【0075】
CS弁体510の貫通孔511、ベローズ300の貫通孔321、ロッド200の貫通孔201は軸方向に連通して1つの貫通孔150を構成している。1次圧空間S1と背面空間S3とは、貫通孔150により連通されている。すなわち、貫通孔150は連通手段として機能している。
【0076】
この貫通孔150により1次圧空間S1と背面空間S3とを同圧とすることができるので、1次圧空間S1と背面空間S3とに圧力差が生じることがない。そのため、ソレノイド80への印加電流に応じてCS弁体510及びロッド200を精度よく動作させることができる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0078】
例えば、前記実施例1,2では、弁要素とロッド要素とが別部材で構成されている構成を例示したが、これに限られず、弁要素とロッド要素が一体であってもよい。また、弁要素はテーパ形状をなす形態を例示したが、自由に変更できる。
【0079】
また、前記実施例1,2では、ロッドの端面に固定板部の端面が固定されていたが、これに限られず、ロッドの端面が固定板部の端面に必ずしも固定されていなくてもよい。ロッドの端面が固定板部の端面に固定されていなくても第1付勢手段及び第2付勢手段によりロッドの端面と固定板部の端面とが当接した状態を維持できる。
【0080】
また、前記実施例1,2では、固定板部と弁要素が別体である形態を例示したが、固定板部と弁要素が一体となっていてもよい。
【0081】
また、前記実施例1,2では、固定板部に設けられる案内凹部に弁要素が嵌合固定される形態を例示したが、弁要素に案内凹部を設け、固定板部から突出する凸部が案内凹部に嵌合してもよい。
【0082】
また、前記実施例1,2では、軸方向左から順に1次圧空間、2次圧空間、背面空間が形成されている形態を例示したが、これに限らず、1次圧空間と2次圧空間の位置が逆でもよい。具体的には、1次圧空間の隣に背面空間が形成されていてもよい。
【0083】
また、前記実施例1,2では、ノーマルクローズ型の弁について説明したが、これに限られず、ノーマルオープン型の弁であってもよい。
【0084】
また、前記実施例1,2では、1次圧空間に弁要素が配置される形態を例示したが、弁要素は2次圧空間に配置されていてもよい。
【0085】
また、前記実施例1,2では、第1付勢手段及び第2付勢手段が押しバネである形態を例示したが、例えば引きバネであってもよい。また、第1付勢手段及び第2付勢手段はコイルスプリングに限られず、第1付勢手段及び第2付勢手段の一方、または両方が板バネ等であってもよい。
【0086】
また、前記実施例1,2では、第1付勢手段及び第2付勢手段が設けられる形態を例示したが、いずれか一方のみ設け、他方を省略してもよい。例えば、ノーマルクローズ型の弁の場合、開弁方向に付勢する第2付勢手段を設けなくてもよい。また例えば、ノーマルオープン型の弁の場合、閉弁方向に付勢する第1付勢手段を設けなくてもよい。
【0087】
また、前記実施例1,2では、第1付勢手段が1次圧空間に配置される形態を例示したが、第1付勢手段が配置される場所は自由に変更してもよい。例えば、第1付勢手段は2次圧空間や背面空間(センタポストと可動鉄心との間)に配置されていてもよい。
【0088】
また、前記実施例1,2では、第2付勢手段が背面空間に配置される形態を例示したが、第2付勢手段が配置される場所は自由に変更してもよい。例えば、第2付勢手段は2次圧空間に配置されていてもよい。
【0089】
また、前記実施例1,2では、ベローズが付勢力を有している形態を例示したが、ベローズが付勢力を有していなくてもよい。
【0090】
また、前記実施例1,2では、ベローズが2次圧空間に配置されている形態を例示したが、ベローズは背面空間に配置されていてもよい。
【0091】
また、前記実施例1,2では、弁要素の有効受圧面積とベローズの有効受圧面積とが等しい形態を例示したが、弁要素の有効受圧面積とベローズの有効受圧面積とが異なっていてもよい。
【0092】
また、前記実施例1,2では、区画部材の胴部が蛇腹状である形態を例示したが、これに限られず、胴部は伸縮可能であればよい。
【0093】
また、前記実施例1,2では、弁が容量制御弁である例を説明したが、例えば、空調システムにおいて凝縮器と蒸発器との間に配置される膨張弁等であってもよい。
【0094】
また、前記実施例1,2では、弁座とバルブハウジングが別部材である形態を例示したが、弁座がバルブハウジングと一体に構成されていてもよい。
【0095】
また、前記実施例1では、連通手段がバルブハウジングに設けられた貫通孔である形態を例示し、前記実施例2では、連通手段が弁体、区画部材、背面空間を貫通する貫通孔である形態を例示したが、これに限られず、連通手段は背面空間と制御室が直接連通する連通路であってもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 バルブハウジング
14 コイルスプリング(第1付勢手段)
15 貫通孔(連通手段)
20 ロッド(ロッド要素、弁体)
30 ベローズ(区画手段)
31 胴部
32 固定板部
33 リング部
34 案内凹部
40a CS弁座(弁座)
50 CS弁(弁)
51 CS弁体(弁要素、弁体)
56 弁体
80 ソレノイド(駆動源)
85 コイルスプリング(第2付勢手段)
150 貫通孔(連通手段)
200 ロッド(ロッド要素、弁体)
300 ベローズ(区画手段)
510 CS弁体(弁要素、弁体)
A,B 有効受圧面積
S1 1次圧空間
S2 2次圧空間
S3 背面空間
V1,V2 容量制御弁