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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】味及び風味調整剤タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/415 20060101AFI20250310BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20250310BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20250310BHJP
   C07K 14/43 20060101ALN20250310BHJP
【FI】
C07K14/415
A23L27/00 Z
A23L27/00 101Z
A23L27/30 Z
C07K14/43 ZNA
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020563406
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 IL2019050510
(87)【国際公開番号】W WO2019215730
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】62/667,532
(32)【優先日】2018-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520430929
【氏名又は名称】アマイ プロテインズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AMAI PROTEINS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】サミシュ,イラン
(72)【発明者】
【氏名】カス,イタマール
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ダリット
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0052542(KR,A)
【文献】特表2013-502920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0050445(US,A1)
【文献】特表昭61-501186(JP,A)
【文献】ZHENG, W et al.,Expression, purification and characterization of a novel double-sites mutant of the single-chain sweet-tasting protein monellin (MNEI) with both improved sweetness and stability,Protein Expression and Purification,2017年10月,Vol. 143,pp. 52-56,http://dx.doi.org/10.1016/j.pep.2017.10.010
【文献】LEONE. S et al.,Sweeter and stronger: enhancing sweetness and stability of the single chain monellin MNEI through molecular design,Scientific Reports,2016年,Vol. 6, No. 34045,pp. 1-10,https://www.nature.com/articles/srep34045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号16及び配列番号17に示すアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を有する修飾タンパク質であって
記修飾タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有する基準タンパク質と比較して、改善された甘味、示差走査蛍光定量により定義される増加された構造的熱安定性、改善された機能的熱安定性を有することを特徴とする、修飾タンパク質。
【請求項2】
前記修飾タンパク質が、改善された甘味度、甘味動態、マスキング効果、味増強、及び異味をさらに有する、請求項1に記載の修飾タンパク質。
【請求項3】
前記基準タンパク質と比較して少なくとも1.5倍に増加された甘味度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項4】
前記基準タンパク質と比較して少なくとも6倍に増加された甘味度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項5】
前記基準タンパク質と比較して、以下のうちの少なくとも1つ:増加されたpH安定性、増加された溶解性、及び増加された保存寿命安定性によってさらに特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項6】
Rosetta Energy Unit(REU)で与えられるエネルギーが-190から-204.6である、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項7】
食品製品、補助食品製品、又は医薬品に用いるための、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項8】
風味調整剤又は風味増強剤として用いるための、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項9】
甘味剤として用いるための、請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の修飾タンパク質を含む食品製品。
【請求項11】
少なくとも1つの食品成分を含む、請求項10に記載の食品製品。
【請求項12】
前記食品成分が、人工風味剤、食品添加物、食用色素、保存剤、又は糖添加物のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の食品製品。
【請求項13】
前記食品成分が、ステビアである、請求項12に記載の食品製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味及び風味タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の主題に対する背景として関連すると見なされる参考文献を以下に列挙する。
英国特許第2123672号
国際公開第8402450号
Leone, S. et al. Sweeter and stronger: enhancing sweetness and stability of the single chain monellin MNEI through molecular design. Sci. Rep. 6, 34045; doi: 10.1038/srep34045 (2016)
Masuda, T. et al. A Hypersweet Protein: Removal of The Specific Negative Charge at Asp21 Enhances Thaumatin Sweetness. Sci. Rep. 6, 20255; doi: 10.1038/srep20255 (2016)
Samish I.,S, MacDermaid CM.,S, Perez-Aguilar JMP., Saven JG.PI, (2011). Theoretical and Computational Protein Design. Annu Rev Phys Chem 62:129-149
Samish I., (Editor), Computational Protein Design (2017), Methods in Molecular Biology, Springer Protocols, Humana Press.
Zhao, Meng & Xu, Xiangqun & Liu, Bo. (2018). Structure basis of the improved sweetness and thermostability of a unique double-sites single-chain sweet-tasting protein monellin (MNEI) mutant. Biochimie. 154;
Zheng W., et al. (2018) Expression, purification and characterization of a novel double-sites mutant of the single-chain sweet-tasting protein monellin (MNEI) with both improved sweetness and stability. Protein Expr Purif., 143:52-56.
Pica A., et al (2018) pH driven fibrillar aggregation of the super-sweet protein Y65R-MNEI: A step-by-step structural analysis. Biochim Biophys Acta Gen Subj., 1862:808-815.
【0003】
甘味市場は、糖及び高フルクトースシロップが独占しており、人工甘味剤、並びにステビア及びラカンカの抽出物を例とする天然源由来の甘味剤を含む他の甘味剤が占める市場のシェアは10%未満である。
【0004】
英国特許第2123672号には、様々な飲料、口内洗浄剤に、又は医薬品ベースに、所望に応じて食用酸又は増量剤と一緒に組み込まれた、タウマチン及びモネリンなどの甘味タンパク質、並びに弱酸性ポリサッカリドガムについて記載されている。
【0005】
国際公開第8402450号には、ガムベース、甘味剤、及び風味剤を含むチューイングガム組成物の表面へのタウマチン又はモネリンの適用について記載されている。
【0006】
Leone, S. et al.、Zhao et al.、Zheng W., et al.、及びPica A., et alには、MNEIの変異体について記載されている。
【0007】
Masuda, T. et al.には、超甘味タウマチン誘導体が記載されている。
【0008】
Samish I.,S., et al (2011)及び(2017)に記載されているように、タンパク質の設計のための計算機ツールが、改善された特定の特徴を有するタンパク質を設計する際の代替的な信頼性の高い方法として登場した。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様によると、本開示は、基準タンパク質からの1又は複数のアミノ酸の置き換えを有するアミノ酸配列を含む修飾タンパク質を提供し、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。いくつかの実施形態によると、修飾タンパク質は、基準タンパク質からの少なくとも2つのアミノ酸の置き換えを含む。
【0010】
いくつかの態様によると、本開示は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、配列番号5の残基E2、E23、及びY65に少なくとも3つのアミノ酸置換を含む修飾タンパク質を提供し、修飾タンパク質は、配列番号5と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0011】
いくつかの態様によると、本開示は、基準タンパク質からの1又は複数のアミノ酸の置き換えを有するアミノ酸配列を含む修飾タンパク質を含む食品製品を提供し、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。いくつかの実施形態によると、修飾タンパク質は、基準タンパク質からの少なくとも2つのアミノ酸の置き換えを含む。
【0012】
いくつかの態様によると、本開示は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、配列番号5の残基E2、E23、及びY65に少なくとも3つのアミノ酸置換を含む修飾タンパク質を含む修飾タンパク質を含む食品製品を提供し、修飾タンパク質は、配列番号5と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0013】
本明細書で開示される主題をより良く理解するために、及びそれを実際に行うことができる方法を例示するために、実施形態を、単なる限定されない例として、添付の図面を参照しながら以降で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、MNEI及びMNEIベース修飾タンパク質の甘味平均スコアを示すヒストグラムである。
図2図2は、MNEI及びMNEIベース修飾タンパク質の甘味平均スコアを示すヒストグラムである。
図3図3は、ピキア(pichia)株での発現実験のアクリルアミドゲルである。
図4図4A図4Cは、TAS1R2及びTAS1R3にドッキングするタウマチンの3つの受容体結合部位の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
人工低カロリー甘味剤は、市販されており、一部は、副作用があることが知られている。例えば、サッカリンは、カロリー又は炭水化物なしで食品及び飲料を甘くするために広く用いられてきたが、その使用は、膀胱癌の発症と関連付けられた。したがって、一方では最適な感覚プロファイルを提供し、他方では食品製品及び飲料での使用に適している、現在入手可能である人工低カロリー甘味剤の考え得る代替品が求められている。
【0016】
本開示は、新規な甘味タンパク質及び新規な味調整タンパク質に関し、既知の甘味剤に対して改善された特性を呈する新規なタンパク質が得られる結果となる最適化法、例えば計算機による方法に基づいている。
【0017】
驚くべきことに、本発明者らは、既知のタンパク質(本明細書において、「基準タンパク質」と称する)のアミノ酸配列に様々な特定の置換を導入することによって、基準タンパク質と比較して少なくとも1つの改善された特性を有する新規なタンパク質が得られる結果となることを見出した。新規なタンパク質の少なくとも1つの改善された特性が、食品及び飲料用途での修飾タンパク質の適格性及び利用において非常に重要であり得ることが示唆された。
【0018】
具体的には、以下の実施例に示されるように、新規なタンパク質(本明細書において、「修飾タンパク質」又は「改造タンパク質」と称する)は、それらの基準タンパク質と比較して、改善された感覚プロファイル及び/又は熱安定性を呈した。本明細書で述べる感覚プロファイルは、味覚プロファイル(例:甘味度、後味、及び残味(lingering))に関する。
【0019】
したがって、本開示は、その最も広い態様において、基準タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも1つのアミノ酸の置き換え(置換)を有するアミノ酸配列を含む修飾タンパク質に関し、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質のアミノ酸配列に少なくとも2つのアミノ酸の置き換え(置換)を、場合によっては3つのアミノ酸の置き換え(置換)を有するアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。
【0021】
少なくとも1つの改善された食品関連特性は、修飾タンパク質を食品及び飲料用途において適格なものとすることができる特性を包含し、風味、テクスチャ、味、甘味閾値、甘味レベル、甘味プロファイル、感覚プロファイル、甘味動態(sweetness kinetics)、安定性(構造及び機能)、耐熱性、食品マトリクスへの適合性、保存寿命、他の風味のマスキング及び/又は増強、異味、味の開始、残味、味の丸み、又は糖様の味などである。
【0022】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、感覚に影響を与える特性である。「感覚に影響を与える特性」の用語は、本明細書で用いられる場合、例えば味覚によって特定される、感覚的印象の変化を意味する。感覚に影響を与える特性としては、例えば、甘味度(糖様の風味)などの甘味プロファイル、甘味動態(開始時間、残味時間、味継続時間)、異味がないこと、及び他の味のマスキング又は増強、異味(例:金属味)が挙げられる。例えば、改善された特性は、甘味の増加、開始時間の短縮、又は残味の減少と関連する。
【0023】
少なくとも1つの特性が感覚に影響を与える特性であるいくつかの実施形態によると、修飾タンパク質は、代替糖と見なすことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、甘味度、開始時間の短縮、又は残味の減少のうちの少なくとも1つである。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、安定性である。いくつかの実施形態では、安定性は、熱安定性、より長い保存寿命、低pHに対する安定性、塩濃度安定性、イオン強度安定性、又は脂肪含有若しくはタンパク質含有マトリックス中での安定性のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、熱安定性である。
【0025】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、増加された保存寿命安定性である。例えば、修飾タンパク質は、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月間、及びさらには1年間にわたって安定であり得る。
【0026】
上記で詳細に述べたように、修飾タンパク質は、少なくとも1つの追加の食品成分と組み合わせて用いられ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの食品関連特性は、修飾タンパク質と少なくとも1つの食品成分との間の相乗効果に関し得る。食品成分の限定されない例としては、人工若しくは天然の風味剤、食品添加物、食用色素、保存剤、又は追加の糖添加物が挙げられる。食品成分は、味マスキング効果又は味増強効果を有し得る。
【0027】
本明細書で述べるように、基準タンパク質は、味調整タンパク質、及び/又は味増強タンパク質、及び/又は味タンパク質、特には甘味タンパク質である。味調整タンパク質は、水及び酸味物質を例とする甘くない物質に甘味を誘発する。本明細書で用いられる場合、味タンパク質は、味受容体と結合して味覚を引き起こすことが知られている。本明細書で用いられる場合、甘味タンパク質は、甘味受容体と結合して甘味の知覚を引き起こすことが知られている。甘味受容体の限定されない例としては、I型味受容体メンバー1(TAS1R1、ヒト遺伝子のためのUniprot ID:TS1R1_HUMAN)、I型味受容体メンバー2(TAS1R2、T1R2、TR2、UniProt-Q8TE23)、I型味受容体メンバー3(TAS1R3、T1R3、UniProt-Q7RTX0)が挙げられる。
【0028】
基準タンパク質は、様々な長さであってよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、少なくとも45のアミノ酸、少なくとも80のアミノ酸、少なくとも100のアミノ酸、少なくとも258のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、45アミノ酸、50アミノ酸、54アミノ酸、97アミノ酸、100アミノ酸、158アミノ酸、220アミノ酸、235アミノ酸、258アミノ酸の長さを有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、天然のタンパク質である。いくつかの他の実施形態では、基準タンパク質は、熱帯植物などの植物に見られる。植物の限定されない例としては、カッパリス・マサイカイ(capparis masaikai)、オウブリ(oubli)、セレンディピティベリー、カテンフェ(katemfe)、ミラクルフルーツベリー、又はレンバ(lemba)のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、基準甘味タンパク質は、タウマチン、モネリン、ミラクリン、クルクリン、ブラゼイン、及びマビンリンから成る群より選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、基準甘味タンパク質は、タウマチンである。
【0032】
いくつかの実施形態では、基準甘味タンパク質は、モネリンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、タウマチン-1(GenBankエントリー番号P02883;配列番号1)である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、タウマチン-2(GenBankエントリー番号P02884;配列番号2)である。
【0034】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、A鎖(GenBankエントリー番号P02881;配列番号3)とB鎖(GenBankエントリー番号P02882;配列番号4)とから成るモネリンである。
【0035】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、ミラクリン(GenBankエントリー番号P13087;配列番号6)である。
【0036】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、クルクリン-1 GenBankエントリー番号P19667;配列番号7)、又はクルクリン-2(GenBankエントリー番号Q6F495;配列番号8)である。
【0037】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、ブラゼイン(デフェンシン様タンパク質としても知られる)(GenBankエントリー番号P56552;配列番号9)である。
【0038】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、マビンリンI/甘味タンパク質マビンリン-1(GenBankエントリー番号P80351;配列番号10)、マビンリンII(甘味タンパク質マビンリン-2としても知られる)(GenBankエントリー番号P30233;配列番号11)、マビンリンIII(甘味タンパク質マビンリン-3としても知られる)(GenBankエントリー番号P80352;配列番号12)、マビンリンIV(甘味タンパク質マビンリン-4としても知られる)(GenBankエントリー番号P80353;配列番号13)、又はマビンリン-1 A鎖(GenBankエントリー番号B9SA35;配列番号14)である。
【0039】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、自然には見られない配列であり、したがって、人工タンパク質又は合成タンパク質又は遺伝子操作タンパク質と称される。合成タンパク質は、天然タンパク質のアミノ酸配列の全体又は一部(タンパク質のポリペプチド鎖のすべて又は一部)、又はその一部を含んでいてよい。例えば、基準タンパク質は、天然タンパク質に対応する単一のポリペプチド鎖が得られる結果となる天然タンパク質の結合修飾を含んでいてよく、それによって、野生型タンパク質の少なくとも2つのポリペプチド鎖が、他のアミノ酸によって共有結合される。
【0040】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、MNEIとして知られる修飾モネリンタンパク質である。
【0041】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、単鎖モネリン(MNEI)タンパク質(配列番号5)である。
【0042】
新規な修飾タンパク質は、様々な方法によって設計することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、タンパク質の設計は、計算機ツールを用いることによって、又は専門家のタンパク質設計及び構造生物学的方法によって行われ、例えば、以下でさらに記載するように、部位特異的変異誘発、タンパク質遺伝子操作、又は定向進化である。本発明者らは、基準風味タンパク質の配列データ、基準風味タンパク質の構造データ、並びに/又は基準風味タンパク質と配列及び/若しくは構造の特徴に基準風味タンパク質に対する局所的な又は全体的な類似性を有する他の風味タンパク質との進化データ、に基づく計算方法を開発した。開発し、本明細書で適用した計算機による方法の能力により、本発明者らは、エネルギー的に有利であり、したがって改善された熱安定性、ハロゲン安定性、pH安定性、保存寿命、フォールディング、及び溶解性の特徴を有することが予測される特定のアミノ酸置換を有するタンパク質を設計することができた。具体的には、計算機によるタンパク質設計(CPD)を適用して、必ずしも受容体に対する官能性結合部位ではない基準タンパク質の構造及び/又は配列内の特定の部位にフォーカスした。加えて、CPDの使用により、本発明者らは、必要とされる改善された特徴に適合する所与のセットのアミノ酸に置換を限定することが可能となった。所与のセットのアミノ酸は、入力データ、すなわち、CPDに掛けられるタンパク質の領域、及び出力データ、すなわち、得られる修飾タンパク質に存在可能とされるアミノ酸の位置及び種類の両方である。
【0044】
例えば、CPDを用いることにより、「非理想」アミノ酸(疎水性コア内の親水性アミノ酸又は外部表面領域中の疎水性アミノ酸など)を、「理想」アミノ酸(外部表面領域中の親水性アミノ酸及び疎水性コア内の疎水性アミノ酸など)に置き換えることが可能である。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、外部表面領域中の疎水性アミノ酸を外部表面領域中の親水性アミノ酸に置換することが、口腔との非特異的な結合を低減し、残留する後味感を減少させることが本発明者らによって示唆された。
【0046】
本明細書において開発された方法は、タンパク質構造の全体としてのエネルギーを低下させることになるアミノ酸置換を例とする「安定化置換」を捜すことを含む。全体としてのエネルギーは、本技術分野で公知のアルゴリズムの適用によって算出することができる。そのようなアルゴリズムの限定されない例としては、Rosetta、OSPREY(M. Hallen, J. Martin, et al., Journal of Computational Chemistry 2018; 39(30): 2494-2507 又はEnCoM(Frappier V, Chartier M, Najmanovich RJ. Nucleic Acids Res. 2015; 43(W1): W395-400)が挙げられる。これらのCPD法では、進化的配列及び構造的コンセンサス(structural consensus)、常温及び高温分子動力学(MD)、相関変異解析(CMA)、目視検査、さらにはキャビティの分析、疎水性パッチ、満たされていない水素結合(unsatisfied hydrogen bonds)などの直交法のアレイによってフォーカスとフィルタリングを行う。
【0047】
アミノ酸置換は、以下の考慮に基づいている:(a)表面静電ポテンシャル及び表面の疎水性パッチ(がないこと)、(b)タンパク質の等電点(pI)を特定の範囲内に維持すること、(c)タンパク質内キャビティの分析、(d)高温動力学における相関変異解析、基準振動解析、及び根平均二乗揺らぎ(RMSF)を含む動的安定性、(e)置換のエネルギー特性のエンタルピー及び/又はエントロピー成分、(f)特定の置換の視覚化、(g)関連するタンパク質のファミリー中で許容されるアミノ酸の種類;キュレーションされた多重整列(curated multiple sequence alignment)(MSA)の進化的保存解析によって反映、(h)低擬似エネルギーCPD計算に反映される置換の頻度。
【0048】
計算機による方法は、以下の工程の1又は複数を含む。
【0049】
(1)多重整列(MSA).この工程では、ターゲットの基準タンパク質に対する類似性を有する配列及び/又はタンパク質が公共のデータベースで検索される。この検索に基づいて、多重整列(MSA)が行われ、保存率が算出される。それに基づいて、行われるべきCPDのレベルに関する判断が成される。非保存位置では、すべてのアミノ酸(システインを含んでも又は含まなくても)がCPD時に許容されるが、より保存された位置については、CPDは、見出された特性に類似の特性(例:電荷、サイズなど)を有する残基に限定される。この工程は、物理的知識及び保存データに基づいて、置換を各置換位置に限定することを含む。
【0050】
(2)タンパク質機能解析.この工程では、既知の影響(活性、構造、結合などに対する)を有する置換のデータベースが、これまでの知識を用いて構築される。安定性及び/又は機能を妨害することがこれまでの知識に基づいて既知である置換、さらには隣接する位置(例:これらの位置から0.5~1nmの距離)は、CPD時に制限され、置換されない。
【0051】
(3)CPD.この工程は、ROSETTA、OSPREY、SCWRLなどの指定のソフトウェアによって行われる。確定的CPDが行われる前に、基準タンパク質の3D構造/モデルのエネルギーが最小化される。各基準タンパク質について、複数のモデルが考慮される。
【0052】
(4)選択:最も低いエネルギーを有するタンパク質のモデルが集められる。MSAをこれらのモデルに対して計算機で計算し、保存配列が決定される。生化学的及び生物物理的な予備知識に基づいて、置換のサブセットが選択される。これらのサブセットは、CPD時に高い頻度で出現する1又は複数の位置での置き換えを表している。各サブセットは、次に、タンパク質の3D構造上でモデル化され、エネルギーが最小化される。次に、最もエネルギーの低いサブセットが、さらなる計算機による及び実験による確認のために選択される。
【0053】
CPDに用いられる考慮事項のうちの1つは、受容体結合部位、並びに結合領域及びその近傍のアミノ酸を置換するかどうかの決定である。味受容体に対する結合において重要であるタンパク質中のアミノ酸残基の決定は、一般的に、様々なアミノ酸の単一点置換によって行われ得る。本明細書の実施例において詳述するように、本発明者らは、味受容体の推定結合部位を同定するために、計算機による解析を用いた。本発明者らは、基準タンパク質及び修飾タンパク質と結合する味受容体中のいくつかの新規な結合部位を識別した。
【0054】
修飾タンパク質は、基準タンパク質(アミノ酸配列)に基づいており、このため、修飾タンパク質に関して本明細書で述べるいずれの特徴/特性/特性決定も、対応する基準タンパク質と比較して提供されることには留意されたい。
【0055】
本明細書で述べるように、修飾タンパク質は、基準タンパク質(基準アミノ酸配列)と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質(基準アミノ酸配列)と比較して、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質(基準アミノ酸配列)と比較して、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質(基準アミノ酸配列)と比較して、1~20のアミノ酸置換を含み、場合によっては2~10のアミノ酸置換、場合によっては3~10のアミノ酸置換、場合によっては3~6のアミノ酸置換を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択される基準タンパク質(基準アミノ酸配列)と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示す基準タンパク質と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示す基準タンパク質と比較して、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示す基準タンパク質と比較して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示す基準タンパク質と比較して、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18のアミノ酸置換を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質のアミノ酸配列に対して40%~99%の同一性であるアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して90%~99%の同一性であるアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。
【0065】
いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して60%~90%の同一性であるアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して70%~90%の同一性であるアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。
【0066】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、60%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、90%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列と、90%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、80%~99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0073】
2つ以上のアミノ酸配列間での同一性%は、最大の対応で比較及び整列された場合のその2つ以上の配列に対して決定される。本開示の文脈において、同一性%を有するとして本明細書に記載される配列(アミノ酸)は、同一性が算出された対象である基準配列と同じ機能/活性を有するものと見なされる。
【0074】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質のアミノ酸配列に対して40%~99%の類似性であるアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して90%~99%類似しているアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。
【0075】
いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して60%~90%類似しているアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。いくつかの実施形態では、基準アミノ酸配列に対して70%~90%類似しているアミノ酸配列を含む修飾タンパク質。
【0076】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、60%~99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14から成る群より選択されるアミノ酸配列と、90%~99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列と、90%~99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列と、80%~99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書で用いられる場合、配列類似性又は配列相同性は、ロイシンとイソロイシンとを例とする、類似の物理化学的特性を有する保存されたアミノ酸の量(%)を意味する。
【0084】
配列同一性の決定において、ギャップはカウントされず、配列同一性は、2つのうちの短い方の配列に対するものである。これに関連して、基準タンパク質(アミノ酸配列)の長さが、修飾タンパク質(アミノ酸配列)と同じであってよく、又は修飾タンパク質(アミノ酸配列)と異なっていてもよいことには留意されたい。
【0085】
「アミノ酸配列」及び/又は「ポリペプチド鎖」の用語は、アミノ酸配列又はポリペプチド鎖を有するタンパク質を表すために用いられる。このため、「基準タンパク質」の用語は、「基準アミノ酸配列」の用語と同等であり、「修飾タンパク質」の用語は、「修飾アミノ酸配列」の用語と同等である。「アミノ酸配列」及び/又は「ポリペプチド鎖」の用語は、3D構造を有する配列並びに3D構造を有しない配列を包含することには留意されたい。
【0086】
計算機による最適化プロセスの一部として、修飾タンパク質は、計算機による生物情報学的解析又は構造的生物学的解析後のアミノ酸配列の大量の出力集団から、エネルギー的考慮に基づいて選択されてよく、すなわち、エネルギーの低い配列が選択されてよい。
【0087】
エネルギーの計算は、アミノ酸配列全体に対して適用されてよく、又は別の選択肢として、アミノ酸全体の中の異なる領域若しくは選択されたアミノ酸に限定されてもよい。後者の場合(異なる領域又は選択されたアミノ酸)、その情報は、タンパク質全体に対する測定量を得るために、一体化されてよい。
【0088】
アミノ酸配列(例:修飾タンパク質)の各々の計算は、Rosetta Energy Unit(REU)を用いることなどによって、物理学に基づいたポテンシャル及び統計学に基づいたポテンシャルを組み合わせることによって行われてよい。Rosetta Energy Unit(REU)は、タンパク質構造の計算機によるモデル化及び解析のためのアルゴリズムパケージであるRosettaソフトウェアのアルゴリズムである。Rosettaソフトウェアは、新しいタンパク質設計、酵素設計、リガンドドッキング、並びに生物学的高分子及び高分子複合体の構造予測を含む、計算生物学における著しい科学的進歩を可能とするものである。Rosettaエネルギー関数は、実際のいずれの物理的エネルギーユニットとも適合しない物理学及び統計学に基づいたポテンシャルの組み合わせである。Rosettaエネルギーは、任意スケールであり、REU(「Rosetta Energy Unit」に応じて)と称される場合がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、REUは、少なくとも1つのアミノ酸置換を含むタンパク質配列全体に対して算出されてよい。いくつかの他の実施形態では、REUは、タンパク質配列全体の、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む少なくとも1つの領域に対して算出されてよい。いくつかの他の実施形態では、REUは、タンパク質配列全体における少なくとも1つのアミノ酸置換に対して算出されてよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-190よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる約-190のエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる約-195のエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-195よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-196よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-197よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-198よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる約-198のエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-198.4よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-200よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-206.4よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-210よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-214.6よりも低いエネルギーを有する。
【0091】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-270.11よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-300よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-350よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-400よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-410よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-418よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-420よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-430よりも低いエネルギーを有する。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-433よりも低いエネルギーを有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-190からREUで与えられる約-214.6のエネルギーを有する。いくつかの他の実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-195からREUで与えられる約-214.6のエネルギーを有する。いくつかの他の実施形態では、修飾タンパク質は、REUで与えられる-197からREUで与えられる約-214.6のエネルギーを有する。
【0093】
本明細書で述べるように、修飾タンパク質は、タンパク質の様々な領域でのアミノ酸置換の結果であり得る。「タンパク質の領域」とは、本明細書で用いられる場合、タンパク質配列(アミノ酸配列)又はタンパク質構造の一部であるアミノ酸配列又は構造モチーフを意味する。タンパク質領域の限定されない例としては、タンパク質表面、タンパク質コア、タンパク質ループ領域、二次構造キャップ領域、ジスルフィド領域、結合部位領域、リンカー領域、疎水性パッチ領域、又はタンパク質疎水性領域が挙げられる。
【0094】
基準タンパク質中のアミノ酸置換は、特定のタンパク質領域又は配列に限定されない。アミノ酸置換を含み得る基準タンパク質の領域は、基準タンパク質表面、基準タンパク質疎水性コア、又はループ領域、二次構造のエッジ(二次構造キャップ領域とも称される)、ジスルフィド領域、結合部位領域、リンカー領域、疎水性パッチ領域と称される基準タンパク質領域が挙げられ得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、基準タンパク質構造及び/又は配列の中の限られた領域内で置換されてよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、表面領域で置換されてよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、コア領域で置換されてよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、ジスルフィド結合が置換されてよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、ループ領域で置換されてよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のアミノ酸の置き換えが、基準タンパク質の表面上に位置している。
【0096】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、基準タンパク質の受容体に対する予測される又は既知の結合部位に隣接する領域ではない限られた領域で置換されてよい。この文脈において、「隣接する」とは、結合面から4~7Åであることを意味し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、基準タンパク質構造及び/又は配列の中の異なる領域で置換されてよい。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、少なくとも表面領域、コア領域、ジスルフィド結合の領域、又はループ領域、及びこれらのいずれかの組み合わせで置換されてよい。
【0098】
タンパク質表面領域とは、本明細書で用いられる場合、溶媒に対して部分的に又は完全に露出した領域である(SASA-溶媒露出表面積)。タンパク質コア領域とは、本明細書で用いられる場合、アミノ酸に対してSASA(溶媒露出表面積)が50%未満、内部コアの場合は20%未満である、溶媒に対して露出していない領域である。
【0099】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の表面領域と比較して、表面領域において10%~99%、場合によって20%~99%、場合によって30%~99%、場合によって40%~99%、場合によって50%~90%、場合によって40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の表面領域と比較して、表面領域において10%~99%、場合によって20%~99%、場合によって30%~99%、場合によって40%~99%、場合によって50%~90%、場合によって40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の疎水性コア(疎水性パッチ)領域と比較して、疎水性コア(疎水性パッチ)領域において10%~99%、場合によって20%~99%、場合によって30%~99%、場合によって40%~99%、場合によって50%~90%、場合によって40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の疎水性コア(疎水性パッチ)領域と比較して、疎水性コア(疎水性パッチ)領域において10%~99%、場合によって20%~99%、場合によって30%~99%、場合によって40%~99%、場合によって50%~90%、場合によって40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の表面領域と比較して、表面領域において3~40のアミノ酸置換、4~30、5~30のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列の表面領域と比較して、表面領域において少なくとも1、2、3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも25、又は30のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列のコア領域と比較して、コア領域において20%、30%、50%、80%、90%、95%、98%の同一性であるアミノ酸配列を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列のコア領域と比較して、コア領域において20%、30%、50%、80%、90%、95%、98%の類似性であるアミノ酸配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列のコア領域と比較して、コア領域において1~5のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列中の受容体と結合する領域と比較して、受容体と結合する領域(受容体結合部位)において90%、95%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準アミノ酸配列中の受容体結合部位と比較して、受容体結合部位において90%、95%、99%の類似性を有するアミノ酸配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質の受容体結合部位は、修飾タンパク質において置換されていない。
【0111】
いくつかの実施形態では、ジスルフィド結合の少なくとも1つが除去され、それらの周辺領域は、除去されたジスルフィド結合の各々の周辺で8~20の置換によって再設計される。
【0112】
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般的に知られている三文字表記によって、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字表記によって言及され得る。アミノ酸置換(置き換え)とは、本明細書で用いられる場合、あるアミノ酸から異なるアミノ酸への変化を意味する。これは、典型的には、基準アミノ酸の代わりに他のアミノ酸をコードするようにコドン配列を変化させる、非同義ミスセンス変異によって引き起こされるDNA配列における点変異に起因する。アミノ酸の置き換えは、タンパク質の機能又は構造に対する影響を有する可能性があり、これは、一般的に、置き換えられたアミノ酸が類似している又は類似していない度合い、さらには配列又は構造中でのそれらの位置に依存する。例えば、アミノ酸置換は、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、かさ高さ(又は柔軟性)、ベータ分岐、芳香族性、特定の結合相互作用(水素結合、塩架橋、極性及び非極性相互作用)を付与する能力、pK、糖と結合する能力、及び他の翻訳語修飾の類似性、並びに/又は関与する残基の両親媒性に基づいて行われ得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は、保存的な置き換えであってよい。そのような置き換えは、アミノ酸を類似の特性を呈する別のアミノ酸に変更することを包含する。保存的なアミノ酸の置き換え(保存的なアミノ酸の「置換」又は保存的なアミノ酸の変異とも称される)は、任意のアミノ酸を類似の生化学的、構造的、及び/又は化学的特性を有する異なるアミノ酸に変更するタンパク質におけるアミノ酸の置き換えである。
【0114】
例えば、アミノ酸は、その構造、及びその側鎖(R基)の一般的な化学的特性に基づいて、6つの主要な種類に分類することができる。
【0115】
脂肪族:イソロイシン(I)、ロイシン(L)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V);
ヒドロキシル又は硫黄/セレン含有:セリン(S)、システイン(C)、スレオニン(T)、メチオニン(M);
環状:プロリン(P)
芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)
塩基性:ヒスチジン(H)、リジン(K)、アルギニン(R)
酸性及びそのアミド:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。
【0116】
加えて、以下の群の各々は、互いに保存的置換である他の例示的なアミノ酸を含有する:
1)非常に小さい:アラニン(A)、グリシン(G);
2)負電荷:アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)極性(アミド化カルボキシル側鎖):アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)正に荷電:アルギニン(R)、リジン(K);
6)芳香族:フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、及び場合によってはさらにヒスチジン(H);
7)小さい極性:セリン(S)、スレオニン(T);
8)硫黄含有:システイン(C)、メチオニン(M)
9)小さい:アラニン(A)、グリシン(G)、セリン(S)
10)ベータ分岐:バリン(V)、イソロイシン(I)、及び場合によってはさらにスレオニン(T);
11)極性:アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)。
【0117】
しかしながら、各々がアミノ酸の特性の異なる態様を強調する数多くのアミノ酸インデックスを得るアミノ酸の数多くのクラスターが存在し、例として、アミノ酸インデックスデータベースの何百というそのようなインデックスを参照されたいhttps://www.genome.jp/aaindex/。したがって、保存的な置き換えのいくつかが、舌に対する非特異的な結合又は他の感覚プロファイルの態様を例とする、食品飲料産業での工業的使用に対するタンパク質の適格性にとって重要である他の特徴を実際に表す場合がある。
【0118】
加えて、追加の保存性分析は、以下に基づいており、
- 非極性「疎水性」アミノ酸は、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、アラニン(A)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、スレオニン(T)、セリン(S)、プロリン(P)、グリシン(G)、アルギニン(R)、及びリジン(K)から成る群より選択され;
- 「極性」アミノ酸は、アルギニン(R)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)から成る群より選択され;
- 「正に荷電した」アミノ酸は、アルギニン(R)、リジン(K)、及びヒスチジン(H)から成る群より選択され、並びに
- 「酸性」アミノ酸は、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、及びグルタミン(Q)から成る群より選択される。
【0119】
いくつかの実施形態では、置き換えは、ラジカルな置き換えである。ラジカルな置き換え(置換)は、アミノ酸を、異なる特性を有する別のアミノ酸に交換することである。
【0120】
基準タンパク質と修飾タンパク質との間の配列類似性及び/又は配列同一性の度合いは、一般的に、修飾タンパク質の特性に影響を与え得る。例えば、数の多い置換は、結合動態、フォールディング動態、溶解性、熱安定性、ハロゲン安定性、pH安定性、保存寿命、非水性粒子との結合(例:食品マトリックス中のタンパク質若しくは脂肪、又は口腔中の疎水性領域)、3D構造、さらにはその活性及び関連する特性に影響を与え得る。開発され、本明細書で適用される計算機による方法は、改善された修飾タンパク質が得られる結果となる置換のための推定アミノ酸残基に対する充分な理解を提供する。
【0121】
いくつかの態様によると、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIである。以下の例1に示されるように、CPD解析から、置換において重要であると提案されるいくつかのアミノ酸置換が明らかとなった。
【0122】
したがって、いくつかの態様によると、本開示は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、少なくとも1つのアミノ酸を含む修飾タンパク質に関し、修飾タンパク質は、配列番号5と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、E2である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、I8である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、F11である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、N14である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、G16である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、K17である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、F18である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、V20である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、D21である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、E23である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、Q28である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、R31である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、T33である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、N35である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、C41である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、L62である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、V64である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、Y65である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、S67である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、A73である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、R84である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、F89である。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、以下のアミノ酸、E2、I8、F11、N14、G16、K17、F18、V20、D21、E23、Q28、R31、T33、N35、C41、L62、V64、S67、A73、R84、又はF89のうちの少なくとも1つである。
【0124】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、保存的置換である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、ラジカルな置換である。いくつかの実施形態では、2つ以上のアミノ酸が置換される。
【0125】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、E2の極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換E2S、E3T、E2N、又はE2Qを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、I8の極性無荷電アミノ酸又は疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換I8T又はI8Vを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、F11の荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換F11D又はF11Eを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、N14の荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換N14K又はN14Eを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、G16の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換G16Aを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、K17の荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換K17E又はK17Rを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、F18の荷電アミノ酸又は疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換F18Dを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、V20の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換V20Aを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、D21の荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換D21K、D21R、又はD21Eを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、E23の極性無荷電アミノ酸又は疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換E23T又はE23Aを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、Q28の荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換Q28Kを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、R31の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換R31Vを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、T33の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換T33Vを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、N35の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換N35Vを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、C41の荷電アミノ酸又は極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換C41R又はC41Sを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、L62の荷電アミノ酸又は極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換L62Iを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、V64 L62の荷電アミノ酸又は極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換V64Fを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、Y65の少なくとも1つの置換を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、S67の極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換S67Nを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、A73の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換A73Gを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、R84の疎水性アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換R84Lを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、F89の極性無荷電アミノ酸への少なくとも1つの置換を含む。いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、少なくとも1つの置換F89Sを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するMNEIであり、置換されるべきアミノ酸は、以下のアミノ酸、E2、I8、F11、N14、G16、K17、F18、V20、D21、E23、Q28、R31、T33、N35、C41、L62、V64、S67、A73、R84、又はF89のうちの少なくとも1つである。
【0148】
複数変異を含むMNEIにおけるアミノ酸置換は、既に報告されている。例えば、Zheng et alは、甘味及び安定性が改善された新規な二重変異MNEIベースタンパク質を報告した。具体的には、Zheng et alは、MNEIにおける単一置換E2Nが、3倍の甘味の改善、及び安定性の僅かな低下をもたらす結果となったことを示した。Zheng et alは、さらに、E2N置換に加えて、さらなる置換E23A又はY65Rを導入することが(例:E2N/E23A、E2N/Y65R)、甘味に影響を与えないことも示した。
【0149】
上記で述べたように、アミノ酸E23は、CPD解析の過程で、タンパク質安定性にとって重要であることが識別された。したがって、比較的埋没しているMNEIの23位の荷電グルタミン酸(E23)が、疎水性アミノ酸に置き換えられた。
【0150】
以下の例において本明細書でさらに示されるように、E2、E23、及びY65の位置のアミノ酸での3つの置換を含む修飾タンパク質では、驚くべきことに、6~7倍改善された甘味、並びに感覚プロファイル及び他の成分(ステビアなどの他の甘味剤を含む)との相乗効果などの考え得る他の改善された特性が得られる結果となった。理論に束縛されるものではないが、三重置換は、修飾タンパク質において、甘味に対して相乗効果をもたらす結果となることが示唆された。以下でさらに示されるように、E2、E23、及びY65の位置のアミノ酸での3つの置換を含む修飾タンパク質は、MNEIと同じ範囲内のREUを有し、このことは、置換が安定性に干渉しないことをこのREUが示していることを示唆している。
【0151】
したがって、いくつかの態様によると、本開示は、配列番号5に示すアミノ酸配列を含み、配列番号5の残基E2、E23、及びY65に少なくとも3つのアミノ酸置換を含む修飾タンパク質に関し、修飾タンパク質は、配列番号5と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0152】
そのような実施形態によると、基準タンパク質は、配列番号5に示すMNEIであり、設計タンパク質は、配列番号5のアミノ酸E2、E23、及びY65に少なくとも3つの置換を含むことは理解されたい。
【0153】
アミノ酸E2、E23、及びY65の各々は、いかなるアミノ酸によって置換されてもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸(残基)E2でのアミノ酸置換は、E2R、E2H、E2K、E2D、E2S、E2T、E2N、E2Q、E2C、E2G、E2P、E2A、E2V、E2I、E2L、E2M、E2F、E2Y、E2Wのいずれか1つであってよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸(残基)E23でのアミノ酸置換は、E23R、E23H、E23K、E23D、E23S、E23T、E23N、E23Q、E23C、E23G、E23P、E23A、E23V、E23I、E23L、E23M、E23F、E23Y、E23Wのいずれか1つであってよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸(残基)Y65でのアミノ酸置換は、Y65R、Y65H、Y65K、Y65D、Y65E、Y65S、Y65T、Y65N、Y65Q、Y65C、Y65G、Y65P、Y65A、Y65V、Y65I、Y65L、Y65M、Y65F、及びY65Wのいずれか1つであってよい。
【0154】
いくつかの実施形態では、MNEIである基準タンパク質における少なくとも3つのアミノ酸置換のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つが、保存的置換である。
【0155】
いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E2であり、荷電残基に、所望に応じて負に荷電したアミノ酸に、置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E2であり、酸性残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E2であり、極性残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、E2N、E2D、E2Q、E2R、又はE2Kである。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、E2N、E2D、又はE2Qである。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、E2Nである。
【0156】
いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E23であり、荷電残基に、所望に応じて負に荷電したアミノ酸に、置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E23であり、酸性残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸E23であり、極性残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、E23N、E23D、E23Q、E23R、又はE23Kである。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、E23N、E23D、又はE23Qである。
【0157】
いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸Y65であり、芳香族残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、アミノ酸Y65であり、非極性疎水性残基に置換される。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、Y65F、Y65W、Y65H、Y65V、Y65I、Y65L、Y65M、Y65C、Y65A、Y65T、Y65S、Y65P、Y65G、Y65K、及びY65Rである。いくつかの実施形態では、置換されるべき少なくとも3つのアミノ酸のうちの少なくとも1つは、Y65K及びY65Rである。
【0158】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、MNEIであり、少なくとも3つのアミノ酸置換のうちの少なくとも1つは、E2N、E2D、E2Q、E2R、E2K、E23N、E23D、E23Q、E23R、E23K、Y65F、Y65W、Y65H、Y65V、Y65I、Y65L、Y65M、Y65C、Y65A、Y65T、Y65S、Y65P、Y65G、Y65K、及びY65Rから成る群より選択される。
【0159】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、MNEIであり、少なくとも3つの置換は、E2N、E23V、E23A、Y65K、及びY65Rから成る群より選択される。
【0160】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、MNEIであり、少なくとも3つの置換は、E2N、E23V、及びY65Kである。
【0161】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、MNEIであり、少なくとも3つの置換は、E2N、E23A、及びY65Rである。
【0162】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する:GNWEIIDIGPFTQNLGKFAVDEVNKIGQYGRLTFNKVIRPCMKKTIYENEGFREIKGYEYQLYVKASDKLFRADISEDYKTRGRKLLRFNGPVPPP(配列番号16)。配列番号16は、本明細書において、DM08と称する。
【0163】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する:GNWEIIDIGPFTQNLGKFAVDEANKIGQYGRLTFNKVIRPCMKKTIYENEGFREIKGYEYQLYVRASDKLFRADISEDYKTRGRKLLRFNGPVPPP(配列番号17)。配列番号17は、本明細書において、DM09と称する。
【0164】
いくつかの態様によると、基準タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有する。以下の例2に示されるように、CPD解析から、置換において重要であると提案されるいくつかのアミノ酸置換が明らかとなった。
【0165】
したがって、いくつかの態様によると、本開示は、配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、少なくとも1つのアミノ酸を含む修飾タンパク質に関し、修飾タンパク質は、配列番号1と比較して、少なくとも1つの改善された食品関連特性を有する。
【0166】
いくつかの実施形態では、基準タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、置換されるべきアミノ酸は、以下のアミノ酸、A1、T2、F3、E4、V、R8、S10、Q30、N32、S33、E35、S36、W37、T38、I39、N40、A52、A88、N93、I100、N104、M112、N113、F114、S115、T117、T118、R119、V124、R125、A127、A128、D129、V131、G132、Q133、A136、K137、K139、A140、G142、A148、F152、T154、Y157、G165、P166、E168、Y169、R171、L176、D179、V191、S196、S197、N198、R200、T202、T206、又はA207のうちの少なくとも1つである。
【0167】
本明細書で述べるように、本明細書で述べる修飾タンパク質は、改善された食品関連特性を有する。たんぱく質の甘味度(糖様の風味)などの甘味プロファイル、異味がないこと、開始時間の短縮、及び修飾タンパク質の残味の減少は、本技術分野で知られている公知のいかなる味試験によって特定されてもよい。例えば、スクロース又は他の甘味剤の甘味との比較は、味パネルによって行うことができ、甘味度は、以下の例で詳述するようにスコア付けすることができる。
【0168】
比較は、例えば甘味の知覚を引き起こすのに必要な最小濃度を特定することによる、スクロースなどの既知の甘味剤と比較した修飾タンパク質の閾値を決定することによって、又は甘味プロファイル、甘味開始時間、残味、口当たり、後味、異味、及び不要な味のマスキングなどの特性を含む甘味プロファイルの評価によって成されてよい。
【0169】
本明細書で用いられる場合、甘味に影響を与える特性、の用語は、約0.28mg/L以上の甘味閾値、約1~20秒間、場合によっては2~18秒間、場合によっては2~4秒間の甘味継続時間、のうちの少なくとも1つによって決定される甘味知覚を包含する。
【0170】
基準タンパク質に類似する修飾タンパク質は、甘味受容体と結合する。
【0171】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、重量基準で糖よりも300~16000倍高い知覚甘味閾値を有する。
【0172】
感覚プロファイルは、通常は経時での味強度を示すガウス分布である、すなわち、開始時間(味を感じるまでの時間)、味継続時間、及び残味の時間(ガウス分布のテール部に相当)である味動態を含む。さらなる特徴としては、異味(例:他の受容体との結合に起因)、味の丸み、金属味及び他の付属的な味(side-tastes)、他の成分との相乗効果(例:ステビアなど、他の風味又はその不要な味のマスキング及び増強)などが挙げられる。
【0173】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して以下のうちの少なくとも1つが同等又は改善されていることを特徴とする:(1)構造的熱安定性、(2)機能的熱安定性、(3)pH安定性、(4)水中若しくは部分水性環境中(例:脂肪含有食品)での溶解性、又は(5)保存寿命安定性。
【0174】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して同等又は改善された構造的熱安定性を有する。
【0175】
「構造的熱安定性」又は「熱安定性」の用語は、本明細書で用いられる場合、修飾タンパク質が、基準タンパク質よりも高い温度でその3D構造を維持する能力を意味する。タンパク質の3D構造安定性は、本技術分野で公知のいかなる方法で測定されてもよく、円二色性(CD)、又は示差走査蛍光定量(DSF)若しくは示差走査熱量測定(DSC)などの熱シフトアッセイなどである。タンパク質の3D構造は、タンパク質の機能に対して影響を有し得る。特には、食品及び飲料製品の場合に必要とされる保存寿命及び熱安定性は、構造的熱安定性に関連する場合があり、様々な測定可能値から成り、例えば、低温殺菌は、様々なプロトコルによって適用されてよく、非常に短い時間の間タンパク質構造を維持する耐熱性と関連している。
【0176】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して同等又は高い機能的熱安定性を有する。「機能的熱安定性」の用語は、本明細書で用いられる場合、修飾タンパク質が、基準タンパク質と比較して高い温度への曝露後にその機能を維持する能力を意味する。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書における修飾タンパク質は、より高い温度で、又は制限され得る時間にわたるより高い温度への曝露後に、甘味効果を維持することができる。言い換えると、製品を、室温を超える温度に、場合によっては50℃までの、場合によっては100℃までの、又はさらには150℃までの温度に曝露した後、甘味プロファイル又は感覚プロファイルに感知される変化が存在しない。タンパク質の機能、例えば甘味は、知覚試験によって測定され得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して同等又は高いpH安定性を有する。pH安定性は、基準タンパク質と比較してより広いpH範囲での修飾タンパク質の安定性を意味し、すなわち、修飾タンパク質は、製品を3~8の任意のpHに、場合によっては4~8のpHに曝露した後、3D構造及び/又は機能を維持する。例えば、コーラなどの炭酸飲料は、2.3~2.5のpHを有し、このpHでは、甘味タンパク質の一部は、安定ではなく、直ちに、又は飲料の通常の保存寿命よりも短い時間の後、機能を喪失する。
【0179】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して高い溶解性を有する。溶解性は、脂肪含有食品など、水性、部分水性、又は非水性環境中であり得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して改善された保存寿命を有する。改善された保存寿命とは、製品を150℃までのいずれかの温度に、場合によっては4℃~150°、又は100°までのいずれかの温度に曝露した後、組成物を含む製品の甘味(機能)の感知される変化又は物理的な劣化(例:色変化、相分離など)が発生しないことを意味する。
【0181】
いくつかの他の実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して以下のうちの少なくとも1つが同等又は改善されていることを特徴とする:(1)フォールディング動態、(2)タンパク質の翻訳語修飾(例:グリコシル化)パターンが、基準タンパク質と比較して異なる、(3)ジスルフィド結合の数が、基準タンパク質と比較して少ない。
【0182】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、基準タンパク質と比較して同等又は高いフォールディング動態を有する。すなわち、アンフォールド又は部分フォールド構造からのタンパク質のフォールディング速度が、より速い(例えば分子動力学によってインシリコで評価、又は生体外若しくは生体内の方法での実験によって評価)。あるいは、より速いフォールディング動態は、例えば変性剤滴定(例:塩化グアニジニウム及び/又は高濃度尿素)又は他の方法による変性実験におけるより遅いアンフォールディング動態も意味する。
【0183】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、評価した宿主生物中において、基準タンパク質と比較して同等又は高い発現量を特徴とする。
【0184】
いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、7.8~8.4のPI値を有する。
【0185】
甘味を、さらには考え得る他の味の効果(不要な味のマスキング、後味の減少、残味の減少、異味の減少、残味開始の減少、うまみ)を特徴とする本明細書で述べる修飾タンパク質は、経口送達のための製品の製造における甘味剤として用いることができる。
【0186】
修飾タンパク質は、風味調整剤又は風味増強剤として用いることができる。
【0187】
本明細書で述べるタンパク質は、経口製品として用いるためのものである。いくつかの実施形態では、製品は、食品製品、補助食品製品、又は医薬品である。製品の製造において、本明細書で述べるタンパク質は、いかなる食品グレードの添加剤と組み合わされてもよい。食品製品は、いかなる固体乾燥形態で提供され、用いられてもよく、限定されないが、微細粉末、凍結乾燥物、顆粒、錠剤などが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、液体の形態で、例えば水への溶質として(水溶液)、提供される。
【0188】
タンパク質を含む製品は、様々な用途を有し得る。これには、限定されないが(以下の各々は、本開示の別々の実施形態を構成する)、食品及び飲料産業(ソフトドリンク、すぐに飲める飲料、シロップ、機能性ドリンク、スポーツドリンクなど)における、乳製品産業、すなわち、乳製品、ヨーグルト、及びプリンにおける、医薬品産業における、自然療法産業、栄養補助食品産業、及び他のヘルスケア製品(例:歯磨き粉、マウスウォッシュ)における、キャンディ及びガム産業における、又は賦形剤若しくは添加剤として風味調整組成物の使用を必要とする他のいずれかの用途における、甘味剤、風味剤、増強剤、又はマスキング剤としての使用が含まれる。
【0189】
製品は、追加の食品成分を含んでよい。いくつかの実施形態では、食品成分は、甘味剤、例えばステビアである。以下の例に示されるように、本明細書で述べる修飾タンパク質とステビアとの組み合わせは、相乗効果を生み出した。したがって、いくつかの実施形態では、製品は、配列番号16又は配列番号17で示す少なくとも1つの修飾タンパク質とステビアとを含む。
【0190】
本発明に従う修飾タンパク質は、本技術分野で公知のいかなる方法によって製造されてもよく、例えば、タンパク質の製造は、合成によって、遺伝子組み換えDNA技術によって、又は発酵槽を介する微生物での若しくは植物での若しくは植物カルスでの若しくは他のバイオリアクターでのタンパク質産生によって行われてよいことには留意されたい。いくつかの実施形態では、修飾タンパク質は、大腸菌などの細菌中で産生されてよい。いくつかの他の実施形態では、修飾タンパク質は、サッカロミセス・セレビシア(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母菌によって産生されてよい。いくつかの実施形態では、選択されたアミノ酸配列のDNA配列は、RNA及びDNAレベルで最適化される。RNAレベルでは、これは、リボソームへの素早い挿入を確実とするために、RNA二次構造を最小限とすることを含む。DNAレベルでは、これは、宿主生物に対するコドン最適化を含む(RNAレベルの最適化を考慮)。コドン出現頻度最適化によって、発現される各アミノ酸に対して、宿主生物中で最も豊富なtRNAの優先的な使用が得られる。
【0191】
上記に関して、与えられる場合、例えば10%、50%、120%、500%などのパーセントの値は、「倍率変化」の値、すなわち、それぞれ0.1、0.5、1.2、5などと交換可能であることは理解されたい。
【0192】
本明細書で用いられるすべての科学用語及び技術用語は、特に断りのない限り、本技術分野において一般的に用いられる意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書において頻繁に用いられるある特定の用語の理解を促進するためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0193】
本明細書で用いられる場合、「約」の用語は、±10%を意味する。「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」の用語、及びこれらの活用形は、「含んでいるが限定されない」を意味する。「本質的に成る」の用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含んでよいが、但し、その追加の成分、工程、及び/又は部分が、請求される組成物、方法、又は構造の基本的で新規な特徴を実質的に変化させない場合のみであることを意味する。本明細書で用いられる場合、「約」の用語は、1%まで、より詳細には5%、より詳細には10%、より詳細には15%、場合によっては20%まで、言及される値よりも上又は下へ逸脱してもよい値を示しており、その逸脱範囲は、連続する範囲を構成する整数値、及び該当する場合は非整数値も含む。
【0194】
本明細書及び添付の請求項で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容からそうでないことが明らかに示されていない限り、複数の指示対象も含むことには留意されたい。
【実施例
【0195】
限定されない例
例1-MNEIベースタンパク質の設計及び特性決定
例1A:MNEIベースタンパク質の設計
MNEIベースタンパク質の設計は、以下のようにして行った:一本鎖モネリン、MNEIは、96のアミノ酸から成り、分子量が約11kD、pIが約8.7であるポリペプチドである。MNEIは、配列番号5として示す。
【0196】
計算機による方法
上記で述べたように、計算機及び専門家による解析から、低減された配列空間が得られ、これはさらに、計算機によって、又は専門家によって、又は実験によって、又はこれらの方法の組み合わせによってさらに解析することができる。そのような解析は、個々のアミノ酸に、アミノ酸のクラスターに、又は他の組み合わせに対して適用することができる。
【0197】
CPDプロセスの過程で、アミノ酸の置き換えが、受容体との結合部位の一部となりにくい特定領域で可能とされ、例えば、タンパク質のコアを形成するヘリックス及びベータシートの非露出側の周囲である。ROSETTAを実行して、160Kのモデルという結果を得た。すべてのモデルのエネルギーを描画すると、結果のグラフは、ロジット関数の形態を有する。ロジット関数(対数オッズとしても知られる)は、オッズp/(1-p)の対数であり、ここでpは、確率である。それは、S字状の「ロジスティック」関数の逆関数である。
【0198】
さらなる解析のために、5Kの最も低いモデルを選択した。REUの関数として置き換え(MNEIと比較した)の数をプロットすると、ガウス分布が得られ、集団は正規分布であり、さらなる解析に対して有効であることが示された。
【0199】
表1は、基準タンパク質配列全体に広がっている特定の残基に対して行ったCPDから、MNEIの二次構造要素のすべてに広がるアルファ-ヘリックス、ベータ-シート、及びループでの置き換えが提案されたことを示す。
【0200】
重要なことには、普通ではない(non-trivial)置き換えが識別された。例えば、V64Fの置き換えは、ベータ-シートに非ベータ-シートアミノ酸を導入した。ベータ-シート領域でのほとんどの置き換えは、その三次構造を保護するために、ベータ-シートアミノ酸に対してである。
【0201】
表1から、ほとんどの埋没した位置において、CPDの提案は、Leu、Ala、又はValなどの疎水性残基への置き換えであることも分かる。そのような置き換えは、タンパク質のコアを安定化させる可能性が高いと考えられ、したがって、安定性及び保存寿命を向上させる。しかしながら、CPDの結果が、極性又は荷電残基への置き換え(例:N14K)であるケースが少し存在する。そのような置き換えは、MNEIのコアを安定化させる可能性は低いと考えられる。注意深く調べたところ、そのような驚くべき置き換えは、他の残基又は水分子との水素結合を形成する可能性が高いと考えられる。
【0202】
表面の完全に又は部分的に露出した位置は、ほとんどが、水と相互作用してMNEIを安定化することができる極性又は荷電残基に置き換えられる。しかし、CPDが、R84Lを例とする疎水性残基への置き換えを提案する予想外のケースがある。そのようなケースは、予想外かつ独特であり、MNEIの3D構造を調べることによっては説明されない可能性が高いと考えられる。
【0203】
加えて、CPDプロセスの過程で、タンパク質の解析後に特定のアミノ酸が選択され、アミノ酸E23が、安定性にとって重要な残基であることが識別された。このアミノ酸単独の又は組み合わせての寄与を、CPDで試験した。表2は、そのような解析のREU値を示す。
【0204】
表3は、上記で詳述したように設計した修飾MNEIベースタンパク質(改造タンパク質)を示す。
【0205】
タンパク質は、1Lの高密度発酵で発現させ、イオン交換クロマトグラフィ、及びそれに続くサイズ排除クロマトグラフィによって>90%まで精製した。
【0206】
表4は、新規な改造タンパク質の構造的特性決定を示す。
【0207】
例1B:ソフトドリンクモデル溶液中での改造MNEIベースタンパク質に対する甘味閾値の感覚評価
本実験の目的は、新規なMNEIベースタンパク質及びMNEIの甘味閾値を評価すること、並びに新規なタンパク質DM08及びDM10の味閾値を算出することであった。
【0208】
方法:
本明細書で述べるMNEIベースタンパク質のスクロースと比較した甘味度は、典型的には、1:700~1:16000の範囲内である。したがって、比較のために、MNEIベースタンパク質及びMNEI(基準タンパク質として)の溶液を、まず1:1000に希釈し、必要に応じてさらに希釈した。一般的に、ほとんどの人にとってのソフトドリンクにおける糖の甘味閾値は、0.32%~1.0%である。MNEIベースタンパク質及びMNEI(基準タンパク質として)の濃度の計算を、しかるべく行った。
【0209】
本実験で用いた溶液を、表5に詳細に示す。溶液の調製は以下のようにして行った。各溶液について、ある量の甘味剤(スクロース/MNEI/改造(修飾)タンパク質;詳細は表1を参照)を、表3に示すように添加し、この溶液を、水で100gに仕上げた(1%の糖に相当する甘味剤を得るために)。各溶液の20mlをテイスティングカップに注ぎ、各サンプルを、盲検試験のために表5に従ってマーキングした。
【0210】
試験手順:
調製した溶液の各々に対する甘味閾値を評価するために、二重盲検味試験を行った。試験したサンプルには、MNEI、2つのMNEI改造タンパク質(DM08及びDM10)、スクロース、及びミネラル水を含めた。味試験の直前に、タンパク質のストック溶液をミネラル水(pH6.9)で希釈することによって一連の濃度を調製した(表3)。このセッションには、30~50歳の男性2名女性3名の計5名の健康な評価者が参加し、このうち3名は熟練したテイスターであった。
【0211】
20mlのサンプルを、糖溶液と比較してランダムに試験した。各試験の前に、評価者には、口を水でゆすぐこと、及び残留する味がなくなるまで中間的な味のクラッカーを食べることを求めた。試験溶液を少なくとも10秒間口に含んだ。次に、評価者は、自身の応答に従い、甘さの知覚なしを0、非常に甘いを10とする0~10でサンプルをスコア付けした。
【0212】
甘味感知の閾値は、テイスターがサンプルを甘いと認識した最低濃度として定義した。甘味度は、スクロースに対して報告する。
【0213】
結果と考察
ほとんどの参加者は、0.5%のスクロース溶液を甘いと認識し、平均スコアは0.63±0.6であった。1%のスクロース溶液の平均スコアは、1.25±0.9であり、直線的な用量応答が示された(データ示さず)。
【0214】
MNEIに対しても類似のパターンが観察され:希釈率1:4000、1:2000、及び1:1000に対してそれぞれ、0.68±0.2、0.98±0.4、及び2.2±1.0であった。これらの結果は、MNEIの甘味閾値が1:2000に近く、1Bx知覚を模倣する甘味度は約2000であることを示した。
【0215】
MNEI改造タンパク質DM08に関して、1:12000~1:1000の希釈範囲内でやはり直線的な用量応答曲線が示され、甘味閾値は約1:12000であり、1Bx知覚を模倣する甘味度は約10000であることを示した。
【0216】
MNEI改造タンパク質DM10も、直線的な曲線を呈し、甘味閾値は1:1000に近く、1Bx知覚を模倣する甘味度は約1000であった。
【0217】
図1は、上記で述べた溶液の甘味平均スコアの概要を示す。
【0218】
例1C:MNEI溶液に対する甘味閾値の感覚評価
本実験の目的は、甘味MNEIベース改造タンパク質を特性決定すること、及び甘いとして感知又は認識することができる甘味剤の最低濃度として定義される甘味閾値を評価することである。本実験では、新規な改造MNEIベースタンパク質DM09、DM11、及びDM12の味閾値を試験した。
【0219】
方法:
上記で記載したように、糖と比較した甘味タンパク質の甘味度は、食品組成に応じて異なり、典型的には、1:700~1:3000の範囲内である。したがって、甘味タンパク質溶液を、まず1:1000に希釈し、必要に応じてさらに希釈した。
【0220】
ほとんどの人にとってのソフトドリンクにおける糖の甘味閾値は、0.32%~1.0%である。MNEI濃度及びMNEIベースタンパク質の計算を、しかるべく行った。
【0221】
本実験で用いた溶液を、表4に詳細に示す。溶液の調製は以下のようにして行った。各溶液について、ある量の甘味剤(スクロース/MNEI/改造タンパク質;詳細は表1を参照)を、表6に示すように添加し、この溶液を、水で100gに仕上げた(1%の糖に相当する甘味剤を得るために)。各溶液の20mlをテイスティングカップに注ぎ、各サンプルを、盲検試験のために表6に従ってマーキングした。
【0222】
試験手順:
調製した溶液の各々に対する甘味閾値を評価するために、二重盲検味試験を行った。試験したサンプルには、MNEI、2つのMNEI改造タンパク質(DM09、DM11、及びDM12)、スクロース、及びミネラル水を含めた。味試験の直前に、タンパク質のストック溶液をミネラル水(pH6.9)で希釈することによって一連の濃度を調製した(表6)。このセッションには、30~75歳の男性5名女性1名の計6名の健康な評価者が参加し、このうち半分は熟練したテイスターであった
【0223】
甘味感知の閾値は、テイスターがサンプルを甘いと認識した最低濃度として定義した。甘味度は、スクロースに対して報告する。
【0224】
20mlのサンプルを、糖溶液と比較してランダムに試験した。各試験の前に、評価者には、口を水でゆすぐこと、及び残留する味がなくなるまで中間的な味のクラッカーを食べることを求めた。試験溶液を少なくとも10秒間口に含んだ。次に、評価者は、自身の応答に従い、甘さの知覚なしを0、非常に甘いを10とする0~10でサンプルをスコア付けした。
【0225】
甘味感知の閾値は、テイスターがサンプルを甘いと認識した最低濃度として定義した。甘味度は、スクロースに対して報告する。
【0226】
結果と考察
水の甘味(コントロール)は、0.5±0.8の平均値で感知された。値がゼロではないことは、前のサンプルの残味の影響に起因する可能性がある。すべての参加者は、0.5%のスクロース溶液を甘いと認識し、平均スコアは1.9±0.9であった。1%のスクロース溶液の平均スコアは、3.8±1.9であり、直線的な用量応答が示された(図1)。
【0227】
MNEIに対しても類似のパターンが観察され:希釈率1:2000、1:1000、及び1:500に対してそれぞれ、1.0±0.7、2.5±1.4、及び4.7±3.2であった。これらの結果は、MNEIの甘味閾値が1:1000~1:2000であり、1Bxの糖溶液に匹敵する約1000の甘味度であることを示す。
【0228】
モネリンの改造タンパク質DM11に関して、希釈率1:500、1:1000、及び1:2000に対してそれぞれ、0.0±0.0、0.3±0.8、及び0.4±0.9のサンプルスコアから示されるように、甘味度は500未満であると考えられる。モネリンの改造タンパク質DM12は、すべての希釈率に対して1.0に類似の値を呈し、顕著な用量応答はなかった。
【0229】
モネリンの改造タンパク質DM09は、直線的な用量応答曲線を示し、甘味閾値は約1:16000であり、1Bx糖溶液を模倣する甘味度は16000~8000であることを示している。
【0230】
結果を図2に示す。
【0231】
例1D:MNEI及びMNEI改造タンパク質の甘味度
上記の最適化に基づいて、DM08及びDM09の甘味度、後味、及び残味効果を、表7に示すように、MNEI及びさらなる甘味剤と比較して試験した。試験方法は、6名の熟練参加者で、タンパク質を各々の糖溶液と比較する盲検試験を含んでいた。
【0232】
分かるように、MNEIと比較して、MNEI改造タンパク質の甘味度が高い。試験した実験において、MNEI及びMNEI修飾タンパク質DM08の甘味閾値は、重量基準で糖の10000倍高く、DM09では、糖の15000倍高いことには留意されたい。非直線的な用量応答が示され、DM08に対する8BX知覚での甘味度が、糖の3500倍高く、DM09では、糖の4000倍高いことを示している。
【0233】
さらに、6名の参加者で、糖溶液と比較した様々な組み合わせの盲検試験で相乗効果を試験した(表8)。
【0234】
MNEI改造タンパク質(DM08/DM09とステビア(REB A))との間の相乗効果が、1.0:1.0~0.1:1.0のステビア/MNEI比の範囲内で、以下のように示された。
【0235】
- ステビア+MNEI改造タンパク質DM08及びDM09の甘味強度は、加算した値よりも高かった。
【0236】
- MNEI改造タンパク質とステビアとの組み合わせは、開始の遅延、並びに全体としての残味及び他の後味を低減した。
【0237】
さらなる組み合わせを、6名の参加者で、様々な組み合わせの糖溶液に対する盲検比較によって試験した。
【0238】
表9 8.0BX知覚(3.0BX糖添加)での味プロファイルを示す(ステビア:MNEI改造タンパク質比 0.1:1.0)-MNEI改造タンパク質とステビアとの間の糖の存在下での相乗効果
【0239】
試験したサンプルはすべて、糖(3Bx)の存在下で、開始の遅延の低減並びに残味及び他の後味の低減を伴うより良好な味性能を呈した。
【0240】
ステビア/DM08のブレンド(E及びG)は、その糖のような味プロファイルで際立っている。
【0241】
示されるように、試験したすべての修飾タンパク質は、同等又は改善された甘味を呈することが見出され、さらには、DM12によって明らかにされた甘味をMNEIと類似のレベルまで出現させ、DM09では、少なくとも同等又は改善された融解温度であった。
【0242】
例2-タウマチンベースタンパク質の設計
例2A-タウマチンベースタンパク質の設計
タウマチンベースタンパク質の設計を、基準タンパク質として配列番号1に基づいて行った。
【0243】
計算機による方法
CPDプロセスの過程で、可能とされた唯一の置き換えは、タンパク質のコアを形成するヘリックス及びベータシートの非露出側の周囲である。ROSETTAを実行して、71K以上のモデルという結果を得た。すべてのモデルのエネルギーを描画すると、結果のグラフは、ロジット関数の形態を有する。ロジット関数(対数オッズとしても知られる)は、オッズp/(1-p)の対数であり、ここでpは、確率である。それは、S字状の「ロジスティック」関数の逆関数である。
【0244】
さらなる解析のために、5Kの最も低いモデルを選択した。REUの関数として置き換えの数をプロットすると、ガウス分布が得られ、集団は正規分布であり、さらなる解析に対して有効であることが示された。CPDの結果は、表11に見ることができる。

【0245】
例2B:タウマチン修飾タンパク質のピキア・パストリス(現在はコマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffi)と称される)中での発現
6種類のタウマチン変異体を、2つの異なる誘導系、すなわち、メタノール誘導発現及びグルコース誘導発現を用いて、酵母菌P.パストリスからの発現及び分泌について試験した。配列及び発現系は、以下の表12に示す。
【0246】
発現を、X33又はLP1ピキア株で試験し、続いてゼオシン(500~1000μg/ml)によるエレクトロポレーション及び選別を行った。結果の例を図3に示しており、これは、アクリルアミドゲルで分離された条件培地を示している。選択されたコロニーからの条件培地を、アクリアミドゲルエレクトロポレーションで分離し、銀染色によって検出した。コスマチン(Cosmatin)(レーン2~7)が、22kDalの正しい分子量で検出されている(矢印)。分泌は、アミラーゼ(T8-1)又はアルファ接合因子(2)シグナル配列によって誘導される。レーン1-同じ条件下でのタウマチン発現、分泌はタウマチン「プレ」シグナル配列(MAATTCFFFLFPFLLLLTLSRA)によって誘導。
【0247】
実験は、X-33、GS115、及びLP1を含む3つの異なる宿主生物株で行った。発現系には、メタノール誘導(プロモーターAOX1を使用、X33、GS115、及びLP1株で試験)及びグルコース誘導(プロモーターG1-3を使用、LP1及びGS115株で試験)の両方を含めた。
【0248】
異なるシグナルペプチドをスクリーニングした。AOX1の場合、これらには、aアミラーゼ、アルファK、アルファT、グルコアミラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、キラープロ(killerpro)、リゾチーム、アルブミン、及びプレ-タウマチンが含まれる。G1-3の場合、これらには、プレ-タウマチン、LSP1、LSP2、及びアルファMFが含まれる。
【0249】
タウマチンの場合、CPDソフトウェアで最も低い擬似エネルギースコアを受けたものは、54の置換を含んでいた。しかし、数多くの直交法による交差検証の後、実験室で発現されたいくつかの修飾タンパク質は、3及び22の置換を含んでいた。直交法は、計算機誘導モデル内さらにはそのタンパク質の進化ファミリー内での配列及び構造保存、疎水性パッチの解析、キャビティ、動的高温及び低温動力学(例えば、分子動力学によって評価)、視覚化、既知の変異体などの約72000モデルとの対応、並びに擬似エネルギー(スコアリング関数)分布、を含む。各モデルは、異なる配列であり、すべての擬似エネルギーは、入力(野生型)タンパク質よりも低い。5000の最低擬似エネルギーモデルにフォーカス:擬似エネルギー対置換の数(直交法によるスコアリング及び確認前の計算機の出力)。
【0250】
例3:受容体結合部位の特性決定
少なくとも以下のアミノ酸を含む受容体結合部位の特性決定であって、Aは、TAS1R2(ヒト由来)に対応し、Bは、TAS1R3(ヒト由来)に対応し、番号は、対応する配列中の対応する残基(アミノ酸)に対応する。
【0251】
加えて、少なくとも以下のアミノ酸を含む受容体結合部位であって、Aは、TAS1R2(ヒト由来)に対応し、Bは、TAS1R3(ヒト由来)に対応し、番号は、対応する配列中の対応する残基(アミノ酸)に対応する(表14)。
【0252】
少なくとも以下のアミノ酸を含む受容体結合部位であって、Aは、TAS1R2(ヒト由来)に対応し、Bは、TAS1R3(ヒト由来)に対応し、番号は、対応する配列中の対応する残基(アミノ酸)に対応する(表15)。
【0253】
図4A~4Cは、提案された結合部位の図を示す。タウマチンの受容体へのドッキングをシミュレーションすると、受容体上に高い確率の3つの結合部位が見出された。シミュレーションの過程において、数多くのドッキング予測実験を行い、低エネルギーの結果をクラスター化する。図4A~4Cは、3つの部位、及びこれらの部位上でのタウマチンのクラスター化を示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【配列表】
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