(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】三次元印刷組成物の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20250310BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20250310BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20250310BHJP
C08J 3/215 20060101ALI20250310BHJP
C08L 33/06 20060101ALN20250310BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/153
B33Y70/10
C08J3/215 CFG
C08L33/06
(21)【出願番号】P 2020041679
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-03-03
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピーエヌ・ヴェルジン
(72)【発明者】
【氏名】カレン・エイ・モファット
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スティーブン・ホーキンス
(72)【発明者】
【氏名】シバンティ・エスワリ・スリスカンダ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/178270(WO,A1)
【文献】特表2019-511404(JP,A)
【文献】米国特許第06048954(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0022043(US,A1)
【文献】特開2017-226219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40;67/00-67/08
B33Y
C08J 3/00-3/28;99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
三次元印刷粉末、
水、及び任意の分散剤
を含む、三次元印刷粉末分散液を提供
する工程、
ここで、前記三次元ポリマー印刷粉末が、ポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアルカノエート、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリアルキルシロキサン、フッ素化ポリマー、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)アクリレート、PFPEメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群のメンバーから選択される;
有機ポリマー添加剤のエマルションを提供する
工程、
ここで、前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含み、
前記界面活性剤が、約45mN/m未満の最小表面張力を有し、
前記有機ポリマー添加剤が、約3~約8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーと、2つ以上のビニル基を含む任意の第2のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマー中に、前記コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約40重量%の量で存在する、第2のモノマーと、アミンを含む任意の第3のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマーの重量に基づいて約0.1重量%~約1.5重量%の量で存在する、第3のモノマーと、を含む、ポリマー又はコポリマーであり、
前記有機ポリマー添加剤が、約20ナノメートル~約50ナノメートルの体積平均粒径を有する;
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成する
工程、
ここで、前記三次元印刷粉末及び前記有機ポリマー添加剤が、次式に従って混合物を形成するように組み合わされ、
0.2<(w・D・P)/(0.363・d・p)<1.2
式中、前記三次元印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の前記粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、
前記有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、wは、前記有機ポリマー添加剤のエマルション中の前記有機ポリマー添加剤のエマルションの固体添加量に基づく百分率単位の、前記混合物に添加される前記有機ポリマー添加剤のエマルションの重量である;並びに
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させ
、前記三次元印刷粉末と有機ポリマー添加剤とを含む焼結可能な三次元印刷組成物を形成する工程、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記三次元印刷粉末が事前に乾燥されていない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記任意の分散剤が存在し、
前記分散剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む界面活性剤である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーを含むか、又は
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種の架橋性重合性モノマーを含むか、又は
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーと少なくとも1種の架橋性重合性モノマーとの組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記有機ポリマー添加剤が、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーを含み、
前記2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて0重量%超~約40重量%の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記有機ポリマー添加剤が、酸性モノマー、塩基性モノマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記有機ポリマー添加剤が、窒素含有基を有する塩基性モノマーを含み、
前記窒素含有基を有する塩基性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約1.5重量%未満の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記有機ポリマー添加剤が、アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸性基を有する酸性モノマーを含み、
前記酸性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約4重量%未満の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記有機ポリマー添加剤が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記組成物が、2種以上の有機ポリマー添加剤を含み、
第1の有機ポリマー添加剤が、第1の平均D50粒径を有し、
第2の有機ポリマー添加剤が、第2の平均D50粒径を有し、
前記第1及び第2の平均D50粒径が、少なくとも約10ナノメートル異なる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機ポリマー添加剤が、前記三次元印刷粉末の重量に基づいて約0.01~約5重量
%の総表面添加量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
プロセスであって、
三次元印刷粉末、水、及び任意の分散剤を含む、三次元印刷粉末分散液を提供する工程、
ここで、前記三次元ポリマー印刷粉末が、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,12(PA6,12)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリオキシメチレン(POM);ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアクリレート及びポリスチレン-アクリレート;ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びこれらの組み合わせからなる群
のメンバーから選択される;
有機ポリマー添加剤のエマルションを提供する工程、
ここで、前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含み、
前記界面活性剤が、約45mN/m未満の最小表面張力を有し、
前記有機ポリマー添加剤が、約3~約8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーと、2つ以上のビニル基を含む任意の第2のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマー中に、前記コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約40重量%の量で存在する、第2のモノマーと、アミンを含む任意の第3のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマーの重量に基づいて約0.1重量%~約1.5重量%の量で存在する、第3のモノマーと、を含む、ポリマー又はコポリマーであり、
前記有機ポリマー添加剤が、約20ナノメートル~約50ナノメートルの体積平均粒径を有する;
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成する工程、
ここで、前記三次元印刷粉末及び前記有機ポリマー添加剤が、次式に従って混合物を形成するように組み合わされ、
0.2<(w・D・P)/(0.363・d・p)<1.2
式中、前記三次元印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の前記粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、
前記有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、wは、前記有機ポリマー添加剤のエマルション中の前記有機ポリマー添加剤のエマルションの固体添加量に基づく百分率単位の、前記混合物に添加される前記有機ポリマー添加剤のエマルションの重量である;並びに
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させ、前記三次元印刷粉末と有機ポリマー添加剤とを含む焼結可能な三次元印刷組成物を形成する工程、を含む、プロセス。
【請求項14】
前記焼結可能な三次元印刷組成物を印刷プロセスで使用することを更に含み、
前記印刷プロセスが、
前記焼結可能な三次元印刷組成物をレーザーに露光させて、前記三次元印刷粉末を融合させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記焼結可能な三次元印刷組成物を印刷プロセスで使用することを更に含み、
前記印刷プロセスが、レーザービーム溶融印刷プロセス又は選択的レーザー焼結プロセスを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記有機ポリマー添加剤の第1のモノマーが、シクロヘキシルメタクリレートであり、
前記有機ポリマー添加剤の第2のモノマーが、ジビニルベンゼンであり、及び
前記有機ポリマー添加剤の第3のモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレートである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記有機ポリマー添加剤の第1のモノマーが、シクロヘキシルメタクリレートであり、
前記有機ポリマー添加剤の第3のモノマーが、ジメチルアミノエチルメタクリレートであり、及び
前記有機ポリマー添加剤が、前記第2のモノマーを含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記有機ポリマー添加剤の第1のモノマーが、シクロヘキシルメタクリレートであり、
前記有機ポリマー添加剤の第2のモノマーが、ジビニルベンゼンであり、及び
前記有機ポリマー添加剤が、アミンを含む第3のモノマーを含まない、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、三次元印刷粉末、任意の分散剤、及び水を含む、三次元印刷粉末分散液を提供することと、有機ポリマー添加剤のエマルションを提供することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させることと、を含む、プロセスが開示される。
【背景技術】
【0002】
選択的レーザー焼結(SLS)は、三次元(3D)物体を層ごとに生成する、最も一般的な積層造形プロセスのうちの1つである。このプロセスは、粉末材料の層を互いに重ね合わせて順次適用し、粉末の各層は、部品のコンピュータ支援製図(CAD)ジオメトリに従ってレーザーで共に焼結又は合体される。
【0003】
SLSは、複雑な三次元部品を製造するための粉末床ベースの積層造形技術である。SLSでは、ラスタ化レーザーを用いてポリマー粉末床を走査し、焼結して層状に固体形状を形成する。レーザービームが粉末を走査すると、粉末は温度上昇によって溶融し、層ごとに最終部品が完全密度に近づき、バルク材料(すなわち、ポリマー)の特性を生じるであろう。理論的には、粉末形態に変換することができる全ての熱可塑性ポリマーは、この技術によって処理することができるが、実際には、全ての材料は異なる挙動を示し、多くの場合に溶融、合体、及び圧密時に予測不能に挙動し、多くの場合に固有のSLS処理パラメータを必要とする。床温度及びレーザーエネルギー入力は、例えば、ポリマーの熱プロファイル並びにそのエネルギー吸収の処理ウィンドウに基づいて選択することができる。レーザーパラメータはまた、粉末の粒径及び形状に基づいて選択することができる。
【0004】
SLSプロセスにおいて一般的に使用されるポリマー粒子には、異なる種類がある。半結晶性樹脂、例えば、PA12、PA11、及びPA6を含むポリアミド、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが使用される。使用される最も一般的なポリマー粉末は、ポリアミドPA12である。ポリアミドの一般的な名称は、ナイロンである。例えば、ポリアミドPA12は、ナイロン12としても知られており、ポリアミドPA6は、ナイロン6としても知られている。層-層構造は、部品のCADジオメトリファイルに従って、ポリマーの融点よりも高いレーザーでポリマー粒子を焼結することによって形成される。
【0005】
微粒子粉末を使用する3D用途では、粉末内の粒子間相互作用に起因して起こり得る多くの問題がある。これらの潜在的な問題としては、粉末が3Dプリンタ内及び粉末床内又は送出ノズル内で流動可能になる粒子流れにおける悪影響、並びに焼結工程に関して粉末が充填される固さの程度が挙げられる。粒子間力が高いと、流動が悪くなり、粉末を供給する速度が制限されるか、又は粒子が送出システムに詰まることがある。粒子間力が高いと、粒子が十分に充填されないことがあり、大きな孔及び焼結不足をもたらし、脆弱で、不規則な形状の、表面が粗い、多孔質の最終部品を生じる恐れがある。最終的に、床から得た粉末を再利用することができる。ポリマー粉末の場合、再利用は、部品の形成時に近接して加熱されるために粒子の付着を生じることがある。1回以上の再利用工程の後、粒子流動が悪化することがあり、粒子はまた、塊状に付着し始め、送出システムを減速させるか若しくは詰まらせ、又は不均一で多孔質の脆弱な部品を形成する傾向が高まることがある。
【0006】
ナノ粒子シリカ粉末は、流動を改善するために3D印刷用途で添加剤として使用されてきた。Blumel et al.,Rapid Proto.J.21(2015)697-704:「Increasing flowability and bulk density of PE-HD powders by a dry particle coating process.And further,that this can have a large impact on Laser Beam Melting(LBM)processes」 of the powder,and thus the quality of the final part,in particular improving the porosity and density of the part,and thus the part’s overall strength().」を参照されたい。しかしながら、論文で指摘されるように、シリカの化学的性質は、3D粉末の化学的性質と必ずしも相性が良くなく、したがって必ずしも有効ではない。更に、シリカは難溶性であり、非常に高温で溶融するため、3Dポリマー粉末の焼結工程では流動しないであろうことから、適切な焼結を妨げることがある。
【0007】
三次元印刷粉末を含む現在利用可能なSLS材料は、それらの意図された目的に好適であり得るが、三次元印刷粉末の改善が依然として必要とされている。更に、三次元印刷粉末の流動及びブロッキングを改善することができる添加剤が依然として必要とされている。更に、三次元粉末の再利用を可能にする添加剤が依然として必要とされている。更に、高密度かつ強固な部品の三次元印刷を可能にする添加剤が依然として必要とされている。更に、以前に利用可能なプロセスよりもコスト効率が高いプロセスを含む、三次元印刷組成物を調製するための改善されたプロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
三次元印刷粉末、任意の分散剤、及び水を含む、三次元印刷粉末分散液を提供することと、有機ポリマー添加剤のエマルションを提供することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させて、三次元印刷組成物を提供することと、を含む、プロセスが記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】50×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図2】100×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図3】400×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図4】600×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図5】乾式ブレンドによって上部に配置された有機添加剤を有する、15,000×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【
図6】本発明の実施形態による水性湿式ブレンドによって上部に配置された有機添加剤を有する、15,000×倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
三次元(3D)ポリマー粉末の表面上において、シリカ若しくは他の無機添加剤と共に又はその代わりに使用されるための、エマルション重合によって調製されたポリマー表面添加剤が提供される。ポリマー表面添加剤は、3D粉末の流動又はブロッキング性能を改善し、したがって製造された部品の密度及び強度を改善する。シリカなどの無機添加剤と比較して、有機添加剤には多くの潜在的な利点がある。第一に、効果的なブレンドのために、3D粉末の有機化学的性質と適合するように、モノマーの有機化学的性質を選択することができる。これは、ポリマーラテックスのマトリックスポリマーを変更することによって、又は酸性若しくは塩基性官能基のいずれかを有するコモノマーの量を変更することによって行うことができる。したがって、疎水性及び酸塩基の化学的性質を必要に応じて調整することができる。有機ラテックス添加剤は、架橋又は非架橋であり得る。有効であるために、添加剤は3D粒子表面上に球状粒子として留まる必要があるが、架橋添加剤は、強引な取り扱いに対してより堅牢である。粒子が平坦になると、表面添加剤としてもはや機能しないであろう。しかしながら、3D印刷におけるほとんどの条件下では、そのような堅牢性は必要とされないことがあり、この場合、本明細書に記載の非架橋有機ポリマーラテックスが表面添加剤として選択される。非架橋有機ポリマーラテックスの利点は、焼結プロセスで溶融するように配合することができ、したがって部品の適切な焼結を妨げる可能性が低いことである。
【0011】
ブロッキング性能の場合、3D粉末を再利用することも望ましい。焼結プロセスにおいて加熱源にごく近接していた粉末は、いくらか溶融するために凝集することがある。再利用において、これらの塊は容易に崩壊しないことがあり、その結果、それらは十分にブロックされて事実上付着している。この材料が再利用されると、3D粉末の流動が悪くなることがある。本明細書の実施形態では、有機ポリマーラテックス添加剤は、ブロッキングを改善するために表面添加剤として使用される。
【0012】
本明細書の三次元印刷組成物の調製プロセスは、3Dポリマー粉末の表面に水分散液としてエマルション重合ポリマー表面添加剤を付加することを含み、3D粉末の流動又はブロッキング性能を改善し、したがって製造された部品の密度及び強度を改善する。所望により、無機表面添加剤を、水分散液として3Dポリマー粉末の表面に提供することができる。所望により、シリカなどの無機表面添加剤は、後続の乾式ブレンド工程で添加される。
【0013】
有利なことに、重合ラテックス表面添加剤を水分散液中に添加することを含む本明細書のプロセスは、添加剤の乾燥が不要であり、これは、大幅なコスト削減をもたらし得る、乾燥コストを削減するだけでなくサイクル時間も短縮する。更に、3D印刷粉末が水性化学プロセスによって製造される場合、重合ラテックスは、その水性プロセスの最後に添加され得る。3D粉末が溶媒中で生成されるか、又は粉砕若しくは噴射によって生成される場合、3D粉末にいくらかの界面活性剤を添加して、3D粉末をポリマーラテックスと共に再分散させることが必要であり得る。
【0014】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー添加剤は、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含む。本明細書の有機ポリマー表面添加剤は、ポリマー組成物のマトリックスモノマーとしてシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を使用することができ、これは、シラン処理シリカの疎水性を模倣し得る疎水性モノマーである。これに、ジビニルベンゼン(DVB)のモノマー組成物を添加してもよく、それによって高架橋構造を生成させ、強引な取り扱いでも球状粒子として残存するであろう硬質粒子を生成する。架橋剤は、架橋を必要としないか又は所望しない場合、配合から除外してもよい。ポリマー組成物の任意の第3のモノマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)であり得る。架橋剤は、3D粒子を対象とする用途では任意であるが、例えば、アミド基と強く相互作用するであろう窒素基により、潜在的にポリアミド粒子と相性が良いであろう。あるいは、CHMA有機添加剤ラテックスは、β-CEA又はアクリル酸を使用して、酸性官能基を有するように調製されてもよい。酸性基は、酸塩基により、ポリアミド中のアミド基と強く相互作用するであろう。あるいは、高密度ポリエチレンでは、官能基を有さず、比較的相溶性があるであろう疎水性CHMAモノマーのみを有することが望ましい場合がある。同等のサイズのシリカと比較すると、有機ポリマーラテックスの密度は典型的には1.4g/cm3未満であり、一方のシリカは2.2g/cm3であるため、有機添加剤は、表面を効果的に被覆するために必要な添加剤がシリカと比較して少なく、また他の無機添加剤は密度が更に高いため、比例的により高い添加量を必要とする。
【0015】
本明細書で使用するとき、ポリマー又はコポリマーは、ポリマーが作製されるモノマーによって定義される。したがって、例えば、アクリレートモノマーをモノマー試薬として用いて作製されたポリマーでは、アクリレート部分自体は重合反応のためにもはや存在しないが、本明細書で使用するとき、そのポリマーはアクリレートモノマーを含むと言われる。したがって、本明細書に開示されるプロセスによって作製された有機ポリマー添加剤は、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、ジビニルベンゼン、及びジメチルアミノエチルメタクリレートを含むモノマーの重合によって調製され得る。得られた有機ポリマー添加剤は、有機ポリマー添加剤を作製するためにシクロヘキシルメタクリレートモノマーを使用したとき、シクロヘキシルメタクリレートを含むと言うことができ、ジビニルベンゼンがそのポリマーのモノマー試薬であるとき、ジビニルベンゼンから構成されるか又はそれを含むなどと言うことができる。したがって、本明細書では、ポリマーは、本明細書の有機ポリマー添加剤を命名するための手段を提供する、構成モノマー試薬のうちの1つ以上に基づいて定義される。
【0016】
実施形態では、ポリマー又はコポリマーを含む有機ポリマー添加剤が提供され、このポリマー又はコポリマーは、約3~約8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーと、2つ以上のビニル基を含む任意の第2のモノマーであって、存在する場合、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約40重量%の量で存在し得る、第2のモノマーと、所望により、アミンを含む第3のモノマーであって、存在する場合、コポリマーの重量に基づいて約0.1重量%~約1.5重量%の量、又は約0.5重量%~約1.5重量%の量で存在する、第3のモノマーと、を含む。実施形態では、有機ポリマー添加剤は、界面活性剤を更に含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0017】
本明細書で実施形態において有機ポリマー添加剤又はポリマー若しくはコポリマー有機添加剤とも呼ばれる、有機ポリマー表面添加剤は、エマルション重合を用いて形成されたラテックスである。ラテックスは、高い炭素対酸素(C/O)比を有する少なくとも1種のモノマーを含み、所望により2つ以上のビニル基を有するモノマーが組み合わされ、所望によりアミン官能基を含むモノマーが組み合わされる。水性ラテックスは、次いで乾燥されてもよく、他のトナー添加剤の代わりに、又は他のトナー添加剤と共に使用され得る。C/O比が高いモノマーの使用は、良好な相対湿度(RH)安定性を提供し、アミン官能性モノマーの使用は、3D粒子の表面への有機ポリマー添加剤の望ましい付着を提供し得る。DMAEMAは、3D粒子を対象とする用途では任意であるが、例えば、アミド基と強く相互作用するであろう窒素基により、潜在的にポリアミド粒子と相性が良く、ポリマー添加剤のポリアミド粒子表面への良好な付着をもたらすであろう。あるいは、CHMA有機添加剤ラテックスは、β-CEA又はアクリル酸を使用して、酸性官能基を有するように調製されてもよい。酸性基は、酸塩基相互作用により、ポリアミド中のアミド基と強く相互作用し、再度ポリマー添加剤をポリアミド粒子表面に効果的に付着させるであろう。あるいは、高密度ポリエチレンでは、官能基を有さず、比較的相溶性があるであろう疎水性CHMAモノマーのみを有することが望ましい場合がある。本明細書で実施形態において架橋モノマー又は架橋ビニルモノマーと呼ばれることがある、2つ以上のビニル基を有するモノマーの使用は、ポリマーに架橋特性を提供し、それによって機械的堅牢性を提供する。
【0018】
実施形態では、有機添加剤は、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーを含むか、又は有機添加剤は、少なくとも1種の架橋性重合性モノマーを含むか、又は有機添加剤は、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーと少なくとも1種の架橋性重合性モノマーとの組み合わせを含む。
【0019】
特定の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、架橋性重合性モノマーを含まない。
【0020】
得られた有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、三次元印刷組成物で添加剤として使用されてもよく、その結果得られる三次元印刷組成物に、改善された流動及びブロッキングを含む所望の特性、並びに高密度かつ強固な部品を調製する能力を提供する。本明細書のポリマー添加剤は、他の添加剤と比較してより低密度で使用することができ、チタニア及びシリカなどの酸化物を含む無機添加剤と比較して、同等の表面積を被覆するのに必要な材料が重量ではるかに少ない。本開示のポリマー添加剤はまた、有機ポリマー又はコポリマーの形成に使用されたモノマーに応じて、三次元印刷粉末に、数ある特性の中でも堅牢性、所望の溶融特性などの、広範な特性を提供することができる。
【0021】
上記のように、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、ラテックスの状態であってもよい。実施形態では、有機ポリマー表面添加剤として利用されるラテックスポリマー又はコポリマーは、アクリレート又はメタクリレートなどの高いC/O比を有する第1のモノマーを含み得る。このようなモノマーのC/O比は、約3~約8、実施形態では約4~約7、又は約5~約6であってもよい。実施形態では、高いC/O比を有するモノマーは、脂肪族シクロアクリレートであってもよい。ポリマー添加剤の形成に利用され得る好適な脂肪族シクロアクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0022】
実施形態ではシクロアクリレートである、高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーは、有機ポリマー添加剤として利用されるポリマー又はコポリマー中に、任意の好適な量又は所望の量で存在してもよい。実施形態では、シクロアクリレートは、ポリマー又はコポリマー中に、コポリマーの約40重量%~コポリマーの約99.4重量%、又はコポリマーの約50重量%~コポリマーの約95重量%、又はコポリマーの約60重量%~コポリマーの約95重量%の量で存在してもよい。実施形態では、第1のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約40重量%~約90重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約45重量%~約90重量%の量で存在する。
【0023】
有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望により第2のモノマーを含み、第2のモノマーは架橋モノマーを含む。実施形態では、第2のモノマーは、ビニル基を有する架橋モノマーを含み、特定の実施形態では、2つ以上のビニル基を有する。
【0024】
架橋ビニル含有モノマーとして使用するのに好適なビニル基を有するモノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-(アクリルオキシ/ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-(メタクリルオキシ/ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-(メタクリルオキシ/ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、これらの組み合わせなどが挙げられる。特定の実施形態では、架橋モノマーは、ジビニルベンゼンである。
【0025】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望により有機添加剤を高架橋コポリマーにする第2のモノマーを含む。実施形態では、2つ以上のビニル基を含む第2のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約10重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約20重量%超~約60重量%、又はコポリマーの重量に基づいて約30重量%超~約60重量%の量で存在する。特定の実施形態では、第2のモノマーは、コポリマー中に、コポリマーの重量に基づいて約40重量%超~約60重量%、又は約45重量%超~約60重量%の量で存在する。
【0026】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーを含み、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて0重量%超~約40重量%の量で存在する。
【0027】
別の実施形態では、上記のように、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、架橋モノマーを含有しない。
【0028】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、所望によりアミン官能基を含む第3のモノマーを更に含む。アミン官能基を有するモノマーは、アクリレート、メタクリレート、これらの組み合わせなどから誘導され得る。実施形態では、好適なアミン官能性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジプロピルアミノエチルメタクリレート、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、ジブチルアミノエチルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0029】
実施形態では、本明細書の有機コポリマー添加剤は、第3のモノマーを含有しない。他の実施形態では、本明細書の有機コポリマー添加剤は、アミン官能性モノマーを含む第3のモノマーを含有する。アミン官能性モノマーは、存在する場合、有機コポリマー中に、コポリマーの約0.1重量%~コポリマーの約40重量%、又はコポリマーの約0.5重量%~コポリマーの約5重量%、又はコポリマーの約0.5重量%~コポリマーの約1.5重量%の量で存在してもよい。
【0030】
実施形態では、有機コポリマー添加剤は、酸性モノマー、塩基性モノマー、又はこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、窒素含有基を有する塩基性モノマーを含み、窒素含有基を有する塩基性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約1.5重量%未満の量で存在する。他の実施形態では、有機ポリマー添加剤は、アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸性基を有する酸性モノマーを含み、酸性モノマーは、有機ポリマー添加剤中に、有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約4重量%未満の量で存在する。
【0031】
実施形態では、有機コポリマー添加剤は、疎水性モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレートと、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンとを含む。特定の実施形態では、コポリマー添加剤は、疎水性モノマーとしてシクロヘキシルメタクリレートと、架橋性モノマーとしてジビニルベンゼンと、窒素含有モノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレートとを含む。他の実施形態では、コポリマー添加剤は、架橋性モノマーを含まない。
【0032】
有機ポリマー又はコポリマー表面添加剤を形成する方法は、当業者の理解の範囲内であり、実施形態では、ポリマー添加剤を形成するために利用されるモノマーのエマルション重合を含む。
【0033】
重合プロセスでは、反応物は、混合容器などの好適な反応器に添加されてもよい。適切な量の出発物質を所望により溶媒に溶解してもよく、任意の開始剤を溶液に添加し、少なくとも1種の界面活性剤と接触させてエマルションを形成してもよい。コポリマーは、エマルション(ラテックス)の状態で形成されてもよく、その後、回収されて、三次元印刷組成物用のポリマー添加剤として使用され得る。
【0034】
使用する場合、好適な溶媒としては、水及び/又は有機溶媒、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロベンゼン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、ヘキサン、塩化メチレン、ペンタン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
実施形態では、有機ポリマー添加剤を形成するためのラテックスは、界面活性剤又は共界面活性剤を含有する水相中で、所望により窒素などの不活性ガス下で調製されてもよい。したがって、実施形態では、有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含む。
【0036】
有機ポリマー又はコポリマーのために選択される界面活性剤は、任意の好適な又は所望の界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーであり得る。
【0037】
実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む。
【0038】
特定の実施形態では、本発明のポリマー又はコポリマー表面添加剤のために選択される界面活性剤は、より小さいサイズの粒子の調製を可能にする選択された表面張力を有する界面活性剤であり、実施形態では、ポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子を含み、ラテックス粒子は、70ナノメートル未満の体積平均粒径を有する。
【0039】
有機ポリマー添加剤は、約30ナノメートル~約140ナノメートルの体積平均粒径を有するラテックス粒子を含み得る。実施形態では、本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、Microtrac,Inc.から入手可能なNanotrac NPA252を使用して測定される体積によるD50が、70ナノメートル未満、又は50ナノメートル未満、又は約20~70ナノメートル未満、又は約20~約50ナノメートル、又は約20~50ナノメートル未満の粒径を有する。
【0040】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子を含み、ラテックス粒子は、約20ナノメートル~70ナノメートル未満、又は約20ナノメートル~約50ナノメートル、又は約20ナノメートル~50ナノメートル未満の体積平均粒径を有する。
【0041】
実施形態では、界面活性剤は、臨界ミセル濃度で約30ミリニュートン/メートル(mN/m)未満の最小表面張力を有するものが選択される。実施形態では、選択される界面活性剤は、臨界ミセル濃度で約10~30mN/m未満、又は約15~30mN/m未満、又は約15~約25mN/m、又は約15~約21mN/mの最小表面張力を有する。実施形態では、界面活性剤は、臨界ミセル濃度で30mN/m未満、又は約20~約25mN/mの最小表面張力を有する。実施形態では、選択される界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0042】
実施形態では、本明細書の有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含み、界面活性剤は、約45mN/m未満の最小表面張力を有する。
【0043】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む。
【0044】
界面活性剤の表面張力は、当該技術分野において既知の任意の好適な又は所望の方法によって測定することができる。例えば、界面活性剤の表面張力は、Attension(登録商標) White Paper及びその中に含まれる参考文献、Susanna Lauren,Biolin Scientific.による表題「Surface and interfacial tension,-what is it and how to measure it」により詳細に記載されているように、液気界面に配置されたプローブにかかる力を測定することに基づく、力による張力測定によって測定することができる。一般的に2つのプローブ構成、du Nouyリング及びWilhelmyプレートが使用される。試料体積が制限される場合には、Wilhelmyプレートの代わりに金属(例えば、白金)ロッドを使用することもできる。表面張力は光学的に測定することもでき、これは光学的張力測定と呼ばれ、ペンダントドロップ形状の分析に基づく。
【0045】
当該技術分野において既知のように、臨界ミセル濃度(CMC)は、その界面活性剤の濃度を超えるとミセルが形成され、系に添加された全ての追加の界面活性剤がミセルになる、界面活性剤の濃度として定義される。
【0046】
当該技術分野において既知のように、ミセルは、液体コロイド中に分散した界面活性剤分子の凝集体(又は超分子集合体)である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触する親水性「ヘッド」領域を有する凝集体を形成し、ミセル中心の疎水性の単一テール領域を封鎖する。
【0047】
上記のように、選択される界面活性剤は、任意の好適な又は所望の界面活性剤であり得る。実施形態では、界面活性剤は、より小さいサイズのコポリマー表面添加剤の所望の特性を達成するように選択される。実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、トリシロキサン、例えば、((CH3)3SiO2)2Si-(CH3)(CH2)3(OCH2CH2)nOH、n=4~12であって、臨界ミセル濃度で20~21mN/mの表面張力を有するもの、オキシエチル化アルコール、C14EO8、C12EO5、及びC10EO4、臭化ジメチルジドデシルアンモニウム(DDAB)、ペルフルオロカルボン酸及びその塩、C6F13COOLi、C7F15COOH、C7F15COONa、C8F17COOH、C8F17COOLi、C8F17COONa、C8F17COONH4、C8F17COONH3C2H4OH、C10F21COOLi、C10F21COONH4、C10F21COONH3C2H4OH、C12F25COOLi、ペルフルオロアルカンスルホン酸の塩、C8F17SO3Li、C8F17SO3Na、C8F17SO3NH4、C8F17SO3NH3C2H4OH、他の特定のフッ素系界面活性剤、例えば、3M(商標)のNovec(商標)FC-4430、FC-4432、FC-4434非イオン性高分子界面活性剤、FC-5120アニオン性フルオロアルキルスルホン酸アンモニウム、特に3M(商標)のノナフルオロブチル[スルホニル]アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸のアンモニア塩、DuPont(商標)のZonyl(登録商標)FSN-100、Zonyl(登録商標)FS-300非イオン性エトキシレート、DuPont(商標)のZonyl(登録商標)FS-500両性ベタイン、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-10ペルフルオロアルキルスルホン酸、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-30非イオン性エトキシレート、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-60アニオン性ブレンド、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-61アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-63アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(商標)FS-64アニオン性リン酸エステル、DuPont(商標)のCapstone(登録商標)FS-65非イオン性からなる群から選択される。高分岐炭化水素界面活性剤、例えば、イソステアリル硫酸Na塩、イソステアリル硫酸テトラプロピルアンモニウム塩、及び(CH3)3CCH2CH(CH3)CH2PO4Naも選択することができる。実施形態では、例えば、ジオクチルアンモニウムスルホサクシネート、ジオクチルトリエチルアミンスルホサクシネート、ジオクチルトリメチルアミンスルホサクシネート、及びジオクチルテトラプロピルアンモニウムスルホサクシネートについて、対イオンの適切な選択により、表面張力を臨界ミセル濃度で30mN/m未満に低下させることができる。S.Alexander et al,Langmuir 2014,30:3413-3421を参照されたい。生物蓄積及び環境影響に関する潜在的問題に関して、フッ素系界面活性剤の環境問題に対処するために、3Mは、スルホンアミドプロセスによりフッ素系界面活性剤に変換されるノナフルオロブタンスルホニルフルオリド中間体を生成した。これらの新たな材料は、n≦4のペルフルオロアルキル基を有しており、n>4のフッ素系化学物質ほど規制上の観点から懸念されない。Fluorad(商標)の商標で以前に商業化されたものは、現在では、pH8の緩衝水溶液中で10-5~10-3mol/Lの濃度で15~21mN/mの表面張力を有するNovec(商標)に置き換えられている。Farn,R.J.(Ed.),(2006),Chemistry and Technology of Surfactants,Blackwell Publishing Ltd.を参照されたい。実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸塩である。他の実施形態では、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0048】
実施形態では、ラテックス分散液を形成するために利用され得る界面活性剤は、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.1~約15重量%、実施形態では、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.2~約5重量%、実施形態では、ラテックスの全成分、すなわち、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤の約0.3~約2重量%の量で使用され得る。
【0049】
特定の実施形態では、本明細書のポリマー組成物は、コポリマー及び界面活性剤のラテックス粒子と水とを含むラテックスを含み、界面活性剤は、樹脂、水、界面活性剤、及び開始剤を含む全てのラテックス成分の重量に基づいて、約0.1~約15、又は約0.2~約5、又は約0.3~約2重量%の量で存在する。実施形態では、界面活性剤は、モノマー、水、開始剤、及び界面活性剤を含むラテックス中の全成分の重量に基づいて、約0.3~約2重量%の量で存在する。
【0050】
実施形態では、有機ポリマー添加剤の形成に使用されるラテックスを形成するために、開始剤を添加してもよい。好適な開始剤の例としては、水溶性開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム、並びに有機溶媒可溶性開始剤、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物、例えば、Vazo(商標)過酸化物、例えば、VAZO 64(商標)、2-メチル2-2’-アゾビスプロパンニトリル、VAZO 88(商標)、2-2’-アゾビスイソブチルアミド無水物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。利用され得る他の水溶性開始剤としては、アゾアミジン化合物、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチル-プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-アミノ-フェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-2-プロペニルプロピオンアミジンジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシ-エチル)2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0051】
開始剤は、好適な量、例えば、モノマーの約0.1~約8重量パーセント、又は約0.2~約5重量パーセントで添加することができる。
【0052】
エマルションを形成する際、当業者の理解の範囲内の任意の手段を利用して、出発物質、界面活性剤、任意の溶媒、及び任意の開始剤を組み合わせることができる。実施形態では、反応混合物は、温度を約10℃~約100℃、又は約20℃~約90℃、又は約45℃~約75℃に維持しながら、約1分間~約72時間、実施形態では約4時間~約24時間混合され得る。
【0053】
当業者であれば、反応条件、温度、及び開始剤の添加量の最適化を変化させて、様々な分子量のポリマーを生成することができ、また同等の技術を使用して、構造的に関連した出発物質を重合し得ることを理解するであろう。
【0054】
本開示のポリマー添加剤を有する、得られたラテックスは、約3~約8、実施形態では約4~約7のC/O比を有し得る。
【0055】
実施形態では、3D粉末の添加剤として利用されるポリマー又はコポリマーを形成したら、濾過、乾燥、遠心分離、噴霧乾燥、これらの組み合わせなどを含む、当業者の理解の範囲内の任意の技術によってラテックスから回収してもよい。
【0056】
実施形態では、一旦得られたら、3D粉末用の添加剤として利用されるコポリマーは、例えば、凍結乾燥(所望により真空中で)、噴霧乾燥、これらの組み合わせなどを含む、当業者の理解の範囲内の任意の方法によって粉末形態に乾燥されてもよい。したがって、実施形態では、本明細書のコポリマー添加剤は、乾燥された後、本明細書のプロセスに従って適用するために水に再分散されてもよい。
【0057】
実施形態では、本発明のプロセスは、三次元印刷粉末、任意の分散剤、及び水を含む、三次元印刷粉末分散液を提供することと、有機ポリマー添加剤のエマルションを提供することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成することと、三次元印刷粉末分散液と有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させて、三次元印刷組成物を提供することと、を含む。
【0058】
したがって、本明細書のプロセスは、水中で三次元印刷粉末に有機ポリマー添加剤を適用することを含む。有機ポリマー添加剤は、例えば、ラテックスエマルション又は水分散液の形態で、三次元印刷ポリマー粉末の表面に付加される。実施形態では、三次元印刷ポリマー粉末は分散液中に存在し、有機ポリマー添加剤のエマルション又は水分散液は、三次元印刷粉末の分散液に添加される。
【0059】
重合ラテックス表面添加剤を水分散液中に添加する更なる利点は、添加剤の乾燥が不要なことであり、これは、加工コストの大部分を占め得る、乾燥コストを削減するだけでなくサイクル時間も短縮する。3D印刷粉末が水性化学プロセスによって製造される場合、重合ラテックスは、その水性プロセスの最後に添加され得る。3D粉末が溶媒中で生成されるか、又は粉砕若しくは噴射によって生成される場合、3D粉末にいくらかの界面活性剤を添加して、3D粉末をポリマーラテックスと共に再分散させることが必要であり得る。3D粉末がその製造全体にわたって乾燥粉末である場合、エマルション重合ラテックスを添加するために水に再分散させることが必要となり得る。これは、再分散とその後の3D粉末に必要な乾燥とを考慮すると、必ずしもコスト効率が良くない場合があるが、他の考慮点では望ましい場合がある。したがって、粉砕により製造された乾燥3D粉末のコーティングを本発明のプロセスによって行うことができ、実施形態では、本プロセスは、その製造の一部としてどのみち乾燥させる必要がある3D粉末にとって更なる利益を提供する。実施形態では、本明細書のプロセスは、三次元印刷粉末、任意の分散剤、及び水を含む、三次元印刷粉末分散液を提供することを含み、三次元印刷粉末は事前に乾燥されていない。
【0060】
本明細書の有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、以前の有機トナー添加剤よりもサイズが小さい。実施形態では、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、70ナノメートル未満の平均又はメジアン体積平均粒径(d50)を有する。実施形態では、有機ポリマー又はコポリマー添加剤は、約20ナノメートル~70ナノメートル未満、又は約20ナノメートル~約65ナノメートル、又は約20~約60ナノメートル、又は約20~約50ナノメートルの平均又はメジアン粒径(d50)を有する。特定の実施形態では、本明細書のコポリマートナー添加剤は、50ナノメートル未満、例えば、約20~50ナノメートル未満の平均又はメジアン粒径(d50)を有する。
【0061】
実施形態では、三次元印刷組成物を調製するための本明細書のプロセスは、三次元印刷粉末を提供することと、三次元印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を提供することであって、有機ポリマー添加剤はラテックスエマルション又は水分散液の形態で提供されることと、所望により、三次元印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に提供することと、を含み、有機ポリマー添加剤はエマルション重合によって調製される。
【0062】
任意の好適な又は所望の3D粉末を選択することができる。実施形態では、三次元ポリマー印刷粉末は、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアルカノエート、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリアルキルシロキサン、フッ素化ポリマー、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)アクリレート、及びPFPEメタクリレート、並びにこれらのコポリマー、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。所望により、三次元印刷粉末は、非ポリマー材料で充填されている。特定の実施形態では、三次元ポリマー印刷粉末は、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,12(PA6,12)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEKK);ポリオキシメチレン(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアクリレート及びポリスチレン-アクリレート;ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、三次元ポリマー印刷粉末は、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアルカノエート、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン-アクリレート、ポリウレタン、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。ポリアミドはナイロンの化学名であり、したがって、例えばポリアミド12はナイロン12としても知られている。
【0063】
特定の実施形態では、三次元ポリマー印刷粉末は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリエーテルケトン(PEEK)、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0064】
実施形態では、ポリマー粉末は、ガラスビーズ、鉱物充填剤、顔料、カーボンブラック、炭素繊維、難燃剤、セラミック粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、及び金属粒子を含む、非ポリマー材料で充填されることができる。
【0065】
実施形態では、ポリマー粉末は、金属、金属合金、又はこれらの組み合わせで充填されることができる。実施形態では、ポリマー粉末は、アルミニウム及びアルミニウム合金、ステンレス鋼、工具鋼、チタン及びチタン合金、銅及び銅合金、黄銅、コバルトクロム(コバルトクロミウムとしても知られる)合金、ニッケル鉄合金、ニッケルクロム超合金、貴金属、例えば、金、白金、パラジウム、及び銀からなる群から選択される金属で充填されることができ、実施形態では、エキゾチック金属粉末、例えば、パラジウム、タンタル、及びレニウム、並びにニオビウムで充填されることができる。実施形態では、ポリマー粉末の充填に利用され得る特定の金属粉末としては、ステンレス鋼金属粉末、例えば、316L(低炭素)、17-4PH、熱間及びマルエージング鋼;低密度アルミニウム合金、例えば、AlSi10Mg及びAlSi12、AlSi7Mg0.6、6061及び7075シリーズアルミニウム合金;コバルトクロム合金、例えば、ASTM F75 CoCr;チタン合金、例えば、Ti6Al4V及びTi6Al4V(ELI)であり、Ti6Al4Vは6%アルミニウム及び4%バナジウムであるチタン合金;グレード1~4で入手可能な非合金の市販の純チタン;ニッケルクロム超合金、例えば、Inconel(登録商標)718及びInconel(登録商標)625;ニッケル鉄合金、例えば、FeNi36又は米国では64FeNiであり、Invar(登録商標)としても知られているもの;ニッケル鉄コバルト合金、例えば、Kovar(登録商標)であり、Fernico 1と組成的に同一であるニッケルコバルト第一鉄合金が挙げられる。
【0066】
3D印刷に好適な具体的な粉末は、Prodwaysから入手可能であり、この供給業者からは、PA12-S 1550、PA12-L 1500、PA11-SX 1350、PA11-SX 1450、Ultrasint PA6-X028のポリアミド粉末、TPU-70の熱可塑性ポリウレタン、PA12-GFX 2550のガラスビーズ及びアルミニウム充填PA12、PA12-GF 2500のガラスビーズ充填PA12、PA12-MF 6150の鉱物織物充填PA12、PA12-CF 6500の炭素繊維充填PA12、PA11-GF 3450のガラス充填PA11ポリアミド、Ultrasint PA6-X028及びPA612-GB 3800のガラスビーズ充填ポリアミド6,12が供給されており、CRP Technology S.R.Lからは、Windform(登録商標)SP及びWindform(登録商標)XT 2.0の炭素繊維強化複合ポリアミド、Windform(登録商標)FX BLACKのポリアミド粉末、Windform(登録商標)GTの暗黒色を有するポリアミド系ガラス繊維強化ポリアミド;Windform(登録商標)RLの熱可塑性エラストマー;Windform(登録商標)LX 2.0及びWindform(登録商標)LX 3.0のガラス繊維強化複合ポリアミド系材料、VICTREX(登録商標)PEEK 150UF10、VICTREX(商標)PAEK、Victrex(商標)VICOTE(商標)707のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が供給されており;Oxford Performance Materials(OPM)からは、OXPEKK(登録商標)のポリエーテルケトン(PEKK)が供給されており;Evonikからは、Vestosint(登録商標)のd50サイズが約6~約100マイクロメートルのポリアミド12粉末が供給されており;EOSからは、PrimePart(登録商標)STのポリエーテルブロックアミド(PEBA)3D粉末、PA 2200及びPA 2201の白色ポリアミド粉末、PA 2202の黒原着ポリアミド粉末、PA 1101の白色~半透明ポリアミド11、PA 1102の黒原着ポリアミド12、PA 2210 FRのハロゲンフリー化学難燃剤を有する白色ポリアミド12粉末、PrimePart FR(PA 2241 FR)の難燃剤を有するポリアミド12、PA 3200 GFのガラスビーズ充填ポリアミド12、PAEKであるEOS PEEK HP3、EOS PP1101のポリプロピレン(未充填)、Alumide(登録商標)のポリアミド12のアルミニウム充填粉末、CarbonMide(登録商標)のポリアミド12の炭素繊維強化粉末、PrimeCast(登録商標)101のポリスチレン粉末、PrimePart PLUS(PA 2221)のポリアミド12粉末、及びPrimePart(登録商標)ST(PEBA 2301)が供給されており;またEOSからは、Advanced Laser Materials(ALM)の3D粉末である、ALM HP 11-30の炭素繊維強化ポリアミド11粉末、ALM FR-106の難燃剤を有するポリアミド11、及びALM PA 640-GSLの中空ガラス微小球充填ポリアミド12も市販されており;ALMからは、3D PA 802-CFの炭素充填ポリアミド11、TPE 210の熱可塑性エラストマー、PS 200のポリスチレン、PA D80-STの未充填ポリアミド11、PA 650の未充填ポリアミド12、PA 250の未充填ポリアミド12、PA 840-GSLのガラス球充填ポリアミド11、FR-106の難燃性ポリアミド11、PA 606-FRの難燃性ポリアミド12、PA850及びPA 860の未充填ポリアミド11、PA 614-GS、PA 615-GS、PA 616-GS、及びPA 640-GSLのガラス球充填ポリアミド12、PA 603-CFの炭素繊維充填ポリアミド12、PA 605-Aのアルミニウム充填ポリアミド12、PA 620-MFの鉱物線維充填ポリアミド12、PA 415-GSのガラス球充填ポリアミド12、HT-23のPEKK炭素繊維充填、TPE 360のコポリエステル、HP 11-30の炭素繊維充填ポリアミド11、及びTPE 300のTPUエラストマー粉末が供給されている。
【0067】
実施形態では、組成物は、直径約70ナノメートル~約250ナノメートルの粒径を有する有機架橋表面添加剤を含む、第2のより大きな有機ポリマー又はコポリマー添加剤を更に含んでもよい。これらのより大きな粒子のコポリマー表面添加剤は、直径約70ナノメートル~約250ナノメートル、又は直径約80ナノメートル~約200ナノメートル、又は約80~約115ナノメートルの平均又はメジアン粒径(d50)を有し得る。有利なことに、本開示の教示は、所望の粒径、すなわち実施形態では本明細書に記載のコポリマーのサイズに到達するのを容易にする。
【0068】
有機架橋表面添加剤を含む第2のより大きなサイズのコポリマー有機添加剤が存在する場合、基材のトナー粒子の100重量部に基づいて、約0.1重量部~約5重量部、又は約0.2重量部~約0.4重量部、又は0.3重量部~約1.5重量部の量で存在し得る。
【0069】
三次元印刷粉末組成物は、有機ポリマー又はコポリマー添加剤の平均D50粒径が少なくとも10ナノメートル異なる、2種以上のエマルション重合ラテックス有機ポリマー又はコポリマー添加剤を含んでもよい。実施形態では、三次元印刷組成物は、2種以上の有機ポリマー添加剤を含み、第1の有機ポリマー添加剤は、第1の平均D50粒径を有し、第2の有機ポリマー添加剤は、第2の平均D50粒径を有し、第1及び第2の平均D50粒径は、少なくとも約10ナノメートル異なる。
【0070】
有機ポリマー添加剤として利用されるコポリマーは、実施形態では、それらの高架橋の性質により、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に溶解しない。したがって、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)を測定することができない。
【0071】
有機ポリマー添加剤として利用されるポリマー又はコポリマーは、約45℃~約200℃のガラス転移温度(Tg)を有し得る。実施形態では、有機ポリマー添加剤は、約85℃~約140℃、実施形態では約100℃~約130℃のガラス転移温度を有する。
【0072】
有機ポリマー表面添加剤組成物は、有機ポリマー表面添加剤が、3D印刷粉末の重量に基づいて約0.1重量%~約2重量%、又は約0.2重量%~約1.4重量%、又は約0.3重量%~約1重量%の量で存在するように、3D印刷粉末と組み合わされてもよい。特定の実施形態では、約20ナノメートル~70ナノメートル未満の体積平均粒径を有する有機ポリマー表面添加剤は、基材の3D印刷粉末の100重量部に基づいて、約0.1重量部~約2重量部の量で存在する。実施形態では、ポリマー組成物は、3D粉末粒子の表面積の約5%~約100%、又は約10%~約100%、又は約20%~約50%を被覆してもよい。
【0073】
実施形態では、有機ポリマー添加剤は、三次元印刷粉末の重量に基づいて約0.01~約5重量部の総表面添加量を有する。
【0074】
実施形態では、三次元印刷粉末及び有機ポリマー添加剤は、次式に従って混合物を形成するように組み合わされる。
0.2<(w●D●P)/(0.363●d●p)<1.2
【0075】
式中、三次元印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、wは、有機ポリマー添加剤のエマルション中のエマルション又は有機ポリマー添加剤の固体添加量に基づいて百分率単位で混合物に添加されるとき、混合物に添加される有機ポリマー添加剤のエマルションの重量である。
【0076】
実施形態では、本明細書の3D印刷組成物は、所望又は必要に応じて、上記の本開示の有機ポリマー又はコポリマー添加剤に加えて、他の任意の添加剤を含有してもよい。
【0077】
また、流動助剤添加剤を含む、3D印刷粉末用外添剤粒子とブレンドすることもできる。これらの添加剤の例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スズ、これらの混合物等の金属酸化物、AEROSIL(登録商標)などのコロイド状及び非晶性シリカ、金属塩、及びステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はUNILIN(商標)700などの長鎖アルコールを含む脂肪酸の金属塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。実施形態では、本明細書の3D印刷組成物は、ステアリン酸塩、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるクリーニング添加剤を更に含む。
【0078】
実施形態では、シリカは、粉末流動、水吸着の低減、及びブロッキング温度の向上のために、3D粉末表面に適用され得る。チタニアは、粉末流動の改善、水吸着の低減のために、又は3D粒子を互いに付着させ得る3D粉末の帯電を低減するために、適用され得る。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸マグネシウムも、所望により、表面の潤滑性を提供するための外添剤として使用されてもよく、これは、粉末流動を助けることに加えて、水吸着を低減することができる。実施形態では、Ferro Corporationから入手される、Zinc Stearate Lとして知られる市販のステアリン酸亜鉛を使用してもよい。外部表面添加剤は、コーティングと共に、又はコーティングなしで使用されてもよい。
【0079】
実施形態では、3D印刷組成物は、シリカ表面添加剤、チタニア表面添加剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを更に含む。実施形態では、3D印刷組成物は、シリカ添加剤、チタニア添加剤、又はこれらの組み合わせを含み、シリカ又はチタニア添加剤のうちの少なくとも1つは疎水処理を有し、実施形態では、シリカ又はチタニア添加剤のうちの1つ以上は、ポリジメチルシロキサン疎水処理を有する。
【0080】
これらの外添剤のそれぞれは、3D印刷粉末の約0百分率~約3百分率、実施形態では、3D印刷粉末の約0.25百分率~約2.5百分率の量で存在してもよいが、添加剤の量はこれらの範囲外であってもよい。実施形態では、トナーは、例えば、約0百分率~約3百分率のチタニア、約0百分率~約3百分率のシリカ、及び約0百分率~約3百分率のステアリン酸亜鉛を含んでもよい。
【0081】
実施形態では、本開示の有機ポリマー添加剤に加えて、3D印刷組成物はまた、3D印刷粒子の約0.1重量部~約5重量部、実施形態では、3D印刷粉末の約0.2重量部~約2重量部の量でシリカを有してもよく、かつ3D印刷粉末の約0重量部~約3重量部、実施形態では、3D印刷粉末の約0.1重量部~約1重量部の量でチタニアを有してもよい。
【0082】
本明細書の3D印刷組成物は、任意の好適な又は所望のプロセスに使用することができる。3D印刷組成物は、印刷プロセスで使用することができ、実施形態では、レーザービーム溶融印刷プロセス又は選択的レーザー焼結プロセスで使用することができる。実施形態では、本明細書の方法は、三次元印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に有機ポリマー添加剤を有し、所望により、三次元印刷粉末の外部表面の少なくとも一部分上に無機添加剤を更に有する、三次元印刷粉末を提供することと、有機ポリマー添加剤及び任意の無機添加剤を有する三次元印刷粉末をレーザーに露光させて、三次元印刷粉末を融合させることと、を含む。
【0083】
また、本明細書に記載の3D印刷組成物を提供することと、3D印刷組成物をレーザーに露光させて印刷粉末を融合させることとを含む、選択的レーザー焼結方法も提供される。
【0084】
任意の三次元プリンタ又はSLSプリンタのタイプを用いることができる。
【0085】
有機ポリマーラテックス添加剤は、エマルション重合によって生成された。5ガロンの作業高を、77℃で1時間、後処理し、次いで2時間で87℃まで昇温した後、℃で1時間処理した。2Lの作業高を、77℃で1時間、後処理した。
【0086】
70ナノメートルを超える粒径は、流動を低下させることがあるが、優れた耐ブロッキング性を提供することが発見された。約70ナノメートル未満の粒径は、流動の改善をもたらし、同様にいくらかの耐ブロッキング性を提供するであろう。実施形態では、小さいサイズのラテックス、すなわち実施形態では直径約47ナノメートルのラテックスを調製し、3D粒子の流動の改善を実証した。
【0087】
5ガロンのポリマーラテックスの調製プロセス。ポリマーラテックスを、半連続的starve-fedエマルション重合プロセスによって合成した。可搬式タンク中で、922.14グラムの20.9% Tayca BN2060溶液及び3.591キログラムの脱イオン水を含有する界面活性剤溶液に、2.671キログラムのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、0.9キログラムのジビニルベンゼン55%技術グレード(DVB-55)、及び28.81グラムの2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)のモノマーを混合することにより、乳化されたモノマー混合物を調製した。
【0088】
5ガロンの反応槽中で、395.2グラムの20.9% Tayca BN2060溶液を9.265キログラムの脱イオン水と混合することにより、別の水相混合物を調製し、次いで225rpmで連続混合しながら77℃に加熱した。3%の乳化モノマーを反応器に添加し、最低15分間混合することにより、ポリマーシードを調製した。反応器の温度が約77℃に達した後、0.403キログラムの脱イオン水及び13.83グラムの過硫酸アンモニウム(APS)の開始剤溶液を7分間かけて添加し、シード粒子を重合させた。15分の待機時間後、残りの乳化モノマーを、制御された供給速度で反応器に2時間にわたって添加して、ポリマーシード粒子を重合及び成長させた。モノマー供給が完了したら、反応器を反応温度で更に1時間保持した後、2時間かけて87℃の高温まで昇温し、更に2時間保持して、残留モノマー濃度を低下させた。反応後プロセス中、pHを5.5~6.0に維持するように、ラテックスを0.1M水酸化ナトリウム(NaOH)溶液で緩衝化した。次いで、ラテックスを室温まで冷却し、5マイクロメートルの溶着ポリプロピレンフィルタバッグを通して排出した。得られた生成物は、約20重量%の固形分を含有する水性ポリマーラテックスであった。ラテックスの最終粒径は、47ナノメートルであった。粒径は、Nanotrac NPA252を使用して、以下の設定を用いて測定した。分布-体積、数列-Geom 4 Root、残差-有効、粒子屈折率-1.59、透明性-透明、及び粒子形状-球状。
【0089】
5ガロンのラテックスの一部分を、Yamato Scientific Co.から入手可能なデュアル液体ノズルDL41スプレードライヤーを使用して、以下の乾燥条件を用いて噴霧乾燥した。
【0090】
噴霧圧力:4kgf/cm2
サンプル供給速度:3(0.6リットル/分)
温度:140℃
アスピレータ流速:4m3/分
【0091】
乾燥したラテックスの部分から、約90グラムの乾燥ラテックスを生成した。
【0092】
表1は、有機ポリマー添加剤の実施例の配合を示す。表2は、プロセスパラメータを示す。表3は、粒径及び残留モノマーを示す。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
3Dポリマー粉末は、PA12、PA11などのポリアミド、高密度ポリエチレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリアルカノエート(PHB、PHV)及び他のポリエステル、PEEKなどから構成され得る。
【0097】
本発明の実施形態のために選択された3D粒子は、実施例11に記載されるように、カナダのXerox Research Centerで調製された、平均サイズが約54マイクロメートル、粒子の真密度が1.14g/cm3のPA12粉末であった。
【0098】
図1、
図2、
図3、及び
図4は、不規則形状のPA12粒子の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を示す。
図1は、50X倍率のPA12粒子のSEM画像を示す。
図2は、100X倍率のPA12粒子のSEM画像を示す。
図3は、400X倍率のPA12粒子のSEM画像を示す。
図4は、600X倍率のPA12粒子のSEM画像を示す。
【0099】
図5は、比較例13に記載される乾式ブレンドによって上部に配置された有機添加剤を有する、15,000X倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0100】
図6は、実施例14に記載される水性湿式ブレンドによって上部に配置された有機添加剤を有する、15,000X倍率のPA12ポリアミド粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0101】
実施例11
50ガロンの反応器に、12.63キログラムのポリアミドPA12粒状樹脂及び126.3グラムの50マイクロメートルシリカゲル粉末を添加し、不活性雰囲気下で高温で混合しながら129.85キログラムのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に溶解させる。180℃において全てのポリマーが溶解したら、溶液を130℃まで急冷し、溶液からポリマーを沈殿させる。この材料を撹拌しながら室温まで更に冷却した後、排出し、更なるNMPで洗浄し、次いで脱イオン水及びメタノールで洗浄する。例えば90℃の高温で材料を真空乾燥し、その後、添加剤ブレンドのために必要になるまで保管する。これらの粒子の平均サイズは、54マイクロメートルであった。
【0102】
有機ポリマー添加剤ブレンド
数学的に、球状の有機表面添加剤がより大きな粒子表面を被覆するための一般的な理想式は、以下によって与えられる。
0.2<(w●D●P)/(0.363●d●p)<1.2
【0103】
式中、3D粉末について、Dは、マイクロメートル単位のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm3単位の真密度であり、有機エマルション重合ラテックスについて、dは、ナノメートル単位のD50平均サイズであり、pは、グラム/cm3単位の真密度であり、wは、乾燥重量ベースの、すなわちポリマーラテックスの固形分に基づく、pph単位の混合物に添加される重量である。
【0104】
式中、三次元印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm3単位の真嵩密度であり、wは、有機ポリマー添加剤のエマルション中の有機ポリマー添加剤のエマルションの固体添加量に基づく百分率単位の、混合物に添加される有機ポリマー添加剤のエマルションの重量である。
【0105】
一般に、流動又はブロッキング性の範囲に対して有効な添加剤の量は、全被覆の約0.2~1.2であり得る。0.2の値は、表面の0.2が被覆されていることを示し、1の値は、表面の全被覆を示す。粒子がいくらかの表面粗さを有するか、又は真球状ではない場合、それらの表面積は、サイズ及び密度に基づいて予想されるよりも高いため、幾分高い被覆率を必要とするであろうことから、式に示されるように、1.2ほど高い値が求められ得る。
【0106】
PA12粉末は、粒径が54マイクロメートル、密度が1.15g/cm3であり、実施例10の有機添加剤は、粒径が47ナノメートル、密度が1.14g/cm3であるため、ほぼ全被覆の場合、w=0.32pphである。
【0107】
粒子形状は、流動性粉末を誘導するために球状であることも望ましい。粒子流動を得るために、空気を含んだ嵩密度及びタップ嵩密度を測定し、次にそのデータを使用してハウスナー比(HR)を計算する。材料がハウスナー比(HR)<1.25を有すると、流動性粉末挙動を示し、適度な流動性としては1.25~1.5であり、HR>1.5は、高い凝集力による流動化問題を有する流動性の悪い粉末を意味する。粒子密度は、粒子形状によって影響される流動床密度に影響を与える。粉末流動の代替的な測定値は安息角であり、安息角が小さいほど粉末の流動は良くなる。以下の表4は、R.L.Carr,Evaluating Flow Properties of Solids,Chem.Eng.1965,72,163-168に従って流動を分類する。
【0108】
【0109】
比較例12
実施例11のPA12粒子の50グラムを使用して、粒子の嵩密度及び安息角を評価した。空気を含んだ嵩密度及びタップ嵩密度の両方を測定し、表面添加剤を含まない場合のハウスナー比として報告される圧密化を決定するために使用した。表4を参照されたい。
【0110】
比較例13
乾式ブレンドプロセスで添加された有機添加剤を有するPA12。実施例10の有機添加剤の乾燥粒子を0.32pph(1.5グラム)で、50グラムの実施例11のPA12粉末に添加し、研究室用SKM Millで13,500rpmで30秒間混合した。ブレンド工程が完了した後、ブレンドされた材料を150マイクロメートルのステンレス鋼ふるいを通して篩分けし、材料を容器に入れ、流動及び安息角について評価した。
【0111】
実施例14
水分散液に添加された有機添加剤を有するPA12。95グラムの実施例12の乾燥PA12粉末を、100グラムのTriton(商標)-X(ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル、Sigma-Aldrich(登録商標))1重量%及び200ミリリットルの脱イオン水で再分散させた。このスラリーを、Branson Digital Sonifier(登録商標)を用いて20~30秒間超音波処理した。実施例10の有機添加剤の未乾燥粒子を、乾燥固体添加量ベースに基づいて0.32pph(固形分18.60%においてラテックスの1.62グラム)で、スラリーに撹拌しながら滴下して添加した。スラリーを凍結乾燥機ボトルに注ぎ、VirTis Freezemobileで凍結し、Dura-Dry(登録商標)凍結乾燥機で48時間乾燥させた。乾燥したブレンド粒子の含水量は0.97%であった。
【0112】
乾燥したPA12粉末などの乾燥した3D粉末を使用してもよいが、3D粉末を乾燥させる必要はない。実施形態では、ポリマーラテックス添加剤は、3D粉末を乾燥させる前に添加される。3D粉末が乾燥されていない場合、3D粉末を再分散するために必要な界面活性剤はより少なくなるか又は恐らく不要であるが、いずれの場合にも使用される再分散工程は同様である。
【0113】
比較例12、比較例13、及び実施例14の流動性の評価を表5に示す。
【0114】
【0115】
実施例は、湿式添加による有機ポリマー添加剤が、ハウスナー比に基づいて中程度に流動する粉末から流動性の粉末へと3D粉末を効果的に変化させ、安息角を低下させる著しい改善を提供したことを示す。表4によると、元のPA12粒子は、流動が40度で「並-補助を必要としない」(補助はここでは流動助剤を意味する)の端に位置する境界線上にあり、「まずまず-動かなくなることがある」の41度に近い。湿式添加によって添加された有機ポリマー添加剤では、流動は、安息角に基づいて「良い」と評価される。湿式添加は、ポリマーラテックス添加剤の乾燥コストを回避しながら、乾式ブレンドと同様の有効性を有する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕プロセスであって、
三次元印刷粉末、任意の分散剤、及び水を含む、三次元印刷粉末分散液を提供することと、
有機ポリマー添加剤のエマルションを提供することと、
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを合わせて、前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとを含む混合物を形成することと、
前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を乾燥させることと、を含む、プロセス。
〔2〕前記三次元印刷粉末が事前に乾燥されていない、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕前記任意の分散剤が存在し、
前記分散剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む界面活性剤である、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔4〕前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーを含むか、又は
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種の架橋性重合性モノマーを含むか、又は
前記有機ポリマー添加剤が、少なくとも1種の非架橋性重合性モノマーと少なくとも1種の架橋性重合性モノマーとの組み合わせを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔5〕前記有機ポリマー添加剤が、約3~約8の高い炭素対酸素比を有する第1のモノマーと、所望により、2つ以上のビニル基を含む第2のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマー中に、前記コポリマーの重量に基づいて約8重量%超~約40重量%の量で存在する、第2のモノマーと、所望により、アミンを含む第3のモノマーであって、存在する場合、前記コポリマーの重量に基づいて約0.1重量%~約1.5重量%の量で存在する、第3のモノマーと、を含む、ポリマー又はコポリマーである、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔6〕前記有機ポリマー添加剤が、2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーを含み、
前記2つ以上のビニル基を含有する架橋性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて0重量%超~約40重量%の量で存在する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔7〕前記有機ポリマー添加剤が、酸性モノマー、塩基性モノマー、又はこれらの組み合わせを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔8〕前記有機ポリマー添加剤が、窒素含有基を有する塩基性モノマーを含み、
前記窒素含有基を有する塩基性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約1.5重量%未満の量で存在する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔9〕前記有機ポリマー添加剤が、アクリル酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される酸性基を有する酸性モノマーを含み、
前記酸性モノマーが、前記有機ポリマー添加剤中に、前記有機ポリマー添加剤の総重量に基づいて約4重量%未満の量で存在する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔10〕前記有機ポリマー添加剤が、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるモノマーを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔11〕前記有機ポリマー添加剤が、約30ナノメートル~約140ナノメートルの体積平均粒径を有するラテックス粒子を含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔12〕前記組成物が、2種以上の有機ポリマー添加剤を含み、
第1の有機ポリマー添加剤が、第1の平均D50粒径を有し、
第2の有機ポリマー添加剤が、第2の平均D50粒径を有し、
前記第1及び第2の平均D50粒径が、少なくとも約10ナノメートル異なる、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔13〕前記有機ポリマー添加剤が、前記三次元印刷粉末の重量に基づいて約0.01~約5重量部の総表面添加量を有する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔14〕前記三次元印刷粉末及び前記有機ポリマー添加剤が、次式に従って混合物を形成するように組み合わされ、
0.2<(w●D●P)/(0.363●d●p)<1.2
式中、前記三次元印刷粉末について、Dは、マイクロメートル単位の前記粉末のD50平均サイズであり、Pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、
前記有機ポリマー添加剤について、dは、ナノメートル単位のD50平均粒径であり、pは、グラム/cm
3
単位の真嵩密度であり、wは、前記有機ポリマー添加剤のエマルション中の前記有機ポリマー添加剤のエマルションの固体添加量に基づく百分率単位の、前記混合物に添加される前記有機ポリマー添加剤のエマルションの重量である、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔15〕前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含み、
前記界面活性剤が、約45mN/m未満の最小表面張力を有する、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔16〕前記有機ポリマー添加剤のエマルションが、少なくとも1種のモノマーと界面活性剤とのエマルション重合によって生成されたラテックス粒子を含み、
前記界面活性剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群のメンバーを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔17〕前記三次元ポリマー印刷粉末が、ポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアルカノエート、ポリエステル、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリアルキルシロキサン、フッ素化ポリマー、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)アクリレート、及びPFPEメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され、
所望により、前記三次元印刷粉末が、非ポリマー材料で充填されている、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔18〕前記三次元ポリマー印刷粉末が、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,12(PA6,12)、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリオキシメチレン(POM);ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアクリレート及びポリスチレン-アクリレート;ポリウレタン(PU)、ポリアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔19〕前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を印刷プロセスで使用することを更に含み、
前記印刷プロセスが、前記有機ポリマー添加剤及び任意の無機添加剤を有する前記三次元印刷粉末をレーザーに露光させて、前記三次元印刷粉末を融合させることを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔20〕前記三次元印刷粉末分散液と前記有機ポリマー添加剤のエマルションとの混合物を印刷プロセスで使用することを更に含み、
前記印刷プロセスが、レーザービーム溶融印刷プロセス又は選択的レーザー焼結プロセスを含む、前記〔1〕に記載のプロセス。