(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】複合材の成形方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/85 20060101AFI20250310BHJP
C04B 35/84 20060101ALI20250310BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20250310BHJP
C04B 38/06 20060101ALI20250310BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20250310BHJP
B29B 15/10 20060101ALI20250310BHJP
B29C 70/02 20060101ALI20250310BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20250310BHJP
【FI】
C04B41/85 A
C04B35/84
C04B35/80 600
C04B38/06 J
B29B11/16
B29B15/10
B29C70/02
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020156244
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 輝一
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-239034(JP,A)
【文献】特開2009-127013(JP,A)
【文献】特開昭52-040588(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128841(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/002434(WO,A1)
【文献】特開2010-260990(JP,A)
【文献】特開2016-204522(JP,A)
【文献】特表2013-503930(JP,A)
【文献】国際公開第2008/038591(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16,15/08-15/14
C08J 5/04-5/10,5/24
B29C 70/00-70/88
C04B 35/80;35/84
C04B 38/06
C04B 41/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維基材に樹脂を含侵させてプリプレグを製造するプリプレグの製造方法によって製造された前記プリプレグを用いて、複合材を成形する複合材の成形方法であって、
前記プリプレグの製造方法は、
フィラーを含む前記樹脂である第1樹脂と、前記フィラーを含まない前記樹脂である第2樹脂とを用意するステップと、
前記強化繊維基材に隣接して前記第2樹脂を配置するステップと、
前記強化繊維基材及び前記第2樹脂の少なくとも一方に隣接して前記第1樹脂を配置するステップと、
前記強化繊維基材に、前記第2樹脂を含侵させるステップと、を備えており、
前記第1樹脂と、前記第2樹脂とは、異なる樹脂となっており、
前記第1樹脂は、炭化反応する樹脂となっており、
前記プリプレグの製造方法で製造された前記プリプレグを積層するステップと、
積層した前記プリプレグを一体化して積層体とするステップと、
前記積層体を炭化させるステップと、
炭化させた前記積層体に溶融シリコンを含侵させて複合材とするステップと、を備える複合材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プリプレグの製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法では、ベース樹脂と樹脂を素材とする微粒子との混合品を調整した後、混合品と長繊維からなる強化繊維を組み合わせることによって、プリプレグを製造している。具体的に、この製造方法では、強化繊維の両面に、微粒子とベース樹脂とからなる樹脂フィルムを重ね合わせ、これらを加熱、加圧して樹脂を強化繊維に転移、含侵させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリプレグを成形して得られる複合材に対して所定の機能を付与する場合、プリプレグの樹脂にフィラーを添加する場合がある。樹脂に対して多量のフィラーを混合する場合、加熱時において、樹脂の粘性が大きくなり、流動性が低下することで、強化繊維への含侵が困難となる。強化繊維内へ樹脂が含浸し難い場合、プリプレグ内に空隙が残留することから、このプリプレグを使用して成形した複合材には、ボイド等の成形不良が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、強化繊維基材に、フィラーを含む樹脂を好適に含侵させることができるプリプレグの製造方法及び複合材の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のプリプレグの製造方法は、強化繊維基材に樹脂を含侵させてプリプレグを製造するプリプレグの製造方法において、フィラーを含む前記樹脂である第1樹脂と、前記フィラーを含まない前記樹脂である第2樹脂とを用意するステップと、前記強化繊維基材に隣接して第2樹脂を配置するステップと、前記強化繊維基材及び前記第2樹脂の少なくとも一方に隣接して前記第1樹脂を配置するステップと、前記強化繊維基材に、前記第1樹脂及び前記第2樹脂の前記樹脂を含侵させるステップと、を備える。
【0007】
本開示の複合材の成形方法は、上記のプリプレグの製造方法によって製造された前記プリプレグを用いて、複合材を成形する複合材の成形方法であって、前記プリプレグを積層するステップと、積層した前記プリプレグを一体化して積層体とするステップと、前記積層体を炭化させるステップと、炭化させた前記積層体に溶融シリコンを含有させて複合材とするステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、強化繊維基材に、フィラーを含む樹脂を好適に含侵させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るプリプレグの製造方法に関する模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る他のプリプレグに関する模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るプリプレグの製造方法に関するフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2に係るプリプレグの製造方法に関する模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る他のプリプレグに関する模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係るプリプレグの製造方法に関するフローチャートである。
【
図7】
図7は、複合材の製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係るプリプレグ10の製造方法は、強化繊維シート(強化繊維基材)15に樹脂を含侵させてプリプレグ10を製造する方法となっている。また、実施形態1のプリプレグ10の製造方法は、所定の機能が付与されたプリプレグ10を製造する方法となっている。所定の機能としては、プリプレグ10の焼成時において、プリプレグ10に含まれる樹脂が炭化反応する機能である。なお、所定の機能は、上記に限定されず、他の機能であってもよい。
【0012】
(プリプレグの製造方法)
図1は、実施形態1に係るプリプレグの製造方法に関する模式図である。
図2は、実施形態1に係る他のプリプレグに関する模式図である。
図3は、実施形態1に係るプリプレグの製造方法に関するフローチャートである。実施形態1のプリプレグ10の製造方法では、強化繊維シート15と、含侵性樹脂シート17と、機能性樹脂シート19と、が用いられる。
【0013】
強化繊維シート15は、強化繊維をシート状に形成したものである。強化繊維シート15としては、繊維方向を一方向に引き揃えた一方向材であってもよいし、織布または不織布であってもよく、特に限定されない。また、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等のいずれの繊維であってもよく、特に限定されない。
【0014】
含侵性樹脂シート17は、強化繊維シート15に含侵される第2樹脂をシート状に形成したものである。含侵性樹脂シート17は、厚さ方向において、強化繊維シート15に隣接して配置される。含侵性樹脂シート17は、強化繊維シート15に対して少なくとも一方側に重ね合わせて配置される。つまり、含侵性樹脂シート17は、
図1に示すように、強化繊維シート15の厚さ方向の片側に重ね合わせてもよいし、
図2に示すように、強化繊維シート15の厚さ方向の両側に重ね合わせてもよい。
【0015】
機能性樹脂シート19は、プリプレグ10に所定の機能を付与する第1樹脂をシート状に形成したものである。第1樹脂には、フィラー21が添加されている。フィラー21は、例えば、セラミック複合材を製造するための前駆体としてのプリプレグ10とする場合、SiC(炭化ケイ素)の粉体、またはC(炭素)の粉体が適用される。また、フィラー21は、難燃性複合材を製造するためのプリプレグ10とする場合、Al(OH)3(水酸化アルミニウム)の粉体が適用される。また、第1樹脂には、分散剤を添加してもよい。
【0016】
機能性樹脂シート19は、強化繊維シート15及び含侵性樹脂シート17の少なくとも一方に隣接して配置される。実施形態1において、機能性樹脂シート19は、隣接して配置されている強化繊維シート15及び含侵性樹脂シート17の両側に配置される。つまり、機能性樹脂シート19は、一対用意され、一対の機能性樹脂シート19の間に、強化繊維シート15及び含侵性樹脂シート17が挟み込まれて配置される。
【0017】
ここで、機能性樹脂シート19の第1樹脂と、含侵性樹脂シート17の第2樹脂とについて説明する。第1樹脂と第2樹脂とは、異なる樹脂となっている。具体的に、第1樹脂は、炭化反応する樹脂となっている。このため、第1樹脂は、焼き飛ばし処理等の炭化処理が行われることで、炭化の度合いが適切に調整されるものとなっている。第1樹脂は、プリプレグ10において外側に配置されることから、プリプレグ10は、外側において、第1樹脂の機能を発揮する。
【0018】
次に、
図3を参照して、プリプレグ10の製造方法について説明する。プリプレグ10の製造方法としては、例えば、ホットメルトフィルム法が用いられており、ホットメルトフィルム法は、強化繊維シート15を樹脂シートで挟み込み,樹脂が軟化する温度まで昇温及び加圧することで、樹脂を強化繊維シート15に含浸させる方法となっている。なお、プリプレグ10の製造方法は、ホットメルトフィルム法に、特に限定されない。
【0019】
プリプレグ10の製造方法では、先ず、強化繊維シート15、含侵性樹脂シート17及び機能性樹脂シート19を用意するステップを実行する。具体的に、このステップでは、予め作成された含侵性樹脂シート17と、予め作成された機能性樹脂シート19とを用意している。機能性樹脂シート19の作成は、先ず、第1樹脂、フィラー21及び分散剤を混錬して、機能性樹脂を生成する(ステップS1)。この後、機能性樹脂をシート状に成形することで、機能性樹脂シート19を作成する(ステップS2)。また、含侵性樹脂シート17の作成は、先ず、第2樹脂を含侵性樹脂として用意し、含侵性樹脂をシート状に成形することで、含侵性樹脂シート17を作成する(ステップS3)。
【0020】
続いて、プリプレグ10の製造方法では、強化繊維シート15に隣接して含侵性樹脂シート17を配置する(ステップS4)。ステップS4では、
図1に示すように、含侵性樹脂シート17を強化繊維シート15の厚さ方向の片側に重ね合わせる。なお、ステップS4では、
図2に示すように、含侵性樹脂シート17を強化繊維シート15の厚さ方向の両側に重ね合わせてもよい。この場合、含侵性樹脂シート17を片側に配置する場合に比べて、厚さを薄く(例えば、半分)にしてもよい。
【0021】
続いて、プリプレグ10の製造方法では、一対の機能性樹脂シート19の間に、強化繊維シート15及び含侵性樹脂シート17を挟み込むように、一対の機能性樹脂シート19を配置する(ステップS5)。ステップS5では、
図1及び
図2に示すように、一対の機能性樹脂シート19の一方が、強化繊維シート15の厚さ方向の外側に隣接して配置され、一対の機能性樹脂シート19の他方が、含侵性樹脂シート17の厚さ方向の外側に隣接して配置されている。
【0022】
この後、プリプレグ10の製造方法では、
図1または
図2に示すように各種シート15,17,19を配置したら、一対の機能性樹脂シート19の両外側から、加熱及び加圧を行うことで、含侵性樹脂シート17及び機能性樹脂シート19を溶融させる(ステップS6)。ステップS5では、溶融した含侵性樹脂シート17の第2樹脂と、溶融した機能性樹脂シート19の第1樹脂とが、強化繊維シート15に含侵することで、プリプレグ10が製造される。
【0023】
[実施形態2]
次に、
図4から
図6を参照して、実施形態2に係るプリプレグ10の製造方法について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図4は、実施形態2に係るプリプレグの製造方法に関する模式図である。
図5は、実施形態2に係る他のプリプレグに関する模式図である。
図6は、実施形態2に係るプリプレグの製造方法に関するフローチャートである。
【0024】
(プリプレグの製造方法)
実施形態2のプリプレグ10の製造方法では、強化繊維シート15と、第1機能性樹脂シート25と、第2機能性樹脂シート26と、が用いられる。なお、強化繊維シート15は、実施形態1と同様となっているため、説明を省略する。
【0025】
第1機能性樹脂シート25は、プリプレグ10に所定の機能を付与する第3樹脂をシート状に形成したものである。第3樹脂には、第1フィラー31と第1分散剤とが添加されている。第1フィラー31は、実施形態1のフィラーと同様であるものの、後述する第2フィラー32とは異なる種類となっている。第1分散剤は、第1フィラー31を添加した第3樹脂に適した分散剤となっている。このため、第1機能性樹脂シート25の第3樹脂は、強化繊維シート15に含侵し易いものとなる。
【0026】
第2機能性樹脂シート26は、プリプレグ10に所定の機能を付与する第4樹脂をシート状に形成したものである。第4樹脂には、第2フィラー32と第2分散剤とが添加されている。第2フィラー32は、実施形態1のフィラーと同様であるものの、第1フィラー31とは異なる種類となっている。第2分散剤は、第2フィラー32を添加した第4樹脂に適した分散剤となっている。このため、第2機能性樹脂シート26の第4樹脂も、第3樹脂と同様に、強化繊維シート15に含侵し易いものとなる。よって、第1機能性樹脂シート25と第2機能性樹脂シート26とは、異なる機能、または、同じ機能で性能が異なるものとすることができる。
【0027】
ここで、第1機能性樹脂シート25は、強化繊維シート15の一方に隣接して配置される。また、第2機能性樹脂シート26は、強化繊維シート15の他方に隣接して配置される。つまり、第2機能性樹脂シート26は、強化繊維シート15を挟んで、第1機能性樹脂シート25の反対側に設けられる。このため、第1機能性樹脂シート25と第2機能性樹脂シート26との間に、強化繊維シート15が挟み込まれて配置される。
【0028】
ここで、第1機能性樹脂シート25の第3樹脂と、第2機能性樹脂シート26の第4樹脂とについて説明する。第3樹脂と第4樹脂とは、同じ樹脂となっている。第3樹脂と第4樹脂とは、例えば、実施形態1と同様の樹脂となっている。第3樹脂と第4樹脂とは、プリプレグ10において外側に配置されることから、プリプレグ10は、外側において、第3樹脂及び第4樹脂の機能を発揮する。
【0029】
次に、
図6を参照して、プリプレグ10の製造方法について説明する。プリプレグ10の製造方法としては、実施形態1と比べると、強化繊維シート15に重ね合わせるシートが異なるものとなっている。
【0030】
プリプレグ10の製造方法では、先ず、強化繊維シート15、第1機能性樹脂シート25及び第2機能性樹脂シート26を用意するステップを実行する。具体的に、このステップでは、予め作成された第1機能性樹脂シート25と、予め作成された第2機能性樹脂シート26とを用意している。第1機能性樹脂シート25の作成は、先ず、第3樹脂、第1フィラー31及び第1分散剤を混錬して、第1機能性樹脂を生成する(ステップS11)。この後、第1機能性樹脂をシート状に成形することで、第1機能性樹脂シート25を作成する(ステップS12)。また、第2機能性樹脂シート26の作成は、先ず、第4樹脂、第2フィラー32及び第2分散剤を混錬して、第2機能性樹脂を生成する(ステップS13)。この後、第2機能性樹脂をシート状に成形することで、第2機能性樹脂シート26を作成する(ステップS14)。
【0031】
続いて、プリプレグ10の製造方法では、強化繊維シート15の一方側に隣接して第1機能性樹脂シート25を配置する(ステップS15)。ステップS15では、
図4に示すように、第1機能性樹脂シート25を強化繊維シート15の厚さ方向の片側に重ね合わせる。また、プリプレグ10の製造方法では、強化繊維シート15の他方側に隣接して第2機能性樹脂シート26を配置する(ステップS16)。ステップS16では、
図4に示すように、第2機能性樹脂シート26を、強化繊維シート15を挟んで第1機能性樹脂シート25の反対側に配置し、強化繊維シート15の厚さ方向の片側に重ね合わせる。これにより、第1機能性樹脂シート25と第2機能性樹脂シート26との間に、強化繊維シート15を挟み込むように、第1機能性樹脂シート25及び第2機能性樹脂シート26が配置される。
【0032】
この後、プリプレグ10の製造方法では、
図4に示すように各種シート15,25,26を配置したら、第1機能性樹脂シート25及び第2機能性樹脂シート26の両外側から、加熱及び加圧を行うことで、第1機能性樹脂シート25及び第2機能性樹脂シート26を溶融させる(ステップS17)。ステップS17では、溶融した第1機能性樹脂シート25の第3樹脂と、溶融した第2機能性樹脂シート26の第4樹脂とが、強化繊維シート15に含侵することで、プリプレグ10が製造される。
【0033】
なお、
図5に示すように、実施形態2のプリプレグ10の製造方法では、実施形態1の含侵性樹脂シート17をさらに用いてもよい。含侵性樹脂シート17は、厚さ方向において、強化繊維シート15に隣接して配置される。例えば、含侵性樹脂シート17は、
図5に示すように、強化繊維シート15の厚さ方向の両側に重ね合わせてもよい。
【0034】
(複合材の成形方法)
次に、
図7を参照して、複合材の成形方法について説明する。複合材の成形方法では、実施形態1または実施形態2において製造したプリプレグ10が用いられる。
図7は、複合材の製造方法に関するフローチャートである。
【0035】
図7に示すように、複合材の成形方法では、先ず、製造されたプリプレグ10を厚さ方向に積層するステップS21を実行する。この後、積層したプリプレグ10を一体化して積層体(プリフォーム)とするステップS22を実行する。ステップS22では、積層したプリプレグ10に含まれる樹脂を硬化させることで一体化しており、樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、プリプレグ10を加熱することで熱硬化させる。続いて、複合材の成形方法では、積層体を炭化させるステップS23を実行する。ステップS23では、積層体に含まれる揮発成分を飛ばして炭化させる焼き飛ばしを行うことで、炭化処理をしている。この炭化処理により、炭化した積層体である炭化体には、多数の孔が形成される。そして、複合材の成形方法では、多孔体となる炭化体に溶融シリコンを含侵させて複合材とするステップS24を実行する。ステップS24では、溶融したシリコンSiに炭化体を含侵させることで、炭化体の多数の孔にシリコンを充填する。そして、複合材の成形方法では、ステップS24を実行後、複合材の成形を終了する。
【0036】
以上のように、本実施形態に記載のプリプレグ10の製造方法及び複合材の成形方法は、例えば、以下のように把握される。
【0037】
第1の態様に係るプリプレグ10の製造方法は、強化繊維基材(強化繊維シート15)に樹脂を含侵させてプリプレグ10を製造するプリプレグ10の製造方法において、フィラー21を含む前記樹脂である第1樹脂と、前記フィラー21を含まない前記樹脂である第2樹脂とを用意するステップ(ステップS1~ステップS3)と、前記強化繊維基材に隣接して第2樹脂を配置するステップ(ステップS4)と、前記強化繊維基材及び前記第2樹脂の少なくとも一方に隣接して前記第1樹脂を配置するステップ(ステップS5)と、前記強化繊維基材に、前記第2樹脂を含侵させるステップ(ステップS6)と、を備える。
【0038】
この構成によれば、フィラー21を含まない第2樹脂は、フィラー21を含む第1樹脂に比して、強化繊維基材に含侵し易いものとすることができる。このため、強化繊維基材に第2樹脂を適切に含侵させることができる。また、第1樹脂を、フィラーを含む樹脂とすることができるため、プリプレグ10に対して所定の機能を付与することができる。以上から、フィラー21を含む樹脂を強化繊維基材に好適に含侵させた、所定の機能を有するプリプレグ10を製造することができる。
【0039】
第2の態様として、前記第1樹脂と、前記第2樹脂とは、異なる樹脂となっている。
【0040】
この構成によれば、強化繊維基材に含侵し易い第2樹脂とは異なる機能を付与した第1樹脂とすることができる。
【0041】
第3の態様として、前記第1樹脂は、炭化反応する樹脂となっている。
【0042】
この構成によれば、後工程においてプリプレグ10に対して、焼き飛ばし等の炭化処理を行う場合、プリプレグ10を適切に炭化させることができる。
【0043】
第4の態様として、前記第1樹脂を配置するステップでは、前記第1樹脂が、隣接する前記強化繊維基材及び前記第2樹脂の両側に配置され、両側に配置される前記第1樹脂の一方が、第1フィラー31及び第1分散剤を含む前記樹脂である第3樹脂であり、両側に配置される前記第1樹脂の他方が、第2フィラー32及び第2分散剤を含む前記樹脂である第4樹脂である。
【0044】
この構成によれば、第1樹脂の一方を第3樹脂とし、第1樹脂の他方を第4樹脂とすることで、プリプレグ10に第1フィラー31と第2フィラー32とを含ませることができる。このため、複数種のフィラー31,32を含む樹脂を強化繊維基材に好適に含侵させた、所定の機能を有するプリプレグ10を製造することができる。
【0045】
第5の態様に係るプリプレグ10の製造方法は、強化繊維基材(強化繊維シート15)に樹脂を含侵させてプリプレグ10を製造するプリプレグ10の製造方法において、第1フィラー31及び第1分散剤を含む前記樹脂である第3樹脂と、第2フィラー32及び第2分散剤を含む前記樹脂である第4樹脂とを用意するステップ(ステップS11~ステップS14)と、前記強化繊維基材に隣接して第3樹脂を配置するステップ(ステップS15)と、前記強化繊維基材に隣接して前記第3樹脂の反対側に前記第4樹脂を配置するステップ(ステップS16)と、前記強化繊維基材に、前記第3樹脂を含侵させるステップ(ステップS17)と、を備える。
【0046】
この構成によれば、第1フィラー31を含む第3樹脂は、第1分散剤によって強化繊維基材に含侵し易いものとすることができる。また、第2フィラー32を含む第4樹脂は、第2分散剤によって強化繊維基材に含侵し易いものとすることができる。このため、強化繊維基材に第3樹脂及び第4樹脂を適切に含侵させることができる。また、第3樹脂を、第1フィラー31を含む樹脂とすることができ、第4樹脂を、第2フィラー32を含む樹脂とすることができるため、プリプレグ10に対して所定の機能を付与することができる。以上から、複数種のフィラーを含む樹脂を強化繊維基材に好適に含侵させた、所定の機能を有するプリプレグ10を製造することができる。
【0047】
第6の態様として、前記第3樹脂と、前記第4樹脂とは、同じ樹脂となっている。
【0048】
この構成によれば、強化繊維シート15に含侵させる樹脂を同じ樹脂とすることができるため、均質化を図ることができる。
【0049】
第7の態様に係る複合材の成形方法は、上記のプリプレグ10の製造方法によって製造された前記プリプレグ10を用いて、複合材を成形する複合材の成形方法であって、前記プリプレグ10を積層するステップS21と、積層した前記プリプレグ10を一体化して積層体とするステップS22と、前記積層体を炭化させるステップS23と、炭化させた前記積層体に溶融シリコンを含侵させて複合材とするステップS24と、を備える。
【0050】
この構成によれば、樹脂を強化繊維基材に好適に含侵させたプリプレグ10を用いることにより、積層体の炭化を好適に行うことができることから、溶融シリコンを適切に含侵させた複合材を成形することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 プリプレグ
15 強化繊維シート
17 含侵性樹脂シート
19 機能性樹脂シート
21 フィラー
25 第1機能性樹脂シート
26 第2機能性樹脂シート
31 第1フィラー
32 第2フィラー