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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器構造体
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/12 20060101AFI20250310BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20250310BHJP
   F02C 3/20 20060101ALI20250310BHJP
   F23R 3/44 20060101ALI20250310BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20250310BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
F23R3/12
F23R3/28 C
F02C3/20
F23R3/44
F02C3/30 D
F23R3/00 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021077479
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171082
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正雄
(72)【発明者】
【氏名】岩井 保憲
(72)【発明者】
【氏名】森澤 優一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037825(JP,A)
【文献】特開2014-215036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/12
F23R 3/28
F02C 3/20
F23R 3/44
F02C 3/30
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から前記ガスタービンのケーシングを貫通して配置されるガスタービン燃焼器構造体であって、
複数の燃焼器と、
複数の前記燃焼器の下流側に前記タービンロータの軸方向に垂直な方向に設けられた筒体で構成され、複数の前記燃焼器から排出された燃焼ガスを集合させて下流側へ導く後部ライナと、
前記後部ライナの下流端に接続され、前記後部ライナから排出された燃焼ガスを前記タービンロータの軸方向に導くとともに前記タービンロータの周方向に導くスクロールと
を備え、
各前記燃焼器は、
燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、
前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、
前記燃料供給部の周囲に環状に設けられ、酸化剤の旋回流を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部と
を備え、
複数の前記燃焼器が偶数個の前記燃焼器で構成され、
前記燃焼器ライナの下流側から見たときに、複数の前記燃焼器は、所定の円周上に等間隔に配置され、周方向に隣接する前記燃焼器において酸化剤の前記旋回流の旋回方向がそれぞれ逆方向であり、
前記スクロールの出口において燃焼ガスが周方向に亘って均一な速度分布を有することを特徴とするガスタービン燃焼器構造体。
【請求項2】
ガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から前記ガスタービンのケーシングを貫通して配置されるガスタービン燃焼器構造体であって、
複数の燃焼器と、
複数の前記燃焼器の下流側に前記タービンロータの軸方向に垂直な方向に設けられた筒体で構成され、複数の前記燃焼器から排出された燃焼ガスを集合させて下流側へ導く後部ライナと、
前記後部ライナの下流端に接続され、前記後部ライナから排出された燃焼ガスを前記タービンロータの軸方向に導くとともに前記タービンロータの周方向に導くスクロールと
を備え、
各前記燃焼器は、
燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、
前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、
前記燃料供給部の周囲に環状に設けられ、酸化剤の旋回流を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部と、
前記燃焼器ライナの出口に配置され、酸化剤の前記旋回流の旋回方向と逆方向の旋回を与える逆旋回付与部と
を備えることを特徴とするガスタービン燃焼器構造体。
【請求項3】
ガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から前記ガスタービンのケーシングを貫通して配置されるガスタービン燃焼器構造体であって、
燃焼器ケーシングと、
前記燃焼器ケーシング内に配置された複数の燃焼器と、
複数の前記燃焼器の下流側に前記タービンロータの軸方向に垂直な方向に設けられた筒体で構成され、複数の前記燃焼器から排出された燃焼ガスを集合させて下流側へ導く後部ライナと、
前記後部ライナの下流端に接続され、前記後部ライナから排出された燃焼ガスを前記タービンロータの軸方向に導くとともに前記タービンロータの周方向に導くスクロールと、
前記燃焼器ケーシング内に冷却媒体を供給する冷却媒体供給部と、
前記燃焼器ケーシング内に供給された前記冷却媒体に旋回を与えて前記後部ライナ内に前記冷却媒体を導入する旋回流導入部と
を備え、
各前記燃焼器は、
燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、
前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、
前記燃料供給部の周囲に環状に設けられ、酸化剤の旋回流を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部と
を備え、
前記旋回流導入部から導入される前記冷却媒体による旋回流の旋回方向は、酸化剤の前記旋回流の旋回方向と逆方向であることを特徴とするガスタービン燃焼器構造体。
【請求項4】
前記旋回流導入部は、各前記燃焼器における前記燃焼器ライナの出口の外周に設けられた環状のスワーラで構成されていることを特徴とする請求項3記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項5】
各前記燃焼器における酸化剤の前記旋回流の旋回方向が同じ方向であり、
前記旋回流導入部は、前記後部ライナの中心軸方向の所定位置において前記後部ライナの周方向に形成され、前記後部ライナの中心軸に向かう方向に対して傾けた方向に前記後部ライナを貫通する複数の貫通孔で構成されていることを特徴とする請求項3記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項6】
前記ガスタービン燃焼器構造体は、
各前記燃焼器の前記燃焼器ライナの下流端部と嵌合する貫通口を有し、前記後部ライナの上流端を封鎖する平板状の端壁を備え、
各前記燃焼器における酸化剤の前記旋回流の旋回方向が同じ方向であり、
前記旋回流導入部は、前記端壁の外縁に設けられた環状のスワーラで構成されていることを特徴とする請求項3記載のガスタービン燃焼器構造体。
【請求項7】
前記ガスタービン燃焼器構造体は、
各前記燃焼器の前記燃焼器ライナの下流端部と嵌合する貫通口を有し、前記後部ライナの上流端を封鎖する平板状の端壁を備え、
前記燃焼器ライナの下流側から見たときに、複数の前記燃焼器は、所定の円周上に等間隔に配置され、
各前記燃焼器における酸化剤の前記旋回流の旋回方向が同じ方向であり、
前記旋回流導入部は、前記端壁において、前記燃焼器ライナに対応して所定の円周上に設けられた前記貫通口よりも中央に設けられた環状のスワーラで構成されていることを特徴とする請求項3記載のガスタービン燃焼器構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービン燃焼器構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスタービン燃焼器を備える発電プラントにおいて、二酸化炭素の削減や省資源などの要求から、高効率化が進められている。そのような中、タービンから排出された燃焼ガスの一部を超臨界圧まで加圧して燃焼器に循環させる超臨界COガスタービンが検討されている。
【0003】
この超臨界COガスタービンにおいては、超高圧の環境下での運転条件となるため、内部ケーシングおよび外部ケーシングを備える二重ケーシング構造の採用が必須となる。そのため、このような超臨界COガスタービンにおいては、二重ケーシング構造においてもシール性能を維持しやすい垂直サイロ型燃焼器が使用される。
【0004】
垂直サイロ型燃焼器においては、燃焼器は、外部ケーシングの鉛直上方、もしくは鉛直下方から挿入される。すなわち、垂直サイロ型燃焼器は、タービンロータの軸方向に対して90度の角度で外部ケーシングおよび内部ケーシングを貫通して配置される。
【0005】
また、超臨界COガスタービンの燃焼器では、燃焼器入口条件が超高圧で高温となる。このような条件下において、超臨界COガスタービンの燃焼器に予混合燃焼方式を採用した場合には、燃焼領域に噴出される前の予混合気が予混合気供給管内で自己着火することがある。そのため、超臨界COガスタービンの燃焼器には、拡散燃焼方式が採用されている。
【0006】
図13は、超臨界COガスタービンにおける垂直サイロ型の燃焼器構造体300の縦断面を示す図である。図14は、図13のX-X断面を示す図である。
【0007】
燃焼器構造体300は、燃焼器310と、後部ライナ320と、スクロール330とを備える。また、燃焼器構造体300は、複数の燃焼器310を備える。
【0008】
燃焼器構造体300は、タービンロータ340の軸方向に垂直な方向から、外部ケーシング350および内部ケーシング355を貫通して配置される。
【0009】
外部ケーシング350の外側には、燃焼器構造体300の周囲を囲む燃焼器ケーシング360が設けられている。燃焼器ケーシング360の他端は、ヘッドプレート361で閉鎖されている。燃焼器構造体300を貫通させる外部ケーシング350と内部ケーシング355との間には、スリーブ351が設けられている。
【0010】
燃焼器310は、燃焼器ライナ311と、燃料供給部312と、酸化剤供給部313とを備える。
【0011】
燃焼器ライナ311は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒状部材で構成される。燃焼器ライナ311の側壁には、燃焼器ライナ311の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔311aが設けられている。
【0012】
燃料供給部312は、燃料を燃焼器ライナ311内に供給する。
【0013】
酸化剤供給部313は、酸化剤を燃焼器ライナ311内に供給する。酸化剤供給部313は、燃料供給部312の周囲に環状に設けられる。酸化剤供給部313の環状の出口313aには、火炎安定や燃料と酸化剤の混合促進を図るために、酸化剤の旋回流を形成するスワーラ314が設けられる。
【0014】
燃焼器構造体300において、各燃焼器310のスワーラ314によって形成される旋回流の旋回方向は同じ方向に設定されている。
【0015】
各燃焼器310の燃焼器ライナ311の下流端は、後部ライナ320の上流端に設けられた上流端壁321の貫通口322に嵌合している。そして、各燃焼器ライナ311は、貫通口322を介して後部ライナ320内に連通している。
【0016】
後部ライナ320は、複数の燃焼器310から排出された燃焼ガスを集合させて整流しながらスクロール330に導く流路である。
【0017】
後部ライナ320は、図13に示すように、筒状部材で構成される。後部ライナ320の側壁には、後部ライナ320の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔323が設けられている。
【0018】
スクロール330は、後部ライナ320から排出された燃焼ガスをタービンロータ340の軸方向に導くとともに、タービンロータ340の周方向に導く流路である。スクロール330は、図13に示すように、後部ライナ320から排出された燃焼ガスをタービンロータ340の軸方向に導く屈曲流路部331と、タービンロータ340の軸方向に導かれた燃焼ガスをタービンロータ340の周方向に導く環状流路部332とを備える。
【0019】
環状流路部332(スクロール330)の出口333は、初段の静翼345に対向する。
【0020】
上記した燃焼器構造体300において、燃料供給部312に供給された燃料と、酸化剤供給部313に供給された酸化剤は、燃焼器ライナ311内に拡散火炎Fを形成して燃焼する。スワーラ314によって酸化剤の流れを旋回流とすることで、燃焼器ライナ311内における燃焼ガスの流れも旋回流となる。
【0021】
図14には、各燃焼器310の燃焼器ライナ311内の燃焼ガスの旋回流の旋回方向を実線矢印で示している。図14に示すように、各燃焼器ライナ311内における燃焼ガスの旋回方向は同じである。なお、冷却媒体である超臨界COは、燃焼器ライナ311の導入孔311aから燃焼器ライナ311内に導入される。
【0022】
各燃焼器ライナ311から排出された燃焼ガス(超臨界COを含む)は、後部ライナ320内において一つの旋回流を形成して、後部ライナ320内を流れる。図14において、この後部ライナ320内における燃焼ガスの旋回流の旋回方向を破線矢印で示している。
【0023】
後部ライナ320内における旋回流の旋回方向は、燃焼器ライナ311内における燃焼ガスの旋回方向と同じである。なお、冷却媒体である超臨界COは、後部ライナ320の導入孔323から後部ライナ320内に導入される。
【0024】
後部ライナ320内における燃焼ガス(超臨界COを含む)の旋回流は、スクロール330に流入する。スクロール330の屈曲流路部331に流入した燃焼ガスは、タービンロータ340の軸方向にほぼ90度偏流される。そして偏流された燃焼ガスは、環状流路部332に流入する。環状流路部332に流入した燃焼ガスは、タービンロータ340の周方向に広がる。
【0025】
そして、燃焼ガスは、スクロール330の出口333から初段の静翼345に向けて噴出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】特許第6822868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記したように、燃焼器構造体300において、燃焼器310から排出された燃焼ガスの旋回流は、後部ライナ320内で一つの旋回流を形成する。そして、この旋回流は、スクロール330内に流れる。
【0028】
これによって、スクロール330の環状流路部332を燃焼ガスが流れる際、旋回流の影響によって、周方向に不均一な流れとなる。具体的には、環状流路部332において、鉛直上方からタービンロータ340の周囲に時計回り方向および反時計回り方向に燃焼ガスの流れが広がる際、一方の方向の流量が多くなる。
【0029】
そのため、環状流路部332(スクロール330)の出口333において、周方向に亘って均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼345に噴出することが困難となる。
【0030】
本発明が解決しようとする課題は、燃焼器において燃焼ガスの旋回流が形成される場合においても、スクロール出口から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼に噴出することができるガスタービン燃焼器構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
実施形態のガスタービン燃焼器構造体は、ガスタービンのタービンロータの軸方向に垂直な方向から前記ガスタービンのケーシングを貫通して配置される。このガスタービン燃焼器構造体は、複数の燃焼器と、複数の前記燃焼器の下流側に前記タービンロータの軸方向に垂直な方向に設けられた筒体で構成され、複数の前記燃焼器から排出された燃焼ガスを集合させて下流側へ導く後部ライナと、前記後部ライナの下流端に接続され、前記後部ライナから排出された燃焼ガスを前記タービンロータの軸方向に導くとともに前記タービンロータの周方向に導くスクロールとを備える。
【0032】
各前記燃焼器は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒状の燃焼器ライナと、前記燃焼器ライナの上流端に設けられ、燃料を前記燃焼器ライナ内に供給する燃料供給部と、前記燃料供給部の周囲に環状に設けられ、酸化剤の旋回流を前記燃焼器ライナ内に供給する酸化剤供給部とを備え、複数の前記燃焼器が偶数個の前記燃焼器で構成され、前記燃焼器ライナの下流側から見たときに、複数の前記燃焼器は、所定の円周上に等間隔に配置され、周方向に隣接する前記燃焼器において酸化剤の前記旋回流の旋回方向がそれぞれ逆方向であり、前記スクロールの出口において燃焼ガスが周方向に亘って均一な速度分布を有する
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施の形態の燃焼器構造体を備えるガスタービン設備の系統図である。
図2】第1の実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図3図2のA-A断面を示す図である。
図4図2のB-B断面を示す図である。
図5】第1の実施の形態の燃焼器構造体の隣接する2つの燃焼器における閉曲線内の燃焼ガスの旋回流を模式的に示した図である。
図6】第1の実施の形態の燃焼器構造体および図13に示した比較例としての燃焼器構造体のスクロールの環状流路部における燃焼ガスの主流の圧力分布を示す図である。
図7】第2の実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図8】第3の実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図9】第4の実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図10図9のC-C断面を示す図である。
図11】第4の実施の形態の他の構成の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図12】第5の実施の形態の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図13】超臨界COガスタービンにおける垂直サイロ型の燃焼器構造体の縦断面を示す図である。
図14図13のX-X断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の燃焼器構造体1を備えるガスタービン設備8の系統図である。図1に示すように、ガスタービン設備8は、燃焼器構造体1と、燃料供給系統10と、酸素供給系統20と、二酸化炭素循環系統30と、タービン40と、発電機41と、熱交換器42とを備える。なお、燃焼器構造体1は、ガスタービン燃焼器構造体として機能する。
【0035】
燃料供給系統10は、燃焼器構造体1に燃料を供給する。燃料供給系統10は、配管11を備える。この配管11は、燃料供給源(図示しない)と燃焼器構造体1との間に設けられる。また、配管11は、燃料の流量を調整する流量調整弁12を備える。
【0036】
ここで、燃料として、例えば、メタン、天然ガスなどの炭化水素が使用される。また、燃料として、例えば、一酸化炭素および水素などを含む石炭ガス化ガス燃料を使用することもできる。
【0037】
酸素供給系統20は、燃焼器構造体1に酸素を供給する。酸素供給系統20は、配管21を備える。この配管21は、大気から酸素を分離する空気分離装置(図示しない)と燃焼器構造体1との間に設けられる。
【0038】
配管21は、酸素の流量を調整する流量調整弁22を備える。また、配管21は、酸素を昇圧する圧縮機23を備える。流量調整弁22は、圧縮機23と熱交換器42との間に設けられている。そして、配管21は、熱交換器42を通り燃焼器構造体1まで延設されている。なお、流量調整弁22は、熱交換器42よりも上流側に設けられているため、流量調整弁22には高温の酸素が流れない。
【0039】
配管21には、空気分離装置(図示しない)によって大気から分離された酸素が流れる。配管21を流れる酸素は、熱交換器42を通過することで加熱され、燃焼器構造体1に供給される。
【0040】
二酸化炭素循環系統30は、タービン40から排出された燃焼ガスの一部を燃焼器構造体1に循環する。二酸化炭素循環系統30は、配管31を備える。この配管31は、タービン40の出口と燃焼器構造体1との間に設けられる。
【0041】
配管31は、燃焼ガス中に含まれる水蒸気を除去する凝縮器32を備える。なお、燃焼ガス中の水蒸気は、凝縮器32を通過することで、凝縮して水となる。水は、例えば、配管36を通り外部に排出される。
【0042】
また、配管31は、凝縮器32において水蒸気が除去された燃焼ガスを臨界圧力以上に昇圧する圧縮機33を備える。凝縮器32および圧縮機33は、熱交換器42で冷却された燃焼ガスが流れる領域の配管31に備えられる。
【0043】
ここで、ガスタービン設備8においては、燃焼器構造体1(燃焼器50)から排出される燃焼ガスに、余剰の酸素や燃料が残存しないことが好ましい。そこで、燃料および酸素の流量は、量論混合比(当量比1)になるように調整されている。
【0044】
なお、ここでいう当量比は、燃料流量および酸素流量に基づいて算出した当量比である。換言すれば、燃料と酸素が均一に混合したと想定したときの当量比(オーバーオールでの当量比)である。
【0045】
このようなことから、凝縮器32において水蒸気が除去された燃焼ガス(ドライ燃焼ガス)の成分は、ほぼ二酸化炭素である。そこで、水蒸気が除去された燃焼ガスを単に二酸化炭素と称する。このように、燃焼器構造体1に循環される媒体は二酸化炭素である。
【0046】
なお、水蒸気が除去された燃焼ガスには、例えば、0.2%以下の微量の一酸化炭素が混在する場合もあるが、この場合においても、水蒸気が除去された燃焼ガスを単に二酸化炭素と称する。また、圧縮機33によって臨界圧力以上に昇圧された二酸化炭素は、超臨界流体となる。
【0047】
配管31は、熱交換器42を2回通るように配管されている。すなわち、配管31は、タービン40と凝縮器32との間で一度熱交換器42を通る。そして、配管31は、圧縮機33と燃焼器構造体1との間で再度熱交換器42を通る。
【0048】
ここで、タービン40から排出された燃焼ガスは、熱交換器42を通過することによって冷却される。この際、燃焼ガスからの放熱によって、前述した配管21を流れる酸素および配管31を通り燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素を加熱する。
【0049】
また、配管31は、圧縮機33と熱交換器42との間で分岐している。配管31から分岐した配管34は、外部に排出する二酸化炭素の流量を調整する流量調整弁35を備える。なお、外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で採用されているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用することができる。
【0050】
図1に示すように、燃料を供給する配管11の一端側(燃焼器構造体1側)は、複数に分岐されている。そして、分岐された各配管11は、燃焼器構造体1の各燃焼器50に接続されている。
【0051】
また、二酸化炭素を燃焼器構造体1に循環する配管31の一端側(燃焼器構造体1側)は、例えば、複数に分岐されている。分岐された一部の配管31から供給される超臨界COは、超臨界COと酸素との混合気である酸化剤を形成するために利用される。分岐された残りの配管31は、後述する図2に示すように、冷却媒体として燃焼器構造体1の周囲に超臨界COを導入するために利用される。
【0052】
酸素を燃焼器構造体1に供給する配管21の一端側(燃焼器構造体1側)は、複数に分岐されている。
【0053】
そして、分岐された一つの配管31および分岐された一つの配管21は、各燃焼器50の酸化剤供給部53に接続される。そして、酸化剤供給部53に導入された酸素と超臨界COとが混合して混合気が形成される。この混合気は、酸化剤として燃焼器ライナ51内に噴出される。
【0054】
なお、混合気の形成方法は、この方法に限られない。例えば、内部に空間を有する筐体部材からなる混合室を備えてもよい。この場合、分岐された一部の配管31および配管21は、混合室に接続される。そして、混合室で形成された混合気を、配管を介して各燃焼器50の酸化剤供給部53に供給する。
【0055】
また、熱交換器42と燃焼器構造体1との間で配管31を分岐し、その分岐された配管を酸素が流れる配管21に連結させてもよい。この連結部は、例えば、熱交換器42と燃焼器構造体1との間の配管21に設けられる。
【0056】
また、圧縮機33と熱交換器42との間で配管31を分岐し、その分岐された配管を酸素が流れる配管21に連結させてもよい。この連結部は、例えば、流量調整弁22と熱交換器42との間の配管21に設けられる。
【0057】
いずれに連結部を設ける場合においても、配管31から分岐された配管は、酸素と混合する超臨界COの流量を調整する流量調整弁を備える。
【0058】
なお、圧縮機33と熱交換器42との間で分岐された配管31を流量調整弁22と熱交換器42との間で配管21に連結する場合、酸素と超臨界COとの混合気は、熱交換器42で加熱され、燃焼器構造体1に供給される。そのため、高温の純酸素が配管21を流れる場合に比べて、配管21の酸化などを抑制できる。
【0059】
タービン40は、燃焼器構造体1から排出された燃焼ガスによって回動される。このタービン40には、例えば、発電機41が連結されている。
【0060】
次に、燃焼器構造体1の構成について説明する。
【0061】
図2は、第1の実施の形態の実施の形態の燃焼器構造体1の縦断面を示す図である。図3は、図2のA-A断面を示す図である。図4は、図2のB-B断面を示す図である。なお、図2図4に示された燃焼器構造体1は、ガスタービンに設置された状態における断面図である。そのため、図2図4には、例えば、ガスタービンのケーシングなどの構成も示されている。また、図2および図3には、上半側の構成が示されている。ここでは、燃焼器構造体1を上半側に備えた一例を示している。
【0062】
ここで、燃焼器構造体1は、超臨界COを作動流体に用いる超臨界COガスタービンに設置される。燃焼器構造体1やタービン40は、超高圧の条件下で作動されるため、図2および図3に示すように、ケーシング80は、内部ケーシング90および外部ケーシング85を備える二重ケーシング構造で構成される。外部ケーシング85は、内部ケーシング90の外周側に所定の間隙をおいて設けられている。
【0063】
内部ケーシング90内には、静翼95、動翼96がタービンロータ97の軸方向に交互に配置されている。静翼95は、内輪側壁95aと外輪側壁95bとの間に配置されている。動翼96は、タービンロータ97のロータホイール98に設けられている。なお、動翼96の外周は、動翼96の先端と隙間を有して外側壁95cが設けられている。この外側壁95cは、例えば、外輪側壁95bをタービンロータ97の軸方向に延長して構成されてもよい。
【0064】
燃焼器構造体1は、燃焼器50と、後部ライナ60と、スクロール70とを備える。また、燃焼器構造体1は、複数の燃焼器50を備える。
【0065】
ここで、配置される燃焼器50の個数は、例えば、一つの燃焼器50から供給可能な熱量と、超臨界COガスタービンに要求される熱量とに基づいて決められる。
【0066】
燃焼器構造体1は、図2および図3に示すように、タービンロータ97の軸方向に垂直な方向から、外部ケーシング85および内部ケーシング90を貫通して配置される。燃焼器構造体1は、いわゆる垂直サイロ型の燃焼器構造体である。ここでは、鉛直上方から燃焼器構造体1を貫通させる一例を示している。
【0067】
外部ケーシング85の外側には、燃焼器構造体1の周囲を囲む燃焼器ケーシング110が設けられている。燃焼器ケーシング110は、両端が開口する筒状のケーシングで構成される。
【0068】
燃焼器ケーシング110の一端は、外部ケーシング85に固定されている。燃焼器ケーシング110の他端は、ヘッドプレート111で閉鎖されている。なお、例えば、ヘッドプレート111には、配管21、配管31、配管11を燃焼器ケーシング110内に引き込むための貫通孔(図示しない)が設けられている。
【0069】
外部ケーシング85および内部ケーシング90には、燃焼器構造体1を貫通させるための貫通口86、91が形成されている。燃焼器構造体1を貫通させる外部ケーシング85と内部ケーシング90との間には、スリーブ100が設けられている。
【0070】
スリーブ100は、燃焼器構造体1の周囲を流れる冷却媒体としての超臨界COが外部ケーシング85と内部ケーシング90との間の空間に流出することを防止する。スリーブ100は、例えば、円筒状部材で構成される。
【0071】
また、スリーブ100と当接する内部ケーシング90の外周面90aには、スリーブ100と間隙をあけてスリーブ100の周囲に亘って円環状の突条部92が形成されている。突条部92は、外部ケーシング85側に突出している。スリーブ100と突条部92との間には、円環状のシールリング93が勘合している。
【0072】
燃焼器50は、燃焼器ライナ51と、燃料供給部52と、酸化剤供給部53とを備える。
【0073】
燃焼器ライナ51は、燃料と酸化剤を燃焼させる筒状部材で構成される。燃焼器ライナ51の一端(上流端)は、上流端壁51aで封鎖され、他端(下流端)は、開口されている。燃焼器ライナ51は、例えば、直線状に伸びる筒体などで構成される。なお、燃焼器ライナ51は、例えば、一部が湾曲した筒体などで構成されてもよい。
【0074】
上流端壁51aには、燃料供給部52および酸化剤供給部53を備えるための開口51bを有する。
【0075】
なお、上流とは、燃焼ガスが流れる方向における上流を意味し、下流とは、燃焼ガスが流れる方向における下流を意味する。
【0076】
図2および図3に示すように、燃焼器ライナ51は、燃焼器ライナ51の中心軸が、例えば、タービンロータ97の軸方向に垂直となるように配置される。
【0077】
また、燃焼器ライナ51の側壁には、燃焼器ライナ51の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔51cが設けられている。この燃焼器ライナ51の外側を流れる超臨界COは、燃焼器ライナ51を冷却する機能を有する。
【0078】
なお、導入孔51cは、例えば、スリットや孔などで構成される。燃焼器ライナ51は、例えば、フィルム冷却などによって冷却される。フィルム冷却を適用した場合、導入孔51cから導入された冷却媒体である超臨界COが燃焼器ライナ51の内壁面と燃焼ガスとの間に気体の断熱膜を形成する。これによって、燃焼器ライナ51の内壁面が直接燃焼ガスに接触することを抑制する。
【0079】
燃料供給部52は、燃料を燃焼器ライナ51内に供給する。燃料供給部52は、燃焼器ライナ51の上流端壁51aに設けられている。燃料供給部52は、例えば、図2に示すように、上流端壁51aの中央に設けられる。
【0080】
燃料供給部52は、例えば、円管などで構成される。燃料供給部52は、燃料を供給する配管11に連結されている。燃料供給部52の出口52aは、例えば、燃料ノズルとしての機能を備える。出口52aは、例えば、単孔の燃料噴射孔または多孔の燃料噴出孔などで構成される。燃料は、燃料供給部52の出口52aから燃焼器ライナ51内に噴出される。
【0081】
酸化剤供給部53は、酸化剤を燃焼器ライナ51内に供給する。酸化剤供給部53は、燃焼器ライナ51の上流端壁51aに設けられている。酸化剤供給部53は、例えば、図2に示すように、燃料供給部52の周囲に、燃料供給部52と同心円状で、かつ環状に設けられる。環状の酸化剤供給部53は、燃料供給部52の外周に、例えば、円管を備えることで構成される。
【0082】
このように、例えば、燃料供給部52と酸化剤供給部53は、二重管構造で構成される。燃料は、中央の燃料噴出孔から噴出され、酸化剤は、中央の燃料噴出孔の周囲に形成される環状の流路から噴出される。すなわち、燃焼器50では、拡散燃焼方式を採用している。
【0083】
酸化剤供給部53の環状の出口53aには、例えば、酸化剤の旋回流を形成するスワーラ55が設けられる。スワーラ55は、環状の通路に周方向に複数の羽根を備える。羽根は、環状の通路の軸方向に対して所定角度に傾斜させて配置されている。
【0084】
このスワーラ55を酸化剤が通過することで、周方向速度成分を有する旋回流が燃焼器ライナ51内に噴出される。このように、酸化剤を旋回流とすることで、燃焼器ライナ51内において、燃料と酸化剤の混合が促進され、安定した火炎が形成される。
【0085】
ここでは、図4に示すように、複数の燃焼器50は、例えば、所定の円周上に等間隔に配置されている。なお、図4は、燃焼器ライナ51の下流側から燃焼器50を見たときの断面図である。
【0086】
なお、所定の円周は、例えば、燃焼器ケーシング110の中心軸を中心とする円周、または後部ライナ60の上流端の開口(円形開口)の中心を中心とする円周である。
【0087】
ここで、複数の燃焼器50には、酸化剤供給部53の下流側から見たときに、酸化剤供給部53から供給される酸化剤の旋回流の旋回方向が時計回りである燃焼器50と、酸化剤供給部53から供給される酸化剤の旋回流の旋回方向が反時計回りである燃焼器50とを備える。
【0088】
ここで、以下において、酸化剤供給部53の下流側から見たときに、酸化剤の旋回流の旋回方向が時計回りである燃焼器50を酸化剤-時計回り燃焼器50と称し、酸化剤の旋回流の旋回方向が反時計回りである燃焼器50を酸化剤-反時計回り燃焼器50と称する。
【0089】
例えば、図4に示すように、複数の燃焼器50は、偶数個の燃焼器50で構成される。そして、図4に示す配置構成は、周方向に隣接する燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向がそれぞれ逆方向となるように構成される。すなわち、酸化剤-時計回り燃焼器50と、酸化剤-反時計回り燃焼器50とが周方向に交互に配置されている。
【0090】
例えば、図4に示す6つの燃焼器50が配置された構成では、3つの酸化剤-時計回り燃焼器50と、3つの酸化剤-反時計回り燃焼器50とを備える。
【0091】
ここで、燃焼時、燃焼器ライナ51内における燃焼ガスの流れは、酸化剤の旋回方向に依存する。すなわち、燃焼器ライナ51内における燃焼ガスの流れは、酸化剤の旋回流の旋回方向と同じ旋回方向の旋回流となる。
【0092】
ここで、後部ライナ60内において、各燃焼器50内における旋回流の影響を受けないようにするためには、偶数個の燃焼器50を備え、その半数を酸化剤-時計回り燃焼器50で、残りの半数を酸化剤-反時計回り燃焼器50で構成することが好ましい。この場合、各燃焼器50の酸化剤供給部53に備えられるスワーラ55のサイズや出口角度などの仕様は、等しく設定されることが好ましい。
【0093】
なお、複数の燃焼器50において、酸化剤-時計回り燃焼器50および酸化剤-反時計回り燃焼器50のそれぞれの設置数を任意に設定してもよい。
【0094】
この場合において、酸化剤-時計回り燃焼器50および酸化剤-反時計回り燃焼器50は、それぞれ少なくとも一つは含まれる。このように、酸化剤-時計回り燃焼器50および酸化剤-反時計回り燃焼器50の双方を備えることで、それぞれの燃焼器50から排出される燃焼ガスの旋回流を減衰させる効果が得られる。
【0095】
例えば、酸化剤-時計回り燃焼器50の設置数が少ない場合には、この燃焼器50における酸化剤の旋回流において軸方向速度成分に対して周方向速度成分の割合を増加させてもよい。後部ライナ60内の燃焼ガスの流れ場において、時計回りの旋回流と反時計回りの旋回流とが干渉して、互いの周方向速度成分を打ち消し合うように、スワーラ55は設計されることが好ましい。
【0096】
また、ここで、図4には、酸化剤-時計回り燃焼器50と、酸化剤-反時計回り燃焼器50とが周方向に交互に配置された一例を示したが、この配置構成に限られない。例えば、偶数個の燃焼器50を備え、その半数を酸化剤-時計回り燃焼器50で、残りの半数を酸化剤-反時計回り燃焼器50で構成した場合、それぞれの燃焼器50を周方向に連続して配置してもよい。
【0097】
また、図4には、所定の円周上に複数の燃焼器50が等間隔で配置された一例を示したが、この配置構成に限られない。複数の燃焼器50は、複数列で構成されてもよい。例えば、6つの燃焼器50を配置する際、3つの燃焼器50を直線状に配置し、それを2列配置してもよい。
【0098】
ここで、上記した一つの燃焼器50は、一つの燃焼器ライナ51と、この一つの燃焼器ライナ51の上流端に設けられた一つの燃料-酸化剤供給機構54とを備える。そして、図2に示すように、一つの燃料-酸化剤供給機構54の下流側に、一つの拡散火炎Fが形成される。
【0099】
なお、一つの燃料-酸化剤供給機構54は、複数の燃料供給部52、複数の酸化剤供給部53を備えてもよい。この場合、各酸化剤供給部53から供給される旋回流の旋回方向は同じ方向に設定される。
【0100】
各燃焼器50の燃焼器ライナ51の下流端は、図2に示すように、後部ライナ60の上流端に嵌合された上流端壁61の貫通口63に嵌合されている。そして、各燃焼器ライナ51は、貫通口63を介して後部ライナ60内に連通している。
【0101】
ここで、図1および図2に示すように、各燃焼器50の燃料供給部52は、分岐された配管11にそれぞれ連結されている。各燃焼器50の酸化剤供給部53は、例えば、分岐された配管21、配管31にそれぞれ連結されている。例えば、酸化剤供給部53の上流部において導入された酸素および超臨界COは、酸化剤供給部53内を流れながら混合し、酸化剤供給部53の出口53aにおいては酸素および超臨界COからなる混合気となる。
【0102】
後部ライナ60は、図2に示すように、複数の燃焼器50の下流側に設けられる。後部ライナ60は、複数の燃焼器50から排出された燃焼ガスを集合させて整流しながらスクロール70に導く流路である。
【0103】
後部ライナ60は、例えば、図2および図3に示すように、タービンロータ97の軸方向に垂直な方向に延設される筒状部材で構成される。また、後部ライナ60は、例えば、下流側へ行くに伴って流路断面積が徐々に減少する流路部を有して構成される。なお、後部ライナ60の形状は、これに限られるものではない。
【0104】
後部ライナ60の一端(上流端)は、平板状の上流端壁61で封鎖され、他端(下流端)は、開口されている。上流端壁61は、前述したように各燃焼器ライナ51の下流端と連通する複数の貫通口63を有する。この貫通口63は、各燃焼器ライナ51の下流端の位置に合わせて形成される。後部ライナ60の他端(下流端)は、スクロール70の上流端に接続されている。
【0105】
後部ライナ60の側壁には、後部ライナ60の外側を流れる超臨界COを内部に導くための複数の導入孔62が設けられている。この後部ライナ60の外側を流れる超臨界COは、後部ライナ60を冷却する機能を有する。
【0106】
なお、導入孔62の構成は、前述した導入孔51cの構成と同じである。また、導入孔62を備えることによる効果は、前述した導入孔51cを備えることによる効果と同じである。
【0107】
スクロール70は、後部ライナ60から排出された燃焼ガスをタービンロータ97の軸方向に導くとともに、タービンロータ97の周方向に導く流路である。
【0108】
スクロール70は、図2および図3に示すように、後部ライナ60から排出された燃焼ガスをタービンロータ97の軸方向に導く屈曲流路部71と、タービンロータ97の軸方向に導かれた燃焼ガスをタービンロータ97の周方向に導く環状流路部72とを備える。
【0109】
屈曲流路部71の上流端は、後部ライナ60の下流端に接続されている。屈曲流路部71は、タービンロータ97の軸方向にほぼ90度屈曲する曲がり管で構成される。なお、屈曲流路部71の出口側は、屈曲しながらタービンロータ97の周方向に広がる構成を有する。そして、屈曲流路部71は、後部ライナ60から排出された燃焼ガスの流れをほぼ90度偏流する。偏流された燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の軸方向に流れる。
【0110】
環状流路部72は、タービンロータ97の周囲を覆うように設けられた環状管で構成される。なお、環状流路部72は、例えば、半環状の上半部および下半部からなる分割構造体を組み合わせることで構成される。
【0111】
環状流路部72は、屈曲流路部71から排出された燃焼ガスの流れをタービンロータ97の周方向に広げる。環状流路部72において、タービンロータ97の軸方向の速度成分を有する燃焼ガスは、タービンロータ97の周方向に均一に広がる。
【0112】
環状流路部72(スクロール70)の出口73は、初段の静翼95に対向する。そして、環状流路部72内を流れる燃焼ガスは、出口73から初段の静翼95に向けて噴出される。なお、環状流路部72の出口端は、内輪側壁95aおよび外輪側壁95bの上流端に接している。これによって、出口73から噴出された燃焼ガスは、初段の静翼95に導かれる。
【0113】
次に、ガスタービン設備8の作用および燃焼器構造体1の作用について説明する。
【0114】
まず、ガスタービン設備8の作用について、図1を参照して説明する。
【0115】
図1に示すように、燃料は、配管11を通り燃焼器構造体1の燃焼器50に供給される。大気から分離された酸素は、配管21を通り燃焼器50に供給される。この際、酸素は、圧縮機23で所定の圧力まで昇圧される。昇圧された酸素は、熱交換器42を通ることで加熱される。
【0116】
また、循環する超臨界COは、配管31通り燃焼器構造体1および燃焼器50に供給される。この際、超臨界COは、熱交換器42を通ることで加熱される。
【0117】
なお、前述したように、燃焼器50に供給された酸素と超臨界COは、混合され、酸化剤として燃焼器ライナ51内の燃焼領域に噴出される。
【0118】
燃焼器構造体1の燃焼器50に導かれた燃料および酸化剤は、燃焼器ライナ51内で燃焼して燃焼ガスとなる。なお、燃焼器構造体1における作用は、後述するのでここでは詳しい説明を省略する。
【0119】
燃焼器構造体1から排出された燃焼ガスは、タービン40に導入される。タービン40は、燃焼ガスによって回動する。そして、発電機41は、タービン40の回動によって駆動され、発電する。
【0120】
ここでいう、燃焼器構造体1から排出される燃焼ガスは、燃料と酸素とによって生成された燃焼生成物と、燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素とを含んだものである。
【0121】
タービン40から排出された燃焼ガスは、配管31に導かれ、熱交換器42を通過することによって冷却される。この際、燃焼ガスからの放熱によって、前述した配管21を流れる酸素および配管31を流れ燃焼器構造体1に循環する二酸化炭素は加熱される。
【0122】
熱交換器42を通過した燃焼ガスは、凝縮器32を通過する。燃焼ガスがこの凝縮器32を通過することで、燃焼ガス中に含まれる水蒸気は、除去される。なお、燃焼ガス中の水蒸気は、凝縮器32を通過することによって凝縮して水となる。水は、例えば、配管36を介して外部に排出される。
【0123】
ここで、前述したように、燃料および酸素の流量を量論混合比(当量比1)になるように調整しているため、水蒸気が除去された燃焼ガス(ドライ燃焼ガス)の成分は、ほぼ二酸化炭素である。
【0124】
二酸化炭素は、配管31に介在する圧縮機33によって昇圧され、超臨界COとなる。圧縮機33によって昇圧された二酸化炭素の一部は、配管31を流れ、燃焼器構造体1に循環される。この際、超臨界COは、熱交換器42を通過することで、例えば、700℃程度に加熱される。
【0125】
一方、圧縮機33によって昇圧された二酸化炭素の残部は、配管31から分岐する配管34に導入される。配管34に導入された二酸化炭素は、流量調整弁35によって流量が調節され、外部に排出される。
【0126】
次に、燃焼器構造体1の作用について、図2および図3を参照して説明する。
【0127】
ここでは、図4に示すように、6つの燃焼器50が所定の円周上に等間隔に配置され、かつ酸化剤-時計回り燃焼器50と酸化剤-反時計回り燃焼器50とが周方向に交互に配置されている場合を例示して説明する。
【0128】
図2に示すように、配管11から燃料供給部52に供給された燃料は、出口52aから燃焼器ライナ51内に噴出される。
【0129】
配管21から酸化剤供給部53に供給された酸素および配管31から酸化剤供給部53に供給された超臨界COは、酸化剤供給部53内で混合し、出口53aから燃焼器ライナ51内に噴出される。この際、超臨界COが出口53aに設けられたスワーラ55を通過することによって旋回流が形成される。
【0130】
燃焼器ライナ51内における燃料および酸化剤の混合気は、点火装置(図示しない)によって点火され、燃焼が開始する。なお、点火装置は、各燃焼器50に設けられている。
【0131】
各燃焼器50では、酸化剤の旋回流によって、燃料と酸化剤の混合が促進される。また、酸化剤の旋回流によって、燃焼領域において再循環領域が形成され安定した火炎を形成する。
【0132】
そして、燃焼器ライナ51内における燃焼ガスの流れは、酸化剤の旋回流の旋回方向と同じ旋回方向の旋回流となる。すなわち、周方向に見たときに、交互に旋回方向が逆方向の燃焼ガスの旋回流が燃焼器ライナ51から後部ライナ60に排出される。
【0133】
ここで、燃焼反応は、燃焼器ライナ51内において完了する。そのため、燃焼器ライナ51の出口から排出される燃焼ガスは、酸素および燃料を含まず、ほぼ二酸化炭素と水蒸気で構成される。
【0134】
配管31から燃焼器構造体1の周囲に供給された超臨界COは、冷却媒体として、燃焼器ライナ51の導入孔51cを通り、燃焼器ライナ51内に導入される。燃焼器ライナ51内に導入された超臨界COは、燃焼ガスとともに燃焼器ライナ51の出口から排出され、後部ライナ60内に流入する。
【0135】
各燃焼器50の燃焼器ライナ51から排出された燃焼ガス(超臨界COを含む)は、後部ライナ60内をスクロール70に向かって流れる。
【0136】
ここで、上記したように、周方向に隣接する燃焼器ライナ51からは、旋回方向が逆方向の燃焼ガスの旋回流が後部ライナ60に排出される。図4には、各燃焼器50の燃焼器ライナ51内の燃焼ガスの旋回流の旋回方向を実線矢印で示している。
【0137】
後部ライナ60内において、時計回りの旋回流と反時計回りの旋回流とが干渉して、周方向速度成分を打ち消し合う。これによって、後部ライナ60内において燃焼ガスの流れは、周方向速度成分をほぼ失い、主として下流方向への軸方向速度成分を有する流れとなる。
【0138】
また、配管31から燃焼器構造体1の周囲に供給された超臨界COは、冷却媒体として、後部ライナ60の導入孔62を通り、後部ライナ60内に導入される。後部ライナ60内に導入された超臨界COは、燃焼ガスとともにスクロール70に流入する。
【0139】
スクロール70の屈曲流路部71に流入した燃焼ガス(超臨界COを含む)は、タービンロータ97の軸方向にほぼ90度偏流される。そして偏流された燃焼ガスは、環状流路部72に流入する。環状流路部72に流入した燃焼ガスは、タービンロータ97の周方向に広がる。
【0140】
スクロール70に流入する燃焼ガスの流れは、周方向速度成分をほとんど有しない流れである。そのため、屈曲流路部71から環状流路部72に広がる流れは、例えば、図3に示す断面において、環状流路部72の左右方向(時計回り方向および反時計回り方向)に均一に広がる。これによって、燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0141】
そして、燃焼ガスは、スクロール70の出口73から初段の静翼95に向けて噴出される。この際、燃焼ガスは、環状の出口から周方向に亘ってほぼ均一な速度で噴出される。
【0142】
なお、上記したように、燃焼器構造体1内を流れた燃焼ガスは、タービン40に導かれ、タービン40を稼働する。
【0143】
(流体力学における循環による評価)
ここでは、本実施の形態の燃焼器構造体1の後部ライナ60において、各燃焼器50から排出された、時計回りの燃焼ガスの旋回流と反時計回りの燃焼ガスの旋回流とが干渉して、周方向速度成分を打ち消すことができることを流体力学における循環の観点から説明する。
【0144】
ここで、流れの中の閉曲線Sにおいて、この閉曲線に沿う方向の速度成分Vsをこの閉曲線の全周について線積分した値を閉曲線Sのまわりの循環Γ(サーキュレーション)という。
【0145】
循環Γは、次の式(1)で定義される。
【数1】
ここで、図4に示す本実施の形態の燃焼器構造体1の配置構成において、燃焼器50の下流側から見たときに、燃焼ガスの旋回流の旋回方向が時計回りとなる燃焼器50と、燃焼ガスの旋回流の旋回方向が反時計回りとなる燃焼器50とを周方向に交互に配置した場合を検討する。
【0146】
ここで、以下において、燃焼器50の下流側から見たときに、燃焼ガスの旋回流の旋回方向が時計回りとなる燃焼器50を燃焼ガス-時計回り燃焼器50と称し、燃焼ガスの旋回流の旋回方向が反時計回りとなる燃焼器50を燃焼ガス-反時計回り燃焼器50と称する。なお、燃焼ガス-時計回り燃焼器50は、酸化剤-時計回り燃焼器50と同じ燃焼器50を意味し、燃焼ガス-反時計回り燃焼器50は、酸化剤-反時計回り燃焼器50と同じ燃焼器50を意味する。
【0147】
図5は、第1の実施の形態の燃焼器構造体1の隣接する2つの燃焼器50における閉曲線内の燃焼ガスの旋回流を模式的に示した図である。2つの燃焼器50において、一方は、燃焼ガス-時計回り燃焼器50であり、他方は、燃焼ガス-反時計回り燃焼器50である。なお、図5には、燃焼ガスの旋回流の旋回方向を矢印で示している。
【0148】
図5は、A-B-C-Dからなる閉曲線S1と、B′-A-D-C′からなる閉曲線S2とを備えている。これらの閉曲線S1、S2についての循環Γの和は、次の式(2)で示される。
【数2】
【0149】
また、各線積分値において、線積分の向きは同じで旋回流の旋回方向が逆であるという関係から次の式(3)~式(6)が成り立つ。
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【0150】
式(3)~式(6)の関係より、式(2)で示した循環Γの和は、「0」となる。これによって、燃焼ガス-時計回り燃焼器50と燃焼ガス-反時計回り燃焼器50とをそれぞれ同数備える本実施の形態の燃焼器構造体1において、全体としても循環Γの和は、「0」となる。
【0151】
これに対して、図13に示した比較例としての燃焼器構造体300では、各燃焼器310における燃焼ガスの旋回流の旋回方向が同じである。そのため、式(3)、式(5)は成立しない。そのため、燃焼器構造体300において、全体として循環Γの和は、「0」にならない。これによって、図13に示した比較例としての燃焼器構造体300において、後部ライナ320およびスクロール330内の燃焼ガスの流れには、周方向速度成分が残存する。すなわち、燃焼器構造体300においては、後部ライナ320およびスクロール330内の燃焼ガスの流れは旋回流となる。
【0152】
(数値流体力学(CFD)解析による評価)
ここで、図6は、第1の実施の形態の燃焼器構造体1および図13に示した比較例としての燃焼器構造体300におけるスクロールの環状流路部における燃焼ガスの主流の圧力分布を示す図である。
【0153】
図6に示したCFD解析の結果は、図2のA-A断面に相当する位置における環状流路部内の圧力分布である。また、CFD解析の結果は、上半上部中央位置Qからタービンロータ97の中心軸Pを中心として反時計回りおよび時計回りに沿う環状流路部72の中央における結果を示したものである。
【0154】
ここで、上半上部中央位置Qは、図3に示すように、タービンロータ97の中心軸Pから鉛直上方の環状流路部72における中央位置である。なお、上半上部中央位置Qの定義は、比較例の燃焼器構造体300の環状流路部332においても同じである。
【0155】
ここで、本実施の形態の燃焼器構造体1においては、図4に示す配置構成において、燃焼ガス-時計回り燃焼器50と燃焼ガス-反時計回り燃焼器50とを周方向に交互に配置した仕様でCFD解析を行った。CFD解析は、ガスタービン設備8における定格運転条件で行った。
【0156】
なお、図13に示した比較例の燃焼器構造体300においては、各燃焼器310における燃焼ガスの旋回流の旋回方向は同じである。
【0157】
ここで、図6の縦軸は、環状流路部を流れる燃焼ガスの主流の静圧である。図6の横軸は、環状流路部の周方向位置である。図6の横軸では、図3における環状流路部の上半上部中央位置Qを0度としている。
【0158】
また、横軸において、上半上部中央位置Qからタービンロータ97の中心軸Pと中心として反時計回りに90度の位置を90度とし、上半上部中央位置Qから時計回りに90度の位置を-90度としている。
【0159】
図6に示すように、比較例としての燃焼器構造体300の環状流路部332では、上半上部中央位置Qよりも反時計回り側の圧力分布と、上半上部中央位置Qよりも時計回り側の圧力分布とが異なる。すなわち、屈曲流路部331から環状流路部332に流入する燃焼ガスの圧力分布は、周方向に不均一となる。
【0160】
これによって、各燃焼器310における燃焼ガスの旋回流の旋回方向が同じである比較例の燃焼器構造体300では、スクロール330の環状流路部332において、周方向に均一な燃焼ガスの速度分布が得られないことがわかる。
【0161】
これに対して、本実施の形態の燃焼器構造体1の環状流路部72では、上半上部中央位置Qよりも反時計回り側の圧力分布と、上半上部中央位置Qよりも時計回り側の圧力分布とがほぼ同じ分布を示している。すなわち、屈曲流路部71から環状流路部72に流入する燃焼ガスの圧力分布は、周方向に均一となる。
【0162】
これによって、燃焼ガス-時計回り燃焼器50と燃焼ガス-反時計回り燃焼器50とを周方向に交互に配置した本実施の形態の燃焼器構造体1では、スクロール70の環状流路部72において、周方向に均一な燃焼ガスの速度分布が得られることがわかる。
【0163】
上記したように、第1の実施の形態の燃焼器構造体1によれば、複数の燃焼器50として、燃焼ガス-時計回り燃焼器50と燃焼ガス-反時計回り燃焼器50とを備えることで、後部ライナ60内で、時計回りの旋回流と反時計回りの旋回流とが干渉して、周方向速度成分を打ち消すことができる。
【0164】
そのため、スクロール70の環状流路部72において、周方向に均一な燃焼ガスの速度分布が得られる。これによって、スクロール70(環状流路部72)の出口73から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼95に噴出することができる。
【0165】
また、第1の実施の形態の燃焼器構造体1における燃焼器50では、一つの燃焼器ライナ51内の一つの空間において、酸化剤供給部53から酸化剤の旋回流を噴出することで、燃料と酸化剤の混合促進および火炎の安定化を実現できる。
【0166】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態の燃焼器構造体2の縦断面を示す図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態の燃焼器構造体1と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。また、以下の実施の形態において、ガスタービン設備の系統図は、第1の実施の形態で説明したガスタービン設備の系統図と同じである。
【0167】
第2の実施の形態の燃焼器構造体2においては、逆旋回付与部120が備えられた以外は第1の実施の形態の燃焼器構造体1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、主に逆旋回付与部120の構成について説明する。
【0168】
図7に示すように、燃焼器構造体1の各燃焼器50は、燃焼器ライナ51の出口に逆旋回付与部120を備える。逆旋回付与部120は、例えば、燃焼器ライナ51の出口を塞ぐように配置されている。逆旋回付与部120は、環状のスワーラで構成される。なお、スワーラの構造は、第1の実施の形態において説明したとおりである。
【0169】
逆旋回付与部120は、逆旋回付与部120を通過する燃焼ガスの流れに対して、酸化剤の旋回流の旋回方向と逆方向の旋回を与える。すなわち、逆旋回付与部120で燃焼ガスの流れに付与する旋回方向は、逆旋回付与部120よりも上流側の燃焼ガスの旋回流における旋回方向と逆方向である。
【0170】
なお、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、特に限定されない。すなわち、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、時計回りであっても、反時計回りであってもよい。
【0171】
逆旋回付与部120を構成するスワーラは、逆旋回付与部120に流入する燃焼ガスの旋回流における周方向速度成分を消滅させるように設計される。
【0172】
上記した逆旋回付与部120を備える燃焼器50において、燃焼ガスが逆旋回付与部120を通過することで、燃焼ガスの旋回流が減衰する。これによって、後部ライナ60に流入する燃焼ガスの流れは、周方向速度成分をほぼ有しない流れとなる。
【0173】
そして、屈曲流路部71から環状流路部72に広がる流れは、例えば、図3に示す断面において、環状流路部72の左右方向(時計回り方向および反時計回り方向)に均一に広がる。これによって、燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0174】
上記したように、第2の実施の形態の燃焼器構造体2によれば、各燃焼器50の燃焼器ライナ51の出口に逆旋回付与部120を備えることで、各燃焼器50から排出される際、周方向速度成分をほぼ有しない燃焼ガスの流れが得られる。
【0175】
これによって、スクロール70(環状流路部72)の出口73から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼95に噴出することができる。
【0176】
なお、第2の実施の形態においては、具体的なCFD解析結果は示していないが、逆旋回付与部120を備えることで、第1の実施の形態の燃焼器構造体1における結果と同様の結果が得られる。すなわち、第2の実施の形態の燃焼器構造体2の環状流路部72では、上半上部中央位置Qよりも反時計回り側の圧力分布と、上半上部中央位置Qよりも時計回り側の圧力分布とがほぼ同じ分布を示す。
【0177】
(第3の実施の形態)
図8は、第3の実施の形態の燃焼器構造体3の縦断面を示す図である。
【0178】
第3の実施の形態の燃焼器構造体3においては、CO旋回流導入部130が備えられた以外は第1の実施の形態の燃焼器構造体1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、主にCO旋回流導入部130の構成について説明する。
【0179】
図8に示すように、燃焼器構造体3の各燃焼器50は、燃焼器ライナ51の出口の外周に環状のCO旋回流導入部130を備える。
【0180】
CO旋回流導入部130は、配管31から燃焼器ケーシング110内に供給された超臨界COに旋回を与えて後部ライナ60内に超臨界COの旋回流を導入する。CO旋回流導入部130は、環状のスワーラで構成される。
【0181】
CO旋回流導入部130から後部ライナ60内に導入される超臨界COの旋回流の旋回方向は、CO旋回流導入部130が備えられる燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの旋回流の旋回方向と逆方向である。
【0182】
なお、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、特に限定されない。すなわち、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、時計回りであっても、反時計回りであってもよい。
【0183】
各CO旋回流導入部130から後部ライナ60内に導入される、超臨界COの流量および旋回流における軸方向速度成分に対する周方向速度成分の割合は、燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの流れの旋回流の周方向速度成分を打ち消す程度に設定される。
【0184】
上記した各燃焼器50において、燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの流れの外周を囲むように、燃焼ガスの旋回流の旋回方向とは逆方向に旋回する超臨界COがCO旋回流導入部130から噴出される。
【0185】
これによって、燃焼ガスの旋回流は、旋回する超臨界COの旋回流によって減衰される。そして、燃焼ガスの流れは、後部ライナ60内を流れる間に、周方向速度成分をほぼ有しない流れとなる。
【0186】
そして、屈曲流路部71から環状流路部72に広がる流れは、例えば、図3に示す断面において、環状流路部72の左右方向(時計回り方向および反時計回り方向)に均一に広がる。これによって、燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0187】
上記したように、第3の実施の形態の燃焼器構造体3によれば、各燃焼器50における燃焼器ライナ51の出口の外周に環状のCO旋回流導入部130を備えることで、燃焼ガスの旋回流を超臨界COの流れによって減衰させることができる。
【0188】
これによって、スクロール70(環状流路部72)の出口73から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼95に噴出することができる。
【0189】
(第4の実施の形態)
図9は、第4の実施の形態の燃焼器構造体4の縦断面を示す図である。図10は、図9のC-C断面を示す図である。
【0190】
第4の実施の形態の燃焼器構造体4においては、CO旋回流導入部140が備えられた以外は第1の実施の形態の燃焼器構造体1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、主にCO旋回流導入部140の構成について説明する。
【0191】
図9および図10に示すように、燃焼器構造体4は、後部ライナ60に形成されたCO旋回流導入部140を備える。
【0192】
図10に示すように、CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の中心軸方向の所定位置において後部ライナ60の側壁の周方向に形成されている。CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の中心軸Oに向かう方向(半径方向)に対して所定の角度傾けた方向に後部ライナ60を貫通する複数の貫通孔で構成される。
【0193】
図10に断面において、貫通孔は、例えば、後部ライナ60の内周面の接線方向に後部ライナ60を貫通する。
【0194】
CO旋回流導入部140である各貫通孔は、配管31から燃焼器ケーシング110内に供給された超臨界COを噴出することで、後部ライナ60内に超臨界COの旋回流を形成する。
【0195】
ここで、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、同じ方向に設定されている。すなわち、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの旋回流の旋回方向も同じ方向となる。
【0196】
ここで、CO旋回流導入部140である複数の貫通孔は、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの旋回流の旋回方向とは逆方向の超臨界COの旋回流を形成するように形成される。図10には、各燃焼器50の燃焼器ライナ51内の燃焼ガスの旋回流の旋回方向および貫通孔から噴出される超臨界COの噴出方向を矢印で示している。
【0197】
ここで、CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の入口側、すなわち、後部ライナ60における上流部に形成されることが好ましい。また、CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の中心軸方向の複数の所定位置に形成されてもよい。すなわち、CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の中心軸方向に複数段形成されてもよい。
【0198】
CO旋回流導入部140から後部ライナ60内に導入される超臨界COの流量およびCO旋回流導入部140である貫通孔の中心軸Oに向かう方向に対する傾斜角度は、後部ライナ60内に形成される燃焼ガスの旋回流の周方向速度成分を打ち消す程度に設定される。
【0199】
上記した燃焼器構造体4において、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスによって後部ライナ60内に一方の方向に旋回する旋回流が形成される。一方、CO旋回流導入部140である貫通孔から噴出された超臨界COによって、燃焼ガスの流れの旋回方向と逆方向の超臨界COの旋回流が後部ライナ60内に形成される。
【0200】
そして、燃焼ガスの旋回流は、超臨界COの旋回流によって減衰される。これによって、燃焼ガスの流れは、後部ライナ60内を流れる間に、周方向速度成分をほぼ有しない流れとなる。
【0201】
そして、屈曲流路部71から環状流路部72に広がる流れは、例えば、図3に示す断面において、環状流路部72の左右方向(時計回り方向および反時計回り方向)に均一に広がる。これによって、燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0202】
上記したように、第4の実施の形態の燃焼器構造体4によれば、後部ライナ60にCO旋回流導入部140を備えることで、燃焼ガスの旋回流を超臨界COの旋回流によって減衰させることができる。これによって、スクロール70(環状流路部72)の出口73から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼95に噴出することができる。
【0203】
ここで、第4の実施の形態の燃焼器構造体4におけるCO旋回流導入部140の構成は、上記した構成に限られない。
【0204】
図11は、第4の実施の形態の他の構成の燃焼器構造体4の縦断面を示す図である。
【0205】
図11に示すように、CO旋回流導入部140は、後部ライナ60の上流端に設けられた上流端壁61に設けられた環状のスワーラで構成されてもよい。環状のスワーラは、上流端壁61の外縁に周方向に亘って形成されている。
【0206】
CO旋回流導入部140であるスワーラは、配管31から燃焼器ケーシング110内に供給された超臨界COを噴出することで、後部ライナ60内に超臨界COの旋回流を形成する。
【0207】
ここで、前述したように、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの流れの旋回方向も同じ方向である。
【0208】
CO旋回流導入部140から噴出される超臨界COの旋回流の旋回方向は、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの流れの旋回方向と逆方向である。
【0209】
CO旋回流導入部140から後部ライナ60内に導入される超臨界COの流量およびCO旋回流導入部140を構成するスワーラの軸方向速度成分に対する周方向速度成分の割合は、後部ライナ60内に形成される燃焼ガスの旋回流の周方向速度成分を打ち消す程度に設定される。
【0210】
上記した他の構成のCO旋回流導入部140を備える場合においても、図10および図9に示したCO旋回流導入部140を備える場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0211】
(第5の実施の形態)
図12は、第5の実施の形態の燃焼器構造体5の縦断面を示す図である。
【0212】
第5の実施の形態の燃焼器構造体5においては、CO旋回流導入部150が備えられた以外は第1の実施の形態の燃焼器構造体1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、主にCO旋回流導入部150の構成について説明する。
【0213】
図12に示すように、燃焼器構造体5は、後部ライナ60の上流端に設けられた上流端壁61にCO旋回流導入部150を備える。CO旋回流導入部150は、各燃焼器ライナ51に対応して所定の円周上に設けられた貫通口63よりも中央に設けられた環状のスワーラで構成される。
【0214】
CO旋回流導入部150であるスワーラは、配管31から燃焼器ケーシング110内に供給された超臨界COを噴出することで、後部ライナ60内に超臨界COの旋回流を形成する。
【0215】
ここで、各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向は、同じ方向に設定されている。すなわち、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの旋回流の旋回方向も同じ方向となる。
【0216】
CO旋回流導入部150から噴出される超臨界COの旋回流の旋回方向は、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの流れの旋回方向と逆方向である。
【0217】
CO旋回流導入部150から後部ライナ60内に導入される超臨界COの流量およびCO旋回流導入部150を構成するスワーラの軸方向速度成分に対する周方向速度成分の割合は、後部ライナ60内に形成される燃焼ガスの旋回流の周方向速度成分を打ち消す程度に設定される。
【0218】
上記した燃焼器構造体5において、各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスによって後部ライナ60内に一方の方向に旋回する旋回流が形成される。一方、CO旋回流導入部150であるスワーラから噴出された超臨界COによって、燃焼ガスの流れの旋回方向と逆方向の超臨界COの旋回流が後部ライナ60内に形成される。この超臨界COの旋回流は、燃焼ガスの旋回流の旋回中央部に形成される。
【0219】
そして、燃焼ガスの旋回流は、超臨界COの旋回流によって減衰される。これによって、燃焼ガスの流れは、後部ライナ60内を流れる間に、周方向速度成分をほぼ有しない流れとなる。
【0220】
そして、屈曲流路部71から環状流路部72に広がる流れは、例えば、図3に示す断面において、環状流路部72の左右方向(時計回り方向および反時計回り方向)に均一に広がる。これによって、燃焼ガスの流れは、タービンロータ97の周囲を囲む環状流路部72の環状の流路内においてほぼ均一な速度分布となる。
【0221】
上記したように、第5の実施の形態の燃焼器構造体5によれば、後部ライナ60にCO旋回流導入部150を備えることで、燃焼ガスの旋回流を超臨界COの旋回流によって減衰させることができる。
【0222】
これによって、スクロール70(環状流路部72)の出口73から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼95に噴出することができる。
【0223】
なお、上記した第3の実施の形態~第5の実施の形態においては、具体的なCFD解析結果は示していないが、CO旋回流導入部130、140、150を備えることで、第1の実施の形態の燃焼器構造体1における結果と同様の結果が得られる。
【0224】
すなわち、第3の実施の形態~第5の実施の形態における燃焼器構造体3、4、5の環状流路部72では、上半上部中央位置Qよりも反時計回り側の圧力分布と、上半上部中央位置Qよりも時計回り側の圧力分布とがほぼ同じ分布を示す。
【0225】
(他の実施の形態)
第3の実施の形態の燃焼器構造体3において各燃焼器ライナ51から排出される燃焼ガスの旋回流の旋回方向が同じ場合(各燃焼器50における酸化剤の旋回流の旋回方向が同じ場合)、燃焼器構造体3は、第4の実施の形態の燃焼器構造体4におけるCO旋回流導入部140または第5の実施の形態の燃焼器構造体5におけるCO旋回流導入部150をさらに備えてもよい。
【0226】
また、第4の実施の形態の燃焼器構造体4は、第5の実施の形態の燃焼器構造体5におけるCO旋回流導入部150をさらに備えてもよい。
【0227】
また、上記した本実施の形態では、上半側に燃焼器構造体1、2、3、4、5を備えた一例を示したが、この構成に限られない。
【0228】
燃焼器構造体1、2、3、4、5は、下半側に備えられてもよい。この場合、燃焼器構造体1、2、3、4、5は、外部ケーシング85および内部ケーシング90を、例えば、鉛直下方から貫通して配置されている。
【0229】
さらに、燃焼器構造体1、2、3、4、5は、上半側および下半側の双方に備えられてもよい。
【0230】
以上説明した実施形態によれば、燃焼器において燃焼ガスの旋回流が形成される場合においても、スクロール出口から周方向に亘ってほぼ均一な速度で燃焼ガスを初段の静翼に噴出することが可能となる。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0232】
1、2、3、4、5…燃焼器構造体、8…ガスタービン設備、10…燃料供給系統、11、21、31、34、36…配管、12、22、35…流量調整弁、20…酸素供給系統、23、33…圧縮機、30…二酸化炭素循環系統、32…凝縮器、40…タービン、41…発電機、42…熱交換器、50…燃焼器、51…燃焼器ライナ、51a…上流端壁、51b…開口、51c…導入孔、52…燃料供給部、52a、53a、73…出口、53…酸化剤供給部、54…燃料‐酸化剤供給機構、55…スワーラ、60…後部ライナ、61…上流端壁、62…導入孔、63、86、91…貫通口、70…スクロール、71…屈曲流路部、72…環状流路部、80…ケーシング、85…外部ケーシング、90…内部ケーシング、90a…外周面、92…突条部、93…シールリング、95…静翼、95a…内輪側壁、95b…外輪側壁、95c…外側壁、96…動翼、97…タービンロータ、98…ロータホイール、100…スリーブ、110…燃焼器ケーシング、111…ヘッドプレート、120…逆旋回付与部、130、140、150…CO旋回流導入部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14