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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-07
(45)【発行日】2025-03-17
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20250310BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20250310BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20250310BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20250310BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/16 K
E02F9/24 H
E02F9/26 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021087696
(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公開番号】P2022033102
(43)【公開日】2022-02-28
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020137181
(32)【優先日】2020-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昂平
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】野口 智行
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219894(JP,A)
【文献】特開平11-339194(JP,A)
【文献】特開2001-315600(JP,A)
【文献】特開2018-155079(JP,A)
【文献】特開2010-121270(JP,A)
【文献】特開平05-112975(JP,A)
【文献】特開2014-091973(JP,A)
【文献】特開2010-059653(JP,A)
【文献】特開2019-167733(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131955(WO,A1)
【文献】特開2008-202331(JP,A)
【文献】特開2008-120280(JP,A)
【文献】特開2010-163027(JP,A)
【文献】特開2015-153318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/16
E02F 9/24
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に設けられた走行装置と、
前記走行装置の進行方向を設定して、当該設定した進行方向へ前記走行装置を走行させる操作を行うことが可能な操作部材と、
前記機体の周囲を撮像可能な撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置と、
前記走行装置の進行方向の報知を行う報知装置と、
前記操作部材の操作が行われた場合において、前記表示装置に前記撮像画像の表示を行わせる制御及び前記報知装置に前記進行方向の報知を行わせる制御を実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操作部材の操作が行われたときに、当該操作部材の操作方向に対応する前記進行方向の前記撮像画像の前記表示装置による表示と前記進行方向の前記報知装置による報知とを開始し且つ、前記操作部材の操作量に基づいて、前記進行方向の撮像画像の表示を開始するタイミングと当該進行方向の報知を開始するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記報知装置により前記進行方向の報知を開始するタイミングを、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始するタイミングより遅延させる請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記操作部材の操作量が第1閾値以上になると、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始し、
前記操作部材の操作量が第2閾値以上になると、前記報知装置により前記進行方向の報知を開始する請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1閾値は、前記第2閾値より小さい値に設定されている請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記操作部材の操作量が第1閾値以上になっている状態で第1所定時間以上経過したときに、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始し、
前記操作部材の操作量が第2閾値以上になっている状態で第2所定時間以上経過したときに、前記報知装置により前記進行方向の報知を開始する請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項6】
前記第1所定時間は、前記第2所定時間より短い時間に設定されている請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
機体と、
前記機体に設けられた走行装置と、
前記走行装置の進行方向を設定して、当該設定した進行方向へ前記走行装置を走行させる操作を行うことが可能な操作部材と、
前記機体の周囲を撮像可能な撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置と、
前記走行装置の進行方向の報知を行う報知装置と、
前記操作部材の操作が行われた場合において、前記表示装置に前記撮像画像の表示を行わせる制御及び前記報知装置に前記進行方向の報知を行わせる制御を実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操作部材が操作されて、当該操作部材の操作方向に対応する前記進行方向の前記撮像画像を前記表示装置により表示させ且つ前記報知装置により前記進行方向を報知させている状態で、前記操作部材が操作前の状態に戻るときに、前記進行方向の前記撮像画像の表示と前記進行方向の報知とを終了し且つ、前記操作部材の操作量に基づいて、前記進行方向の撮像画像の表示を終了するタイミングと当該進行方向の報知を終了するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる作業機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記操作部材が操作されて、当該操作部材の操作方向に対応する前記進行方向の前記撮像画像を前記表示装置により表示させ且つ前記報知装置により前記進行方向を報知させている状態で、前記操作部材が操作前の状態に戻るときに、前記進行方向の前記撮像画像の表示と前記進行方向の報知とを終了し且つ、当該進行方向の撮像画像の表示を終了するタイミングと当該進行方向の報知を終了するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる請求項1~6のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了するタイミングを、前記報知装置により前記進行方向の報知を終了するタイミングより遅延させる請求項1~8のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記操作部材の操作量が第3閾値以下になると、前記表示装置による前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了し、
前記操作部材の操作量が第4閾値以下になると、前記報知装置による前記進行方向の報知を終了する請求項1~9のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項11】
前記第3閾値は、前記第4閾値より小さい値に設定されている請求項10に記載の作業機。
【請求項12】
前記制御装置は、前記操作部材の操作量が第3閾値以下になっている状態で第3所定時間以上経過したときに、前記表示装置による前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了し、前記操作部材の操作量が第4閾値以下になっている状態で第4所定時間以上経過したときに、前記報知装置による前記進行方向の報知を終了する請求項1~11のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項13】
前記第3所定時間は、前記第4所定時間より長い時間に設定されている請求項12に記載の作業機。
【請求項14】
前記制御装置は、前記操作部材の操作状態に基づいて、前記撮像装置が撮像した前記走行装置の進行方向の撮像画像を前記表示装置に表示させ、且つ前記走行装置の進行方向を前記報知装置に報知させる請求項1~13のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項15】
前記制御装置は、前記機体の後進に対応する方向に前記操作部材が操作された場合に、前記撮像装置が撮像した前記機体の後方の撮像画像を前記表示装置に表示させ、且つ前記機体の後進を前記報知装置により報知させる請求項14に記載の作業機。
【請求項16】
前記走行装置は、作動油が供給されることで一方向又は他方向に走行可能であり、
当該作業機は、
前記操作部材の操作状態に応じて作動油を供給して、前記走行装置の一方向への走行を操作する第1操作弁と、
前記操作部材の操作状態に応じて作動油を供給して、前記走行装置の他方向への走行を操作する第2操作弁と、
前記第1操作弁から前記走行装置に作動油を供給するための第1油路と、
前記第2操作弁から前記走行装置に作動油を供給するための第2油路と、
前記第1油路に作用する作動油の第1圧力を検出する第1検出部と、
前記第2油路に作用する作動油の第2圧力を検出する第2検出部と、を備え、
前記制御装置は、前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて、前記操作部材の操作方向及び操作量を検出し、前記走行装置の進行方向を判断する請求項1~15のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機において、後進していることを報知する技術として、特許文献1が知られている。
特許文献1の作業機は、走行装置と、作動油が供給可能で走行装置の前進を操作する前進操作弁と、作動油が供給可能で走行装置の後進を操作する後進操作弁と、走行装置と前進操作弁とを接続する第1油路と、走行装置と後進操作弁とを接続する第2油路と、第1油路に接続され前進操作弁の作動油の圧力である第1圧力を検出する第1測定装置と、第2油路に接続され後進操作弁の作動油の圧力である第2圧力を検出する第2測定装置と、第1圧力及び第2圧力に基づいて、走行装置が前進又は後進であるかを判断する制御装置と、制御装置によって後進と判断された場合に後進であると報知する報知装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-178272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、後進操作弁の操作が行われることによって、作業機が後進であると報知している。一方、作業機を後進させたときに、後進の状態を確認する技術として、作業機の後方を撮像して、当該撮像画像を表示するバックモニタが知られている。このような作業機の進行方向の報知と撮像画像の表示とを両方行った場合、短絡的には便利であると考えられる。しかしながら、例えば、進行方向の報知と撮像画像の表示とを両方とも行っても、一方しか作業者に認識されないことがある。また、作業者が必要としないのに、進行方向の報知が行われたり、撮像画像が表示されたりすることがある。
【0005】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、撮像画像の表示と進行方向の報知とを効果的に行って、利便性を向上させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の通りである。
本発明の作業機は、機体と、前記機体に設けられた走行装置と、前記走行装置の進行方向を設定して、当該設定した進行方向へ前記走行装置を走行させる操作を行うことが可能な操作部材と、前記機体の周囲を撮像可能な撮像装置と、前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置と、前記走行装置の進行方向の報知を行う報知装置と、前記操作部材の操作が行われた場合において、前記表示装置に前記撮像画像の表示を行わせる制御及び前記報知装置に前記進行方向の報知を行わせる制御を実行可能な制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記操作部材の操作が行われたときに、当該操作部材の操作方向に対応する前記進行方向の前記撮像画像の前記表示装置による表示と前記進行方向の前記報知装置による報知とを開始し且つ、前記操作部材の操作量に基づいて、前記進行方向の撮像画像の表示を開始するタイミングと当該進行方向の報知を開始するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0007】
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記報知装置により前記進行方向の報知を
開始するタイミングを、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始するタイミングより遅延させる。
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が第1閾値以上になると、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始し、前記操作部材の操作量が第2閾値以上になると、前記報知装置により前記進行方向の報知を開始する。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記第1閾値は、前記第2閾値より小さい値に設定されている。
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が第1閾値以上になっている状態で第1所定時間以上経過したときに、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を開始し、前記操作部材の操作量が第2閾値以上になっている状態で第2所定時間以上経過したときに、前記報知装置により前記進行方向の報知を開始する。
本発明の一実施形態では、前記第1所定時間は、前記第2所定時間より短い時間に設定されている。
【0009】
本発明の作業機は、機体と、前記機体に設けられた走行装置と、前記走行装置の進行方向を設定して、当該設定した進行方向へ前記走行装置を走行させる操作を行うことが可能な操作部材と、前記機体の周囲を撮像可能な撮像装置と、前記撮像装置が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置と、前記走行装置の進行方向の報知を行う報知装置と、前記操作部材の操作が行われた場合において、前記表示装置に前記撮像画像の表示を行わせる制御及び前記報知装置に前記進行方向の報知を行わせる制御を実行可能な制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記操作部材が操作されて、当該操作部材の操作方向に対応する前記進行方向の前記撮像画像を前記表示装置により表示させ且つ前記報知装置により前記進行方向を報知させている状態で、前記操作部材が操作前の状態に戻るときに、前記進行方向の前記撮像画像の表示と前記進行方向の報知とを終了し且つ、前記操作部材の操作量に基づいて、前記進進行方向の撮像画像の表示を終了するタイミングと当該進行方向の報知を終了するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記表示装置により前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了するタイミングを、前記報知装置によ前記進行方向の報知を終了するタイミングより遅延させる。
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が第3閾値以下になると、前記表示装置による前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了し、前記操作部材の操作量が第4閾値以下になると、前記報知装置による前記進行方向の報知を終了する。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記第3閾値は、前記第4閾値より小さい値に設定されている。
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記操作部材の操作量が第3閾値以下になっている状態で第3所定時間以上経過したときに、前記表示装置による前記進行方向の前記撮像画像の表示を終了し、前記操作部材の操作量が第4閾値以下になっている状態で第4所定時間以上経過したときに、前記報知装置による前記進行方向の報知を終了する。
【0012】
本発明の一実施形態では、前記第3所定時間は、前記第4所定時間より長い時間に設定されている。
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記操作部材の操作状態に基づいて、前記撮像装置が撮像した前記走行装置の進行方向の撮像画像を前記表示装置に表示させ、且つ前記走行装置の進行方向を前記報知装置に報知させる。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記制御装置は、前記機体の後進に対応する方向に前記操作部材が操作された場合に、前記撮像装置が撮像した前記機体の後方の撮像画像を前記表示装置に表示させ、且つ前記機体の後進を前記報知装置により報知させる。
本発明の一実施形態では、前記走行装置は、作動油が供給されることで一方向又は他方向に走行可能であり、前記作業機は、前記操作部材の操作状態に応じて作動油を供給して、前記走行装置の一方向への走行を操作する第1操作弁と、前記操作部材の操作状態に応じて作動油を供給して、前記走行装置の他方向への走行を操作する第2操作弁と、前記第1操作弁から前記走行装置に作動油を供給するための第1油路と、前記第2操作弁から前記走行装置に作動油を供給するための第2油路と、前記第1油路に作用する作動油の第1圧力を検出する第1検出部と、前記第2油路に作用する作動油の第2圧力を検出する第2検出部と、を備え、前記制御装置は、前記第1圧力及び前記第2圧力に基づいて、前記操作部材の操作方向及び操作量を検出し、前記走行装置の進行方向を判断する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮像画像の表示と進行方向の報知とを効果的に行って、利便性を向上させることができる作業機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業機の油圧システムの一例を示す図である。
図2】操作部材の操作方向と操作量の一関係を示す図である。
図3】操作部材と報知装置と表示装置の動作状態の一関係を示す図である。
図4】表示装置による表示の一例を示す図である。
図5】操作部材と報知装置と表示装置の動作状態の他の関係を示す図である。
図6】作業機の油圧システムの他の例を示す図である。
図7】操作部材の操作状態と第1圧力と第2圧力の一関係を示す図である。
図8】操作部材の後進操作状態と第1圧力と第2圧力の一関係を示す図である。
図9】走行操作装置の他の例を示す図である。
図10】走行操作装置の他の例を示す図である。
図11】作業機の一例であるトラックローダの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、実施形態の作業機1の全体構成について説明する。
図11は、作業機1の一例であるトラックローダの側面図である。なお、本発明の作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、或いはバックホー等であってもよい。
【0017】
図11に示すように、作業機1は、機体2と、機体2に装着された作業装置3と、機体2を走行可能に支持する走行装置4とを備えている。機体2の上部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の内部には、着座部と背もたれ部とを有するシートから成る運転席13が設けられている。なお、運転席13に着座した運転者の前側(図11では紙面に向かって左側)を作業機1の前方、当該運転者の後側(図11では紙面に向かって右側)を作業機1の後方、当該運転者の左側(図11では紙面に向かって手前側)を作業機1の左方、当該運転者の右側(図11では紙面に向かって奥側)を作業機1の右方として、以下説明を行う。
【0018】
キャビン5の前部は、機体2の前部で支持されている。キャビン5の後部は、支持軸(図示省略)を介して機体2に支持されている。当該支持軸は、作業機1の左右方向と平行に設けられている。キャビン5は、当該支持軸回りに揺動自在である。キャビン5内の運転席13の一方側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行操作装置14が配置されている。
【0019】
作業装置3は、左右1対のブーム22、22Rと、ブーム22L、22Rの先端に装着されたバケット(作業具)23とを備えている。ブーム22Lは、キャビン5の左側に配置されている。ブーム22Rは、キャビン5の右側に配置されている。ブーム22Lとブーム22Rは、当該ブーム22L、22R間に設けられた連結体(図示せず)によって連結されている。各ブーム22L、22Rは、第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25によって回転自在に支持されている。
【0020】
機体2の後部には、複動式油圧シリンダからなるリフトシリンダ26が左右1対で設けられている。各リフトシリンダ26の一端部は、機体2の後方下部に回転自在に連結されている。各リフトシリンダ26の他端部は、各ブーム22L、22Rに回転自在に連結されている。各リフトシリンダ26が同時に伸縮することにより、各ブーム22L、22Rが同時に上下に揺動動作する。
【0021】
バケット23の背面には、装着ブラケット27が左右1対で設けられている。各装着ブラケット27には、各ブーム22L、22Rの先端部が回動自在に連結されている。各ブーム22L、22Rの前側には、複動式油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が左右1対で設けられている。各チルトシリンダ28の一端部は、各装着ブラケット27に回転自在に連結されている。各チルトシリンダ28の他端部は、各ブーム22L、22Rに回転自在に連結されている。各チルトシリンダ28が同時に伸縮することにより、バケット23が上下に揺動動作(スクイ・ダンプ動作)する。ブーム22L、22Rとバケット23を揺動動作させることにより、掘削作業などが実行可能となる。
【0022】
バケット23は、装着ブラケット27に対して着脱自在である。装着ブラケット27には、バケット23に代えて、各種のアタッチメント(油圧アクチュエータを有する油圧駆
動式の作業具)を取り付けることが可能である。各種のアタッチメントとしては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロアなどがある。このような各種のアタッチメントを装着ブラケット27に取り付けることで、作業機1において掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)が実行可能となる。
【0023】
機体2の左側と右側には、走行装置4が設けられている。各走行装置4は、クローラ式の走行装置である。各走行装置4は、作動油が供給されることで正転又は逆転で駆動して、一方向(前進方向)又は他方向(後進方向)に走行可能である。走行装置4と共に、機体2及び作業機1も走行する。クローラ式の走行装置4に代えて、前輪及び後輪を有する装輪型の走行装置を作業機1に設けてもよい。
【0024】
機体(車体)2の内部には、原動機29、燃料タンク(図示省略)、作動油タンク31(図1)などが内蔵されている。原動機29は、ディーゼルエンジン或いはモータジェネレータ等である。原動機29の燃料は、燃料タンクに貯留される。
次に、作業機1に備わる走行系の油圧システムについて説明する。
図1は、作業機1の走行系の油圧システムの一例を示す図である。なお、作業機1には、走行系の油圧システムだけでなく、作業系の油圧システム(図示省略)も備わっている。
【0025】
図1に示す作業機1の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と第2油圧ポンプP2とを有している。各油圧ポンプP1は、原動機29の動力によって駆動されて、作動油タンク31に貯留された作動油を吸引した後に吐出する。第1油圧ポンプP1は、リフトシリンダ26(図11)、チルトシリンダ28(図11)、又は各種のアタッチメントに設けられた油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2油圧ポンプP2(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御圧又は信号圧としての作動油の圧力を供給するために使用される。以降、説明の便宜上、制御圧又は信号圧としての作動油のことを「パイロット油」、パイロット油の圧力のことを「パイロット圧」という。
【0026】
図1に示す第1駆動回路32Lと第1走行部21Lとは、作業機1の左側に設けられた走行装置4(図11)に備わっている。第2駆動回路32Rと第2走行部21Rとは、作業機1の右側に設けられた走行装置4に備わっている。第1駆動回路32Lは第1走行部21Lを駆動し、第2駆動回路32Rは第2走行部21Rを駆動する。
第1駆動回路32Lには、第1走行ポンプ66Lが備わっている。第1走行部21Lには、第1走行モータ57Lが備わっている。第1走行ポンプ66Lと第1走行モータ57Lとは、油路で接続されている。第2駆動回路32Rには、第2走行ポンプ66Rが備わっている。第2走行部21Rには、第2走行モータ57Rが備わっている。第2走行ポンプ66Rと第2走行モータ57Rとは、油路で接続されている。
【0027】
各走行ポンプ66L、66Rは、原動機29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプ(HSTポンプ)である。各走行ポンプ66L、66Rは、パイロット油の圧力であるパイロット圧が作用する受圧部66aと受圧部66bとを有している。各受圧部66a、66bに作用するパイロット圧によって、走行ポンプ66L、66Rの斜板の角度が変更されて、走行ポンプ66L、66Rからの作動油の吐出方向や吐出量が変わる。
【0028】
第1走行部21Lと第2走行部21Rはそれぞれ、走行モータ57L、57R、斜板切換シリンダ58、及び油圧切換弁63を有している。各走行モータ57L、57Rは、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータ(HSTモータ)である。斜板切換シリンダ58は、作動油の油圧によって伸縮可能であり、対応する走行モータ57L、57Rの斜板に連結されている。
【0029】
油圧切換弁63は、作動油の圧力(パイロット圧)に応じて切り換わる二位置切換弁である。油圧切換弁63は、パイロット圧が所定の圧力以上になると、第2位置63bに切り換わる。また油圧切換弁63は、パイロット圧が所定圧未満になると、バネの弾性力によって、第1位置63aに戻される。油圧切換弁63が第1位置63aにある場合、斜板切換シリンダ58からパイロット油が抜けて、斜板切換シリンダ58が収縮し、走行モー
タ57L、57Rが低速側の第1速状態となる。油圧切換弁63が第2位置63bにある場合、斜板切換シリンダ58にパイロット油が供給されて、斜板切換シリンダ58が伸長し、走行モータ57L、57Rが高速側の第2速状態となる。
【0030】
第2油圧ポンプP2の吐出ポートには、第2油圧ポンプP2から吐出されるパイロット油を流通させる吐出油路100aが接続されている。吐出油路100aからは、第1供給路100b、第2供給路100c、及び第3供給路100dが分岐している。第1供給路100bには、走行ポンプ66L、66Rが接続されている。第2供給路100cには、走行操作装置14が接続されている。第3供給路100dには、油圧切換弁63が接続されている。
【0031】
また、第3供給路100dの中途部には、二位置切換弁で構成された方向切換弁45が接続されている。方向切換弁45を第1位置45aに切り換えることで、油圧切換弁63を第1位置63aに切り換えることができる。方向切換弁45を第2位置45bに切り換えることで、油圧切換弁63を第2位置63bに切り換えることができる。方向切換弁45の切換は、制御装置75が行う。
【0032】
走行操作装置14は、操作弁36、37、38、39、操作部材40、及びシャトル弁41、42、43、44を有している。操作部材40は、レバー型の操作部材であって、走行装置4など(機体2と作業機1を含む。)を走行させる操作を行うことが可能である。
操作弁36、37、38、39は、共通の操作部材40、即ち1本の操作部材40によって操作される。各操作弁36、37、38、39は、操作部材40の操作状態に応じて、吐出するパイロット(作動油)の圧力を変化させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、1本の操作部材40で複数の操作弁36、37、38、39を操作可能にしているが、他の例として、レバー型又はその他のタイプの複数の操作部材で複数の操作弁36、37、38、39を操作可能にしてもよい。例えば、運転席13の一方側(左側)に配置した第1操作部材で、前進操作弁36と後進操作弁37を操作し、運転席13の他方側(右側)に配置した第2操作部材で、右旋回操作弁38と左旋回操作弁39を操作するようにしてもよい。
【0034】
前進操作弁36は、走行装置4(即ち機体2及び作業機1)の前進を操作する弁である。前進操作弁36と走行ポンプ66L、66Rとは、油路46により接続されている。詳しくは、油路46は、第1走行ポンプ66Lの受圧部66aに接続される油路46aと、第2走行ポンプ66Rの受圧部66aに接続される油路46bと、油路46aと油路46bとを合流する油路46cとを含んでいる。油路46aの中途部には、第1シャトル弁41が設けられ、油路46bの中途部には、第2シャトル弁42が設けられている。油路46aにおいて第1シャトル弁41の上流側と、油路46bにおいて第2シャトル弁42の上流側とは、油路46cに接続されている。油路46cの合流側と反対側は、前進操作弁36に接続されている。
【0035】
後進操作弁37は、走行装置4(即ち機体2及び作業機1)の後進を操作する弁である。後進操作弁37と走行ポンプ66L、66Rとは、油路47により接続されている。詳しくは、油路47は、第1走行ポンプ66Lの受圧部66bに接続される油路47aと、第2走行ポンプ66Rの受圧部66bに接続される油路47bと、油路47aと油路47bとを合流する油路47cとを含んでいる。油路47aの中途部には、第3シャトル弁43が設けられ、油路47bの中途部には、第4シャトル弁44が設けられている。油路47aにおいて第3シャトル弁43の上流側と、油路47bにおいて第4シャトル弁44の上流側とは、油路47cに接続されている。油路47cの合流側と反対側は、後進操作弁37に接続されている。
【0036】
右旋回操作弁38は、走行装置4(即ち機体2及び作業機1)の右方向への旋回を操作する弁である。右旋回操作弁38、第1シャトル弁41、及び第4シャトル弁44は、油路48により接続されている。左旋回操作弁39は、走行装置4(即ち機体2及び作業機1)の左方向への旋回を操作する弁である。左旋回操作弁39、第2シャトル弁42、及び第3シャトル弁43は、油路49により接続されている。
【0037】
操作部材40を前側(図1では矢示A1方向)に揺動させると、前進操作弁36が操作されて、当該操作弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁41から油路46aを介して第1走行ポンプ66Lの受圧部66aに作用すると共に、第2シャトル弁42から油路46bを介して第2走行ポンプ66Rの受圧部66aに作用する。これにより、走行モータ57L、57Rの出力軸57aが、操作部材40の揺動量に比例した速度で正転(前進回転)して、作業機1が前方に直進する。
【0038】
また、操作部材40を後側(図1では矢示A2方向)に揺動させると、後進操作弁37が操作されて、当該操作弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁43から油路47aを介して第1走行ポンプ66Lの受圧部66bに作用すると共に、第4シャトル弁44から油路47bを介して第2走行ポンプ66Rの受圧部66bに作用する。これにより、走行モータ57L、57Rの出力軸57aが操作部材40の揺動量に比例した速度で逆転(後進回転)して、作業機1が後方に直進する。
【0039】
また、操作部材40を右側(図1では矢示A3方向)に揺動させると、右旋回操作弁38が操作されて、当該該操作弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁41から油路46aを介して第1走行ポンプ66Lの受圧部66aに作用すると共に、第4シャトル弁44から油路47bを介して第2走行ポンプ66Rの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行部21Lの出力軸57aが正転し、且つ第2走行部21Rの出力軸57aが逆転して、作業機1が右側に旋回する。
【0040】
また、操作部材40を左側(図1では矢示A4方向)に揺動させると、左旋回操作弁39が操作されて、当該操作弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2シャトル弁42から油路46bを介して第2走行ポンプ66Rの受圧部66aに作用すると共に第3シャトル弁43から第1走行ポンプ66Lの受圧部66bに作用する。これにより、第2走行部21Rの出力軸57aが正転し、且つ第1走行部21Lの出力軸57aが逆転して、作業機1が左側に旋回する。
【0041】
また、操作部材40を右斜め前方、左斜め前方、右斜め後方、左斜め後方といった斜め方向に揺動させると、各走行ポンプ66L、66Rの受圧部66aと受圧部66bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aの回転方向及び回転速度が変更される、これにより、作業機1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
【0042】
すなわち、操作部材40を左斜め前方に揺動操作すると、当該操作部材40の揺動角度に対応した速度で、作業機1が前進しながら左旋回する。また、操作部材40を右斜め前方に揺動操作すると、当該操作部材40の揺動角度に対応した速度で、作業機1が前進しながら右旋回する。また、操作部材40を左斜め後方に揺動操作すると、当該操作部材40の揺動角度に対応した速度で、作業機1が後進しながら左旋回する。さらに、操作部材40を右斜め後方に揺動操作すると、当該操作部材40の揺動角度に対応した速度で、作業機1が後進しながら右旋回する。
【0043】
作業機1は、制御装置75、表示装置72、報知装置73、撮像装置70、及び操作検出部86を備えている。これら各部75、72、73、70、86は、作業機1に構築されたCAN(Controller Area Network)又はフレックスレイ(FlexRay)等の車載ネットワークによって相互に通信可能に接続されている。
制御装置75は、CPUとメモリなどを有するECU(電子制御装置)から成る。制御装置75は、作業機1の各部の動作を制御する。
【0044】
撮像装置70は、CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)イメージセンサを搭載したCCDカメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを搭載したCMOSカメラ、又は赤外線カメラなどから成る。撮像装置70は、例えば作業機1(機体2)の前部、後部、左右側部、或いは上部に設けられていて、作業機1(機体2)の前方の周囲、左側方の周囲、右側方の周囲、又は後方の周囲等を撮像することが可能である。
【0045】
また、撮像装置70は、運転席13に着座した作業者の死角となる作業機1の周囲(例えば後方、左右の側傍、前側近傍など)を撮像することが可能である。撮像装置70は、
キャビン5の外側面に取り付けられてもよいし、又はキャビン5以外の機体2の外側面などに取り付けられてもよい。撮像装置70の取り付け場所については、これらに限定されない。
【0046】
表示装置72は、固定型のディスプレイ装置、或いは画像を表示可能なタブレット型の端末装置などから成る。表示装置72は、キャビン5内の運転席13の周囲(たいてい前方)に配置されている。表示装置72は、原動機29の回転数、作動油の油温、又は電動機若しくは作動油などを冷却する冷却数の水温などの運転画面を表示する。また、表示装置72は、撮像装置70が撮像した作業機1(機体2)の周囲の撮像画像を、例えば図4に示すように表示可能である。
【0047】
図4の例では、撮像装置70が撮像した作業機1(機体2)の後方の撮像画像(バックモニタ)G1を、表示装置72の表示画面D1中の画像表示部D2に表示している。これ以外にも、表示装置72は、撮像装置70が撮像した作業機1の前方の撮像画像、左側方の撮像画像、右側方の撮像画像、又はその他の作業機1の周囲の撮像画像を、画像表示部D2に表示可能である。また、作業機1(機体2)の前方、後方、及び左右側方のうち、運転席13に着座した作業者の死角となる方向を撮像装置70により撮像し、当該撮像画像を表示装置72に表示させてもよい。制御装置75は、撮像装置70の撮像画像の表示を表示装置72に行わせる制御を実行可能である。
【0048】
制御装置75は、表示装置72に表示させる撮像画像と、操作部材40の操作方向とを対応付ける。例えば、操作部材40が前方(図1の矢視A1方向)に操作されたときは、制御装置75が、撮像装置70により撮像された作業機1の前方の撮像画像を、表示装置72の表示画面D1の画像表示部G1に表示させる。また、操作部材40が後方(図1の矢視A2方向)に操作されたときは、制御装置75が、撮像装置70により撮像された作業機1の後方の撮像画像G1を、画像表示部G1に表示させる。
【0049】
また、操作部材40が右方(図1の矢視A3方向)に操作されたときは、制御装置75が、撮像装置70により撮像された作業機1の右方の撮像画像を、画像表示部G1に表示させる。また、操作部材40が左方(図1の矢視A4方向)に操作されたときは、制御装置75が、撮像装置70により撮像された作業機1の左方の撮像画像を、画像表示部G1に表示させる。
【0050】
なお、作業機1(機体2)の前方、後方、左方、及び右方の全てを撮像装置70で撮像するのではなく、前方、後方、左方、及び右方のうちのいずれかを撮像装置70で撮像してもよい。また、運転席13に着座した作業者の死角となる方向(例えば後方など)だけを、撮像装置70で撮像してもよい。そして、その死角方向と対応する方向に操作部材40が操作されたときに、死角方向の撮像画像を表示装置72に表示させてもよい。
【0051】
報知装置73は、ブザー若しくはスピーカなどの音出力機器、又はLED若しくはランプなどの照明類、又は表示装置72とは異なる表示盤などから成る。例えば報知装置73は、走行装置4(即ち作業機1と機体2)の前進、後進、左旋回、右旋回などの進行方向を示す音又は音声を音出力機器から出力することにより、当該進行方向を運転席13に着座した作業者又は作業機1の周囲にいる人などに報知する。或いは、報知装置73は、走行装置4などの進行方向を示すマーク若しくは文字などが付された照明類又は表示盤の表示部を点灯或いは点滅させることにより、当該進行方向を作業者又は周囲に報知する。或いは、報知装置73は、キャビン5、機体2、若しくはブーム22L、22Rの外側面のうち、走行装置4などの進行方向側の外側面に取り付けられたランプなどの照明類を点灯或いは点滅させることにより、当該進行方向を作業者又は周囲に報知する。制御装置75は、走行装置4の進行方向の報知を報知装置73に行わせる制御を実行可能である。
【0052】
制御装置75は、操作部材40の操作状態に基づいて、表示装置72による撮像画像の表示の開始及び停止、並びに報知装置73による走行装置4(作業機1、機体2)の進行方向の報知の開始及び停止を制御する。また、制御装置75は、操作部材40の操作が行われた場合において、表示装置72による撮像画像の表示を開始するタイミングと、報知装置73による進行方向の報知を開始するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0053】
さらに、制御装置75は、操作部材40が操作されて、表示装置72により撮像画像が表示され且つ報知装置73により進行方向が報知されている状態で、操作部材40が元の状態に戻る場合において、表示装置72による撮像画像の表示を終了するタイミングと、報知装置73による進行方向の報知を終了するタイミングとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0054】
以下、制御装置75が実行する表示装置72による撮像画像の表示制御と、報知装置73による進行方向の報知制御とについて説明する。
図2は、操作部材40の操作方向と操作量の一関係を示す図である。
操作部材40は、未操作状態では中立位置で静止している。図2にラインL1で示すように、操作部材40を中立位置から前方に揺動操作(前進操作)した場合、操作部材40の前方に対する操作量(前進操作量)は徐々に増加する。そして、前方に揺動した(傾いた)操作部材40を中立位置に戻すように揺動操作(戻し操作)した場合、操作部材40の前進操作量は徐々に減少する。
【0055】
また、図2にラインL2で示すように、操作部材40を中立位置から後方に揺動操作(後進操作)した場合、操作部材40の後方に対する操作量(後進操作量)は徐々に増加する。そして、後方に揺動した操作部材40中立位置に戻すように揺動操作(戻し操作)した場合、操作部材40の後進操作量は徐々に減少する。
また、図示を省略しているが、操作部材40を左方或いは右方に揺動操作した場合も同様に、操作部材40の操作量は徐々に増加し、その後操作部材40を戻し操作した場合も同様に操作部材40の操作量は徐々に減少する。
【0056】
詳しくは、操作部材40を中立位置から左方に揺動操作(左進操作)した場合、操作部材40の左方に対する操作量(左進操作量)は徐々に増加する。そして、左方に揺動した操作部材40を中立位置に戻すように揺動操作(戻し操作)した場合、操作部材40の左進操作量は徐々に減少する。また、操作部材40を中立位置から右方に揺動操作(右進操作)した場合、操作部材40の右方に対する操作量(右進操作量)は徐々に増加する。そして、右方に揺動した操作部材40を中立位置に戻すように揺動操作(戻し操作)した場合、操作部材40の右進操作量は徐々に減少する。
【0057】
操作検出部86(図1)は、例えばポテンションメータなどから成り、操作部材40の各方向への操作角度を検出し、当該検出結果に応じた操作信号(アナログの電圧信号)を制御装置75に出力する。制御装置75は、操作検出部86から出力される操作信号に基づいて、操作部材40の操作の有無、操作方向、及び操作量を検出する。
その際、例えば制御装置75は、操作検出部86から出力される操作信号に基づいて、操作部材40の操作が有ることを検出した場合、操作部材40の操作方向を検出する。次に、制御装置75は、上記操作信号に基づいて、操作部材40の操作角度を検出する。操作部材40を各操作方向へ最大限揺動操作したときの操作角度(最大操作角度)は、予め計測されて、制御装置75の内部メモリに記憶されている。このため、制御装置75は、操作部材40の操作方向に対応する最大操作角度を内部メモリから読み出して、当該最大操作角度に対する操作部材40の操作角度(操作検出部86による検出値)の割合を、操作部材40の操作量(%)として算出する。また、制御装置75は、操作部材40の操作方向などに基づいて、走行装置4(作業機1、機体2)の進行方向を判断する。
【0058】
図3は、操作部材40と報知装置73と表示装置72の動作状態の一関係を示す図である。
操作部材40が中立位置から後進操作された場合(図3の矢印W1)、操作部材40の後進操作量は徐々に増加する(図3のラインL2a)。操作部材40の後進操作量が、所定の第1閾値F1以上になったタイミングT1で、制御装置75は、撮像装置70により撮像された走行装置4(作業機1、機体2)の後方の撮像画像の表示装置72による表示を開始する(図3の後方画像表示ON)。そして、操作部材40の後進操作量が、第1閾値F1より大きい所定の第2閾値F2以上になったタイミングT2で、制御装置75は、報知装置73による走行装置4(作業機1、機体2)の後進の報知を開始する(図3の後進報知ON)。
【0059】
即ち、制御装置75は、報知装置73により後進の報知を開始するタイミングT2を、表示装置72により後方の画像の表示を開始するタイミングT1より遅延させる。これにより、後進の報知が報知装置73で開始される前に、後方の撮像画像の表示が表示装置72で開始される。
その後、操作部材40が中立位置に戻るように戻し操作された場合(図3の矢印W2)、操作部材40の後進操作量が徐々に減少する(図3のラインL2a)。表示装置72による後方の撮像画像の表示と報知装置73による後進の報知とが実行されている状況において、操作部材40の後進操作量が第4閾値F4以下になったタイミングT4で、制御装置75は、報知装置73による後進の報知を終了する(図3の後進報知OFF)。第4閾値F4は、第2閾値F2より小さい値に設定されている。そして、操作部材40の後進操作量が、第4閾値F4及び第1閾値F1より小さい所定の第3閾値F3以上になったタイミングT3で、制御装置75は、表示装置72による後方の撮像画像の表示を終了する(図3の後方画像表示OFF)。第3閾値F3は、第1閾値F1より小さい値に設定されている。
【0060】
即ち、制御装置75は、表示装置72により後方の撮像画像の表示を終了するタイミングT3を、報知装置73により後進の報知を終了するタイミングT4より遅延させる。これにより、後進の報知が報知装置73で終了された後に、後方の撮像画像の表示が表示装置72で終了される。
また、操作部材40の後進操作量が、第1閾値F1以上になってから第3閾値F3以下になるまで、作業機1の後方の撮像画像が表示装置72に表示され続ける。また、操作部材40の後進操作量が、第2閾値F2以上になってから第4閾値F4以下になるまで、作業機1の後進が報知装置73によって報知され続ける。さらに、表示装置72による後方の撮像画像の表示が、報知装置73による後進の報知よりも長く続く。
【0061】
なお、図3に示す閾値F1~F4は一例であって、閾値F1~F4の大きさは、図3に示す大きさに限定するものではない。例えば、第2閾値F2をより最大位置に近い値に設定したり、第1閾値F1をできるだけ中立位置に近い値に設定したりしてもよい。
図3の例では、第2閾値F2を第4閾値F4より大きい値に設定し、第1閾値F1を第3閾値F3より大きい値に設定している。これにより、報知装置73による後進の報知を開始するための操作部材40の後進操作量が、当該報知を終了するための操作部材40の後進操作量より大きくなり、また表示装置72による後方の撮像画像の表示を開始するための操作部材40の後進操作量が、当該表示を終了するための操作部材40の後進操作量より大きくなる。このため、報知装置73による後進の報知及び表示装置72による後方の撮像画像の表示のそれぞれを実行している時間を長くすることができる。
【0062】
然るに、例えば、第4閾値F4を第2閾値F2以上の値に設定したり、第3閾値F3を第1閾値F1以下の値に設定したりしてもよい。この場合、制御装置75は、操作部材40が後進操作されて、後進操作量が一旦第4閾値F4より大きくなったことを確認した後、操作部材40が戻し操作されて、後進操作量が第4閾値F4以下であるか否かの判定と、後進操作量が第3閾値F3以下であるか否かの判定とを実行すればよい。
【0063】
また、図3では、操作部材40の後進操作時と後進操作後の戻し操作時との場合を例に示したが、これに限定しない。操作部材40の前進操作時と前進操作後の戻し操作時との場合、操作部材40の左進操作時と左進操作後の戻し操作時との場合、操作部材40の右進操作時と右進操作後の戻し操作時との場合も同様に、制御装置75が、操作部材40の操作方向と操作量と閾値F1~F4とに基づいて、表示装置72による進行方向の撮像画像の表示の開始と停止、及び報知装置73による進行方向の報知の開始と停止を実行することが可能である。
【0064】
また、操作部材40が操作されている時間も考慮して、表示装置72による進行方向の撮像画像の表示と、報知装置73による進行方向の報知とを実行してもよい。この場合の実施形態を、図5を参照しながら説明する。
図5は、操作部材40と報知装置73と表示装置72の動作状態の他の関係を示す図である。
【0065】
操作部材40が中立位置から後進操作されて(図5のラインL2b)、操作部材40の後進操作量が閾値F1a、F2a以上になると、制御装置75は、内部メモリ等により計時を開始する。そして、操作部材40の後進操作量が第1閾値F1a以上になっている状態で、第1所定時間K1以上経過すると、制御装置75は、表示装置72により後方の撮像画像の表示を開始する(図5の後方画像表示ON)。また、操作部材40の後進操作量が第2閾値F2a以上になっている状態で、第2所定時間K2以上経過すると、制御装置75は、報知装置73により走行装置4(作業機1、機体2)の後進の報知を開始する(図5の後進報知ON)。また、このとき制御装置75は、計時を終了する。
【0066】
図5の例では、第1閾値F1aと第2閾値F2aとは同値に設定され(F1a=F2a)、第1所定時間K1は第2所定時間K2より短い時間に設定されている(K1<K2)。このため、制御装置75は、報知装置73により後進の報知を開始するタイミングT2aを、表示装置72により後方の画像の表示を開始するタイミングT1aより遅延させる。そして、報知装置73により後進の報知が開始されるよりも先に、表示装置72により後方の撮像画像の表示が開始される。
【0067】
上記のように、表示装置72による後方の撮像画像の表示と報知装置73による後進の報知とが実行されている状況において、その後操作部材40がさらに後進操作されてから、操作部材40が戻し操作される(図5のラインL2c)。この場合、操作部材40の後進操作量が閾値F3a、F4a以下になると、制御装置75は、内部メモリ等により計時を開始する。そして、操作部材40の後進操作量が第4閾値F4a以下になっている状態で、第4所定時間K4以上経過すると、制御装置75は、報知装置73による後進の報知を終了する(図5の後進報知OFF)。また、操作部材40の後進操作量が第3閾値F3a以下になっている状態で、第3所定時間K3以上経過すると、制御装置75は、表示装置72による後方の撮像画像の表示を終了する(後方画像表示OFF)。また、制御装置75は計時を終了する。
【0068】
図5の例では、第3閾値F3aと第4閾値F4aとは同値に設定され(F3a=F4a)、第3所定時間K3は第4所定時間K4より長い時間に設定されている(K3>K4)。このため、制御装置75は、表示装置72による後方の画像の表示を終了するタイミングT3aを、報知装置73による後進の報知を終了するタイミングT4aより遅延させる。そして、報知装置73による後進の報知が終了した後に、表示装置72による後方の撮像画像の表示が終了する。また、表示装置72による後方の撮像画像の表示時間(図5のT1a~T3a)が、報知装置73による後進の報知時間(図5のT2a~T4a)よりも長く続く。
【0069】
なお、図5に示す閾値F1a~F4a及び所定時間K1~K4は一例であって、閾値F1a~F4aの大きさは、図5に示す大きさに限定するものではなく、所定時間K1~K4の長さも、図5に示す長さに限定するものではない。例えば、第1閾値F1aを第2閾値F2aとは異なる値に設定したり、第3閾値F3aを第4閾値F4aとは異なる値に設定したりしてもよい。また、第1所定時間K1をより短い時間に設定したり、第3所定時間K3をより長い時間に設定したりしてもよい。
【0070】
また、図5では、操作部材40の後進操作時と後進操作後の戻し操作時との場合を例に示したが、これに限定しない。操作部材40の前進操作時と前進操作後の戻し操作時との場合、操作部材40の左進操作時と左進操作後の戻し操作時との場合、操作部材40の右進操作時と右進操作後の戻し操作時との場合も同様に、制御装置75が、操作部材40の操作方向、操作量、閾値F1a~F4a、及び所定時間K1~K4に基づいて、表示装置72による進行方向の撮像画像の表示の開始と停止、及び報知装置73による進行方向の報知の開始と停止を実行することが可能である。
【0071】
上述した実施形態では、操作部材40の操作状態を検出するために操作検出部86を設けたが、これに代えて、操作部材40の操作状態に応じて変化する作動油の圧力を検出可能な圧力センサなどを設けてもよい。この場合の実施形態を、図6を参照しながら説明する。
図6は、作業機1の走行系の油圧システムの他の例を示す図である。図6に示す油圧シ
ステムには、圧力センサ又は圧力スイッチなどから成る圧力検出部81~84が備わっている。
【0072】
圧力検出部81(第1検出部)は、前進操作弁36又は右旋回操作弁38から走行装置4の走行ポンプ66Lの受圧部66aに作動油を供給するための油路46の一部46a(第1油路)に並列に接続されている。圧力検出部81は、油路46aを流れるパイロット油の圧力、即ち前進操作弁36、右旋回操作弁38、及び油路46aに作用するパイロット圧(第1圧力)を検出する。圧力検出部83(第1検出部)は、前進操作弁36又は左旋回操作弁39から走行ポンプ66Rの受圧部66aに作動油を供給するための油路46の一部46b(第1油路)に並列に接続されている。圧力検出部83は、油路46bを流れるパイロット油の圧力、即ち前進操作弁36、左旋回操作弁39、及び油路46bに作用するパイロット圧(第1圧力)を検出する。
【0073】
圧力検出部82(第2検出部)は、後進操作弁37又は右旋回操作弁38から走行ポンプ66Rの受圧部66bに作動油を供給するための油路47の一部47b(第2油路)に並列に接続されている。圧力検出部82は、油路47bを流れるパイロット油の圧力、即ち後進操作弁37、右旋回操作弁38、及び油路47bに作用するパイロット圧(第2圧力)を検出する。圧力検出部84(第2検出部)は、後進操作弁37又は左旋回操作弁39から走行ポンプ66Lの受圧部66bに作動油を供給するための油路47の一部47a(第2油路)に並列に接続されている。圧力検出部84は、油路47aを流れるパイロット油の圧力、即ち後進操作弁37、左旋回操作弁39、及び油路47aに作用するパイロット圧(第2圧力)を検出する。
【0074】
圧力検出部81~84の下流側には、絞り部79a、79c、79d、79bが設けられている。詳しくは、絞り部79aは、油路46aにおける圧力検出部81の接続点より下流側(走行ポンプ66L側)に設けられている。絞り部79cは、油路47bにおける圧力検出部82の接続点より下流側(走行ポンプ66R側)に設けられている。絞り部79dは、油路46bにおける圧力検出部83の接続点より下流側(走行ポンプ66R側)に設けられている。絞り部79bは、油路47aにおける圧力検出部84の接続点より下流側(走行ポンプ66L側)に設けられている。言い換えれば、圧力検出部81~84は、絞り部79a、79c、79d、79bの上流側(操作弁55側)36~39に位置している。これにより、操作装置14から出力したパイロット圧を、圧力検出部81~84で正確に検出することができる。
【0075】
制御装置75は、圧力検出部81~84により検出されたパイロット圧に基づいて、操作部材40の操作状態と、走行装置4(機体2、作業機1)の進行方向とを判断する。以下、当該判断について説明する。
図7は、操作部材40の前進操作状態と後進操作状態と第1圧力と第2圧力の一関係を示した図である。
【0076】
図7にラインL3で示すように、操作部材40を中立位置から前進操作した場合、前進操作弁36及び油路46a、46bに作用する第1圧力(パイロット圧)は、操作部材40の前進操作量の増加に応じて上昇する。そして、前方に揺動した操作部材40を中立位置に戻し操作した場合、油路46a、46bのパイロット油が作動油タンク31に抜けるため、第1圧力は操作部材40の前進操作量の減少に応じて下降する。
【0077】
また、図7にラインL4で示すように、操作部材40を中立位置から後進操作した場合、後進操作弁37及び油路47a、47bに作用する第2圧力(パイロット圧)は、操作部材40の前進操作量の増加に応じて上昇する。そして、後方に揺動した操作部材40を中立位置に戻し操作した場合、油路47a、47bのパイロット油が作動油タンク31に抜けるため、第2圧力は操作部材40の後進操作量の減少に応じて下降する。
【0078】
また、図示を省略しているが、操作部材40を中立位置から右進操作した場合、右旋回操作弁38及び油路46a、47bに作用するパイロット圧は、操作部材40の右進操作量の増加に応じて上昇する。そして、右方に揺動した操作部材40を中立位置に戻し操作した場合、油路46a、47bのパイロット油が作動油タンク31に抜けるため、右旋回操作弁38及び油路46a、47bに作用するパイロット圧は、操作部材40の右進操作
量の減少に応じて下降する。
【0079】
また、図示を省略しているが、操作部材40を中立位置から左進操作した場合、左旋回操作弁39及び油路46b、47aに作用するパイロット圧は、操作部材40の左進操作量の増加に応じて上昇する。そして、左方に揺動した操作部材40を中立位置に戻し操作した場合、油路46b、47aのパイロット油が作動油タンク31に抜けるため、左旋回操作弁39及び油路46b、47aに作用するパイロット圧は、操作部材40の左進操作量の減少に応じて下降する。
【0080】
圧力検出部81~84は、油路46a、47b、46b、47aのパイロット圧を検出し、当該検出結果に応じた操作信号(アナログの電圧信号)を制御装置75に出力する。制御装置75は、圧力検出部81~84から出力される操作信号に基づいて、操作部材40の操作の有無、操作方向、及び操作量を検出する。
この際、例えば制御装置75は、圧力検出部81~84のうち、いずれか2つの圧力検出部から出力される操作信号の電圧レベルが、他の2つの圧力検出部から出力される操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、操作部材40の操作が有り且つ、操作信号の電圧レベルが高い圧力検出部に対応する方向に操作部材40が操作されたと判断する。
【0081】
具体的には、例えば圧力検出部81、83からの操作信号の電圧レベルが、圧力検出部82、84からの操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、制御装置75は、操作部材40の操作が有り且つ、圧力検出部81、83に対応する後方に操作部材40が操作(後進操作)されたと判断する。また、圧力検出部82、84からの操作信号の電圧レベルが、圧力検出部81、83からの操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、制御装置75は、操作部材40の操作が有り且つ、圧力検出部82、84に対応する前方に操作部材40が操作(前進操作)されたと判断する。
【0082】
また、圧力検出部81、82からの操作信号の電圧レベルが、圧力検出部83、84からの操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、制御装置75は、操作部材40の操作が有り且つ、圧力検出部81、82に対応する右方に操作部材40が操作(右進操作)されたと判断する。さらに、圧力検出部83、84からの操作信号の電圧レベルが、圧力検出部81、82からの操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、制御装置75は、操作部材40の操作が有り且つ、圧力検出部83、84に対応する左方に操作部材40が操作(左進操作)されたと判断する。
【0083】
他の例として、制御装置75が、圧力検出部81~84のうち、いずれか1つの圧力検出部から出力される操作信号の電圧レベルが、他のいずれか1つ或いは他のいずれか2つの圧力検出部から出力される操作信号の電圧レベルよりある程度高ければ、操作部材40の操作が有り且つ、操作信号の電圧レベルが高い圧力検出部に対応する方向に操作部材40が操作されたと判断してもよい。
【0084】
次に、制御装置75は、圧力検出部81~84のうち、操作部材40の操作方向に対応する圧力検出部から出力された操作信号に基づいて、対応する油路46a、47b、46b、47aのパイロット圧を検出する。前述したように、操作部材40の操作方向に対応する圧力検出部は、圧力検出部81~84のうちのいずれか2つである。このため、例えば制御装置75は、操作部材40の操作方向に対応する2つの圧力検出部のうち、少なくともいずれか一方から出力された操作信号に基づいて、油路46a、47b、46b、47aのうち、対応する少なくともいずれか一方の油路のパイロット圧を検出する。
【0085】
操作部材40の各操作方向(前方、後方、右方、左方)への操作角度が大きくなるに連れて、対応する油路46a、47b、46b、47aのパイロット圧は高くなり、当該各操作方向の操作角度がある程度の大きさになると、対応する油路46a、47b、46b、47aのパイロット圧は一定値で飽和する(後述する図8のラインL4a参照)。操作部材40を各操作方向へ最大限揺動操作したときに、対応する油路46a、47b、46b、47aに作用するパイロット圧(飽和圧)は、予め計測されて、制御装置75の内部メモリに記憶されている。
【0086】
このため、制御装置75は、油路46a、47b、46b、47aのうち、操作部材40の操作方向に対応する少なくともいずれか一方の油路の飽和圧を内部メモリから読み出
し、当該飽和圧に対する油路のパイロット圧(対応する圧力検出部81~84による検出値)の割合を、操作部材40の操作量(%)として算出する。
このとき、例えば制御装置75は、油路46a、47b、46b、47aのうち、操作部材40の操作方向に対応するいずれか一方の油路のパイロット圧を検出し、当該油路の飽和圧を内部メモリからそれぞれ読み出した場合、当該飽和圧に対する一方の油路のパイロット圧の割合を、操作部材40の操作量(%)として算出する。
【0087】
また、制御装置75が、油路46a、47b、46b、47aのうち、操作部材40の操作方向に対応する2つの油路のパイロット圧を検出し、当該2つの油路の飽和圧を内部メモリからそれぞれ読み出した場合、一方の飽和圧に対する一方の油路のパイロット圧の割合と、他方の飽和圧に対する他方の油路のパイロット圧の割合との平均値を、操作部材40の操作量(%)として算出してもよい。
【0088】
制御装置75は、上述したように判断した操作部材40の操作方向などに基づいて、さらに走行装置4(作業機1、機体2)の進行方向を判断する。
図8は、操作部材40の後進操作状態と第1圧力と第2圧力の他の関係を示す図である。
図6などに示すように、油路46(油路46a、油路46b、油路46c)と油路47(油路47a、油路47b、油路47c)とは、走行ポンプ66L、66Rに備わるサーボシリンダ等の受圧部66a、66bにそれぞれ繋がっている。そのため、操作部材40が中立位置から後進操作された場合に、例えば図8にラインL4aで示すように、第2圧力(油路47a、47bのパイロット圧)が上昇するだけでなく、ラインL3aで示すように、第1圧力(油路46a、46bのパイロット圧)も一時的に上昇することがある。これは、走行ポンプ66L、66R(図6)のサーボシリンダの動作によって、受圧部66bとは反対側の受圧部66aから作動油が油路46a、46bに抜けて、当該油路46a、46bに圧力がかかるためである。この場合、操作部材40の操作方向が前方であり、走行装置4などの進行方向が前進であると誤判断してしまうおそれがある。
【0089】
その対策として、制御装置75は、第1圧力と第2圧力とを比較した結果に基づいて、操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向とを判断する。具体的には、例えば制御装置75は、図8にラインL4a、L3aで示すように、第2圧力(油路47a、47bのパイロット圧)が第1圧力(油路46a、46aのパイロット圧)以上であるときは、操作部材40の操作方向が前方ではなく、後方であると判断し、走行装置4などの進行方向が前進ではなく、後進であると判断する。つまり、制御装置75は、第2圧力が第1圧力以上であるときには、第1圧力が上昇していても、操作部材40の操作方向が後方であり、走行装置4などの進行方向が後進であると判断する。
【0090】
操作部材40が中立位置から前進操作された場合も、後進操作された場合と同様に、操作部材40の操作方向が後方であり、走行装置4などの進行方向が後進であると誤判断されるおそれがある。この場合は、制御装置75が、第1圧力が第2圧力以上であるときに、第2圧力が上昇していても、操作部材40の操作方向が後方であると判断し、走行装置4などの進行方向が後進であると判断する。
【0091】
また、操作部材40の右進操作と左進操作のうちの一方が行われた場合も、上述した後進操作と前進操作の場合と同様に、右進操作と左進操作のうちの他方が行われたと誤判断され、さらに当該他方に対応する方向が進行方向として誤判断されるおそれがある。この場合は、例えば、右進操作に対応する油路46a、47bのパイロット圧を第1圧力とし、左進操作に対応する油路46b、47aのパイロット圧を第2圧力とすることで、上述した後進操作と前進操作の場合と同様に、制御装置75で操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向とを判断することが可能である。
【0092】
詳しくは、制御装置75は、第1圧力(油路46a、47bのパイロット圧)が第2圧力(油路46b、47aのパイロット圧)以上であるときに、第2圧力が上昇していても、操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向が右方であると判断する。また、制御装置75は、第2圧力が第1圧力以上であるときに、第1圧力が上昇していても、操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向が左方であると判断する。
【0093】
上記により、制御装置75において、操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向とを適正に判断することができる。特に、外気温が低く、作動油の粘性が低くても、操作部材40の操作方向と走行装置4などの進行方向とを適正に判断することができる。
他の例として、操作部材40の前進操作、後進操作、右進操作、又は左進操作により油路46a、47b、46b、47aに一時的にかかる圧力を予め測定しておき、この測定した圧力よりも大きな圧力を、方向判断の許可値として設定してもよい。或いは、走行装置4などが、前進し始める油路46a、46bの最低圧力、後進し始める油路47a、47bの最低圧力、右旋回し始める油路46a、47bの最低圧力、又は左旋回し始める油路46b、47aの最低圧力を、各方向の判断の許容値として設定してもよい。これらの場合、制御装置75は、圧力検出部81~84により検出した油路46a、47b、46b、47aのパイロット圧のうち、少なくともいずれか一方のパイロット圧が、対応する許容値以上になった場合に、当該パイロット圧(又は許容値以上になった1つ以上のパイロット圧)に基づいて、前述したように操作部材40の操作の有無、操作方向、及び操作量を検出し、さらに走行装置4などの進行方向を判断すればよい。
【0094】
圧力検出部81~84からの操作信号に基づいて、操作部材40の操作方向、操作量、及び走行装置4などの進行方向を検出した場合も、図4又は図5の例と同様に、制御装置75が、操作部材40の操作方向、操作量、閾値F1~F4、F1a~F4a、又は所定時間K1~K4に基づいて、表示装置72による進行方向の撮像画像の表示の開始と停止、及び報知装置73による進行方向の報知の開始と停止を実行することが可能である。
【0095】
上述した実施形態では、操作弁36~39によって走行ポンプ66L、66Rに作用するパイロット圧を変更する油圧式の走行操作装置14を用いたが、これに代えて、例えば図9又は図10に示すような、電気的に作動する走行操作装置54、64を用いてもよい。この場合、走行操作装置54、64に備わる操作部材59は、ジョイスティック等の電気的な操作部材から成る。
【0096】
図9に示す走行操作装置54は、電磁比例弁から構成された操作弁55a、55b、55c、55dを備えている。各操作弁55a、55b、55c、55dの入力ポートには、第2油圧ポンプP2から作動油が吐出される吐出油路140に接続されている。吐出油路140の中途部には、電磁比例弁69が接続されている。操作弁55aの出力ポートと走行ポンプ66Lの受圧部66aとは、油路45aにより接続されている。操作弁55bの出力ポートと走行ポンプ66Lの受圧部66bとは、油路45aにより接続されている。操作弁55cの出力ポートと走行ポンプ66Rの受圧部66aとは、油路45cにより接続されている。操作弁55dの出力ポートと走行ポンプ66Rの受圧部66bとは、油路45dにより接続されている。
【0097】
制御装置75には、作業機1の左右方向又は前後方向に揺動する操作部材59の操作量及び操作方向を検出する操作検出部87が接続されている。操作検出部87は、例えばポテンションメータなどから成り、操作部材59の前方、後方、左右側方、左斜め前方向、右斜め前方向、左斜め後ろ方向、右斜め後ろ方向といった各操作方向への操作角度を検出し、当該検出結果に応じた操作信号(アナログの電圧信号)を制御装置75に出力する。
【0098】
制御装置75は、操作検出部87から出力される操作信号に基づいて、操作部材59の操作の有無、操作方向、及び操作量を検出する。この操作部材59の操作状態の検出方法は、操作検出部86(図1)から出力される操作信号に基づいて、操作部材40の操作の有無、操作方向、及び操作量を検出する場合と同様である。制御装置75は、操作部材59の操作方向及び操作量に基づいて、操作弁55a、55b、55c、55dを制御し、走行装置4など(機体2、作業機1)を走行させる。
【0099】
具体的には、例えば、操作部材59が前方に揺動操作(前進操作)されると、制御装置75は、操作弁55a及び操作弁55cに制御信号を出力して、走行ポンプ66L、66Rの斜板を正転(前進)の方向に揺動させる。これにより、走行ポンプ66L、66Rが正転して、走行装置4など(機体2、作業機1)が前進する。また 操作部材59が後方に揺動操作(後進操作)されると、制御装置75は、操作弁55b及び操作弁55dに制御信号を出力して、走行ポンプ66L、66Rの斜板を逆転(後進)の方向に揺動させる
。これにより、走行ポンプ66L、66Rが逆転して、走行装置4などが後進する。
【0100】
また、操作部材59が右方に揺動操作(右進操作)されると、制御装置75は、操作弁55a及び操作弁55dに制御信号を出力して、走行ポンプ66Lの斜板を正転の方向に揺動させ、走行ポンプ66Rの斜板を逆転の方向に揺動させる。これにより、走行ポンプ66Lが正転し、走行ポンプ66Rが逆転して、走行装置4などが右旋回する。さらに、操作部材59が左方に揺動操作(左進操作)されると、制御装置75は、操作弁55b及び操作弁55cに制御信号を出力して、走行ポンプ66Lの斜板を逆転の方向に揺動させ、走行ポンプ66Rの斜板を正転の方向に揺動させる。これにより、走行ポンプ66Lが逆転し、走行ポンプ66Rが正転して、走行装置4などが左旋回する。
【0101】
図10に示す走行操作装置64は、操作弁155L、155Rと油圧レギュレータ156L、156Rとを備えている。油圧レギュレータ156L、156Rは、作動油が供給可能な供給室157と、供給室157に設けられたピストンロッド158とを有している。油圧レギュレータ156Lのピストンロッド158は、走行ポンプ66Lの斜板に連結されている。油圧レギュレータ156Rのピストンロッド158は、走行ポンプ66Rの斜板に連結されている。各油圧レギュレータ156L、156rのピストンロッド158の作動(直進移動)によって、各走行ポンプ66L、66Rの斜板の角度が変更される。
【0102】
操作弁155Lは、油圧レギュレータ156Lを操作する電磁比例弁であって、第1位置159aと第2位置159bと中立位置159cとに切り換え可能である。操作弁155Lのスプールが制御装置75から出力された制御信号に基づいて移動することで、操作弁155Lの位置が変更される。操作弁155Lの第1出力ポートと油圧レギュレータ156Lの供給室157とは、油路145aにより接続されている。操作弁155Lの第2出力ポートと油圧レギュレータ156Lの供給室157とは、油路145bにより接続されている。操作弁155Lの入力ポートには、第2油圧ポンプP2から作動油が吐出される吐出油路140に接続されている。吐出油路140の中途部には、電磁比例弁69が接続されている。
【0103】
操作弁155Rは、油圧レギュレータ156Rを操作する電磁比例弁であって、第1位置159aと第2位置159bと中立位置159cとに切り換え可能である。操作弁155Rのスプールが制御装置75から出力された制御信号に基づいて移動することで、操作弁155Rの位置が変更される。操作弁155Rの第1出力ポートと油圧レギュレータ156Rの供給室157とは、油路145cにより接続されている。操作弁155Rの第2出力ポートと油圧レギュレータ156Rの供給室157とは、油路145dにより接続されている。操作弁155Rの入力ポートには、第2油圧ポンプP2から作動油が吐出される吐出油路140に接続されている。
【0104】
制御装置75が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155L及び操作弁155Rを第1位置159aに切り換える。これにより、走行ポンプ66L、66Rの斜板が正転の方向に揺動し、走行ポンプ66L、66Rが正転可能となる。また、制御装置75が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155L及び操作弁155Rを第2位置159bに切り換える。これにより、走行ポンプ66L、66Rの斜板が逆転の方向に揺動し、走行ポンプ66L、66Rが逆転可能となる。
【0105】
また、制御装置75が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155Lを第1位置159aに切り換え、且つ操作弁155Rを第2位置159bに切り換える。これにより、走行ポンプ66Lの斜板が正転の方向に揺動して、走行ポンプ66Lが正転可能となり、且つ走行ポンプ66Rの斜板が逆転の方向に揺動して、走行ポンプ66Rが逆転可能となる。
【0106】
さらに、制御装置75が操作弁155L及び操作弁155Rに制御信号を出力して、操作弁155Lを第2位置159bに切り換え、且つ操作弁155Rを第1位置159aに切り換える。これにより、走行ポンプ66Lの斜板が逆転の方向に揺動して、走行ポンプ66Lが逆転可能となり、且つ走行ポンプ66Rの斜板が正転の方向に揺動して、走行ポンプ66Rが正転可能となる。
【0107】
上述した実施形態では、制御装置75が、操作検出部86、87からの操作信号に基づいて検出した操作部材40、59の操作角度から、又は圧力検出部81~84からの操作信号に基づいて検出した油路46c、47c、48、49のパイロット圧から、操作部材40の操作量を算出しているが、これに限定しない。これ以外に、例えば制御装置75が、操作部材40、59の操作角度自体を操作部材40、59の操作量とみなしたり、油路46c、47c、48、49のパイロット圧自体を操作部材40の操作量とみなしたりしてもよい。これらの場合、表示装置72による進行方向の撮像画像の表示の開始と停止、並びに報知装置73による進行方向の報知の開始と停止を実行するための閾値F1~F4、F1a~F4aを、所定の角度又は所定の圧力に設定すればよい。
【0108】
上述した実施形態では、操作部材40を戻し操作することによって中立位置(操作前の状態)に戻しているが、戻し操作を行わなくても、操作部材40がばねなどの弾性部材の弾性力によって中立位置に戻るようにしてもよい。操作部材59も同様に、戻し操作を行わなくても、中立位置に戻るようにしてもよい。
上述した実施形態では、操作部材40、59が中立位置から操作された場合に、当該操作方向に対応する走行装置4などの進行方向の撮像画像を表示装置72に表示させているが、これに限定しない。例えば、操作部材40、59を後進操作した場合に、操作装置4などの進行方向である後方の撮像画像と、前方の撮像画像とを並べて表示装置72に表示させるというように、進行方向の撮像画像と操作方向以外の方向の撮像画像とを両方とも表示装置72に表示させてもよい。また、操作部材40、59の操作方向に対応する進行方向以外の方向の撮像画像だけを、表示装置72に表示させてもよい。
【0109】
さらに、撮像装置70により撮像された機体2の前方、後方、および左右側方の各撮像画像を画像処理部により合成して、作業機1の周辺の俯瞰図のような全方位撮像画像(いわゆる全方位モニタ)を作成し、当該全方位撮像画像を操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72に表示させてもよい。
以上の実施形態によれば、作業機1は以下のような構成と効果を奏する。
【0110】
本実施形態の作業機1は、機体2と、機体2に設けられた走行装置4と、走行装置4を走行させる操作を行うことが可能な操作部材40、59と、機体2の周囲を撮像可能な撮像装置70と、撮像装置70が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置72と、走行装置4の進行方向の報知を行う報知装置73と、操作部材40、59の操作が行われた場合において、表示装置72に撮像画像の表示を行わせる制御及び報知装置73に進行方向の報知をさせる制御を実行可能な制御装置75と、を備え、制御装置75は、表示装置72により撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aと、報知装置73により進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0111】
上記によれば、操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72により撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aと、報知装置73により進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aとが異なる。このため、撮像画像の表示の開始と進行方向の報知の開始とを作業機1の作業者、又は作業機1の周囲にいる人に別々に認識させることができる。また、例えば作業者が意図せず、撮像画像の表示と進行方向の報知とのうちの一方が実行されても、当該一方の開始をもって、他方が実行されるのを作業者に認識させることができる。この結果、撮像画像の表示と進行方向の報知とを効果的に行って、利便性を向上させることが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、制御装置75は、報知装置73により進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aを、表示装置72により撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aより遅延させる。これにより、作業者は、操作部材40、59を操作することで、作業機1の進行方向の報知を認識する前に、表示装置72により表示された作業機1の周囲の撮像画像を視認することができ、作業機1による作業性を向上させることが可能となる。
【0113】
また、本実施形態では、制御装置75は、操作部材40、59の操作量が第1閾値F1、F1a以上になると、表示装置72により撮像画像の表示を開始し、操作部材40、5
9の操作量が第2閾値F2、F2a以上になると、報知装置73により進行方向の報知を開始する。これにより、操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72によって撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aと、報知装置73によって進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して確実に遅延させることができる。また、作業者が操作部材40、59の操作量を変えることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを意図的に実行させたり実行させなかったりすることができる。また、閾値F1、F1a、F2、F2aを小さい値に設定することで、操作部材40、59の操作量を大きくしなくても、表示装置72に撮像画像を表示させたり、報知装置73に進行方向を報知させたりすることができる。さらに、閾値F1、F1a、F2、F2aを大きい値に設定することで、操作部材40、59を誤操作したときなどのように、操作部材40、59の操作量が小さいときには、表示装置72に撮像画像の表示を行わせなかったり、報知装置73に進行方向の報知を行わせなかったりすることができる。
【0114】
また、本実施形態では、第1閾値F1、F1aは、第2閾値F2、F2aより小さい値に設定されている。これにより、操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72によって撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aに対して、報知装置73によって進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aを確実に遅延させることができる。そして、操作部材40、59を操作することで、表示装置72により撮像画像の表示を開始してから、報知装置73により進行方向の報知を開始することができる。また、作業者が、操作部材40、59の操作量を第1閾値F1、F1a以上で且つ第2閾値F2、F2a未満にすることで、報知装置73による進行方向の報知を行わせずに、表示装置72による撮像画像の表示だけを行わせることができる。また、作業者が、操作部材40、59の操作量を第2閾値F2、F2a以上にすることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを両方とも行わせることができる。さらに、第2閾値F2、F2aを大きい値に設定することで、操作部材40、59の操作量を大きくして、報知装置73による進行方向の報知を行わせることができ、当該報知を開始するタイミングT2、T2aと、作業機1が進行方向に動き出すタイミングとを合わせることもできる。
【0115】
また、本実施形態では、制御装置75は、操作部材40、59の操作量が第1閾値F1、F1aになっている状態で第1所定時間K1以上経過したときに、表示装置72により撮像画像の表示を開始し、操作部材40、59の操作量が第2閾値F2、F2a以上になっている状態で第2所定時間K2以上経過したときに、報知装置73により進行方向の報知を開始する。これにより、第1閾値F1、F1aと第2閾値F2、F2aとを同値にしても、操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72によって撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aに対して、報知装置73によって進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aを確実に遅延させることができる。また、作業者が操作部材40、59の操作量と操作時間とを変えることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを意図的に実行させたり実行させなかったりすることができる。また、所定時間K1、K2を短い時間に設定することで、操作部材40、59の操作量を閾値F1、F1a、F2、F2a以上に保持する時間を長くしなくても、表示装置72に撮像画像を表示させたり、報知装置73に進行方向を報知させたりすることができる。さらに、所定時間K1、K2を長い時間に設定することで、操作部材40、59を誤操作したときなどのように、操作部材40、59の操作量が閾値F1、F1a、F2、F2a以上である時間が短いときには、表示装置72に撮像画像の表示を行わせなかったり、報知装置73に進行方向の報知を行わせなかったりすることができる。
【0116】
また、本実施形態では、第1所定時間K1は、第2所定時間K2より短い時間に設定されている。これにより、操作部材40、59の操作が行われた場合に、表示装置72によって撮像画像の表示を開始するタイミングT1、T1aに対して、報知装置73によって進行方向の報知を開始するタイミングT2、T2aを確実に遅延させることができる。そして、操作部材40、59を操作するだけで、作業機1の進行方向を報知装置73に報知
させる前に、撮像画像を表示装置73に表示させて、作業者に確認させることができる。また、作業者が、操作部材40、59の操作量を閾値F1、F1a、F2、F2a以上に保持する時間を、第1所定時間K1以上で且つ第2所定時間K2未満にすることで、報知装置73による進行方向の報知を行わせずに、表示装置72による撮像画像の表示だけを行わせることができる。また、作業者が、操作部材40、59の操作量を閾値F1、F1a、F2、F2a以上に保持する時間を、第2所定時間K2以上にすることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを両方とも行わせることができる。さらに、第2第2所定時間K2を長い時間に設定することで、操作部材40、59の操作量を大きくして、報知装置73による進行方向の報知を行わせることができ、当該報知を開始するタイミングT2、T2aと、作業機1が進行方向に動き出すタイミングとを合わせることもできる。
【0117】
また、本実施形態の作業機1は、機体2と、機体2に設けられた走行装置4と、走行装置4を走行させる操作を行うことが可能な操作部材40、59と、機体2の周囲を撮像可能な撮像装置70と、撮像装置70が撮像した撮像画像を表示可能な表示装置72と、走行装置4の進行方向の報知を行う報知装置73と、操作部材40、59の操作が行われた場合において、表示装置72に撮像画像の表示を行わせる制御及び報知装置73に進行方向の報知をさせる制御を実行可能な制御装置75と、を備え、制御装置75は、操作部材40、59が操作されて、表示装置72により撮像画像を表示させ且つ報知装置73により進行方向を報知させている状態で、操作部材40、59が操作前の状態に戻る場合において、表示装置72による撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aと、報知装置73による進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して遅延させる。
【0118】
上記によれば、操作部材40、59が操作されて、表示装置72により撮像画像を表示させ且つ報知装置73により進行方向を報知させている状態で、操作部材40、59が戻し操作などで中立位置に戻る場合に、表示装置72により撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aと、報知装置73により進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aとが異なる。このため、撮像画像の表示の終了と進行方向の報知の終了とを作業機1の作業者、又は作業機1の周囲にいる人に別々に認識させることができる。また、例えば作業者が意図せず、撮像画像の表示と進行方向の報知とのうちの一方が終了しても、当該一方の終了をもって、他方が終了するのを作業者に認識させることができる。この結果、撮像画像の表示と進行方向の報知とを効果的に行って、利便性を向上させることが可能となる。
【0119】
また、本実施形態では、制御装置75は、表示装置72により撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aを、報知装置73により進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aより遅延させる。これにより、作業者は、作業機1の進行方向の報知が終了した後も、表示装置72により表示された撮像画像を視認することができ、作業機1による作業性を向上させることが可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、制御装置75は、操作部材40、59の操作量が第3閾値F3、F3a以下になると、表示装置72による撮像画像の表示を終了し、操作部材40,59の操作量が第4閾値F4、F4a以下になると、報知装置73による進行方向の報知を終了する。これにより、操作部材40、59が中立位置に戻る場合に、表示装置72によって撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aと、報知装置73によって進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aとのうち、一方のタイミングを他方のタイミングに対して確実に遅延させることができる。また、作業者が操作部材40、59を中立位置に戻す戻し操作を行う際に、操作部材40、59の操作量を変えることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを意図的に継続させたり終了させなかったりすることができる。また、閾値F3、F3a、F4、F4aを小さい値に設定することで、表示装置72に撮像画像を長い間表示させ続けたり、報知装置73に進行方向を長い間報知させ続けたりすることができる。さらに、閾値F3、F3a、F4、F4aを大きい値に設定することで、表示装置72に撮像画像を表示させる時間を
短くしたり、報知装置73に進行方向を報知させる時間を短くしたりすることができる。
【0121】
また、本実施形態では、第3閾値F3、F3aは、第4閾値F4、F4aより小さい値に設定されている。これにより、操作部材40、59が戻し操作などにより中立位置に戻る場合に、報知装置73によって進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aに対して、表示装置72によって撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aを確実に遅延させることができる。そして、報知装置73により進行方向の報知を終了してから、表示装置72により撮像画像の表示を終了することができる。また、作業者が戻し操作により、操作部材40、59の操作量を第3閾値F3、F3aより大きく且つ第4閾値F4、F4a以下にすることで、報知装置73による進行方向の報知を終了し、表示装置72に撮像画像を表示させ続けることができる。さらに、第4閾値F4、F4aを大きい値に設定することで、作業者が大きく戻し操作を行わなくても、報知装置73による進行方向の報知を終了させることができる。
【0122】
また、本実施形態では、制御装置75は、操作部材40、59の操作量が第3閾値以下になっている状態で第3所定時間T3、T3a以上経過したときに、表示装置72による撮像画像の表示を終了し、操作部材40、59の操作量が第4閾値以下になっている状態で第4所定時間T4、T4a以上経過したときに、報知装置73による進行方向の報知を終了する。これにより、第3閾値F3、F3aと第4閾値F4、F4aとを同値にしても、操作部材40、59の戻し操作が行われた場合に、報知装置73によって進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aに対して、表示装置72によって撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aを確実に遅延させることができる。また、作業者が操作部材40、59を中立位置に戻す戻し操作を行う際に、操作部材40、59の操作量と操作時間を変えることで、表示装置72による撮像画像の表示と報知装置73による進行方向の報知とを意図的に継続させたり終了させなかったりすることができる。また、所定時間K3、K4を短い時間に設定することで、操作部材40、59の操作量を閾値F3、F3a、F4、F4a以上に保持する時間を長くしなくても、表示装置72に撮像画像の表示を終了させたり、報知装置73に進行方向の報知を終了させたりすることができる。さらに、所定時間K3、K4を長い時間に設定することで、表示装置72に撮像画像を長い間表示させたり、報知装置73に進行方向を長い間報知させたりすることができる。
【0123】
また、本実施形態では、第3所定時間T3、T3aは、第4所定時間T4、T4aより長い時間に設定されている。これにより、操作部材40、59の戻し操作が行われた場合に、報知装置73によって進行方向の報知を終了するタイミングT4、T4aに対して、表示装置72によって撮像画像の表示を終了するタイミングT3、T3aを確実に遅延させることができる。そして、操作部材40、59を戻し操作するだけで、作業機1の進行方向の報知を報知装置73に終了させ、その後撮像画像の表示を表示装置73に終了させることができる。また、作業者が戻し操作により、操作部材40、59の操作量を閾値F3、F3a、F4、F4a以下に保持する時間を、第3所定時間K3以上で且つ第4所定時間K4未満にすることで、報知装置73による進行方向の報知を行わせずに、表示装置72による撮像画像の表示だけを行わせることができる。さらに、第3定時間K3を長い時間に設定することで、表示装置72により撮像画像を長い間表示させる続けることができる。
【0124】
また、本実施形態では、制御装置75は、操作部材40、59の操作状態に基づいて、撮像装置70が撮像した走行装置4の進行方向の撮像画像を表示装置72に表示させ、且つ走行装置4の進行方向を報知装置73に報知させる。これにより、操作部材40、59の操作が行われた場合に、作業機1の進行方向の撮像画像が表示装置72により表示され、且つ作業機1の進行方向が報知装置73により報知させる。この結果、撮像画像の表示と進行方向の報知とを効果的に行って、利便性を向上させることが可能となる。
【0125】
また、本実施形態では、制御装置75は、機体2の後進に対応する方向(後進操作)に操作部材40、59が操作された場合に、撮像装置70が撮像した機体2の後方の撮像画像を表示装置72に表示させ、且つ機体2の後進を報知装置73により報知させる。これにより、運転席13に着座することで作業機1の前方を向く作業者が、操作部材40、5
9を後進操作した場合に、作業機1の後方の撮像画像が表示装置72に表示され、且つ作業機1の後進が報知装置73により報知させるの、作業者が後ろを振り向かなくても、表示装置72により作業機1の後方の撮像画像を視認して、後方の状況を把握することができる。また、第1閾値F1、F1aを小さい値に設定することで、操作部材40、59の後進操作量を大きくしなくても、作業機1が後進し始める前に、表示装置72に後方の撮像画像を表示させて、作業者に視認させることができる。
【0126】
さらに、本実施形態では、走行装置4は、作動油が供給されることで一方向又は他方向に走行可能であり、作業機1は、操作部材40の操作状態に応じて作動油を供給して、走行装置4の一方向への走行を操作する第1操作弁36、38(前進操作弁36、右旋回操作弁38)と、操作部材40の操作状態に応じて作動油を供給して、走行装置4の他方向への走行を操作する第2操作弁37、39(後進操作弁37、左旋回操作弁39)と、第1操作弁36、38から走行装置4に作動油を供給するための第1油路46、46a~46c、48と、第2操作弁37、39から走行装置4に作動油を供給するための第2油路47、47a~47c、49と、第1油路46c、48に作用する作動油の第1圧力を検出する第1検出部81、83(圧力検出部81、83)と、第2油路47c、49に作用する作動油の第2圧力を検出する第2検出部82、84(圧力検出部82、84)と、を備え、制御装置75は、第1圧力及び第2圧力の少なくともいずれか一方に基づいて、操作部材40の操作状態を検出し、走行装置4の進行方向を判断する。
【0127】
上記により、制御装置75において、操作部材40の操作の有無、操作方向、及び操作量を確実に検出して、当該検出結果に基づいて表示装置72による撮像画像の表示の開始と停止、並びに報知装置73による進行方向の報知の開始と停止を適正に実行することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0128】
1 :作業機
2 :機体
4 :走行装置
36 :前進操作弁(第1操作弁)
37 :後進操作弁(第2操作弁)
38 :右旋回操作弁(第1操作弁)
39 :左旋回操作弁(第2操作弁)
40、59 :操作部材
46、46a、46b、46c、48 :油路(第1油路)
47、47a、47b、47c、49 :油路(第2油路)
70 :撮像装置
72 :表示装置
73 :報知装置
75 :制御装置
81、83 :圧力検出部(第1検出部)
82、84 :圧力検出部(第2検出部)
F1、F1a :第1閾値
F2、F2a :第2閾値
F3、F3a :第3閾値
F4、F4a :第4閾値
K1 :第1所定時間
K2 :第2所定時間
K3 :第3所定時間
K4 :第4所定時間
T1、T1a :タイミング
T2、T2a :タイミング
T3、T3a :タイミング
T4、T4a :タイミング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11