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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】ヨウ化イソプロパミド含有医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20250310BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20250310BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250310BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250310BHJP
【FI】
A61K31/165
A61P11/02
A61P25/02
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021017244
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120384
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000102496
【氏名又は名称】エスエス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 泰久
(72)【発明者】
【氏名】吉村 理
【審査官】清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263298(JP,A)
【文献】特開2017-114833(JP,A)
【文献】特開平08-208483(JP,A)
【文献】特開2004-143141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/165
A61P 11/02
A61P 25/02
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)及び(B)を含有する医薬。
(A)ヨウ化イソプロパミド
(B)炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物
【請求項2】
成分(B)が、炭酸水素ナトリウムである、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、0.001以上200以下である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、5以上200以下である、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項5】
剤形が、固形製剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項6】
剤形が、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤又はドライシロップ剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項7】
ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬に、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物を含有せしめる工程を含む、医薬の変色を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヨウ化イソプロパミド含有医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ化イソプロパミドは、副交感神経を遮断することにより鼻水の分泌を抑える抗コリン薬の一種であるが、配合性や安定性が悪く、特に他の成分と組み合わせて感冒薬や鼻炎薬等とした場合に経時的に含量低下や変色が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-325142号公報
【文献】特開2004-143141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような背景の下、ヨウ化イソプロパミドの経時的な含量低下を抑制するために、ヨウ化イソプロパミドを含有する固形製剤にポリビニルピロリドン又は糖アルコールを配合することが提案されている(特許文献1、2)が、ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬の変色抑制を実現したという報告はあまりみられない。
また、上記のような変色を覆い隠すために、製剤をフィルムコーティングすることが一般に行われているが、フィルムコーティング層が薄い場合や素錠のようなフィルムコーティングされていないタイプの剤形の場合などであっても変色がみられないものとしたいという要求がある。
【0005】
本発明の課題は、ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬の経時的な変色を抑制する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ヨウ化イソプロパミドとともに、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物を組み合わせて用いることによって、経時的な変色を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の<1>~<7>を提供するものである。
<1> 以下の成分(A)及び(B)を含有する医薬。
(A)ヨウ化イソプロパミド
(B)炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物
【0008】
<2> 成分(B)が、炭酸水素ナトリウムである、<1>に記載の医薬。
<3> 成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、0.001以上200以下である、<1>又は<2>に記載の医薬。
<4> 成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕が、5以上200以下である、<1>又は<2>に記載の医薬。
【0009】
<5> 剤形が、固形製剤である、<1>~<4>のいずれかに記載の医薬。
<6> 剤形が、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤又はドライシロップ剤である、<1>~<5>のいずれかに記載の医薬。
【0010】
<7> ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬に、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物を含有せしめる工程を含む、医薬の変色を抑制する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬の経時的な変色を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔医薬〕
(成分(A))
本発明の医薬は、(A)ヨウ化イソプロパミドを含有する。
ヨウ化イソプロパミドは、公知の方法により製造でき、市販品を用いることもできる。
成分(A)の含有量は、変色抑制効果等の観点から、本発明の医薬中、0.01質量%以上80質量%以下が好ましく、0.05質量%以上60質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上30質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0013】
(成分(B))
本発明の医薬は、(B)炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物を含有する。これらの化合物は、公知の方法により製造でき、市販品を用いることもできる。また、アルギニン、アラニンは、D体、L体、DL体のいずれでもよいが、アルギニンとしてはL-アルギニンが好ましく、アラニンとしてはDL-アラニンが好ましい。
成分(B)の中でも、成型性、崩壊性等の観点から、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシンが好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。
【0014】
成分(B)の含有量は、変色抑制効果等の観点から、本発明の医薬中、20質量%以上99.99質量%以下が好ましく、40質量%以上99.95質量%以下がより好ましく、70質量%以上99.9質量%以下が更に好ましく、85質量%以上99.5質量%以下が特に好ましい。
【0015】
また、成分(A)に対する成分(B)の含有質量比〔(B)/(A)〕は、変色抑制効果、成型性、崩壊性、安定性等の観点から、0.001以上200以下が好ましく、0.1以上175以下がより好ましく、1以上150以下が更に好ましく、5以上125以下が更に好ましく、10以上100以下が特に好ましい。含有質量比〔(B)/(A)〕を10以上100以下とした場合に変色が更に長期的に抑制される。
【0016】
本発明の医薬は、成分(A)及び(B)に加えて、成分(A)及び(B)以外の薬物(以下、他の薬物ともいう)並びに医薬品添加物から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。
他の薬物としては、例えば、抗コリン薬(ヨウ化イソプロパミドを除く)、制酸剤(炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト及びグリシンを除く)、抗炎症剤、催眠鎮静剤、鎮咳去痰薬、カフェイン類、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ビタミン類、筋弛緩剤、生薬類等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記抗コリン薬としては、例えば、ロートエキス、ロート根、ベラドンナ総アルカロイド、臭化水素酸スコポラミン、臭化ブチルスコポラミン、臭化メチルベナクチジウム、臭化チメピジウム、ピレンゼピン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
抗コリン薬(ヨウ化イソプロパミドを除く)の含有量は、本発明の医薬中、通常0質量%以上10質量%以下、好ましくは0質量%以上1質量%以下、より好ましくは0質量%以上0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%以上0.01質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0018】
上記制酸剤としては、例えば、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、ケイ酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセタート、炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
制酸剤(炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト及びグリシンを除く)の含有量は、本発明の医薬中、通常0質量%以上10質量%以下、好ましくは0質量%以上1質量%以下、より好ましくは0質量%以上0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%以上0.01質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0019】
上記抗炎症剤としては、例えば、イブプロフェンやその塩、グリチルリチン酸やその塩、トラネキサム酸、グリチルレチン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム、アスピリン、サリチルアミド等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記催眠鎮静剤としては、例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロモバレリル尿素等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記鎮咳去痰薬としては、例えば、アンブロキソール塩酸塩、L-エチルシステイン塩酸塩、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、ブロムヘキシン塩酸塩、L-カルボシステイン、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、クエン酸チペピジン、チペピジンヒベンズ酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩、リン酸ジメモルファン、ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリンサッカリン塩等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記カフェイン類としては、例えば、カフェイン水和物、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤としては、例えば、メキタジン、アゼラスチン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エピナスチン塩酸塩、ロラタジン、セチリジン塩酸塩、オロパタジン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記ビタミン類としては、例えば、ビタミンB1、ビタミンB1誘導体、ビタミンB2、ビタミンB2誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、ヘスペリジン、ヘスペリジン誘導体、これらの塩等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記筋弛緩剤としては、例えば、メトカルバモール、クロルゾキサゾン、プリジノールメシル酸塩、クロルフェネシンカルバミン酸エステル、エペリゾン塩酸塩、アフロクアロン、チザニジン塩酸塩等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記生薬類としては、例えば、ジリュウ、ケイヒ、カンゾウ、シャクヤク、ボタンピ、チンピ、ショウキョウ、サンショウ、キキョウ、マオウ、キョウニン、ハンゲ、シャゼンソウ、セネガ、サイコ、シンイ等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
他の薬物の合計含有量は、本発明の医薬中、通常0質量%以上75質量%以下、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上10質量%以下、更に好ましくは0質量%以上1質量%以下である。
【0028】
上記医薬品添加物としては、例えば、乳糖、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム等の崩壊剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の界面活性剤;ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルメロースナトリウム等の結合剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル等の滑沢剤:軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等の流動化剤等が挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、色素、甘味料、矯味剤等を使用することができる。
【0029】
医薬品添加物の合計含有量は、本発明の医薬中、通常0質量%以上99質量%以下、好ましくは0質量%以上90質量%以下、より好ましくは0質量%以上50質量%以下、特に好ましくは0質量%以上25質量%以下である。
【0030】
本発明の医薬の剤形としては、固形製剤(例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤等)、ドライシロップ剤等)又は半固形製剤(例えば、ゼリー剤等)が好ましく、固形製剤がより好ましい。また、本発明の医薬は、好ましくは経口用である。なお、顆粒剤の平均粒径は、好ましくは50~1000μm、より好ましくは50~500μmである。当該平均粒径は、篩分け法で測定できる。
上記のような剤形の中でも、顆粒剤、錠剤、カプセル剤が好ましく、顆粒剤、錠剤がより好ましい。また、錠剤としては、例えば、素錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠等が挙げられる。また、本発明の医薬は、素錠のような非コーティングタイプの固形製剤の場合でも経時的な変色が生じにくく外観の色調が維持されやすいものである。
【0031】
本発明の医薬の服用量は、ヨウ化イソプロパミドを1日あたりに0.1~7.5mg服用できる量が好ましく、1日あたりに3~7.5mg服用できる量がより好ましい。また、ヨウ化イソプロパミドを1回あたりに0.1~7.5mg服用できる量が好ましく、1回あたりに1~2.5mg服用できる量がより好ましい。
【0032】
〔医薬の製造方法、変色抑制方法〕
本発明の医薬は、(A)ヨウ化イソプロパミドを含有する医薬に、(B)炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、グリシン、アルギニン及びアラニンから選ばれる1種以上の化合物を含有せしめる工程(以下、工程1とも称する)を含む方法によって製造できる。この方法によれば、ヨウ化イソプロパミドを含有するにも拘らず経時的な変色が生じにくい医薬を簡便に製造することができる。
なお、医薬の製造方法、変色抑制方法において、各種文言の意義、各成分の配合量等は本発明の医薬について説明したのと同様である。
【0033】
(工程1)
工程1において、成分(A)及び(B)の医薬中への配合の順番の先後は問わない。
工程1としては、成分(A)及び(B)並びに必要に応じて他の成分(上記薬物や医薬品添加物)を混合する工程が好ましい。具体的には、成分(A)及び(B)並びに必要に応じて他の成分を混合して混合物とする手法や、成分(A)及び(B)並びに必要に応じて他の成分を混合し、得られた混合物を必要に応じて水又は含水アルコール等の溶媒と練り合わせた後、公知の方法で造粒して粒状物とする手法が挙げられる。
なお、工程1で得られた組成物中における含有質量比〔(B)/(A)〕は、目的とする本発明の医薬中の含有質量比〔(B)/(A)〕と同様であることが好ましい。
【0034】
また、工程1で粒状物を得た場合、工程1の後に、乾燥、粉砕、篩分け、マルメライザーによる球形化処理、糖類や高分子等によるコーティング等を行ってもよい。また、工程1で粒状物を得た場合、得られた粒状物は、顆粒剤、細粒剤、散剤としてそのまま使用することができる。また、粒状物を常法に従って打錠することで錠剤を得ることができ、粒状物を常法に従ってカプセルに充填することでカプセル剤を得ることができる。
【0035】
そして、上記のようにして得られる本発明の医薬は、ヨウ化イソプロパミドを含有するにも拘らず経時的な変色が生じにくいものである。
本発明の医薬は、感冒薬、鼻炎薬、鎮暈薬、胃腸薬等として極めて有用である。
【実施例
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
〔試験例1 安定性試験〕
以下に示す実施例及び比較例の各サンプルをそれぞれ調製した後、当該サンプル約3gをプラスチックトレーに載せ、箱型乾燥機(PH-202/エスペック製)で60℃、調湿なしの条件で一晩静置し、サンプルの変色の有無を以下の基準で評価した。結果を表1~3に示す。
【0038】
-実施例1-
ヨウ化イソプロパミド1.5gと炭酸水素ナトリウム1.5gを混合し、練合水として精製水を適量(0.4g)添加しながら乳鉢で練合することで、実施例1のサンプルを得た。
-実施例2~12、比較例1~22-
各成分の種類及び使用量を表1~3に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~12、比較例1~22のサンプルを得た。
-比較例23-
ヨウ化イソプロパミド1.5gを比較例23のサンプルとした。
【0039】
(試験例1における安定性の評価基準)
A:保存開始直後及び一晩静置後のいずれも白色であり変色なし
B:保存開始直後は白色であるが、一晩静置後には白色から淡黄色に変色
C:保存開始直後は白色であるが、一晩静置後には白色から黄色に変色
D:保存開始直後は白色であるが、一晩静置後には白色から濃黄色に変色
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
〔試験例2 安定性試験〕
実施例5、6、比較例23のサンプルを試験例1と同様にして調製した後、当該サンプル約3gをプラスチックトレーに載せ、箱型乾燥機(PH-202/エスペック製)で60℃、調湿なしの条件で一晩静置した後、開放系にて30℃の条件で更に1週間静置した。当該静置後におけるサンプルの変色の有無を以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
【0044】
(試験例2における安定性の評価基準)
A:保存開始直後及び一晩+1週間静置後のいずれも白色であり変色なし
B:保存開始直後は白色であるが、一晩+1週間静置後には白色から淡黄色に変色
C:保存開始直後は白色であるが、一晩+1週間静置後には白色から黄色に変色
D:保存開始直後は白色であるが、一晩+1週間静置後には白色から濃黄色に変色
【0045】
【表4】
【0046】
〔製剤例1 顆粒剤〕
イブプロフェン300g、クロルフェニラミンマレイン酸塩3.75g、ヨウ化イソプロパミド3g、dl-メチルエフェドリン塩酸塩30g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース300g、乳糖水和物69.25g及び炭酸水素ナトリウム30gに精製水を添加し、常法により湿式造粒後、乾燥・整粒し、造粒末736gを得た。
【0047】
〔製剤例2 素錠〕
上記製剤例1で得られた造粒末に、結晶セルロース155g、軽質無水ケイ酸25g、タルク7g及びステアリン酸マグネシウム7gを添加し均一に混合し、打錠用粉末を得た。この打錠用粉末を、9.5mmφの臼杵を用いて1錠あたり310mgになるように、常法によりロータリー打錠機で圧縮成型し、素錠を得た。
【0048】
〔製剤例3 硬カプセル剤〕
上記製剤例1で得られた造粒末248gに、タルク2gを添加し均一に混合し、日局硬カプセル(2号)に1カプセルあたりの充填質量が250mgになるように充填し、硬カプセル剤を得た。