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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20250310BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G9/087 325
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021059005
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155664
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】村田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】上田 未紀
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142632(JP,A)
【文献】特開2006-039346(JP,A)
【文献】特開2019-219643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、第一の樹脂及び第二の樹脂を含有し、
該第一の樹脂は結晶性樹脂であり、
該第二の樹脂は非晶性樹脂であり、
透過型電子顕微鏡による100個の該トナー粒子の断面観察において、
(i)該トナー粒子のそれぞれの断面における該第一の樹脂が占める面積の割合を面積割合A(面積%)としたとき、該面積割合Aの平均値が、30面積%~75面積%であり、
(ii)該面積割合Aが90面積%以上である該トナー粒子の断面の数をXとし、観察したトナー粒子の全断面の数をZとしたとき、X/Zが、0.15以上0.45以下である
ことを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記第二の樹脂が、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂、ポリエステル樹脂及びビニル系樹脂からなる群から選択された少なくとも一の樹脂である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記第一の樹脂が、下記式(1)で表される第一のモノマーユニットを有する請求項1又は2に記載のトナー。

[式(1)中、RZ1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表す。]
【請求項4】
前記第一の樹脂が、前記第一のモノマーユニットを有するビニル系樹脂である請求項3に記載のトナー。
【請求項5】
前記第一の樹脂中の前記第一のモノマーユニットの含有割合が、20.0質量%~100.0質量%である請求項3又は4に記載のトナー。
【請求項6】
透過型電子顕微鏡による前記トナー粒子の断面観察において、
前記面積割合Aが30面積%~70面積%であるトナー粒子の断面が、前記第一の樹脂を含むマトリクスと、前記第二の樹脂を含むドメインとで構成されるマトリクスドメイン構造を有する請求項1~5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記ドメインの長径の個数平均径が、0.5μm~1.4μmである請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
透過型電子顕微鏡による100個の前記トナー粒子の断面観察において、
前記トナー粒子のそれぞれの断面における前記第二の樹脂が占める面積の割合を面積割合B(面積%)とし、
該面積割合Bが90面積%以上であるトナー粒子の断面の数をYとしたとき、Y/Zが0.10以上0.25以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式などに用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従い、高速印刷化や省エネルギー対応への要求がさらに高まっている。高速印刷に対応するため、定着工程においてはトナーをより素早く溶融させる技術が検討されている。また、生産性を向上させるために1つのジョブ中や、ジョブ間における各種制御の時間を短縮する技術が検討されている。また、省エネルギー対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーをより低い温度で定着させる技術が検討されている。
【0003】
トナーの結着樹脂の主成分を、シャープメルト性を有する結晶性樹脂にすることで主成分が非晶性樹脂であるトナーに比べて優れた低温定着性を有することが知られている。シャープメルト性を有する樹脂として、結晶性ポリエステルや結晶性のビニル系樹脂を使用したトナーが各種提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、側鎖に結晶性を有するアクリレート系樹脂を用いることで低温定着性と耐熱保存性を両立させるトナーが提案されている。当該文献のトナーは、低温定着性と耐熱保存性を両立することができている。しかしながら、結晶性のビニル系樹脂を結着樹脂として使用したトナーは高温領域における粘度が低すぎるためホットオフセットや巻き付きが起こりやすく、定着できる温度領域が狭いことがわかってきた。
【0005】
そこで、トナーが溶融したのちの粘度を高くするため、結晶性樹脂に対して非晶性樹脂を添加する検討が行われている。例えば、特許文献2では、結晶性のビニル系樹脂と非晶性樹脂を併用した結着樹脂を用いたトナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-130243号公報
【文献】特開2014-142632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のトナーはある程度定着領域が確保できているものの、画像の耐久性などの点に関してさらなる改善が必要であることがわかった。本開示は、高速印刷時における低温定着性と、耐ホットオフセット性とを両立し、さらに画像の耐久性が良好なトナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、第一の樹脂及び第二の樹脂を含有し、
該第一の樹脂は結晶性樹脂であり、
該第二の樹脂は非晶性樹脂であり、
透過型電子顕微鏡による100個の該トナー粒子の断面観察において、
(i)該トナー粒子のそれぞれの断面における該第一の樹脂が占める面積の割合を面積割合A(面積%)としたとき、該面積割合Aの平均値が、30面積%~75面積%であり、
(ii)該面積割合Aが90面積%以上である該トナー粒子の断面の数をXとし、観察したトナー粒子の全断面の数をZとしたとき、X/Zが、0.15以上0.45以下である
ことを特徴とするトナー。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高速印刷時における低温定着性と、耐ホットオフセット性とを両立し、さらに画像の耐久性が良好なトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。例えば、ポリマー中のビニル系モノマーが重合した主鎖中の、炭素-炭素結合1区間を1ユニットとする。ビニル系モノマーとは下記式(Z)で示すことができる。
【化1】
【0011】
式(Z)中、Zは、水素原子、又はアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基)を表し、Zは、任意の置換基を表す。
結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)測定において明確な吸熱ピークを示す樹脂を指す。
【0012】
本開示は、
結着樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂は、第一の樹脂及び第二の樹脂を含有し、
該第一の樹脂は結晶性樹脂であり、
該第二の樹脂は非晶性樹脂であり、
透過型電子顕微鏡による100個の該トナー粒子の断面観察において、
(i)該トナー粒子のそれぞれの断面における該第一の樹脂が占める面積の割合を面積割合A(面積%)としたとき、該面積割合Aの平均値が、30面積%~75面積%であり、
(ii)該面積割合Aが90面積%以上である該トナー粒子の断面の数をXとし、観察したトナー粒子の全断面の数をZとしたとき、X/Zが、0.15以上である
トナーに関する。
【0013】
本発明者らは、結着樹脂として多量の結晶性樹脂を用いた場合、非晶性樹脂と併用した場合においても、耐オフセット性が必ずしも向上しないことを見出した。場合によっては、低温定着性と耐ホットオフセット性のどちらも低下することもあることがわかった。
【0014】
また、一般にコート紙と呼ばれ、紙表面を炭酸カルシウムやクレーなどの無機物質で塗工した紙に形成した画像は、画像と別のコート紙との摺擦により剥がれたり欠けたりするなどの課題がある。本発明者らは、結晶性樹脂と非晶性樹脂の種類・比率を検討する中で、結晶性樹脂と非晶性樹脂の含有比率の異なるトナー粒子を併用した場合に優れた低温定
着性と定着ラチチュードを両立でき、さらに画像耐久性が向上しやすいことを見出した。それをもとに鋭意検討を進めた結果、上記トナーに至った。
【0015】
トナーは、第一の樹脂である結晶性樹脂及び第二の樹脂である非晶性樹脂を含有することを特徴とする。さらに、透過型電子顕微鏡による100個のトナー粒子の断面観察において、トナー粒子のそれぞれの断面における第一の樹脂が占める面積の割合を面積割合A(面積%)としたとき、面積割合Aの平均値が、30面積%~75面積%であることを特徴とする。
【0016】
面積割合Aは、トナー粒子中の第一の樹脂である結晶性樹脂の存在比率を示している。面積割合Aの平均値が30面積%~75面積%であることで結晶性樹脂に由来するシャープメルト性の効果が発揮され、低温定着性と耐ホットオフセット性に優れたトナーとなる。面積割合Aの平均値が30面積%未満であると、低温定着性が低下する。一方、面積割合Aの平均値が75面積%を超えると、耐ホットオフセット性が低下する。面積割合Aの平均値は、好ましくは38面積%~73面積%である。
【0017】
また、面積割合Aが90面積%以上であるトナー粒子の断面の数をXとし、観察したトナー粒子の全断面の数をZとしたとき、X/Zが0.15以上であることを特徴とする。このことは、結晶性樹脂の存在比率が高いトナー粒子がトナー中に一定量以上存在することを示している。このように、トナー中に面積割合Aの平均値よりも高い面積割合Aを有するトナー粒子が一定量以上存在することで、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性を両立し、さらにコート紙における画像耐久性が向上する。X/Zが0.15未満であると、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性を両立ができず、画像耐久性が低下する。X/Zは、好ましくは0.17以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは0.45以下であり、より好ましくは0.37以下である。
【0018】
そのメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。上記トナーは、面積割合Aの平均値が30面積%~75面積%であることから、トナー粒子中に結晶性樹脂と非晶性樹脂がどちらも一定量存在しているといえる。結晶性樹脂のシャープメルト性による低温定着性の良化効果と、非晶性樹脂による耐ホットオフセット性の両立を期待したものであるが、これだけでは上記効果を発揮しない。それは、トナー粒子中に存在する結晶性樹脂は同じトナー粒子中に存在する非晶性樹脂によりそのシャープメルト性を阻害されるため、定着時において想定したシャープメルト性が得られないのではないかと考えている。
【0019】
一方、面積割合Aが90面積%以上であるトナーは、トナー粒子中の非晶性樹脂の存在割合が少ない。そのため、トナー粒子全体としてシャープメルト性が高く、他のトナー粒子よりも先に溶融する。それによりトナー粒子間の空隙を埋める効果があり、断熱層となる空気の割合が減少するため、トナー全体として低温定着性が良化するものと考えている。さらに、トナー粒子間に存在していた空隙に由来する形成された画像中の空隙が少なくなるため、外力がかかった際に応力集中する箇所が少なくなり、画像の耐久性も向上すると考えている。
【0020】
面積割合Aが上記の範囲になるトナーを製造する方法としては、例えば次の方法が挙げられる。結晶性樹脂と非晶性樹脂の比率を制御することで、面積割合Aの平均値が略30面積%~75面積%の範囲に入るようなトナー粒子群(トナー粒子群1とする)を製造する。別途、面積割合Aが90面積%以上となるトナー粒子を含有する別のトナー粒子群(トナー粒子群2とする)を製造する。その後、トナー粒子群1とトナー粒子群2を上記範囲となるように混合することで製造することができる。
【0021】
なお、一般的なトナーの製造方法、例えば溶融混練法、乳化凝集法、溶解懸濁法、乳化重合法等で製造されたトナー粒子においては、面積割合Aにある程度の分布が生じることは考えられる。しかし、通常知られる製造方法で製造する場合において、面積割合Aのばらつきは平均値に対して±5面積%の範囲内に収まる。
【0022】
また、面積割合Aの平均値が30面積%~75面積%であるトナー粒子の断面が、第一の樹脂を含むマトリクスと、第二の樹脂を含むドメインとで構成されるマトリクスドメイン構造を有していることが画像の光沢性向上の観点で好ましい。この場合、ドメインの長径の個数平均径が0.1μm~2.0μmであることが好ましく、0.5μm~1.4μmであることがより好ましい。
【0023】
トナーは、結晶性樹脂である第一の樹脂を含有する。結晶性樹脂を有することで、低温定着性が良好になる。トナーに用いられる結晶性樹脂としては、公知の結晶性樹脂を用いることができる。
【0024】
例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、及び結晶性ポリウレア樹脂が挙げられる。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体などのエチレン共重合体等も挙げられる。
【0025】
なかでも、低温定着性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂や結晶性ビニル系樹脂が好ましい。また、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂であってもよい。なお、ビニル系樹脂は、ビニル基などのエチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の重合体又は共重合体である。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
【0026】
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールと、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物の縮重合物であることが好ましい。より好ましくは、結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコール成分を主成分として含む単量体と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれるカルボン酸成分を主成分として含む単量体との縮重合物である。
【0027】
炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコ-ル、ネオペンチルグリコールが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール及び1,12-ドデカンジオールが好ましく例示される。
【0028】
主成分とはその含有量が50質量%以上であることをいう。より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノー
ルA等の芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0029】
また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0030】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコ-ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、ラウリルアルコール、2-エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
【0031】
一方、炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。より好ましくは、アジピン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸が挙げられる。
【0032】
上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
【0033】
また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
【0034】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコール単量体とをエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0036】
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジ
ブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
【0037】
エステル化若しくはエステル交換反応又は縮重合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
【0038】
さらに、第一の樹脂は、ビニル系樹脂であることがより好ましく、下記式(1)で表される第一のモノマーユニットを有することが好ましい。第一の樹脂は、下記式(1)で表される第一のモノマーユニットを有するビニル系樹脂であることがさらに好ましい。また、第一の樹脂中の第一のモノマーユニットの含有割合は、好ましくは20.0質量%~100.0質量%である。上記範囲であると、低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立しやすい。第一の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5000~100000であり、より好ましくは15000~70000である。
【化2】
【0039】
式(1)中、RZ1は、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数18~36のアルキル基を表す。該Rは炭素数18~30のアルキル基であることが好ましい。また、該アルキル基は直鎖構造であることが好ましい。
【0040】
式(1)で表される第一のモノマーユニットは、側鎖にRで示される炭素数18~36のアルキル基を有しており、この部分があることで、第一の樹脂は結晶性を発現しやすい。第一の樹脂中の該第一のモノマーユニットの含有割合が、20.0質量%~100.0質量%であることで第一の樹脂が結晶性を有し、低温定着性がより向上しやすい。該含有割合は、40.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましい。上限は特に限定はないが、後述する他のモノマーユニットを含有する場合、90.0質量%以下が好ましく、80.0質量%以下がより好ましい。
【0041】
また、式(1)で表される第一のモノマーユニットを有する結晶性樹脂は、側鎖に結晶性を有する構造をとるためか、従来よく知られている結晶性樹脂である結晶性ポリエステルに比較し、高温高湿環境における帯電維持性に優れている。
【0042】
式(1)で表される第一のモノマーユニットは、炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一に由来するモノマーユニットであることが好ましい。
【0043】
炭素数18~36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンエイコサニル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸リグノセリル、(メタ)アクリル酸セリル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸ミリシル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチルなど]及び炭素数18~36の分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸2-デシルテトラデシルなど]が挙げられる。
【0044】
これらの内、トナーの低温定着性の観点から、炭素数18~36の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、炭素数18~30の直鎖のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも一がより好ましく、直鎖の(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニルからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。該第一のモノマーユニットを形成するモノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
第一の樹脂は上述した該式(1)で表される第一のモノマーユニット以外のその他のモノマーユニットを含有してもよい。第一の樹脂がビニル系樹脂である場合、その他のモノマーユニットを形成する重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。また、その他のモノマーユニットを形成する重合性単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ニトリル基を有する単量体;例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど。
ヒドロキシ基を有する単量体;例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルなど。
【0046】
アミド基を有する単量体;例えば、アクリルアミド、炭素数1~30のアミンとエチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のカルボン酸(アクリル酸及びメタクリル酸など)を公知の方法で反応させた単量体。
【0047】
ウレア基を有する単量体:例えば、炭素数3~22のアミン[1級アミン(ノルマルブチルアミン、t-ブチルアミン、プロピルアミン及びイソプロピルアミンなど)、2級アミン(ジノルマルエチルアミン、ジノルマルプロピルアミン、ジノルマルブチルアミンなど)、アニリン及びシクロキシルアミンなど]と、エチレン性不飽和結合を有する炭素数2~30のイソシアネートとを公知の方法で反応させた単量体など。
カルボキシ基を有する単量体;例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-カルボキシエチル。
【0048】
ビニルエステル類;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、及びオクチル酸ビニル。
【0049】
また、スチレン、o-メチルスチレンなどのスチレン及びその誘導体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステル類も挙げられる。エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのような不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンのような不飽和ポリエン類も挙げられる。
【0050】
芳香族ジビニル化合物;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;エーテル結合
を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ポリエステル型ジアクリレート類;多官能の架橋剤。該芳香族ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0051】
該アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。
【0052】
中でも、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、又はウレア基を有する単量体を使用することが好ましい。より好ましくは、ニトリル基、アミド基、ウレタン基、ヒドロキシ基、及びウレア基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基とエチレン性不飽和結合とを有する単量体である。これらの単量体を用いると、低湿環境での帯電の立ち上がり性がより向上する。
【0053】
好ましくは、第一の樹脂は、下記式(A)で表されるスチレンが重合したモノマーユニット及び下記式(B)で表される(メタ)アクリル酸が重合したモノマーユニットを有する。式(A)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは5.0質量%~80.0質量%であり、より好ましくは8.0質量%~70.0質量%である。式(B)で表されるモノマーユニットの含有割合は、好ましくは0.1質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.2質量%~2.0質量%である。
【化3】
【0054】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。第一の樹脂がビニル系樹脂である場合、例示した重合性単量体と重合開始剤を用いて製造することができる。該重合開始剤は、効率の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下で用いるとよい。
【0055】
重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、メチル
エチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドのようなケトンパーオキサイド類、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロビルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-tert-ブチルパーオキシイソフタレート、tert-ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ-tert-ブチルパーオキシアゼレート。
【0056】
結着樹脂は、第二の樹脂を含有し、第二の樹脂は非晶性樹脂である。非晶性樹脂としては、公知の非晶性樹脂を用いることができる。例えば、以下のものが挙げられる。
【0057】
ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂、ビニル系樹脂。これらの中でも、第二の樹脂は、ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂、ポリエステル樹脂及びビニル系樹脂からなる群より選択される少なくとも一の樹脂を含有することが好ましい。
【0058】
ポリエステル樹脂としては、通常トナーに使用されるポリエステル樹脂を好適に用いることができる。該ポリエステル樹脂に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが挙げられる。
【0059】
多価アルコールとしては、以下のものが挙げられる。2価アルコールとして、以下のビスフェノール誘導体が挙げられる。ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなど。
【0060】
その他の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチ
レングリコール、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。これらの多価アルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
【0061】
多価カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。2価のカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
【0062】
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、以下のものが挙げられる。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステル。
【0063】
これらのうち、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)又はその酸無水物などの誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの多価カルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
【0064】
ポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述の多価アルコール及び多価カルボン酸を同時に仕込み、エステル化反応又はエステル交換反応、及び縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃以上290℃以下の範囲が好ましい。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタン系触媒、スズ系触媒、酢酸亜鉛、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの重合触媒を用いることができる。該非晶性樹脂に用いるポリエステル樹脂は、チタン系触媒及びスズ系触媒の少なくとも一方を使用して縮重合されたものが好ましい。
【0065】
第二の樹脂として使用するビニル系樹脂は、例えば、エチレン性不飽和結合を含む重合性単量体の重合体が挙げられる。エチレン性不飽和結合とは、ラジカル重合することが可能な炭素-炭素二重結合を指し、例えば、ビニル基、プロペニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0066】
重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチ
ル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-クロルエチル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸及びアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα-メチレン脂肪族モノカルボン酸及びそのエステル類;また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなど。
【0067】
さらに、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルヘキシル)スチレンのようなヒドロキシ基を有する重合性単量体。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0068】
ビニル系樹脂には、上記以外に、ビニル重合が可能な種々の重合性単量体を必要に応じて併用してもよい。該重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのような不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンのような不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンのようなN-ビニル化合物;ビニルナフタリン類;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸のような不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物のような不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルのような不飽和塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸のような不飽和塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸のようなα,β-不飽和酸の酸無水物;該α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルのようなカルボキシ基を有する重合性単量体。
【0069】
また、ビニル系樹脂は、必要に応じて以下に例示するような架橋性重合性単量体で架橋された重合体であってもよい。該架橋性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類;ポリエステル型ジアクリレート類;多官能の架橋剤。該芳香族ジビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0070】
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオール
ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものなどが挙げられる。
【0071】
ビニル系樹脂は、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、m-ニトロスチレン、o-ニトロスチレン、p-ニトロスチレン、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸-2-クロルエチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-(1-ヒドロキシ-1-メチルブチル)スチレン、及び4-(1-ヒドロキシ-1-メチルヘキシル)スチレンからなる群より選ばれた少なくとも一を含む重合性単量体の重合体であることが好ましい。
【0072】
また、ビニル系樹脂は、当該群より選ばれた少なくとも一の重合性単量体、及び、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、及びネオペンチルグリコールジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも一の架橋性重合性単量体、を含む単量体の共重合体であってもよい。単量体中の架橋性重合体の含有量は、0.5質量%~5.0質量%程度にするとよい。
【0073】
ビニル系樹脂は、重合開始剤を用いて製造された樹脂であってもよい。重合開始剤は、効率の観点から、重合性単量体100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下で用いるとよい。重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
【0074】
2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-カーバモイルアゾイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドのようなケトンパーオキサイド類、2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノ
イルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロビルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-tert-ブチルパーオキシイソフタレート、tert-ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ-tert-ブチルパーオキシアゼレート。
【0075】
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂を形成するのに使用されるビニル系樹脂及びポリエステル樹脂としては、前述した第二の樹脂として使用するビニル系樹脂及びポリエステル樹脂と同様のものを使用することができる。
【0076】
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂を製造する方法としては、例えば、両樹脂を生成するモノマーのいずれとも反応しうる化合物(以下「両反応性化合物」という)を用いて重合する方法が挙げられる。
【0077】
両反応性化合物としては、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、及びフマル酸ジメチルなどの化合物が挙げられる。これらのうち、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0078】
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂が結合したハイブリッド樹脂を用いた場合、該ハイブリッド樹脂中のビニル系樹脂の含有割合は、10質量%以上、20質量%以上、40質量%以上、60質量%以上、80質量%以上であることが好ましく、100質量%以下、90質量%以下であることが好ましい。
【0079】
第二の樹脂の酸価AVaは、高温高湿下における帯電性向上の観点から、50.0mgKOH/g以下であることが好ましく、30.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは0mgKOH/g以上であり、帯電立ち上がり性向上の観点から、0.5mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは1.0mgKOH/g以上である。
【0080】
透過型電子顕微鏡による100個のトナー粒子の断面観察において、トナー粒子のそれぞれの断面における第二の樹脂が占める面積の割合を面積割合B(面積%)とする。面積割合Bが90面積%以上であるトナー粒子の断面の数をYとしたとき、Y/Zが0.10以上であることが好ましく、0.14以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、好ましくは0.25以下であり、より好ましくは0.20以下である。Y/Zが0.10以上であると、第二の樹脂である非晶性樹脂の割合が多いトナー粒子が画像中においてフィラーとしてはたらき強度が高まるため、画像の耐久性がさらに向上する。また、面積割合Bの平均値は、好ましくは25面積%~70面積%であり、より好ましくは27面積%~62面積%である。
【0081】
面積割合Bが上記の範囲になるトナーを製造する方法としては、例えば次の方法が挙げられる。結晶性樹脂と非晶性樹脂の比率を制御することで、面積割合Aの平均値が略30面積%~75面積%の範囲に入るようなトナー粒子群(トナー粒子群1とする)を製造す
る。別途、面積割合Aが90面積%以上となるトナー粒子を含有する別のトナー粒子群(トナー粒子群2とする)を製造する。さらに面積割合Bが90面積%以上となるトナー粒子を含有する別のトナー粒子群(トナー粒子群3とする)を製造する。その後、トナー粒子群1~3を上記範囲となるように混合する。
【0082】
結着樹脂は、顔料分散性を向上させるなどの目的により、本開示の効果を損なわない程度に、第一の樹脂、第二の樹脂以外の第三の樹脂を含有してもよい。該樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂。
【0083】
トナー粒子はワックスを含有してもよい。該ワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
【0084】
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
【0085】
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、2.0質量部~30.0質量部であることが好ましい。
【0086】
トナー粒子は、必要に応じて着色剤を含有してもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点から好ましい。
【0087】
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド
1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0088】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパースバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0089】
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0090】
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~30.0質量部であることが好ましい。
【0091】
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有してもよい。該荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く、且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0092】
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
【0093】
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし、外添してもよい。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部~10.0質量部が好ましい。
【0094】
トナーは、外添剤を含有してもよい。例えば、トナー粒子に外添剤を外添してトナーとしてもよい。外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子などの無機微粒子が好ましい。流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g~400m/gの無機微粒子が好ましく、耐久性向上のためには、比表面積が10m/g~50m/gの無機微粒子が好ましい。
【0095】
トナーの流動性や耐久性を共に向上させるために、比表面積が上記範囲内の無機微粒子を併用してもよい。外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部~10.0質量部であることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサーなどの公知の混合機を用いることができる。
【0096】
該トナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。すなわち、トナー及び磁性キャリアを含有する二成分系現像剤であって、該トナーが上述のトナーであることが好ましい。
【0097】
磁性キャリアとしては、鉄粉又は表面を酸化した鉄粉;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子又はそれらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;該磁性体と、該磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など、一般に公知のものが例示できる。トナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、二成分系現像剤中のトナーの含有量は、2質量%~15質量%程度であることが好ましく、4質量%~13質量%程度であることがより好ましい。
【0098】
トナー粒子の製造方法は、特に制限されず、懸濁重合法、乳化凝集法、溶融混練法、溶解懸濁法など従来公知の製造方法を採用できる。以下、溶融混練法を例に挙げて説明するが、これらに限定されるわけではない。
【0099】
まず、原料混合工程において、トナー粒子を構成する材料として、第一の樹脂及び第二の樹脂又は第一の樹脂及び第二の樹脂を含有する結着樹脂、並びに、必要に応じて、ワックス、着色剤、荷電制御剤などの他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0100】
次に、混合した材料を溶融混練して、第一の樹脂及び第二の樹脂を含有する結着樹脂中に該他の成分を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロールなどで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0101】
溶融混練工程の混練温度、スクリューの回転数などにより、第一の樹脂と第二の樹脂の分散状態、ドメインの個数平均径などを制御することが可能である。
【0102】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0103】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級
方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得るとよい。
【0104】
また、乳化凝集法でトナー粒子を製造する場合について説明する。乳化凝集法では、トナー粒子の構成材料から成る微粒子分散液を作製する分散工程、トナー粒子の構成材料から成る微粒子を凝集させて、トナー粒子の粒子径になるまで粒子径を制御する凝集工程、得られた凝集粒子に含まれる樹脂を融着させる融合工程、その後の冷却工程、得られたトナーをろ別し、過剰な多価金属イオンを除去する金属除去工程、イオン交換水などで洗浄するろ過・洗浄工程、及び洗浄したトナー粒子の水分を除去し乾燥する工程を経てトナー粒子が製造される。
【0105】
<樹脂微粒子分散液を調製する工程(分散工程)>
樹脂微粒子分散液は、公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。公知の方法としては、例えば、乳化重合法、自己乳化法、有機溶剤に溶解させた樹脂溶液に水系媒体を添加していくことで樹脂を乳化する転相乳化法、又は、有機溶剤を用いず、水系媒体中で高温処理することで強制的に樹脂を乳化する強制乳化法が挙げられる。
【0106】
具体的には、第一の樹脂、第二の樹脂など結着樹脂を、これらを溶解できる有機溶媒に溶解して、必要に応じて界面活性剤や塩基性化合物を加える。その際、結着樹脂が融点を有する結晶性樹脂であれば、融点以上に加熱して溶解させてもよい。続いて、ホモジナイザーなどにより撹拌を行いながら、水系媒体をゆっくり添加し樹脂微粒子を析出させる。その後、加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂微粒子の水系分散液を作製する。
【0107】
樹脂を溶解するために使用する有機溶媒としては、該樹脂を溶解できるものであればどのようなものでも使用可能であるが、トルエンなどの水と均一相を形成する有機溶媒を用いることが、粗粉の発生を抑える観点から好ましい。
【0108】
界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系などのアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、及びジエチルアミノエタノールなどの有機塩基が挙げられる。該塩基性化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
また、樹脂微粒子の水系分散液中における樹脂微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)は、0.05μm~1.00μmであることが好ましく、0.05μm~0.40μmであることがより好ましい。体積分布基準の50%粒径(D50)を上記範囲に調整することで、トナー粒子として適切な重量平均粒径である3μm~10μmのトナー粒子を得ることが容易になる。なお、体積分布基準の50%粒径(D50)の測定には、動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を使用するとよい。
【0111】
<着色剤微粒子分散液の調製>
必要に応じて用いられる着色剤微粒子分散液は、以下に挙げる公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。着色剤、水系媒体及び分散剤を公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機により混合することで調製できる。ここで用いる分散剤は、界面活性剤及び高分子分散剤といった公知のものを使用できる。界面活性剤及び高分子分散剤のいずれの分散剤も後述する洗浄工程において除去できるが、洗浄効率の観点から、界面活性剤が好ましい。
【0112】
界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、及びせっけん系などのアニオン界面活性剤;アミン塩型、及び4級アンモニウム塩型のようなカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、及び多価アルコール系のようなノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0113】
これらの中でもノニオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤が好ましい。また、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とを併用してもよい。該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。該界面活性剤の水系媒体中における濃度は、0.5質量%~5質量%が好ましい。着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の含有量は特に制限はないが、着色剤微粒子分散液の全質量に対して1質量%~30質量%であることが好ましい。
【0114】
また、着色剤の水系分散液中における着色剤微粒子の分散粒径は、最終的に得られるトナー粒子中での着色剤の分散性の観点から、体積分布基準の50%粒径(D50)が0.50μm以下であることが好ましい。また、同様の理由で、体積分布基準の90%粒径(D90)が2μm以下であることが好ましい。なお、水系媒体中に分散した着色剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150:日機装製)で測定する。
【0115】
着色剤を水系媒体中に分散させる際に用いる公知の撹拌機、乳化機、及び分散機のような混合機としては、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、圧力式ホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、及びペイントシェーカーが挙げられる。これらを単独若しくは組み合わせて用いてもよい。
【0116】
<ワックス微粒子分散液の調製>
必要に応じてワックス微粒子分散液を用いてもよい。ワックス微粒子分散液は、以下に挙げる公知の方法により調製できるが、これらの手法に限定されるものではない。ワックス微粒子分散液は、界面活性剤を含有した水系媒体にワックスを加え、ワックスの融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザー(例えば、エム・テクニック社製の「クレアミックスWモーション」)や圧力吐出型分散機(例えば、ゴーリン社製の「ゴーリンホモジナイザー」)で粒子状に分散させた後、融点未満まで冷却することで作製することができる。
【0117】
ワックスの水系分散液中におけるワックス微粒子分散液の分散粒径は、体積分布基準の50%粒径(D50)が0.03μm~1.0μmであることが好ましく、0.10μm~0.50μmであることがより好ましい。また、1μm以上の粗大粒子が存在しないことが好ましい。
【0118】
ワックス微粒子分散液の分散粒径が上記範囲内であることで、トナー粒子中にワックスを微分散して存在させることが可能となり、定着時の染み出し効果を最大限発現させ、良好な分離性を得ることが可能となる。なお、水系媒体中に分散したワックス微粒子分散液の体積分布基準の50%粒径(D50)は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA-EX150:日機装製)で測定できる。
【0119】
<混合工程>
混合工程では、第一の樹脂微粒子分散液及び第二の樹脂微粒子分散液、並びに、必要に応じてワックス微粒子分散液及び着色剤微粒子分散液などを混合した混合液を調製する。ホモジナイザー、及びミキサーのような公知の混合装置を用いて行うとよい。
【0120】
<凝集体粒子を形成する工程(凝集工程)>
凝集工程では、混合工程で調製された混合液中に含まれる微粒子を凝集し、目的とする粒径の凝集体を形成させる。このとき、必要に応じて凝集剤を添加混合し、加熱及び機械的動力の少なくとも一方を適宜加えることにより、樹脂微粒子と、必要に応じてワックス微粒子及び着色剤微粒子などと、が凝集した凝集体を形成させる。凝集剤としては、必要に応じて2価以上の金属イオンを含有する凝集剤を用いてもよい。
【0121】
2価以上の金属イオンを含有する凝集剤は、凝集力が高く、少量の添加により目的を達成することが可能である。これらの凝集剤は、樹脂微粒子分散液、ワックス微粒子分散液、及び着色剤微粒子分散液中に含まれるイオン性界面活性剤をイオン的に中和することもできる。その結果、塩析及びイオン架橋の効果により、樹脂微粒子、ワックス微粒子、及び着色剤微粒子を凝集させやすい。
【0122】
凝集工程は、水系媒体中でトナー粒子サイズの凝集体を形成する工程である。該凝集工程において製造される凝集体の重量平均粒径は、3μm~10μmであることが好ましい。該重量平均粒径は、コールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:コールター製)で測定できる。
【0123】
<融合工程>
融合工程において、凝集工程で得られた凝集体を含む分散液に、凝集工程と同様の撹拌下で、凝集停止剤を添加してもよい。凝集停止剤としては、界面活性剤の酸性極性基を解離側へ平衡を移動させ、凝集粒子を安定化する塩基性化合物が挙げられる。又、界面活性剤の酸性極性基と凝集剤である金属イオンとのイオン架橋を部分的に解離し、金属イオンと配位結合を形成させることで、凝集粒子を安定化するキレート剤などが挙げられる。
【0124】
凝集停止剤の作用により、分散液中での凝集粒子の分散状態が安定となった後、樹脂のガラス転移温度又は融点以上に加熱し、凝集粒子を融合するとよい。融合時に温度を調整することにより、ドメインの個数平均径を制御することも可能である。得られたトナー粒子の重量平均粒径は、3μm~10μmであることが好ましい。
【0125】
<ろ過工程、洗浄工程、乾燥工程、分級工程>
その後、トナー粒子の固形分をろ別するろ過工程、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程、粒度調整のための分級工程を行い、トナー粒子を得るとよい。得られたトナー粒子はそのままトナーとして用いてもよい。得られたトナー粒子に対し、無機微粒子、及び必要に応じて他の外添剤を混合して、トナーを得てもよい。トナー粒子と無機微粒子、及びその他の外添剤との混合は、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)などの混合装置を用いることができる。
【0126】
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<トナーの断面観察>
まず、存在量の基準サンプルとなる薄片を作製する。可視光硬化性樹脂(アロニックス
LCRシリーズ D800)中に結晶性樹脂である第一の樹脂を十分に分散させた後、
短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。同様にして非晶性樹脂である第二の樹脂についても薄片状サンプルを作製する。
【0127】
また、第一の樹脂と第二の樹脂を質量基準で30/70、70/30で混合し、溶融混練した混練物を作製する。これらについても同様に可視光硬化性樹脂中に分散させ硬化させたのちに切り出すことで薄片状サンプルを作製する。次いで、切り出したサンプルを透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM-2800)(TEM―EDX)を用いてこれら基準サンプルの断面を観察し、EDXを用いて元素マッピングを行う。マッピングする元素としては、炭素、酸素、窒素とする。マッピング条件としては、以下の通りとする。
加速電圧:200kV
電子線照射サイズ:1.5nm
ライブタイムリミット:600sec
デッドタイム:20~30
マッピング分解能:256×256
【0128】
各元素の(10nm四方の面積における平均)スペクトル強度をもとに(酸素元素の強度/炭素元素強度)及び(窒素元素強度/炭素元素強度)を算出し、第一の樹脂と第二の樹脂の質量比率に対して検量線を作成する。第一の樹脂のモノマーユニットに窒素原子が含まれる場合には(窒素元素強度/炭素元素強度)の検量線を用いて今後の定量を行う。
【0129】
次に、トナーサンプルの分析を行う。可視光硬化性樹脂(アロニックス LCRシリーズ D800)中にトナーを十分に分散させた後、短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。次いで、切り出したサンプルに対し透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM-2800)(TEM―EDX)を用いた観察を行う。トナー粒子の断面画像を取得し、EDXを用いて元素マッピングを行う。マッピングする元素としては、炭素、酸素、窒素とする。
【0130】
なお、観察するトナー粒子断面は以下のように選択する。まずトナー粒子断面画像から、トナー粒子の断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー粒子断面画像についてのみ観察する。
【0131】
観察画像について、トナー粒子断面を10nm四方のエリアに分割する。各エリアにおいて各元素の(10nm四方の平均)スペクトル強度をもとに(酸素元素の強度/炭素元素強度)及び/又は(窒素元素強度/炭素元素強度)を算出し、前記検量線と比較することにより第一の樹脂と第二の樹脂を区別する。第一の樹脂又は第二の樹脂が80質量%以上含まれる場合、その10nm四方のエリアはその第一の樹脂又は第二の樹脂が占めるとみなす。100個のトナー粒子断面を観察し、各エリアの分析結果に基づき、面積割合A、面積割合B、X/Z及びY/Zを算出する。面積割合A及びBについては、100個の断面の算術平均値を採用する。なお、二値化処理及び面積率の計算には、Image Pro PLUS(日本ローパー株式会社製)を用いる。
【0132】
<マトリクスドメイン構造の確認>
上記と同様にして、トナー粒子断面の観察を行う。観察した100個のトナー粒子断面のうち、面積割合Aが30面積%~70面積%であるトナー粒子断面について構造の確認を行う。面積割合Aが30面積%~70面積%であるトナー粒子断面のうち、マトリクスドメイン構造を形成しているトナー粒子断面の割合が、80個数%以上である場合、測定
対象のトナーにおいて、トナー粒子断面がマトリクスドメイン構造を有していると判断する。
【0133】
なお、連続相であるマトリクス中に、不連続相であるドメインが分散している状態をマトリクスドメイン構造とする。ここで、連続相とはトナー粒子断面において、第一の樹脂の面積もしくは第二の樹脂の占める面積において、それらの90面積%以上が1つの連続した領域として存在する場合、第一の樹脂又は第二の樹脂が連続相であると判断する。また、ドメインの長径を測定し、観察したトナー粒子断面に存在するすべての断面における個数平均径を算出する。
【0134】
<トナーからの各材料の分離方法>
トナーに含まれる各材料の溶剤への溶解度の差を利用して、トナーから各材料を分離することができる。
第一分離:23℃のメチルエチルケトン(MEK)にトナーを溶解させ、可溶分(第二の樹脂)と不溶分(第一の樹脂、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第二分離:100℃のMEKに、第一分離で得られた不溶分(第一の樹脂、ワックス、着色剤、無機微粒子など)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂、ワックス)と不溶分(着色剤、無機微粒子など)を分離する。
第三分離:23℃のクロロホルムに、第二分離で得られた可溶分(第一の樹脂、ワックス)を溶解させ、可溶分(第一の樹脂)と不溶分(ワックス)を分離する。
【0135】
<第一及び第二の樹脂を構成するモノマーユニットの同定及び含有割合の測定方法>
第一及び第二の樹脂を構成するモノマーユニットの同定及び含有割合の測定は、H-NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM-EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料 :測定試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて調製する。
【0136】
得られたH-NMRチャートより、第一のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値Sを算出する。樹脂が、第二のモノマーユニットを有する場合、同様に、第二のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークの中から、他のモノマーユニットの構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値Sを算出する。樹脂が、さらに第三のモノマーユニットなど、第xのモノマーユニットを有する場合も同様にして、積分値Sを算出する。
【0137】
第一のモノマーユニットの含有割合は、上記積分値を用いて、以下のようにして求める。なお、n、n、nはそれぞれの部位について着眼したピークが帰属される構成要素における水素の数である。
第一のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S/n)/((S/n)+(S/n)・・・+(S/n))}×100
同様に、第二のモノマーユニットの含有割合は以下のように求める。
第二のモノマーユニットの含有割合(モル%)=
{(S/n)/((S/n)+(S/n)・・・+(S/n))}×1
00
【0138】
なお、第一及び第二の樹脂において、例えば、ビニル基以外の構成要素に水素原子が含まれない重合性単量体が使用されている場合は、13C-NMRを用いて測定原子核を13Cとし、シングルパルスモードにて測定を行い、H-NMRと同様にして算出する。モノマーユニットの分子量をもとに、モル%から質量%に変換することができる。
【0139】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた、樹脂などの重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂などのテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。まず、室温で24時間かけて、樹脂などの試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
【0140】
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0141】
<トナー及び樹脂などの融点、並びに、吸熱ピーク及び吸熱量の測定方法>
トナー及び樹脂などの融点、並びに、吸熱ピーク及び吸熱量の測定は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、示差走査熱量測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。1回目の昇温過程における最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。さらに、該最大吸熱ピークの吸熱量を求める。前述したトナーから分離した各材料単体のDSC測定を行うことによって各ピークの帰属を決定することができる。
【0142】
<酸価の測定方法>
酸価とは、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。該酸価はJIS-K0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従う。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。特級水酸化カ
リウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した該水酸化カリウム溶液の量から求める。該0.1モル/L塩酸は、JIS-K8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
【0143】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として該フェノールフタレイン溶液を数滴加え、該水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量(g)である。
【0144】
<樹脂の軟化点(Tm)の測定方法>
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。また、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
【0145】
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量(流出終了点、Smaxとする)と、流出が開始した時点におけるピストンの降下量(最低点、Sminとする)との差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、ピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。測定における具体的な操作は、装置に付属のマニュアルに従って行う。CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf/cm(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0146】
<トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー(粒子)の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
【0147】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。具体的な測定法は以下の通りである。
【0148】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0149】
<樹脂微粒子、ワックス微粒子、及び、着色剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(D5
0)の測定方法>
各微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)の測定には、動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いる。具体的には、以下の手順に従って測定する。測定試料の凝集を防ぐため、ファミリーフレッシュ(花王株式会社製)を含む水溶液中に、測定試料が分散した分散液を投入して撹拌する。撹拌後、測定試料を上記装置に注入し、2回測定を行ってその平均値を求める。
【0150】
測定条件としては、測定時間を30秒とし、試料粒子屈折率を1.49とし、分散媒を水とし、分散媒屈折率を1.33とする。測定試料の体積粒度分布を測定し、測定結果から累積体積分布における小粒子径側からの累積体積が50%になる粒子径を、各微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)とする。
【実施例
【0151】
本開示を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これらは本開示をなんら限定するものではない。以下の処方の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0152】
<第一の樹脂1(結晶性樹脂1)の製造例>
・溶媒:トルエン 100.0部
・単量体組成物 100.0部
(単量体組成物は、以下のアクリル酸ベヘニル、アクリル酸及びスチレンを以下に示す割合で混合したものである)
(アクリル酸ベヘニル 40.0部)
(アクリル酸 1.0部)
(スチレン 59.0部)
・重合開始剤 0.5部
[t-ブチルパーオキシピバレート(日油社製:パーブチルPV)]
【0153】
還流冷却管、攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、上記材料を投入した。反応容器内を200rpmで撹拌しながら、70℃に加熱して12時間重合反応を行い、単量体組成物の重合体がトルエンに溶解した溶解液を得た。続いて、上記溶解液を25℃まで降温した後、1000.0部のメタノール中に上記溶解液を撹拌しながら投入し、メタノール不溶分を沈殿させた。得られたメタノール不溶分をろ別し、さらにメタノールで洗浄後、40℃で24時間真空乾燥して第一の樹脂1(結晶性樹脂1)を得た。物性を表2に示す。
【0154】
<第一の樹脂2~5(結晶性樹脂2~5)の製造例>
第一の樹脂1(結晶性樹脂1)の製造例において、それぞれの単量体及び質量部数を表1-1となるように変更した以外は同様にして反応を行い、第一の樹脂2~12(結晶性樹脂2~12)を得た。物性を表2に示す。
【表1-1】
【0155】
表中の略号は以下の通り。
BEA:アクリル酸ベヘニル
ODA:アクリル酸オクタデシル
AA:アクリル酸
St:スチレン
【0156】
<第一の樹脂6(結晶性樹脂6)の製造例>
・1,6-ヘキサンジオール:33.9部
(多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:66.1部
(多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。その後、反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、第一の樹脂6(結晶性樹脂6)を得た。
【0157】
<第一の樹脂7~9(結晶性樹脂7~9)の製造例>
第一の樹脂6の製造例において、アルコール成分、カルボン酸成分を表1-2に記載のモノマーに変更したこと以外は同様にして製造を行い、第一の樹脂7~9を得た。物性を表2に示す。
【表1-2】
【0158】
表中の略号は以下の通り。
EG:エチレングリコール
BO:ブタンジオール
HO:ヘキサンジオール
DA:デカンニ酸
DDA:ドデカン二酸
TDA:テトラデカンニ酸
【0159】
【表2】
AVcは酸価を示し、Tpは融点を示す。
【0160】
<第二の樹脂1(非晶性樹脂1)の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:73.2部(0.25モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:25.1部(0.24モル;多価カルボン酸総モル数に対して95.0mol%)
・チタニウムテトラブトキシド:2.0部
【0161】
次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌し、生成する水を留去しながら2時間反応させた。さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:8.2部(0.02モル;多価カルボン酸総モル数に対して5.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度150℃に維持したまま4時間反応させ、温度を下げることで反応を止め、(第2反応工程)、第二の樹脂1を得た。物性を表4に示す。
【0162】
<第二の樹脂2(非晶性樹脂2)の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:81.0部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して50.0mol%)
・ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:115.0部(0.25モル;多価アルコール総モル数に対して40.0mol%)
・エチレングリコール:3.1部(0.05モル;多価アルコール総モル数に対して10.0mol%)
・テレフタル酸:49.8部(0.30モル;多価カルボン酸総モル数に対して60.0mol%)
・アジピン酸:21.9部(0.15モル;多価カルボン酸総モル数に対して30.0mol%)
・チタニウムテトラブトキシド:2.5部
【0163】
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量し投入した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、230℃の温度で撹拌し、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、8.3kPaの減圧下に1時間反応させた後、180℃まで降温したのち、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:13.3部(0.05モル;多価カルボン酸総モル数に対して10.0mol%)
・tert-ブチルカテコール:1部(重合禁止剤)
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度150℃に維持したまま4時間反応させ、温度を下げることで反応を止め(第2反応工程)、非晶性樹脂2を得た。
【0164】
<第二の樹脂3(非晶性樹脂3)の製造例>
オートクレーブにキシレン50.0部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下、密閉状態で185℃まで昇温した。ここに、スチレン74.6部、アクリル酸-n-ブチル24.7部、及びアクリル酸0.7部、並びに、ジ-tert-ブチルパーオキサイド1.0部及びキシレン20.0部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を190℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。さらに同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、第二の樹脂3(非晶性樹脂3)を得た。
【0165】
<第二の樹脂4(非晶性樹脂4)の製造例>
還流冷却管、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、下記材料を投入した。
・ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:23.0部(0.05モル;多価アルコール総モル数に対して10.0mol%)
・ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:182.0部(0.45モル;多価アルコール総モル数に対して90.0mol%)
・テレフタル酸:49.8部(0.30モル;多価カルボン酸総モル数に対して60.0mol%)
・アジピン酸:21.9部(0.15モル;多価カルボン酸総モル数に対して30.0mol%)
・チタニウムテトラブトキシド:2.5部
【0166】
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量し投入した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、230℃の温度で撹拌し、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、8.3kPaの減圧下に1時間反応させた後、180℃まで降温したのち、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:13.3部(0.05モル;多価カルボン酸総モル数に対して10.0mol%)
・tert-ブチルカテコール:1部(重合禁止剤)
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度150℃に維持したまま4時間反応させ、温度を下げることで反応を止め(第2反応工程)、非晶性樹脂4を得た。
【0167】
<第二の樹脂5(非晶性樹脂5)の製造例>
(ポリエステル樹脂1の処方)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド(2.2mol付加物) 50.0mol部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2.2mol付加物) 50.0mol部
・テレフタル酸 65.0mol部
・無水トリメリット酸 25.0mol部
・アクリル酸 10.0mol部
上記ポリエステル樹脂1を生成するモノマーの混合物90部を4口フラスコに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び攪拌装置を装着して窒素雰囲気下にて160℃で攪拌した。そこに、ビニル系樹脂を生成するビニル系重合性単量体(スチレン81.0部、アクリル酸-n-ブチル17.0部、アクリル酸0.9部、ジビニルベンゼン1.1部)10部及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド1部を滴下ロートから4時間かけて滴下し、160℃で5時間反応させた。その後、230℃に昇温して、ポリエステル樹脂を生成するモノマーの総量に対して0.2部のチタンテトラブトキシドを添加し、軟化点が105℃になるまで重合を行った。反応終了後、容器から取り出し、冷却、粉砕して第二の樹脂5(非晶性樹脂5)を得た。物性を表4に示す。
【0168】
<第二の樹脂6(非晶性樹脂6)の製造例>
・ユニオールDA-400(日本油脂(株)製) 60.8部
・ジメチロールブタン酸 2.5部
・ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート 38.5部
・ジオクチル錫ジラウレート 0.04部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコに上記のモノマーを仕込み、130℃で5時間反応させポリウレタン樹脂である第二の樹脂6を得た。物性を表4に示す
【0169】
【表3】
AVaは、酸価を示し、Tgはガラス転移温度を示し、Tmは軟化点を示す。
【0170】
<トナー粒子1aの製造例>
・第一の樹脂1 50部
・第二の樹脂1 50部
・炭化水素ワックス1(フィッシャートロプシュワックス;DSC:最大吸熱ピークのピーク温度92℃) 10.0部
・着色剤(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
6.5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s-1、回転時間3minで混合した後、温度120℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にてスクリュー回転数250rpm、吐出温度125℃にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、フロイントターボ(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、重量平均粒径約6.0μmのトナー粒子1aを得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
【0171】
<トナー粒子1b、トナー粒子1cの製造例>
トナー粒子1aの製造例において、第一の樹脂及び第二の樹脂の部数を表4のように変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー粒子1b及びトナー粒子1cを得た。
【0172】
<トナー粒子2a~12a、16a~28a、2b~12b、16b~22bの製造例>
トナー粒子1aの製造例において、第一の樹脂及び第二の樹脂の種類及び部数を表4のように変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー粒子2a~12a、16a~28a、2b~12b、16b~22bを得た。
【0173】
<トナー粒子13の製造例>
<第一の樹脂6微粒子分散液の製造例>
・トルエン(和光純薬製) 300部
・第一の樹脂6 100部
上記材料を秤量及び混合し、90℃で溶解させた。別途、イオン交換水700部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5.0部、ラウリン酸ナトリウム10.0部を加え90℃で加熱溶解させた。次いで前記のトルエン溶液と該水溶液を混ぜ合わせ、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて7000rpmで攪拌した。さらに、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)用いて200MPaの圧力で乳化した。その後、エバポレーターを用いて、トルエンを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い第一の樹脂6微粒子の濃度20質量%の水系分散液(第一の樹脂6微粒子分散液)を得た。第一の樹脂6の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.40μmであった。
【0174】
<第二の樹脂4微粒子分散液の製造例>
・テトラヒドロフラン(和光純薬製) 300部
・第二の樹脂4 100部
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 0.5部
上記材料を秤量及び混合し、溶解させた。次いで、1mol/Lのアンモニア水を20.0部加え、超高速攪拌装置T.K.ロボミックス(プライミクス製)を用いて4000rpmで攪拌した。さらに、イオン交換水700部を8g/minの速度で添加し、第二の樹脂4微粒子を析出させた。その後、エバポレーターを用いて、テトラヒドロフランを除去し、イオン交換水で濃度調整を行い第二の樹脂4微粒子の濃度20質量%の水系分散液(第二の樹脂4微粒子分散液)を得た。第二の樹脂4微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)は、0.14μmであった。
【0175】
<ワックス微粒子分散液の製造例>
・炭化水素ワックス1 100部
(フィッシャートロプシュワックス;DSC:最大吸熱ピークのピーク温度92℃)
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 5部
・イオン交換水 395部
上記材料を秤量し、攪拌装置付きの混合容器に投入した後、90℃に加熱し、クレアミックスWモーション(エム・テクニック製)へ循環させて分散処理を60分間行った。分散処理の条件は、以下のようにした。
・ローター外径 :3cm
・クリアランス :0.3mm
・ローター回転数 :19000r/min
・スクリーン回転数:19000r/min
【0176】
分散処理後、ローター回転数1000r/min、スクリーン回転数0r/min、冷却速度10℃/minの冷却処理条件にて40℃まで冷却することで、ワックス微粒子の濃度20質量%の水系分散液(ワックス微粒子分散液)を得た。ワックス微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.15μmであった。
【0177】
<着色剤微粒子分散液の製造例>
・着色剤1 50.0部
(シアン顔料 大日精化製:Pigment Blue 15:3)
・アニオン界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬製) 7.5部
・イオン交換水 442.5部
上記材料を秤量及び混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機ナノマイザー(吉田機械興業製)を用いて約1時間分散して、着色剤を分散させてなる着色剤微粒子の濃度10質量%の水系分散液(着色剤微粒子分散液)を得た。着色剤微粒子の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.20μmであった。
【0178】
<トナー粒子13aの製造例>
・第一の樹脂6微粒子分散液 300部
・第二の樹脂4微粒子分散液 200部
・着色剤微粒子分散液 65部
・ワックス微粒子分散液 50部
・イオン交換水 160部
前記の各材料を丸型ステンレス製フラスコに投入、混合した。続いてホモジナイザー ウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて5000r/minで10分間分散した。1.0%硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した後、加熱用ウォーターバス中で撹拌翼を用いて、混合液が撹拌されるような回転数を適宜調節しながらで58℃まで加熱した。形成された凝集粒子を、コールターマルチサイザーIIIを用い、適宜確認し、重量平均粒径(D4)が約6.00μmである凝集粒子が形成されたところで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。
【0179】
その後、攪拌を継続しながら、75℃まで加熱した。そして、75℃で1時間保持することで凝集粒子を融合させた。その後、50℃まで冷却し3時間保持することで樹脂の結晶化を促進させた。その後、25℃まで冷却し、ろ過及び固液分離した後、イオン交換水で洗浄を行った。洗浄終了後に真空乾燥機を用いて乾燥することで、重量平均粒径(D4)が約6.0μmのトナー粒子13aを得た。
【0180】
<トナー粒子13bの製造例>
トナー粒子13aの製造例において、第一の樹脂6微粒子分散液の部数を300部から475部に、第二の樹脂4微粒子分散液の部数を200部から25部に変更したこと以外はトナー粒子13aの製造例と同様にして製造を行い、トナー粒子13bを得た。
【0181】
<第一の樹脂8微粒子分散液の製造例>
第一の樹脂6微粒子分散液の製造例において、第一の樹脂6を第一の樹脂8に変更したこと以外は第一の樹脂6微粒子分散液の製造例と同様にして製造を行い、第一の樹脂8微粒子分散液を得た。第一の樹脂6の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.40μmであった。
【0182】
<第二の樹脂3微粒子分散液の製造例>
第二の樹脂4微粒子分散液の製造例において、第二の樹脂4を第二の樹脂3に変更したこと以外は第二の樹脂4微粒子分散液の製造例と同様にして製造を行い、第二の樹脂3微粒子分散液をえた。第二の樹脂3の体積分布基準の50%粒径(D50)を動的光散乱式粒度分布計ナノトラックUPA-EX150(日機装製)を用いて測定したところ、0.40μmであった。
【0183】
<トナー粒子15aの製造例>
トナー粒子13aの製造例において、第一の樹脂6微粒子分散液を第一の樹脂8微粒子分散液に、第二の樹脂4微粒子分散液を第二の樹脂3微粒子分散液に変更したこと以外はトナー粒子13aと同様にして製造を行い、トナー粒子15aを得た。
【0184】
<トナー粒子15bの製造例>
トナー粒子13bの製造例において、第一の樹脂6微粒子分散液を第一の樹脂8微粒子分散液に、第二の樹脂4微粒子分散液を第二の樹脂3微粒子分散液に変更したこと以外はトナー粒子13bと同様にして製造を行い、トナー粒子15bを得た。
【0185】
<トナー粒子14aの製造例>
・第一の樹脂7: 60.0部
・第二の樹脂1: 40.0部
・炭化水素ワックス(フィッシャートロプシュワックス;DSC:最大吸熱ピークのピーク温度92℃): 10.0部
・ピグメントブルー15:3(大日精化社製): 5.0部
・トルエン: 150.0部
上記溶液を容器内に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)社製)により2000rpmで5分間撹拌・分散することにより油相を調製した。別の容器内に、イオン交換水1152.0部に0.1モル/リットル-リン酸ナトリウム(NaPO)水溶液390.0部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、70℃に加温した。その後、1.0モル/リットル-塩化カルシウム(CaCl)水溶液58.0部を添加してさらに撹拌を続け、リン酸三カルシウム(Ca(PO)からなる分散安定剤を製造し、水系媒体を調製した。
【0186】
その後、上記油相を上記水相中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、60℃、窒素雰囲気下にて、10000rpmで10分間撹拌して造粒を行った。さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で150回転/分の回転速度で撹拌しつつ、80℃かつ400mbarに減圧した状態で5時間かけて脱溶媒を行った。その後、該懸濁液を25℃まで冷却し、イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度が20質量%になるように調整し、トナースラリー14aを得た。トナースラリー14aを25℃まで冷却し、pH1.5になるまで塩酸を加えて2時間撹拌を行った。さらに、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥及び分級を行って、トナー粒子14aを得た。
【0187】
<トナー粒子14bの製造例>
トナー粒子14aの製造例において、第一の樹脂7の部数を60.0部から95.0部に、第二の樹脂1の部数を40.0部から5.0部に変更したこと以外はトナー粒子14aの製造例と同様にして製造を行い、トナー粒子14bを得た。
【0188】
【表4】
【0189】
<トナー1の製造例>
・トナー粒子1a 64部
・トナー粒子1b 20部
・トナー粒子1c 16部
・シリカ微粒子1 0.5部
(1次粒子の個数平均粒径が15nmの疎水化処理されたシリカ微粒子)
・シリカ微粒子2 1.0部
(1次粒子の個数平均粒径が80nmの疎水化処理されたシリカ微粒子)
上記の材料をヘンシェルミキサーFM-10C型(三井三池化工機製)で回転数50s-1、回転時間10minで混合して、トナー1を得た。物性を表5に示す。
【0190】
<トナー2~28の製造例>
トナー1の製造例において、トナー粒子の組み合わせを表4に記載のものに変更したこと以外は同様にして製造を行い、トナー2~28を得た。得られたトナーの物性を表5に示す。
【0191】
【表5】
ドメインの個数平均径は、長径の個数平均径である。
【0192】
<磁性キャリア1の製造例>
・個数平均粒径0.30μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am/kg)のマグネタイト1
・個数平均粒径0.50μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am/kg)のマグネタイト2
上記の材料それぞれ100部に対し、4.0部のシラン化合物(3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
【0193】
・フェノール:10質量%
・ホルムアルデヒド溶液:6質量%(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%)
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト1:58質量%
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト2:26質量%
上記材料100部と、28質量%アンモニア水溶液5部、水20部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温及び保持し、3時間重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し
、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体分散型の球状の磁性キャリア1を得た。磁性キャリア1の体積基準の50%粒径(D50)は、34.2μmであった。
【0194】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のトナー1を加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0195】
<二成分系現像剤2~28の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、トナーを表6のように変更する以外は同様にして製造を行い、二成分系現像剤2~28を得た。
【0196】
【表6】
【0197】
<実施例1>
上記二成分系現像剤1を用いて、評価を行った。画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用い、シアン用現像器に二成分系現像剤1を入れた。装置の改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及び、レーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力し、紙上におけるFFh画像上のトナーの載り量が所望になるようにVDC、VD、及びレーザーパワーを調整して、後述の評価を行った。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目
(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表7に示す。
【0198】
<低温定着性>
・紙:GFC-081(81.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
・紙上のトナーの載り量:0.70mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
・評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×15cmの画像を配置
・試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
・定着温度:140℃
・プロセススピード:400mm/sec
【0199】
上記評価画像を出力し、低温定着性を評価した。画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用い、まず、中心部の画像濃度を測定した。次に、画像濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摩擦(10往復)し、画像濃度を再度測定した。そして、下記式を用いて摩擦前後での画像濃度の低下率を算出した。得られた画像濃度の低下率を下記の評価基準に従って評価した。
画像濃度の低下率=
(摩擦前の画像濃度-摩擦後の画像濃度)/(摩擦前の画像濃度)×100
(評価基準)
A:画像濃度の低下率1.0%未満
B:画像濃度の低下率1.0%以上5.0%未満
C:画像濃度の低下率5.0%以上8.0%未満
D:画像濃度の低下率8.0%以上
【0200】
<耐ホットオフセット性>
・紙:CS-064(64.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
・紙上のトナーの載り量:0.08mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
・評価画像:上記A4用紙の通紙方向長端に2cm×20cmの画像を紙先端から2mmの余白を置いて配置
・試験環境:常温低湿環境:温度23℃/湿度5%RH(以下「N/L」)
・定着温度:140℃から5℃おきに昇温
・プロセススピード:400mm/sec
上記評価画像を出力し、ホットオフセットの生じない最高定着温度にて、耐ホットオフセット性を以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:170℃以上
B:160℃以上170℃未満
C:145℃以上160℃未満
D:145℃未満
【0201】
<画像光沢性>
・紙:GFC-081(81.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
・紙上のトナーの載り量:0.40mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
・評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×5cmの画像を配置
・試験環境:温度23℃/湿度50%RH
・定着温度:160℃
・プロセススピード:400mm/sec
【0202】
上記評価画像を出力し、画像光沢性を評価した。画像光沢性の評価は、ハンディ光沢計(東京電色株式会社製の「PG-1M」)を用い、単角度60°での値を測定し、その測定値をグロス値として評価を行った。
(画像光沢性:評価基準)
A:8以上
B:5以上8未満
C:2以上5未満
D:2未満
【0203】
<高温高湿環境下での帯電性(帯電維持性)>
静電潜像担持体上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引捕集することにより、トナーの摩擦帯電量を算出した。具体的には、静電潜像担持体上のトナーの摩擦帯電量は、ファラデー・ケージ(Faraday-Cage)によって測定した。ファラデー・ケージとは、同軸の2重筒のことで内筒と外筒は絶縁されている。この内筒の中に電荷量Qの帯電体を入れたとすると、静電誘導によりあたかも電荷量Qの金属円筒が存在するのと同様になる。この誘起された電荷量をエレクトロメーター(ケスレー6517A ケスレー社製)で測定し、内筒中のトナー質量M(kg)で電荷量Q(mC)を割ったもの(Q/M)をトナーの摩擦帯電量とした。
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=Q/M
【0204】
まず、静電潜像担持体上に耐ホットオフセット性で使用した評価画像を形成し、中間転写体に転写される前に、静電潜像担持体の回転を止め、静電潜像担持体上のトナーを、金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集し、[初期のQ/M]を測定した。引き続き、高温高湿(H/H)環境(32℃、80%RH)において評価機内に現像器を入れたまま2週間放置させた後、放置前と同様の操作を行い、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を測定した。上記の放置前の静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mを[初期のQ/M]とし、放置後の静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mを[放置後のQ/M]とし、([放置後のQ/M]/[初期のQ/M]×100)を帯電維持率として算出し、以下の基準で判断した。
(評価基準)
A:帯電維持率が85%以上
B:帯電維持率が80%以上85%未満
C:帯電維持率が70%以上80%未満
D:帯電維持率が70%未満
【0205】
<耐擦過性(画像強度)>
・評価紙:イメージコートグロス158(158.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
・紙上のトナーの載り量:0.10mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
・評価画像:上記A4用紙の中心に3cm×15cmの画像を配置
・定着試験環境:常温常湿環境(温度23℃/湿度50%RH(以下N/N))
・定着温度:160℃
・プロセススピード:400mm/sec
【0206】
上記評価画像を出力し、耐擦過性を評価した。反射率の差分の値を耐擦過性の評価指標とした。先ず、評価画像の画像部に対し、学振型摩擦堅牢度試験機(AB-301:テスター産業株式会社製)を用い、0.5kgfの荷重をかけて、新品の評価紙により摩擦(10往復)する。その後、リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL
TC-6DS:東京電色株式会社製)を用い、新品の評価紙の摩擦を行った部分の反射率と、摩擦を行っていない部分の反射率を測定する。そして、下記式を用いて摩擦前後での反射率の差分を算出した。得られた反射率の差分を下記の評価基準に従って評価した。
反射率の差分=摩擦前の反射率-摩擦後の反射率
(評価基準)
A:2.0%未満
B:2.0%以上4.0%未満
C:4.0%以上6.0%未満
D:6.0%以上
【0207】
<実施例2~22、及び、比較例1~6>
二成分現像剤1の代わりに二成分系現像剤2~二成分系現像剤28を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表7に示す。
【0208】
【表7】