(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及びエアバッグ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/237 20060101AFI20250310BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
B60R21/237
B60R21/203
(21)【出願番号】P 2020106338
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】野々山 剛
(72)【発明者】
【氏名】有松 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 一行
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】草柳 嵩文
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-501354(JP,A)
【文献】特開2005-238973(JP,A)
【文献】特開平10-100838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229685(US,A1)
【文献】特開平10-006899(JP,A)
【文献】特表2008-510642(JP,A)
【文献】特開平11-059307(JP,A)
【文献】特開平04-046842(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0061233(KR,A)
【文献】特開2014-221577(JP,A)
【文献】特開2013-086707(JP,A)
【文献】特開2008-114721(JP,A)
【文献】特開平11-091472(JP,A)
【文献】特開2002-316605(JP,A)
【文献】特表2000-514752(JP,A)
【文献】特開平04-368251(JP,A)
【文献】特開2006-103667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを噴射するインフレータ(11)と、
ステアリングホイール(2)の中央部に設けられたハウジング(12)に、
運転者から見た左右方向に押し潰されてから上下方向に押し潰されたように圧縮された状態で収容されており、前記インフレータ(11)が噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッション(3)と
を備えるエアバッグ装置(1)であって、
前記エアバッグクッション(3)は、膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の下部側に位置する部分が前記中央部に位置する部分に向けて
前記運転者に面する側に折り返してある折り返し部(3a)を有し
、更に、前記折り返し部(3a)の先端部分が、前記折り返し部(3a)の折り線(3b)に重なるように、前記下部側に向けて前記運転者に面する側にもう一度折り返してある状態で圧縮してあり、
前記エアバッグクッション(3)はディフューザ(34)を備え、
該ディフューザ(34)の、前記エアバッグクッション(3)の膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分には、開口が形成されており、
前記ディフューザ(34)は、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くことを特徴とするエアバッグ装置(1)。
【請求項2】
前記エアバッグクッション(3)は、
膨張展開時に前記運転者に面する円形のフロントパネル(31)と、
周縁部が前記フロントパネル(31)の周縁部に固定されており、中央部に前記インフレータ(11)との接続孔が設けられている円形のバックパネル(32)と
を備えることを特徴とする請求項
1に記載のエアバッグ装置(1)。
【請求項3】
ガスを噴射するインフレータ(11)と、
ステアリングホイール(2)の中央部に設けられたハウジング(12)に、
運転者から見た左右方向に押し潰されてから上下方向に押し潰されたように圧縮された状態で収容されており、前記インフレータ(11)が噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッション(3)と
を備えるエアバッグ装置(1)を製造する方法であって、
前記エアバッグクッション(3)を圧縮する前に、前記エアバッグクッション(3)の、膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の下部側に位置する部分を、前記中央部に位置する部分に向けて、
前記運転者に面する側に折り返し
て折り返し部(3a)を形成し、
更に、前記折り返し部(3a)の先端部分が、前記折り返し部(3a)の折り線(3b)に重なるように、前記下部側に向けて前記運転者に面する側にもう一度折り返し、
折り返した前記エアバッグクッション(3)を圧縮し、
圧縮した前記エアバッグクッション(3)を前記ハウジング(12)に収容し、
前記エアバッグクッション(3)の膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分に開口が形成されており、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くディフューザ(34)を、前記エアバッグクッション(3)を圧縮する前に該エアバッグクッション(3)に配することを特徴とするエアバッグ装置(1)の製造方法。
【請求項4】
折り返した前記エアバッグクッション(3)を圧縮する前に、前記エアバッグクッション(3)の折り返した部分を、該部分が重なる部分に仮止めすることを特徴とする請求項
3に記載のエアバッグ装置(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置及びエアバッグ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両にエアバッグ装置が装備されている。運転席用のエアバッグ装置の場合、ステアリングホイールの中央部にエアバッグクッション及びインフレータが収容されている。車両の運転者は運転席に着座し、ステアリングホイールを把持して車両を運転する。インフレータは車両衝突時に作動する。エアバッグクッションはインフレータの噴射ガスによって膨張する。膨張したエアバッグクッションは、ステアリングホイールを運転者に面する側から覆うように展開し、運転者の上半身を受け止める。この結果、運転者はステアリングホイールへの二次衝突から保護される。このようなエアバッグ装置は、例えば特許文献1,2に記載されている。
【0003】
以下では、車両の直進走行時におけるステアリングホイールを時計の文字盤と見立てて、ステアリングホイールの上部側/下部側を12時側/6時側といい、運転者から見てステアリングホイールの右部側/左部側を3時側/9時側という。
膨張展開時のエアバッグクッションにおいて、12時側の部分は運転者の頭を受け止めることが多く、6時側の部分は運転者の胴を受け止めることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/035994号
【文献】特開2017-128279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
運転者を有効に保護するためには、エアバッグクッションが速やかに展開する必要がある。また、エアバッグクッションから運転者に加わる外力が運転者の頭に集中することがないように、エアバッグクッションから運転者に加わる外力を運転者の上半身全体に分散させる必要がある。
しかしながら、エアバッグクッションの12時側の部分の展開が早すぎると、エアバッグクッションから運転者に加わる外力が運転者の頭に集中する虞がある。故に、エアバッグクッションの6時側の部分をより速やかに展開させることが望まれている。
【0006】
特許文献1に記載のエアバッグ装置の場合、エアバッグクッションは、12時側、3時側、6時側、及び9時側から中心に向けて押し潰されるようにして圧縮してある。故に、エアバッグクッションが12時側にも6時側にも均等に膨張展開する。即ち、6時側の部分をより速やかに展開させることはできない。
【0007】
特許文献2に記載のエアバッグ装置の場合、エアバッグクッションは、12時側の部分を運転者に面する側の逆側に折り返した後で折り畳むことによって圧縮してある。折り返された部分は、運転者に近づく方向には展開しにくいので、6時側の部分が運転者を受け止めるタイミングを相対的に早めることができる。しかしながら、12時側の部分が運転者を受け止めるタイミングを遅らせることなく、6時側の部分が運転者を受け止めるタイミングを早めるための技術事項は特許文献2には開示されていない。
【0008】
本開示の目的は、エアバッグクッションから運転者に加わる外力を運転者の上半身全体に分散させることができるエアバッグ装置及びエアバッグ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るエアバッグ装置は、ガスを噴射するインフレータと、ステアリングホイールの中央部に設けられたハウジングに、圧縮された状態で収容されており、前記インフレータが噴射したガスによって膨張展開するエアバッグクッションとを備えるエアバッグ装置において、前記エアバッグクッションは、膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の下部側に位置する部分が前記中央部に位置する部分に向けて運転者に面する側に折り返してある折り返し部を有した状態で圧縮してあることを特徴とする。
本開示に係るエアバッグ装置は、ガスを噴射するインフレータと、ステアリングホイールの中央部に設けられたハウジングに、圧縮された状態で収容されており、前記インフレータが噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッションとを備えるエアバッグ装置であって、前記エアバッグクッションは、膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の下部側に位置する部分が前記中央部に位置する部分に向けて運転者に面する側に折り返してある折り返し部を有した状態で圧縮してあり、前記エアバッグクッションはディフューザを備え、該ディフューザの、前記エアバッグクッションの膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分には、開口が形成されており、前記ディフューザは、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くことを特徴とする。
本開示に係るエアバッグ装置は、ガスを噴射するインフレータ(11)と、ステアリングホイール(2)の中央部に設けられたハウジング(12)に、運転者から見た左右方向に押し潰されてから上下方向に押し潰されたように圧縮された状態で収容されており、前記インフレータ(11)が噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッション(3)とを備えるエアバッグ装置(1)であって、前記エアバッグクッション(3)は、膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の下部側に位置する部分が前記中央部に位置する部分に向けて前記運転者に面する側に折り返してある折り返し部(3a)を有し、更に、前記折り返し部(3a)の先端部分が、前記折り返し部(3a)の折り線(3b)に重なるように、前記下部側に向けて前記運転者に面する側にもう一度折り返してある状態で圧縮してあり、前記エアバッグクッション(3)はディフューザ(34)を備え、該ディフューザ(34)の、前記エアバッグクッション(3)の膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分には、開口が形成されており、前記ディフューザ(34)は、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くことを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、エアバッグクッションが、折り返し部を有した状態で圧縮されている。折り返し部は、エアバッグクッションの6時側の部分を、エアバッグクッションの中央部分に向けて、エアバッグクッションの運転者に面する側に折り返すことによって形成された部分である。
【0011】
ここで、6時側の部分とは、膨張展開時にステアリングホイールの6時側(車両の直進走行時におけるステアリングホイールの下部側)に位置する部分であり、中央部分とは、膨張展開時にステアリングホイールの中央部に位置する部分である。
以下では、膨張展開時にステアリングホイールの12時側に位置する部分を、12時側の部分という。
【0012】
圧縮されたエアバッグクッションは、ステアリングホイールの中央部に設けられたハウジングに収容されている。
インフレータが作動した場合、エアバッグクッションは膨張展開する。折り返し部は、中央部分の膨張により、12時側の部分よりも早くハウジングから押し出され、運転者に近づきつつ6時側に展開する。
【0013】
つまり、エアバッグクッションの6時側の部分(運転者の胴を受け止める部分)を、より速やかに展開させることができる。従って、エアバッグクッションから運転者に加わる外力が運転者の頭に集中することなく、エアバッグクッションから運転者に加わる外力を運転者の上半身全体に分散させることができる。
【0014】
本開示に係るエアバッグ装置は、前記エアバッグクッションは、前記運転者から見た左右方向に押し潰されてから上下方向に押し潰されたように圧縮してあることを特徴とする。
【0015】
本開示にあっては、エアバッグクッションが3時-9時方向に押し潰されてから6時-12時方向に押し潰されたように圧縮してある。故に、インフレータが作動した場合、6時-12時方向の膨張展開の方が3時-9時方向の膨張展開よりも優先的に起きる。従って、エアバッグクッションの6時側の部分を更に速やかに展開させることができる。
【0016】
本開示に係るエアバッグ装置は、前記エアバッグクッションは、膨張展開時に前記運転者に面する円形のフロントパネルと、周縁部が前記フロントパネルの周縁部に固定されており、中央部に前記インフレータとの接続孔が設けられている円形のバックパネルとを備えることを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、エアバッグクッションが各円形のフロントパネル及びバックパネルを備える。フロントパネルの周縁部とバックパネルの周縁部とは互いに固定されている。この結果、エアバッグクッションは正面視円形状をなす。
このようなエアバッグクッションは、フロントパネルとバックパネルとを互いに重ねやすいので、エアバッグ装置の製造時に、6時側の部分を容易に折り返すことができる。
【0018】
本開示に係るエアバッグ装置は、前記エアバッグクッションは、前記折り返し部の先端部分が前記下部側に向けて前記運転者に面する側に折り返してある状態で圧縮してあることを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、エアバッグクッションが、2回折り返されてなる折り返し部を有した状態で圧縮されている。2回目の折り返しは、1回目に折り返された部分の先端部分を、6時側に向けて、エアバッグクッションの運転者に面する側に折り返すようにして行なわれる。
エアバッグクッションの膨張展開時に、2回目に折り返された部分は運転者に向けて押し出され易く、1回目に折り返された部分は6時側に展開し易い。故に、エアバッグクッションの6時側の部分を運転者に向けて膨張展開させることとエアバッグクッションの6時側の部分を速やかに展開させることとを両立させることができる。
【0020】
本開示に係るエアバッグ装置の製造方法は、ガスを噴射するインフレータと、ステアリングホイールの中央部に設けられたハウジングに、圧縮された状態で収容されており、前記インフレータが噴射したガスによって膨張展開するエアバッグクッションとを備えるエアバッグ装置を製造する方法において、前記エアバッグクッションを圧縮する前に、前記エアバッグクッションの、膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の下部側に位置する部分を、前記中央部に位置する部分に向けて、運転者に面する側に折り返し、折り返した前記エアバッグクッションを圧縮し、圧縮した前記エアバッグクッションを前記ハウジングに収容することを特徴とする。
本開示に係るエアバッグ装置の製造方法は、ガスを噴射するインフレータと、ステアリングホイールの中央部に設けられたハウジングに、圧縮された状態で収容されており、前記インフレータが噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッションとを備えるエアバッグ装置を製造する方法であって、前記エアバッグクッションを圧縮する前に、前記エアバッグクッションの、膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の下部側に位置する部分を、前記中央部に位置する部分に向けて、運転者に面する側に折り返し、折り返した前記エアバッグクッションを圧縮し、圧縮した前記エアバッグクッションを前記ハウジングに収容し、前記エアバッグクッションの膨張展開時に前記ステアリングホイールの直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分に開口が形成されており、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くディフューザを、前記エアバッグクッションを圧縮する前に該エアバッグクッションに配することを特徴とする。
本開示に係るエアバッグ装置の製造方法は、ガスを噴射するインフレータ(11)と、ステアリングホイール(2)の中央部に設けられたハウジング(12)に、運転者から見た左右方向に押し潰されてから上下方向に押し潰されたように圧縮された状態で収容されており、前記インフレータ(11)が噴射した前記ガスによって膨張展開するエアバッグクッション(3)とを備えるエアバッグ装置(1)を製造する方法であって、前記エアバッグクッション(3)を圧縮する前に、前記エアバッグクッション(3)の、膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の下部側に位置する部分を、前記中央部に位置する部分に向けて、前記運転者に面する側に折り返して折り返し部(3a)を形成し、更に、前記折り返し部(3a)の先端部分が、前記折り返し部(3a)の折り線(3b)に重なるように、前記下部側に向けて前記運転者に面する側にもう一度折り返し、折り返した前記エアバッグクッション(3)を圧縮し、圧縮した前記エアバッグクッション(3)を前記ハウジング(12)に収容し、前記エアバッグクッション(3)の膨張展開時に前記ステアリングホイール(2)の直進走行時の上部側及び前記下部側夫々に位置する部分に開口が形成されており、前記ガスの流れを整え、前記ガスを前記上部側及び前記下部側に導くディフューザ(34)を、前記エアバッグクッション(3)を圧縮する前に該エアバッグクッション(3)に配することを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、エアバッグクッションが圧縮され、圧縮されたエアバッグクッションがステアリングホイールのハウジングに収容される。
ただし、エアバッグクッションの圧縮前に、製造者は、エアバッグクッションの6時側の部分を中央部分に向けて運転者に面する側に折り返す。
以上の結果、本開示に係るエアバッグ装置を製造することができる。
【0022】
本開示に係るエアバッグ装置の製造方法は、折り返した前記エアバッグクッションを圧縮する前に、前記エアバッグクッションの折り返した部分を、該部分が重なる部分に仮止めすることを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、製造者は、折り返したエアバッグクッションの圧縮前に、エアバッグクッションの折り返した部分を、エアバッグクッションにおける折り返した部分が重なる部分に仮止めする。故に、エアバッグクッションの折り返し後、エアバッグクッションの圧縮が完了するまでの間に、エアバッグクッションの折り返しが解除されてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示のエアバッグ装置及びエアバッグ装置の製造方法によれば、エアバッグクッションから運転者に加わる外力を運転者の上半身全体に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態1に係るエアバッグ装置の断面図である。
【
図2】直進走行時のステアリングホイールの正面図である。
【
図3】展開状態のエアバッグクッションの背面図である。
【
図4】展開状態のエアバッグクッションの断面図である。
【
図7】エアバッグクッションの圧縮手順の説明図である。
【
図8】エアバッグクッションの圧縮手順の説明図である。
【
図9】エアバッグクッションの膨張展開を説明するための断面図である。
【
図10】エアバッグクッションの膨張展開を説明するための正面図である。
【
図11】実施の形態2に係るエアバッグ装置が備えるエアバッグクッションの正面図である。
【
図12】エアバッグクッションの膨張展開を説明するための断面図である。
【
図13】実施の形態3に係るエアバッグ装置が備えるエアバッグクッションの模式的な断面図である。
【
図14】エアバッグクッションの折り返し前の圧縮手順の説明図である。
【
図15】エアバッグクッションの折り返し前の圧縮手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0027】
実施の形態 1.
図1は、実施の形態1に係るエアバッグ装置の断面図である。
図中1はエアバッグ装置であり、図中2はステアリングホイールである。エアバッグ装置1はステアリングホイール2に装備されている。
図2は、直進走行時のステアリングホイール2の正面図である。
図1及び
図2に示すように、ステアリングホイール2はリム21を備える。リム21は円環状をなす。運転者は運転席に着座し、リム21を把持して車両を運転する。
【0028】
図2に向かって上側、右側、下側、及び左側が12時側、3時側、6時側、及び9時側である。6時-12時方向と3時-9時方向とは互いに直交する。
図1に向かって上側、及び、
図2に向かって手前側が、運転者に面する側である。以下では、運転者に面する側を運転者側といい、運転者に面する側の逆側を車両側という。
【0029】
図2に示すように、ステアリングホイール2はボス部22及び複数本のスポーク23を備える。
ボス部22はステアリングホイール2の中央部に設けられており、図示しないステアリングシャフトに接続されている。ボス部22とリム21との間にスポーク23が架け渡されている。リム21とボス部22とが一体的に回転するので、運転者によるリム21の回転操作がボス部22を介してステアリングシャフトに伝わり、ステアリングシャフトから図示しない車輪に伝わる。
【0030】
本実施の形態のステアリングホイール2は4本のスポーク23を備える。4本のスポーク23の内、2本はボス部22からリム21に向かって概ね3時側に延び、残る2本は概ね9時側に延びている。
図1におけるボス部22及びスポーク23の図示は省略している。
【0031】
図1に示すように、エアバッグ装置1はインフレータ11及びハウジング12を備える。
インフレータ11は円筒状をなし、点火によって爆発的にガスを発生させるガス発生剤を内蔵している。インフレータ11の点火は、例えば車両の衝突が検出された場合に行なわれる。インフレータ11の周壁には、複数の噴射口111が設けられている。点火されたインフレータ11は、噴射口111を通してガスを噴射させる。
【0032】
ハウジング12は収容器121と支持部材122とを備える。
収容器121は有底筒状をなす。収容器121の底板は、収容器121の内側から外力が加えられた場合に開放される構成である。
支持部材122は有底筒状をなす。インフレータ11は、支持部材122の底板を貫通するようにして、支持部材122に支持されている。
支持部材122の底板が収容器121の開口を閉鎖するようにして支持部材122が収容器121に取り付けられることによって、ハウジング12が形成される。
ハウジング12は、収容器121の底板が運転者側に向くようにして、ステアリングホイール2のボス部22に設けられている。
【0033】
エアバッグ装置1はエアバッグクッション3を備える。
後述するように、エアバッグクッション3は正面視円形の袋状をなし、圧縮された状態でハウジング12に収容されている。
インフレータ11は、噴射口111がエアバッグクッション3の内側に位置するようにしてエアバッグクッション3に接続されている。
【0034】
インフレータ11が噴射したガスによって、エアバッグクッション3は膨張する。膨張したエアバッグクッション3は、収容器121の底板を押し開いてハウジング12から運転者側に進出し、ステアリングホイール2の中央部を中心に、ステアリングホイール2を運転者側から覆うように展開し(
図2参照)、運転者の上半身を受け止める。
【0035】
図3は、展開状態のエアバッグクッション3の背面図である。
図4は、展開状態のエアバッグクッション3の断面図である。
エアバッグクッション3は、フロントパネル31及びバックパネル32を備える。フロントパネル31及びバックパネル32夫々は円形の布である。
バックパネル32の中央部にはインフレータ11との接続孔321が設けられている。接続孔321の周縁部は保護布323によって保護されている。バックパネル32には複数の排気孔322が設けられている。排気孔322はバックパネル32の12時側の周縁部に近い位置に配されている。膨張展開後、エアバッグクッション3からは排気孔322を通して徐々にガスが排出される。
【0036】
フロントパネル31の周縁部とバックパネル32の周縁部とは、フロントパネル31の外面とバックパネル32の外面とが重ね合わされた状態で、縫製により互いに固定される。縫製完了後、フロントパネル31及びバックパネル32夫々の外面が表側に向くようにして、エアバッグクッション3が裏返される。
エアバッグクッション3は、正面視円形の袋状をなす。フロントパネル31は、膨張展開時に運転者に面する。バックパネル32の中央部は、膨張展開時にステアリングホイール2の中央部に位置し、フロントパネル31の中央部は、バックパネル32の中央部よりも運転者側に位置する。
【0037】
エアバッグクッション3は、テザー33及びディフューザ34を備える。
テザー33は布製であり、帯状をなす。テザー33の長さ方向の中央部はフロントパネル31の中央部に取り付けられている。テザー33の長さ方向の両端部はバックパネル32の接続孔321の周縁部に取り付けられている。テザー33の一端部は接続孔321の3時側に配されており、テザー33の他端部は接続孔321の9時側に配されている。テザー33がフロントパネル31とバックパネル32との間に架け渡されているので、エアバッグクッション3が運転者側に膨張しすぎることが抑制される。
【0038】
ディフューザ34は布製であり、バックパネル32の接続孔321の周縁部に取り付けられている。ディフューザ34は天板341と2つの側板342とを備える。天板341はバックパネル32の接続孔321に対向している。2つの側板342は、天板341の3時側の端部及び9時側の端部をバックパネル32に連結している。ディフューザ34の12時側及び6時側には、天板341と2つの側板342とに囲まれた開口が形成されている。ディフューザ34は、インフレータ11から噴射されたガスの流れを整え、12時側及び6時側に導く。
【0039】
図5は、エアバッグクッション3の正面図である。
製造者は、展開状態のエアバッグクッション3を、フロントパネル31及びバックパネル32夫々の外面が上下に向くようにして、図示しない作業台に載置する。すると、フロントパネル31とバックパネル32とが、テザー33及びディフューザ34を介在して、互いに上下に重なる。
【0040】
次いで、製造者は、フロントパネル31及びバックパネル32夫々の6時側の部分を、フロントパネル31の中央部に向けて、フロントパネル31の側に折り返すことによって、折り返し部3aを形成する。エアバッグクッション3は、フロントパネル31とバックパネル32とを互いに重ねやすいので、6時側の部分を容易に折り返すことができる。
【0041】
エアバッグクッション3の半径Dの大小によらず、エアバッグクッション3の中心から折り線3bまでの距離Lは、半径Dの6割程度であることが望ましい、ということが、実験的に分かっている。例えば、半径Dが355mmである場合、距離L[mm]は205≦L≦225であることが望ましい。本実施の形態における距離Lは215mmである。
【0042】
製造者は、エアバッグクッション3の折り返し部3aを、エアバッグクッション3における折り返し部3aが重なる部分に仮止めする。図中35は仮止め部であり、仮止め部35が用いられる。仮止め部35は、切れやすい弱い糸によって縫製されてなる。折り返し部3aの仮止めは、エアバッグクッション3の膨張展開時に仮止め部35に加わる外力によって、容易に解除される。故に、折り返し部3aの仮止めがエアバッグクッション3の膨張展開を阻害する虞はない。
折り返し部3aの仮止め後、エアバッグクッション3は、次に説明する圧縮装置4を用いて圧縮される。
【0043】
図6は、圧縮装置4の部分断面図である。
圧縮装置4は、テーブル41及び天板42を備える。
テーブル41は矩形の載置面411を有する。天板42は、天板42の一面が載置面411に平行になるようにして、載置面411に対向している。
載置面411の一辺に沿う方向は、6時-12時方向に対応する。
【0044】
圧縮装置4は、2つの第1押圧部材43を備える。
第1押圧部材43は一方向に長い。第1押圧部材43は、長手方向が6時-12時方向に沿うようにして、載置面411と天板42との間に配されている。第1押圧部材43は載置面411及び天板42の下面夫々に接触している。2つの第1押圧部材43は、3時-9時方向に互いに接離可能である。
【0045】
圧縮装置4は、2つの第2押圧部材44を備える。
第2押圧部材44は、長手方向が3時-9時方向に沿うようにして、載置面411と天板42との間に配されている。第2押圧部材44の長手方向の長さは、第1押圧部材43の長さよりも十分に小さく、バックパネル32の接続孔321の直径よりも大きい。第2押圧部材44は載置面411及び天板42の下面夫々に接触している。2つの第2押圧部材44は、6時-12時方向に互いに接離可能である。
【0046】
第2押圧部材44は2つの第1押圧部材43の間に配されている。故に、第1押圧部材43は第2押圧部材44に接触した場合に停止する。
【0047】
折り返し部3aを有するエアバッグクッション3は、折り返し部3aが載置面411に向き、折り返し部3aを除くバックパネル32が天板42に向くようにして、載置面411に載置される。
バックパネル32の接続孔321の周縁部は、図示しない一の固定部材によって、天板42の中央部に固定される。フロントパネル31の中央部は、接続孔321からエアバッグクッション3の内側に挿入された図示しない他の固定部材によって、載置面411に押し付けられて固定される。
【0048】
エアバッグクッション3を圧縮装置4にセットした後、製造者は、圧縮装置4を作動させる。
図7及び
図8は、エアバッグクッション3の圧縮手順の説明図である。
図7及び
図8に示す圧縮装置4において、天板42の図示は省略している。
【0049】
図7に示すように、圧縮装置4は、まず、2つの第1押圧部材43が互いに接近することによって、エアバッグクッション3を、フロントパネル31及びバックパネル32夫々の中央部に向けて押し潰すように圧縮する。この結果、エアバッグクッション3が3時-9時方向に圧縮される。3時-9時方向の圧縮は、第1押圧部材43が第2押圧部材44に接触するまで行なわれる。
【0050】
図8に示すように、3時-9時方向の圧縮後、圧縮装置4は、2つの第2押圧部材44が互いに接近することによって、エアバッグクッション3を、フロントパネル31及びバックパネル32夫々の中央部に向けて押し潰すように圧縮する。この結果、エアバッグクッション3が6時-12時方向に圧縮される。
【0051】
エアバッグクッション3の折り返し部3aは仮止めしてある。故に、エアバッグクッション3の折り返し後、エアバッグクッション3の圧縮が完了するまでの間に、エアバッグクッション3の折り返しが解除されてしまうことを防止することができる。
【0052】
以上の結果、エアバッグクッション3は、折り返し部3aを有した状態でブロック状に圧縮される。
本実施の圧縮装置4は、エアバッグクッション3に熱を加えることなくエアバッグクッション3を圧縮する。
なお、圧縮装置4は、例えばヒータを用いてエアバッグクッション3を加熱しながら圧縮する構成でもよい。
【0053】
圧縮されたエアバッグクッション3は、圧縮装置4から取り出される。
なお、圧縮装置4から取り出したエアバッグクッション3に、エアバッグクッション3の形状を維持するための布(いわゆるフラップ)を巻くことが望ましい。フラップがエアバッグクッション3の膨張展開を阻害することはない。
【0054】
図8に示すように、圧縮されたエアバッグクッション3は12時側の外形と6時側の外形とが互いに異なるので、圧縮された状態でもエアバッグクッション3の向きが分かりやすい。
なお、エアバッグクッション3(例えば接続孔321の周縁部)に、例えば12時側又は6時側を示す目印が設けられていてもよい。
【0055】
製造者は、インフレータ11の噴射口がエアバッグクッション3の内側に位置するようにして、図示しない接続部材を介し、インフレータ11をエアバッグクッション3の接続孔321に接続する。また、製造者は、インフレータ11をハウジング12の支持部材122に取り付けると共に、エアバッグクッション3をハウジング12に収容する。
ハウジング12は、エアバッグクッション3の6時側がステアリングホイール2の6時側に向くようにして、ボス部22に取り付けられる。
【0056】
図9は、エアバッグクッション3の膨張展開を説明するための断面図であり、
図10は、同じく正面図である。
インフレータ11の噴射ガスは、ディフューザ34によって12時側及び6時側に導かれてからエアバッグクッション3の全体に拡散する。
【0057】
膨張展開前のエアバッグクッション3は、3時-9時方向に押し潰されてから6時-12時方向に押し潰されている。故に、インフレータ11が作動した場合、6時-12時方向の膨張展開の方が3時-9時方向に膨張展開よりも優先的に起きる。
【0058】
更に、エアバッグクッション3は、折り返し部3aを有した状態で圧縮されている。折り返し部3aは、エアバッグクッション3の中央部分の膨張により、12時側の部分よりも早くハウジング12から押し出され、運転者に近づきつつ6時側に展開する。
【0059】
つまり、エアバッグクッション3の6時側の部分(運転者の胴を受け止める部分)を、より速やかに展開させることができる。従って、エアバッグクッション3から運転者に加わる外力が運転者の頭に集中することなく、エアバッグクッション3から運転者に加わる外力を運転者の上半身全体に分散させることができる。
【0060】
実験的に、エアバッグクッション3の6時側の部分は、インフレータ11の作動から10msecでリム21の6時側の端部に到達することがわかった。リム21の6時側の端部に到達したエアバッグクッション3は、リム21と運転者の腹とに挟まれ、リム21よりも車両側に更に展開する。エアバッグクッション3の6時側の部分が完全に展開するまでに要した時間は14msecであった。
【0061】
一方、エアバッグクッション3の12時側の部分は、6時側の部分がリム21の6時側の端部に到達するタイミングよりも遅れてリム21の12時側の端部に到達した。
【0062】
比較実験により、6時側の部分が折り返されることなくエアバッグクッション3の場合と同様に圧縮されたエアバッグクッションにおいては、6時側の部分は、インフレータ11の作動から14msecでリム21の6時側の端部に到達することがわかった。このエアバッグクッションの6時側の部分が完全に展開するまでに要した時間は35msecであった。
【0063】
ところで、エアバッグクッション3の12時側の部分も、比較実験におけるエアバッグクッションの12時側の部分も、互いに同程度のタイミングでリム21の12時側の端部に到達した。即ち、エアバッグクッション3においては、12時側の部分の膨張展開性能を損なうことなく、6時側の部分の膨張展開性能が向上されている。
【0064】
以上のことから、エアバッグクッション3は、比較実験のエアバッグクッションと同程度に速やかに膨張展開するが、6時側の部分が特に速やかに膨張展開することが分かる。故に、エアバッグクッション3から運転者に加わる外力が運転者の頭に集中することを防止しつつ、運転者をステアリングホイール2への二次衝突から有効に保護することができる。
【0065】
本実施の形態においては、ステアリングホイール2の6時側にスポーク23が存在しない。故に、ステアリングホイール2の6時側において、エアバッグクッション3はリム21とスポーク23との間の空隙を通して車両側にも膨張しやすい。即ち、6時側にスポーク23が存在しないステアリングホイール2は、エアバッグクッション3の6時側の部分の速やかな膨張展開の観点からは不利である。
【0066】
しかしながら、エアバッグ装置1は、エアバッグクッション3の折り返しにより、6時側にスポーク23が存在しない場合であっても、短時間でエアバッグクッション3を膨張展開させることができる。
換言すれば、6時側にスポーク23が存在するステアリングホイール2にエアバッグ装置1が装備された場合、本実施の形態の場合よりも更に短時間でエアバッグクッション3が膨張展開すると考えられる。
【0067】
ところで、インフレータ11の噴射ガスは高温である。しかしながら、エアバッグクッション3が速やかに展開するので、高温の噴射ガスがエアバッグクッション3の一部に集中的に当たる虞がない。故に、高温の噴射ガスによるエアバッグクッション3の損傷を防止することができる。
【0068】
車両のクラッシャブルゾーンが小さい場合、車両が衝突してから運転者がステアリングホイール2に二次衝突するまでの時間的な余裕は小さい。しかしながら、エアバッグクッション3が速やかに展開するので、例えばクラッシャブルゾーンが小さい小型車にもエアバッグ装置1を装備させることができる。
【0069】
なお、エアバッグクッション3は、圧縮装置4を用いて、押し潰すようにして圧縮される構成に限定されない。例えば、エアバッグクッション3は、特許文献2に記載されているバッグ折り機を用いて、折り畳むようにして圧縮されてもよい。
折り返し部3aの仮止めは縫製によるものに限定されない。エアバッグクッション3の圧縮が完了するまでの間に、エアバッグクッション3の折り返しが解除されてしまうことを防止することができ、エアバッグクッション3の膨張展開を阻害しないのであれば、例えば折り返し部3aが接着剤で仮止めされてもよい。
【0070】
実施の形態 2.
本実施の形態のエアバッグ装置1及びエアバッグ装置1の製造方法は、エアバッグクッション3の構成を除き、実施の形態1のエアバッグ装置1及びエアバッグ装置1の製造方法と略同様である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0071】
図11は、実施の形態2に係るエアバッグ装置1が備えるエアバッグクッション3の正面図である。
本実施の形態のエアバッグクッション3においては、圧縮前に6時側の部分が運転者側に2回折り返される。
【0072】
製造者は、エアバッグクッション3の6時側の部分を運転者側に折り返して折り返し部3aを形成した後で、折り返し部3aをもう一度運転者側に折り返す。このとき、製造者は、折り返し部3aの先端部分を1回目の折り線3bに重ねる。
【0073】
実施の形態1の場合と同様に、エアバッグクッション3の半径Dは355mmであり、エアバッグクッション3の中心から折り線3bまでの距離L1が215mmである場合、2回目の折り線3cから折り返し部3aの先端部分までの距離L2は、70mmである。
なお、折り返し部3aの先端部分が1回目の折り線3bから±10mm程度離隔していてもよい。即ち、L1=215の場合、60≦L2≦70であればよい。
【0074】
2回目の折り返し後、製造者は、エアバッグクッション3の折り返し部3aを、実施の形態1の場合と同様に縫製によって仮止めする。
エアバッグクッション3の圧縮手順は実施の形態1の場合と同じである。
【0075】
図12は、エアバッグクッション3の膨張展開を説明するための断面図である。
図に示すステアリングホイール2のように、リム21がハウジング12よりも運転者側に位置しているほど、エアバッグクッション3は運転者側に大きく膨張展開する必要がある。
【0076】
エアバッグクッション3の6時側の部分は、エアバッグクッション3が全体的に運転者側に膨張展開するよりも前に、6時側に膨張展開する。ただし、エアバッグクッション3の膨張展開時に、2回目に折り返された部分は運転者側に押し出され易く、1回目に折り返された部分は6時側に展開し易い。故に、エアバッグクッション3を運転者側に膨張展開させることとエアバッグクッションの6時側の部分を速やかに展開させることとを両立させることができる。従って、エアバッグクッション3の6時側の部分がリム21に車両側から当接して膨張展開を阻害されることを抑制することができる。
【0077】
エアバッグクッション3を折り返す回数は3回以上でもよいが、2回以下が現実的である。エアバッグクッション3を折り返す回数が増えるほど、製造工程が煩雑になる。
【0078】
実施の形態 3.
本実施の形態のエアバッグ装置1及びエアバッグ装置1の製造方法は、エアバッグクッション3の構成及びエアバッグクッション3の圧縮手順を除き、実施の形態1,2のエアバッグ装置1及びエアバッグ装置1の製造方法と略同様である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1,2と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0079】
図13は、実施の形態3に係るエアバッグ装置1が備えるエアバッグクッション3の模式的な断面図である。
本実施の形態のエアバッグクッション3は、サイドパネル36を更に備える。サイドパネル36はフロントパネル31の周縁部とバックパネル32の周縁部とを繋ぐ布である。バックパネル32の直径は、フロントパネル31の直径よりも小さい。この結果、エアバッグクッション3は円錐台状をなす。
【0080】
図にはフロントパネル31、バックパネル32、及びサイドパネル36が示されている。図中の丸印は、フロントパネル31及びバックパネル32夫々とサイドパネル36との境界部分を示している。
【0081】
本実施の形態のエアバッグクッション3は、フロントパネル31とバックパネル32との間にサイドパネル36が介在している分、実施の形態1のエアバッグクッション3よりも軸長方向(フロントパネル31とバックパネル32との対向方向)に大きい。
製造者は、エアバッグクッション3を折り返す前に、バックパネル32とサイドパネル36のバックパネル32側の一部とを軸長方向に圧縮する。
【0082】
図14及び
図15は、エアバッグクッション3の折り返し前の圧縮手順の説明図である。
製造者は作業台51及び成形用部材52を準備する。
成形用部材52は円筒状をなし、接続孔321の内径に対応する外径を有する。
【0083】
図14に示すように、製造者は、作業台51の上面にてフロントパネル31を平らに広げ、接続孔321からエアバッグクッション3の内側に成形用部材52を挿入する。製造者は、成形用部材52の一端面でフロントパネル31の中央部を押さえる。
次に、製造者は、バックパネル32とサイドパネル36のバックパネル32側の一部とを成形用部材52の周面に沿わせる。
【0084】
図15に示すように、製造者は、成形用部材52の周面に沿って、バックパネル32及びサイドパネル36のバックパネル32側の一部を、フロントパネル31に向けて押し潰すように圧縮する。
【0085】
この後、製造者は、フロントパネル31の6時側の部分を、サイドパネル36の押しつぶされていない部分と共に、実施の形態1,2の場合と同様に1回又は2回折り返す(不図示)。
折り返し後の手順は実施の形態1,2の場合と同じである。
【0086】
本実施の形態のエアバッグクッション3は、インフレータ11に近い側から軸長方向に圧縮され、且つ、折り返し部3aを有した状態で圧縮されている。故に、インフレータ11が作動した場合、エアバッグクッション3の6時側の部分をより速やかに展開させることができると共に、エアバッグクッション3を運転者側に速やかに膨張展開させることができる。
【0087】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
各実施の形態に開示されている構成要件(技術的特徴)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせによって新しい技術的特徴を形成することができる。
なお、特許請求の範囲に付した参照符号は、請求項の理解をしやすくするために付記したものである。
【符号の説明】
【0088】
1 エアバッグ装置
11 インフレータ
12 ハウジング
2 ステアリングホイール
3 エアバッグクッション
3a 折り返し部(折り返した部分)
31 フロントパネル
32 バックパネル
321 接続孔